(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179582
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液面浮遊物回収装置(揺動ゲート口機構)
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20230101AFI20241219BHJP
【FI】
C02F1/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098545
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】391001044
【氏名又は名称】株式会社ワールドケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】森 渉
(72)【発明者】
【氏名】海老原 透
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄輝
【テーマコード(参考)】
4D051
【Fターム(参考)】
4D051AA01
4D051AA04
4D051AB01
4D051DC02
4D051DC14
4D051DD25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】塊状となった大きな液面浮遊物であっても確実且つ効率的に回収可能な液面浮遊物回収装置を提供する。
【解決手段】液面直下付近にゲート部22を位置させて液面浮遊物を回収する回収部2と、回収部を液層内において浮力保持するフロート3と、液体を吸引し、吸引した液体を回収部から送液するポンプ5と、送液管4と、を有する構成において、回収部は、回収部本体20と、回収部本体の上部に通液可能に接続されるホッパー部21と、ホッパー部の外周に上方から嵌挿されるゲート部と、を有し、ゲート部は、液面に臨むゲート口部22Aとその下方に延伸するゲートパイプ部22Bと、を有して成り、ゲートパイプ部がホッパー部の外周との間に間隙を有する状態で嵌挿され、ゲートパイプ部とホッパー部との間を通過する水流とゲート口部から入り込む水流とのバランスに応じてゲート部がホッパー部に対して上下動可能に且つ全方位方向に傾斜揺動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカム・油が混入・浮遊する液層の液面直下付近にゲート部を位置させて該液面に浮上するスカム・油を含む液面浮遊物を回収する回収部と、該回収部に接続して該回収部を液層内において浮力保持するフロートと、回収部に接続される送液管と、を有して構成される液面浮遊物回収装置において、
前記回収部は、回収部本体と、該回収部本体の上部に通液可能に接続されるホッパー部と、該ホッパー部の外周に上方から嵌挿されるゲート部と、を有する構成であり、
前記ゲート部は、液面に臨むゲート口部と該ゲート口部の下方に延伸するゲートパイプ部と、を有して成り、
前記ゲートパイプ部が前記ホッパー部の外周との間に間隙を有する状態で嵌挿されることにより、ゲートパイプ部とホッパー部との間を通過する水流とゲート口部から入り込む水流とのバランスに応じてゲート部がホッパー部に対して上下動可能に且つ全方位方向に傾斜揺動可能であること、
を特徴とする液面浮遊物回収装置。
【請求項2】
前記ホッパー部が上方に向かって拡開するテーパー形状であり、該ホッパー部の外周と前記ゲートパイプ部との間の間隙が前記テーパー形状の下方から上方に向かって大から小となる構成であることを特徴とする請求項1に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項3】
前記ゲート口部が、平面視した際にリング形状であり、このリング形状の内径が前記ゲートパイプ部の内径と同径乃至は近似する径であると共に外径が前記ゲートパイプ部の外径より大きく該ゲートパイプの外側に張り出した形状であり、更にこのリング形状の上面が内周から外周に向かって下がる傾斜面であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項4】
前記ゲート部の比重が1より大であることを特徴とする請求項1に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項5】
前記フロートが、間隔を有して液層に浮かぶ2つから成り、この2つのフロートの中央に前記回収部が接続された構成であることを特徴とする請求項1に記載の液面浮遊物回収装置。
【請求項6】
