(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179583
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20241219BHJP
F24F 6/10 20060101ALI20241219BHJP
F24F 6/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F24F6/00 D
F24F6/10
F24F6/06
F24F6/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098546
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】水越 悠介
(72)【発明者】
【氏名】藤川 朋保
(72)【発明者】
【氏名】三本 高志
(72)【発明者】
【氏名】笹川 亜也果
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055BA04
3L055CA04
3L055DA11
3L055DA20
(57)【要約】
【課題】送風経路の乾燥運転を良好に実施する加湿器を提供する。
【解決手段】制御部35は、加湿運転の停止指令がなされた後、ヒータ8を停止し、気化フィルタ9を回転駆動して水槽2の水から離れる離水状態とし、送風ファン6を第1の所定時間かつ所定回転数で駆動して送風経路12の乾燥運転を実施する。これにより、送風経路12内が高温かつ高湿となるのを抑制し、湿気を器具外へ送風し除去することで、乾燥運転終了後も送風経路12の乾燥状態を維持することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、
水を貯水する水槽と、
当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、
前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、
当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、
当該送風経路中に設けられ、前記水槽の水に下部が浸漬し回転駆動が可能な気化フィルタと、
当該気化フィルタを所定の回転速度で回転駆動するターンモータと、
前記送風経路中に設けられ、空気を加熱するヒータと、
前記気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、
前記送風ファン、前記ターンモータ及び前記ヒータの運転を制御することで加湿運転を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記加湿運転の停止指令がなされた後、
前記ヒータを停止し、
前記気化フィルタを回転駆動して前記水槽の水から離れる離水状態とし、
前記送風ファンを第1の所定時間かつ所定回転数で駆動することで、前記送風経路の乾燥運転を実行することを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記所定回転数は、前記加湿運転を実行する中で最も低い回転数であることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記離水状態は、前記気化フィルタが前記水槽の水面と略水平状態であることを特徴とする請求項2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記乾燥運転を行うか否かの設定手段を有し、
前記制御部は、
前記乾燥運転を行う設定がされている場合は、前記乾燥運転を実行し、
前記乾燥運転を行わない設定がされている場合は、前記加湿運転の停止指令がなされた後、前記ヒータを停止し、前記離水状態とし、
