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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179558
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241219BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098498
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一安 健志郎
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770JA19X
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子を並列接続した半導体モジュールの信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体モジュールは、第1入力電極および第1出力電極を有する第1半導体スイッチング素子と、第2入力電極および第2出力電極を有する第2半導体スイッチング素子と、電流の入力を受ける入力部と、第1入力電極と入力部とを電気的に接続する第1接続部と、第2入力電極と入力部とを電気的に接続する第2接続部と、第1出力電極および第2出力電極に電気的に接続される出力部と、を備え、第1接続部および第2接続部のそれぞれは、入力部を構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される部材を電流経路として含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力電極および第1出力電極を有する第1半導体スイッチング素子と、
第2入力電極および第2出力電極を有する第2半導体スイッチング素子と、
電流の入力を受ける入力部と、
前記第1入力電極と前記入力部とを電気的に接続する第1接続部と、
前記第2入力電極と前記入力部とを電気的に接続する第2接続部と、
前記第1出力電極および前記第2出力電極に電気的に接続される出力部と、を備え、
前記第1接続部および前記第2接続部のそれぞれは、前記入力部を構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい抵抗温度係数を有する材料で構成される部材を電流経路として含む、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1半導体スイッチング素子および前記第2半導体スイッチング素子を支持する基板をさらに備え、
前記第1接続部および前記第2接続部のそれぞれは、前記基板に設けられる導体パターンである、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第1接続部は、
前記第1入力電極に電気的に接続される第1パッドと、
前記入力部と前記第1パッドとを電気的に接続する第1配線と、を含み、
前記第2接続部は、
前記第2入力電極に電気的に接続される第2パッドと、
前記入力部と前記第2パッドとを電気的に接続する第2配線と、を含み、
前記第1配線および前記第2配線のそれぞれは、前記部材を含む、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記部材は、ニッケルまたはニッケル合金で構成される、
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記部材の断面積をS[mm]とし、前記部材の長さをL[mm]としたとき、
10≦L/S≦25の関係を満たす、
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1配線および前記第2配線のそれぞれは、平面視で蛇行形状の部分を有する、
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記第1配線は、平面視で、前記第1パッドの周囲に沿って延びる形状の部分を有し、
前記第2配線は、平面視で、前記第2パッドの周囲に沿って延びる形状の部分を有する、
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記第1配線は、平面視で、前記第2パッドに対して遠ざかるように配置され、
前記第2配線は、平面視で、前記第1パッドに対して遠ざかるように配置される、
請求項7に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記第1パッドおよび前記第2パッドのそれぞれは、平面視で四角形をなしており、
前記第1配線は、平面視で、前記第1パッドの2辺または3辺に沿って延びる形状をなし、
前記第2配線は、平面視で、前記第2パッドの2辺または3辺に沿って延びる形状をなす、
請求項8に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記第1接続部は、前記第1入力電極と前記第1パッドとの間に配置される第1シート部材を含み、
前記第2接続部は、前記第2入力電極と前記第2パッドとの間に配置される第2シート部材を含み、
前記第1シート部材および前記第2シート部材のそれぞれは、所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料で構成される、
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記基板は、前記入力部を構成する入力パターンを有し、
前記第1接続部は、前記第1入力電極と前記入力パターンとの間に配置される第1シート部材を含み、
前記第2接続部は、前記第2入力電極と前記入力パターンとの間に配置される第2シート部材を含み、
前記第1シート部材および前記第2シート部材のそれぞれは、前記部材であり、所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料で構成される、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールに代表される半導体モジュールでは、例えば、特許文献1から3に開示されるように、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子等の複数のスイッチング素子を電気的に並列に接続する場合がある。
【0003】
特許文献1に記載の半導体モジュールでは、並列接続される複数のパワー半導体素子の各主電流経路において、特定温度で相転移により抵抗値の上昇する制御素子がパワー半導体素子に直列に接続される。この制御素子の作用により、並列回路間の電流のアンバランスが緩和される。これにより、特定のパワー半導体素子にのみ電流が偏って流れることにより、当該特定のパワー半導体素子の過昇温による損傷が防止される。ここで、制御素子は、パワー半導体素子の出力側の電極であるエミッタ電極上に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-311983号公報
【特許文献2】特開2001-94035号公報
【特許文献3】特開2022-2380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の半導体モジュールでは、制御素子をパワー半導体素子のエミッタ電極上に接合する必要があるため、半導体モジュールの製造工程が大幅に複雑化してしまうので、低コスト化を図ることが難しいという問題がある。
【0006】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子を電気的に並列接続した半導体モジュールの信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る半導体モジュールは、第1入力電極および第1出力電極を有する第1半導体スイッチング素子と、第2入力電極および第2出力電極を有する第2半導体スイッチング素子と、電流の入力を受ける入力部と、前記第1入力電極と前記入力部とを電気的に接続する第1接続部と、前記第2入力電極と前記入力部とを電気的に接続する第2接続部と、前記第1出力電極および前記第2出力電極に電気的に接続される出力部と、を備え、前記第1接続部および前記第2接続部のそれぞれは、前記入力部を構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される部材を電流経路として含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図2図1中のA-A線断面図である。
図3図1中のB-B線断面図である。
図4図1に示す半導体モジュールの回路図である。
図5】第1実施形態の第1接続部および第2接続部を説明するための平面図である。
図6】第2実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図7】第3実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図8】第4実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図9】第5実施形態に係る半導体モジュールの断面図である。
