(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179571
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】異常箇所特定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20241219BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20241219BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20241219BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20241219BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20241219BHJP
B60L 13/00 20060101ALI20241219BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241219BHJP
H02H 3/40 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01R31/08
G01R31/52
G01R31/54
G01R31/58
B60M7/00 X
B60L13/00 C
H02J50/10
H02H3/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098528
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 健
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】室田 彰
【テーマコード(参考)】
2G014
2G033
5H125
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA03
2G014AB35
2G033AA05
2G033AB01
2G033AC04
2G033AD11
2G033AG14
5H125AA11
5H125AC04
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】感熱線に異常が発生した場合に、感熱線の異常が発生した異常発生箇所の、感熱線の配線レイアウト上における推定位置を、作業者が容易に把握することが可能な技術の実現が望まれる。
【解決手段】異常箇所特定システムは、表示装置80と、制御装置と、給電設備のマップデータを記憶した記憶装置と、を備える。制御装置は、電源装置から感熱線4の異常が発生した位置までの距離を示す距離情報を取得する距離情報取得部と、異常箇所表示処理部と、を備える。異常箇所表示処理部は、距離情報に基づいて感熱線4の異常が発生した異常発生箇所の位置を推定する異常箇所推定処理と、マップデータに基づいて感熱線4の配置を示したマップMを表示装置80に表示させると共に、異常箇所推定処理により推定した異常発生箇所の推定位置EをマップM上に表示させる表示処理と、を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に対して電力を供給する給電線と、前記給電線に接続され、前記給電線に電力を供給する電源装置と、前記給電線に沿って配置された感熱線と、前記感熱線の異常を検出する異常検出装置と、を備えた給電設備において、前記感熱線の異常が発生した箇所を特定するための異常箇所特定システムであって、
情報を表示する表示装置と、
前記表示装置を制御する制御装置と、
前記給電設備のマップデータを記憶した記憶装置と、を備え、
前記マップデータには、前記電源装置の配置を示した電源配置情報と、前記電源装置に接続された前記給電線の配置を示した給電線配置情報と、前記給電線に沿って配置された前記感熱線の配置を示した感熱線配置情報と、が含まれ、
前記制御装置は、前記異常検出装置により前記感熱線の異常が検出された場合に、前記電源装置から前記感熱線の異常が発生した位置までの距離を示す距離情報を取得する距離情報取得部と、異常箇所表示処理部と、を備え、
前記異常箇所表示処理部は、
前記距離情報に基づいて前記感熱線の異常が発生した異常発生箇所の位置を推定する異常箇所推定処理と、
前記マップデータに基づいて前記感熱線の配置を示したマップを前記表示装置に表示させると共に、前記異常箇所推定処理により推定した前記異常発生箇所の推定位置を前記マップ上に表示させる表示処理と、を実行する、異常箇所特定システム。
【請求項2】
前記給電線及び前記感熱線は、前記電源装置から出て前記移動経路に沿って延在して、当該電源装置に戻ってくるように配置されており、
前記異常箇所表示処理部は、前記異常箇所推定処理において、前記電源装置から前記距離情報が示す距離だけ前記感熱線に沿って進んだ位置を、前記異常発生箇所の位置と推定する、請求項1に記載の異常箇所特定システム。
【請求項3】
前記感熱線が、前記電源装置から出て当該電源装置に戻ってくる周回経路を構成するように配置され、
前記周回経路の周回方向の一方側を第1側とし、前記第1側とは反対側を第2側として、
前記異常箇所表示処理部は、
前記異常箇所推定処理において、前記電源装置から前記距離情報が示す距離だけ前記周回経路に沿って前記第1側に進んだ位置である第1位置と、前記電源装置から前記距離情報が示す距離だけ前記周回経路に沿って前記第2側に進んだ位置である第2位置とを、前記異常発生箇所の位置として推定し、
前記表示処理において、前記第1位置と前記第2位置との双方を前記異常発生箇所の推定位置として前記マップ上に表示させる、請求項2に記載の異常箇所特定システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記異常発生箇所を表示させるための異常箇所表示操作を受け付け可能に構成され、
前記異常箇所表示処理部は、
前記異常箇所表示操作を受け付けていない状態では、前記表示処理において、前記電源装置と前記異常発生箇所の推定位置との双方を前記マップ上に表示させ、又は、前記電源装置から前記異常発生箇所の推定位置までの前記感熱線の経路の全体を前記マップ上に表示させ、
前記異常箇所表示操作を受け付けた場合には、前記表示処理において、前記異常発生箇所の推定位置の周辺の前記マップを前記表示装置に表示する、請求項1から3のいずれか一項に記載の異常箇所特定システム。
【請求項5】
