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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179556
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20241219BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01N27/00 B
G01N27/416 371H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098493
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AB02
2G060AE19
2G060AF13
2G060AG03
2G060AG15
2G060BB09
2G060JA02
2G060KA04
(57)【要約】
【課題】電力を消費することなく、水分を検出できるセンサを提供する。
【解決手段】検出対象空間の内部に、イオン化傾向が異なる金属からなる一対の検出電極5,6と、検出電極5,6を覆うように配置されて、水分を吸収して電解質溶液となる潮解性物質7とが、設置され、検出電極5,6間に発生する起電力に基づいて、検出対象空間への水分の浸入を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象空間の水分を検出するセンサであって、
前記検出対象空間の内部に、イオン化傾向が異なる金属からなる一対の検出電極と、前記一対の検出電極を覆うように配置されて、水分を吸収して電解質溶液となる潮解性物質とが、設置され、
前記一対の検出電極間に発生する起電力に基づいて、前記検出対象空間への水分の浸入を検出する、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記検出対象空間が、不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間である、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記潮解性物質は、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、又は、炭酸カリウムのいずれかである、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記一対の検出電極の内の一方の検出電極が、亜鉛、鉄、又は、ニッケルのいずれかの金属からなり、他方の検出電極が、金、又は、白金のいずれかの金属からなる、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項5】
前記一対の検出電極が形成された絶縁性の基体が、前記検出対象空間の内部に設置され、
前記基体は、外周部に比べて中央部が下方へ窪んだ凹部となっており、前記凹部内に、前記潮解性物質が配置される、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項6】
前記基体が、水晶又はガラスからなる、
請求項5に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関し、更に詳しくは、例えば、気密封止されたパッケージの内部空間に浸入した水分の検出に好適なセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水分を検出するセンサ、例えば、湿度センサには、2つの電極間に、感湿膜を介在させ、湿度による前記2つの電極間の容量値またはインピーダンスの変化に基づいて、湿度を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-94663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように2つの電極間の容量値やインピーダンスの変化を検出するセンサでは、2つの電極間に常時電流を流しておく必要があり、電力を消費するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、電力を消費することなく、水分を検出できるセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0007】
(1)本発明に係るセンサは、検出対象空間の水分を検出するセンサであって、前記検出対象空間の内部に、イオン化傾向が異なる金属からなる一対の検出電極と、前記一対の検出電極を覆うように配置されて、水分を吸収して電解質溶液となる潮解性物質とが、設置され、前記一対の検出電極間に発生する起電力に基づいて、前記検出対象空間への水分の浸入を検出する。
【0008】
本発明に係るセンサによると、検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、イオン化傾向が異なる金属からなる一対の検出電極を覆う潮解性物質が、水分を吸収して電解質溶液となり、一対の検出電極間に起電力が発生する。すなわち、検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、化学電池が構成されて起電力が発生するので、この起電力に基づいて、水分を含む大気の浸入を検出することができる。
【0009】
