(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179601
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】複合材の接着方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20241219BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20241219BHJP
B29C 70/68 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
B29C65/48
B32B5/28 A
B29C70/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098580
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宙世
(72)【発明者】
【氏名】平田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】金升 将征
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DD01B
4F100DG01A
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4F100EJ08
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4F100JB13A
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4F205AA36
4F205AD16
4F205AG03
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4F205HT26
4F211AD16
4F211AF01
4F211AG01
4F211AG03
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR13
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TN56
4F211TN72
4F211TQ08
(57)【要約】
【課題】ボイドを好適に除去することができる複合材の接着方法を提供する。
【解決手段】強化繊維に熱硬化性樹脂を含侵させた未硬化の複合材シートを積層して成る被接着体に対して、接着体を接着する複合材の接着方法において、前記被接着体と前記接着体との接着部分に、脱気経路を確保するステップと、前記被接着体を熱硬化させて、前記接着体と接着させるステップと、を実行する。前記被接着体は、前記接着体に接着される表層側の部位となる表層部と、前記表層部の裏側の部位となる積層部と、を有し、前記複合材シートの積層時において圧力を付与しており、前記脱気経路を確保するステップでは、前記積層部における前記複合材シートの積層時に付与する圧力に対して、前記表層部の積層時に付与する圧力の50%以下とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維に熱硬化性樹脂を含侵させた未硬化の複合材シートを積層して成る被接着体に対して、接着体を接着する複合材の接着方法において、
前記被接着体と前記接着体との接着部分に、脱気経路を確保するステップと、
前記被接着体を熱硬化させて、前記接着体と接着させるステップと、を実行する複合材の接着方法。
【請求項2】
前記被接着体は、前記接着体に接着される表層側の部位となる表層部と、前記表層部の裏側の部位となる積層部と、を有し、前記複合材シートの積層時において圧力を付与しており、
前記脱気経路を確保するステップでは、前記積層部における前記複合材シートの積層時に付与する圧力に対して、前記表層部の積層時に付与する圧力を50%以下とする請求項1に記載の複合材の接着方法。
【請求項3】
前記脱気経路を確保するステップでは、
前記積層部における前記複合材シートの積層時において、真空引きすることで、前記積層部に圧力を付与し、
前記表層部における前記複合材シートの積層時において、真空よりも高い負圧で引くことで、前記表層部に前記積層部よりも低い圧力を付与する請求項2に記載の複合材の接着方法。
【請求項4】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記接着体が接着される前記表層部の接着領域における圧力を低下させる請求項2に記載の複合材の接着方法。
【請求項5】
前記被接着体は、前記接着体に接着される表層側の部位となる表層部と、前記表層部の裏側の部位となる積層部と、を有し、
前記脱気経路を確保するステップでは、前記積層部における前記複合材シート同士の密着性に比して、前記表層部における前記複合材シート同士の密着性を低下させる請求項1に記載の複合材の接着方法。
【請求項6】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記複合材シートに含まれる前記熱硬化性樹脂の流動性を高める処理を実行して、前記複合材シート同士の層間に隙間を付与する請求項5に記載の複合材の接着方法。
【請求項7】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記複合材シート同士の層間に圧縮空気を送って、前記複合材シート同士の層間に隙間を付与する請求項5に記載の複合材の接着方法。
