(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179595
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】RFIDタグ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 220
G06K19/077 156
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098571
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勝志
(72)【発明者】
【氏名】湯口 隆昭
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使用態様によらず通信性能の低下を抑制できるRFIDタグを提供する。
【解決手段】RFIDタグ1は、平板状のインレイ2と、インレイ2が内部に挿入されて設置され、絶縁性を有する筒状体3と、を備え、インレイ2と管理対象の物品との距離を、インレイ2の周囲の筒状体3によって所定以上に確保する。この結果、例えば物品が金属製の場合に金属の影響により通信性能が低下することを抑制できるなど、RFIDタグ1の使用態様によらず通信性能の低下を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のインレイと、
前記インレイが内部に挿入されて設置され、絶縁性を有する筒状体と、
を備えるRFIDタグ。
【請求項2】
前記筒状体が径方向に弾性変形可能である、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記筒状体が楕円形状であり、前記インレイは前記楕円形状の長軸に沿って設置される、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記インレイが付加される下げ札を備え、前記下げ札が前記筒状体の内部に挿入されて設置される、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記インレイに凹部または凸部を有し、前記筒状体の内壁に、前記インレイの前記凹部と篏合する凸部、または前記インレイの前記凸部と篏合する凹部を有する篏合部を備える、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記インレイの全体が前記筒状体の内部に収容される、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いる物流管理や商品管理が行われている。この場合、例えば管理対象の物品に関する情報が記録されているRFIDタグが、該当物品に直接付加されたり、該当物品に取り付けられる下げ札などに付加される。そして、RFIDリーダなどの読取装置を利用してRFIDタグから情報を読み取ることにより管理作業を行うことができる。
【0003】
管理対象の物品が宝飾品などの貴金属や金属部品である場合、金属の影響を受けてRFIDタグからの情報読取に支障をきたす場合が生じ得る。この問題に対して、例えばRFIDタグを物品に直接貼付する構成において、RFIDタグのうち情報が記録され読取装置と通信を行うインレイと、貼付対象物である金属との間にスペーサ層を配置する構成が提案されている(例えば特許文献1)。この構成によれば、スペーサ層によってインレイを貼付対象物から離して配置させることができるので、貼付対象物による通信への影響を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されるスペーサ層を設ける手法は、RFIDタグを管理対象の物品に直接付加する構成に特化したものである。RFIDタグは下げ札などに付加されて用いられる場合もあり得る。このため、従来のスペーサ層を設けるRFIDタグは、使用態様によらず同様の効果を奏するための汎用性に改善の余地がある。
【0006】
本開示は、使用態様によらず通信性能の低下を抑制できるRFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一観点に係るRFIDタグは、平板状のインレイと、前記インレイが内部に挿入されて設置され、絶縁性を有する筒状体と、を備える。
【0008】
この態様によれば、RFIDタグの貼付対象物が金属製でも筒状体によってインレイとの距離を所定以上の大きさに確保できるので、通信性能低下を抑制できる。また、複数のRFIDタグが密集した状態でも、各タグのインレイ同士の距離を筒状体により所定以上の大きさに確保できるので、通信性能低下を抑制できる。したがって、この態様のRFIDタグは、使用態様によらず通信性能の低下を抑制できる。
【0009】
本発明の実施形態の他の観点に係るRFIDタグでは、前記筒状体が径方向に弾性変形可能である構成でもよい。
【0010】
この態様によれば、インレイの短手方向に一時的に筒の内径を広げることが可能となり、インレイを筒状体の内部に挿入することを容易にできる。また、インレイを内部の所望の位置に配置した後には、弾性復帰してインレイの短手方向の筒状体の内径を縮小できるので、筒状体によってインレイを短手方向の両側から挟持でき、インレイをより確実に内部に設置できる。したがって、筒状体が径方向に弾性変形可能であることによって、インレイの挿入と保持とを容易にできる。
【0011】
本発明の実施形態の他の観点に係るRFIDタグでは、前記筒状体が楕円形状であり、前記インレイは前記楕円形状の長軸に沿って設置される構成でもよい。