図10】第6実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図11図10中のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.半導体モジュールの全体構成
図1は、第1実施形態に係る半導体モジュール100の平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。図3は、図1中のB-B線断面図である。図4は、図1に示す半導体モジュール100の回路図である。なお、図1では、見やすさの便宜上、後述の外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略される。図3では、見やすさの便宜上、後述のワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2、外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略される。
【0011】
半導体モジュール100は、インバーター回路等の電力変換装置に用いられるパワー半導体モジュールである。図1から図3に示すように、半導体モジュール100は、基板10と第1半導体スイッチング素子20-1と第2半導体スイッチング素子20-2とベース30とケース40とワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2と外部入力端子61と外部出力端子62と制御端子63とを備える。
【0012】
以下、まず、図1から図3に基づいて、半導体モジュール100の各部の概略を順次説明する。以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて半導体モジュール100の各部を説明する。Z軸は、半導体モジュール100の厚さ方向または高さ方向に平行な軸である。以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向とは反対の方向がX2方向である。Y軸に沿う一方向がY1方向であり、Y1方向とは反対の方向がY2方向である。Z軸に沿う一方向がZ1方向であり、Z1方向とは反対の方向がZ2方向である。これらの方向と鉛直方向との関係は、特に限定されず、任意である。また、以下では、Z軸に沿う方向にみることを「平面視」という場合がある。
【0013】
なお、以下では、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のそれぞれを区別せずに半導体スイッチング素子20という場合がある。
【0014】
基板10は、ケース40内に収容され、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2を支持する基板である。基板10としては、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazing)基板、またはIMS(Insulated Metal Substrate)等の基板が用いられる。なお、基板10の平面視形状は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0015】
図2および図3に示すように、基板10は、絶縁基板11と導体パターン群12と金属層13とを有する。
【0016】
絶縁基板11は、絶縁性の板状部材であり、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化ケイ素等のセラミックスで構成される。絶縁基板11の一方の面には、導体パターン群12が設けられ、他方の面には、金属層13が設けられる。
【0017】
導体パターン群12は、絶縁基板11のZ1方向を向く面に接合される複数の導体パターンからなる群である。図1に示すように、導体パターン群12は、入力部12aと第1パッド12b-1と第2パッド12b-2と第1配線12c-1と第2配線12c-2と出力部12dと制御用パターン12eとを有する。
【0018】
入力部12aは、外部入力端子61から電流の入力を受ける導体パターンである。入力部12aには、図1中の二点鎖線で示す領域CT1において外部入力端子61がはんだ等の導電性接合材により接合される。図1に示す例では、入力部12aがY軸に沿う方向に延びる形状をなす。なお、入力部12aおよび領域CT1のそれぞれの形状および位置は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、入力部12aは、第1半導体スイッチング素子20-1へ電流を供給するための部分と、第2半導体スイッチング素子20-2へ電流を供給するための部分と、に分割されてもよい。この場合、これらの部分が共通に接続される外部入力端子61が「入力部」に相当する。
【0019】
第1パッド12b-1は、第1半導体スイッチング素子20-1の裏面に接合される導体パターンである。このため、第1パッド12b-1は、第1入力電極22-1に電気的に接続される。第2パッド12b-2は、第2半導体スイッチング素子20-2の裏面に接合される導体パターンである。このため、第2パッド12b-2は、第2入力電極22-2に電気的に接続される。図1に示す例では、第1パッド12b-1および第2パッド12b-2が入力部12aに対してX2方向の位置においてY軸に沿う方向に並んで配置される。なお、第1パッド12b-1および第2パッド12b-2のそれぞれの形状および位置は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0020】
第1配線12c-1は、入力部12aと第1パッド12b-1とを電気的に接続する電流経路として機能する導体パターンである。すなわち、第1配線12c-1は、入力部12aに接続される一端と第1パッド12b-1に接続される他端とを有する配線を構成する導体パターンである。第2配線12c-2は、入力部12aと第2パッド12b-2とを電気的に接続する電流経路として機能する導体パターンである。すなわち、第2配線12c-2は、入力部12aに接続される一端と第2パッド12b-2に接続される他端とを有する配線を構成する導体パターンである。図1に示す例では、第1配線12c-1が入力部12aと第1パッド12b-1との間に位置するとともに、第2配線12c-2が入力部12aと第2パッド12b-2との間に位置しており、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれがX軸に沿う方向に直線的に延びる形状をなす。なお、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれの形状および位置は、図1に示す例に限定されず、任意である。これらの配線の他の態様の一例については、後に第2実施形態から第6実施形態において説明する。ただし、後述の第1配線12c-1および第2配線12c-2の抵抗値変化の特性を揃える観点から、第1配線12c-1および第2配線12c-2の構成は、Y軸に沿う方向で対称であることが好ましい。
【0021】
出力部12dは、外部出力端子62へ電流を出力するための導体パターンである。出力部12dには、図1中の二点鎖線で示す領域CT2において外部出力端子62がはんだ等の導電性接合材により接合される。出力部12dは、入力部12aと第1パッド12b-1と第2パッド12b-2と第1配線12c-1と第2配線12c-2と制御用パターン12eとのそれぞれに対して間隔をあけて配置される。図1に示す例では、出力部12dが入力部12aに対してX1方向の位置においてY軸に沿う方向に延びる形状をなす。なお、出力部12dおよび領域CT2のそれぞれの形状および位置は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、出力部12dは、第1半導体スイッチング素子20-1からの出力電流を受ける部分と、第2半導体スイッチング素子20-2からの出力電流を受ける部分と、に分割されてもよい。この場合、これらの部分が共通に接続される外部出力端子62が「出力部」に相当する。
【0022】
制御用パターン12eは、制御端子63から制御用の信号を受ける導体パターンである。制御用パターン12eには、図1中の二点鎖線で示す領域CT3において制御端子63がはんだ等の導電性接合材により接合される。制御用パターン12eは、入力部12aと第1パッド12b-1と第2パッド12b-2と第1配線12c-1と第2配線12c-2と出力部12dとのそれぞれに対して間隔をあけて配置される。図1に示す例では、制御用パターン12eが第1パッド12b-1および第2パッド12b-2に対してX2方向の位置においてY軸に沿う方向に延びる形状をなす。なお、制御用パターン12eおよび領域CT3のそれぞれの形状および位置は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0023】
以上の導体パターン群12を構成する複数の要素のうち、第1配線12c-1と第2配線12c-2とを除く要素は、例えば、銅またはアルミニウム等の高熱伝導性の金属材料で構成される。なお、入力部12aと第1パッド12b-1と第2パッド12b-2と出力部12dと制御用パターン12eとの表面には、ニッケルめっき等のめっき処理が施されてもよい。
