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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179600
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/053 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B41J11/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098578
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】FCLコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 喬
【テーマコード(参考)】
2C058
【Fターム(参考)】
2C058AB04
2C058AC06
2C058AE10
2C058AF31
2C058DA02
2C058DA10
(57)【要約】
【課題】駆動源とプラテンローラとの間に配置されるギヤ群の静音性を向上できるプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルプリンタ1は、印刷媒体に印刷するサーマルヘッド10と対向配置され、印刷媒体を搬送するプラテンローラ20と、プラテンローラ20を駆動するモータ40と、モータ40の出力をプラテンローラ20に伝達するギヤ群60と、ギヤ群60を収容するギヤボックス50と、ギヤ群60のうちギヤボックス50の内壁に近い位置にあるギヤに対して、ギヤを内壁と反対側に押圧する押圧部としての押圧機構70と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に印刷する印刷ヘッドと対向配置され、前記印刷媒体を搬送するプラテンローラと、
前記プラテンローラを駆動する駆動源と、
前記駆動源の出力を前記プラテンローラに伝達するギヤ群と、
前記ギヤ群を収容する収容部と、
前記ギヤ群のうち前記収容部の内壁に近い位置にあるギヤに対して、前記ギヤを前記内壁と反対側に押圧する押圧部と、
を備えるプリンタ。
【請求項2】
前記押圧部は、押圧対象のギヤの回転中心の軸まわりに設置された弾性体である、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記押圧部は、前記ギヤの回転速度が所定速度以下のときに前記ギヤの軸方向に延伸して前記ギヤを押圧する押圧機構である、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記押圧機構は、前記ギヤの軸に回転可能に設置される第1回転体及び第2回転体を有し、
前記第1回転体は前記ギヤに連結されて前記ギヤと一体回転し、
前記第2回転体は、前記第1回転体の前記ギヤと反対側に連結され、
前記ギヤの回転速度が所定速度以下のときに前記第1回転体と前記第2回転体との前記軸方向の距離が増大して、前記ギヤを押圧する、
請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第1回転体は、複数の第1溝を有し、
前記第2回転体は、前記第1回転体との対向面に複数の第2溝を有し、
前記第2回転体は、対向する前記第1溝と前記第2溝とに両端が嵌合されて前記第1溝及び前記第2溝を摺動可能に設置される連結部材によって前記第1回転体に連結され、
前記ギヤの回転速度が所定速度以下のときに、前記第1回転体と前記第2回転体との前記軸方向の距離が増大する、
請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記第1回転体と前記第2回転体との前記軸方向の距離が増大したときに、前記距離を縮小する方向に付勢する付勢部を有する、
請求項4または5に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタなどのプリンタでは、サーマルヘッドなどの印刷ヘッドと、プラテンローラとの間に挟持される印刷媒体に印刷が行われる。プラテンローラは、モータなどの駆動源から伝達される駆動力によって、印刷媒体を搬送するために回転駆動される。また、プラテンローラと駆動源との間には、駆動力をプラテンローラに伝達するためのギヤ群が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-87371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなギヤ群では、複数のギヤが噛み合わされて駆動力を伝達する構成のため、ギヤ間のバックラッシュなどの影響によって大きな音が発生する場合がある。
【0005】
本開示は、駆動源とプラテンローラとの間に配置されるギヤ群の静音性を向上できるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係るプリンタは、印刷媒体に印刷する印刷ヘッドと対向配置され、前記印刷媒体を搬送するプラテンローラと、前記プラテンローラを駆動する駆動源と、前記駆動源の出力を前記プラテンローラに伝達するギヤ群と、前記ギヤ群を収容する収容部と、前記ギヤ群のうち前記収容部の内壁に近い位置にあるギヤに対して、前記ギヤを前記内壁と反対側に押圧する押圧部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、駆動源とプラテンローラとの間に配置されるギヤ群の静音性を向上できるプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るサーマルプリンタの斜視図
図2図1に示すサーマルプリンタの側面図
図3】ギヤボックスのカバーにギヤ群を収容した状態を示す図