【請求項8】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記被接着体の接着面における密着性、前記接着体の接着面における密着性、及び前記被接着体と前記接着体との間に設けられるフィルム接着剤の密着性の少なくとも一つを低下させる処理を実行する請求項1に記載の複合材の接着方法。
【請求項9】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記接着体が接着される前記被接着体の最表層の前記複合材シートとして、前記強化繊維が露出する前記複合材シートを用いる請求項1に記載の複合材の接着方法。
【請求項10】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記被接着体の接着面に脱気経路を凹凸形成する請求項1に記載の複合材の接着方法。
【請求項11】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記脱気経路となる貫通孔を前記接着体に形成する請求項1に記載の複合材の接着方法。
【請求項12】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記接着体側の接着面に脱気経路を凹凸形成する請求項1に記載の複合材の接着方法。
【請求項13】
前記脱気経路を確保するステップでは、前記被接着体と前記接着体との間に設けられるフィルム接着剤に脱気経路を凹凸形成する請求項1に記載の複合材の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材の接着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複合材の接着方法として、積層したプリプレグシートをフィルムでコーティングし、プリプレグシートを加熱し、フィルム内の空間を負圧にして、複合材を成形する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す複合材の製造方法では、プリプレグの層間に発生するボイドを十分に除去することが困難であった。
【0005】
そこで、本開示は、ボイドを好適に除去することができる複合材の接着方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の複合材の接着方法は、強化繊維に熱硬化性樹脂を含侵させた未硬化の複合材シートを積層して成る被接着体に対して、接着体を接着する複合材の接着方法において、前記被接着体と前記接着体との接着部分に、脱気経路を確保するステップと、前記被接着体を熱硬化させて、前記接着体と接着させるステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ボイドを好適に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。
【
図2】
図2は、第二実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。
【
図3】
図3は、第三実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。
【
図4】
図4は、第四実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。
【
図5】
図5は、第五実施形態に係る複合材の接着方法で用いられるフィルム接着剤の図である。
【
図6】
図6は、第五実施形態に係る複合材の接着方法で用いられるフィルム接着剤の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0010】
[第一実施形態]
第一実施形態に係る複合材の接着方法は、プリプレグ(複合材シート)4を積層して成る被接着体5に対して、接着体6を接着する接着方法となっている。この接着方法では、フィルム接着剤7を介して被接着体5上に接着体6を配置し、これらにバッグフィルム8を被覆して気密に封止し、バッグフィルム8内を真空引きしつつ加熱することで、被接着体5と接着体6とを接着している。
図1を参照して、複合材の接着方法について説明する。
【0011】
(複合材の接着方法)
図1は、第一実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。複合材の接着方法では、被接着体5と接着体6との接着部分に、脱気経路を確保するステップS1と、被接着体5を熱硬化させて、接着体6と接着させるステップS2と、を実行している。
【0012】
ステップS1では、脱気経路を確保するために、被接着体5において、プリプレグ4の積層時に付与する圧力を調整している。プリプレグ4は、強化繊維に熱硬化性樹脂を含侵させた未硬化の複合材シートである。
図1に示すように、被接着体5は、接着体6に接着される表層側の部位となる表層部5aと、表層部5aの裏側の部位となる積層部5bとに区分けされる。表層部5aは、例えば、被接着体5の全体の厚さの1/4以下となっており、プリプレグ4を4層重ねた4プライとなっている。積層部5bは、表層部5aを除いた被接着体5の部位であり、表層部5aよりも厚いものとなっている。
【0013】