このように本発明に係るセンサでは、2つの電極間の容量値やインピーダンスの変化を検出する従来のセンサのように、2つの電極間に電流を流しておく必要がないので、電力消費がなく、いわゆる、省エネを図ることができる。
【0010】
また、単純な構成の化学電池を構成して水分を検出するので、当該センサの構成を簡素化することができ、小型化が容易である。
【0011】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記検出対象空間が、不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間である。
【0012】
この実施態様によると、不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間を検出対象空間とするので、例えば、浸入した水分によって劣化して特性が低下するような各種の素子が収容された電子デバイスのパッケージの内部空間を検出対象空間とし、その気密状態の監視を簡便な構成で行うことができる。
【0013】
(3)本発明の他の実施態様では、前記潮解性物質は、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、又は、炭酸カリウムのいずれかである。
【0014】
この実施態様によると、潮解性が高く、水分を吸収して電解質溶液になり易い、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、及び、炭酸カリウムを、潮解性物質として好適に使用することができる。
【0015】
(4)本発明の更に他の実施態様では、前記一対の検出電極の内の一方の検出電極が、亜鉛、鉄、又は、ニッケルのいずれかの金属からなり、他方の検出電極が、金、又は、白金のいずれかの金属からなる。
【0016】
この実施態様によると、イオン化傾向が小さく劣化しにくい金、又は、白金によって、電子を受け取る正極側となる一方の検出電極を構成し、イオン化傾向の大きい亜鉛、鉄、又は、ニッケルによって、電子を放出する負極側となる他方の検出電極を構成することができる。
【0017】
(5)本発明の一実施態様では、前記一対の検出電極が形成された絶縁性の基体が、前記検出対象空間の内部に設置され、前記基体は、外周部に比べて中央部が下方へ窪んだ凹部となっており、前記凹部内に、前記潮解性物質が配置される。
【0018】
この実施態様によると、一対の検出電極が形成された絶縁性の基体は、その中央部が下方へ窪んだ凹部となっており、この凹部内に、潮解性物質が配置されるので、水分を吸収して電解質溶液となった潮解性物質を、凹部内に安定して保持することができる。
【0019】
(6)本発明の他の実施態様では、前記基体が、水晶又はガラスからなる。
【0020】
この実施態様によると、基体の材料として、凹部を形成する際に使用する薬液等に対して耐性を有し、加工し易い水晶又はガラスを使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、化学電池が構成されて起電力が発生するので、この起電力に基づいて、検出対象空間への水分を含む大気の浸入を検出することができる。
【0022】
このように本発明に係るセンサでは、単純な構成の化学電池を構成して水分を検出するので、電力消費がなく、省エネを図ることができると共に、当該センサの構成を簡素化して、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明の一実施形態に係るセンサの概略構成を示す模式的な断面図である。
図2図2図1のセンサ本体の概略構成を示す摸式的な平面図である。
図3図3は潮解性物質が水分を吸収した状態の図1に対応する摸式的な断面図である。
図4図4は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図5図5は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図6図6は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図7図7は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図8図8は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図9図9は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図10図10は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図11図11は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図12図12図11のセンサ本体の概略構成を示す摸式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサの概略構成を示す模式的な断面図であり、図2は、図1のセンサ本体2の概略構成を示す摸式的な平面図である。
【0026】
この実施形態のセンサ1は、検出対象空間に浸入した水分を検出するものであり、浸入した水分によって起電力を発生するセンサ本体2と、センサ本体2で発生する起電力に基づいて、水分の浸入の有無を判定する判定部3とを備えている。
【0027】
センサ本体2は、凹部8を有する平面視の外形が矩形の基体4と、この基体4の上面に形成された一対の検出電極5,6と、両検出電極5,6上に配置された潮解性物質7とを備えている。