前記異常箇所表示処理部は、前記表示処理において、前記電源装置から前記異常発生箇所の推定位置までの前記感熱線の配置経路を、他の部分の前記感熱線の配置経路に比べて強調して表示する、請求項1から3のいずれか一項に記載の異常箇所特定システム。
【請求項6】
前記制御装置は、動画再生要求操作を受け付け可能に構成され、
前記異常箇所表示処理部は、前記動画再生要求操作を受け付けた場合には、前記表示処理において、前記表示装置に表示する前記マップの基準位置を、前記電源装置から前記異常発生箇所の推定位置までの前記感熱線の配置経路に沿って移動させながら前記マップを表示する動画再生処理を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の異常箇所特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動経路に沿って配置されて移動体に対して電力を供給する給電線と、給電線に沿って配置された感熱線と、を備えた給電設備において、感熱線の異常が発生した箇所を特定するための異常箇所特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような給電設備の一例が、特開平10-201006号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1に開示されている給電設備は、搬送用車体(V)の移動経路に沿って配置されて搬送用車体(V)に対して電力を供給する誘導線路(14)と、誘導線路(14)に沿って配置された感熱線(15)と、保護装置(25)と、を備えている。保護装置(25)は、感熱線(15)を構成する一対の導線(17)に接続された直流電源(33)を備えていると共に、導線(17)が短絡したことを検出する手段として、導線(17)に直列に接続された検出抵抗(34)と、検出抵抗(34)に並列に接続されたメータリレー(35)と、を備えている。導線(17)が短絡した場合には、導線(17)の短絡点の位置に応じて変化する電流値をメータリレー(35)で確認することで、導線(17)の短絡点の位置が把握される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感熱線に短絡等の異常が発生した場合、当該異常に対応する作業者の作業効率の向上等の観点から、感熱線の異常が発生した異常発生箇所の、感熱線の配線レイアウト上における推定位置を、作業者が容易に把握できることが望ましい。この点に関して、特許文献1に記載されている技術では、作業者は、感熱線における短絡点の位置として、短絡点までの感熱線に沿った距離を把握することはできる。しかしながら、感熱線は複雑な経路に沿って配線されていることが多く、短絡点までの距離が分かっただけでは、感熱線の配線レイアウト上における短絡点の位置を、作業者が把握することは困難であり、異常の修復等のための作業者の作業効率が低下しやすかった。
【0005】
そこで、感熱線に異常が発生した場合に、感熱線の異常が発生した異常発生箇所の、感熱線の配線レイアウト上における推定位置を、作業者が容易に把握することが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る異常箇所特定システムは、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に対して電力を供給する給電線と、前記給電線に接続され、前記給電線に電力を供給する電源装置と、前記給電線に沿って配置された感熱線と、前記感熱線の異常を検出する異常検出装置と、を備えた給電設備において、前記感熱線の異常が発生した箇所を特定するための異常箇所特定システムであって、情報を表示する表示装置と、前記表示装置を制御する制御装置と、前記給電設備のマップデータを記憶した記憶装置と、を備え、前記マップデータには、前記電源装置の配置を示した電源配置情報と、前記電源装置に接続された前記給電線の配置を示した給電線配置情報と、前記給電線に沿って配置された前記感熱線の配置を示した感熱線配置情報と、が含まれ、前記制御装置は、前記異常検出装置により前記感熱線の異常が検出された場合に、前記電源装置から前記感熱線の異常が発生した位置までの距離を示す距離情報を取得する距離情報取得部と、異常箇所表示処理部と、を備え、前記異常箇所表示処理部は、前記距離情報に基づいて前記感熱線の異常が発生した異常発生箇所の位置を推定する異常箇所推定処理と、前記マップデータに基づいて前記感熱線の配置を示したマップを前記表示装置に表示させると共に、前記異常箇所推定処理により推定した前記異常発生箇所の推定位置を前記マップ上に表示させる表示処理と、を実行する。
【0007】
本構成によれば、短絡や断線等の感熱線の異常が検出された場合に、表示装置に表示される感熱線の配置を示したマップ上に(すなわち、感熱線の配線レイアウト上に)、感熱線の異常が発生した異常発生箇所の推定位置を表示させることができる。従って、作業者は、表示装置に表示される情報から、感熱線の配線レイアウト上における異常発生箇所の推定位置を、容易に把握することができる。これにより、例えば点検や修理等のために作業者が異常発生箇所に向かう場合に、給電設備におけるどの場所で感熱線の異常が発生しているかを作業者が容易に把握することができる。
【0008】
以上のように、本構成によれば、感熱線の異常が発生した異常発生箇所の、感熱線の配線レイアウト上における推定位置を、作業者が容易に把握することが可能となっている。
【0009】
異常箇所特定システムの更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】移動体の移動経路のレイアウトの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
異常箇所特定システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。異常箇所特定システムSは、給電設備100において感熱線4の異常が発生した箇所を特定するためのシステムである。
【0012】
給電設備100は、移動経路2に沿って移動する移動体1に対して電力を供給するための設備である。本実施形態の給電設備100では、ワイヤレス給電技術を用いて、移動体1に対して非接触で電力を供給する。
【0013】
図1は、給電設備100が適用される設備の一例としての物品搬送設備200を示している。