【0012】
この態様によれば、筒状体からインレイの短手方向両側の端部に付加される、インレイを挟持する外力の向きがインレイの短手方向と一致するので、筒状体が最も効率良くインレイを挟持できる。したがって、筒状体によるインレイの保持をより確実にできる。また、筒状体の筒の形状が楕円形状であると、円形状の場合と比較して、短軸方向の寸法を縮小できるので、インレイと貼付対象物との距離を確保しつつ、省スペース化も可能となる。
【0013】
本発明の実施形態の他の観点に係るRFIDタグは、前記インレイが付加される下げ札を備え、前記下げ札が前記筒状体の内部に挿入されて設置される構成でもよい。
【0014】
この態様によれば、下げ札にさまざまな情報を印刷することが可能で、利用者に物品に関する情報をより直感的に視認させることができる。例えばRFIDタグを値札として利用する場合には、顧客が値段を確認しやすいなど、情報表示によって顧客の利便性を向上できる。また、インレイのICチップから情報を読み取れない状況となった場合でも、利用者は下げ札に印刷された情報から代替的に物品に関する情報を取得できるので、管理作業の効率や利便性を向上できる。さらに、筒状体は下げ札を挟持して固定するので、インレイは筒状体によって直接挟持力を受けなくて済み、これによりインレイの長寿命化を図ることができる。
【0015】
本発明の実施形態の他の観点に係るRFIDタグは、前記インレイに凹部または凸部を有し、前記筒状体の内壁に、前記インレイの前記凹部と篏合する凸部、または前記インレイの前記凸部と篏合する凹部を有する篏合部を備える構成でもよい。
【0016】
この態様によれば、篏合部を設けることにより、インレイと筒状体とをより強固に固定できるので、例えば外力の影響などによってインレイが筒状体から抜け出すことを防止できる。
【0017】
本発明の実施形態の他の観点に係るRFIDタグでは、前記インレイの全体が前記筒状体の内部に収容される構成でもよい。
【0018】
この態様によれば、インレイの主面の全体を筒状体で覆うことができ、インレイを確実に保護できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、使用態様によらず通信性能の低下を抑制できるRFIDタグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係るRFIDタグの概略構成を示す図
【
図2】第1実施形態に係るRFIDタグの使用例を示す模式図
【
図3】第2実施形態に係るRFIDタグの概略構成を示す図
【
図4】第3実施形態に係るRFIDタグの概略構成を示す図
【
図5】第4実施形態に係るRFIDタグの概略構成を示す図
【
図6】第5実施形態に係るRFIDタグの概略構成を示す図
【
図7】第6実施形態に係るRFIDタグの概略構成を示す図
【
図8】第7実施形態に係るRFIDタグの概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0022】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向は、インレイ2の筒状体3への設置時における長手方向であり、筒状体3の軸方向である。y方向は、インレイ2の筒状体3への設置時における短手方向であり、筒状体3の楕円形状の長軸A1の方向である。z方向は、インレイ2の筒状体3の設置時におけるインレイ2の各要素の積層方向であり、筒状体3の楕円形状の短軸A2の方向である。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るRFIDタグ1の概略構成を示す図である。
図1(A)は斜視図であり、
図1(B)はx正方向側から視た正面図であり、
図1(C)はz正方向側から視た平面図であり、
図1(D)はy正方向側から視た側面図である。なお、(B)、(C)、(D)の各図の反対側から視たときの外観形状は同一であるので図示を省略する。
【0024】
図1に示すように、RFIDタグ1は、インレイ2と筒状体3とを備える。
【0025】
インレイ2は、RFIDタグ1の機能に関する要素を含む部分であり、物流管理や商品管理などRFIDタグ1の使用態様に則した各種情報が記録されるICチップ21と、ICチップ21に接続されるループ状導体22と、ループ状導体22に接続されるアンテナ部23と、を有する。インレイ2は、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン等の合成樹脂製フィルムなどの薄板状の基材24上に、アルミシートをドライラミネートで貼り付けたループ状導体22とアンテナ部23が形成され、規定の位置にICチップ21が実装されている。
【0026】
したがって、インレイ2は、全体としては
図1に示すように基材24の形状に則した略長方形状かつ平板状の部材として構成される。
【0027】
ループ状導体22は、z方向の平面視の形状が、1ターン以下のループ状(環状)の導電性配線パターンである。ループ状導体22は、例えば
図1(A)、(C)に示すようにインレイ2の略中央部に配置される。ICチップ21は、例えばz正方向側からループ状導体22に重畳配置されて、ループ状導体22に電気的に接続される。
【0028】
アンテナ部23は、例えば
図1(A)、(C)に示すように2つの導体部23A、23Bを備える。導体部23A及び導体部23Bは、それぞれループ状導体22に電気的に接続されると共に、ループ状導体22から互いに離れる方向(
図1(A)、(C)の例ではx正方向側とx負方向側)に伸びる導電性の配線パターンである。
