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特開2024-1796リアクトル、分割片、コンバータ、及び電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001796
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】リアクトル、分割片、コンバータ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20231227BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20231227BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20231227BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F27/24 J
H01F27/24 K
H01F27/255
H02M3/155 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100681
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】名田 將人
(72)【発明者】
【氏名】草別 和嗣
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS13
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730FG01
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】安定した磁気特性を有する磁性コアを備えるリアクトルを提供する。
【解決手段】巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されている。前記第一コア片は、前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、前記第一部分は、前記端面と同じ方向を向く外方面を備える。前記第一コア片は更に、前記外方面から前記第二部分の内部に至る止まり穴を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、
前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、
前記第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、
前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分は、前記端面と同じ方向を向く外方面を備え、
前記第一コア片は更に、前記外方面から前記第二部分の内部に至る止まり穴を備える、
リアクトル。
【請求項2】
前記止まり穴の軸線は、前記第二部分の延伸方向に沿っており、
前記止まり穴は、前記第二部分の軸線を含む、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記止まり穴の内面と前記第二部分の外面との最大長さが15mm以下である、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記第二部分の軸方向に直交する横断面において、前記第二部分の外周輪郭の内側の面積S0と、前記止まり穴の面積S1との比S1/S0が0.02以上0.15以下である、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記第一コア片は更に、前記第二部分の延伸方向に平行な方向に延びる第三コア部及び第四コア部を備えるE字形状を備え、
前記第二部分は、前記第三コア部と前記第四コア部に挟まれた位置に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記第一コア片は、前記第一部分と前記第二部分とで構成されるT字形状を備える、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記複数の分割片は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体によって構成された第二コア片を備える、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記第一コア片は、前記止まり穴に配置された棒状のコア材を備える、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項9】
リアクトルに備わる磁性コアの一部を構成する分割片であって、
樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
第一部分と、
前記第一部分の延伸方向に直交する方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分は、前記第二部分の反対側を向く外方面を備え、
更に、前記外方面から前記第二部分の内部に至る止まり穴を備える、
分割片。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項11】