【0024】
これに対し、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれは、前述の入力部12a等を構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される部材である。当該部材の詳細については、後に図5に基づいて説明する。なお、以下では、当該部材を「抵抗変化部材」という場合がある。
【0025】
一方、金属層13は、絶縁基板11のZ2方向を向く面に接合される金属板である。金属層13は、例えば、銅またはアルミニウム等の金属で構成される。金属層13は、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2からの熱をベース30に逃がすための層であり、ベース30に半田等の導電性接合材により接合される。
【0026】
第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のそれぞれは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはパワーMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等のスイッチング素子である。
【0027】
図3に示すように、第1半導体スイッチング素子20-1は、第1出力電極21-1と第1入力電極22-1と制御電極23-1とを有する。第1入力電極22-1は、第1半導体スイッチング素子20-1の裏面に設けられるドレイン電極またはコレクタ電極である。第1出力電極21-1は、第1半導体スイッチング素子20-1のおもて面に設けられるソース電極またはエミッタ電極である。制御電極23-1は、第1半導体スイッチング素子20-1のおもて面に設けられるゲート電極である。
【0028】
同様に、第2半導体スイッチング素子20-2は、第2出力電極21-2と第2入力電極22-2と制御電極23-2とを有する。第2入力電極22-2は、第2半導体スイッチング素子20-2の裏面に設けられるドレイン電極またはコレクタ電極である。第2出力電極21-2は、第2半導体スイッチング素子20-2のおもて面に設けられるソース電極またはエミッタ電極である。制御電極23-2は、第2半導体スイッチング素子20-2のおもて面に設けられるゲート電極である。
【0029】
本実施形態では、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のそれぞれがIGBTおよびFWD(Free Wheeling Diode)の両機能を有するRC(Reverse-Conducting)-IGBT等の素子である。すなわち、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のそれぞれは、当該スイッチング素子のほか、FWD等のダイオードを含む。したがって、第1入力電極22-1および第2入力電極22-2のそれぞれは、ドレイン電極またはコレクタ電極としてだけでなく、カソード電極としても機能する。また、第1出力電極21-1および第2出力電極21-2のそれぞれは、ソース電極またはエミッタ電極としてだけでなく、アノード電極としても機能する。なお、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のそれぞれは、IGBTのみで構成されてもよい。この場合、FWDが第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2とは別に基板10上に搭載されてもよい。また、FWDは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。すなわち、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のそれぞれは、IGBT等のスイッチング素子を含んでいればよい。
【0030】
ここで、図3に示すように、第1入力電極22-1は、前述の基板10の第1パッド12b-1のZ1方向を向く面にはんだ等の導電性接合材を介して接合される。これにより、第1入力電極22-1は、第1パッド12b-1および第1配線12c-1を介して入力部12aに電気的に接続される。ここで、第1パッド12b-1および第1配線12c-1は、第1接続部14-1を構成しており、入力部12aと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。
【0031】
同様に、第2入力電極22-2は、前述の基板10の第2パッド12b-2のZ1方向を向く面にはんだ等の導電性接合材を介して接合される。これにより、第2入力電極22-2は、第2パッド12b-2および第2配線12c-2を介して入力部12aに電気的に接続される。ここで、第2パッド12b-2および第2配線12c-2は、第2接続部14-2を構成しており、入力部12aと第2入力電極22-2とを電気的に接続する。
【0032】
このように、第1入力電極22-1および第2入力電極22-2は、入力部12aに電気的に並列に接続される。
【0033】
一方、第1出力電極21-1は、ワイヤー51-1を介して、前述の基板10の出力部12dに電気的に接続される。ワイヤー51-1は、第1出力電極21-1に接合される一端と出力部12dに接合される他端とを有するワイヤー群である。同様に、第2出力電極21-2は、ワイヤー51-2を介して、出力部12dに電気的に接続される。ワイヤー51-2は、第2出力電極21-2に接合される一端と出力部12dに接合される他端とを有するワイヤー群である。
【0034】
このように、第1出力電極21-1および第2出力電極21-2は、出力部12dに電気的に並列に接続される。
【0035】
制御電極23-1は、ワイヤー52-1を介して、前述の基板10の制御用パターン12eに電気的に接続される。ワイヤー52-1は、制御電極23-1に接合される一端と制御用パターン12eに接合される他端とを有するボンディングワイヤーである。同様に、制御電極23-2は、ワイヤー52-2を介して、制御用パターン12eに電気的に接続される。ワイヤー52-2は、制御電極23-2に接合される一端と制御用パターン12eに接合される他端とを有するボンディングワイヤーである。
【0036】
ベース30は、放熱用の板状部材であり、半導体モジュール100の底板を構成する。ベース30のZ1方向を向く面には、基板10が接合される。また、ベース30のZ2方向を向く面には、図示しない放熱フィン等の放熱部材が接合されてもよい。ベース30は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される金属板である。ベース30は、熱伝導性を有しており、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2からの熱を放熱する。また、ベース30は、導電性を有しており、例えば、接地電位等の基準電位に電気的に接続されてもよい。なお、ベース30の平面視形状は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0037】
ケース40は、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2を収容する枠状の部材である。図2および図3に示す例では、ケース40が、ベース30のZ1方向を向く面に接着剤等により接合される。ケース40は、実質的な絶縁体であり、例えば、PPS(Polyphenylene Sulfide)またはPBT(Polybutylene terephthalate)等の樹脂材料で構成されており、射出成形等により得られる。なお、当該樹脂材料には、ケース40の機械的強度または熱伝導性の向上等の観点から、ガラス繊維等の無機繊維が含有されてもよいし、アルミナまたはシリカ等の無機フィラーが含有されてもよい。なお、ケース40の形状は、図1から図3に示す例に限定されず、任意である。
【0038】
ケース40内には、図示しない封止樹脂が充填される。当該封止樹脂は、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2を覆うポッティング材である。当該封止樹脂は、例えば、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂で構成される。なお、当該封止樹脂には、熱伝導性を高めるためのシリカまたはアルミナ等の無機フィラーが含まれてもよいし、ゲル状であってもよい。
【0039】
外部入力端子61および外部出力端子62のそれぞれは、図示しないバスバー接続される端子である。外部入力端子61は、主電流の入力のための端子である。外部出力端子62は、主電流の出力のための端子である。外部入力端子61および外部出力端子62のそれぞれは、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金または鉄合金等の金属で構成されており、金属板の折り曲げ加工等により得られる。
【0040】