ステップS1では、脱気経路を確保するために、積層部5bにおけるプリプレグ4の積層時に付与する圧力に対して、表層部5aの積層時に付与する圧力の50%以下としている。このため、積層部5bにおけるプリプレグ4の密着度は表層部5aに比して高くなり、換言すれば、表層部5aにおけるプリプレグ4の密着度は積層部5bに比して低くなる。密着度の低い表層部5aは、脱気経路として機能する。なお、表層部5aの積層時に付与する圧力は、積層部5bの積層時に付与する圧力の50%以下であればよいため、0%であってもよく、すなわち圧力を付与しなくてもよい。ステップS1では、例えば、積層部5bにおけるプリプレグ4の積層時においては、真空引きを実行して圧力を付与する。一方で、ステップS1では、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時においては、真空よりも高い負圧で引くことで、表層部5aに積層部5bよりも低い圧力を付与する。なお、真空よりも高い負圧としては、真空引きを実行しない場合も含む。
【0014】
ステップS2では、ステップS1においてプリプレグ4を積層した被接着体5を用いる。ステップS2では、被接着体5の表層部5aにフィルム接着剤7を設置する。フィルム接着剤7は、例えば、プリプレグ4に含まれる熱硬化性樹脂と同様の樹脂である。ステップS2では、フィルム接着剤7の設置後、フィルム接着剤7を挟んで被接着体5の反対側に接着体6を設置する。なお、接着体6は、被接着体5と同様に未硬化のプリプレグ4を積層したものであってもよいし、硬化後の樹脂であってもよいし、複合材以外の材料であってもよく、特に限定されない。ステップS2では、接着体6の設置後、被接着体5、接着体6及びフィルム接着剤7をバッグフィルムで被覆して気密に封止する。そして、ステップS2では、バッグフィルム8内を真空引きしつつ、被接着体5、接着体6及びフィルム接着剤7を加熱することで、被接着体5、接着体6及びフィルム接着剤7に含まれる未硬化の熱硬化性樹脂を熱硬化させて、被接着体5と接着体6とを接着させる。以上の複合材の接着方法を実行することで、被接着体5と接着体6との間にボイド(気泡)が生じても、脱気経路として機能する表層部5aを介して気泡を除去することができる。
【0015】
なお、第一実施形態では、脱気経路を確保するために、ステップS1において、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させたが、圧力を付与する領域は、表層部5aの全面であってもよいし、接着体6が接着される表層部5aの接着領域であってもよく、特に限定されない。
【0016】
また、第一実施形態では、脱気経路を確保するために、ステップS1において、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させたが、プリプレグ4に含まれる熱硬化性樹脂の流動性を高める処理を実行して、プリプレグ4同士の層間に隙間を付与してもよい。具体的に、熱硬化性樹脂の流動性を高める処理として、被接着体5の表層面に、振動及び熱を与える処理を行ってもよい。なお、熱硬化性樹脂の流動性を高める処理は、特にこの構成に限定されず、何れの処理であってもよい。この処理を実行する場合、ステップS1では、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させてもよいし、低下させなくてもよい。
【0017】
また、第一実施形態では、脱気経路を確保するために、ステップS1において、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させたが、プリプレグ4同士の層間に圧縮空気を送って、プリプレグ4同士の層間に隙間を付与してもよい。この処理を実行する場合、ステップS1では、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させてもよいし、低下させなくてもよい。
【0018】
また、第一実施形態では、脱気経路を確保するために、ステップS1において、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させたが、被接着体5の接着面における密着性、接着体6の接着面における密着性、及びフィルム接着剤7の密着性を低下させる処理を実行してもよい。具体的に、密着性を低下させる処理として、被接着体5、接着体6及びフィルム接着剤7に含まれる熱硬化性樹脂を加熱して一部硬化させることで密着性を低下させてもよい。また、密着性を低下させる処理として、被接着体5、接着体6及びフィルム接着剤7に含まれる熱硬化性樹脂を自然硬化させるエージング処理を行ってもよい。さらに、密着性を低下させる処理として、被接着体5及びフィルム接着剤7の界面、接着体6及びフィルム接着剤7の界面に、パウダー状の熱硬化性樹脂を配置してもよい。この処理を実行する場合、ステップS1では、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させてもよいし、低下させなくてもよい。
【0019】
また、第一実施形態では、脱気経路を確保するために、ステップS1において、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させたが、被接着体5の最表層のプリプレグ4を、強化繊維が露出するプリプレグ4として用いてもよい。このようなプリプレグ4としては、例えば、強化繊維シートに熱硬化性樹脂を厚み方向において半含侵させたプリプレグがある。この処理を実行する場合、ステップS1では、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させてもよいし、低下させなくてもよい。
【0020】