【0029】
また、ICチップ21、ループ状導体22、及びアンテナ部23は、基材24のz正方向側の面に配置され、これらの要素のさらにz正方向側から紙製や樹脂製などのシート材で覆われて保護されている。つまり、ICチップ21、ループ状導体22、及びアンテナ部23は、インレイ2の内部に配置されている。このため、インレイ2のICチップ21、ループ状導体22、及びアンテナ部23は外部から視認できず、
図1(A)、(C)では点線で図示されている。
【0030】
なお、
図1(A)、(C)に示すインレイ2のICチップ21、ループ状導体22、及びアンテナ部23の配置や形状はあくまで一例であって、他の配置や形状であってもよい。また、インレイ2は、ICチップ21、ループ状導体22、及びアンテナ部23が露出する構成でもよい。
【0031】
筒状体3は、インレイ2を内部に挿入して設置する中空状の部材である。筒状体3は、例えば
図1(A)、(B)、(C)に示すように、軸方向の寸法がインレイ2の長手方向の寸法より長く形成され、インレイ2の全体を内部に収容できるよう構成される。これにより、インレイ2の主面の全体を筒状体3で覆うことができ、インレイ2を確実に保護できる。また、筒状体3は絶縁性を有する材料で形成される。
【0032】
筒状体3は、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂や、ゴムなどのエラストマなどにより形成される。筒状体3は弾性を有するのが好ましい。特に、筒状体3は径方向に弾性変形可能に形成されるのが好ましい。なお、「径方向」とは、筒状体3の軸方向に直交する断面の形状にいて、内部空間の中心を通る線分の延在方向をいう。これによりインレイ2の短手方向に一時的に筒の内径を広げることが可能となり、インレイ2を筒状体3の内部に挿入することを容易にできる。また、インレイ2を内部の所望の位置に配置した後には、弾性復帰してインレイ2の短手方向の筒状体3の内径を縮小できるので、筒状体3によってインレイ2を短手方向の両側から挟持でき、インレイ2をより確実に内部に設置できる。したがって、筒状体3が径方向に弾性変形可能であることによって、インレイ2の挿入と保持とを容易にできる。
【0033】
筒状体3は、
図1(A)、(B)に示すように、筒の形状が楕円形状であり、
図1(B)に示すようにインレイ2は楕円形状の長軸A1に沿って設置されるのが好ましい。インレイ2が筒状体3の内部に設置されるとき、筒状体3の内壁31からインレイ2の短手方向両側の端部25、26にはインレイ2を挟持する外力F1、F2が付加される。筒状体3の筒の形状が楕円の場合には、インレイ2が楕円の長軸A1と重なる位置に配置されると、筒状体3から付加される外力F1、F2の向きがインレイ2の短手方向と一致するので、筒状体3が最も効率良くインレイ2を挟持できる。したがって、筒状体3によるインレイ2の保持をより確実にできる。
【0034】
なお、筒状体3の楕円形状は、外力が付加されない状態における長軸A1の自然長が、インレイ2の短手方向の寸法と同一か、または弾性変形時に短手方向の寸法より広がってインレイ2を挿入できる程度に、インレイ2の短手方向の寸法より小さく形成されるのが好ましい。これにより、筒状体3によるインレイ2の保持をより確実にできる。
【0035】
なお、筒状体3の筒の形状が円形の場合でも、インレイ2を円形状の直径に沿って配置すれば同様の効果を得られる。ただし、円形状の直径方向が任意の方向になるのに対して、楕円形状の長軸A1の方向は特定の一方向に限定される。このため、筒形状が楕円形状であると、インレイ2を収容したときに、インレイ2の主面の法線方向も楕円形状の短軸A2の方向に限定できる。したがって、筒状体3を楕円形状とすることによって、インレイ2と筒状体3との相対的な位置関係を一意に決めることができる点で、円形状の場合と比較して有利である。この利点によって、RFIDタグ1の前面や背面を
図1の例ではz方向に規定することができるので、例えば筒状体3の表面に文字などを印刷する場合に、最も視認しやすい位置など印刷位置を決めることを容易にできる。また、RFIDタグ1を物品11に付加する際には、楕円形状の短軸A2が物品11の表面11Aと対向するように設置すれば(
図2(B)参照)、RFIDタグ1をより安定して物品11に取り付けることができる。
【0036】
なお、インレイ2の長手方向の寸法と、短手方向の寸法との比率は、
図1に例示したものから変わり得る。同様に、筒状体3の楕円形状の長軸A1の寸法と短軸A2の寸法との比率も、
図1に例示したものから変わり得る。これらの比率は、RFIDタグ1が使用される環境や条件に応じて適宜設定できる。
【0037】
図2は、第1実施形態に係るRFIDタグ1の使用例を示す模式図である。例えば
図2(A)に示すように、複数のRFIDタグ1が箱やトレイなどの単一の収容部10に収容された状態でタグ読取が行われる場合を考える。この場合、従来の板状のRFIDタグでは、タグ同士が接触または過度に接近し、これにより通信性能の低下が生じ得る。一方、第1実施形態のRFIDタグ1では、板状のインレイ2が楕円形状の筒状体3の内部に設置されるので、他のRFIDタグ1の筒状体3とは接触するとしても、インレイ2が他のタグのインレイ2と接触することは確実に防止できる。また、他のタグとの距離を筒状体3の楕円形状に応じた所定距離以上に保つことができる。この結果、第1実施形態のRFIDタグ1は、複数のタグが密集して収容されている状態でも、インレイ2同士の接触や過度な接近を防止できるので、タグの読み取り漏れなどの発生を抑制でき、通信性能の低下を抑制できる。