図1に示す例では、移動経路2は、不図示の物品(或いは物品に収容された収容物)を処理対象とする処理装置21を経由するように形成され、移動体1(ここでは、無人搬送車)は、移動経路2に沿って移動して物品を搬送する。例えば、処理装置21での処理の対象となる物品が、移動体1により当該処理装置21に搬入され、処理装置21での処理が終了した物品が、移動体1により当該処理装置21から搬出される。物品は、例えば、半導体ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)とされる。
【0014】
移動経路2は、物理的に形成されても仮想的に形成されてもよい。
図3では、移動経路2が、レール20(ここでは、水平方向に間隔を空けて配置された一対のレール20)によって物理的に形成される場合を想定している。移動経路2が仮想的に形成される場合、移動経路2は、例えば、床面に設置された2次元コードやRF(Radio Frequency)タグ等を用いて形成される。
【0015】
図3に例示する移動体1は、以下のように構成されている。移動体1は、移動経路2(ここでは、レール20)に沿って走行する走行部11と、走行部11に連結された本体部10と、を備えている。物品は、本体部10に収容された状態で、移動体1によって搬送される。走行部11は、レール20の走行面(ここでは、上面)を転動する走行輪13と、走行輪13を回転させる走行駆動部12(例えば、サーボモータ等の電動モータ)と、を備えている。走行輪13が走行駆動部12により回転駆動されることで、走行部11がレール20に沿って走行する。走行部11は、更に、レール20の案内面(ここでは、側面)を転動する案内輪14を備えており、走行部11は、案内輪14がレール20の案内面に接触案内された状態で、レール20に沿って走行する。
【0016】
図3に示す例では、移動体1は、天井から吊り下げ支持されたレール20に沿って走行する天井搬送車とされているが、移動体1の種類はこれに限定されない。例えば、移動体1は、床面に設けられたレールに沿って走行する有軌道台車、物品を保管する複数の棚段に対応して設けられたレールに沿って走行する走行台車(シャトル式台車)、スタッカクレーンの走行台車等であってもよい。
【0017】
図2及び
図3に示すように、給電設備100は、給電線3と、給電線3に接続された電源装置5とを備えている。電源装置5は、給電線3に電力を供給する。電源装置5は、例えば、電力を供給するための機器が組み込まれた電源盤とされる。電源装置5は、給電線3に交流電流を供給する。電源装置5は、インバータ回路を備えたスイッチング電源回路等の電源回路を備える。電源装置5は、例えば、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により、電源回路に交流電流を出力させる。
【0018】
給電線3は、移動体1の移動経路2に沿って配置される。
図3に示す例では、給電線3は、移動経路2を形成するレール20に沿って配置されている。そして、給電線3は、移動体1に対して電力を供給する。給電線3から移動体1への電力の供給方式は、非接触方式であっても接触方式であってもよい。例えば、非接触方式では、誘導線としての給電線3から移動体1へ電力が供給され、接触方式では、トロリー線としての給電線3から移動体1へ電力が供給される。本実施形態では、給電線3から移動体1への電力の供給方式は、非接触方式である。すなわち、給電線3は、移動体1に対して非接触で電力を供給する。
図3に示すように、給電線3は、導体により形成された導体線本体3a(芯線)と、絶縁体により形成されて導体線本体3aを覆う被覆3bと、を備えている。
図3では、給電線3が、導体線本体3aと被覆3bとを備える導体線を1本備える場合を例示しているが、給電線3が、導体線本体3aと被覆3bとを備える導体線を複数本束ねた導体線束と、当該導体線束の周囲を覆う絶縁被覆と、を備える構成としてもよい。
【0019】
移動体1は、給電線3から電力の供給を受ける受電装置15を備えている。本実施形態では、受電装置15は、給電線3から非接触で電力の供給を受ける。
図3や後に参照する
図6に示すように、本実施形態では、2本の給電線3が移動経路2に沿って配置され、受電装置15は、2本の給電線3の間に配置された状態で、これら2本の給電線3から非接触で電力の供給を受ける。
図3に示す例では、1本の給電線3が一対のレール20の一方に沿って配置され、別の1本の給電線3が一対のレール20の他方に沿って配置されている。
【0020】
図2に簡略化して示すように、給電線3及び後述する感熱線4は、電源装置5から出て移動経路2に沿って延在して、当該電源装置5(言い換えれば、同じ電源装置5)に戻ってくるように配置される。すなわち、給電線3及び感熱線4は、閉ループを形成するように配置される。上述したように、本実施形態では、2本の給電線3が移動経路2に沿って配置されるが、これら2本の給電線3は同じ閉ループを構成する。
【0021】
1つの閉ループは、1本の連続する給電線3によって形成されても、コネクタや端子台等の接続部を介して互いに接続された複数本の給電線3によって形成されてもよい。同様に、1つの閉ループは、1本の連続する感熱線4によって形成されても、コネクタや端子台等の接続部を介して互いに接続された複数本の感熱線4によって形成されてもよい。また、1本の連続する給電線3における延在方向(当該給電線3の延在方向)の互いに異なる部分のそれぞれを、1本の給電線3とみなしてもよい。例えば、本実施形態では上述したように2本の給電線3が移動経路2に沿って配置されるが、これら2本の給電線3は、接続部を介して互いに接続された2本の給電線3であっても、1本の連続する給電線3における延在方向の互いに異なる部分のそれぞれを1本の給電線3とみなした場合の2本の給電線3であってもよい。同様に、1本の連続する感熱線4における延在方向(当該感熱線4の延在方向)の互いに異なる部分のそれぞれを、1本の感熱線4とみなしてもよい。
【0022】
移動体1の少なくとも一部の動作(例えば、移動経路2に沿って移動する移動動作)は、受電装置15が受電した電力を用いて行われる。すなわち、受電装置15が受電した電力は、移動体1を動作させるためのアクチュエータ(例えば、上述した走行駆動部12)に供給される。受電装置15は、例えば、ピックアップコイルを備える。ピックアップコイルには、交流電流が供給された給電線3の周囲に生じる磁界により、交流の電力が誘起される。この交流の電力は、例えば直流に変換されて、移動体1を動作させるためのアクチュエータに供給される。
【0023】