【0028】
センサ本体2は、浸入した水分を検出する検出対象空間内に設置される。検出対象空間は、例えば、浸入した水分によって劣化し、特性が変動するような各種の素子が収容されたパッケージの内部空間などである。
【0029】
このパッケージは、例えば、光トランシーバ等の各種の電子デバイスのパッケージであって、窒素ガス等の不活性ガスや乾燥空気で気密封止されたパッケージである。
【0030】
このような電子デバイスのパッケージ内に設置されるセンサ本体2は小型である。この実施形態では、平面視の外形が矩形の基体4のサイズは、例えば、3mm×2mmである。センサ本体2の外形サイズは、特に限定されず、当該センサ本体2が設置される検出対象空間のサイズなどに応じて適宜選択される。
【0031】
基体4は、絶縁性材料、例えば、水晶、ガラス、セラミック、あるいは、ガラスエポキシ等からなる。この実施形態では、基体4は水晶からなり、矩形板状である。この基体4には、エッチングによって、その中央部に、外周部に比べて下方へ窪んだ平面視矩形の前記凹部8が形成されている。この基体4は、平面視矩形の底壁部4aと、この底壁部4aの外周部に連なる平面視矩形環状の周壁部4bとを備えており、底壁部4aと周壁部4bとによって凹部8が構成される。
【0032】
平面視矩形の凹部8の内底面には、長辺方向(図1図2の左右方向)の中央部から、互いに間隔をあけて、対向する各短辺へ向けてそれぞれ延びる平面視矩形の前記一対の検出電極5,6が形成されている。各検出電極5,6は、前記各短辺へ向けて延び、更に、各短辺に連なる周壁部4bの内面及び上面までそれぞれ延びている。各検出電極5,6の延出端である各周壁部4bの上面には、導電性のワイヤ-9,10が電気的に接続されており、各検出電極5,6は、各ワイヤ-9,10を介して判定部3に電気的に接続されている。
【0033】
平面視矩形の各検出電極5,6は、平面視矩形の凹部8の短辺方向(図2の上下方向)に沿う幅よりもやや狭い幅となっている。
【0034】
各検出電極5,6は、イオン化傾向が異なる金属でそれぞれ構成されている。各検出電極5,6は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法によって形成されている。
【0035】
潮解性物質7は、水分を吸収し、吸収した水分に溶解して電解質溶液となる。この潮解性物質7は、基体4の凹部8内に、各検出電極5,6に跨って、両検出電極5,6を覆うように収容されている。
【0036】
潮解性物質7は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で、固体状態の潮解性物質7を凹部8内に収容する。あるいは、検出電極5,6間が電気的に接続されていない状態で、潮解性物質7の水溶液、すなわち、電解質溶液を、凹部8内に滴下し、その後、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で、加熱して水分を蒸発させることによって、電解質溶液を、固体状態の潮解性物質7としてもよい。
【0037】
このように潮解性物質7は、基体4の窪んだ凹部8内に収容されているので、水分を吸収して電解質溶液となったときに、凹部8内の検出電極5,6上に止まり、検出電極5,6の外側へ流出するのを防止することができる。
【0038】
水分を吸収した潮解性物質7が、電解質溶液として、検出電極5,6上に円滑に広がるように、潮解性物質7を配置する前に、検出電極5,6の表面を、予めアッシングやUV照射によって清浄化し、濡れ性を向上させてもよい。
【0039】
一対の検出電極5,6の内の一方の検出電極5は、金(Au)や白金(Pt)等の貴金属、この実施形態では、金からなる。他方の検出電極6は、イオン化傾向の大きい亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)等の卑金属、この実施形態では、亜鉛からなる。一方の検出電極5は、金(Au)等に代えて、銅(Cu)で構成してもよい。
【0040】
水晶からなる基体4と、各検出電極5,6を構成する金属との密着性を高めるために、基体4上に、クロム(Cr)等の下地金属膜を形成し、下地金属膜上に、各検出電極5,6を構成する金属を形成するのが好ましい。
【0041】
水分を吸収して電解質溶液となる潮解性物質7としては、潮解性が高く、水分を吸収して電解質溶液になり易い、例えば、塩化カルシウム(CaCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、塩化マグネシウム(MgCl)、クエン酸(C)、炭酸カリウム(K)のいずれかであるのが好ましい。この実施形態の潮解性物質7は、潮解性が高く、安価な塩化カルシウムである。
【0042】
各検出電極5,6にワイヤ-9,10を介して電気的に接続される判定部3は、各検出電極5,6間に起電力が生じたか否かを判定できればよい。この判定部3は、検出対象空間となるパッケージを備えた電子デバイスに設けるのが好ましい。
【0043】
この実施形態では、検出対象空間に水分を含む大気が浸入すると、潮解性物質が、水分を吸収して電解質溶液となり、一方の検出電極5、電解質溶液、他方の検出電極6が、後述のように化学電池を構成する。このとき、正極となる一方の検出電極5と、負極となる他方の検出電極6との間に起電力、例えば、0.8V程度の起電力が発生する。この起電力によって、例えば、電子デバイスに設けられた判定部3によって、水分が浸入したことを検出することができるので、適宜の報知部、例えば、発光素子(LED)を点灯させて、水分が浸入したことを報知することが可能である。