【0038】
また、
図2(B)に示すように、第1実施形態のRFIDタグ1が管理対象の物品11に直接設置された状態でタグ読取が行われる場合を考える。この場合、第1実施形態のRFIDタグ1は、物品の表面11Aに楕円形状の短軸A2が対向するように載置されて、粘着性テープ12などを用いて表面11A上に固定されるのが、表面11Aとの接触面積を最も大きくできるので、最も容易かつ安定して物品11に付加できると考えられる。このとき、インレイ2と物品の表面11Aとは、筒状体3の楕円形応の短軸A2の半径分だけ距離を空けて、かつ平行に配置される。これにより、インレイ2を物品11から所定距離だけ離して固定することが可能となるので、物品11が金属などの場合でも、金属によるタグの通信への影響を低減でき、通信性能の低下を抑制できる。
【0039】
このように、第1実施形態に係るRFIDタグ1は、貼付対象物が金属製でも筒状体3によってインレイ2との距離を所定以上の大きさに確保できるので、通信性能低下を抑制できる。また、複数のRFIDタグ1が密集した状態でも、各タグのインレイ2同士の距離を筒状体3により所定以上の大きさに確保できるので、通信性能低下を抑制できる。したがって、第1実施形態に係るRFIDタグ1は、平板状のインレイ2と、インレイ2が内部に挿入されて設置される筒状体3とを備える構成により、インレイ2と管理対象の物品11との距離をインレイ2の周囲の筒状体3によって所定以上に確保できるので、RFIDタグ1の使用態様によらず通信性能の低下を抑制できる。これにより、使用態様に応じて所望の通信性能を担保するために、当該使用態様に特化したアンテナ形状などのタグの設定変更が不要となる。この結果、第1実施形態のRFIDタグ1は、貼付対象物の種類や使用態様によらず共通のインレイ2を使用できるので、汎用性を向上できる。
【0040】
また、筒状体3の筒の形状が楕円形状であると、円形状の場合と比較して、短軸方向の寸法を縮小できるので、
図2(A)、(B)に例示した適用例の場合に、インレイ2と貼付対象物との距離を確保しつつ、省スペース化も可能となる。
【0041】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係るRFIDタグ1Aの概略構成を示す図である。
図3(A)~(D)の概略は
図1(A)~(D)と同様である。
【0042】
図3に示すように、第2実施形態のRFIDタグ1Aは、筒状体3Aに一対の孔32、33が設けられている。一対の孔32、33は、
図3(A)に示すように、紐、糸、アンビタッチなどの紐状部材34を通すために用いることができる。
【0043】
図3の例では、一対の孔32、33は、例えば
図3(B)に示すように筒状体3Aの楕円形状の短軸A2に沿って、筒状体3Aのz正方向側及びz負方向側の面に設けられている。また、
図3(A)、(C)、(D)に示すように、インレイ2は、孔32、33が設けられる軸方向の位置に重ならないように配置されている。これにより、紐状部材34を一対の孔32、33に通し、筒状体3Aのz方向に亘って挿通させることを容易にできる。
【0044】
第2実施形態のRFIDタグ1Aは、このように筒状体3Aに一対の孔32、33を設ける構成により、紐状部材34を筒状体3Aに確実に連結させることができる。
【0045】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係るRFIDタグ1Bの概略構成を示す図である。
図4(A)~(D)の概略は
図1(A)~(D)と同様である。
【0046】
図4に示すように、第3実施形態のRFIDタグ1Bは、下げ札4を備える。下げ札4には、インレイ2が貼付などの任意の手法によって付加される。
図4の例では、
図4(A)~(D)に示すように、下げ札4は薄板状の部材であり、下げ札4にはz負方向側の主面41にインレイ2が貼付されている。
【0047】
なお、
図4に示すように、下げ札4の平面視の形状はインレイ2と土同様に略長方形状であるのが好ましい。また、下げ札4の長手方向及び短手方向の寸法は、共にインレイ2の長手方向及び短手方向の寸法より大きく形成されるのが好ましい。これにより、インレイ2の主面の全体を下げ札4に付加できるので、インレイ2を下げ札4により確実に固定することができる。
【0048】
下げ札4は、例えば紙や樹脂により形成される。下げ札4の主面には、文字43やバーコード44などの情報を印刷することができる。
図4の例では、
図4(A)、(C)に示すように、インレイ2が貼付される主面41とは反対側のz正方向側の主面42に文字43やバーコード44が印刷されている。なお、
図4(A)、(C)に図示される文字43やバーコード44は、下げ札4に印刷できる情報の一例であって、タグの使用態様に応じて任意の内容に変更できる。
【0049】
また、第3実施形態のRFIDタグ1Bでは、インレイ2が付加された下げ札4が、筒状体3の内部に挿入して設置される。すなわち、
図4(B)に示すように、下げ札4の短手方向両側の端部45、46が筒状体3の内壁31によってy方向両側から挟持され、この結果、下げ札4に貼付されているインレイ2も、筒状体3の内部に設置されることになる。
【0050】
また、
図4(B)に示すように、下げ札4は筒状体3の楕円形状の長軸A1に沿って設置されるのが好ましい。これにより、第1実施形態と同様に、筒状体3が最も効率良く下げ札4を挟持できるので、筒状体3による下げ札4及びインレイ2の保持をより確実にできる。
【0051】