前記送風ファンを前記第1の所定時間より短い第2の所定時間かつ前記所定回転数で駆動することで、前記送風経路のパージ運転を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気化式の加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、加湿運転を停止し、気化フィルタを乾燥運転する際に、回転自在とした気化フィルタを、水槽部の水面と略平行となるよう横向きとして停止し、ヒータによって加熱された空気を送風することにより乾燥運転を行う加湿器があった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒータを運転しながら気化フィルタに送風し乾燥運転を行う場合、器具内の温度が上がった状態で気化フィルタに蓄えられた水分を気化することから、送風経路内は高温高湿の状態となる。この状態で所定時間経過後に乾燥運転を停止すると、送風経路内に残った湿気が結露したり、気化フィルタに再び吸着したりするため、十分な乾燥が得られない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の加湿器では、器具本体と、水を貯水する水槽と、当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、当該送風経路中に設けられ、前記水槽の水に下部が浸漬し回転駆動が可能な気化フィルタと、当該気化フィルタを所定の回転速度で回転駆動するターンモータと、前記送風経路中に設けられ、空気を加熱するヒータと、前記気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、前記送風ファン、前記ターンモータ及び前記ヒータの運転を制御することで加湿運転を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記加湿運転の停止指令がなされた後、前記ヒータを停止し、前記気化フィルタを回転駆動して水槽の水から離れる離水状態とし、前記送風ファンを第1の所定時間かつ所定回転数で駆動することで、前記送風経路の乾燥運転を実行することを特徴としている。
【0006】
また、請求項2の加湿器では、前記第1の所定回転数は、前記加湿運転を実行する中で最も低い回転数であることを特徴としている。
【0007】
また、請求項3の加湿器では、前記離水状態は、前記気化フィルタが前記水槽の水面と略水平状態であることを特徴としている。
【0008】
また、請求項4の加湿器では、前記乾燥運転を行うか否かの設定手段を有し、前記制御部は、前記乾燥運転を行う設定がされている場合は、前記乾燥運転を実行し、前記乾燥運転を行わない設定がされている場合は、前記加湿運転の停止指令がなされた後、前記ヒータを停止し、前記離水状態とし、前記送風ファンを前記第1の所定時間より短い第2の所定時間かつ前記所定回転数で駆動することで、前記送風経路のパージ運転を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、制御部は、加湿運転の停止指令がなされた後、ヒータを停止し、気化フィルタを回転駆動して水槽の水から離れる離水状態とし、送風ファンを第1の所定時間かつ所定回転数で駆動するので、送風経路内が高温高湿とならず、湿気を器具外へ送風し除去することで、乾燥運転終了後も送風経路の乾燥状態を維持することができる。
【0010】
また、第1の所定回転数は加湿運転を実行する中で最も低い回転数としたので、気化フィルタからの加湿空気の発生を抑えて、送風経路内が高温高湿とならずに乾燥状態を維持することができ、かつ送風ファンの騒音を低減することができる。
【0011】
また、離水状態は気化フィルタが水槽の水面と略水平状態としたので、気化フィルタ以外を通過する流路を確保して、より送付経路内の乾燥を促すことができる。
【0012】
また、制御部は、乾燥運転を行う設定がされている場合は乾燥運転を実行し、乾燥運転を行わない設定がされている場合は加湿運転の停止指令がなされた後、ヒータを停止し、離水状態とし、送風ファンを第1の所定時間より短い第2の所定時間かつ所定回転数で駆動するので、送風経路の乾燥運転を行わない場合でも、ヒータで高温となった器具内部をパージ運転によって排熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図
【
図2】同実施形態の加湿運転時における背面側断面図
【
図3】同実施形態の乾燥運転時における背面側断面図
【
図4】同実施形態における水槽及び加湿フィルタを説明する図
【
図5】同実施形態における気化フィルタの回転伝達部分の断面図
【
図6】同実施形態における気化フィルタの回転伝達部分の正面図
【