図4】カバーの斜視図
図5】実施形態に係るギヤボックスの内部空間の構成を示す模式図
図6】押圧部としてコイルバネを適用したギヤボックスの模式図
図7】押圧機構の概略構成を示す図
図8図7中のA-A断面図
図9図7中のB-B断面図
図10】低速時の押圧機構の動作を示す図
図11】高速時の押圧機構の動作を示す図
図12】押圧機構の第1変形例を示す図
図13】押圧機構の第2変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
以下の説明では、本実施形態に係るプリンタの一例としてサーマルプリンタ1を例示する。サーマルプリンタ1は、印刷媒体として感熱紙を用いて、印刷ヘッドとしてのサーマルヘッド10によって感熱紙に文字や図形等を印字する。なお、本実施形態に係るプリンタの種類はサーマルプリンタには限られない。
【0011】
以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向は、サーマルヘッド10とプラテンローラ20との対向方向である。y方向は、プラテンローラ20の回転軸方向である。また、本実施形態では、説明の便宜上、z方向をサーマルプリンタ1の設置時の上下方向とし、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。しかしながら、本実施形態に係るサーマルプリンタ1の設置時の上下方向はz方向に限られない。
【0012】
<サーマルプリンタの構成>
図1図5を参照して、本実施形態に係るサーマルプリンタ1の構成について説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係るサーマルプリンタ1の斜視図である。図2は、図1に示すサーマルプリンタ1のy負方向側から視た側面図である。
【0014】
図1に示すように、サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド10と、プラテンローラ20と、フレーム30と、を備える。サーマルヘッド10及びプラテンローラ20はフレーム30に取り付けられている。サーマルヘッド10は、印刷面がプラテンローラ20側となるように、プラテンローラ20と対向配置され、図示しないヘッドバネなどによってプラテンローラ20側に付勢されている。記録媒体としての感熱紙などの記録紙は、サーマルヘッド10とプラテンローラ20との間に挟まれた状態でプラテンローラ20により搬送される。このとき、サーマルヘッド10と記録紙とは直接接触しており、サーマルヘッド10の印刷部分に対応した発熱体が発熱して、記録紙の加熱された部分が変色して印刷される。
【0015】
フレーム30は、y方向に対向配置される一対の側面フレーム31、32を有する。プラテンローラ20は、回転軸の両端部がそれぞれ側面フレーム31、32に軸支されており、一対の側面フレーム31、32の間に配置されている。図1の例では、y正方向側の一方の側面フレーム31が、プラテンローラ20のy正方向側の回転軸端部21を軸支している。同様に、y負方向側の他方の側面フレーム32が、プラテンローラ20のy負方向側の回転軸端部22を軸支している。
【0016】
サーマルプリンタ1は、モータ40と、ギヤボックス50とを有する。モータ40は、プラテンローラ20の駆動力を出力する駆動源である。ギヤボックス50は、ギヤ群60を内部空間57に収容する収容部の一例である(図5参照)。ギヤ群60は、モータ40とプラテンローラ20との間に配置され、モータ40から出力された駆動力をプラテンローラ20に伝達する。
【0017】
図1の例では、側面フレーム32がプラテンローラ20を軸支する部分よりも下方まで延在し、この延在部分のy正方向側からモータ40が側面フレーム32に設置される。また、モータ40の側面フレーム32への設置状態では、モータ40の回転軸41(図3参照)が側面フレーム32を貫通してy負方向側に進出している。
【0018】
図1図2に示すように、ギヤボックス50は、側面フレーム32のy負方向側に設置されている。ギヤボックス50は、カバー51を有し、カバー51にギヤ群60を内蔵した状態で、カバー51を側面フレーム32のy負方向側の主面にネジ締結などによって固定されることによって、ギヤボックス50が形成される。
【0019】
図3は、ギヤボックス50のカバー51にギヤ群60を収容した状態を示す図である。図4は、カバー51の斜視図である。図3は、図1に示すサーマルプリンタ1から、ギヤ群60を内蔵した状態のままでカバー51を側面フレーム32から取り外した状態のものを、側面フレーム32側から視た平面図である。図4は、図3からギヤ群60を除いた状態のカバー51のみを示す斜視図である。
【0020】
図3図4に示すように、カバー51は、側面フレーム32の主面と面接触する接触面52と、接触面52からy負方向側に凹んで形成される凹部53とを有する。図4に示すように、凹部53の底面53Aには、y正方向側に突出してy方向に延在する複数の軸54~56が形成されている。これらの軸54~56にギヤ群60の各ギヤが回動可能に設置され、軸54~56を中心に回転する。また、凹部53は、底面53Aの各ギヤに対応する部分の深さが変更されており、これによりギヤ群60の各ギヤのy方向の位置を規制できるよう構成されている。また、凹部53は、ギヤ群60の各ギヤの回転に干渉しないように、各ギヤが収容されたときに各ギヤの径より大きい形状で周壁53Bが形成されている。
【0021】
図3に示すように、ギヤ群60は、モータギヤ61、中間ギヤ62、ローラギヤ63を有する。モータギヤ61はモータ40の回転軸41に取り付けられており、ローラギヤ63はプラテンローラ20の回転軸端部22に取り付けられている。中間ギヤ62は、モータギヤ61とローラギヤ63との間で動力を伝達するためのギヤであり、本実施形態では第1ギヤ64、第2ギヤ65、第3ギヤ66の3つのギヤを有する。なお、中間ギヤ62の個数は3つ以外でもよい。