なお、筒状体3の楕円形状は、外力が付加されない状態における長軸A1の自然長が、下げ札4の短手方向の寸法と同一か、または弾性変形時に短手方向の寸法より広がって下げ札4を挿入できる程度に、下げ札4の短手方向の寸法より小さく形成されるのが好ましい。これにより、筒状体3による下げ札4の保持をより確実にできる。
【0052】
第3実施形態のRFIDタグ1Bは、インレイ2を下げ札4に付加した状態で筒状体3の内部に収容する。このため、下げ札4にさまざまな情報を印刷することが可能で、利用者に物品11に関する情報をより直感的に視認させることができる。例えばRFIDタグ1Bを値札として利用する場合には、顧客が値段を確認しやすいなど、情報表示によって顧客の利便性を向上できる。
【0053】
また、インレイ2を下げ札4に付加した状態で筒状体3の内部に収容する構成により、インレイ2のICチップ21から情報を読み取れない状況となった場合でも、利用者は下げ札4に印刷された情報から代替的に物品11に関する情報を取得できるので、管理作業の効率や利便性を向上できる。
【0054】
さらに、第3実施形態のRFIDタグ1Bのように、インレイ2が下げ札4に付加された状態で筒状体3の内部に収容される構成であると、筒状体3は下げ札4を挟持して固定するので、インレイ2は筒状体3によって直接挟持力を受けなくて済む。これにより、インレイ2の長寿命化を図ることができる。
【0055】
なお、特に第3実施形態のRFIDタグ1Bのように下げ札4を備える構成では、下げ札4に文字などの情報が印刷される場合が多いと考えられる。このため、筒状体3は、内部に設置されている下げ札4の表面上の文字等を視認できる程度に、透明または半透明の素材で形成されるのが好ましい。これにより、利用者に下げ札4に印刷された情報を視認しやすくでき、利便性を向上できる。
【0056】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態に係るRFIDタグ1Cの概略構成を示す図である。
図5(A)~(D)の概略は
図1(A)~(D)と同様である。
【0057】
図5に示すように、第4実施形態のRFIDタグ1Cは、下げ札4Aに孔47が設けられている。孔47は、
図5(A)に示すように、紐、糸、アンビタッチなどの紐状部材48を通すために用いることができる。
【0058】
図5の例では、孔47は、例えば
図5(B)に示すように筒状体3の楕円形状の短軸A2に沿って下げ札4に貫通して設けられている。また、
図5(A)、(C)、(D)に示すように、インレイ2は、孔47が設けられる軸方向の位置に重ならないように配置されている。これにより、紐状部材48を孔47に挿通させることを容易にできる。
【0059】
[第5実施形態]
図6は、第5実施形態に係るRFIDタグ1Dの概略構成を示す図である。
図6(A)~(D)の概略は
図1(A)~(D)と同様である。
【0060】
図6に示すように、第4実施形態のRFIDタグ1Dは、インレイ2Dを筒状体3Dの内壁31に篏合する篏合部5を備える。篏合部5は、インレイ2Dに凹部51、52を有し、筒状体3Dの内壁31に凹部51、52と篏合する凸部53、54を有する。
【0061】
図6の例では、インレイ2Dの長手方向のほぼ中央の位置に、インレイ2Dの短手方向両側の端部25、26からそれぞれインレイ2Dの短手方向の中央側に窪むように一対の凹部51、52が設けられている。
【0062】
一方、筒状体3Dの内壁31の軸方向のほぼ中央の位置に、一対の凸部53、54が対向配置されている。一対の凸部53、54は、例えば
図6(A)、(B)に示すように内壁31の凹型の曲面から筒状体3Dの中心側に突出し、かつ、それぞれが凹部51、52と篏合可能な形状で形成されている。例えば
図6の各図に示すように、凹部51、52の底面はxy平面と平行に形成される。また、凸部53、54の先端面もxy平面と平行に形成され、かつ、凹部51、52の底面のy方向の位置よりも中心側に突出しないように形成されている。
【0063】
このような篏合部5を設けることにより、インレイ2Dと筒状体3Dとをより強固に固定できるので、例えば外力の影響などによってインレイ2Dが筒状体3Dから抜け出すことを防止できる。
【0064】
また、篏合部5を設ける場合、
図6(C)に示すように、インレイ2Dの短手方向の端部25、26のうち凹部51、52よりx負方向側の部分に、それぞれ中央側に傾斜する傾斜面55、56を設けてもよい。この場合、平面視において、インレイ2Dの凹部51、52よりx負方向側の部分が先細り形状となる。
【0065】
例えば
図6(C)に矢印F3で示すように、インレイ2Dをx正方向側から筒状体3Dに挿入すると、まず傾斜面55、56が筒状体3Dの凸部53、54に接触する。さらにインレイ2Dを外力F3でx負方向側に押圧することにより、傾斜面55、56が凸部53、54を筒状体3Dの長軸A1の外側へ押圧し、凸部53、54を介して筒状体3Dを長軸方向に押し広げる。これにより、外力F3によって、インレイ2Dを挿入可能な形状に筒状体3Dを弾性変形させながら、インレイ2Dを筒状体3Dに挿入することができる。そして、インレイ2Dの凹部51、52がそれぞれ凸部53、54の位置に到達すると、筒状体3Dが弾性復帰して凸部53、54が凹部51、52に篏合する。この結果、インレイ2Dが筒状体3Dの内部に篏合部5により固定される。
【0066】
なお、
図6の例とは反対に、インレイ2Dに凸部を設け、筒状体3Dの内壁にインレイ2Dの凸部が嵌合する凹部を設ける構成としてもよい。
【0067】
また、篏合部5の凹部51、52及び凸部53、54の位置は、