請求項10に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、分割片、コンバータ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車などに備わるコンバータの構成部品にリアクトルがある。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されるリアクトルは、コイルと磁性コアとを備える。コイルは、巻線を巻回してなる巻回部を備える。巻回部の数は一つでも良いし複数でも良い。
【0003】
磁性コアは複数の分割片を組み合わせることで構成されている。分割片は例えば、軟磁性粉末を加圧成形してなる圧粉成形体、又は軟磁性粉末が樹脂中に分散した複合材料の成形体である。複合材料の成形体は、軟磁性粉末と樹脂との混合比率を変化させることで、所望の磁気特性を達成し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-135334号公報
【特許文献2】特開2016-201509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複合材料の成形体からなる分割片は、例えば熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に軟磁性粉末を混合し、その混合物を金型内に射出する射出成形によって作製される。この場合、金型が冷却または加熱されることで、樹脂が固化し、分割片が完成する。しかし、この樹脂の固化の際、金型に接触する分割片の外方側の部分が、分割片の内方側の部分に比べて早く固化し易い。そのため、固化に伴い収縮した外方側の部分が、内方側の部分を外方に引っ張り、分割片の内部に引け巣(shrinkage cavity)が形成され易い。引け巣の形成位置及び大きさは不規則となり易く、引け巣の形成位置及び大きさによって、分割片の磁気特性が不安定になる恐れがある。
【0006】
本開示は、安定した磁気特性を有する磁性コアを備えるリアクトルを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、安定した磁気特性を有する分割片を提供することを目的の一つとする。更に、本開示は、リアクトルを備えるコンバータ、及び電力変換装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のリアクトルは、
巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、
前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、
前記第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、
前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分は、前記端面と同じ方向を向く外方面を備え、
前記第一コア片は更に、前記外方面から前記第二部分の内部に至る止まり穴を備える。
【0008】
本開示の分割片は、
リアクトルに備わる磁性コアの一部を構成する分割片であって、
樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
第一部分と、
前記第一部分の延伸方向に直交する方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分は、前記第二部分の反対側を向く外方面を備え、
更に、前記外方面から前記第二部分の内部に至る止まり穴を備える。
【0009】
本開示のコンバーターは、本開示のリアクトルを備える。
【0010】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバーターを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示のリアクトル及び分割片は、安定した磁気特性を備える。また、本開示のコンバーター及び電力変換装置は、安定して動作する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に記載されるリアクトルの概略斜視図である。
図2図2は、実施形態1に記載される磁性コアの概略上面図である。
図3図3は、実施形態1に記載される複合材料の模式図である。
図4図4は、実施形態1に記載される第一コア片の概略斜視図である。
図5図5は、変形例1に記載される第一コア片であって、止まり穴にコア材が配置された第一コア片の概略断面図である。
図6図6は、実施形態2に記載される磁性コアの概略上面図である。
図7図7は、実施形態3に記載される磁性コアの概略上面図である。
図8図8は、実施形態4に記載される磁性コアの概略上面図である。
図9図9は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
図10図10は、コンバータを備える電力変換装置の一例の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、
前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、
前記第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、