図2に示すように、本実施形態では、給電設備100は、給電線3と当該給電線3に接続された電源装置5との組である給電ユニットを、複数備えている。すなわち、給電設備100は、複数の給電線3と、複数の給電線3のそれぞれに接続される電源装置5と、を備えている。ここで、「複数の給電線3」とは、電源装置5から出て移動経路2に沿って延在して当該電源装置5に戻ってくるように配置される給電線3を1つの給電線3として、このような給電線3が複数存在することを意味する。
【0024】
複数の給電ユニットのそれぞれは、担当する給電エリアにおいて移動体1に対して電力を供給する。互いに異なる2つの電源装置5を第1電源装置51及び第2電源装置52として、
図6において、第1電源装置51に接続された給電線3(但し、第1電源装置51と後述するターミナルボックスTとの間の部分は除く)が配置されたエリアは、第1電源装置51から電力が供給される給電エリアであり、第2電源装置52に接続された給電線3(但し、第2電源装置52と後述するターミナルボックスTとの間の部分は除く)が配置されたエリアは、第2電源装置52から電力が供給される給電エリアである。詳細は省略するが、給電エリア間の乗継部においても移動体1が電力の供給を受けることができるように、当該乗継部に配置される2つの給電線3のそれぞれの交流電流の位相が一致するように、複数の電源装置5が制御される。
【0025】
給電設備100は、給電線3に加えて、給電線3に沿って配置された感熱線4を備えている。感熱線4は、給電線3と共に移動経路2に沿って延在するように配置される。本実施形態では、給電設備100は複数の給電線3を備えており、感熱線4は、複数の給電線3のそれぞれに沿って配置される。
【0026】
図3に示すように、感熱線4は、一対の導線である第1導線41及び第2導線42を備えている。第1導線41及び第2導線42のそれぞれは、導体により形成された芯線4aが予め設定された温度で軟化する絶縁体4bにより被覆された被覆導体線とされている。そして、第1導線41と第2導線42との一対の導線を捻っていわゆるツイストペアとした撚り線を、更に被覆材4cによって被覆することによって、感熱線4が形成されている。感熱線4は、絶縁体4bが軟化すると、第1導線41の芯線4aと第2導線42の芯線4aとが接触して短絡するように構成されている。なお、絶縁体4bが軟化しても第1導線41及び第2導線42は被覆材4cによって被覆されているため、芯線4aが外部に露出することは抑制される。
【0027】
感熱線4は、給電線3やその周辺の異常発熱を検知できるように、給電線3に沿って配置される。
図3に示す例では、感熱線4は、給電線3に隣接する位置(ここでは、給電線3に対して外側から接触する位置)に配置されている。なお、給電線3が、上述したように導体線束と、当該導体線束の周囲を覆う絶縁被覆と、を備える場合には、感熱線4が、当該絶縁被覆の内側に内蔵される構成としてもよい。この場合、感熱線4は、例えば、給電線3の中心部に、導体線束を構成する複数の導体線により囲まれるように配置される。
【0028】
給電設備100は、感熱線4の異常を検出する異常検出装置6を備えている。異常検出装置6により感熱線4の異常が検出された場合、感熱線4の異常に対応するための異常時制御が、例えば後述する制御装置7により実行される。異常時制御は、例えば、電源装置5による給電線3への電力供給を停止する制御とされる。
【0029】
異常検出装置6により検出される感熱線4の異常には、発熱による感熱線4の短絡が含まれる。例えば、給電線3やその周辺の異常発熱により、感熱線4が短絡する。給電線3の異常発熱の原因として、例えば、過負荷に起因する過電流や短絡により給電線3が温度上昇したことが挙げられる。また、給電線3の周辺の異常発熱の原因として、例えば、給電線3の周辺に存在する金属(例えば、作業者が誤って置き忘れた金属製の工具)が、給電線3の周囲に発生する磁界の影響を受けて温度上昇したことが挙げられる。異常検出装置6により検出される感熱線4の異常に、感熱線4の短絡に加えて、設置不良や経年劣化等による感熱線4の断線が含まれる構成としてもよい。
【0030】
図4に示すように、本実施形態では、異常検出装置6は電源装置5に設けられている。具体的には、
図5に示すように、異常検出装置6は、電源装置5に内蔵された第1基板61を備えている。第1基板61は、感熱線4の異常を検出するための感熱線基板である。異常検出装置6は、更に、電源装置5に内蔵された第2基板62を備えている。第2基板62は、感熱線4の異常が発生した異常発生箇所9を特定するための異常発生箇所特定基板である。
【0031】
異常検出装置6と感熱線4との接続状態は、リレー等の切替装置60によって、第1基板61と感熱線4とが接続された第1接続状態(
図5において実線で示す状態)と、第2基板62と感熱線4とが接続された第2接続状態(
図5において破線で示す状態)と、に切り替えられる。異常検出装置6と感熱線4との接続状態は、通常時は第1接続状態とされ、異常検出装置6(具体的には、第1基板61)によって感熱線4の異常が検出された場合に、第2接続状態に切り替えられる。
【0032】
図5に示す例では、第1基板61は、信号出力部6cと第1検出回路6aと第2検出回路6bとを備えている。上述した第1接続状態で、感熱線4の一端は、信号出力部6c及び第1検出回路6aに接続され、感熱線4の他端は、第2検出回路6bに接続される。具体的には、第1導線41の一端が、信号出力部6cに接続され、第2導線42の一端が、第1検出回路6aに接続され、第1導線41の他端及び第2導線42の他端が、第2検出回路6bに接続される。
【0033】
信号出力部6cは、電源を構成する回路(例えば、DC/DCコンバータ)を備え、第1導線41及び第2導線42に電力を供給する。第1検出回路6aは、第2導線42の一端側の部分を流れる電流を監視する。第2検出回路6bは、第1導線41の他端と第2導線42の他端との接続部を流れる電流を監視する。第1検出回路6a及び第2検出回路6bは、例えば、コイルと接点とを有するメカニカルリレーを備える。第1検出回路6a及び第2検出回路6bは、それぞれの電流の監視対象箇所に電流(例えば、リレーの接点を閉じるために十分な電流、以下同様)が流れている場合、信号が検出されると判定し、それぞれの電流の監視対象箇所に電流が流れていない場合、信号が検出されないと判定する。
【0034】
感熱線4が正常である場合には、第1検出回路6a及び第2検出回路6bの双方において、信号が検出されると判定される。一方、感熱線4に短絡が発生している場合、第1検出回路6aにおいては信号が検出されると判定されるが、第2検出回路6bにおいては信号が検出されないと判定される。短絡の発生箇所よりも感熱線4の他端側(第2検出回路6bに接続される側)で断線が発生している場合も、同様に判定される。また、感熱線4に断線が発生している場合、第1検出回路6a及び第2検出回路6bの双方において、信号が検出されないと判定される。断線の発生箇所よりも感熱線4の他端側で短絡が発生している場合も、同様に判定される。