【0022】
図5は、実施形態に係るギヤボックス50の内部空間57の構成を示す模式図である。図5(A)は、ギヤ群60の各ギヤの配置例の模式図であり、概ね図3の配置に対応している。図5(B)は、(A)に対応するz方向視の内部空間57の部分断面図であり、カバー51と側面フレーム32のみを断面で示している。
【0023】
図3図5(A)などに示すように、第1ギヤ64、第2ギヤ65、第3ギヤ66は、それぞれカバー51の軸54、55、56が中心孔に挿通され、各軸54~56を中心に回動可能に設置される。また、本実施形態では、第1ギヤ64、第2ギヤ65、第3ギヤ66は二段歯車であり、第1ギヤ64と第2ギヤ65の小径歯車は大径歯車に対してy負方向側に配置され、図3に示すように第3ギヤの小径歯車は大径歯車に対してy正方向側に配置されている。また、本実施形態では、中間ギヤ62の各ギヤは、図5に示すように、第1ギヤ64、第2ギヤ65、第3ギヤ66の順番でy負方向側からy正方向側へ配列されている。モータギヤ61と第1ギヤ64の大径歯車、第1ギヤ64の小径歯車と第2ギヤ65の大径歯車、第2ギヤ65の小径歯車と第3ギヤ66の大径歯車、第3ギヤ66の小径歯車とローラギヤ63は、それぞれ互いに噛み合っている。
【0024】
図3などに示すように、カバー51の凹部にギヤ群60が収容された状態で、図1図2に示すようにカバー51が側面フレーム32に固定される。これにより、カバー51のギヤ群60を収容する凹部53の開口が、側面フレーム32によって封止される。この結果、図5(B)に示すように、カバー51の凹部53の底面53Aと、側面フレーム32のy負方向側の主面32Aと、さらに図3図4に示す凹部53の周壁53Bとによって、ギヤボックス50の内部空間57が形成される。ギヤ群60はギヤボックス50内部空間57に収容される。
【0025】
特に本実施形態では、図5に示すように、ギヤボックス50の内部空間57内に押圧機構70を備える。押圧機構70は、内部空間57の内壁のうちギヤ群60の軸が形成された内壁を基準壁とするとき、ギヤ群60のうち少なくとも基準壁に最も近い位置にあるギヤに対して、軸方向の基準壁と反対側に押圧する押圧部の一例である。本実施形態では、カバー51の凹部53の底面53Aを基準壁とする。このとき、第3ギヤ66が、ギヤ群60のうち基準壁に最も近い位置にあるギヤであるので、図5(B)に矢印P1で示すように、押圧機構70は、第3ギヤ66を底面53Aと反対側の側面フレーム32側に押圧する。この例の場合、押圧機構70は、図5(A)、(B)に示すように、内部空間57において、カバー51の底面53Aと、第3ギヤ66との間の空間に配置され、第3ギヤ66の軸56まわりに設置される。
【0026】
押圧機構70は、後述のように押圧対象のギヤの回転速度が所定速度以下のときにギヤ群60の軸方向に延伸してギヤを押圧することができる。
【0027】
本実施形態では、押圧機構70が第3ギヤ66のみを押圧する構成を例示するが、第1ギヤ64や第2ギヤ65を押圧する押圧機構70を別途設ける構成でもよい。
【0028】
本実施形態ではカバー51の底面53Aを基準壁とする構成を例示しているが、基準壁は内部空間57の他の壁面でもよく、例えば側面フレーム32の主面32Aを基準壁とする構成でもよい。この場合、第1ギヤ64が、ギヤ群60のうち基準壁に最も近い位置にあるギヤとなるので、押圧機構70は、少なくとも第1ギヤ64と側面フレーム32との間に配置され、第1ギヤ64の軸54まわりに設置されて、第1ギヤ64をカバー51側に押圧する。
【0029】
このように押圧部としての押圧機構70を設けることによって、ギヤ群60が軸方向に押圧されるので、ギヤ群60を構成する複数のギヤ間のバックラッシュの振動などの影響によって音が発生することを抑制できる。この結果、本実施形態のサーマルプリンタ1は、モータ40とプラテンローラ20との間に配置されるギヤ群60の静音性を向上できる。
【0030】
カバー51の底面53Aを第一基準壁として、ギヤ群60のうち第一基準壁に最も近い位置にある第3ギヤ66を側面フレーム32側に押圧するように第一の押圧機構70を配置し、かつ、側面フレーム32の主面32Aを第二基準壁として、ギヤ群60のうち第二基準壁に最も近い位置にある第1ギヤ64をカバー51側に押圧するように第二の押圧機構70を配置する構成でもよい。この構成の場合、2つの押圧機構によってギヤ群60が軸方向の両側から押圧されて、軸方向に沿って挟持される状態にできるので、ギヤ群60の静音性をさらに向上できる。
【0031】
<押圧機構の構成>
まず図6を参照して、本実施形態に係る「押圧部」としてコイルバネ70Eを適用する構成について説明する。図6は、押圧部としてコイルバネ70Eを適用したギヤボックス50の模式図である。図6の概略構成は図5(B)に対応する。
【0032】
図6では、図5に示した押圧機構70の代わりに、押圧対象のギヤの軸まわりにコイルバネ70Eが設置されている。コイルバネ70Eは、軸方向にギヤを押圧することができる。図6の例では、押圧部としてのコイルバネ70Eは、内部空間57において、基準壁としてのカバー51の底面53Aと、基準壁に最も近い位置にある第3ギヤ66との間の空間に配置され、第3ギヤ66の軸56まわりに設置されている。
【0033】
図6の例では、押圧部としてのコイルバネ70Eが第3ギヤ66のみを押圧する構成を例示するが、第1ギヤ64や第2ギヤ65を押圧するコイルバネ70Eを別途設ける構成でもよい。
【0034】
側面フレーム32の主面32Aを基準壁とする場合には、押圧部としてのコイルバネ70Eは、少なくとも第1ギヤ64と側面フレーム32との間に配置され、第1ギヤ64の軸54まわりに設置されて、第1ギヤ64をカバー51側に押圧する。
【0035】