また、第一実施形態では、脱気経路を確保するために、ステップS1において、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時において圧力を低下させたが、被接着体5の接着面に脱気経路を凹凸形成してもよい。
【0021】
[第二実施形態]
次に、
図2を参照して、第二実施形態について説明する。
図2は、第二実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。なお、第二実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0022】
(複合材の接着方法)
第二実施形態における複合材の接着方法は、脱気経路を確保するステップS1Aとして、接着体6に脱気経路となる貫通孔21を貫通形成するステップS1Aを実行する。ステップS1Aでは、貫通孔21が接着体6の厚さ方向に貫通形成され、被接着体5とフィルム接着剤7との界面、及び接着体6とフィルム接着剤7との界面にそれぞれ連通するように複数形成される。なお、貫通孔21は、被接着体5と接着体6とを物理的に締結するファスナが挿通される孔として形成されてもよい。
【0023】
[第三実施形態]
次に、
図3を参照して、第三実施形態について説明する。
図3は、第三実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。なお、第三実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態及び第二実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0024】
(複合材の接着方法)
第三実施形態における複合材の接着方法は、脱気経路を確保するステップS1Bとして、接着体6の接着面に脱気経路となる溝31を形成している。溝31は、一方向に延在する溝となっており、延在する方向に直交する方向に複数平行に並べて形成されている。
【0025】
[第四実施形態]
次に、
図4を参照して、第四実施形態について説明する。
図4は、第四実施形態に係る複合材の接着方法に関する説明図である。なお、第四実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態から第三実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態から第三実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0026】
(複合材の接着方法)
第四実施形態における複合材の接着方法は、脱気経路を確保するステップS1Cとして、接着体6の接着面に脱気経路を凹凸形成している。具体的に、接着体6の接着面は、接着体6が複合材である場合、接着面側となる層をピールプライとすることで、脱気経路を凹凸形成する。また、この構成に限定されず、接着体6の接着面は、接着体6が複合材である場合、接着面側となる層に含まれる強化繊維の繊維径を太いものと細いものを混在させることで、脱気経路を凹凸形成してもよい。
【0027】
[第五実施形態]
次に、
図5及び
図6を参照して、第五実施形態について説明する。
図5及び
図6は、第五実施形態に係る複合材の接着方法で用いられるフィルム接着剤の図である。なお、第五実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態から第四実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態から第四実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0028】
(複合材の接着方法)
第五実施形態における複合材の接着方法は、脱気経路を確保するステップS1Dとして、被接着体5と接着体6との間に設けられるフィルム接着剤7に脱気経路を凹凸形成している。具体的に、ステップS1Dでは、
図5に示すように、フィルム接着剤7の表裏面にエンボス加工を施すことで、脱気経路を凹凸形成している。また、ステップS1Dでは、
図6に示すように、フィルム接着剤7にハニカム形状の溝41aを形成してもよいし、フィルム接着剤7に複数の貫通孔41bを形成してもよい。
【0029】
以上のように、第一実施形態から第五実施形態に記載の複合材の接着方法は、例えば、以下のように把握される。
【0030】
第1の態様に係る複合材の接着方法は、強化繊維に熱硬化性樹脂を含侵させた未硬化の複合材シート(プリプレグ4)を積層して成る被接着体5に対して、接着体6を接着する複合材の接着方法において、前記被接着体5と前記接着体6との接着部分に、脱気経路を確保するステップS1と、前記被接着体5を熱硬化させて、前記接着体6と接着させるステップS2と、を実行する。
【0031】
この構成によれば、被接着体5と接着体6との接着部分に、脱気経路を確保することができるため、ボイドが発生する場合であっても、脱気経路を介してボイドを好適に除去することができる。
【0032】
第2の態様として、第1の態様に係る複合材の接着方法において、前記被接着体5は、前記接着体6に接着される表層側の部位となる表層部5aと、前記表層部5aの裏側の部位となる積層部5bと、を有し、前記複合材シートの積層時において圧力を付与しており、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記積層部5bにおける前記複合材シートの積層時に付与する圧力に対して、前記表層部5aの積層時に付与する圧力の50%以下とする。