【0035】
異常検出装置6(具体的には、異常検出装置6が備える演算処理装置)は、第1検出回路6a及び第2検出回路6bの双方において信号が検出されている状態から、第1検出回路6aにおいては信号が検出され、且つ、第2検出回路6bにおいては信号が検出されない状態となった場合に、感熱線4に異常(具体的には、短絡)が発生したと判定する。また、異常検出装置6は、第1検出回路6a及び第2検出回路6bの双方において信号が検出されている状態から、第1検出回路6a及び第2検出回路6bの双方において信号が検出されない状態となった場合に、感熱線4に異常(具体的には、断線)が発生したと判定する。
【0036】
なお、第1基板61が第1検出回路6aを備えない構成とすることもできる。この場合、異常検出装置6は、第2検出回路6bにおいて信号が検出されている状態から、第2検出回路6bにおいて信号が検出されない状態となった場合に、感熱線4に異常が発生したと判定する。感熱線4の異常は、短絡であるか断線であるかを区別されずに検出される。
【0037】
図5に示す例では、第2基板62は、基準電圧発生部6dと電圧検出部6eと抵抗6fとを備えている。上述した第2接続状態で、第1導線41の一端は抵抗6fを介して基準電圧発生部6dに接続され、第2導線42の一端は接地され、第1導線41の他端と第2導線42の他端とが接続される。電圧検出部6eは、抵抗6fと第1導線41の一端との間の電圧を検出する。
【0038】
基準電圧発生部6dが発生する基準電圧は、抵抗6fと感熱線4の導体抵抗とで分圧される。ここで、感熱線4の導体抵抗は、異常発生箇所9(具体的には、短絡の発生箇所)に応じて変化する。具体的には、感熱線4の導体抵抗は、感熱線4の一端(基準電圧発生部6dに接続される側の端部)と異常発生箇所9との距離が長くなるに従って大きくなる。よって、基準電圧に対する電圧検出部6eによる検出値に基づき、異常検出装置6から異常発生箇所9までの距離(本実施形態では、電源装置5から異常発生箇所9までの距離と同一)を推定することができる。このように、異常検出装置6は、感熱線4の導体抵抗が異常発生箇所9(具体的には、短絡の発生箇所)に応じて変化することを利用して、異常発生箇所9までの距離を推定する。なお、ここで示した異常発生箇所9までの距離の推定方法は一例であり、他の推定方法を採用することもできる。
【0039】
次に、本実施形態に係る異常箇所特定システムSの構成について説明する。
図4に示すように、異常箇所特定システムSは、情報を表示する表示装置80と、表示装置80を制御する制御装置7と、給電設備100のマップデータ83を記憶した記憶装置82と、を備えている。本実施形態では、制御装置7は、電源装置5も制御する。なお、制御装置7は、電源装置5を制御する装置とは別の装置であってもよく、この場合、制御装置7は、電源装置5と通信可能に構成されていなくてもよい。異常箇所特定システムSは、更に、入力装置84を備えている。制御装置7の各機能は、例えば、演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により実現される。
【0040】
図4に示す各装置は、少なくとも概念的に区別されるものであり、2つ以上の装置(例えば、制御装置7と電源装置5)が共通の装置に設けられていてもよく、また、1つの装置が複数の装置の集合であってもよい。また、制御装置7が備える各機能部は、少なくとも論理的に区別されるものであり、物理的には必ずしも区別される必要はない。また、異常検出装置6の少なくとも一部の機能(例えば、感熱線4の異常を判定する機能や、異常発生箇所9までの距離を推定する機能)が、制御装置7によって実現されてもよい。
【0041】
制御装置7は、表示装置80の表示画面81(
図6~
図8参照)に表示する表示画像を生成し、当該表示画像が表示画面81に表示されるように表示装置80を制御する。表示装置80として、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを例示することができる。
図6~
図8では、表示画面81が表示装置80の外面に設けられる場合を例示しているが、表示画面81は、スクリーン等への投影画面であってもよい。
【0042】
制御装置7は、作業者等による入力装置84に対する操作(例えば、数値の入力操作や画面操作等)の内容を表す操作情報を取得する。制御装置7は、例えば、画面操作の内容に応じた表示画像を生成する。入力装置84として、キーボードやポインティングデバイス(マウス、タッチパッド、タッチパネル等)を例示することができる。なお、表示装置80は、表示画面81がタッチパネルとして機能する装置等の、入力装置84が一体化された装置であってもよい。
【0043】
記憶装置82は、情報を記憶及び書き換え可能な記憶媒体を備える。制御装置7は、記憶装置82を参照して、記憶装置82に記憶されている情報(例えば、マップデータ83に含まれる情報)を取得する。記憶装置82として、フラッシュメモリやハードディスクドライブを例示することができる。記憶装置82は、制御装置7と通信可能なサーバ又はクラウドサーバに設けられていてもよい。
【0044】
記憶装置82に記憶されるマップデータ83には、電源装置5の配置を示した電源配置情報と、電源装置5に接続された給電線3の配置を示した給電線配置情報と、給電線3に沿って配置された感熱線4の配置を示した感熱線配置情報と、が含まれる。マップデータ83には、後述するマップMを表示するために必要な他の情報が更に含まれていてもよい。他の情報として、移動経路2のレイアウトの情報や移動経路2に設定されたアドレス(番地)の情報を例示することができる。
【0045】
本実施形態では、給電設備100は、複数の給電線3と、複数の電源装置5と、を備えている。そのため、マップデータ83に含まれる電源配置情報は、複数の電源装置5の配置を示した情報であり、マップデータ83に含まれる給電線配置情報は、複数の電源装置5のそれぞれに接続された給電線3の配置を示した情報であり、感熱線配置情報は、複数の給電線3のそれぞれに沿って配置された感熱線4の配置を示した情報である。
【0046】
制御装置7は、距離情報取得部71と、異常箇所表示処理部72と、を備えている。本実施形態では、制御装置7は、更に、電源特定情報取得部70を備えている。
【0047】
