IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置 図1
  • 特開-半導体装置 図2
  • 特開-半導体装置 図3
  • 特開-半導体装置 図4
  • 特開-半導体装置 図5
  • 特開-半導体装置 図6
  • 特開-半導体装置 図7
  • 特開-半導体装置 図8
  • 特開-半導体装置 図9
  • 特開-半導体装置 図10
  • 特開-半導体装置 図11
  • 特開-半導体装置 図12
  • 特開-半導体装置 図13
  • 特開-半導体装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179559
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20241219BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L27/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098500
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴英
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038BH01
5F038BH18
5F038EZ01
5F038EZ02
5F038EZ06
5F038EZ13
5F038EZ20
(57)【要約】
【課題】フィールドプレートを構成要素とする寄生素子の動作を抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型の基体1と、基体1に設けられ、ハイサイド回路102が形成される第2導電型の第1ウェル領域2と、第1ウェル領域2の周囲に環状に設けられ、第1ウェル領域2よりも低不純物濃度の第2導電型の第1耐圧領域8と、第1耐圧領域8の外周側に、第1耐圧領域8に接して環状に設けられた第1導電型の第2耐圧領域3と、第1耐圧領域8の一部を含んで設けられた第1レベルシフト素子20aと、第1レベルシフト素子20aの周囲を囲むように設けられた第1導電型の第1分離領域6aと、第1耐圧領域8及び第1分離領域6aの上方に絶縁膜71,72を介して設けられ、第1分離領域6aとの間の第1距離d1が、第1耐圧領域8との間の第2距離d2よりも大きいフィールドプレート(10,11,12)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の基体と、
前記基体に設けられ、ハイサイド回路が形成される第2導電型の第1ウェル領域と、
前記第1ウェル領域の周囲に環状に設けられ、前記第1ウェル領域よりも低不純物濃度の第2導電型の第1耐圧領域と、
前記第1耐圧領域の外周側に、前記第1耐圧領域に接して環状に設けられた第1導電型の第2耐圧領域と、
前記第1耐圧領域の一部を含んで設けられた第1レベルシフト素子と、
前記第1レベルシフト素子の周囲を囲むように設けられた第1導電型の第1分離領域と、
前記第1耐圧領域及び前記第1分離領域の上方に絶縁膜を介して設けられ、前記第1分離領域との間の第1距離が、前記第1耐圧領域との間の第2距離よりも大きいフィールドプレートと、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記フィールドプレートが、前記第1レベルシフト素子の上方を前記第2距離で横断する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フィールドプレートが、前記第1耐圧領域及び前記第1レベルシフト素子の上方を前記第1距離で横断する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1耐圧領域の他の一部を含んで設けられた第2レベルシフト素子と、
前記第2レベルシフト素子の周囲を囲むように設けられた第1導電型の第2分離領域と、
を更に備え、
前記フィールドプレートが、前記第1耐圧領域、前記第1レベルシフト素子、前記第2分離領域及び前記第2レベルシフト素子の上方を前記第1距離で横断する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記フィールドプレートが、
前記第1耐圧領域の上方に設けられ、前記第1分離領域の上方で分断された第1層と、
前記第1分離領域の上方に設けられた第2層と、
を備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1層が前記第2層に電気的に接続されている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1層がポリシリコンで構成され
前記第2層が金属で構成されている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2層が、前記第1分離領域の上方に局所的に設けられている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2層が、更に前記第1耐圧領域の上方に設けられている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記絶縁膜の前記第1分離領域上の厚さが、前記絶縁膜の前記第1耐圧領域上の厚さよりも厚く、
前記フィールドプレートが、蛇行状の断面パターンを有する単層で構成されている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記フィールドプレートが、渦巻き状の平面パターンを有する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記渦巻き状の平面パターンの内周側の一端が第1電位に接続され、
前記渦巻き状の平面パターンの外周側の他端が前記第1電位よりも低い第2電位に接続される
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記フィールドプレートが、同心円状の平面パターンを有する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記フィールドプレートの電位が浮遊電位である
請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1分離領域は、前記第2耐圧領域に端部がそれぞれ接する2本の直線部を含むU字状の平面パターンを有する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2は、高耐圧集積回路(HVIC)において、高耐圧接合終端(HVJT)に高耐圧N型MOSFET(HVNMOS)を一体化して形成すると共に、HVNMOSをp型スリット領域で囲うことでHVJTから電気的に分離した構造(「分割リサーフ構造」ともいう。)を開示する。この際、p型スリット領域をチャネルとし、p型スリット領域の直上のフィールドプレートをゲートとする寄生MOSトランジスタ(寄生MOS)が構成される。