図6に示す位置に限られない。例えば、インレイ2Dの長手方向の任意の位置や、筒状体3Dの軸方向の任意の位置に適宜変更することができる。
【0068】
なお、
図6では、
図1の第1実施形態のRFIDタグ1に篏合部5を追加する構成を例示したが、
図3、
図4、
図5の第2、第3、第4実施形態の各RFIDタグ1A、1B、1Cに同様の篏合部5を追加する構成としてもよい。
【0069】
図3の第2実施形態に篏合部5を設ける場合には、
図6の例と同様に、インレイ2の短手方向の端部25、26に凹部を設け、筒状体3Aの内壁31のうち凹部と対向する位置に凸部を設ける。篏合部5の位置は、インレイ2の長手方向の中央でもよいし、筒状体3Aの延在方向の中央でもよい。また、
図6の例と同様に、インレイ2に傾斜面55、56部を設けてもよい。
【0070】
図4の第3実施形態と、
図5の第4実施形態に篏合部5を設ける場合には、下げ札4、4Aの短手方向の端部45、46に凹部を設け、筒状体3の内壁のうち凹部と対向する位置に凸部を設ける。篏合部5の位置は、下げ札4、4Aの長手方向の中央の位置でもよいし、インレイ2の長手方向の中央の位置でもよいし、筒状体3の延在方向の中央でもよい。また、第3実施形態、第4実施形態に篏合部5を設ける場合には、
図6の傾斜面55、56に対応する要素は下げ札4、4Aに設けることができる。
【0071】
また、
図3、
図4、
図5の第2、第3、第4実施形態のRFIDタグ1A、1B、1Cに篏合部5を設ける場合にも篏合部5の凹凸関係は逆でもよい。すなわち、インレイ2または下げ札4、4Aの短手方向の端部に凸部を設け、筒状体3、3Aの内壁31のうち凸部に対向する位置に凹部を設ける構成でもよい。
【0072】
[第6実施形態]
図7は、第6実施形態に係るRFIDタグ1Eの概略構成を示す図である。
図7(A)~(D)の概略は
図1(A)~(D)と同様である。
【0073】
図7(A)、(B)に示すように、第6実施形態のRFIDタグ1Eは、筒状体3Eの筒の形状が六角形状である。筒状体3Eは、
図7(B)に示すように、z方向に対向配置される第1面3E1と第2面3E2とを有する。また、第1面3E1のy方向両側に接続する第3面3E3と第4面3E4とを有する。また、第2面3E2のy方向両側に接続する第5面3E5と第6面3E6とを有する。
【0074】
第3面3E3のz負方向側の端部と、第5面3E5のz正方向側の端部とが接続され、第1角部3E7が形成されている。同様に、第4面3E4のz負方向側の端部と、第6面3E6のz正方向側の端部とが接続され、第2角部3E8が形成されている。第1角部3E7と第2角部3E8は、筒状体3Eのz方向のほぼ中間の位置に配置され、互いにy方向に対向して配置されている。
【0075】
第6実施形態のRFIDタグ1Eでは、
図7(A)~(D)に示すように、インレイ2の短手方向両側の端部25、26が、筒状体3Eの内壁31のうち第1角部3E7と第2角部3E8の部分によってy方向両側から挟持されて、筒状体3Eの内部に設置される。したがって、インレイ2は、筒状体3Eのz方向の高さのほぼ中央の位置に配置され、かつ、筒状体3Eの第1面3E1及び第2面3E2と平行に配置されることになる。
【0076】
なお、筒状体3Eの六角形状は、外力が付加されない状態における第1角部3E7と第2角部3E8との間の距離の自然長が、インレイ2の短手方向の寸法と同一か、または弾性変形時に短手方向の寸法より広がってインレイ2を挿入できる程度に、インレイ2の短手方向の寸法より小さく形成されるのが好ましい。これにより、筒状体3Eによるインレイ2の保持をより確実にできる。
【0077】
第6実施形態のRFIDタグ1Eは、例えば筒状体3Eの第1面3E1または第2面3E2の表面に粘着層を設けたり、粘着剤を塗布したりして、粘着面を形成して、この粘着面を管理対象の物品11の表面11Aに貼付することができる。これにより、筒状体3E自体を表面11Aと面接触させることができるので、RFIDタグ1Eを物品11に容易に直接固定することができる。
【0078】
[第7実施形態]
図8は、第7実施形態に係るRFIDタグ1Fの概略構成を示す図である。
図8(A)~(D)の概略は
図1(A)~(D)と同様である。
【0079】
図8(A)、(B)に示すように、第7実施形態のRFIDタグ1Fは、筒状体3Fの筒の形状が長方形状である。筒状体3Fは、
図8(B)に示すように、z方向に対向配置される第1面3F1と第2面3F2とを有し、y方向に配置される第3面3F3と第4面3F4とを有する。第1面3F1及び第2面3F2は長方形状の長辺に相当し、第3面3F3及び第4面3F4は長方形状の短辺に相当する。
【0080】
第1面3F1のy負方向側の端部と、第3面3F3のz正方向側の端部とが接続され、第1角部3F5が形成されている。同様に、第2面3F2のy正方向側の端部と、第4面3F4のz負方向側の端部とが接続され、第2角部3F6が形成されている。第1角部3F5は筒状体3Fのz正方向側の端部、かつy負方向側の端部に配置され、第2角部3F6は筒状体3Fのz負方向側の端部、かつy正方向側の端部に配置される。すなわち、第1角部3F5と第2角部3F6とは、長方形状の対角となっている。
【0081】
第7実施形態のRFIDタグ1Fでは、
図8(A)~(D)に示すように、インレイ2の短手方向両側の端部25、26が、筒状体3Fの内壁31のうち第1角部3F5と第2角部3F6の部分によって挟持されて、筒状体3Fの内部に設置される。したがって、インレイ2は、筒状体3Fの長方形状の対角方向に沿って配置されることになる。
【0082】