距離情報取得部71は、異常検出装置6により感熱線4の異常が検出された場合に、電源装置5(具体的には、後述する対象電源装置)から感熱線4の異常が発生した位置までの距離を示す距離情報を取得する機能部である。本実施形態では、距離情報取得部71は、作業者が入力装置84を用いて入力した距離の値を、距離情報として取得する。例えば、異常検出装置6(具体的には、第2基板62)により推定された異常発生箇所9までの距離の値が、電源装置5の表示部等に表示され、表示された当該値を作業者が入力装置84を用いて入力する。この場合、例えば、電源装置5に異常が発生している場合には、電源装置5の表示部等に距離の値としてゼロが表示される構成とすると、感熱線4の異常と電源装置5の異常との切り分けを行いやすい。なお、上記のように作業者が距離の値を入力する構成に代えて、例えば、距離情報取得部71が、制御装置7と異常検出装置6或いは電源装置5との通信により、異常検出装置6により推定された異常発生箇所9までの距離の値を、距離情報として取得する構成とすることもできる。
【0048】
異常検出装置6が電源装置5とは別の箇所に設けられている場合等において、作業者により又は通信により制御装置7に入力される距離の値が、電源装置5とは異なる基準箇所から異常発生箇所9までの距離の値である場合には、距離情報取得部71は、制御装置7に入力される距離の値に基づく演算(例えば、電源装置5と基準箇所との距離の値の加算)により、電源装置5から異常発生箇所9まで距離の値を取得する。
【0049】
電源特定情報取得部70は、異常が発生した感熱線4が沿う給電線3に接続された電源装置5である対象電源装置を特定する電源特定情報を取得する機能部である。本実施形態では、作業者が入力装置84を用いて電源装置5を指定し、電源特定情報取得部70は、作業者により指定された電源装置5を特定する情報を、電源特定情報として取得する。例えば、警告音や警告灯、画面表示等による異常報知によって、作業者は、異常が発生した感熱線4が沿う給電線3に接続された電源装置5(言い換えれば、異常が発生した感熱線4が接続された電源装置5)を特定し、特定した電源装置5を入力装置84を用いて指定する。作業者は、例えば、後述するマップM上で電源装置5をクリック操作等で選択することで、或いは、電源装置5を特定する番号を入力することで、電源装置5を指定する。なお、このような構成に代えて、例えば、距離情報取得部71が、制御装置7と異常検出装置6或いは電源装置5との通信により、電源特定情報を取得する構成とすることもできる。
【0050】
異常箇所表示処理部72は、異常箇所推定処理と、表示処理と、を実行する機能部である。異常箇所推定処理は、距離情報に基づいて感熱線4の異常が発生した異常発生箇所9の位置を推定する処理である。本実施形態では、異常箇所推定処理では、距離情報と電源特定情報とに基づいて異常発生箇所9の位置を推定する。表示処理は、マップデータ83に基づいて感熱線4の配置を示したマップMを表示装置80に表示させると共に、異常箇所推定処理により推定した異常発生箇所9の推定位置EをマップM上に表示させる処理である。
【0051】
図6は、表示処理によってマップMが表示画面81に表示されている様子を示している。
図6には、移動経路2のレイアウト(
図1参照)の一部の領域における感熱線4の配置を示したマップMが示されている。このマップMには更に、移動経路2、給電線3、電源装置5、後述するターミナルボックスT、移動経路2のアドレス(ここでは“0000”等の数値)が表示されている。ここでは、第1電源装置51及び第2電源装置52の2つの電源装置5、第1電源装置51に接続された給電線3、当該給電線3に沿って配置された感熱線4(第1電源装置51に接続された感熱線4)、第2電源装置52に接続された給電線3、及び、当該給電線3に沿って配置された感熱線4(第2電源装置52に接続された感熱線4)が、表示されている。なお、例えば、電源装置5、給電線3における電源装置5とターミナルボックスTとの間の部分、感熱線4における電源装置5とターミナルボックスTとの間の部分等については、見やすさを考慮して、マップM上における現実とは異なる場所に表示してもよい。
【0052】
図2に簡略化して示すように、本実施形態では、給電線3及び感熱線4は、電源装置5から出て当該電源装置5(言い換えれば、同じ電源装置5)に戻ってくる周回経路Pを構成するように配置されている。ここで、周回経路Pの周回方向Cの一方側を第1側C1とし、第1側C1とは反対側を第2側C2とする。本実施形態では、給電設備100はターミナルボックスTを備えており、給電線3における電源装置5からターミナルボックスTまで第1側C1に延びる第1部分と、給電線3における電源装置5からターミナルボックスTまで第2側C2に延びる第2部分とは、周囲に磁界を発生し難くするために(言い換えれば、無誘導線を構成するように)隣接して配置されている。そのため、
図6に示す例では、給電線3における電源装置5とターミナルボックスTとの間の部分を、1本の線分で表している。
図6に示す例では、感熱線4における電源装置5とターミナルボックスTとの間の部分も、1本の線分で表している。
【0053】
異常箇所表示処理部72は、異常箇所推定処理において、電源装置5(具体的には、対象電源装置、以下同様)から距離情報(距離情報取得部71が取得した距離情報)が示す距離だけ感熱線4に沿って進んだ位置を、異常発生箇所9の位置と推定する。具体的には、異常箇所表示処理部72は、異常箇所推定処理において、電源装置5から距離情報が示す距離だけ周回経路P(感熱線4が構成する周回経路P、以下同様)に沿って第1側C1に進んだ位置である第1位置E1と、電源装置5から距離情報が示す距離だけ周回経路Pに沿って第2側C2に進んだ位置である第2位置E2とを、異常発生箇所9の位置として推定する。そして、異常箇所表示処理部72は、
図7に示すように、表示処理において、第1位置E1と第2位置E2との双方を異常発生箇所9の推定位置EとしてマップM上に表示させる。なお、
図7では、
図6とは異なり、給電線3は表示されていない。
【0054】
図7では、対象電源装置(異常が発生した感熱線4が沿う給電線3に接続された電源装置5)が第1電源装置51である状況を想定している。そして、
図7では、第1電源装置51から距離情報が示す距離だけ周回経路Pに沿って第1側C1に進んだ第1位置E1と、第1電源装置51から距離情報が示す距離だけ周回経路Pに沿って第2側C2に進んだ第2位置E2との2つの推定位置Eが、マップM上に表示されている。ここでは、推定位置Eが、二重丸のマークで示されている。
【0055】