図8】同実施形態の乾燥運転及びパージ運転のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の一実施形態における加湿器を図に基づいて説明する。
【0015】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、
図1~
図8における定義に従う。また、上下方向は、器具本体1の設置時における鉛直方向に対応する。前後方向及び左右方向は、器具本体1の設置時における水平方向に対応する。
【0016】
1は加湿器の器具本体、2は器具本体1内の下部に設けられた水槽で、カートリッジ式の給水タンク3によって給水される。前記給水タンク3は、器具本体1の上面から器具本体1内に挿入され、水槽2上に載置されて当該水槽2内に一定量の水を供給する。4は室内の乾燥した空気(乾燥空気)を器具本体1内に取り入れる吸込口で、器具本体1の側面部に開口している。5は室内に湿った空気(加湿空気)を送る吹出口で、器具本体1の上面に開口している。6は吸込口4から吹出口5に至る送風経路12中に設置されたシロッコファン等からなる送風ファン、7は送風ファン6を駆動するモータである。送風ファン6の下流側には、空気を加熱するヒータ8と、吸水性の良いシート状の素材をプリーツ折りした縦長方形の気化フィルタ9が設置される。当該気化フィルタ9は回転自在に取り付けられ、その両端は交互に水槽2内の水に浸漬されており、毛細管現象にて水を全面に行き渡るように吸い上げる。
【0017】
送風ファン6によって吸込口4から取り入れた室内の乾燥空気は、ヒータ8を通過後、水槽2の水により湿潤した気化フィルタ9を通過することで加湿空気となって、吹出口5から室内へ送出する。12は送風ファン6で送風された空気が器具本体1内を流通する送風経路である。
【0018】
13は送風ファン6の外周を囲うように設置されるファンケーシングである。吸込口4から送風ファン6の中央部に吸い込まれた空気は、送風ファン6の外周より遠心状に送風し、ファンケーシング13内の渦巻き状の風路(図示せず)を送風ファン6の回転方向に沿って流通し、下流側となる送風経路12へ送出される。
【0019】
14は気化フィルタ9の上部を囲うように設置されるフィルタケーシングである。フィルタケーシング14はファンケーシング13と一体に成形されている。
【0020】
15は不織布等のシート状の濾材で構成されたHEPAフィルタ等からなるエアフィルタであり、吸込口4から取り入れる空気に対し、微細な塵埃やPM2.5等の微小粒子を捕集して空気清浄を行い、吸込口4に形成された取り付け部(図示せず)に対して自在に装着、及び脱着が可能である。
【0021】
水槽2は、給水タンク3によって給水される給水部10と、気化フィルタ9が設置される気化フィルタ設置部11が並べて配置され、両者は樹脂により一体に成形されており、共に底部の連通口32を介して連通し、同一レベルの水を貯水する。そして、この水槽2は器具本体1の背面から引き出し用取っ手16を引くことで取り出し可能となっている。
【0022】
17は気化フィルタ9の周囲を覆って当該気化フィルタ9を収納する枠体である。枠体17には上下及び左右の略中間に回転用の支点18とジョイント20が同軸上に一体に設けられている。
【0023】
24は気化フィルタ9を回転させるためのターンモータであり、ジョイント20と対向した器具本体1の前面内部に設けられている。ターンモータ24の回転軸25がジョイント20に嵌合することで、ジョイント20は回転軸25により着脱可能に軸支されている。これにより、ターンモータ24を駆動することでジョイント20を回転させ、支点18及びジョイント20を回転中心として気化フィルタ9を回転させることができる。
【0024】
19は水槽2に設けられた支点受け部であり、気化フィルタ9の回転に伴い回転する支点18の軸受け部となっている。
【0025】
26は一端が枢支されたレバーで、先端下面をジョイント20に設けられたカム27に対面させ、上面略中央部を位置検知スイッチ28に対面させている。ターンモータ24を駆動し気化フィルタ9を回転させるとき、カム27がレバー26を押し上げて位置検知スイッチ28をオンした際に、気化フィルタ9を指定の位置に停止するようにターンモータ24を制御する。
【0026】