液体を吸引する吸引動作と吸引した液体を回収部から送液する送液動作とを行うポンプを有し、該ポンプは、回収部の下方に接続されるか、又は回収部に接続される送液管を介して液層外に配設される構成のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の液面浮遊物回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液面浮遊物回収装置に関し、詳しくは塗装工場・食品工場・鉄鋼所・火力発電所・水産加工場・機械類工場等における種々処理槽の液面に浮上するスカム・油等の浮遊物を回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液面浮遊物の回収装置としては、流入口部をフロートの浮力により液面付近に保持することにより液面に浮上する浮遊物を流入させたり吸引する等して回収する構成が知られている。
【0003】
液面に浮上する油・スカム等の浮遊物を効率的に且つ確実に回収するためには、回収部の流入口部分である回収口部が液面に常に追従した状態となることが望ましい。
【0004】
しかし、液面浮遊物が比較的小径のものである場合には回収口部に円滑に流入するものの、直径が数mm程度以上のものである場合には回収口部の縁部に引っ掛かってしまい回収できない場合があることが判った。
【0005】
かかる事態を放置したまま回収作業を続けた場合、回収口部の周辺に回収できない浮遊物が滞留・滞積してしまって回収口部の周囲が塞がれ、本来は回収可能であった小径の浮遊物を含めて浮遊物の回収が困難となってしまうことさえあることが判った。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、フロートの近傍で波生成手段により液面を揺動させて波を起こし浮遊物の吸込口を上下動させることによって前記吸込口の外周縁に引っ掛かった大きな液面浮遊物を吸込み可能にする構成である。
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、発生する波によって液面に浮上していた油・スカム等の浮遊物が液層内に沈下してしまったり、水と混ざってしまうことがあり、回収効率が返って低下してしまう場合があるという問題点があることが判った。
【0008】
また、特許文献1の技術では、処理液量の多寡等によって変動する液層内の水位変移に応じて波生成手段の設置高さを変更調整させる構成が必須であり、部品点数の増加・構造の複雑化等により回収装置のコスト上昇を招くという不都合も考えられることが判った。
【0009】
そこで本願出願人は、特許文献2に記載の技術、即ち、既設である戻し管からの戻り水を利用し、この戻り水をフロートに掛け流すことにより回収口部を上下動させる構成によって液面に波を発生させることなく回収口部を上下動させることで、液面浮遊物が液層内に沈下したり水と混ざることがなく、小径から直径数mm程度以上の大きな浮遊物に至るまで回収が可能な技術を先に提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08-252577
【特許文献2】特開2013-150953
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、特許文献2の先提案技術について更に研究を進めたところ、直径数mm程度以上の液面浮遊物の回収では未だ不充分であり、更に大きな液面浮遊物、具体的には、直径数十mm以上のより大きな液面浮遊物や、この大きな液面浮遊物が複数集まって互いに付着して集合化して塊状となった液面浮遊物等、の回収技術が必要であることが判った。
【0012】
そこで本発明の課題は、集合化して塊状となったより大きな液面浮遊物であっても確実且つ効率的に回収することが可能な液面浮遊物回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0014】
1.スカム・油が混入・浮遊する液層の液面直下付近にゲート部を位置させて該液面に浮上するスカム・油を含む液面浮遊物を回収する回収部と、該回収部に接続して該回収部を液層内において浮力保持するフロートと、回収部に接続される送液管と、を有して構成される液面浮遊物回収装置において、
前記回収部は、回収部本体と、該回収部本体の上部に通液可能に接続されるホッパー部と、該ホッパー部の外周に上方から嵌挿されるゲート部と、を有する構成であり、
前記ゲート部は、液面に臨むゲート口部と該ゲート口部の下方に延伸するゲートパイプ部と、を有して成り、
前記ゲートパイプ部が前記ホッパー部の外周との間に間隙を有する状態で嵌挿されることにより、ゲートパイプ部とホッパー部との間を通過する水流とゲート口部から入り込む水流とのバランスに応じてゲート部がホッパー部に対して上下動可能に且つ全方位方向に傾斜揺動可能であること、
を特徴とする液面浮遊物回収装置。