【0003】
特許文献3は、フィールドプレートをHVJT上とHVNMOS上で分断することで、寄生MOSが構成されることを回避した構成を開示する。特許文献4は、フィールドプレートの始点をHVNMOSのドレイン電位に接続することで、寄生MOSの動作を抑制した構成を開示する。
【0004】
特許文献5は、p型スリット領域上を2層のフィールドプレートで隙間なく覆うことで、表面帯電に強くする構成を開示する。特許文献6は、p型スリット領域内の一部に濃いp型層を形成することで、寄生MOSの反転層の形成を抑制する構成を開示する。特許文献7は、フィールドプレートの始点をVS電位に接続することで、寄生MOSの動作を抑制した構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6798377号公報
【特許文献2】特許第3917211号公報
【特許文献3】特許第6009341号公報
【特許文献4】特許第6134219号公報
【特許文献5】特許第6414861号公報
【特許文献6】特開2021-114527号公報
【特許文献7】特許第5321768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の分割リサーフ構造において、寄生MOSが動作すると、HVJTとHVNMOSの間でリーク電流が流れ、HVICの正常動作が妨げられる。寄生MOSの動作を抑制する方法には改善の余地がある。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、フィールドプレートを構成要素とする寄生素子の動作を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1導電型の基体と、基体に設けられ、ハイサイド回路が形成される第2導電型の第1ウェル領域と、第1ウェル領域の周囲に環状に設けられ、第1ウェル領域よりも低不純物濃度の第2導電型の第1耐圧領域と、第1耐圧領域の外周側に、第1耐圧領域に接して環状に設けられた第1導電型の第2耐圧領域と、第1耐圧領域の一部を含んで設けられた第1レベルシフト素子と、第1レベルシフト素子の周囲を囲むように設けられた第1導電型の第1分離領域と、第1耐圧領域及び第1分離領域の上方に絶縁膜を介して設けられ、第1分離領域との間の第1距離が、第1耐圧領域との間の第2距離よりも大きいフィールドプレートと、を備える半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィールドプレートを構成要素とする寄生素子の動作を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の回路図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図3図2のA-A´線で切断した断面図である。
図4図2のB-B´線で切断した断面図である。
図5】第2実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図6図5のB-B´線で切断した断面図である。
図7】第3実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図8】第4実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図9】第5実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図10】第6実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図11図10のB-B´線で切断した断面図である。
図12】第7実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図13】第8実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図14】第9実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の第1~第9実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1~第9実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0012】
本明細書において、「担体供給領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)又は静電誘導トランジスタ(SIT)のソース領域、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域等の主電流を構成する多数キャリアを供給する半導体領域を意味する。また、ダイオード、静電誘導(SI)サイリスタ又はゲートターンオフ(GTO)サイリスタにおいてはアノード領域が担体供給領域となる。また、「担体受領領域」とは、FET又はSITのドレイン領域、IGBTのコレクタ領域等の主電流を構成する多数キャリアを受領する半導体領域を意味する。ダイオード、SIサイリスタ又はGTOサイリスタにおいてはカソード領域が担体受領領域として機能する。
【0013】
また、本明細書において、上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0014】
また、本明細書において、第1導電型がp型、第2導電型がn型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても構わない。また「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じ「n」と「n」とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。更に、以下の説明で「第1導電型」及び「第2導電型」の限定を加えた部材や領域は、特に明示の限定がなくても半導体材料からなる部材や領域を意味する。
【0015】
(第1実施形態)
<半導体装置の回路>
第1実施形態に係る半導体装置として、図1に示すように、高耐圧集積回路(HVIC)100を例示する。HVIC100は、駆動対象として、例えば電力変換用ブリッジ回路の一相分である電力変換部200を駆動する。電力変換部200は、高電位側スイッチング素子T3と、低電位側スイッチング素子T4とを直列に接続してハーフブリッジ回路を構成している。図1では、高電位側スイッチング素子T3及び低電位側スイッチング素子T4としてIGBTを例示するが、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)等の他の電力用スイッチング素子を使用してもよい。
【0016】
高電位側スイッチング素子T3のコレクタには高電位側のHV電位が接続されている。低電位側スイッチング素子T4のエミッタには低電位側の接地電位(GND電位)が接続されている。高電位側スイッチング素子T3のエミッタと低電位側スイッチング素子T4のコレクタの接続点105には、高電位側の電源(高電位側電源)104の負極側のVS電位が接続されている。更に、接続点105には、モータ等の負荷(不図示)が接続されている。
