(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179580
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02F 11/00 20060101AFI20241219BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F02F11/00 P
F02B67/06 D
F02B67/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098542
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西薗 円
(57)【要約】
【課題】ボルトの座面とクランクプーリの外面との間からオイルが浸み出すことを防止するための技術を提供する。
【解決手段】 本明細書で開示する内燃機関は、クランクプーリをクランクシャフトに対して固定しているボルトと、クランクシャフトの端面とボルトの座面との間において、クランクプーリのボス部の内周面とボルトの外周面との間をシールするリング状のシール部材と、を備え、シール部材の外周面は、ボス部の内周面に設けられたキー溝に嵌合する突出部を有し、シール部材のクランクシャフト側に位置する端面は、ボス部の内周面に接触する外周部分から、ボルトの外周面に隣接する内周部分にかけて、凹状に湾曲又は屈曲している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックと、
前記シリンダブロック内で回転可能に支持されているとともに、その一端部が前記シリンダブロックの側面から突出しているクランクシャフトと、
前記シリンダブロックの外側において、前記クランクシャフトの前記一端部に取り付けられたスプロケットと、
前記シリンダブロックの側面に取り付けられており、前記スプロケットを収容するチェーン室を形成するとともに、前記クランクシャフトの前記一端部における端面を外部へ露出する開口を有するカバーと、
前記カバーの外側において、前記クランクシャフトの前記一端部に取り付けられたクランクプーリと、
前記カバーの前記開口と前記クランクプーリのボス部との間に設けられ、前記チェーン室から外部へのオイル流出を防止するオイルシールと、
前記クランクシャフトの前記端面に締結されており、前記クランクプーリを前記クランクシャフトに対して固定しているボルトと、
前記クランクシャフトの前記端面と前記ボルトの座面との間において、前記クランクプーリの前記ボス部の内周面と前記ボルトの外周面との間をシールするリング状のシール部材と、
を備え、
前記シール部材の外周面は、前記ボス部の前記内周面に設けられたキー溝に嵌合する突出部を有し、
前記シール部材の前記クランクシャフト側に位置する端面は、前記ボス部の前記内周面に接触する外周部分から、前記ボルトの前記外周面に隣接する内周部分にかけて、凹状に湾曲又は屈曲している、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、内燃機関を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の内燃機関は、クランクシャフトの一端部に取り付けられたスプロケット及びクランクプーリと、クランクシャフトの一端部における端面に締結されており、クランクプーリをクランクシャフトに対して固定するボルトと、を備える。クランクシャフトの端面とボルトの座面との間には、クランクプーリのボス部の内周面によって囲まれた空間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランクシャフトとスプロケットとの間、及び、クランクシャフトとクランクプーリのボス部との間には、スプロケットに取り付けられるチェーンを潤滑するオイルが流入する。流入したオイルは、クランクプーリのボス部の内周面によって囲まれた空間に溜まり得る。ボルトの座面は、クランクプーリの外面に当接しているが、座面の表面粗さが粗いと、上記の空間に溜まったオイルがボルトの座面とクランクプーリの外面との間から浸み出す可能性がある。本明細書では、ボルトの座面とクランクプーリの外面との間からオイルが浸み出すことを防止するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する内燃機関は、シリンダブロックと、前記シリンダブロック内で回転可能に支持されているとともに、その一端部が前記シリンダブロックの側面から突出しているクランクシャフトと、前記シリンダブロックの外側において、前記クランクシャフトの前記一端部に取り付けられたスプロケットと、前記シリンダブロックの側面に取り付けられており、前記スプロケットを収容するチェーン室を形成するとともに、前記クランクシャフトの前記一端部における端面を外部へ露出する開口を有するカバーと、前記カバーの外側において、前記クランクシャフトの前記一端部に取り付けられたクランクプーリと、前記カバーの前記開口と前記クランクプーリのボス部との間に設けられ、前記チェーン室から外部へのオイル流出を防止するオイルシールと、前記クランクシャフトの前記端面に締結されており、前記クランクプーリを前記クランクシャフトに対して固定しているボルトと、前記クランクシャフトの前記端面と前記ボルトの座面との間において、前記クランクプーリの前記ボス部の内周面と前記ボルトの外周面との間をシールするリング状のシール部材と、を備え、前記シール部材の外周面は、前記ボス部の前記内周面に設けられたキー溝に嵌合する突出部を有し、前記シール部材の前記クランクシャフト側に位置する端面は、前記ボス部の前記内周面に接触する外周部分から、前記ボルトの前記外周面に隣接する内周部分にかけて、凹状に湾曲又は屈曲している。
【0006】
上記の構成によれば、シール部材の突出部がキー溝を埋め、ボス部の内周面によって囲まれた空間内に、シール部材とクランクシャフトの間にオイルが溜まる閉じた空間が形成される。さらに、この閉じた空間に溜まるオイルは、凹状に湾曲又は屈曲しているシール部材の端面によって、ボルトの座面から遠いクランクシャフト側へと案内される。即ち、流入したオイルがボルトの座面に到達し難くなり、ボルトの座面とクランクプーリの外面との間からオイルが浸み出すことを防止することができる。