【0044】
この実施形態のセンサ1は、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で、電子デバイスのパッケージの内部空間に組み込まれ、各検出電極5,6に接続された各ワイヤ-9,10を、例えば、電子デバイスに設けられた判定部3に接続して気密に封止される。なお、判定部3は、電子デバイスのパッケージ内に収容されてもよいし、パッケージ外に設置してもよい。
【0045】
なお、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で作業できない場合、すなわち、水分を含む大気の下で作業を行う場合には、潮解性物質7が水分を吸収して電解質溶液となるが、各検出電極5,6と判定部3との接続を遮断して電子の移動を禁止した状態で作業を行い、最後に、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で、加熱して、電解質溶液の水分を蒸発させて固体状態の潮解性物質7とし、各検出電極5,6を、判定部3に接続すればよい。
【0046】
この実施形態では、上記のように、一対の検出電極5,6の内の一方の検出電極5は金からなり、他方の検出電極6は亜鉛からなる。
【0047】
一方の検出電極5を構成する金のイオン化傾向をIAu、他方の検出電極6を構成する亜鉛のイオン化傾向をIzn、水素のイオン化傾向をIとすると、イオン化傾向IAu、Izn、Iの大小関係は次のようになる。なお、水素イオンは、水分を吸収して生じる電解質溶液に含まれる。
【0048】
zn>I>IAu
この実施形態では、センサ本体2が設置されている検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、潮解性物質7である塩化カルシウムが水分を吸収し、図3に示すように、吸収した水分に溶解して電解質溶液7Lとなって、一対の検出電極5,6上に広がる。
【0049】
なお、図1では、固体状態の潮解性物質7の表面は、平面状であり、図3では、水分を吸収し、吸収した水分に溶解した電解質溶液7Lの表面は、丸味を帯びた曲面状となっている。これは誇張して例示したものであって、潮解性物質7の量によっては、固体状態あるいは溶液状態によらず、その表面は、平面状、曲面状、あるいは、凹凸状となる場合がある。
【0050】
電解質溶液7Lが、一対の検出電極5,6上に広がると、イオン化傾向Iznが大きい他方の検出電極6の亜鉛が、電解質溶液7Lに溶け出す。
【0051】
このとき、亜鉛Znが、酸化されて亜鉛イオンZn2+になり、電子を放出する。すなわち、他方の検出電極6は、電子を放出する負極となる。
【0052】
負極では、次の反応が生じる。
【0053】
Zn→Zn2++2e
他方の検出電極6で発生した電子eが、ワイヤ-10、判定部3、及び、ワイヤ-9を介して一方の検出電極5へ流れ込む。
【0054】
このとき、電子eが判定部3を通過することで、判定部3で水分の浸入が検出される。
【0055】
一方の検出電極5では、流れ込んできた電子eを受け取り、電解質溶液7L中のイオン化傾向が小さい陽イオンである水素イオンHが電子eと結合し、還元されて水素Hとなる。すなわち、金からなる一方の検出電極5は、電子eを受け取る正極となる。
【0056】
正極では、次の反応が生じる。
【0057】
2H+2e→H
以上のように、本実施形態では、検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、下記の電池式で示される化学電池が構成される。
【0058】
(-)Zn|CaCl(aq)|Au(+)
検出対象空間を、電子デバイスの不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間とし、長期間が経過した後に、本実施形態のセンサ1によって、パッケージの内部空間への水分を含む大気の浸入を検出した場合には、電子デバイスの経年劣化によって水分を含む大気がパッケージ内に浸入し、電子デバイスの寿命であると判断することができる。
【0059】
また、水分を含む空気の浸入を早期に検出した場合には、電子デバイスのパッケージの気密封止が不完全であると判断することができる。
【0060】
このようにして、電子デバイスの気密封止されたパッケージ内への水分を含む大気の浸入を監視することができる。
【0061】
従来の湿度センサでは、2つの電極間の容量値やインピーダンスの変化を検出するので、常に2つの電極間に電圧を印加しなければならず、電力消費が生じる。
【0062】
これに対して、本実施形態のセンサ1では、電力を消費することなく、検出対象空間へ浸入した水分を検出することができ、電源を必要としない。
【0063】
また、センサ本体2は、基体4上の一対の検出電極5,6を覆うように、電解質溶液となる潮解性物質7を配置するという簡単な構成であるので、小型化が容易であると共に、安価である。
【0064】
[第2実施形態]
図4は、本発明の他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0065】
この実施形態のセンサ本体2は、基体4の凹部8内に収容された潮解性物質7を覆うように、透湿性を有する蓋体13が、例えば、接着剤によって基体4の周壁部4bの上面に接合されている。
【0066】