【0017】
HVIC100は、外部のマイコン等からの入力信号INに応じて、高電位側スイッチング素子T3のゲートをオン・オフして駆動する駆動信号を高電位側スイッチング素子T3のゲートに印加する。HVIC100は、低電位側回路(ローサイド回路)101及び高電位側回路(ハイサイド回路)102を備える。ローサイド回路101には、低電位側の電源(低電位側電源)103の正極側のVCC電位と、低電位側電源103の負極側のGND電位が接続されている。更に、ローサイド回路101には、レベルシフト素子(レベルシフタ)T1,T2のゲートが接続されている。
【0018】
ローサイド回路101は、GND電位を基準電位とし、GND電位よりも高いVCC電位を電源電位として動作する。ローサイド回路101は、外部のマイコン等からの入力信号INに応じて、GND電位基準のオン・オフ信号を生成し、レベルシフト素子T1,T2のゲートへ出力する。
【0019】
レベルシフト素子T1,T2は、ローサイド回路101とハイサイド回路102の間で信号伝達を行う。レベルシフト素子T1,T2は、ローサイド回路101からのGND電位を基準とするオン・オフ信号を、VS電位を基準とするオン・オフ信号に変換し、変換したオン・オフ信号をハイサイド回路102へ出力する。レベルシフト素子T1,T2は、例えば高耐圧のnチャネルMOSFETで構成されている。
【0020】
レベルシフト素子T1のソースには、GND電位が接続されている。レベルシフト素子T1のドレインには、ハイサイド回路102及びレベルシフト抵抗R1の一端が接続されている。レベルシフト抵抗R1の他端には、高電位側電源104の正極側のVB電位が接続されている。レベルシフト素子T1のドレイン及びレベルシフト抵抗R1の一端には、ダイオードD1のカソードが接続されている。ダイオードD1のアノードには、ハイサイド回路102及び高電位側電源104の負極側のVS電位が接続されている。ダイオードD1は、レベルシフト素子T1のドレイン電位(Dr電位)の過剰な低下を防止する機能を有する。
【0021】
レベルシフト素子T2のソースには、GND電位が接続されている。レベルシフト素子T2のドレインには、ハイサイド回路102及びレベルシフト抵抗R2の一端が接続されている。レベルシフト抵抗R2の他端には、高電位側電源104の正極側のVB電位が接続されている。レベルシフト素子T2のドレイン及びレベルシフト抵抗R2の一端には、ダイオードD2のカソードが接続されている。ダイオードD2のアノードには、ハイサイド回路102及び高電位側電源104の負極側のVS電位が接続されている。ダイオードD2は、レベルシフト素子T2のドレイン電位(Dr電位)の過剰な低下を防止する機能を有する。
【0022】
高電位側電源104の正極側のVB電位には、耐圧接合終端(HVJT)と呼ばれる高耐圧のダイオードD0のカソードが接続されている。ダイオードD0のアノードにはGND電位が接続されている。
【0023】
ハイサイド回路102は、VS電位を基準電位とし、VS電位よりも高いVB電位を電源電位として動作する。ハイサイド回路102は、レベルシフト素子T1,T2からのオン・オフ信号に応じて、VS電位を基準とする駆動信号を高電位側スイッチング素子T3のゲートへ出力し、高電位側スイッチング素子T3のゲートを駆動する。ハイサイド回路102は、例えばnチャネルMOSFET及びpチャネルMOSFETのCMOS回路を出力段に備える。
【0024】
VB電位は、HVIC100に印加される最高電位であり、ノイズの影響を受けていない通常状態では、VS電位よりも15V程度高く保たれている。VS電位は、高電位側スイッチング素子T3と低電位側スイッチング素子T4とが相補的にオン・オフされることによって、高電位側のHV電位(例えば400V~600V程度)と低電位側のGND電位との間で上昇及び下降を繰り返し、0Vから数百Vまでの間で変動する。なお、VS電位はマイナスの電位になる場合もある。
【0025】
<半導体装置の構造>
図2は、図1に示したHVIC100に対応する第1実施形態に係る半導体装置の平面レイアウトを示す。HVIC100は、第1導電型(p型)の基体(半導体チップ)1を備える。基体1は、例えばシリコン(Si)基板で構成されている。なお、基体1は、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ガリウムヒ素(GaAs)、ダイヤモンド等の半導体基板で構成されていてもよい。また、基体1は、p型の半導体基板と、半導体基板上に設けられたp型のエピタキシャル層とで構成されていてもよい。
【0026】
基体1はGND電位で固定されてもよい。基体1の上部には、第2導電型(n型)のウェル領域2が設けられている。ウェル領域2は、略矩形の平面パターンを有する。ウェル領域2にはVB電位が印加される。ウェル領域2には、ハイサイド回路(ハイサイド回路領域)102が形成されている。図2では、ハイサイド回路102に含まれる各種素子の図示を省略している。
【0027】
ウェル領域2の周囲を囲むように、ウェル領域2に接して、ウェル領域2よりも低不純物濃度のn型の耐圧領域8が設けられている。耐圧領域8は、環状であり、外形が略矩形の平面パターンを有する。
【0028】
耐圧領域8の外周を囲むように、耐圧領域8に接して、p型の耐圧領域3が設けられている。耐圧領域3は、環状であり、外形が略矩形の平面パターンを有する。耐圧領域3にはGND電位が印加される。耐圧領域3の外周は基体1に囲まれている。
【0029】
p型の耐圧領域3とn型の耐圧領域8のpn接合により、高耐圧接合終端(HVJT)(3,8)が構成されている。HVJT(3,8)は、図1に示した高耐圧のダイオードD0に対応する。HVJT(3,8)は、環状であり、外形が略矩形の平面パターンを有する。HVJT(3,8)は、HVJT(3,8)の内周側のハイサイド回路102と、HVJT(3,8)の外周側の基体1に形成されるローサイド回路(ローサイド回路領域)101とを電気的に分離する。HVJT(3,8)により、ハイサイド回路102の電位がローサイド回路101の電位より数百V高くなった場合でも、正常に動作するようになっている。
【0030】
図2の平面視において、ローサイド回路101は、ハイサイド回路102の下側に、HVJT(3,8)を介して設けられている。図2では、ローサイド回路101を構成する各種の素子の図示を省略している。
【0031】
図2に示すように、HVJT(3,8)の一部には、レベルシフト素子20aが一体的に形成されている。レベルシフト素子20aは、耐圧領域8の一部を含んで設けられている。レベルシフト素子20aは、図1に示したレベルシフト素子T1に対応する。なお、図2では、図1に示したレベルシフト素子T2に対応するレベルシフト素子の図示を省略している。
【0032】