前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分は、前記端面と同じ方向を向く外方面を備え、
前記第一コア片は更に、前記外方面から前記第二部分の内部に至る止まり穴を備える。
【0015】
上記リアクトルは、安定した磁気特性を備える。
上記リアクトルは止まり穴を有する第一コア片を備える。この第一コア片を作製する場合、止まり穴を形成するための中子が第一コア片の内部に配置される。第一コア片の内部に中子が配置されることによって、第一コア片を構成する樹脂が全体的に均一に固化し易く、内側から外側に向かう収縮を抑制し易い。そのため、第一コア片の内部に引け巣ができ難い。また、第一コア片の内部に引け巣ができたとしても、その形成位置及び大きさが非常に限定される。従って、止まり穴を有する第一コア片は安定した磁気特性を備え、この第一コア片を備えるリアクトルも安定した磁気特性を備える。
【0016】
ここで、止まり穴による磁性コアの磁気特性の低下は限定的である。なぜなら、後述する実施形態において説明するように、止まり穴の延伸方向がおおむね磁束の方向に沿っているからである。
【0017】
止まり穴によって第一コア片の実体部分が減る。従って、上記構成のリアクトルは、第一コア片に止まり穴を有さないリアクトルに比べて軽量である。
【0018】
<2>上記<1>に記載されるリアクトルにおいて、
前記止まり穴の軸線は、前記第二部分の延伸方向に沿っており、
前記止まり穴は、前記第二部分の軸線を含んでいても良い。
【0019】
上記形態では、第二部分の延伸方向に直交する断面における中心部分に止まり穴が配置されている。このような第一コア片では、止まり穴の内面から第二部分の外面までの距離が極端に長くなる箇所が存在しない。従って、上記形態の第一コア片には引け巣ができ難い。また、止まり穴が第二部分の軸線を含む位置に配置されていることで、止まり穴が磁性コアの磁気特性を低下させ難い。
【0020】
<3>上記<1>又は<2>に記載されるリアクトルにおいて、
前記止まり穴の内面と前記第二部分の外面との最大長さが15mm以下であっても良い。
【0021】
上記構成を備える第一コア片には引け巣ができ難い。
【0022】
<4>上記<1>から<3>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記第二部分の軸方向に直交する横断面において、前記第二部分の外周輪郭の内側の面積S0と、前記止まり穴の面積S1との比S1/S0が0.02以上0.15以下であっても良い。
【0023】
比S1/S0が0.02以上であれば第二コア部分に引け巣ができ難い。比S1/S0が0.15以下であれば第二コア部の磁気特性及び強度が低下し難い。
【0024】
<5>上記<1>から<4>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記第一コア片は更に、前記第二部分の延伸方向に平行な方向に延びる第三コア部及び第四コア部を備えるE字形状を備え、
前記第二部分は、前記第三コア部と前記第四コア部に挟まれた位置に配置されていても良い。
【0025】
E字形状とは、基部と、基部の延伸方向に直交する方向に延びる3つの脚部とを備える形状である。E字形状の第一コア片では、一般に中間の脚部が最も太い。その最も太い中間の脚部が止まり穴を有する第二部分であれば、中間の脚部に引け巣ができ難い。中間の脚部よりも細い部分にはそもそも引け巣ができ難い。従って、E字形状の第一コア片は引け巣をほとんど有さない。
【0026】
<6>上記<1>から<4>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記第一コア片は、前記第一部分と前記第二部分とで構成されるT字形状を備えていても良い。
【0027】
T字形状の第一コア片では、一般に第二部分が最も太い。その最も太い第二部分に止まり穴があれば、第二部分に引け巣ができ難い。第二部分よりも細い第一部分にはそもそも引け巣ができ難い。従って、T字形状の第一コア片は引け巣をほとんど有さない。
【0028】
<7>上記<1>から<6>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記複数の分割片は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体によって構成された第二コア片を備えていても良い。
【0029】
圧粉成形体は透磁率などの磁気特性に優れる。第一コア片が複合材料の成形体で、第二コア片が圧粉成形体であれば、磁性コア全体の磁気特性の調整が容易になる。このような磁性コアは磁気飽和し難い。
【0030】
<8>上記<1>から<7>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記第一コア片は、前記止まり穴に配置された棒状のコア材を備えていても良い。
【0031】
コア材は第一コア片の磁気特性を向上させる。ここで、第一コア片を成形する際に形成されるスプルーをコア材として利用すれば、材料の無駄が低減される。
【0032】
<9>実施形態に係る分割片は、
リアクトルに備わる磁性コアの一部を構成する分割片であって、
樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
第一部分と、
前記第一部分の延伸方向に直交する方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分は、前記第二部分の反対側を向く外方面を備え、