制御端子63は、制御用の信号の入力のための端子であり、図示しない基板に接続される。制御端子63は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金または鉄合金等の金属で構成されており、金属板の折り曲げ加工等により得られる。
【0041】
以上の半導体モジュール100では、図4に示すように、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2が電気的に並列に接続される。ここで、第1半導体スイッチング素子20-1は、内部抵抗R-1を有する。また、第2半導体スイッチング素子20-2は、内部抵抗R-2を有する。
【0042】
第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2では、製造バラつきまたは経年劣化等により、内部抵抗R-1と内部抵抗R-2との差が生じる場合がある。この場合、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2に供給される電流が互いに等しいと、当該差に起因して、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のうちの一方に対して電流が集中してしまう。この結果、当該一方の半導体スイッチング素子20が過昇温により劣化しやすくなる。
【0043】
そこで、このような半導体スイッチング素子20の劣化を低減するべく、前述のように、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれは、入力部12aを構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される抵抗変化部材を含む。以下、この点について、図5に基づいて説明する。
【0044】
1-2.第1接続部および第2接続部
図5は、第1実施形態の第1接続部14-1および第2接続部14-2を説明するための平面図である。なお、図5では、見やすさの便宜上、後述のワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2、外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略されるとともに、抵抗変化部材が網掛け表示される。
【0045】
半導体モジュール100では、図5に示すように、第1入力電極22-1および第2入力電極22-2の両方が入力部12aに電気的に接続されるとともに、第1出力電極21-1および第2出力電極21-2の両方が出力部12dに電気的に接続される。このため、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2が電気的に並列に接続される。
【0046】
ここで、前述のように、第1入力電極22-1が第1接続部14-1を介して入力部12aに電気的に接続されるとともに、第2入力電極22-2が第2接続部14-2を介して入力部12aに電気的に接続される。そのうえで、第1接続部14-1および第2接続部14-2のそれぞれが入力部12aを構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される抵抗変化部材を電流経路として含む。本実施形態では、前述の第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれが抵抗変化部材である。
【0047】
なお、「電流経路として含む」とは、電流が主に流れる経路を構成することである。このため、例えば、銅等の高導電性配線上にニッケルめっき等の低導電性層を積層した構成において、当該高導電性配線に主に電流が流れるため、当該低導電性層は、「電流経路として含む」に該当しない。
【0048】
第1接続部14-1は、第1半導体スイッチング素子20-1からの熱を受ける。このため、第1接続部14-1の抵抗値は、抵抗変化部材の作用により、第1半導体スイッチング素子20-1の昇温に伴って増加する。これにより、第1半導体スイッチング素子20-1の昇温に応じて第1半導体スイッチング素子20-1に入力される電流が減少する。一方、第2接続部14-2は、第2半導体スイッチング素子20-2からの熱を受ける。このため、第2接続部14-2の抵抗値は、抵抗変化部材の作用により、第2半導体スイッチング素子20-2の昇温に伴って増加する。これにより、第2半導体スイッチング素子20-2の昇温に応じて第2半導体スイッチング素子20-2に入力される電流が減少する。
【0049】
このように、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2が電気的に並列に接続される構成において、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のうちの一方に対する電流の集中を抑制することができる。この結果、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のうちの一方の電流アンバランスによる温度上昇および劣化を抑制することができる。また、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2の製造バラつきまたは経年劣化が生じても、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のうちの一方に対する電流の集中を抑制することにより、半導体モジュール100の特性低下を低減することができる。
【0050】
また、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2を支持する基板10にロウ付けなどにより抵抗変化部材を接合して設けることができる。このため、特許文献1のように抵抗変化部材を半導体スイッチング素子の出力電極上に設ける態様と比べて、半導体モジュール100の製造工程を簡単化することにより、半導体モジュール100の低コスト化を図ることができる。
【0051】
第1接続部14-1および第2接続部14-2のそれぞれは、前述のように、基板10に設けられる導体パターンである。このため、基板10の導体パターンを用いて抵抗変化部材を構成することができる。また、抵抗変化部材がボンディングワイヤーである態様に比べて、所望特性の第1接続部14-1および第2接続部14-2を容易に得ることができる。
【0052】
前述のように、第1接続部14-1が第1パッド12b-1と第1配線12c-1とを含んでおり、第1配線12c-1が抵抗変化部材である。同様に、第2接続部14-2が第2パッド12b-2と第2配線12c-2とを含んでおり、第2配線12c-2が抵抗変化部材である。このように、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれが抵抗変化部材を含むことにより、第1配線12c-1および第2配線12c-2の長さまたは形状等により、所望特性の抵抗変化部材を容易に得ることができる。
【0053】
ここで、抵抗変化部材を構成する材料の抵抗温度係数は、入力部12aを構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数であればよいが、0.005/℃以上0.007/℃以下であることが好ましく、0.006/℃以上0.007/℃以下であることがより好ましい。この場合、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のうちの一方の電流アンバランスによる温度上昇および劣化を好適に抑制することができる。
【0054】
例えば、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれを構成する抵抗変化部材は、ニッケルまたはニッケル合金で構成されることが好ましい。この場合、抵抗変化部材の温度変化による抵抗値変化を十分に大きくすることができる。この結果、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2のうちの一方の電流アンバランスによる温度上昇および劣化を好適に抑制することができる。
【0055】
なお、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれの構成材料は、ニッケルまたはニッケル合金等の金属に限定されず、後述の第6実施形態の第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のように所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料であってもよい。
【0056】
第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれを構成する抵抗変化部材の断面積をS[mm]とし、抵抗変化部材の長さをL[mm]としたとき、10≦L/S≦25の関係を満たすことが好ましく、15≦L/S≦20の関係を満たすことがより好ましい。この関係により、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2に対する電流のバランスを良好に維持することができる。特に、抵抗変化部材がニッケルまたはニッケル合金で構成される場合に第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2に対する電流のバランスをとりやすい。