レベルシフト素子20aは、高耐圧のnチャネルMOSFET(HVNMOS)で構成されている。レベルシフト素子20aは、n型の担体供給領域(ソース領域)21a、ゲート電極22a及びn型の担体受領領域(ドレイン領域)23aを備える。ソース領域21a、ゲート電極22a及びドレイン領域23aは、互いに平行に延伸する直線状の平面パターンを有する。ソース領域21aとドレイン領域23aに挟まれる耐圧領域8の一部が、レベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する。
【0033】
レベルシフト素子20aの周囲を囲むように、p型の分離領域(スリット領域)6aが設けられている。分離領域6aは、ハイサイド回路102側に底部を有し、ローサイド回路101側に開口部を有する略U字状の平面パターンを有する。分離領域6aの略U字状の底部に接続された一対(2本)の直線部のそれぞれの端部は、耐圧領域3に接している。即ち、第1実施形態に係る半導体装置は、レベルシフト素子20aを分離領域6aで囲うことでHVJT(3,8)から電気的に分離した構造(分割リサーフ構造)を有する。
【0034】
HVJT(3,8)及びレベルシフト素子20aの上方には、フィールドプレート(10,11,12)が設けられている。フィールドプレート(10,11,12)は、HVIC内にかかる高電圧を微小な電流で均一な電位分布とする機能を有する。第1実施形態に係る半導体装置では、フィールドプレート(10,11,12)が抵抗性フィールドプレート(RFP)構造(抵抗素子)を有する場合を例示する。
【0035】
フィールドプレート(10,11,12)は、渦巻き状(スパイラル状)の平面パターンを有する。フィールドプレート(10,11,12)の渦巻きが伸びる方向に直交する方向のフィールドプレート(10,11,12)の幅は、例えば1μm程度である。フィールドプレート(10,11,12)の渦巻きが伸びる方向に直交する方向のフィールドプレート(10,11,12)が隣り合う渦巻き線の間隔は、例えば1μm程度である。
【0036】
図1では、フィールドプレート(10,11,12)が5周程度に巻かれた場合を例示するが、フィールドプレート(10,11,12)の渦巻き線の本数(巻き数)は特に限定されない。フィールドプレート(10,11,12)の巻き数は、フィールドプレート(10,11,12)の渦巻きが伸びる方向に直交する方向の耐圧領域8の幅等に応じて適宜設定可能である。
【0037】
フィールドプレート(10,11,12)の内周側の端部10aには、高電位側の第1電位として、例えばVB電位が接続されている。第1電位としては、VS電位であってもよく、或いはレベルシフト素子20aのドレイン電位であってもよい。レベルシフト素子20aのドレイン電位は、VB電位とVS電位の間の電位となる。
【0038】
フィールドプレート(10,11,12)の外周側の端部10bには、第1電位よりも低い低電位側の第2電位として、例えば接地電位(GND電位)が接続される。第2電位としては、GND電位とは異なる電位であってもよい。
【0039】
図2のレベルシフト素子20aを通過するA-A´線で切断した断面を図3に示す。図3に示すように、p型の基体1の上部には、n型のウェル領域2が設けられている。ウェル領域2は、n型不純物がイオン注入された拡散層で構成されている。ウェル領域2にはハイサイド回路102が形成されている。
【0040】
基体1の上部には、ウェル領域2に接して、n型の耐圧領域8が設けられている。耐圧領域8は、n型不純物がイオン注入された拡散層で構成されている。耐圧領域8の深さはウェル領域2の深さよりも浅い。基体1の上部には、耐圧領域8を深さ方向に貫通し、基体1に達するようにp型の分離領域6aが設けられている。分離領域6aは、p型不純物がイオン注入された拡散層で構成されている。分離領域6aの深さは耐圧領域8の深さよりも深い。
【0041】
図3に示すように、レベルシフト素子20aは、p型の分離領域6aによりn型のウェル領域2から分離されている。p型の分離領域6aによりn型のウェル領域2から分離された耐圧領域8の一部が、レベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する。レベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する耐圧領域8の上部には、n型のドレイン領域23aが設けられている。ドレイン領域23aは、n型不純物がイオン注入された拡散層で構成されている。ドレイン領域23aの上面側には絶縁膜71及び絶縁膜72が設けられている。ドレイン領域23aには、絶縁膜71及び絶縁膜72の開口部(コンタクトホール)に設けられた金属等からなるビア32aを介してドレイン電極32が接続されている。ドレイン電極32は、例えばアルミニウム(Al)又は銅(Cu)等を主成分とする金属で構成されていてもよい。
【0042】
絶縁膜71としては、シリコン酸化膜(SiO膜)、シリコン窒化膜(Si膜)又はこれらの複合膜が使用可能である。絶縁膜71としては、テトラエトキシシラン(TEOS)等の有機ケイ素系化合物のガスを用いた化学気相成長(CVD)法等による絶縁膜等であってもよい。
【0043】
絶縁膜72としては、「NSG膜」と称される不純物を含まないシリコン酸化膜(SiO膜)、燐を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、ホウ素を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)等が使用可能である。更に、燐及びホウ素を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)又はシリコン窒化膜(Si膜)の単層膜又はこれらのうちの複数種を選択して組み合わせた複合膜等も絶縁膜72として採用可能である。
【0044】
基体1の上部には、ウェル領域2の反対側で耐圧領域8に接して、p型の耐圧領域3が設けられている。耐圧領域3は、p型不純物がイオン注入された拡散層で構成されている。レベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する耐圧領域8に接する耐圧領域3の一部が、レベルシフト素子20aのベース領域として機能する。
【0045】
レベルシフト素子20aのベース領域として機能する耐圧領域3の上部には、n型のソース領域21aが設けられている。ソース領域21aは、n型不純物がイオン注入された拡散層で構成されている。レベルシフト素子20aのベース領域として機能する耐圧領域3の上部には、ソース領域21aに接して、耐圧領域3よりも高不純物濃度のp型のコンタクト領域4が設けられている。コンタクト領域4は、p型不純物がイオン注入された拡散層で構成されている。
【0046】
ソース領域21a及びコンタクト領域4には、絶縁膜71及び絶縁膜72の開口部(コンタクトホール)に設けられた金属等からなるビア31aを介して、ソース電極31が接続されている。ソース電極31は、例えばアルミニウム(Al)又は銅(Cu)等を主成分とする金属で構成されていてもよい。
【0047】