コイルバネ70Eは軸方向にギヤを押圧することができれば、コイルバネ以外の弾性体に置き換えてもよい。
【0036】
図6の例において、サーマルプリンタ1は、印刷媒体に印刷するサーマルヘッド10と対向配置され、印刷媒体を搬送するプラテンローラ20と、プラテンローラ20を駆動するモータ40と、モータ40の出力をプラテンローラ20に伝達するギヤ群60と、ギヤ群60を収容するギヤボックス50と、ギヤ群60のうちギヤボックス50の内壁に近い位置にあるギヤに対して、ギヤを内壁と反対側に押圧する押圧部としてのコイルバネ70Eと、を備える。
【0037】
このように押圧部としてコイルバネ70Eなどの弾性体を設けることによって、ギヤ群60が軸方向に押圧されるので、ギヤ群60を構成する複数のギヤ間のバックラッシュなどの影響によって音が発生することを抑制できる。この結果、図6の例のように押圧部としてコイルバネ70Eなどの弾性体を適用する構成では、モータ40とプラテンローラ20との間に配置されるギヤ群60の静音性を向上できる。
【0038】
ここで、ギヤ群60の各ギヤ間のバックラッシュは主にギヤ群60が低速で回転するときに発生しやすい傾向があるので、ギヤ群60からの騒音も低速時に発生しやすい傾向がある。一方、ギヤ群60が高速で回転するときには、ギヤのバックラッシュ動作が低速時と比較して少なくなるため、ギヤ群60からの騒音は発生しにくい傾向がある。また、高速回転時には各ギヤ間で伝達するトルクの要求量が低速時より大きくなるため、押圧部により軸方向にギヤを押圧することを回避して、ギヤを回転させるための負荷を軽減できるのが好ましい。
【0039】
そこで本実施形態に係る押圧機構70は、低速回転時と高速回転時とで押圧を変化させる構成をとる。押圧機構70は、押圧対象のギヤの回転速度が所定速度以下のときにギヤ群60の軸方向に延伸してギヤを押圧する。一方、回転速度が所定速度を超えるときには押圧機構70は軸方向に延伸せず、押圧対象のギヤを押圧しない。
【0040】
図7図11を参照して、本実施形態に係る押圧機構70の構成について説明する。
【0041】
図7は、押圧機構70の概略構成を示す図である。図8は、図7中のA-A断面図である。図9は、図7中のB-B断面図である。図7(A)は、押圧機構70をy負方向側、すなわち図5(B)のカバー51側から視た平面図である。図7(B)は、押圧機構70をx負方向側、すなわち図5(B)の下側から視た側面図である。図7(C)は、押圧機構70をy正方向側、すなわち図5(B)の第3ギヤ66側から視た平面図である。
【0042】
図7(B)に示すように、押圧機構70は、第1回転体71と第2回転体72とを有する。第1回転体71は、第2回転体72に対してy正方向側、つまり第3ギヤ66と対向するよう配置される。第2回転体72は、第1回転体71に対してy負方向側、つまりカバー51の底面53Aと対向するよう配置される。図7(A)は、押圧機構70のうち第2回転体72の底面53Aとの対向面72Aを図示しており、図7(C)は、押圧機構70のうち第1回転体71の第3ギヤ66との対向面71Aを図示している。
【0043】
第1回転体71及び第2回転体72は、押圧対象のギヤの回転中心の軸に回転可能に設置される。図7(A)、(C)に示すように、第1回転体71及び第2回転体72は共に円板状の部材であり、それぞれ円形の中心位置に軸方向に沿った貫通孔73、74がそれぞれ設けられている。本実施形態では、押圧対象のギヤである第3ギヤ66の回転中心の軸56が貫通孔73、74に挿通され、これにより第1回転体71及び第2回転体72が共に軸56まわりに回転可能に設置されている。したがって、図5(A)に示すように、押圧機構70は第3ギヤ66と同心円状に配置されることになる。
【0044】
第1回転体71は、第3ギヤ66に連結されて第3ギヤ66と一体回転する。具体的には、第1回転体71の対向面71Aに、y正方向側に突出するように複数の突起75が設けられる。この突起75は、対向面71A側の基端部が円柱状であり、第3ギヤ66側の先端部が基端部より大径の球状に形成されている。
【0045】
一方、対向面71Aと対向する第3ギヤ66のy負方向側の面には、複数の突起75と対応する位置に図示しない篏合孔が設けられる。これらの篏合孔は、開口の径が突起75の先端部の径より小さく、かつ、基端部の径より大きく形成されている。また、篏合孔は、開口より奥側の部分では内径が突起75の先端部の径より大きく形成されている。このような構造の篏合孔の開口に突起75の先端部を押し当てて、先端部を篏合孔の内部に嵌入させることにより、先端部が嵌合孔から抜け出ないように突起75を篏合孔に篏合させることができる。このように第1回転体71の複数の突起75を第3ギヤ66の篏合孔に篏合させることによって、第1回転体71は第3ギヤ66に連結されて、軸56まわりに第3ギヤ66と一体回転可能となる。
【0046】
本実施形態では、図7(C)に示すように円形状の対向面71Aの周方向に沿って略等間隔で3個の突起75を備える構成が例示されているが、少なくとも第1回転体71を第3ギヤ66と一体回転可能に連結できればよく、突起75の数は3個以外でもよい。また、突起75は第1回転体71と別体でもよい。例えば、突起75は、基端部を挟んで先端部と反対側にも先端部と同様の球状の部分を有する亜鈴状の部材として形成してもよい。この場合、第1回転体71の対向面71Aにも、第3ギヤ66との連結部分と同様の篏合孔が設けられる。そして、この篏合孔に突起75の球状部分を篏合することにより、突起75を対向面71A上の所定位置に取り付け、図7(B)、(C)の状態にすることができる。
【0047】
第2回転体72は、第1回転体71に第3ギヤ66と反対側に連結される。具体的には、第1回転体71の第2回転体72との対向面71B、すなわち第1回転体71の対向面71Aと軸方向反対側の面と、第2回転体72の第1回転体71との対向面72B、すなわち第2回転体72の対向面72Aと軸方向反対側の面とが、連結部材76によって連結されている。連結部材76は、図8に示すように亜鈴状に形成され、軸方向の中央部76Aが円柱状に形成され、軸方向のy正方向側の端部76Bと、y負方向側の端部76Cとが中央部76Aの円柱形状の径より大きい球状に形成されている。