29は給水タンク3の蓋となる給水口キャップである。給水口キャップ29には、図示しない弁機構が設けられており、図示しない圧縮バネによって常時閉弁となるよう規制されている。給水タンク3が給水部10にセット(収納)されることで、給水部10に固定された突起部30の上端が、前記弁機構の底面に当接し弁が押し上げられることで開弁状態となり、給水タンク3から給水部10に給水される。
【0027】
31は給水部10内に設けられ、給水部10及び気化フィルタ設置部11に一定水位以上の貯水があるとき、水位有りを検知し、水位検知信号を出力するフロートセンサである。33は器具本体1が設置された室内の湿度を検知する湿度センサである。
【0028】
34は複数のスイッチが備えられ各種操作指令を行う操作部である。操作部34には、加湿運転の開始及び停止を指示する運転スイッチと、湿度の設定を行うスイッチと、加湿運転の強弱を設定する運転切替スイッチと、気化フィルタ9を乾燥するフィルタ乾燥運転を開始する乾燥スイッチと、等が備えられている。
【0029】
また、操作部34には各スイッチに対応したランプが備えられており、運転スイッチが操作されたら点灯する運転ランプと、設定湿度を表示するランプと、運転切替スイッチで切り替えた運転状態を表示するランプと、等が備えられている。
【0030】
35はフロートセンサ31や湿度センサ33の各センサで検知された検知値や、操作部34上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき、運転内容を制御するマイコンで構成された制御部である。当該制御部35には、送風ファン6を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段40と、ヒータ8のON/OFF状態を変化させるヒータ制御手段41と、気化フィルタ9を回転させるターンモータ24の動作を制御するターンモータ制御手段42と、特定の動作開始時から経過した時間をカウントする計時手段としてのタイマー43と、が備えられている。
【0031】
次に、本発明の一実施形態での運転開始から終了までの動作について説明する。
【0032】
加湿器を運転する際に、給水タンク3に水を入れ水槽2に設置することにより、水槽2には給水タンク3より一定量の水が流れ出し、縦長に設置された気化フィルタ9の下端部を浸漬する。これにより、気化フィルタ9は水を吸い上げ湿潤する。
【0033】
このとき、操作部34の運転スイッチが操作されると、制御部35は送風ファン6を駆動し、吸込口4から室内の乾燥空気を吸い込む。送風ファン6により送出された乾燥空気は、送風経路12に設けたヒータ8により加熱される。そして、加熱された乾燥空気は
図2に示すように、一端を水槽2に水没させることで湿潤した気化フィルタ9を通過し、気化フィルタ9内の水を気化させて加湿空気となり、吹出口5から室内に放出される。
【0034】
また、気化フィルタ9の下端が水没した状態で運転を開始すると同時に、制御部35内のタイマー43により所定の時間をカウントする。所定時間が経過したら気化フィルタ9を略180度回転させ、水没していなかった他端が水没する状態で停止する。そして再び気化フィルタ9は水を吸い上げ湿潤し、気化フィルタ9を通過した空気が水を気化させながら加湿空気となり送出される。
【0035】
以後、この動作を繰り返して加湿運転を継続する。このとき、気化フィルタ9の回転方向は正回転でも逆回転でも良い。
【0036】
加湿終了後は、気化フィルタ9を
図2の状態から略90度回転して、
図3に示すようにその全体を水槽2の水面と略水平状態になるように水面上で保持する。そして制御部35内のタイマー43により所定の時間をカウントし、その間、送風経路12を乾燥する送風経路乾燥運転を行う。送風経路乾燥運転については、後に詳述する。
【0037】
乾燥運転終了後、気化フィルタ9及び水槽2を器具本体1から取り出して清掃等をする場合には、器具本体1の引き出し用取っ手16から
図1に示す矢印の向きに取り出せばよい。また
図4に示すように、気化フィルタ9及び水槽2は着脱可能となっているため、気化フィルタ9を取り出し後、水槽2を清掃することができる。
【0038】
また、気化フィルタ9を乾燥するフィルタ乾燥運転は、水槽2を器具本体1から取り出して水槽2の水を排水し、気化フィルタ9及び水槽2を再び器具本体1へ取り付けた後、操作部34の乾燥スイッチを操作することで行われる。当該操作後、制御部35は気化フィルタ9を加湿運転が行われる際と同じ姿勢(