ソース領域21aと耐圧領域8に挟まれた耐圧領域3の上面側には、ゲート絶縁膜25を介してゲート電極22aが設けられている。ゲート絶縁膜25としては、シリコン酸化膜(SiO膜)、酸窒化珪素(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、窒化珪素(Si)膜、アルミニウム酸化物(Al)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y)膜、ハフニウム酸化物(HfO)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO)膜、タンタル酸化物(Ta)膜、ビスマス酸化物(Bi)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。ゲート電極22aの材料としては、例えばp型不純物又はn型不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)や、チタン(Ti)、タングステン(W)又はニッケル(Ni)等の高融点金属が使用可能である。
【0048】
図2のA-A´線に直交し、レベルシフト素子20a及びフィールドプレート(10,11,12)の1本の渦巻き線の一部を通過するB-B´線で切断した断面を図4に示す。図4に示すように、フィールドプレート(10,11,12)は、第1層(下層)10と、第1層10よりも上方(上側)に設けられた第2層(上層)11,12とを有する。
【0049】
図2に示すように、第1層10は、フィールドプレート(10,11,12)の大部分を構成しており、分離領域6aの上方を通過する部分を除いた部分に設けられている。図3及び図4に示すように、第1層10は、絶縁膜71の上面側に設けられている。図4に示すように、第1層10は、耐圧領域8の上方に設けられている。第1層10は、レベルシフト素子20aの上方を横断する。第1層10は、レベルシフト素子20aを挟む分離領域6aの上方で分断されている。第1層10の分断された距離(間隔)d3は、分離領域6aの幅w1よりも大きい。第1層10は、少なくとも分離領域6aの上方には設けられていない。
【0050】
第1層10は、例えば高抵抗のポリシリコン等の抵抗性薄膜で構成されている。第1層10を構成するポリシリコンには、p型不純物又はn型不純物が例えば1×1017cm-3以上、1×1020cm-3以下程度で添加されている。第1層10を構成するポリシリコンのシート抵抗値は、例えば2kΩ/sq程度である。なお、第1層10は、抵抗性薄膜の代わりに、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)等を主成分とする金属膜で構成されていてもよい。
【0051】
図2に示すように、第2層11,12は、フィールドプレート(10,11,12)の各渦巻き線において、分離領域6aの上方に選択的(局所的)に設けられている。図2では、フィールドプレート(10,11,12)の渦巻きが伸びる方向に直交する方向の第2層11,12の幅が、第1層10の幅と略同一である場合を例示する。第2層11,12の幅は、第1層10の幅よりも広くてもよく、或いは第1層10の幅の幅よりも狭くてもよい。
【0052】
図4に示すように、第2層11,12は、絶縁膜72の上面側に設けられている。なお、第2層11,12は、絶縁膜72よりも上方の絶縁膜(不図示)の上面側に設けられていてもよい。第2層11,12は、少なくとも分離領域6aの上方に設けられている。図4では、第2層11,12の厚さが第1層10の厚さと略同一である場合を例示する。第2層11,12の厚さは、第1層10の厚さよりも厚くてもよく、或いは第1層10の厚さよりも薄くてもよい。
【0053】
第2層11,12の上面側には、図示しないが第2層11,12を覆うように絶縁膜が設けられてよい。この絶縁膜は、前記した絶縁膜72を形成する材料と同様の材料で構成できる。さらに、この絶縁膜は、絶縁膜72の上面側を覆うように形成してもよい。
【0054】
第2層11,12は、例えばアルミニウム(Al)又は銅(Cu)等を主成分とする金属で構成されている。第2層11,12は、ソース電極31及びドレイン電極32と同一材料で構成されていてもよく、その場合、ソース電極31及びドレイン電極32を形成する工程と同一工程で形成可能である。第2層11,12は、ソース電極31及びドレイン電極32とは異なる材料で構成されていてもよい。なお、第2層11,12は、第1層10と同様に、ポリシリコンで構成されていてもよい。第2層11,12は、第1層10と同一材料で構成されていてもよく、第1層10とは異なる材料で構成されていてもよい。
【0055】
図4に示すように、第2層11の一端及び他端は、第1層10の分断された端部と重なるように設けられている。第2層11の一端及び他端は、絶縁膜72の開口部(コンタクトホール)に設けられた金属等からなるビア11a,11bを介して、互いに分断された第1層10に電気的に接続されている。第2層12の一端及び他端は、絶縁膜72の開口部(コンタクトホール)に設けられた金属等からなるビア12a,12bを介して、互いに分断された第1層10に電気的に接続されている。即ち、第1層10及び第2層11,12は直列接続されている。
【0056】
図4に示すように、第2層11,12と分離領域6aの間の距離d1は、絶縁膜71の厚さと絶縁膜72の厚さの合計値に相当する。第1層10と耐圧領域8の距離d2は、絶縁膜71の厚さに相当する。よって、第2層11,12と分離領域6aの間の距離d1は、第1層10と耐圧領域8の距離d2よりも大きい。
【0057】
ここで、図4に示すように、p型の分離領域6aをチャネル(チャネル形成領域)とし、分離領域6aに挟まれるレベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する耐圧領域8をソースとし、分離領域6aのソースとなる耐圧領域8とは反対側に位置する耐圧領域8をドレインとし、フィールドプレート(10,11,12)の分離領域6aの直上に位置する部分をゲートとする寄生n型MOSFETが構成される。
【0058】
第1実施形態に係る半導体装置によれば、第2層11,12と分離領域6aの間の距離d1を、第1層10と耐圧領域8の間の距離d2よりも大きくする。これにより、例えば分離領域6a及び耐圧領域8との間の距離が一定のフィールドプレートを用いた場合と比較して、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができるので、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。例えば、ノイズによって瞬間的にフィールドプレート(10,11,12)と分離領域6aの間の電圧(寄生n型MOSFETのゲート電圧)がバイアスされるような場合でも効果を発揮することができる。また、第2層11,12と分離領域6aの間の距離d1を大きくするほど、寄生MOSのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生MOSの動作の抑制効果を大きくすることができる。
【0059】