【0048】
第1回転体71の対向面71Bには第1溝77が設けられる。第1溝77は、対向面71B上に複数設けられ、それぞれが軸56の径方向に沿って延在し、軸56の周方向に沿って並んで略等間隔に配置される(図10など参照)。また、図8に示すように、第1溝77の延在方向に直交する断面形状は、対向面71B上の開口の軸56まわりの周方向の幅が連結部材76の端部76Bの径より小さく、かつ、中央部76Aの径より大きく形成されている。また、第1溝77は、開口より奥側の部分では周方向の幅が端部76Bの径より大きく形成されている。このような構造の第1溝77の開口に端部76Bを押し当てて、端部76Bを第1溝77の内部に嵌入させることにより、端部76Bが第1溝77から抜け出ないように連結部材76を第1溝77に篏合させることができる。
【0049】
第2回転体72の対向面72Bには第2溝78が設けられる。第2溝78は、対向面72B上に複数設けられ、それぞれが軸56の径方向に沿って延在し、軸56の周方向に沿って並んで略等間隔に配置される(図10など参照)。また、図8に示すように、第2溝78の延在方向に直交する断面形状は、対向面72B上の開口の軸56まわりの周方向の幅が連結部材76の端部76Cの径より小さく、かつ、中央部76Aの径より大きく形成されている。また、第2溝78は、開口より奥側の部分では周方向の幅が端部76Cの径より大きく形成されている。このような構造の第2溝78の開口に端部76Cを押し当てて、端部76Cを第2溝78の内部に嵌入させることにより、端部76Cが第2溝78から抜け出ないように連結部材76を第2溝78に篏合させることができる。
【0050】
複数の第2溝78のそれぞれは、軸方向から視たときに複数の第1溝77のそれぞれと重なる位置に設けられる。したがって、対向配置される一対の第1溝77と第2溝78において、単一の連結部材76の一方の端部76Bを第1溝77に篏合させ、他方の端部76Cを第2溝78に篏合させ、この篏合を複数の第1溝77と第2溝78との間で行うことによって、複数の連結部材76を介して第1回転体71と第2回転体72とが連結される。これにより、第2回転体72も、第1回転体71を介して第3ギヤ66と間接的に連結されることになるので、第1回転体71と第2回転体72とを含む押圧機構70の全体が第3ギヤ66と連結されて第3ギヤ66と一体回転可能となる。
【0051】
図9に示すように、第1回転体71の貫通孔73のうち対向面71B側の部分と、第2回転体72の貫通孔74のうち対向面72B側の部分には、コイルバネ79(付勢部)が設置されている。コイルバネ79は、軸方向に伸縮可能であり、貫通孔73の内壁に設けられる係止突起71Cにより第1回転体71に連結され、貫通孔74の内壁に設けられる係止突起72Cにより第2回転体72に連結されている。これにより、コイルバネ79は、第1回転体71と第2回転体72との軸方向の距離が増大したときに(図10参照)、係止突起71C、72Cによって伸長されて、第1回転体71と第2回転体72との軸方向の距離を縮小する方向に付勢することができる。
【0052】
コイルバネ79は、第1回転体71と第2回転体72との軸方向の距離が増大したときに、この距離を縮小する方向に付勢する付勢部の一例であり、このような付勢部の機能を発揮できればコイルバネ79以外の別の要素に置き換えてもよい。
【0053】
図10図11を参照して、本実施形態に係る押圧機構70の動作について説明する。押圧機構70は、押圧対象のギヤの回転速度が所定速度以下のときに軸方向に延伸して押圧対象のギヤを押圧する機能を有する。本実施形態では、所定速度以下の状態を「低速時」と表現し、所定速度を超える状態を「高速時」と表現する。
【0054】
図10は、低速時の押圧機構70の動作を示す図である。図10(A)は、押圧機構70のy正方向側から視た平面図であり、図面手前側の第1回転体71の図示を省略して第2回転体72の対向面72Bを図示している。図10(B)は、(A)中のC-C断面図であり、この図では第1回転体71と第2回転体72の両方の断面を図示している。
【0055】
図10(A)に示すように、本実施形態では、第2溝78は、それぞれ対向面72Bの円形状の径方向に沿って延在するよう形成される。また、第2溝78の径方向内側の端部は、貫通孔74より径方向外側の位置までに留められており、径方向外側の端部は、第2回転体72の外縁端より径方向内側の位置までに留められている。さらに、本実施形態では、対向面72Bの円形状の周方向に沿って略等間隔に、約45度ごとに合計8個の第2溝78が設けられている。なお、図10(A)では図示を省略しているが、第1回転体71の第1溝77の形状や配置も、第2溝78と同様である。
【0056】
そして、軸方向に重なる位置に配置される8組の第1溝77及び第2溝78のそれぞれの間に、合計8個の連結部材76が1個ずつ嵌合されている。個々の連結部材76は、篏合される第1溝77及び第2溝78の組の延在方向に沿って、径方向に摺動可能に設置されている。
【0057】
本実施形態では、z方向、すなわち図10(A)、(B)の図面上下方向が鉛直方向としている。このため、図10(A)に矢印Gで示すように各連結部材76は図面下方向に重力を受ける。この重力Gの影響により、図10(A)、(B)に示すように各連結部材76が嵌合する一対の第1溝77及び第2溝78が軸56より上方にあるときには連結部材76は第1溝77及び第2溝78に沿って下方に移動して、第1回転体71及び第2回転体72の中心側に移動する。一方、第1溝77及び第2溝78が軸56より下方にあるときには連結部材76は第1溝77及び第2溝78に沿って下方に移動して、第1回転体71及び第2回転体72の遠心側に移動する。