この蓋体13は、透湿性を有する樹脂、例えば、熱可塑性樹脂から構成されるのが好ましい。蓋体13を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミド、セロファン、ポリエチレン、アクリルなどであるのが好ましく、この実施形態では、蓋体13は、ポリイミドからなる。
【0067】
その他の構成は、上記図1のセンサ1と同様である。
【0068】
このように基体4の凹部8内の潮解性物質7は、透湿性を有する蓋体13によって覆われているので、当該センサ本体2aを電子デバイスのパッケージ内に収容する作業を、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で行えないような場合であっても、その作業を行う比較的短い時間、例えば、数時間内に、大気中の水分が蓋体13を透過して基体4の凹部8内に浸入することはない。
【0069】
一方、電子デバイスのパッケージが経年劣化して、パッケージ内に浸入した大気に含まれる水分を検出するような用途では、パッケージ内に水分を含む大気が浸入したら直ちに検出して報知する必要はなく、水分が、透湿性を有する蓋体13を透過する程度の時間遅れが生じても差支えない。
【0070】
したがって、不活性ガス雰囲気や乾燥空気雰囲気ではなく、大気中でセンサ本体2を、電子デバイスのパッケージの内部空間に組込む作業が必要な場合などに好適である。
【0071】
また、蓋体13によって、凹部8内の潮解性物質7を物理的に保護することができ、取扱い易いものとなる。
【0072】
なお、蓋体13に微小な貫通孔を多数形成し、水分を含む空気の浸入を迅速に検出できるようにしてもよい。
【0073】
[第3実施形態]
図5は、本発明の他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、図4に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0074】
この実施形態では、基体4の底壁部4aの上面は、平面視で矩形環状の周壁部4bの内周に沿って低い窪みが形成されている。したがって、この窪みに囲まれた中央側の領域、すなわち、潮解性物質7が配置される領域は、窪みよりも高くなっている。
【0075】
これによって、潮解性物質7が水分を吸収して電解質溶液となった場合に、電解質溶液が、窪みによって外側へ広がるのが抑制され、電解質溶液を、窪みで囲まれた中央側の領域に止めることができる。
【0076】
したがって、センサ本体2が傾いたり、振動を受けたような場合に、水分を吸収して電解質溶液となった潮解性物質7が、窪みで囲まれた中央側の領域から外側の領域へ流出するのを抑制することができる。
【0077】
上記図2の模式的な平面図に示すように、基体4の平面視矩形の凹部8に収容される潮解性物質7は、長辺方向(図2の左右方向)の中央部における周壁部4bの内面との距離が、短辺方向(図2の上下方向)の中央部における周壁部4bの内面との距離に比べて短い。このため、周壁部4bの長辺に沿って延びる窪みの幅を、周壁部4bの短辺に沿って延びる窪みの幅より小さくしている。
【0078】
その他の構成は、図4の実施形態と同様である。
【0079】
[第4実施形態]
図6は、本発明の更に他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、図5に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0080】
上記図5に示される実施形態では、基体4の底壁部4aの上面は、平面視矩形環状の周壁部4bの内周に沿って低い窪みを形成したが、この実施形態では、基体4の底壁部4aの上面は、凹部8の中央部、すなわち、潮解性物質7が配置される領域の中央部を、その周囲に比べて低い窪みに形成している。
【0081】
これによって、潮解性物質7が水分を吸収して電解質溶液となった場合に、電解質溶液を、凹部8の中央部の低くなっている窪みに止めることができるので、センサ本体2が傾いたり、振動を受けたような場合に、水分を吸収して電解質溶液となった潮解性物質7が、窪んだ中央部から外側の領域へ流れ出るのを抑制することができる。
【0082】
この実施形態では、中央部の窪みの平面形状は、凹部8と同じ矩形としているが、円形や楕円形等の他の形状であってもよい。
【0083】
その他の構成は、図5の実施形態と同様である。
【0084】
[第5実施形態]
上記図5及び図6の各実施形態では、基体4,4の底壁部4a,4aの上面には、窪みによって段差が形成されているが、この実施形態では、図7に示すように、センサ本体2の基体4の底壁部4aの上面は、平面視矩形の凹部8の中心へ向かって先下がり傾斜したテーパ面となっている。
【0085】
このテーパ面は、水晶からなる基体4を、ドライエッチングして形成してもよいし、基体4をセラミック等で構成し、機械加工によって形成してもよい。
【0086】
このように基体4の底壁部4aの上面は、凹部8の中心へ向かって先下がり傾斜したテーパ面となっているので、潮解性物質7が水分を吸収して電解質溶液となった場合に、凹部8の中心部に集まり易くなり、傾きや振動による影響を一層低減することができる。
【0087】
その他の構成は、図5の実施形態と同様である。
【0088】
[第6実施形態]
図8は、本発明の更に他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、上記図4に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0089】