また、図1に示すように、平面視において、フィールドプレート(10,11,12)は、分離領域6a及び耐圧領域8の間の距離が一定のフィールドプレートを用いた場合と同様の領域を覆うことができるため、表面帯電に対する耐性を維持することができる。
【0060】
また、第1層10をポリシリコンで構成し、第2層11,12を金属で構成する場合でも、分離領域6aを含む領域の上方だけ局所的に第2層11,12を設けるため、フィールドプレート(10,11,12)の消費電流を小さく保つことができる。よって、フィールドプレート(10,11,12)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0061】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る半導体装置の平面図であり、図6は、図5のB-B´線で切断した断面図である。図5及び図6に示すように、第2実施形態に係る半導体装置は、HVJT(3,8)及びレベルシフト素子20aの上方に設けられるフィールドプレート(10,11)の第2層11が、分離領域6a及びレベルシフト素子20aの上方を横断するように設けられている点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0062】
図5及び図6に示すように、フィールドプレート(10,11)は、第1層10と、第1層10よりも上方に設けられた第2層11とを有する。図6に示すように、第1層10は、分離領域6aの上方と、分離領域6aに挟まれ、レベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する耐圧領域8の上方の位置で分断されている。第1層10は、分離領域6aの上方と、レベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する耐圧領域8の上方には設けられていない。
【0063】
第2層11は、分離領域6aの上方から、レベルシフト素子20aのドリフト領域を構成する耐圧領域8の上方に亘って選択的(局所的)に設けられている。第2層11の一端及び他端は、絶縁膜72の開口部(コンタクトホール)に設けられた金属等からなるビア11a,11bを介して、互いに分断された第1層10に電気的に接続されている。
【0064】
分離領域6a及びレベルシフト素子20aと第2層11の間の距離d1が、レベルシフト素子20a以外の耐圧領域8と第1層10の間の距離d2よりも大きい。第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0065】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、第2層11と分離領域6aの間の距離d1を、第1層10とレベルシフト素子20a以外の耐圧領域8の間の距離d2よりも大きくする。これにより、分離領域6a及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート(10,11,12)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0066】
更に、フィールドプレート(10,11,12)の第1層10をポリシリコンで構成した場合、第1層10は高電位側から低電位側に向かって徐々に電圧降下する。これに対して、第2層11を金属で構成し、第2層11を分離領域6a及びレベルシフト素子20aの上方を横断するように設けることにより、第2層11を設けた部分のフィールドプレート(10,11,12)の電位が同電位に保たれるため、第2層11がレベルシフト素子20aを横断する方向において、レベルシフト素子20aの全体に亘って電位をより均一に保つことができる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る半導体装置は、図7に示すように、HVJT(3,8)の一部に複数(2つ)のレベルシフト素子20a,20bが一体的に形成されている点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。レベルシフト素子20a,20bは、HVJT(3,8)の平面パターンがなす矩形の一辺側に互いに隣り合って設けられている。なお、レベルシフト素子20a,20bの配置位置はこれに限定されない。例えば、レベルシフト素子20a,20bは、HVJT(3,8)の平面パターンがなす矩形の対向する辺にそれぞれ設けられていてもよい。
【0068】
レベルシフト素子20bは、レベルシフト素子20aと同様の構成を有する。レベルシフト素子20bは、n型のソース領域21b、ゲート電極22b及びn型のドレイン領域23bを備える。ソース領域21b、ゲート電極22b及びドレイン領域23bは、互いに平行に延伸する直線状の平面パターンを有する。ソース領域21bとドレイン領域23bに挟まれる耐圧領域8の一部が、レベルシフト素子20bのドリフト領域を構成する。
【0069】
レベルシフト素子20bを囲むようにp型の分離領域6bが設けられている。分離領域6bは、レベルシフト素子20bをウェル領域2から電気的に分離する。
【0070】
HVJT(3,8)及びレベルシフト素子20a,20bの上方には、フィールドプレート(10,11,12)が設けられている。フィールドプレート(10,11,12)は、第1層10と、第1層10よりも上方の第2層11,12を有する。第2層11が、分離領域6a及びレベルシフト素子20aの上方を横断するように設けられている。第2層12が、分離領域6b及びレベルシフト素子20bの上方を横断するように設けられている。第3実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0071】
第3実施形態に係る半導体装置によれば、第2層11と分離領域6aの間の距離及び第2層12と分離領域6bの間の距離を、第1層10とレベルシフト素子20a,20b以外の耐圧領域8の間の距離よりも大きくする。これにより、分離領域6a,6b及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート(10,11,12)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0072】
更に、フィールドプレート(10,11,12)の第1層10をポリシリコンで構成した場合、第1層10は高電位側から低電位側に向かって徐々に電圧降下する。これに対して、第2層11,12を金属で構成し、第2層11,12を分離領域6a,6b及びレベルシフト素子20a,20bの上方をそれぞれ横断するように設けることにより、第2層11,12を設けた部分のフィールドプレート(10,11,12)の電位が同電位に保たれるため、第2層11,12がレベルシフト素子20a,20bを横断する方向において、レベルシフト素子20a,20bのそれぞれの全体に亘って電位をより均一に保つことができる。