更に、前記外方面から前記第二部分の内部に至る止まり穴を備える。
【0033】
上記分割片は、安定した磁気特性を備える。
上記分割片を作製する場合、止まり穴を形成するための中子が分割片の内部に配置される。分割片の内部に中子が配置されることによって、分割片を構成する樹脂が全体的に均一に固化し易く、内側から外側に向かう収縮が抑制され易い。従って、分割片の内部に引け巣ができ難い。また、分割片の内部に引け巣ができたとしても、その形成位置及び大きさが非常に限定される。従って、止まり穴を有する分割片は安定した磁気特性を備える。
【0034】
上記分割片は強度に優れる。なぜなら、止まり穴によって分割片の内部に引け巣ができ難いからである。
【0035】
止まり穴によって分割片の実体部分が減る。従って、上記分割片は軽量である。
【0036】
<10>実施形態に係るコンバータは、上記<1>から<8>のいずれかに記載されるリアクトルを備える。
【0037】
上記コンバータは、安定した磁気特性を備える実施形態のリアクトルを備える。従って、上記コンバータは、安定して動作する。
【0038】
<11>実施形態に係る電力変換装置は、上記<10>に記載されるコンバータを備える。
【0039】
上記電力変換装置は、安定した性能を発揮するコンバータを備える。従って、上記電力変換装置は、安定して動作する。
【0040】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0041】
<実施形態1>
図1に示される本例のリアクトル1は、コイル2と磁性コア3とを組み合わせて構成される。このリアクトル1の特徴の一つは、磁性コア3の一部に止まり穴4が設けられていることである。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0042】
≪コイル≫
コイル2は、少なくとも一つの巻回部21を有する。本例の巻回部21の数は一つである。巻回部21は巻線を螺旋状に巻回して構成される。巻線は、公知の巻線を利用できる。本形態の巻線は、絶縁被覆を有する導体線からなる被覆平角線である。導体線は例えば、銅製の平角線で構成されている。絶縁被覆は例えば、エナメルからなる。本例の巻回部21は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルである。
【0043】
巻回部21の形状は矩形筒状である。即ち、本例の巻回部21の端面形状は矩形枠状である。本例の巻回部21の角部は丸められている。巻回部21の形状が矩形筒状であることで、巻回部が同じ断面積の円筒状である場合に比較して、巻回部21と設置対象との接触面積が大きくなり易い。そのため、リアクトル1は、巻回部21を介して設置対象に放熱し易い。また、設置対象に対する巻回部21の設置状態が安定し易い。
【0044】
巻回部21の端部2a及び端部2bはそれぞれ、巻回部21の外周側へ引き伸ばされている。巻回部21の端部2a及び端部2bでは絶縁被覆が剥がされて導体線が露出している。露出した導体線には、図示しない端子部材が接続される。コイル2にはこの端子部材を介して外部装置が接続される。外部装置の図示は省略する。外部装置は、例えばコイル2に電力供給を行なう電源である。
【0045】
≪磁性コア≫
磁性コア3は、図2に示されるように、ミドルコア部30と、第一エンドコア部31と、第二エンドコア部32と、第一サイドコア部33と、第二サイドコア部34とを備える。本例の磁性コア3は、二つの環形状がつながった『8』の字形状である。図2では、コイル2の図示が省略されている。図2では、各コア部の境界が二点鎖線で示されている。ミドルコア部30は、巻回部21の内部に配置される部分を有する。第一エンドコア部31は、巻回部21の第一の端面211(図1参照)に臨む。第二エンドコア部32は、巻回部21の第二の端面212(図1参照)に臨む。第一サイドコア部33は、角筒状の巻回部21に備わる4つの外周面のうちの一つである第一の側面の外側に配置される。第二サイドコア部34は、巻回部21の第二の側面の外側に配置される。第二の側面は、第一の側面の反対側の面である。
【0046】
この磁性コア3では、ミドルコア部30、第一エンドコア部31、第一サイドコア部33、及び第二エンドコア部32に、太破線で示される環状の閉磁路が形成される。また、ミドルコア部30、第一エンドコア部31、第二サイドコア部34、及び第二エンドコア部32に、太破線で示される環状の閉磁路が形成される。
【0047】
ここで、磁性コア3を基準にしてリアクトル1における方向を規定する。まず、ミドルコア部30の軸方向に沿った方向がX方向である。そのX方向に直交し、ミドルコア部30と第一サイドコア部33と第二サイドコア部34とが並列される方向がY方向である。そして、X方向とY方向の両方に直交する方向がZ方向(図1)である。
【0048】
[ミドルコア部]
ミドルコア部30の少なくとも一部は、巻回部21の内部に配置される。従って、ミドルコア部30は、巻回部21の軸線方向に沿って延びる。本例では、磁性コア3のうち、巻回部21の軸線方向に沿った部分の両端部がそれぞれ、巻回部21の第一の端面211及び第二の端面212から突出している。その突出する部分もミドルコア部30の一部である。
【0049】
ミドルコア部30の形状は、巻回部21の内部形状に沿った形状であれば特に限定されない。本例のミドルコア部30は、略直方体状である。
【0050】