なお、筒状体3Fの四角形状は、外力が付加されない状態における第1角部3F5と第2角部3F6との間の距離長の自然長が、インレイ2の短手方向の寸法と同一か、または弾性変形時に短手方向の寸法より広がってインレイ2を挿入できる程度に、インレイ2の短手方向の寸法より小さく形成されるのが好ましい。これにより、筒状体3Fによるインレイ2の保持をより確実にできる。
【0083】
第7実施形態のRFIDタグ1Fは、例えば筒状体3Fの第1面3F1または第2面3F2の表面に粘着層を設けたり、粘着剤を塗布したりして、粘着面を形成して、この粘着面を管理対象の物品11の表面11Aに貼付することができる。これにより、筒状体3F自体を表面11Aと面接触させることができるので、RFIDタグ1Fを物品11に容易に直接固定することができる。
【0084】
なお、第6実施形態の六角形状の筒状体3Eや、第7実施形態の長方形状の筒状体3Fの他にも、筒状体を任意の多角形状で形成してもよい。
【0085】
また、
図7の第6実施形態や
図8の第7実施形態では、
図1の第1実施形態と同様のインレイ2が筒状体3E、3Fに挿入されて設置される構成を例示したが、
図4の第3実施形態と同様の下げ札4や、
図5の第4実施形態と同様の下げ札4Aが筒状体3E、3Fに挿入されて設置される構成としてもよい。また、
図3の第2実施形態と同様に、
図7の第6実施形態の筒状体3Eや、
図8の第7実施形態の筒状体3Fに、紐状部材34を通す孔32、33を設ける構成としてもよい。
【実施例0086】
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0087】
<第1試験の設定>
下記のように実施例1、2、比較例1、2を設定し、複数のRFIDタグが箱状の単一の収容部10に纏めて収容された状態で、筒状体3の有無によるRFIDタグの性能品質への影響を検証する第1試験を行った。
【0088】
<実施例1>
図1に示した第1実施形態のRFIDタグ1と同様の形状で、筒状体3を備えるRFIDタグを作成した。実施例1では、インレイ2にコバオリ社製のインレイラベル448J(品番:448J3013)を用いた。実施例1のインレイ2には、長手方向(X方向)の寸法が30mm、短手方向(Y方向)の寸法が13mmのものを用いた。
【0089】
このように作成した10個のRFIDタグを、金属製のダブルクリップが底部に敷き詰められた収容部10に収容し、各RFIDタグの読取性能の試験を行った。RFIDタグの読取にはシーデックス社製の特定小電力型(250mW)のリーダライタ(型式:CRU920MJ-7)を用いた。リーダライタは、収容部10の底面から約15センチ離れた位置から約15秒間連続で電波を照射し、この電波に応じて各RFIDタグから出力された電波を受信した。すなわち、リーダライタは、RFIDタグとの間に金属製のダブルクリップが介在する状況で、RFIDタグからの情報読取を行った。また、リーダライタとRFIDタグの間の通信には、920MHz帯の周波数の電波を用いた。
【0090】
リーダライタによる各RFIDタグからの電波受信結果に基づき、RFIDタグの読取性能として「読取率」及び「平均RSSI」の2種類の指標を算出した。「読取率」とは、読取対象の10個のRFIDタグのうちリーダライタにより情報を読み取ることができたタグの数の割合である。「平均RSSI値」とは、リーダライタにより読み取ることができたタグのRSSI(Received Signal Strength Indicator)、すなわちリーダライタが当該タグから受信した電波の強度、の平均値である。
【0091】
<実施例2>
インレイ2にAvery DENNISON社製のUHF RFIDインレイ(製品名:AD-190)を用いた点以外は、実施例1と同様の構成でRFIDタグを作成し、実施例1と同様の条件で計測を行った。実施例2のインレイ2には、長手方向(X方向)の寸法が22mm、短手方向(Y方向)の寸法が12.5mmのものを用いた。
【0092】
<比較例1>
インレイ2の周囲に筒状体3を設けない点以外は、実施例1と同様の構成でRFIDタグを作成し、実施例1と同様の条件で計測を行った。すなわち、比較例1のRFIDタグは、コバオリ社製のインレイ2のみを備える構成とした。そして、10個のコバオリ社製のインレイ2を、金属製のダブルクリップが底部に敷き詰められた収容部10に収容し、各インレイ2が金属製のダブルクリップと直接接触する状態として、各RFIDタグの読取性能の試験を行った。
【0093】
<比較例2>
インレイ2の周囲に筒状体3を設けない点以外は、実施例2と同様の構成でRFIDタグを作成し、実施例1と同様の条件で計測を行った。すなわち、比較例2のRFIDタグは、Avery DENNISON社製のインレイ2のみを備える構成とした。そして、10個のAvery DENNISON社製のインレイ2を、金属製のダブルクリップが底部に敷き詰められた収容部10に収容し、各インレイ2が金属製のダブルクリップと直接接触する状態として、各RFIDタグの読取性能の試験を行った。
【0094】
上記の第1試験の結果、「読取率」は実施例1、2では共に100%であり、10個のRFIDタグのすべてから情報を読み取ることが可能であることを確認できた。また、「平均RSSI」は、実施例1では-64.46dBmであり、実施例2では-72.43dBmとなった。実施例2では、RSSI値は実施例1と比較して弱い傾向だが読取率には問題が無かった。
【0095】