ここで、異常箇所表示処理部72が、表示処理において、電源装置5(具体的には、対象電源装置)から異常発生箇所9の推定位置Eまでの感熱線4の配置経路を、他の部分の感熱線4の配置経路に比べて強調して表示する構成とすると好適である。例えば、色彩(色調、明度等)を異ならせること、太さを異ならせること、形状(実線、破線、一点鎖線等)を異ならせること、或いはこれらの組み合わせによって、電源装置5から異常発生箇所9の推定位置Eまでの感熱線4の配置経路を、他の部分の感熱線4の配置経路に比べて強調して表示することができる。
図7に示す例では、符号“H”で示すように、第1電源装置51から第1位置E1までの感熱線4の配置経路と、第1電源装置51から第2位置E2までの感熱線4の配置経路との双方を、他の部分の感熱線4の配置経路よりも太くしている。なお、
図7では、第1位置E1と第2位置E2との双方が強調表示の対象とされているが、第1位置E1と第2位置E2とのいずれか一方のみ(例えば、作業者が選択した方)を強調表示の対象としてもよい。
【0056】
例えば、異常箇所特定システムSを以下のように構成すると、電源装置5から異常発生箇所9の推定位置Eまでの感熱線4の配置経路の特定が容易になる。制御装置7は、異常発生箇所9を表示させるための異常箇所表示操作を受け付け可能に構成される。そして、異常箇所表示処理部72は、異常箇所表示操作を受け付けていない状態では、表示処理において、電源装置5(具体的には、対象電源装置、以下同様)と異常発生箇所9の推定位置Eとの双方をマップM上に表示させ、又は、電源装置5から異常発生箇所9の推定位置Eまでの感熱線4の経路の全体をマップM上に表示させる。
図7に示す例では、電源装置5から異常発生箇所9の推定位置E(ここでは、第1位置E1及び第2位置E2の双方)までの感熱線4の経路の全体がマップM上に表示されている。
【0057】
そして、異常箇所表示処理部72は、異常箇所表示操作を受け付けた場合には、表示処理において、異常発生箇所9の推定位置Eの周辺のマップMを表示装置80に表示する。具体的には、異常箇所表示操作として第1位置E1を選択する操作(例えば、入力装置84を用いたクリック操作)が受け付けられた場合には、第1位置E1の周辺のマップMが表示され、異常箇所表示操作として第2位置E2を選択する操作が受け付けられた場合には、
図8(d)に示す例のように、第2位置E2の周辺のマップMが表示される。ここで、異常発生箇所9の推定位置Eの周辺のマップMを表示装置80に表示する場合に、
図8(d)に示す例のように、通常表示処理(異常箇所表示操作を受け付けていない状態、
図7参照)よりも異常発生箇所9の推定位置Eの周辺を拡大して表示すると好適である。
【0058】
また、上記の構成に加えて或いは上記の構成に代えて、異常箇所特定システムSを以下のように構成しても、電源装置5から異常発生箇所9の推定位置Eまでの感熱線4の配置経路の特定が容易になる。制御装置7は、動画再生要求操作を受け付け可能に構成される。動画再生要求操作は、例えば、入力装置84を用いた“動画再生”を表すボタンイメージに対するクリック操作とされる。そして、異常箇所表示処理部72は、動画再生要求操作を受け付けた場合には、表示処理において、表示装置80に表示するマップMの基準位置Aを、電源装置5(具体的には、対象電源装置)から異常発生箇所9の推定位置Eまでの感熱線4の配置経路に沿って移動させながらマップMを表示する動画再生処理を実行する。
図8では、第2位置E2(
図7参照)を対象とする動画再生要求操作が行われた場合に表示されるマップMを、
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)、
図8(d)の順に時系列的に示している。ここでは、基準位置Aが、推定位置Eと同じ二重丸のマークで示されている。
【0059】
図8(a)~
図8(d)に示す例では、基準位置AがマップMの表示領域(ここでは、表示画面81の全域)の中心位置に配置されるように、マップMが表示されている。なお、基準位置AがマップMの表示領域の中心位置とは異なる位置に配置されるように、マップMを表示してもよい。例えば、移動経路2のレイアウトの端に近い等の理由で、表示させる対象物(表示対象物)がいずれかの側に存在しない場合には、基準位置AがマップMの表示領域の中心位置に対して表示対象物が存在しない側に配置されるように、マップMを表示してもよい。この場合、表示対象物が存在しない側とは反対側の表示領域が広くなるようにマップMを表示することができる。
【0060】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、異常箇所表示処理部72が、異常箇所推定処理において、電源装置5から距離情報が示す距離だけ周回経路Pに沿って第1側C1に進んだ位置である第1位置E1と、電源装置5から距離情報が示す距離だけ周回経路Pに沿って第2側C2に進んだ位置である第2位置E2とを、異常発生箇所9の位置として推定する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、推定位置Eを第1位置E1と第2位置E2とのいずれかに絞り込むことができる場合には、第1位置E1と第2位置E2とのいずれか一方のみを異常発生箇所9の位置として推定する構成としてもよい。例えば、第2基板62(具体的には、基準電圧発生部6d、
図5参照)との接続部から周回経路Pに沿って離れる側が、第1側C1であると特定できる場合には、第1位置E1のみを異常発生箇所9の位置として推定できる。また、例えば、第2基板62との接続部から周回経路Pに沿って離れる側が、第2側C2であると特定できる場合には、第2位置E2のみを異常発生箇所9の位置として推定できる。
【0061】
(2)上記の実施形態では、給電設備100が、給電線3と当該給電線3に接続された電源装置5との組である給電ユニットを、複数備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、給電設備100が給電ユニットを1つのみ備える構成とすることもできる。この場合、上記の実施形態とは異なり、制御装置7に電源特定情報取得部70を設ける必要はない。
【0062】
(3)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0063】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、上記において説明した異常箇所特定システムの概要について説明する。
【0064】