[第一エンドコア部・第二エンドコア部]
第一エンドコア部31及び第二エンドコア部32は、巻回部21の軸線方向に直交するY方向に延びており、巻回部21のY方向の幅よりも大きい。即ち、第一エンドコア部31は、巻回部21の第一の端面211よりもY方向の外側に張り出している。第二エンドコア部32は、巻回部21の第二の端面212よりもY方向の外側に張り出している。
【0051】
第一エンドコア部31と第二エンドコア部32の形状は、各エンドコア部31,32の内部に十分な磁路が形成される形状であれば特に限定されない。本例の第一エンドコア部31及び第二エンドコア部32は略直方体状である。Z方向から見た第一エンドコア部31及び第二エンドコア部32の4つの角部のうち、両サイドコア部33,34から遠い位置にある2つの角部は、丸みを有していも良い。上記2つの角部が丸みを有していると、エンドコア部31,32の重量が削減される。上記2つの角部は、磁束が通り難い箇所である。従って、上記2つの角部が丸められていても、リアクトル1の磁気特性は低下し難い。
【0052】
本例の第一エンドコア部31の外方面310には止まり穴4が開口している。外方面310は、第一エンドコア部31におけるX方向を向く二つの面のうち、コイル2から離れた位置にある面である。つまり、外方面310は、第一エンドコア部31のうち、巻回部21の第一の端面211に向き合う面の反対側に配置される面である。外方面310は、巻回部21の第一の端面211と同じ方向を向いている。止まり穴4の詳細については後述する。
【0053】
[第一サイドコア部・第二サイドコア部]
第一サイドコア部33は、巻回部21の第一の側面の外側において、第一エンドコア部31と第二エンドコア部32とをつなぐ。第一サイドコア部33の軸方向は、ミドルコア部30の軸方向に平行となっている。第一の側面は、巻回部21におけるY方向に向く面である。
【0054】
第二サイドコア部34は、巻回部21の第二の側面の外側において、第一エンドコア部31と第二エンドコア部32とをつなぐ。第二の側面は、巻回部21におけるY方向に向く面であって、第一の側面の反対方向に向いた面である。第二サイドコア部34の軸方向は、ミドルコア部30の軸方向に平行となっている。本例では、ミドルコア部30の軸線と、第一サイドコア部33の軸線と、第二サイドコア部34の軸線とは、XY平面上に配置されている。
【0055】
[サイズ]
図1に示されるリアクトル1が車載用である場合、磁性コア3のX方向の長さLは、例えば30mm以上150mm以下、磁性コア3のY方向の幅Wは、例えば30mm以上150mm以下、Z方向の高さHは、例えば15mm以上75mm以下である。
【0056】
ミドルコア部30のY方向の長さT0は、例えば10mm以上50mm以下である。第一エンドコア部31のX方向の長さT1、及び第二エンドコア部32のX方向の長さT2は、例えば5mm以上40mm以下である。また、第一サイドコア部33のY方向の長さT3、及び第二サイドコア部34のY方向の長さT4は、例えば5mm以上40mm以下である。これらの長さは、磁性コア3の磁路断面積の大きさに関わる。
【0057】
ミドルコア部30が最も太い。本明細書における『太い』とは、磁性コア3の環形状を平面視したときに各部の幅が大きいことを意味する。本例では、磁性コア3をZ方向から平面視したときの各部の幅が大きいことを『太い』という。本例におけるミドルコア部30の幅は、長さT0である。第一エンドコア部31の幅、及び第二エンドコア部32の幅はそれぞれ、長さT1及び長さT2である。第一サイドコア部33の幅、及び第二サイドコア部34の幅はそれぞれ、長さT3及び長さT4である。
【0058】
[分割形態]
磁性コア3は、複数の分割片3A,3Bを組み合わせてなる。本例の分割片3A,3Bの数は2であるが、3以上でも良い。分割片3Aは、後述する複合材料の成形体からなる第一コア片5である。第一コア片5は、後述する止まり穴4を備える。分割片3Bは、後述する圧粉成形体からなる第二コア片6である。
【0059】
本例の第一コア片5は、第一部分51と第二部分52と第三部分53と第四部分54とを備える。第一部分51は第一エンドコア部31に対応する。第二部分52はミドルコア部30の一部に対応する。第三部分53は第一サイドコア部33に対応する。第四部分54は第二サイドコア部34に対応する。第二部分52は、第三部分53と第四部分54との間に配置されている。第二部分52と第三部分53との間、及び第二部分52と第四部分54との間には間隔が設けられている。Z方向から見た第一コア片5の形状は、略E字形状である。第一コア片5は、巻回部21の内部空間に配置された第一端面3aを備える。第一端面3aは、第二部分52の端面であって、Y-Z平面に平行である。
【0060】
本例の第二コア片6は、磁性コア3における第一コア片5を除く部分を構成する。具体的には、第二コア片6は、第二エンドコア部32とミドルコア部30の一部とで構成されている。Z方向から見た第二コア片6の形状は、略T字形状である。第二コア片6は、巻回部21の内部空間に配置された第二端面3bを備える。第二端面3bは第一端面3aに向き合う。第二端面3bはY-Z平面に平行である。
【0061】
第一端面3aと第二端面3bとの間には隙間3gが形成されている。この隙間3gは磁気ギャップとして機能する。
【0062】
[磁気特性・材質など]