【0015】
2.前記ホッパー部が上方に向かって拡開するテーパー形状であり、該ホッパー部の外周と前記ゲートパイプ部との間の間隙が前記テーパー形状の下方から上方に向かって大から小となる構成であることを特徴とする上記1に記載の液面浮遊物回収装置。
【0016】
3.前記ゲート口部が、平面視した際にリング形状であり、このリング形状の内径が前記ゲートパイプ部の内径と同径乃至は近似する径であると共に外径が前記ゲートパイプ部の外径より大きく該ゲートパイプの外側に張り出した形状であり、更にこのリング形状の上面が内周から外周に向かって下がる傾斜面であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の液面浮遊物回収装置。
【0017】
4.前記ゲート部の比重が1より大であることを特徴とする請求項1に記載の液面浮遊物回収装置。
【0018】
5.前記フロートが、間隔を有して液層に浮かぶ2つから成り、この2つのフロートの中央に前記回収部が接続された構成であることを特徴とする請求項1に記載の液面浮遊物回収装置。
【0019】
6.液体を吸引する吸引動作と吸引した液体を回収部から送液する送液動作とを行うポンプを有し、該ポンプは、回収部の下方に接続されるか、又は回収部に接続される送液管を介して液層外に配設される構成のいずれかであることを特徴とする上記1に記載の液面浮遊物回収装置。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に示す発明によれば、集合化して塊状となったより大きな液面浮遊物であっても確実且つ効率的に回収することが可能な液面浮遊物回収装置を提供することができる。
【0021】
特に、ゲート部のゲートパイプ部がホッパー部の外周との間に間隙を有する状態で嵌挿されており、回収装置を稼働(ポンプの作動開始)させることによってゲートパイプ部とホッパー部との間を通過する水流とゲート口部から入り込む水流との二つの水流の力のバランスによってゲート口部が液面直下付近に位置するまでゲート部全体が浮き上がる。
この浮き上がった状態で液面に浮遊する液面浮遊物がゲート口部から流入して回収されるが、液面に生じる波や、ゲート口部の周辺の様々な方向に浮遊する様々な大きさ・厚みの液面浮遊物がゲート口部から入り込む際の水流の乱れ等によって、前記の二つの水流の力のバランスが崩れてゲート部がホッパー部に対して360度全方位の内のいずれかの方向に傾くことになる。
このゲート部が傾いた側のゲート口部は液面との距離が離れて大きくなるため、この部分からゲート口部内に流入する水流が増すと共に大きな液面浮遊物であっても取り込むことができる。
二つの水流のバランスの崩れによって傾いたゲート部は、次いでその反動で元のバランスを取り戻そうとする揺り返し力が作用することによって傾いたゲート部が元の位置に復帰しようとするが、前記した液面に生じる波やゲート口部から入り込む際の水流の乱れ等によって、異なる方向に傾くことになるため、次はこの異なる方向に傾いた側のゲート口部と液面との距離が離れて大きくなり、この部分からゲート口部内に流入する水流が増すと共に大きな液面浮遊物が取り込まれることになる。
従って、回収装置の稼働中は、常に二つの水流の力のバランスの崩れとゲート部の傾きと復帰がランダムに繰り返されることになり、ゲート部がホッパー部に対して全方位方向に上下に且つ傾きを繰り返す振り子のように揺動状態となるため、様々な大きさ・厚みの液面浮遊物や、液面浮遊物が複数集まって互いに付着して集合化して塊状となった液面浮遊物等をも確実且つ効率的に回収することができる。
また、ゲート口部まで浮遊してきた群生化して大きな塊状となった液面浮遊物は斜めに上下に揺動するゲート口部によって粉砕・分離・分割されながら取り込まれることなるので、群生化して大きな塊状となった液面浮遊物であっても確実且つ効率的に回収することが可能となる。
【0022】
請求項2に示す発明によれば、ホッパー部の直径が下方から上方に向かって小から大となる構成によって、ホッパー部とゲートパイプ部との間の間隙が下方から上方に向かって大から小となることから、ゲート部が傾いた側の間隙の大きさと反対側の間隙の大きさの差が大きくなるため、前記した二つの水流の力のバランスの崩れ幅も大きくなる。従って、ホッパー部に対するゲート部の揺動幅も大きくなるので、より様々な状態の液面浮遊物をより効率的に且つ確実に回収することができる。
また、上に向かって徐々に狭くなる間隙を水流が通ることによってゲート部を浮き上がらせる力もより大きくなることから、ポンプを作動開始してからのゲート部の浮き上がりが素早くなるため、瞬時に液面浮遊物の回収が可能となる。
【0023】