【0073】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る半導体装置は、図8に示すように、HVJT(3,8)の一部に複数(2つ)のレベルシフト素子20a,20bが一体的に形成されている点は、図7に示した第3実施形態に係る半導体装置と共通する。しかし、第4実施形態に係る半導体装置は、図8に示すように、フィールドプレート(10,11)の第2層11が、複数のレベルシフト素子20a,20bと、複数のレベルシフト素子20a,20bをそれぞれ囲む複数の分離領域6a,6bの上方に亘って連続的に横断するように設けられている点が、図7に示した第3実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0074】
HVJT(3,8)及びレベルシフト素子20a,20bの上方には、フィールドプレート(10,11)が設けられている。フィールドプレート(10,11)は、第1層10と、第1層10よりも上方の第2層11を有する。第2層11が、分離領域6a,6b及びレベルシフト素子20a,20bの上方を横断するように設けられている。第4実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第3実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0075】
第4実施形態に係る半導体装置によれば、第2層11と分離領域6a,6bの間の距離を、第1層10とレベルシフト素子20a,20b以外の耐圧領域8の間の距離よりも大きくする。これにより、分離領域6a,6b及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート(10,11)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0076】
更に、フィールドプレート(10,11)の第1層10をポリシリコンで構成した場合、第1層10は高電位側から低電位側に向かって徐々に電圧降下する。これに対して、第2層11を金属で構成し、第2層11を分離領域6a,6b及びレベルシフト素子20a,20bの上方を連続して横断するように設けることにより、第2層11がレベルシフト素子20a,20bを横断する方向において、レベルシフト素子20a,20bを略同一の電位に保つことができる。
【0077】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る半導体装置は、図9に示すように、複数のレベルシフト素子20a,20bと、複数のレベルシフト素子20a,20bをそれぞれ囲む複数の分離領域6a,6bとを有する点は、図8に示した第4実施形態に係る半導体装置と共通する。しかし、第5実施形態に係る半導体装置は、図9に示すように、フィールドプレート(10,11,12,13)の第2層11,12,13が、複数のレベルシフト素子20a,20bを横断せずに、複数の分離領域6a,6bの上方に局所的に設けられている点が、図8に示した第4実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0078】
HVJT(3,8)及びレベルシフト素子20a,20bの上方には、フィールドプレート(10,11,12,13)が設けられている。フィールドプレート(10,11,12,13)は、第1層10と、第1層10よりも上方の第2層11,12,13を有する。第2層11は、分離領域6aの平面パターンがなす一対の直線部の一方を横断するように設けられている。第2層12は、分離領域6aの平面パターンがなす一対の直線部の他方、分離領域6aと分離領域6bの間の耐圧領域8、及び分離領域6bの平面パターンがなす一対の直線部の一方を横断するように設けられている。第2層13は、分離領域6bの平面パターンがなす一対の直線部の他方を横断するように設けられている。第5実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第4実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0079】
第5実施形態に係る半導体装置によれば、第2層11,12,13と分離領域6a,6bの間の距離を、第1層10と、レベルシフト素子20a,20b以外の耐圧領域8の間の距離よりも大きくする。これにより、分離領域6a,6b及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート(10,11,12,13)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0080】
(第6実施形態)
図10は、第6実施形態に係る半導体装置の平面図である。図10のA-A´線で切断した断面は図3と同様であり、図10のB-B´線で切断した断面を図11に示す。図3図10及び図11に示すように、第6実施形態に係る半導体装置は、フィールドプレート(10,11)が容量性フィールドプレート構造(「多重フローティングフィールドプレート(MFFP)構造」ともいう)である点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0081】
図11に示すように、フィールドプレート(10,11)は、第1層10と、第1層10よりも上方の第2層11を有する。第2層11は、図10に示すように、多重の環状且つ同心円状の平面パターンを有する。第1層10は、図10では第2層11の下方に隠れているが、第2層11に沿って、多重の略環状且つ略同心円状の平面パターンを有する。
【0082】
図11に示すように、第1層10は、耐圧領域8の上方に設けられているが、分離領域6aの上方だけ選択的(局所的)に分断されている。第2層11は、耐圧領域8及び分離領域6aの上方に設けられている。第1層10及び第2層11の電位はそれぞれ浮遊電位(フローティング電位)である。第1層10及び第2層11を互いに接続するビアは設けられておらず、第1層10及び第2層11は、互いに電気的に分離されている。第1層10及び第2層11は、絶縁膜72を介して容量結合している。
【0083】
第1層10及び第2層11は、例えばポリシリコン又は金属で構成されている。第1層10及び第2層11は、互いに同一材料で構成されていてもよく、或いは異なる材料で構成されていてもよい。第6実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0084】
第6実施形態に係る半導体装置によれば、フィールドプレート(10,11)が容量性フィールドプレート構造である場合において、分離領域6aと第2層11の間の距離d1を、耐圧領域8と第1層10の間の距離d2よりも大きくする。これにより、分離領域6a及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート(10,11)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0085】
(第7実施形態)