第一コア片5は、複合材料の成形体である。複合材料9は、図3の模式図に示されるように、固化した樹脂90と、樹脂90中に分散した軟磁性粉末91とを含む。軟磁性粉末91は、鉄などの鉄族金属、又はFe(鉄)-Si(シリコン)合金、Fe-Ni(ニッケル)合金などの鉄合金などで構成される軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子の表面には、リン酸塩などで構成される絶縁被覆が形成されていても良い。
【0063】
樹脂90は例えば、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂である。熱硬化性樹脂は例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂である。熱可塑性樹脂は例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂である。その他、樹脂90は、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴムでも良い。
【0064】
複合材料9は、樹脂90及び軟磁性粉末91の他に、非金属粉末を含有していても良い。非金属粉末は複合材料9の成形体の放熱性を向上させる。非金属粉末は例えば、アルミナ又はシリカなどのセラミックスフィラーである。セラミックスフィラーは非磁性材料でもある。非金属粉末の含有量は例えば、0.2質量%以上20質量%以下、更に0.3質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下である。
【0065】
複合材料9中の軟磁性粉末91の含有量は例えば、30体積%以上80体積%以下である。飽和磁束密度や放熱性の向上の観点から、軟磁性粉末91の含有量は更に、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上でも良い。製造過程での流動性の向上の観点から、軟磁性粉末91の含有量は75体積%以下でも良い。軟磁性粉末91の含有量が小さくなるほど、複合材料9の成形体の比透磁率は小さくなり易い。複合材料9の成形体の比透磁率は、例えば5以上50以下である。複合材料9の成形体の比透磁率は、更に10以上45以下、15以上40以下、20以上35以下であっても良い。
【0066】
複合材料9の第一コア片5は、未固化の樹脂90と軟磁性粉末91との混合物を金型に充填し、樹脂90を固化させる樹脂成形によって製造される。図4には、樹脂成形された第一コア片5が示されている。第一コア片5は、ゲートとランナーとスプルーとを備える。ゲートは第一コア片5につながっている。第一コア片5の樹脂成形後、ゲートは切り離される。ゲート、ランナー、及びスプルーの組成は、第一コア片5の本体の組成と同じである。
【0067】
図2に示される第二コア片6は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形することによって作製された圧粉成形体である。この軟磁性粉末は、複合材料9の軟磁性粉末91に利用できるものであれば特に限定されない。原料粉末には潤滑剤が含まれていても良い。圧粉成形体は、複合材料9の成形体よりも軟磁性粉末の含有量を高め易い。例えば、圧粉成形体における軟磁性粉末の含有量は、80体積%超、更に85体積%以上である。圧粉成形体は、高い飽和磁束密度、及び比透磁率を有する傾向にある。圧粉成形体の比透磁率は、例えば50以上500以下である。圧粉成形体の比透磁率は、80以上、100以上、150以上、180以上であっても良い。
【0068】
複合材料の成形体からなる第一コア片5と、圧粉成形体からなる第二コア片6とを備える磁性コア3は磁気飽和し難い。
【0069】
≪止まり穴≫
第一コア片5は止まり穴4を備える。止まり穴4は、底面4bを有する穴である。止まり穴4は、外方面310から第二部分52に至る。つまり、底面4bは第二部分52の内部に配置されている。外方面310における止まり穴4の開口部4hは、X方向から見てミドルコア部30の外周輪郭の内側に配置されている。
【0070】
止まり穴4は、第一コア片5の内部に引け巣が形成されることを抑制する。第一コア片5が樹脂成形される際、止まり穴4を形成するための中子が第一コア片5の内部に配置される。第一コア片5の内部に中子が配置されることによって、第一コア片5を構成する樹脂が全体的に均一に固化し易く、内側から外側に向かう収縮が抑制され易い。そのため、第一コア片5の内部に引け巣ができ難い。また、第一コア片5の内部に引け巣ができたとしても、その形成位置及び大きさが非常に限定される。第一コア片5は、止まり穴4を含んだ状態で所望の磁気特性を達成するように設計されている。イレギュラーな空隙である引け巣が少ない第一コア片5は安定した磁気特性を備える。
【0071】
本例の止まり穴4の軸線は、第二部分52の延伸方向、即ちX方向に沿って延びている。つまり、止まり穴4の軸線は、第二部分52における磁束の方向に沿っており、磁束の方向に交差していない。従って、止まり穴4は第一コア片5の磁気特性を低下させ難い。
【0072】
止まり穴4の軸線は、第二部分52の軸線、即ちミドルコア部30の軸線を含んでいる。ミドルコア部30の軸線は、ミドルコア部30のY-Z断面の面積重心を通る直線である。本例の磁性コア3では、ミドルコア部30から第一エンドコア部31に向かう磁束が、第一サイドコア部33に向かう磁束と、第二サイドコア部34に向かう磁束とに分かれる。そのため、ミドルコア部30の軸線付近、即ち第一コア片5の第二部分52の軸線付近には磁束が通り難い。また、第一エンドコア部31における止まり穴4が設けられる部分、即ち第一部分51における止まり穴4が設けられる部分も、磁束が通り難い部分である。従って、第一コア片5に備わる止まり穴4は、第一コア片5の磁気特性を低下させ難い。