上記各実施形態では、一対の検出電極5,6は、導電性のワイヤ-9,10を介して判定部3にそれぞれ電気的に接続されている。
【0090】
この実施形態では、基体4の上面の各検出電極5,6は、底壁部4aを貫通する内部導体14,15によって、基体4の外底面の各外部接続端子16,17にそれぞれ導通接続されている。
【0091】
すなわち、この実施形態では、センサ本体2は、例えば、電子デバイスの検出対象空間であるパッケージ内の基板に、各外部接続端子16,17が接合されて、電子デバイスに設けられた判定部3に電気的に接続される。
【0092】
その他の構成は、図4の実施形態と同様である。
【0093】
[第7実施形態]
上記の各実施形態では、中央部が下方へ窪んだ凹部8を有する基体4,4~4の周壁部4bの上面に、凹部8に収容された潮解性物質7を覆うように、平板状の蓋体13を装着した。
【0094】
この実施形態では、図9に示すように、一対の検出電極5,6が形成された基体4は、平板状であり、この基体4の上面に、検出電極5,6上に配置された潮解性物質7を覆うように、蓋体20が装着される。
【0095】
この実施形態の蓋体20は、平板状の基板部20aと、この基板部20aの周縁部から下方へ延びる側板部20bとを備えている。この蓋体20は、基板部20aと側板部20bとによって、凹部18が形成されるキャップ状の蓋体である。
【0096】
この実施形態では、平板状の基体4の上面に、キャップ状の蓋体20が、透湿性の低い接着剤などによって接合される。このようにキャップ状の蓋体20を、平板状の基体4に接合するので、水分を吸収して電解質溶液となった潮解性物質7が蓋体20の外側へ漏れるのを防止することができる。
【0097】
その他の構成は、図4の実施形態と同様である。
【0098】
[第8実施形態]
図10は、本発明の更に他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、図9に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0099】
この実施形態では、平板状の基体4には、キャップ状の蓋体20の側板部20bの下端部が嵌合する浅い嵌合溝が形成されている。
【0100】
キャップ状の蓋体20は、その側板部20bの下端部が、平板状の基体4の嵌合溝に嵌合されて接着剤など接合される。
【0101】
これによって、水分を吸収して電解質溶液となった潮解性物質7が、蓋体20の外側へ漏れるのを確実に防止することができる。
【0102】
その他の構成は、図9の実施形態と同様である。
【0103】
[第9実施形態]
図11は、本発明の他の実施形態に係るセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、図12は、その模式的な概略平面図である。なお、図12では、潮解性物質7及び蓋体13の外形を、仮想線及び破線で示している。
【0104】
上記各実施形態のセンサ本体2,2~2は、基体4,4~4の平面視の外形形状が矩形であったが、この実施形態では、基体4の平面視の外形形状は、円形である。すなわち、基体4は、平面視円形の底壁部4aと、この底壁部4aの外周部に連なる平面視円環状の周壁部4bとを備えている。平面視円形の凹部8を覆う蓋体13は、平面視円形である。
【0105】
一方の検出電極5は、円形の凹部8の中心を囲むように形成されたC字状の検出電極部5aと、この検出電極部5aから周方向の一端側の周壁部4bの上面に引き出された接続電極部5bとを備えている。
【0106】
他方の検出電極6は、円形の凹部8の中心部に形成された円形の検出電極部6aと、この検出電極部6aの外周端から周方向の他端側の周壁部4bの上面に引き出された接続電極部6bとを備えている。
【0107】
一方の検出電極部5aは、他方の検出電極部6aとの間に一定の間隔をあけて、他方の検出電極部6aを囲むように同心円状に形成されている。
【0108】
一方の検出電極5の接続電極部5bと他方の検出電極6の接続電極部6bとは、導電性のワイヤ-9,10を介して判定部に電気的に接続されている。
【0109】
潮解性物質7は、円形の凹部8の中央部に、他方の検出電極6の円形の検出電極部6aを覆うと共に、一方の検出電極5の検出電極部5aの内周側の一部を覆うように配置される。
【0110】
この実施形態によれば、一方と他方の検出電極部5a,6aが互いに同心円状に形成されているので、電解質溶液の表面張力による平面視形状を円形に近づけることができる。そのため、電解質溶液が検出電極部5a,6aに均等に拡がりやすくなり、起電力を安定して発生させることができる。
【0111】
また、同心円状の一方と他方の検出電極部5a,6a同士の対向する部分の円周方向に沿う長さを確保することができる。そのため、センサ本体2が傾いたり、振動を受けたような場合に、水分を吸収して電解質溶液となった潮解性物質が、両検出電極部5a,6aをより確実に覆うようにすることができる。
【0112】
その他の構成は、図4の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0113】
1 センサ
2,2~2 センサ本体
3 判定部
4,4~4 基体
5,5 検出電極(一方)
6,6 検出電極(他方)
7 潮解性物質
7L 電解質溶液
8,8,18 凹部
9,10 ワイヤ-
13,13,20 蓋体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12