図2の略鉛直方向に縦長の姿勢)となるよう回転し、ヒータ8及び送風ファン6を運転する。このとき、水槽2内は渇水状態なので、気化フィルタ9を縦長の姿勢としても追加で水を吸水することはなく、更に気化フィルタ9を通過する空気の流量を増加することができるため、効率的にフィルタ乾燥運転を実施することができる。
【0039】
次に、本発明の一実施形態における、送風経路12の乾燥運転(送風経路乾燥運転)について、
図2、
図3及び
図8に基づいて説明する。
【0040】
操作部34の運転スイッチが操作され、加湿運転が開始されると、
図2のように気化フィルタ9を略鉛直方向に縦長の姿勢として、下端部が水に浸漬した状態で加湿運転を開始する(ステップ101)。加湿運転中に、制御部35は加湿運転停止指令がなされたかどうか判断する(ステップ102)。ここで、加湿運転停止指令とは、ユーザーによる運転スイッチの操作で停止される手動停止や、タイマー43による停止、エラー発生による停止などの自動停止による停止指令が含まれる。
【0041】
ステップ102で加湿運転停止指令が有った場合は、制御部35は送風経路乾燥運転を実行する設定(乾燥運転実行設定)が有効かどうかを判断する(ステップ103)。この乾燥運転実行設定は、ユーザーによって設定することが可能である。具体的には、操作部34の乾燥スイッチを長押しする等によって、乾燥運転実行設定の有効/無効を切り替えて設定する。
【0042】
ステップ103で乾燥運転実行設定が有効であった場合、送風経路12の乾燥を目的とする送風経路乾燥運転を開始する(ステップ104)。つまり、ヒータ8をオフし、ターンモータ24を駆動して気化フィルタ9を回転させ、送風ファン6を所定の回転数で運転する。また、制御部35内のタイマー43により送風経路乾燥運転時間のタイマーカウントを開始する。その後、気化フィルタ9が水槽2内の水から離れる状態(離水状態)となるまでターンモータ24を回転させ、離水状態となったら停止させる(ステップ105)。
【0043】
ステップ106でタイマーカウントが第1の所定時間(例えば30分)以上であった場合、送風ファン6を停止して送風経路乾燥運転を終了し、タイマーカウントをリセットする(ステップ107)。
【0044】
ここで、送風経路乾燥運転の作用効果について詳述する。従来の加湿器では、ヒータ8を運転しながら送風ファン6を運転することで、気化フィルタ9の乾燥を目的としたフィルタ乾燥運転を行っていた。その際、気化フィルタ9は湿潤した状態であるので、ヒータで高温となった空気が気化フィルタ9に流通することで、加湿空気を送出することとなり、送風経路12内は高温かつ高湿の状態となる。しばらくこのフィルタ乾燥運転を継続することで、気化フィルタ9は湿潤状態から乾燥状態となるが、送風経路12内の空気は高温であるため飽和水蒸気量が大きい状態であり、空気中の水分量は多い状態となっている。ここでフィルタ乾燥運転が停止すると、ヒータ8も停止するため、送風経路12内の温度は下がっていき、空気中の湿度が高くなることで送風経路12内の壁面に結露が生じたり、乾燥させた気化フィルタ9に再び水分が吸着してしまう虞がある。
【0045】
そこで、本実施形態の送風経路12の乾燥運転のように、ヒータ8を停止させて送風経路12内の温度を上昇させないようにし、気化フィルタ9を離水状態となるよう回転させ、送風ファン6を所定の回転数で運転する送風経路乾燥運転を実施する。
【0046】
これにより、送風経路乾燥運転中は送風経路内が高温とならず、気化フィルタ9の気化もヒータ8運転時に比べて抑えることができるので高湿とならない。つまり送風経路12内が高温かつ高湿となるのを抑制することができる。また、わずかに発生した加湿空気(湿気)も器具外へ送風し除去することで、送風経路乾燥運転の終了後も送風経路の乾燥状態を維持することができる。
【0047】
送風経路乾燥運転は、従来のフィルタ乾燥運転とは異なり気化フィルタ9の乾燥を目的とはしていないが、抗菌性や防カビ性のあるフィルタ材を使用すれば、毎回の運転停止の度に乾燥させなくても清潔性を保つことができる。一方で、送風経路12は内部の壁面全体が結露発生の対象範囲となるので乾燥対象が広範囲に及ぶため、空気を通風させて効果的な乾燥を行うことで、送風経路12内の清潔性を保つことができる。
【0048】