一方、比較例1の読取率は60%であり、比較例2の読取率は0%であり、10個のRFIDタグの一部またはすべてから情報を読み取ることができないことを確認できた。また、「平均RSSI」は、比較例1では-63.25dBmとなった。なお、実施例2ではすべてのRFIDタグから情報を読み取れず、電波自体を受信できなかったため、平均RSSIは0となった。
【0096】
このように、第1試験の結果より、金属製のクリップが底部に敷き詰められた収容部10に複数のRFIDタグを収容した状態でも、筒状体3を備えない比較例のRFIDタグと比較して、第1実施形態のRFIDタグ1と同様の筒状体3を備えるRFIDタグが、周囲の金属や他のタグの影響を受けにくく、通信性能の低下を抑制できることが示された。また、実施例1、2では異なる種類のインレイ2を用いたが共に良好な読取性能を得られたので、インレイ2の種類に関わらず、筒状体3を備える構成が金属製管理対象の読取対策に効果があることが示された。
【0097】
<第2試験の設定>
下記のように実施例3、4、比較例3、4を設定し、金属製の管理対象の物品11にRFIDタグが設置された状態で、筒状体3の有無によるRFIDタグの性能品質への影響を検証する第2試験を行った。
【0098】
<実施例3>
実施例1と同様の構成のRFIDタグを作成した。管理対象の物品11として金属板を用い、作成した10個のRFIDタグをこの金属板の上に載置した状態で、各RFIDタグの読取性能の試験を行った。
【0099】
RFIDタグの読取には、実施例1と同様にシーデックス社製のリーダライタを用いた。リーダライタは、金属板上に載置されたRFIDタグ群から水平方向に約10センチ離れた位置から約15秒間連続で電波を照射し、この電波に応じて各RFIDタグから出力された電波を受信した。リーダライタによる各RFIDタグからの電波受信結果に基づき、実施例1と同様に、RFIDタグの読取性能として「読取率」及び「平均RSSI」の2種類の指標を算出した。
【0100】
<実施例4>
実施例2と同様の構成のRFIDタグを作成し、実施例3と同様の条件で計測を行った。
【0101】
<比較例3>
比較例1と同様の構成のRFIDタグを作成し、実施例3と同様の条件で計測を行った。
【0102】
<比較例4>
比較例2と同様の構成のRFIDタグを作成し、実施例3と同様の条件で計測を行った。
【0103】
上記の第2試験の結果、「読取率」は実施例3、4では共に100%であり、10個のRFIDタグ1のすべてから情報を読み取ることが可能であることを確認できた。また、「平均RSSI」は、実施例3では-65.76dBmであり、実施例4では-69.58dBmとなった。
【0104】
一方、「読取率」は比較例3、4では共に0%であり、10個のRFIDタグ1のすべてから情報を読み取ることができないことを確認できた。なお、実施例3、4ではすべてのRFIDタグから情報を読み取れず、電波自体を受信できなかったため、平均RSSIは0となった。
【0105】
このように、第2試験の結果より、金属製の管理対象の物品11の表面に複数のRFIDタグを設置した状態でも、筒状体3を備えない比較例のRFIDタグと比較して、第1実施形態のRFIDタグ1と同様の筒状体3を備えるRFIDタグが、金属製の管理対象の物品11の影響を受けにくく、通信性能の低下を抑制できることが示された。また、実施例3、4では異なる種類のインレイ2を用いたが共に良好な読取性能を得られたので、インレイ2の種類に関わらず、筒状体3を備える構成が金属製管理対象の読取対策に効果があることが示された。
【0106】
第1試験及び第2試験で用いた実施例1~4のRFIDタグは、第1実施形態のRFIDタグ1と同様に筒状体3を備える構成によって、インレイ2が筒状体3の内部に挿入されて設置されるので、インレイ2の周囲を筒状体3によって包囲できる。これにより、実施例1~4のRFIDタグは、インレイ2と管理対象の物品11や周囲の他のタグとの距離を筒状体3によって所定以上に確保できるという特徴を有する。第1試験及び第2試験の結果より、実施例1~4のRFIDタグと同様の構成をとる第1実施形態のRFIDタグ1は、このような構成上の特徴によって、インレイ2の周囲に存在する金属製の要素や他のタグによる通信性能への影響を受けにくくできるので、使用態様によらず通信性能の低下を抑制できることが示された。
【0107】
なお、第2~第7実施形態のRFIDタグ1A、1B、1C、1D、1E、1Fも、第1実施形態のRFIDタグ1と同様に、インレイ2、2Dが内部に挿入されて設置される筒状体3、3A、3D、3E、3Fを備え、第1実施形態のRFIDタグ1と同様の構成上の特徴を有する。このため、第2~第7実施形態のRFIDタグ1A、1B、1C、1D、1E、1Fを用いて第1試験及び第2試験を実施した場合でも、このような構成上の特徴によって、上述の実施例1~4と同様の結果を得られると考えられる。したがって、第1試験及び第2試験の結果より、第2~第7実施形態のRFIDタグ1A、1B、1C、1D、1E、1Fも、インレイ2、2Dの周囲に存在する金属製の要素や他のタグによる通信性能への影響を受けにくくできるので、使用態様によらず通信性能の低下を抑制できることが示されたといえる。
【0108】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0109】
上記実施形態では、筒状体3が径方向に弾性変形可能である構成を例示したが、パイプなどの剛性が高く径方向に弾性変形しないものを筒状体に適用してもよい。
【0110】
上記実施形態では、インレイ2の全体が筒状体の内部に収容される構成を例示したが、インレイ2のうち少なくともアンテナ部23の範囲までが筒状体3に覆われればよく、インレイ2の一部が筒状体の内部に収容される構成でもよい。