【0057】
これに対し、L/Sが小さすぎると、抵抗変化部材の構成材料の種類等によっては、抵抗変化部材の温度変化による抵抗値変化が十分に得られない場合がある。一方、L/Sが大きすぎると、抵抗変化部材の抵抗が大きく損失が大きくなりすぎる場合がある。
【0058】
ここで、具体的な断面積Sは、特に限定されないが、例えば、1.0mm以上1.5mm以下である。また、具体的な長さL、すなわち第1配線12c-1の長さL1と第2配線12c-2の長さL2とのそれぞれは、特に限定されないが、例えば、15mm以上25mm以下である。第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれを構成する抵抗変化部材の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上3mm以下である。また、第1配線12c-1の幅W1と第2配線12c-2の幅W2とのそれぞれは、特に限定されないが、例えば、2.0mm以上3.0mm以下である。
【0059】
以上のように、第1実施形態では、第1接続部14-1および第2接続部14-2のそれぞれが抵抗変化部材を電流経路として含むことにより、低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子20を電気的に並列接続した半導体モジュール100の信頼性を向上させることができる。
【0060】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0061】
図6は、第2実施形態に係る半導体モジュール100Aの平面図である。半導体モジュール100Aは、第1実施形態の基板10に代えて基板10Aを備えること以外は、第1実施形態の半導体モジュール100と同様に構成される。なお、図6では、見やすさの便宜上、前述のワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2、外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略されるとともに、抵抗変化部材が網掛け表示される。
【0062】
基板10Aは、第1実施形態の導体パターン群12に代えて導体パターン群12Aを有すること以外は、第1実施形態の基板10と同様に構成される。導体パターン群12Aは、第1実施形態の第1配線12c-1および第2配線12c-2に代えて第1配線12f-1および第2配線12f-2を含むこと以外は、第2実施形態の導体パターン群12と同様に構成される。
【0063】
第1配線12f-1は、平面視形状が異なること以外は、第1実施形態の第1配線12c-1と同様に構成される。ここで、第1パッド12b-1および第1配線12f-1は、第1接続部14A-1を構成しており、入力部12aと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。第2配線12f-2は、平面視形状が異なること以外は、第1実施形態の第2配線12c-2と同様に構成される。ここで、第2パッド12b-2および第2配線12f-2は、第2接続部14A-2を構成しており、入力部12aと第2入力電極22-2とを電気的に接続する。
【0064】
具体的に説明すると、図6に示すように、第1配線12f-1は、平面視で、第1パッド12b-1から入力部12aに向けて、Y1方向とY2方向とに交互に蛇行しながらX1方向に延びる形状をなす。同様に、第2配線12f-2は、平面視で、第2パッド12b-2から入力部12aに向けて、Y1方向とY2方向とに交互に蛇行しながらX1方向に延びる形状をなす。
【0065】
図6に示す例では、第1配線12f-1および第2配線12f-2のそれぞれの長さ方向での一部が抵抗変化部材で構成される。そして、第1配線12f-1および第2配線12f-2のそれぞれの抵抗変化部材を構成する部分が平面視で蛇行形状をなす。なお、第1配線12f-1および第2配線12f-2のそれぞれの全部が抵抗変化部材で構成されてもよい。
【0066】
このように、第1配線12f-1および前記第2配線12f-2のそれぞれが平面視で蛇行形状の部分を有する。このため、当該部分を抵抗変化部材に用いることにより、抵抗変化部材を所望の長さとしつつ、抵抗変化部材を第1半導体スイッチング素子20-1または第2半導体スイッチング素子20-2に近づけることができる。この結果、第1半導体スイッチング素子20-1の温度上昇に対する第1配線12f-1の抵抗値上昇の応答性を高めたり、第2半導体スイッチング素子20-2の温度上昇に対する第2配線12f-2の抵抗値上昇の応答性を高めたりすることができる。
【0067】
なお、第1配線12f-1および第2配線12f-2のそれぞれの形状、折れ曲がり数、抵抗変化部材の範囲等は、図6に示す例に限定されない。例えば、第1配線12f-1および第2配線12f-2のそれぞれのすべてが抵抗変化部材で構成されてもよい。また、第1配線12f-1および第2配線12f-2のそれぞれの平面視形状が曲線に沿うように折れ曲がる形状であってもよい。
【0068】
以上のように、第2実施形態によっても、第1接続部14A-1および第2接続部14A-2のそれぞれが抵抗変化部材を電流経路として含むことにより、低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子20を電気的に並列接続した半導体モジュール100Aの信頼性を向上させることができる。
【0069】
3.第3実施形態
以下、本開示の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0070】
図7は、第3実施形態に係る半導体モジュール100Bの平面図である。半導体モジュール100Bは、第1実施形態の基板10に代えて基板10Bを備えること以外は、第1実施形態の半導体モジュール100と同様に構成される。なお、図7では、見やすさの便宜上、前述のワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2、外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略されるとともに、抵抗変化部材が網掛け表示される。
【0071】
基板10Bは、第1実施形態の導体パターン群12に代えて導体パターン群12Bを有すること以外は、第1実施形態の基板10と同様に構成される。導体パターン群12Bは、第1実施形態の第1配線12c-1および第2配線12c-2に代えて第1配線12g-1および第2配線12g-2を含むこと以外は、第2実施形態の導体パターン群12と同様に構成される。
【0072】
第1配線12g-1は、平面視形状が異なること以外は、第1実施形態の第1配線12c-1と同様に構成される。ここで、第1パッド12b-1および第1配線12g-1は、第1接続部14B-1を構成しており、入力部12aと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。第2配線12g-2は、平面視形状が異なること以外は、第1実施形態の第2配線12c-2と同様に構成される。ここで、第2パッド12b-2および第2配線12g-2は、第2接続部14B-2を構成しており、入力部12aと第2入力電極22-2とを電気的に接続する。
【0073】
具体的に説明すると、図7に示すように、第1パッド12b-1および第2パッド12b-2のそれぞれは、平面視でX軸に沿う1対の辺とY軸に沿う1対の辺とを有する四角形をなす。第1配線12g-1は、平面視で、第1パッド12b-1のX軸に沿う1対の辺のうちY2方向に位置する辺から、第1パッド12b-1の周囲に沿って延びた後に、入力部12aに向けて延びる形状をなす。ここで、第1配線12g-1は、平面視で、第1パッド12b-1のY2方向に位置する辺とX1方向に位置する辺とに沿って延びる。同様に、第2配線12g-2は、平面視で、第2パッド12b-2のX軸に沿う1対の辺のうちY1方向に位置する辺から、第2パッド12b-2の周囲に沿って延びた後に、入力部12aに向けて延びる形状をなす。ここで、第2配線12g-2は、平面視で、第2パッド12b-2のY1方向に位置する辺とX1方向に位置する辺とに沿って延びる。
【0074】
このように、第1配線12g-1は、平面視で、第1パッド12b-1の周囲に沿って延びる形状の部分を有する。同様に、第2配線12g-2は、平面視で、第2パッド12b-2の周囲に沿って延びる形状の部分を有する。このため、これらの部分のそれぞれを抵抗変化部材に用いることにより、抵抗変化部材を所望の長さとしつつ、抵抗変化部材を第1半導体スイッチング素子20-1または第2半導体スイッチング素子20-2に近づけることができる。この結果、第1半導体スイッチング素子20-1の温度上昇に対する第1配線12g-1の抵抗値上昇の応答性を高めたり、第2半導体スイッチング素子20-2の温度上昇に対する第2配線12g-2の抵抗値上昇の応答性を高めたりすることができる。
【0075】
図7に示す例では、第1配線12g-1および第2配線12g-2のそれぞれの長さ方向での一部が抵抗変化部材で構成される。そして、第1配線12g-1の抵抗変化部材を構成する部分が平面視で第1パッド12b-1の周囲に沿って延びる形状をなす。同様に、第2配線12g-2の抵抗変化部材を構成する部分が平面視で第2パッド12b-2の周囲に沿って延びる形状をなす。なお、第1配線12g-1および第2配線12g-2のそれぞれの全部が抵抗変化部材で構成されてもよい。