また、従来のフィルタ乾燥運転による気化フィルタ9の乾燥時間は、湿潤し吸水した水分量が多いため長時間かかる(例えば90分)が、送風経路の乾燥であれば乾燥させる水分量が比較的少ないため、例えば30分といった短時間で可能である。つまり、フィルタ乾燥運転ではヒータ8の運転及び長時間の乾燥運転のため、消費電力が大きく電気代もかかるが、送風経路乾燥運転ではヒータ8の停止及び短時間の乾燥運転のため、消費電力が小さく電気代も低く抑えることができる。
【0049】
なお、加湿装置を使用するシーズン中は運転停止の期間が短いことから、気化フィルタ9が湿潤した状態を維持した方が、運転開始直後の加湿運転を効率良くスムーズに行える。一方で、シーズンオフ中は運転停止の期間が長いため、従来のフィルタ乾燥運転を行い、気化フィルタ9を乾燥させることで、清潔な状態で保管することができる。
【0050】
なお、ステップ104では送風ファン6を所定の回転数で運転させるが、当該所定の回転数は、加湿運転を実行する際に制御部35の送風ファン制御手段40により駆動する回転数のうち、最も低い回転数(例えば400rpm)として風量を最も小さくすることが有効である。これにより、気化フィルタ9での気化による加湿空気の発生を極力抑えることができるので、送風経路12の乾燥を促進することができる。また、送風経路乾燥運転における運転音を極力小さくし、騒音を低減することができるので、ユーザーに与える不快感を抑えることができる。
【0051】
また、ステップ105におけるターンモータ24の停止タイミングは、離水状態となる気化フィルタ9の角度を加湿運転時の水位から予め定めておき、ターンモータ制御手段42によって離水状態となる角度までターンモータ24を設定された回転速度にて駆動することで決定される。
【0052】
ここで、離水状態となる角度は、
図3のように気化フィルタ9が水槽2の水面と略水平状態となる角度とすることが有効である。これにより、気化フィルタ9の上部空間、つまり気化フィルタ9とフィルタケーシング14の間の空間を広く確保し、気化フィルタ9以外を流通する空気の風量を極力大きくすることで、送風経路12の乾燥をより促進することができる。
【0053】
ステップ103において、送風経路乾燥運転を実行する設定が無効であった場合、送風経路12内の排熱を目的とするパージ運転を開始する(ステップ204)。当該パージ運転は送風経路乾燥運転と同様に、ヒータ8をオフし、ターンモータ24を駆動して気化フィルタ9を離水状態となるまで駆動する(ステップ205)。また、制御部35内のタイマー43によりパージ運転時間のタイマーカウントを開始する。
【0054】
ステップ206でタイマーカウントが第2の所定時間(例えば1分)以上であった場合、送風ファン6を停止してパージ運転を終了し、タイマーカウントをリセットする(ステップ207)。
【0055】
ここで、パージ運転時間を実行する第2の所定時間(例えば1分)は、送風経路乾燥運転を実行する第1の所定時間(例えば30分)より短くなっている。運転停止後の送風経路12内はヒータ8の予熱によって高温となっており、ユーザーにて送風経路12の乾燥運転を無効と設定した場合でも、ヒータ8の予熱を排熱するのに十分な時間、例えば1分のパージ運転を行うことにより、送風経路12内の温度を下げて、安全な状態で停止することができる。
【0056】
なお、本発明の実施形態において、送風ファン6は気化フィルタ9の上流に配置されているが、気化フィルタ9の下流に配置されていても良い。つまり、気化フィルタ9の上流から空気を押し込む配置であっても、気化フィルタ9の下流から空気を引っ張る配置であても良い。つまり、送風ファン6の配置に違いがあっても、送風経路12を乾燥させる作用効果は同様に及ぶものである。
【0057】
また、本発明の実施形態において、ターンモータ24はギヤモータ(ギヤードモータ)等のインダクションモータを用いても良いし、ステッピングモータを用いても良い。なお、ステッピングモータを使用することで、回転角度や回転速度が簡単に制御できるので、特別にセンサ等を用いることがなく、回転時の位置検出を容易かつ高精度に行うことができる。
【0058】
また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 器具本体
2 水槽
4 吸込口
5 吹出口
6 送風ファン
8 ヒータ
9 気化フィルタ
12 送風経路
24 ターンモータ