請求項3に示す発明によれば、リング形状のゲート口部の上面が外周に向かって下がる傾斜面を有しているため、周囲から近付く液面浮遊物を受け入れやすい。また、リング形状のゲート口部の大きさが下方のゲートパイプ部よりも大きい、即ち、ゲートパイプ部よりも外側に張り出しているため、ゲート部周囲の水流が上昇する際に張り出した部分を押し上げる力が働いたり、張り出した部分に水流が当たることでゲート部の周囲の水流に乱れが生じてゲート部の揺動をより活発化させる等の作用が働くことになる。従って、様々な状態の液面浮遊物を効果的に回収することができる。
【0024】
請求項4に示す発明によれば、ゲート部が水より重いため、ポンプ停止時は沈んでいるが水流の力によって液面直下まで浮き上がることができ、しかも浮き上がった際に液面上に飛び出てしまうことがないため、液面浮遊物のゲート口部への流入を妨げることがない。
【0025】
請求項5に示す発明によれば、ゲート口部の周囲360度の内のフロートの有る2方向以外については障害物が無いため、液面浮遊物はゲート口部に容易に且つ早く近付くことができる。従って、ゲート口部に近付くにつれて複数の液面浮遊物同士が近付いたとしても塊状に群生化する前にゲート口部に流入してしまうため塊状に群生化し難い。更に、たとえ複数の液面浮遊物が塊状に群生化した場合であっても、ゲート口部の側方両側において各々180度近い液面が開放状態であることから、ゲート口部への接近が阻害される可能性が極めて低く、効率的に回収することができる。
また、ゲート口部を液面直下にまで浮上保持させるための専用のフロート(ゲートフロート)が無い、即ち、ゲート口部の近傍で液面浮遊物の接近・流入を阻害する構成部材が無いため、液面浮遊物を極めて効率的に回収することができる。
【0026】
請求項6に示す発明によれば、液体を吸引する吸引動作と吸引した液体を回収部から送液する送液動作とを行うポンプは、回収装置と一体構成とすることもできるし、別体構成として液層外へ配設することもできる。特に、回収部の下方にポンプを配設する構成によれば、ゲート口部に極めて近い位置でポンプ動作させることができるので効率的な回収が可能となる。従って、液層外にポンプを配設する構成に比してポンプを小型化・簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る液面浮遊物回収装置の一実施例を示す概略側面図
【
図3】ポンプ作動開始前のゲート部の沈んだ状態を示す要部概略断面図
【
図4】ポンプが作動し、ゲート部が浮き上がった状態を示す要部概略断面図
【
図5】ホッパー部に対してゲート部が傾いた状態を示す要部概略断面図
【
図6】
図5の状態において、ゲート口部から液面浮遊物が流入する状態を示す要部概略断面図
【
図7】
図5とは反対側にゲート部が傾いた状態を示す要部概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明について実施例に基づき詳説する。
【0029】
本発明に係る液面浮遊物回収装置(本明細書においては、単に回収装置と言うこともある。)は、塗装工場・工程の塗装廃水の浮上スカム、食品工場等における液層内の浮上スカム・油(例えば、バター・マーガリン・食用油脂・チーズ等)、原油等の流出油、下水処理場のスカム、マシニングセンターのクーラント油、メッキの脱脂工程における浮上油、修理・メンテナンス工場等におけるグリス、鉄鋼所・火力発電所・水産加工場・機械類工場等における種々処理槽の液面に浮上するスカム・油等の液面浮遊物を回収する装置であり、更に必要に応じ、回収したスカム・油を水から分離する装置を含んでもよい装置である。
【0030】
具体的構成としては、例えば、
図1~
図7に示す本実施例では、
スカム・油が混入・浮遊する液層の液面直下付近にゲート部22を位置させて該液面に浮上するスカム・油を含む液面浮遊物9を回収する回収部2と、該回収部2に接続して該回収部2を液層内において浮力保持するフロート3と、水等の液体を吸引する吸引動作と吸引した水等の液体を回収部2から送液する送液動作とを行うポンプ5と、回収部2に接続される送液管4と、を有して構成される液面浮遊物回収装置1において、
前記回収部2は、回収部本体20と、該回収部本体20の上部に通液可能に接続されるホッパー部21と、該ホッパー部21の外周に上方から嵌挿されるゲート部22と、を有する構成であり、
前記ゲート部22は、液面に臨むゲート口部22Aと該ゲート口部22Aの下方に延伸するゲートパイプ部22Bと、を有して成り、
前記ゲートパイプ部22Bが前記ホッパー部21の外周との間に間隙を有する状態で嵌挿されることにより、ゲートパイプ部22Bとホッパー部21との間を通過する水流とゲート口部22Aから入り込む水流とのバランスに応じてゲート部22がホッパー部21に対して上下動可能に且つ全方位方向に傾斜揺動可能であること、