【0058】
図10(B)に示すように、第1回転体71の対向面71Bは、中心が最もy正方向側に窪むようにすり鉢状に凹んで形成されている。一方、第2回転体72の対向面72Bは、中心が最もy正方向側に突出するように円錐状に膨らんで形成されている。そして、第1溝77は、当該溝の底面77Aのy方向位置が同一となるように、すなわち対向面71Aと平行となるように形成されている。このため、第1溝77は、径方向外側に進むほどy方向の深さが大きくなり、径方向内側に進むほど深さが小さくなるように形成されている。一方、第2溝78は、当該溝の底面78Aが対向面72Bと平行となるように形成されている。このため、第2溝78は、径方向に沿って深さが一定となっている。
【0059】
このような第1溝77と第2溝78の形状によって、本実施形態では、底面77Aと底面78Aとの距離は径方向の中心側に進むほど小さくなるよう形成されている。
【0060】
連結部材76は、押圧機構70が連結される第3ギヤ66の回転速度が所定速度以下のときに、回転による遠心力より重力の影響が大きくなって、軸56より上方にあるものが第1溝77及び第2溝78に沿って軸56の径方向中心側に移動するよう構成されている。一方、軸56より下方にある連結部材76は遠心力に重力が加わって、軸56と鉛直方向の同位置にある連結部材76は遠心力によって、第1溝77及び第2溝78に沿って軸56の径方向外側に移動する。このような連結部材6の挙動を促進できる構成としては、例えば押圧機構70の第1回転体71や第2回転体72を比較的比重の小さい樹脂などの材料で作成して連結部材76を比較的比重の大きい金属などの材料で作成することや、第1溝77と連結部材76との間、及び第2溝78と連結部材76との間にオイルなどの潤滑剤を塗布して、篏合部分の摩擦を低くして連結部材76を滑りやすくすること、などが挙げられる。
【0061】
以上の構成によって、押圧機構70の押圧対象のギヤである第3ギヤ66の回転速度が所定速度以下のときに、図10(A)、(B)に示すように、重力Gによって軸56より上方の連結部材76が第1溝77及び第2溝78の中心側に移動する。これにより、端部76Bが底面77Aを押圧して、図10(B)に矢印P2で示すように、第1回転体71がy正方向側に力P2を受ける。一方、端部76Cが底面78Aを押圧して、図10(B)に矢印P3で示すように、第2回転体72がy負方向側に力P3を受ける。この結果、連結部材76により第1回転体71及び第2回転体72がそれぞれ軸方向の反対側に押圧されて、第1回転体71と第2回転体72との軸方向の距離H1が増大する。
【0062】
距離H1が増大すると、押圧機構70が軸方向に延伸する。図5(B)に示したように、押圧機構70は、第3ギヤ66と、カバー51の凹部53の底面53Aとの間の空間に配置されている。また、押圧機構70の第1回転体71は押圧対象のギヤである第3ギヤ66のy負方向側の面に突起75を介して連結されている。このため、押圧機構70は、軸方向に沿って第3ギヤ66と反対側のカバー51の底面53A側に延伸することになる。この結果、第2回転体72の対向面72Aがカバー51の底面53Aに突き当たり、底面53Aから受ける反力によって押圧機構70から第3ギヤ66にy正方向側に圧力が付与される。
【0063】
押圧機構70から第3ギヤ66が圧力を受けることにより、ギヤ群60の各ギヤも第3ギヤ66を介して軸方向に圧力を受けることになるので、ギヤ間のバックラッシュを低減できる。この結果、ギヤ間のバックラッシュによるギヤの振動などの影響によって音が発生することを抑制できるので、駆動源であるモータ40とプラテンローラ20との間に配置されるギヤ群60の静音性を向上できる。
【0064】
図11は、高速時の押圧機構70の動作を示す図である。図11の各図(A)、(B)の概略は図10と同様である。
【0065】
図11(A)、(B)に示すように、押圧機構70が連結される第3ギヤ66の回転速度が所定速度より大きい場合には、軸56より上方にある連結部材76は回転による遠心力の影響のほうが重力Gの影響より大きくなるので、第1溝77及び第2溝78に沿って径方向中心側には移動せず、遠心力によって軸56の径方向外側の位置に維持される。連結部材76が第1溝77及び第2溝78の径方向外側にある場合には、図11(B)に示すように、連結部材76の長手方向の寸法に対して、底面77Aと底面78Aとの距離の方が大きい。このため、端部76Bが底面77Aと接触しないので、第1回転体71は端部76Bによる押圧力P2を受けなくなる。同様に、端部76Cが底面78Aと接触しないので、第2回転体72も端部76Cによる押圧力P3を受けなくなる。
【0066】
これにより、図11(B)に矢印P4で示すように、第1回転体71がy負方向側にコイルバネ79の付勢力P4を受ける。一方、図11(B)に矢印P5で示すように、第2回転体72がy正方向側にコイルバネ79の付勢力P5を受ける。この結果、コイルバネ79が自然長まで軸方向に沿って縮小して、コイルバネ79の付勢力P4、P5によって第1回転体71と第2回転体72との軸方向の距離H2が縮小する。
【0067】
距離H2が縮小すると、押圧機構70が軸方向に縮小する。これにより、押圧対象のギヤの回転速度が所定速度より大きい場合には、押圧機構70は第3ギヤ66に圧力を付与しなくできるので、ギヤ群60へのギヤ回転負荷を軽減して、高速時に必要なトルクを伝達しやすくできる。
【0068】
ギヤ群60の各ギヤ間のバックラッシュは主にギヤ群60が低速で回転するときに発生しやすい傾向があるので、ギヤ群60からの騒音も低速時に発生しやすい傾向がある。一方、ギヤ群60が高速で回転するときには、ギヤのバックラッシュ動作が低速時と比較して少なくなるため、ギヤ群60からの騒音は発生しにくい傾向がある。また、高速回転時には各ギヤ間で伝達するトルクの要求量が低速時より大きくなるため、押圧機構70により軸方向にギヤを押圧することを回避して、ギヤを回転させるための負荷を軽減できるのが好ましい。