【0007】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
(内燃機関2の構成;
図1、
図2)
内燃機関2は、シリンダブロック10と、シリンダヘッド12と、クランクシャフト14と、スプロケット16と、カバー18と、クランクプーリ20と、オイルシール22と、ボルト24と、シール部材26と、を備える。
【0010】
シリンダブロック10は、クランクシャフト14をシリンダブロック10内で回転可能に支持する。シリンダブロック10の上部の開口は、シリンダヘッド12によって覆われる。クランクシャフト14の一端部は、シリンダブロック10の側面10aから突出している。
【0011】
スプロケット16は、シリンダブロック10の外側において、クランクシャフト14の一端部に取り付けられている。スプロケット16には、チェーン(図示省略)が取り付けられる。また、スプロケット16の内周面には、キー溝16aが形成されており、キー溝16aに嵌合するキー28によって、クランクシャフト14に対するスプロケット16の回転が規制されている。
【0012】
カバー18は、シリンダブロック10の側面10aに取り付けられている。カバー18は、スプロケット16を収容するチェーン室18aを形成する。チェーン室18aには、スプロケット16のチェーンを潤滑するオイルが注入される。カバー18は、クランクシャフト14の一端部における端面14aを外部へ露出する開口18bを有する。
【0013】
クランクプーリ20は、カバー18の外側において、クランクシャフト14の一端部に取り付けられている。クランクプーリ20は、クランクプーリ20をクランクシャフト14に固定するためのボス部20aを有する。ボス部20aは、カバー18の開口18bを通る。また、ボス部20aの内周面20bには、キー溝20cが形成されており、キー溝20cに嵌合するキー28によって、クランクシャフト14に対するクランクプーリ20の回転が規制されている。
【0014】
オイルシール22は、カバー18の開口18bとクランクプーリ20のボス部20aとの間に設けられている。オイルシール22は、チェーン室18aからカバー18の外部へのオイル流出を防止する。
【0015】
ボルト24は、クランクシャフト14の端面14aに締結されており、クランクプーリ20及びスプロケット16をクランクシャフト14に対して固定している。
【0016】
シール部材26は、リング状の部材であり、例えば、ゴム素材で製造されている。シール部材26は、クランクシャフト14の端面14aとボルト24の座面24aとの間において、クランクプーリ20のボス部20aの内周面20bとボルト24の外周面24bとの間をシールする。シール部材26は、例えば、ボルト24の座面24aとクランクシャフト14の端面14aの間における中間に配置される。
【0017】
シール部材26の外周面は、ボス部20aの内周面20bに設けられたキー溝20cに嵌合する突出部26aを有する。突出部26aは、シール部材26のクランクシャフト14側に位置する端面26bからクランクシャフト14側へと延び、クランクシャフト14の端面14aに当接する。突出部26aが端面14aに当接することにより、端面14aからシール部材26までの距離が所定の距離に決定される(即ち、シール部材26が位置決めされる)。
【0018】
シール部材26のクランクシャフト14側に位置する端面26bは、ボス部20aの内周面20bに接触する外周部分26cから、ボルト24の外周面24bに隣接する内周部分26dにかけて、凹状に湾曲している。別言すれば、端面26bは、クランクシャフト14側に開口する円弧状の断面の溝26eを有する。なお、変形例では、端面26bは、外周部分26cから内周部分26dにかけて凹状に屈曲していてもよい。別言すれば、溝26eの断面は、クランクシャフト14側に開口するV字状の断面であってもよい。
【0019】
(本実施例の効果;
図3)
図3に示す矢印は、チェーン室18aからボス部20aの内周面20bに囲まれた空間30へ流入するオイルを示す。例えば、スプロケット16のキー溝16aとキー28との間、スプロケット16とボス部20aとの間、及び、ボス部20aのキー溝20cとキー28との間に、僅かな隙間が存在する。オイルは、これらの隙間を介して、空間30へ流入する。ボルト24の座面24aは、クランクプーリ20の外面に当接しているが、座面24aの表面粗さが粗いと、空間30に溜まったオイルが座面24aとクランクプーリ20の外面との間から浸み出す可能性がある。
【0020】
本実施例は、上記の問題に対処するために、シール部材26を有する。具体的には、シール部材26の突出部26aがキー溝20cを埋め、空間30内に、シール部材26とクランクシャフト14の間にオイルが溜まる閉じた空間が形成される。さらに、この閉じた空間に溜まるオイルは、シール部材26の端面26bに形成されている湾曲断面の溝26eによって、ボルト24の座面24aから遠いクランクシャフト14側へと案内される。即ち、流入したオイルがボルト24の座面24aに到達し難くなり、ボルト24の座面24aとクランクプーリ20の外面との間からオイルが浸み出すことを防止することができる。
【0021】
(対応関係)
内燃機関2が、「内燃機関」の一例である。シリンダブロック10、クランクシャフト14、スプロケット16が、それぞれ、「シリンダブロック」、「クランクシャフト」、「スプロケット」の一例である。カバー18、チェーン室18a、開口18bが、それぞれ、「カバー」、「チェーン室」、「開口」の一例である。クランクプーリ20、ボス部20a、キー溝20cが、それぞれ、「クランクプーリ」、「ボス部」、「キー溝」の一例である。オイルシール22、ボルト24が、それぞれ、「オイルシール」、「ボルト」の一例である。シール部材26、突出部26a、外周部分26c、内周部分26dが、それぞれ、「シール部材」、「突出部」、「外周部分」、「内周部分」の一例である。
【符号の説明】
【0022】
2:内燃機関、10:シリンダブロック、10a:側面、12:シリンダヘッド、14:クランクシャフト、14a:端面、16:スプロケット、16a:キー溝、18:カバー、18a:チェーン室、18b:開口、20:クランクプーリ、20a:ボス部、20b:内周面、20c:キー溝、22:オイルシール、24:ボルト、24a:座面、24b:外周面、26:シール部材、26a:突出部、26b:端面、26c:外周部分、26d:内周部分、26e:溝、28:キー、30:空間