【0073】
止まり穴4の横断面の形状は特に限定されない。止まり穴4の横断面とは、止まり穴4の延伸方向に直交する断面である。本例の場合、止まり穴4の横断面は、止まり穴4のY-Z断面である。本例の止まり穴4の横断面の形状は真円形である。当該断面形状は、楕円形であっても良いし、矩形を含む多角形状であっても良いし、星形などの異形であっても良い。
【0074】
止まり穴4の横断面は、止まり穴4の全長にわたって一定でも良いし、底面4bに向かうに従って小さくなっても良い。先細り形状の止まり穴4であれば、第一コア片5を樹脂成形する際、第一コア片5から中子を抜き易い。
【0075】
止まり穴4の内面40と第二部分52の外面520との最大長さは例えば15mm以下である。内面40には底面4bも含まれる。本明細書における最大長さは、止まり穴4の軸線に直交する横断面における内面40と外面520との長さ、及び止まり穴4の軸線に沿った縦断面における底面4bと第一端面3aとの長さのうち、最大のものをいう。本例では、横断面における内面40と、矩形断面を有する第二部分52の角部との間の長さである。この最大長さが15mm以下あれば、第一コア片5を樹脂成形する際、第一コア片5に引け巣ができ難い。最大長さが小さくなるほど、引け巣ができ難い。最大長さは例えば、10mm以下でも良いし、5mm以下でも良い。
【0076】
第二部分52の軸方向におけるどの位置においても、第二部分52の横断面の外周輪郭の内側の面積S0と、止まり穴4の横断面の面積S1との比S1/S0は例えば、0.02以上0.15以下である。比S1/S0が0.02以上であれば、第一コア片5に引け巣ができ難い。比S1/S0が0.15以下であれば、第一コア片5の磁気特性及び強度が低下し難い。比S1/S0は0.04以上0.12以下でも良いし、0.05以上0.1以下でも良い。
【0077】
≪その他≫
本例のリアクトル1は、コイル2と磁性コア3とを一体化する樹脂モールド部を備えていても良い。樹脂モールド部は、コイル2と磁性コア3の組物の全体を覆っていても良いし、組物の一部のみを覆っていても良い。樹脂モールド部を構成する樹脂は例えばPBT樹脂である。これらの樹脂にアルミナなどのセラミックスフィラーが含有されていても良い。
【0078】
≪まとめ≫
本例のリアクトル1は安定した磁気特性を備える。
本例のリアクトル1は、第一コア片5を含む磁性コア3を備える。第一コア片5は、引け巣をほとんど有さないため、安定した磁気特性を備える。従って、第一コア片5を備えるリアクトル1も、安定した磁気特性を備える。
【0079】
本例のリアクトル1は軽量である。
止まり穴4によって第一コア片5の実体部分が減る。従って、本例のリアクトル1は、止まり穴4を有さない従来のリアクトルに比べて軽量である。
【0080】
本例のリアクトル1は、止まり穴4を有さないリアクトルと同等程度の磁気特性を有する。
第一コア片5に設けられる止まり穴4は、第一コア片5における磁束が通り難い部分に設けられている。従って、磁性コア3に止まり穴4を設けたことによるリアクトル1の磁気特性の低下が抑制される。
【0081】
≪変形例1≫
図5は、第一コア片5を止まり穴4の位置を含むX-Y平面で切断した断面図である。図5に示されるように、第一コア片5の止まり穴4に棒状のコア材8が配置されていても良い。コア材8は磁性体である。コア材8は複合材料の成形体でも良いし、圧粉成形体でも良い。本例のコア材8は、所定の大きさにカットされたスプルーによって構成されている。
【0082】
止まり穴4の位置には磁束が通り難いものの、止まり穴4にコア材8が配置されていれば、コア材8は磁路として機能する。従って、コア材8によって第一コア片5の磁気特性が向上する。
【0083】
コア材8の外形は、止まり穴4の内形に完全に一致している必要はない。止まり穴4よりも小さくても良く、コア材8と止まり穴4の内面40との間に隙間があっても良い。例えば、コア材8の先端と、底面4bとが離れていても良い。隙間は接着剤などで埋められていても良い。
【0084】
本例のコア材8はスプルーによって構成されている。廃棄物であるスプルーがコア材8として利用されることで材料の無駄が低減される。
【0085】
≪変形例2≫
図1に示されるリアクトル1とは異なり、コイル2は二つの巻回部21を有していても良い。この場合、一方の巻回部21は第一サイドコア部33に配置され、他方の巻回部21は第二サイドコア部34に配置されても良い。この構成では、二つの巻回部21はそれぞれ独立した電源につながっている。この構成では、ミドルコア部30には巻回部21は配置されておらず、図2に示される第一端面3aと第二端面3bとが接している。
【0086】
<実施形態2>
実施形態2に係るリアクトル1を図6に基づいて説明する。図6には、リアクトル1に備わる磁性コア3のみが示されている。実施形態2のリアクトル1と実施形態1のリアクトル1とは、磁性コア3の分割状態が異なる。本例のリアクトル1における磁性コア3の分割状態以外の構成は、実施形態1のリアクトル1と同じである。この点は、後述する実施形態3,4においても同様である。
【0087】