【0069】
そこで本実施形態のサーマルプリンタ1では、押圧機構70が押圧対象のギヤの回転速度が所定速度以下のときに軸方向に延伸して押圧対象のギヤを押圧する。一方、回転速度が所定速度を超えるときには押圧機構70は軸方向に延伸せず、押圧対象のギヤを押圧しない。これにより、押圧機構70がギヤ群60を軸方向から押圧する動作を低速時に限定できるので、ギヤ群60の静音性向上と、高速時の回転負荷軽減とを両立できる。押圧機構70の押圧動作の有無を切り替える「所定速度」とは、例えば印字速度が50mm/秒となるギヤの回転速度である。
【0070】
図7図11を参照して説明した押圧機構70の具体的な構造により、低速時に押圧機構70を軸方向に延伸させる動作と、高速時に押圧機構70がギヤを押圧しない状態を維持させる動作と、をより確実に切り替えて実施させることが可能となる。これにより、ギヤ群60の静音性向上と、高速時の回転負荷軽減の効果をより一層発揮させることができる。
【0071】
このような低速時に限定してギヤ群60の静音性を向上できるプリンタは、例えば心電図用のプリンタなど、使用環境が静かで比較的低速で印刷が行われるものに特に有利である。
【0072】
<押圧機構の変形例>
図12図13を参照して、押圧機構70の変形例について説明する。
【0073】
図12は、押圧機構の第1変形例70A、70B、70Cを示す図である。押圧機構は、押圧対象のギヤの回転速度が所定速度以下のときに第1回転体71と第2回転体72との軸方向の距離が増大して、ギヤを押圧することができればよく、その構成は図10図11に示した構成に限られない。
【0074】
例えば図12(A)に示す押圧機構70Aのように、第1溝77の深さを均一とし、第2溝78の深さを径方向外側に進むほど大きくし、径方向内側に進むほど小さくする構成でもよい。
【0075】
または例えば図12(B)に示す押圧機構70Bのように、第1回転体71の対向面71Bを円錐状とし、第2回転体72の対向面72Bをすり鉢状として、第1溝77の深さを均一とし、第2溝78の深さを径方向外側に進むほど大きくし、径方向内側に進むほど小さくする構成でもよい。
【0076】
または例えば図12(C)に示す押圧機構70Cのように、第1回転体71の対向面71Bと、第2回転体72の対向面72Bとをz軸と略平行にして、第1溝77の深さを均一とし、第2溝78の深さを径方向外側に進むほど大きくし、径方向内側に進むほど小さくする構成でもよい。また、図12(C)の構成において、第2溝78の深さを均一とし、第1溝77の深さを径方向外側に進むほど大きくし、径方向内側に進むほど小さくする構成でもよい。
【0077】
図13は、押圧機構の第2変形例70Dを示す図である。上記実施形態の押圧機構70では、第1回転体71と第2回転体72を連結する要素として亜鈴状の連結部材76を用いる構成を例示したが、連結部材76と同様の作用効果を奏することができれば他の形状の連結部材に置き換えてもよい。
【0078】
例えば図13に示す連結部材176のように、軸方向の中央部176Aが円柱状に形成され、軸方向のy正方向側の端部176Bと、y負方向側の端部176Cとが中央部176Aの円柱形状の径より大きく、かつ中央部176Aと同心円の円板形状に形成される構成でもよい。
【0079】
図13(A)は、押圧機構70Dのy正方向側から視た平面図であり、図面手前側の第1回転体71の図示を省略して第2回転体72の対向面72Bを図示している。図13(A)は、図10(A)に対応する。図13(B)は、図13(A)中の点線円で囲まれた領域Iの側面図である。すなわち、図13(B)は、連結部材176と第1溝177と第2溝178との複数組のうち、第1溝177と第2溝178とがz方向に延在し、かつ最もz負方向に配置される一組をz負方向側から視た側面図である。図13(C)は、図13(B)中のJ-J断面図である。すなわち、図13(C)は、連結部材176の中央部176Aのy方向の略中間位置から、第2回転体72側を視たときの、第2溝178の径方向の外縁端部の近傍を拡大視した図である。
【0080】
図13(A)に示すように、第2変形例では、第2溝178は、それぞれ対向面72Bの円形状の径方向に沿って延在するよう形成される。また、第2溝178の径方向内側の端部は、貫通孔74より径方向外側の位置までに留められている。一方、第2溝178の径方向外側の端部は、第2回転体72の外縁端に到達し、第2回転体72の側面に開口するよう形成されている。第2変形例でも、上記実施形態と同様に、対向面72Bの円形状の周方向に沿って略等間隔に、約45度ごとに合計8個の第2溝178が設けられている。なお、図13(A)では図示を省略しているが、図13(B)に示すように、第1回転体71の対向面71Aにも第1溝177が設けられる。第1溝177の数、形状、配置も、第2溝178と同様である。
【0081】
図13(A)、(B)に示すように、軸方向に重なる位置に配置される8組の第1溝177及び第2溝178のそれぞれの間に、合計8個の連結部材176が1個ずつ挿入されている。個々の連結部材176は、挿入される第1溝177及び第2溝178の組の延在方向に沿って、径方向に摺動可能に設置されている。
【0082】
第2変形例でも、上記実施形態と同様に、z方向、すなわち図13(A)の図面上下方向が鉛直方向としている。このため、各連結部材176は図面下方向に重力Gを受ける。この重力Gの影響により、図13(A)に示すように各連結部材176が嵌合する一対の第1溝177及び第2溝178が軸56より上方にあるときには連結部材176は第1溝177及び第2溝178に沿って下方に移動して、第1回転体71及び第2回転体72の中心側に移動する。一方、第1溝177及び第2溝178が軸56より下方にあるときには連結部材176は第1溝177及び第2溝178に沿って下方に移動して、第1回転体71及び第2回転体72の遠心側に移動する。