【0076】
また、第1配線12g-1は、平面視で、第2パッド12b-2に対して遠ざかるように配置される。同様に、第2配線12g-2は、平面視で、第1パッド12b-1に対して遠ざかるように配置される。このように第1配線12g-1および第2配線12g-2を配置することにより、第1配線12g-1に対する第2半導体スイッチング素子20-2の温度の影響を受け難くしたり、第2配線12g-2に対する第1半導体スイッチング素子20-1の温度の影響を受け難くしたりすることができる。これにより、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2に対する電流のバランスを良好に維持することができる。
【0077】
本実施形態では、第1配線12g-1は、平面視で、第1パッド12b-1の2辺に沿って延びる形状をなす。同様に、第2配線12g-2は、平面視で、第2パッド12b-2の2辺に沿って延びる形状をなす。このような形状の第1配線12g-1および第2配線12g-2では、第1配線12g-1に対する第2半導体スイッチング素子20-2の温度の影響を受け難くしたり、第2配線12g-2に対する第1半導体スイッチング素子20-1の温度の影響を受け難くしたりしつつ、抵抗変化部材を第1半導体スイッチング素子20-1または第2半導体スイッチング素子20-2に近づけることができる。
【0078】
以上のように、第3実施形態によっても、第1接続部14B-1および第2接続部14B-2のそれぞれが抵抗変化部材を電流経路として含むことにより、低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子20を電気的に並列接続した半導体モジュール100Bの信頼性を向上させることができる。
【0079】
4.第4実施形態
以下、本開示の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0080】
図8は、第4実施形態に係る半導体モジュール100Cの平面図である。半導体モジュール100Cは、第1実施形態の基板10に代えて基板10Cを備えること以外は、第1実施形態の半導体モジュール100と同様に構成される。なお、図8では、見やすさの便宜上、前述のワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2、外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略されるとともに、抵抗変化部材が網掛け表示される。
【0081】
基板10Cは、第1実施形態の導体パターン群12に代えて導体パターン群12Cを有すること以外は、第1実施形態の基板10と同様に構成される。導体パターン群12Cは、第1実施形態の第1配線12c-1および第2配線12c-2に代えて第1配線12h-1および第2配線12h-2を含むこと以外は、第2実施形態の導体パターン群12と同様に構成される。
【0082】
第1配線12h-1は、平面視形状が異なること以外は、第1実施形態の第1配線12c-1と同様に構成される。ここで、第1パッド12b-1および第1配線12h-1は、第1接続部14C-1を構成しており、入力部12aと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。第2配線12h-2は、平面視形状が異なること以外は、第1実施形態の第2配線12c-2と同様に構成される。ここで、第2パッド12b-2および第2配線12h-2は、第2接続部14C-2を構成しており、入力部12aと第2入力電極22-2とを電気的に接続する。
【0083】
具体的に説明すると、図8に示すように、第1配線12h-1は、平面視で、第1パッド12b-1のY軸に沿う1対の辺のうちX2方向に位置する辺から、第1パッド12b-1の周囲に沿って延びた後に、入力部12aに向けて延びる形状をなす。ここで、第1配線12h-1は、平面視で、第1パッド12b-1のX2方向に位置する辺とY2方向に位置する辺とX1方向に位置する辺とに沿って延びる。同様に、第2配線12h-2は、平面視で、第2パッド12b-2のY軸に沿う1対の辺のうちX2方向に位置する辺から、第2パッド12b-2の周囲に沿って延びた後に、入力部12aに向けて延びる形状をなす。ここで、第2配線12h-2は、平面視で、第2パッド12b-2のX2方向に位置する辺とY1方向に位置する辺とX1方向に位置する辺とに沿って延びる。
【0084】
このように、第1配線12h-1は、平面視で、第1パッド12b-1の3辺に沿って延びる形状をなす。同様に、第2配線12h-2は、平面視で、第2パッド12b-2の3辺に沿って延びる形状をなす。このような形状の第1配線12h-1および第2配線12h-2では、第1配線12h-1に対する第2半導体スイッチング素子20-2の温度の影響を受け難くしたり、第2配線12h-2に対する第1半導体スイッチング素子20-1の温度の影響を受け難くしたりしつつ、抵抗変化部材を第1半導体スイッチング素子20-1または第2半導体スイッチング素子20-2に近づけることができる。
【0085】
以上のように、第4実施形態によっても、第1接続部14C-1および第2接続部14C-2のそれぞれが抵抗変化部材を電流経路として含むことにより、低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子20を電気的に並列接続した半導体モジュール100Cの信頼性を向上させることができる。
【0086】
5.第5実施形態
以下、本開示の第5実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0087】
図9は、第5実施形態に係る半導体モジュール100Dの断面図である。半導体モジュール100Dは、第1実施形態の基板10に代えて基板10Dを備えること以外は、第1実施形態の半導体モジュール100と同様に構成される。なお、図9では、見やすさの便宜上、前述のワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2、外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略されるとともに、抵抗変化部材が網掛け表示される。
【0088】
基板10Dは、第1実施形態の導体パターン群12に代えて導体パターン群12Dを有すること以外は、第1実施形態の基板10と同様に構成される。導体パターン群12Dは、第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2を追加したこと以外は、第2実施形態の導体パターン群12と同様に構成される。第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれは、入力部12aを構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される部材である。
【0089】
具体的に説明すると、図9に示すように、第1シート部材12i-1は、第1入力電極22-1と第1パッド12b-1との間に配置されており、例えば、第1入力電極22-1および第1パッド12b-1のそれぞれに対してはんだ等の導電性接合材を介して接合される。ここで、第1シート部材12i-1、第1パッド12b-1および第1配線12c-1は、第1接続部14D-1を構成しており、入力部12aと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。同様に、第2シート部材12i-2は、第2入力電極22-2と第2パッド12b-2との間に配置されており、例えば、第2入力電極22-2および第2パッド12b-2のそれぞれに対してはんだ等の導電性接合材を介して接合される。ここで、第2シート部材12i-2、第2パッド12b-2および第2配線12c-2は、第2接続部14D-2を構成しており、入力部12aと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。
【0090】
なお、本実施形態では、第1配線12c-1および第2配線12c-2のそれぞれが抵抗温度係数の小さいアルミニウムまたは銅等の金属で構成されてもよい。また、第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれは、第2入力電極22-2および第2パッド12b-2のそれぞれに対してはんだ等の導電性接合材を介して接合される態様に限定されず、例えば、気相成膜法により形成してもよい。
【0091】
このように、第1接続部14D-1は、第1入力電極22-1と第1パッド12b-1との間に配置される第1シート部材12i-1を含む。同様に、第2接続部14D-2は、第2入力電極22-2と第2パッド12b-2との間に配置される第2シート部材12i-2を含む。第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれは、所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料で構成される。このため、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2の過昇温による損傷を好適に防止することができる。