を主構成とするものである。
尚、
図1及び
図2において、符号6は回収部2の回収部本体20とフロートを接続するフロート接続部材であり、符号7は回収部2の下方に接続されるポンプ5を2つのフロート3・3によって下方から支持するポンプ支持部材を示す。
尚また、
図2において、符号8は回収されて送液管4によって送液された水等の液体から液面浮遊物9を分離する分離装置を示す。
【0031】
次に、各構成部材について実施例に基づき更に説明する。
【0032】
回収部2は、上記したように回収部本体20とホッパー部21とゲート部22とを有して構成され、
図1及び
図2において左右両側にフロート接続部材6・6を介して接続されたフロート3・3によって液層中に浮力保持される。
更に、回収部2の回収部本体20の下方にはポンプ5が接続され、該回収部本体20の側方には送液管4が接続される。ポンプ5の作動によって、ゲート部22のゲート口部22Aから水等の液体と共に液面浮遊物9を吸引して取り込み、送液管4を介して液層外の分離装置8に送液する。
尚、ポンプ5は、本実施例では回収部本体20の下部に配設した水中ポンプ構成となっている。尚、ポンプ5は回収部本体20ではなく送液管4の始端部分・途中部分・終端部分のいずれかに配設された構成とすることもできるし、液層外の分離装置に自吸式等のポンプを内蔵又は併設した構成とすることもできる。
尚また、分離装置8は、この種の液面浮遊物9の回収装置1やその他の油水分離装置に用いられる公知公用の分離装置構成を特別の制限なく用いることができる。分離装置8によって液面浮遊物9である油やスカム等の分離が済んだ水等の液体は液層に戻す構成とすることもできる。
【0033】
ホッパー部21は、
図3~
図7に示すように、上方に向かって拡開するテーパー形状であり、該ホッパー部21の外周と前記ゲートパイプ部22Bとの間の間隙が前記テーパー形状の下方から上方に向かって大から小となる構成であることが好ましい。
【0034】
ゲート部22は、
図1、
図3~
図7に示すように、ゲート口部22Aが平面視した際にリング形状であり、このリング形状の内径がゲートパイプ部22Bの内径と同径乃至は近似する径であると共に外径が前記ゲートパイプ部22Bの外径より大きく該ゲートパイプ22Bの外側に張り出した形状であり、更にこのリング形状の上面が内周から外周に向かって下がる傾斜面であること、が好ましい。
また、ゲート部22は、比重が1より大であることが好ましい。
【0035】
次に、発明の回収装置1の稼働について説明する。
【0036】
まず、回収装置1の稼働開始前、即ち、ポンプ5を作動させる前の状態は、
図3に示すようにゲート部22はその自重によって沈んでホッパー部21に当接する位置まで下がった位置にある。
【0037】
回収装置1を稼働、即ち、ポンプ5を作動開始させることによって、
図4に示すようにゲートパイプ部22Bとホッパー部21との間を通過する水流Yとゲート口部22Aから入り込む水流Xとの二つの水流X・Yの力のバランスによってゲート口部22Aが液面直下付近に位置するまでゲート部22全体が浮き上がる。
【0038】
ゲート部22が浮き上がった状態で液面に浮遊する液面浮遊物がゲート口部22Aから流入して回収されるが、液面に生じる波や、ゲート口部22Aの周辺の様々な方向に浮遊する様々な大きさ・厚みの液面浮遊物がゲート口部22Aから入り込む際の水流Xの乱れ等によって、
図5に示すように前記の二つの水流X・Yの力のバランスが崩れてゲート部22がホッパー部21に対して360度全方位の内のいずれかの方向に傾くことになる。
図5は、ゲート部22が右方向に傾いた状態を示す。
【0039】
ゲート部22が傾いた側のゲート口部22Aは液面との距離が離れて大きくなるため、
図5に示すように、この部分からゲート口部22A内に流入する水流Xが増し、
図6に示すように、大きな液面浮遊物9であっても取り込むことができる。
【0040】
二つの水流X・Yのバランスの崩れによって傾いたゲート部22は、次いでその反動で元のバランスを取り戻そうとする揺り返し力が作用することによって傾いたゲート部22が元の位置に復帰しようとするが、前記した液面に生じる波やゲート口部22Aから入り込む際の水流Xの乱れ等によって、
図7に示すように、異なる方向に傾くことになるため、次はこの異なる方向に傾いた側のゲート口部22Aと液面との距離が離れて大きくなり、この部分からゲート口部22A内に流入する水流Xが増すと共に大きな液面浮遊物が取り込まれることになる。
図7は、ゲート部22が左方向に傾いた状態を示す。
【0041】