異常箇所特定システムは、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に対して電力を供給する給電線と、前記給電線に接続され、前記給電線に電力を供給する電源装置と、前記給電線に沿って配置された感熱線と、前記感熱線の異常を検出する異常検出装置と、を備えた給電設備において、前記感熱線の異常が発生した箇所を特定するための異常箇所特定システムであって、情報を表示する表示装置と、前記表示装置を制御する制御装置と、前記給電設備のマップデータを記憶した記憶装置と、を備え、前記マップデータには、前記電源装置の配置を示した電源配置情報と、前記電源装置に接続された前記給電線の配置を示した給電線配置情報と、前記給電線に沿って配置された前記感熱線の配置を示した感熱線配置情報と、が含まれ、前記制御装置は、前記異常検出装置により前記感熱線の異常が検出された場合に、前記電源装置から前記感熱線の異常が発生した位置までの距離を示す距離情報を取得する距離情報取得部と、異常箇所表示処理部と、を備え、前記異常箇所表示処理部は、前記距離情報に基づいて前記感熱線の異常が発生した異常発生箇所の位置を推定する異常箇所推定処理と、前記マップデータに基づいて前記感熱線の配置を示したマップを前記表示装置に表示させると共に、前記異常箇所推定処理により推定した前記異常発生箇所の推定位置を前記マップ上に表示させる表示処理と、を実行する。
【0065】
本構成によれば、短絡や断線等の感熱線の異常が検出された場合に、表示装置に表示される感熱線の配置を示したマップ上に(すなわち、感熱線の配線レイアウト上に)、感熱線の異常が発生した異常発生箇所の推定位置を表示させることができる。従って、作業者は、表示装置に表示される情報から、感熱線の配線レイアウト上における異常発生箇所の推定位置を、容易に把握することができる。これにより、例えば点検や修理等のために作業者が異常発生箇所に向かう場合に、給電設備におけるどの場所で感熱線の異常が発生しているかを作業者が容易に把握することができる。
【0066】
以上のように、本構成によれば、感熱線の異常が発生した異常発生箇所の、感熱線の配線レイアウト上における推定位置を、作業者が容易に把握することが可能となっている。
【0067】
ここで、前記給電線及び前記感熱線は、前記電源装置から出て前記移動経路に沿って延在して、当該電源装置に戻ってくるように配置されており、前記異常箇所表示処理部は、前記異常箇所推定処理において、前記電源装置から前記距離情報が示す距離だけ前記感熱線に沿って進んだ位置を、前記異常発生箇所の位置と推定すると好適である。
【0068】
本構成によれば、感熱線の異常が検出された場合に、表示装置に表示される異常発生箇所の推定位置を、高精度に推定することが可能となる。
【0069】
上記のように前記異常発生箇所の位置を推定する構成において、前記感熱線が、前記電源装置から出て当該電源装置に戻ってくる周回経路を構成するように配置され、前記周回経路の周回方向の一方側を第1側とし、前記第1側とは反対側を第2側として、前記異常箇所表示処理部は、前記異常箇所推定処理において、前記電源装置から前記距離情報が示す距離だけ前記周回経路に沿って前記第1側に進んだ位置である第1位置と、前記電源装置から前記距離情報が示す距離だけ前記周回経路に沿って前記第2側に進んだ位置である第2位置とを、前記異常発生箇所の位置として推定し、前記表示処理において、前記第1位置と前記第2位置との双方を前記異常発生箇所の推定位置として前記マップ上に表示させると好適である。
【0070】
本構成によれば、感熱線が周回経路を構成するように配置される場合には、電源装置から同じ距離だけ感熱線に沿って進んだ位置は基本的に2つ存在することを考慮して、表示装置に、感熱線の配線レイアウト上における異常発生箇所の推定位置の候補となる2つの位置を表示させることができる。
【0071】
上記の各構成の異常箇所特定システムにおいて、前記制御装置は、前記異常発生箇所を表示させるための異常箇所表示操作を受け付け可能に構成され、前記異常箇所表示処理部は、前記異常箇所表示操作を受け付けていない状態では、前記表示処理において、前記電源装置と前記異常発生箇所の推定位置との双方を前記マップ上に表示させ、又は、前記電源装置から前記異常発生箇所の推定位置までの前記感熱線の経路の全体を前記マップ上に表示させ、前記異常箇所表示操作を受け付けた場合には、前記表示処理において、前記異常発生箇所の推定位置の周辺の前記マップを前記表示装置に表示すると好適である。
【0072】
本構成によれば、作業者は、電源装置と異常発生箇所の推定位置との双方がマップ上に表示されている状態で、又は、電源装置から異常発生箇所の推定位置までの感熱線の経路の全体がマップ上に表示されている状態で、電源装置と異常発生箇所との位置関係を容易に把握することができる。また、作業者は、異常箇所表示操作を行って、異常発生箇所の推定位置の周辺のマップを表示装置に表示させることで、異常発生箇所の周辺における給電設備の構造を容易に把握することができる。
【0073】
また、前記異常箇所表示処理部は、前記表示処理において、前記電源装置から前記異常発生箇所の推定位置までの前記感熱線の配置経路を、他の部分の前記感熱線の配置経路に比べて強調して表示すると好適である。
【0074】
本構成によれば、電源装置から異常発生箇所の推定位置までの感熱線の配置経路の特定が容易になるような情報を、表示装置に表示させることができる。
【0075】
また、前記制御装置は、動画再生要求操作を受け付け可能に構成され、前記異常箇所表示処理部は、前記動画再生要求操作を受け付けた場合には、前記表示処理において、前記表示装置に表示する前記マップの基準位置を、前記電源装置から前記異常発生箇所の推定位置までの前記感熱線の配置経路に沿って移動させながら前記マップを表示する動画再生処理を実行すると好適である。
【0076】
本構成によれば、電源装置から異常発生箇所の推定位置までの感熱線の配置経路の形状だけでなく方向の特定も容易になるような情報を、表示装置に表示させることができる。
【0077】
本開示に係る異常箇所特定システムは、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0078】
1:移動体
2:移動経路
3:給電線
4:感熱線
5:電源装置
6:異常検出装置
7:制御装置
9:異常発生箇所
71:距離情報取得部
72:異常箇所表示処理部
80:表示装置
82:記憶装置
83:マップデータ
100:給電設備
A:基準位置
C:周回方向
C1:第1側
C2:第2側
E:推定位置
E1:第1位置
E2:第2位置
M:マップ
P:周回経路
S:異常箇所特定システム