【0092】
第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれを構成する材料、すなわち、所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料としては、例えば、(V1-XCrのような導電性金属酸化物等が挙げられる。当該導電性金属酸化物は、温度上昇に応じて所定温度で金属状態から非金属状態に相転移する。この相転移により、当該導電性の抵抗値が所定温度以上で急激に大きくなる。
【0093】
当該所定温度、すなわち、温度上昇時に相転移を開始する温度は、150℃以上200℃以下の範囲内の温度であることが好ましい。この場合、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2の過昇温による損傷を好適に防止することができる。ここで、例えば、前述の導電性金属酸化物を用いる場合、(V1-XCrのXを0.005程度、より具体的には、Xを0.0045以上0.0055以下程度とすることが好ましい。
【0094】
以上の第1接続部14D-1では、第1半導体スイッチング素子20-1からの熱により、第1配線12c-1の抵抗値が上昇するだけでなく、所定温度以上で第1シート部材12i-1の抵抗値が急激に上昇する。同様に、第2接続部14D-2では、第2半導体スイッチング素子20-2からの熱により、第2配線12c-2の抵抗値が上昇するだけでなく、所定温度以上で第2シート部材12i-2の抵抗値が急激に上昇する。
【0095】
このように、第1配線12c-1および第2配線12c-2の抵抗値変化とは異なる挙動で第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2の抵抗値が変化することにより、第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれを半導体モジュール100Dの保護素子のように用いることができる。
【0096】
以上のように、第5実施形態によっても、第1接続部14D-1および第2接続部14D-2のそれぞれが抵抗変化部材を電流経路として含むことにより、低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子20を電気的に並列接続した半導体モジュール100Dの信頼性を向上させることができる。
【0097】
6.第6実施形態
以下、本開示の第6実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0098】
図10は、第6実施形態に係る半導体モジュール100Eの平面図である。図11は、図10中のC-C線断面図である。半導体モジュール100Eは、第1実施形態の基板10に代えて基板10Eを備えること以外は、第1実施形態の半導体モジュール100と同様に構成される。なお、図10および図11では、見やすさの便宜上、前述のワイヤー51-1、51-2、52-1、52-2、外部入力端子61、外部出力端子62および制御端子63の図示が省略されるとともに、抵抗変化部材が網掛け表示される。
【0099】
基板10Eは、第1実施形態の導体パターン群12に代えて導体パターン群12Eを有すること以外は、第1実施形態の基板10と同様に構成される。導体パターン群12Eは、入力部12a、第1パッド12b-1、第2パッド12b-2、第1配線12c-1および第2配線12c-2に代えて入力部12jを有するとともに、第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2を追加したこと以外は、第2実施形態の導体パターン群12と同様に構成される。第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれは、前述の第5実施形態の第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2と同様である。
【0100】
入力部12jは、外部入力端子61から電流の入力を受ける導体パターンで構成される入力パターンである。入力部12jは、例えば、銅またはアルミニウム等の高熱伝導性の金属材料で構成される。入力部12jには、図10中の二点鎖線で示す領域CT1において外部入力端子61だけでなく、図11に示すように、第1入力電極22-1および第2入力電極22-2がはんだ等の導電性接合材により接合される。このように、基板10Eは、入力部12jを構成する入力パターンを有する。なお、入力部12jの形状は、図10に示す例に限定されず、任意である。
【0101】
具体的に説明すると、図11に示すように、第1シート部材12i-1は、第1入力電極22-1と入力部12jとの間に配置されており、例えば、第1入力電極22-1および入力部12jのそれぞれに対してはんだ等の導電性接合材を介して接合される。ここで、第1シート部材12i-1は、第1接続部14E-1を構成しており、入力部12jと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。同様に、第2シート部材12i-2は、第2入力電極22-2と入力部12jとの間に配置されており、例えば、第2入力電極22-2および入力部12jのそれぞれに対してはんだ等の導電性接合材を介して接合される。ここで、第2シート部材12i-2は、第2接続部14E-2を構成しており、入力部12jと第1入力電極22-1とを電気的に接続する。なお、第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれは、入力部12j上に気相成膜法により形成してもよい。
【0102】
このように、第1接続部14E-1は、第1入力電極22-1と入力部12jとの間に配置される第1シート部材12i-1を含む。同様に、第2接続部14E-2は、第2入力電極22-2と入力部12jとの間に配置される第2シート部材12i-2を含む。第1シート部材12i-1および第2シート部材12i-2のそれぞれは、前述の第5実施形態と同様、抵抗変化部材であり、所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料で構成される。このため、第1半導体スイッチング素子20-1および第2半導体スイッチング素子20-2の過昇温による損傷を好適に防止することができる。
【0103】
以上のように、第6実施形態によっても、第1接続部14E-1および第2接続部14E-2のそれぞれが抵抗変化部材を電流経路として含むことにより、低コスト化を図りつつ、複数の半導体スイッチング素子20を電気的に並列接続した半導体モジュール100Eの信頼性を向上させることができる。
【0104】
7.変形例
本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0105】
7-1.変形例1
前述の実施形態では、半導体モジュールの有する半導体スイッチング素子の数が2個のである態様が例示されるが、この態様に限定されず、当該数は、3個以上であってもよい。この場合、3個以上の半導体スイッチング素子のうち、任意の1つの半導体スイッチング素子に関する構成が「第1半導体スイッチング素子」に関する構成に相当し、他の任意の1つの半導体スイッチング素子に関する構成が「第2半導体スイッチング素子」に関する構成に相当する。
【0106】
7-2.変形例2
前述の実施形態では、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子が共通の基板上に搭載される態様が例示されるが、この態様に限定されず、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子が個別の基板上に搭載されてもよい。
【0107】
8.付記
以上の実施形態または変形例から、例えば以下の態様が把握される。
【0108】
本開示の好適例である第1態様の半導体モジュールは、第1入力電極および第1出力電極を有する第1半導体スイッチング素子と、第2入力電極および第2出力電極を有する第2半導体スイッチング素子と、電流の入力を受ける入力部と、前記第1入力電極と前記入力部とを電気的に接続する第1接続部と、前記第2入力電極と前記入力部とを電気的に接続する第2接続部と、前記第1出力電極および前記第2出力電極に電気的に接続される出力部と、を備え、前記第1接続部および前記第2接続部のそれぞれは、前記入力部を構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される部材を電流経路として含む。
【0109】
以上の第1態様では、第1入力電極および第2入力電極の両方が入力部に電気的に接続されるとともに、第1出力電極および第2出力電極の両方が出力部に電気的に接続される。このため、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子が電気的に並列に接続される。
【0110】