従って、回収装置1の稼働中は、常に二つの水流X・Yの力のバランスの崩れとゲート部22の傾きと復帰がランダムに繰り返されることになり、ゲート部22がホッパー部21に対して全方位方向に振り子のように上下に且つ傾きを繰り返す振り子のように揺動した状態となるため、様々な大きさ・厚みの液面浮遊物9や、液面浮遊物9が複数集まって互いに付着して集合化して塊状となった液面浮遊物9等をも確実且つ効率的に回収することができる。
また、ゲート口部22Aまで浮遊してきた群生化して大きな塊状となった液面浮遊物9は斜めに上下に揺動するゲート口部22Aによって粉砕・分離・分割されながら取り込まれることなるので、群生化して大きな塊状となった液面浮遊物9であっても確実且つ効率的に回収することが可能となる。
【0042】
本実施例に示すように、ホッパー部21の直径が下方から上方に向かって小から大となる構成によれば、ホッパー部21とゲートパイプ部22Bとの間の間隙が下方から上方に向かって大から小となることから、ゲート部22が傾いた側の間隙の大きさと反対側の間隙の大きさの差が大きくなるため、前記した二つの水流X・Yの力のバランスの崩れ幅も大きくなる。従って、ホッパー部21に対するゲート部22の揺動幅も大きくなるので、より様々な状態の液面浮遊物9をより効率的に且つ確実に回収することができる。
また、上に向かって徐々に狭くなる間隙を水流Yが通ることによってゲート部22を浮き上がらせる力もより大きくなることから、ポンプ5を作動開始してからのゲート部22の浮き上がりが素早くなるため、瞬時に液面浮遊物9の回収が可能となる。
【0043】
また、本実施例のようにリング形状のゲート口部22Aの上面が外周に向かって下がる傾斜面を有する構成とすることにより、周囲から近付く液面浮遊物9を受け入れやすい。また、リング形状のゲート口部22Aの大きさが下方のゲートパイプ部22Bよりも大きい、即ち、ゲートパイプ部22Bよりも外側に張り出しているため、ゲート部20周囲の水流Zが上昇する際に張り出した部分を押し上げる力が働いたり、張り出した部分に水流Zが当たることでゲート部22の周囲の水流Xに乱れが生じてゲート部22の揺動をより活発化させる等の作用が働くことになる。従って、様々な状態の液面浮遊物9を効果的に回収することができる。
【0044】
ゲート部22は、上記したように比重を1より大、即ち、水より重いため、ポンプ5停止時は沈んでいるが水流X・Yの力によって液面直下まで浮き上がることができ、しかも浮き上がった際に液面上に飛び出てしまうことがないため、液面浮遊物9のゲート口部22Aへの流入を妨げることがない。
尚、水流X・Y・Zの一つ乃至は全部の勢い等によってゲート部22が必要以上に強く浮上しようとする力が働いてしまった場合であってもホッパー部21からゲート部22が脱落して離脱しないように、例えば、
図3に示すように、ホッパー部21の上端外周に抜け止め部21C、ゲートパイプ部22Bの下端内周に抜け止め部22Cを設けておくことが好ましい。
【0045】
上記構成を有する回収部2はフロート3によって浮上保持されるが、フロート3は
図1及び
図2に示すように、間隔を有して液層に浮かぶ2つから成り、この2つのフロート3・3の中央に前記回収部2を配置させる構成とすることが好ましい。
【0046】
図1及び
図2に示す本実施例のように、フロート3・3を2つにすることによって、ゲート口部22Aの周囲360度の内のフロート3・3の有る2方向以外については障害物が無いため、液面浮遊物9はゲート口部22Aに容易に且つ早く近付くことができる。従って、ゲート口部22Aに近付くにつれて複数の液面浮遊物9同士が近付いたとしても塊状に群生化する前にゲート口部22Aに流入してしまうため塊状に群生化し難い。更に、たとえ複数の液面浮遊物9が塊状に群生化した場合であっても、ゲート口部22Aの側方両側において各々180度近い液面が開放状態であることから、ゲート口部22Aへの接近が阻害される可能性が極めて低く、効率的に回収することができる。
また、ゲート口部22Aを液面直下にまで浮上保持させるための専用のフロート(ゲートフロート)が無い、即ち、ゲート口部22Aの近傍で液面浮遊物9の接近・流入を阻害する構成部材が無いため、液面浮遊物9を極めて効率的に回収することができる。
【0047】
尚、回収装置1を浮上保持するフロート3としては、この種の液面浮遊物回収装置のフロート体として公知公用のフロート体の構成(材質・浮力構成等)を特別の制限なく採ることができ、例えば、発泡樹脂や中空樹脂成形体等から形成されることが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 液面浮遊物回収装置
2 回収部
20 回収部本体
21 ホッパー部
21C 抜け止め部
22 ゲート部
22A ゲート口部
22B ゲートパイプ部
22C 抜け止め部
3 フロート
4 送液管
5 ポンプ
6 フロート接続部材
7 ポンプ支持部材
8 分離装置
9 液面浮遊物
X 水流
Y 水流
Z 水流