第一コア片5は、第一エンドコア部31と、ミドルコア部30の一部とによって構成されている。Z方向から見た第一コア片5は概略T字形状である。第一コア片5は複合材料の成形体であって、止まり穴4を備える。
【0088】
第二コア片6は、第二エンドコア部32、ミドルコア部30の一部、第一サイドコア部33、及び第二サイドコア部34によって構成される。Z方向から見た第二コア片6は概略E字形状である。第二コア片6は圧粉成形体である。
【0089】
本例のリアクトル1によっても、実施形態1のリアクトル1と同様の効果が得られる。
【0090】
実施形態1に記載されるE字形状の第一コア片5と、実施形態2に記載されるT字形状の第一コア片5とで磁性コア3を構成することもできる。この場合、磁性コア3全体が複合材料によって構成される。
【0091】
<実施形態3>
実施形態3に係るリアクトル1を図7に基づいて説明する。本例の第一コア片5は、第一エンドコア部31と、ミドルコア部30の一部と、第二サイドコア部34とで構成される。Z方向から見た第一コア片5は概略F字形状である。第一コア片5は複合材料の成形体であって、止まり穴4を備える。
【0092】
第二コア片6は、第二エンドコア部32と、ミドルコア部30の一部と、第一サイドコア部33とで構成される。Z方向から見た第二コア片6は概略F字形状である。第二コア片6は圧粉成形体である。Z方向から見た第二コア片6の輪郭形状は、第一コア片5と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0093】
本例とは異なり、磁性コア3は、概略F字形状の二つの第一コア片5によって構成されていても良い。
【0094】
<実施形態4>
実施形態4に係るリアクトル1を図8に基づいて説明する。本例の第一コア片5は、第一エンドコア部31と、ミドルコア部30の一部と、第一サイドコア部33の一部と、第二サイドコア部34の一部とによって構成されている。Z方向から見た第一コア片5は概略E字形状である。第一コア片5は複合材料の成形体であって、止まり穴4を備える。
【0095】
第二コア片6は、第二エンドコア部32と、ミドルコア部30の一部と、第一サイドコア部33の一部と、第二サイドコア部34の一部とによって構成されている。Z方向から見た第二コア片6は概略E字形状である。第二コア片6は圧粉成形体である。Z方向から見た第二コア片6の輪郭形状は、第一コア片5と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0096】
本例とは異なり、磁性コア3は、概略E字形状の二つの第一コア片5によって構成されていても良い。
【0097】
<実施形態5>
≪コンバータ・電力変換装置≫
上記実施形態に係るリアクトル1は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度である。実施形態に係るリアクトル1は、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品、又はこのコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用される。
【0098】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、図9に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。図9では、車両1200の充電箇所はインレットであるが、プラグを備える形態でも良い。
【0099】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0100】
コンバータ1110は、図10に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態に係るリアクトル1を備える。
【0101】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態に係るリアクトル1などと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態に係るリアクトル1などを利用することもできる。
【0102】
安定した磁気特性を有する実施形態のリアクトル1を備えるコンバータ1110及び電力変換装置1100は、安定して動作する。
【符号の説明】
【0103】
1 リアクトル
2 コイル
21 巻回部、2a,2b 端部
211 第一の端面、212 第二の端面
3 磁性コア
3a 第一端面、3b 第二端面、3g 隙間
3A,3B 分割片
30 ミドルコア部、31 第一エンドコア部、32 第二エンドコア部
33 第一サイドコア部、34 第二サイドコア部
310 外方面
4 止まり穴
4b 底面、4h 開口部
40 内面
5 第一コア片
51 第一部分、52 第二部分、53 第三部分、54 第四部分
520 外面
6 第二コア片
8 コア材
9 複合材料
90 樹脂、91 軟磁性粉末
1100 電力変換装置
1110 コンバータ、1111 スイッチング素子、1112 駆動回路
1115 リアクトル、 1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ、1220 モータ、1230 サブバッテリ
1240 補機類、1250 車輪
1300 エンジン
H 高さ
L,T0,T1,T2,T3,T4 長さ
W 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10