ここで、第1入力電極が第1接続部を介して入力部に電気的に接続されるとともに、第2入力電極が第2接続部を介して入力部に電気的に接続される。そのうえで、第1接続部および第2接続部のそれぞれが入力部を構成する材料の抵抗温度係数よりも大きい正の抵抗温度係数を有する材料で構成される部材を電流経路として含む。このため、第1接続部の抵抗値が第1半導体スイッチング素子の昇温に伴って増加するので、第1半導体スイッチング素子の昇温に応じて第1半導体スイッチング素子に入力される電流が減少する。同様に、第2接続部の抵抗値が第2半導体スイッチング素子の昇温に伴って増加するので、第2半導体スイッチング素子の昇温に応じて第2半導体スイッチング素子に入力される電流が減少する。
【0111】
このように、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子が電気的に並列に接続される構成において、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子のうちの一方に対する電流の集中を抑制することができる。この結果、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子のうちの一方の電流アンバランスによる温度上昇および劣化を抑制することができる。また、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子の製造バラつきまたは経年劣化が生じても、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子のうちの一方に対する電流の集中を抑制することにより、半導体モジュールの特性低下を低減することができる。
【0112】
また、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子を支持する基板に当該部材を設けることができる。このため、特許文献1のように当該部材を半導体スイッチング素子の出力電極上に設ける態様と比べて、半導体モジュールの製造工程を簡単化することにより、半導体モジュールの低コスト化を図ることができる。
【0113】
なお、「電流経路として含む」とは、電流が主に流れる経路を構成することである。このため、例えば、銅等の高導電性配線上にニッケルめっき等の低導電性層を積層した構成において、当該高導電性配線に主に電流が流れるため、当該低導電性層は、「電流経路として含む」に該当しない。
【0114】
第1態様の好適例である第2態様において、前記第1半導体スイッチング素子および前記第2半導体スイッチング素子を支持する基板をさらに備え、前記第1接続部および前記第2接続部のそれぞれは、前記基板に設けられる導体パターンである。以上の第2態様では、基板の導体パターンを用いて当該部材を構成することができる。また、当該部材がボンディングワイヤーである態様に比べて、所望特性の当該部材を容易に得ることができる。
【0115】
第2態様の好適例である第3態様において、前記第1接続部は、前記第1入力電極に電気的に接続される第1パッドと、前記入力部と前記第1パッドとを電気的に接続する第1配線と、を含み、前記第2接続部は、前記第2入力電極に電気的に接続される第2パッドと、前記入力部と前記第2パッドとを電気的に接続する第2配線と、を含み、前記第1配線および前記第2配線のそれぞれは、前記部材を含む。以上の第3態様では、第1配線および第2配線の長さまたは形状等により、所望特性の当該部材を容易に得ることができる。
【0116】
第3態様の好適例である第4態様において、前記部材は、ニッケルまたはニッケル合金で構成される。以上の第4態様では、当該材料を用いることで、当該部材の温度変化による抵抗値変化を十分に大きくすることができる。
【0117】
第3態様または第4態様の好適例である第5態様において、前記部材の断面積をS[mm]とし、前記部材の長さをL[mm]としたとき、10≦L/S≦25の関係を満たす。以上の第5態様では、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子に対する電流のバランスを良好に維持することができる。
【0118】
第3態様から第5態様のいずれかの好適例である第6態様において、前記第1配線および前記第2配線のそれぞれは、平面視で蛇行形状の部分を有する。以上の第6態様では、当該部分を当該部材に用いることにより、当該部材を所望の長さとしつつ、当該部材を第1半導体スイッチング素子または第2半導体スイッチング素子に近づけることができる。
【0119】
第3態様から第5態様のいずれかの好適例である第7態様において、前記第1配線は、平面視で、前記第1パッドの周囲に沿って延びる形状の部分を有し、前記第2配線は、平面視で、前記第2パッドの周囲に沿って延びる形状の部分を有する。以上の第7態様では、当該部分を当該部材に用いることにより、当該部材を所望の長さとしつつ、当該部材を第1半導体スイッチング素子または第2半導体スイッチング素子に近づけることができる。
【0120】
第7態様の好適例である第8態様において、前記第1配線は、平面視で、前記第2パッドに対して遠ざかるように配置され、前記第2配線は、平面視で、前記第1パッドに対して遠ざかるように配置される。以上の第8態様では、第1配線に対する第2半導体スイッチング素子の温度の影響を受け難くしたり、第2配線に対する第1半導体スイッチング素子の温度の影響を受け難くしたりすることができる。これにより、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子に対する電流のバランスを良好に維持することができる。
【0121】
第8態様の好適例である第9態様において、前記第1パッドおよび前記第2パッドのそれぞれは、平面視で四角形をなしており、前記第1配線は、平面視で、前記第1パッドの2辺または3辺に沿って延びる形状をなし、前記第2配線は、平面視で、前記第2パッドの2辺または3辺に沿って延びる形状をなす。以上の第9態様では、第1配線に対する第2半導体スイッチング素子の温度の影響を受け難くしたり、第2配線に対する第1半導体スイッチング素子の温度の影響を受け難くしたりしつつ、当該部材を第1半導体スイッチング素子または第2半導体スイッチング素子に近づけることができる。
【0122】
第3態様から第9態様のいずれかの好適例である第10態様において、前記第1接続部は、前記第1入力電極と前記第1パッドとの間に配置される第1シート部材を含み、前記第2接続部は、前記第2入力電極と前記第2パッドとの間に配置される第2シート部材を含み、前記第1シート部材および前記第2シート部材のそれぞれは、所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料で構成される。以上の第10態様では、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子の過昇温による損傷を好適に防止することができる。
【0123】
第2態様の好適例である第11態様において、前記基板は、前記入力部を構成する入力パターンを有し、前記第1接続部は、前記第1入力電極と前記入力パターンとの間に配置される第1シート部材を含み、前記第2接続部は、前記第2入力電極と前記入力パターンとの間に配置される第2シート部材を含み、前記第1シート部材および前記第2シート部材のそれぞれは、前記部材であり、所定温度以上で相転移により抵抗値の大きくなる材料で構成される。以上の第11態様では、第1半導体スイッチング素子および第2半導体スイッチング素子の過昇温による損傷を好適に防止することができる。
【符号の説明】
【0124】
10…基板、10A…基板、10B…基板、10C…基板、10D…基板、10E…基板、11…絶縁基板、12…導体パターン群、12A…導体パターン群、12B…導体パターン群、12C…導体パターン群、12D…導体パターン群、12E…導体パターン群、12a…入力部、12b-1…第1パッド、12b-2…第2パッド、12c-1…第1配線、12c-2…第2配線、12d…出力部、12e…制御用パターン、12f-1…第1配線、12f-2…第2配線、12g-1…第1配線、12g-2…第2配線、12h-1…第1配線、12h-2…第2配線、12i-1…第1シート部材、12i-2…第2シート部材、12j…入力部、13…金属層、14-1…第1接続部、14-2…第2接続部、14A-1…第1接続部、14A-2…第2接続部、14B-1…第1接続部、14B-2…第2接続部、14C-1…第1接続部、14C-2…第2接続部、14D-1…第1接続部、14D-2…第2接続部、14E-1…第1接続部、14E-2…第2接続部、20-1…第1半導体スイッチング素子、20-2…第2半導体スイッチング素子、21-1…第1出力電極、21-2…第2出力電極、22-1…第1入力電極、22-2…第2入力電極、23-1…制御電極、23-2…制御電極、30…ベース、40…ケース、51-1…ワイヤー、51-2…ワイヤー、52-1…ワイヤー、52-2…ワイヤー、61…外部入力端子、62…外部出力端子、63…制御端子、100…半導体モジュール、100A…半導体モジュール、100B…半導体モジュール、100C…半導体モジュール、100D…半導体モジュール、100E…半導体モジュール、CT1…領域、CT2…領域、CT3…領域、R-1…内部抵抗、R-2…内部抵抗。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11