第7実施形態に係る半導体装置は、図12に示すように、分離領域6aの上面に位置する絶縁膜71の厚さd4が、耐圧領域8の上面に位置する絶縁膜71の厚さd5よりも厚い点が、図4に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0086】
絶縁膜71の上面側にはフィールドプレート10が、絶縁膜71の厚さd4,d5に応じて蛇行状の断面パターンを有して設けられている。フィールドプレート10は単層で構成されている。フィールドプレート10は、例えばポリシリコン又は金属で構成されている。フィールドプレート10は、例えば、渦巻き状の平面パターンを有する抵抗性フィールドプレート構造であってもよく、或いは、同心円状の平面パターンを有する容量性フィールドプレート構造であってもよい。第7実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0087】
第7実施形態に係る半導体装置によれば、分離領域6aとフィールドプレート10の間の距離d4を、耐圧領域8とフィールドプレート10の間の距離d5よりも大きくする。これにより、分離領域6a及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート10の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0088】
(第8実施形態)
第8実施形態に係る半導体装置は、図13に示すように、基体1が、p型の半導体基板1aと、半導体基板1a上に設けられたp型のエピタキシャル層1bとで構成されている点が、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。更に、第8実施形態に係る半導体装置は、ウェル領域2の下面に接して、ウェル領域2よりも高不純物濃度のn型の埋込層9が設けられている点が、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0089】
第8実施形態に係る半導体装置のフィールドプレートは、第1実施形態に係る半導体装置のフィールドプレート(10,11,12)と実質的に同様である。第8実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0090】
第8実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、図4に示すように、分離領域6aとフィールドプレート10の間の距離d1を、耐圧領域8とフィールドプレート10の間の距離d2よりも大きくする。これにより、分離領域6a及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート(10,11,12)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0091】
(第9実施形態)
第9実施形態に係る半導体装置は、図14に示すように、SOI(Silicon on Insulator)基板で構成されている点が、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。第9実施形態に係る半導体装置は、n型又はp型の支持基板400を備える。支持基板400の上面側には酸化膜等の絶縁膜401が設けられている。絶縁膜401の上面側にはp型の基体1が設けられている。
【0092】
第9実施形態に係る半導体装置のフィールドプレートは、第1実施形態に係る半導体装置のフィールドプレート(10,11,12)と実質的に同様である。第9実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0093】
第9実施形態に係る半導体装置によれば、第1実施形態に係る半導体装置と同様に、図4に示すように、分離領域6aとフィールドプレート10の間の距離d1を、耐圧領域8とフィールドプレート10の間の距離d2よりも大きくする。これにより、分離領域6a及び耐圧領域8との距離が一定のフィールドプレートを用いる場合と比較して、フィールドプレート(10,11,12)の基本的な特性を大幅に変更せずに、寄生n型MOSFETのゲート閾値電圧を高めることができ、寄生n型MOSFETの動作を抑制することができる。
【0094】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第9実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0095】
例えば、第1実施形態に係る半導体装置として、1チップに1相分のハイサイド回路102を有する構成を例示したが、これに限定されず、1チップに複数相分(例えば3相分)のハイサイド回路を有する構成であってもよい。第2~第8実施形態に係る半導体装置でも同様である。
【0096】
また、第1実施形態に係る半導体装置において、フィールドプレート(10,11,12)の渦巻きが伸びる方向に直交する方向のすべての渦巻き線において、分離領域6aの上方で第1層10が分断され、且つ第2層11,12が設けられた場合を例示したが、必ずしもすべての渦巻き線に適用しなくてもよい。例えば、フィールドプレート(10,11,12)の渦巻きが伸びる方向に直交する方向の渦巻き線のうち、高電位側である内周側の一部を、分離領域6aの上方で第1層10が分断され、且つ第2層11,12が設けられた構造とすると共に、低電位側である外周側の一部を、分離領域6aの上方で第1層10が分断されずに設けられ、且つ第2層11,12が設けられない構造としてもよい。第2~第8実施形態に係る半導体装置でも同様である。
【0097】
また、第1~第9実施形態に係る半導体装置がHVICである場合を例示したが、HVIC以外の半導体装置にも適用可能である。
【0098】
また、第1~第9実施形態がそれぞれ開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0099】
1…基体(半導体チップ)
1a…半導体基板
1b…エピタキシャル層
2…ウェル領域
3…耐圧領域
4…コンタクト領域
6a,6b…分離領域(スリット領域)
8…耐圧領域
9…埋込層
10…フィールドプレート(第1層)
10a,10b…端部
11~13…第2層
11a,11b,12a,12b…ビア
20a,20b…レベルシフト素子
21a,21b…担体供給領域(ソース領域)
22a,22b…ゲート電極
23a,24b…担体受領領域(ドレイン領域)
25…ゲート絶縁膜
31…ソース電極
31a…ビア
32…ドレイン電極
32a…ビア
71,72…絶縁膜
101…低電位側回路(ローサイド回路)
102…高電位側回路(ハイサイド回路)
103…電源(低電位側電源)
104…電源(高電位側電源)
105…接続点
200…電力変換部
400…支持基板
401…絶縁膜
D0~D2…ダイオード
R1,R2…レベルシフト抵抗
T1,T2…レベルシフト素子(レベルシフタ)
T3…高電位側スイッチング素子
T4…低電位側スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14