【0083】
図13(B)に示すように、第1溝177及び第2溝178の延在方向から視た形状は、それぞれ連結部材176の円板状の端部176B、176Cが摺動可能となるように、x方向の寸法が各端部176B、176Cの径より大きく、y方向の深さが各端部176B、176Cのy方向の厚さより大きい略長方形状に形成されている。
【0084】
領域Iで示す第1溝177を参照して説明すると、対向面71B上の開口部は、溝のx負方向側の内側面からx正方向側に延在する第1壁部177Bと、溝のx正方向側の内側面からx負方向側に延在する第2壁部177Cと、によって、x方向の開口幅が第1溝177の幅より縮小されている。第1壁部177Bと第2壁部177Cは、第1溝177の内部側の内壁面が底面177Aと対向するよう形成されている。第1壁部177Bと第2壁部177Cによる第1溝177の開口幅は後述する突出部177D,177Eの領域を除き、中央部176Aが摺動可能となるように、中央部176Aの径より大きく形成されており、端部176Bが第1溝177から抜け出ないように、端部176Bの径より小さく形成されている。
【0085】
同様に、領域Iで示す第2溝178を参照して説明すると、対向面72B上の開口部は、溝のx負方向側の内側面からx正方向側に延在する第1壁部178Bと、溝のx正方向側の内側面からx負方向側に延在する第2壁部178Cと、によって、x方向の開口幅が第2溝178の幅より縮小されている。第1壁部178Bと第2壁部178Cは、第2溝178の内部側の内壁面が底面178Aと対向するよう形成されている。第1壁部178Bと第2壁部178Cによる第2溝178の開口幅は、後述する突出部178D,178Eの領域を除き、中央部176Aが摺動可能となるように、中央部176Aの径より大きく形成されており、端部176Cが第2溝178から抜け出ないように、端部176Cの径より小さく形成されている。
【0086】
図13(B)、(C)に示すように、第1壁部178Bと第2壁部178Cのうち第2回転体72の外縁端の部分には、それぞれ互いの対向方向に突出するように突出部178D、178Eが形成されている。突出部178D、178Eは、図13(C)に示すように、第2回転体72の径方向の内側の部分が最も互いに接近し、径方向の外側に進むにつれて離れるように、傾斜状に形成されている。つまり、第2溝178の径方向外側の開口は、突出部178D、178Eによって第2回転体72の側面が最も広い末広がり状に形成されている。このような構造の第2溝178の径方向外側の開口に中央部176Aを押し当てることによって、突出部178D、178Eがそれぞれ離間する方向に押し広げられて中央部176A及び端部176Cを第2溝178の内部に嵌入させることができる。
【0087】
突出部178D、178Eの径方向内側の端部には、それぞれ第1壁部178B及び第2壁部178Cから突出し、径方向内側を向く係止面178F、178Gが形成される。突出部178D、178Eのうち係止面178F、178Gがある部分の開口幅は、中央部176Aの径より小さく形成されている。これにより、突出部178D、178Eから第2溝178に嵌入された中央部176Aは、第2溝178に沿って径方向外側へ摺動するときに係止面178F、178Gに突き当たって径方向外側へのさらなる移動が規制されるので、連結部材176の第2溝178からの径方向外側への抜け出しを防止できる。
【0088】
図13(B)に示すように、第1溝177の第1壁部177Bと第2壁部177Cのうち第1回転体71の外縁端の部分にも、それぞれ互いの対向方向に突出するように突出部177D、177Eが形成されている。図13では図示を省略しているが、突出部177D、177Eの形状は、図13(C)に示した第2溝178の突出部178D、178Eと同様であり、径方向内側の端部に係止面178F、178Gと同様の係止面を有する。したがって、第1溝177の径方向外側の開口に中央部176Aを押し当てることによって、突出部177D、177Eがそれぞれ離間する方向に押し広げられて、中央部176A及び端部176Bを第1溝177の内部に嵌入させることができる。また、突出部177D、177Eから第1溝177に嵌入された中央部176Aは、第1溝177に沿って径方向外側へ摺動するときに突出部177D、177Eの係止面に突き当たって径方向外側へのさらなる移動が規制されるので、連結部材176の第1溝177からの径方向外側への抜け出しを防止できる。
【0089】
上記実施形態では、実施形態に係る押圧部の一例として、押圧対象のギヤの回転速度が所定速度以下のときにギヤ群60の軸方向に延伸してギヤを押圧する押圧機構70を例示した。しかしながら、実施形態に係る押圧部は、ギヤ群60のうち少なくとも基準壁に最も近い位置にあるギヤに対して、軸方向の基準壁と反対側に押圧する機能を発揮できればよく、上述の押圧機構70に限られない。このため、上記実施形態の押圧機構70を、押圧部としての機能を奏することができる別の要素に置き換えてもよい。
【0090】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 サーマルプリンタ(プリンタ)、10 サーマルヘッド(印刷ヘッド)、20 プラテンローラ、 30 フレーム、40 モータ(駆動源)、50 ギヤボックス(収容部)、57 内部空間、60 ギヤ群、70,70A、70B、70C、70D 押圧機構(押圧部)、70E コイルバネ(弾性体、押圧部)、71 第1回転体、72 第2回転体、76 連結部材、77 第1溝、78 第2溝、79 コイルバネ(付勢部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13