【0033】
この構成によれば、表層部5aにおけるプリプレグ4の積層時に、脱気経路を塞がずにプリプレグ4を積層することができるため、脱気経路を好適に確保することができる。
【0034】
第3の態様として、第2の態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記積層部5bにおける前記複合材シートの積層時において、真空引きすることで、前記積層部5bに圧力を付与し、前記表層部5aにおける前記複合材シートの積層時において、真空よりも高い負圧で引くことで、前記表層部5aに前記積層部5bよりも低い圧力を付与する。
【0035】
この構成によれば、プリプレグ4の積層時における真空引きの負圧を変更することで、表層部5a及び積層部5bに付与する圧力を簡単に変化させることができる。
【0036】
第4の態様として、第1または第2の態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記接着体6が接着される前記表層部5aの接着領域における圧力を低下させる。
【0037】
この構成によれば、表層部5aの接着領域のみに、複合材シートの積層時に付与される圧力を低下させればよいため、圧力を低下させる作業の効率化を図ることができる。
【0038】
第5の態様として、第1の態様に係る複合材の接着方法において、前記被接着体5は、前記接着体6に接着される表層側の部位となる表層部5aと、前記表層部5aの裏側の部位となる積層部5bと、を有し、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記積層部5bにおける前記複合材シート同士の密着性に比して、前記表層部5aにおける前記複合材シート同士の密着性を低下させる。
【0039】
この構成によれば、表層部5aにおける複合材シート同士の密着性を低下させることで、複合材シート同士の間に隙間を形成することができるため、脱気経路を好適に確保することができる。
【0040】
第6の態様として、第5の態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記複合材シートに含まれる前記熱硬化性樹脂の流動性を高める処理を実行して、前記複合材シート同士の層間に隙間を付与する。
【0041】
この構成によれば、熱硬化性樹脂の流動性を高めることで、複合材シート同士の層間に隙間を付与することができるため、脱気経路を好適に確保することができる。
【0042】
第7の態様として、第5の態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップでは、前記複合材シート同士の層間に圧縮空気を送って、前記複合材シート同士の層間に隙間を付与する。
【0043】
この構成によれば、複合材シート同士の層間に圧縮空気を送って、複合材シート同士の層間に隙間を付与することができるため、脱気経路を好適に確保することができる。
【0044】
第8の態様として、第1から第7のいずれか一つの態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記被接着体5の接着面における密着性、前記接着体6の接着面における密着性、及び前記被接着体5と前記接着体6との間に設けられるフィルム接着剤7の密着性の少なくとも一つを低下させる処理を実行する。
【0045】
この構成によれば、被接着体5とフィルム接着剤7との界面、接着体6とフィルム接着剤7との界面に隙間を形成することができるため、脱気経路を好適に確保することができる。
【0046】
第9の態様として、第1から第8のいずれか一つの態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記接着体6が接着される前記被接着体5の最表層の前記複合材シートとして、前記強化繊維が露出する前記複合材シートを用いる。
【0047】
この構成によれば、露出した強化繊維により、脱気経路を形成することできるため、脱気経路を好適に確保することができる。
【0048】
第10の態様として、第1から第9のいずれか一つの態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1では、前記被接着体の接着面に脱気経路を凹凸形成する。
【0049】
この構成によれば、被接着体の接着面に、脱気経路を好適に確保することができる。
【0050】
第11の態様として、第1から第10のいずれか一つの態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1Aでは、前記脱気経路となる貫通孔21を前記接着体6に形成する。
【0051】
この構成によれば、接着体6に貫通孔21を形成することで、脱気経路を好適に確保することができる。
【0052】
第12の態様として、第1から第11のいずれか一つの態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1B、S1Cでは、前記接着体側の接着面に脱気経路を凹凸形成する。
【0053】
この構成によれば、接着体6の接着面に、脱気経路を好適に確保することができる。
【0054】
第13の態様として、第1から第12のいずれか一つの態様に係る複合材の接着方法において、前記脱気経路を確保するステップS1Dでは、前記被接着体5と前記接着体6との間に設けられるフィルム接着剤7に脱気経路を凹凸形成する。
【0055】
この構成によれば、フィルム接着剤7に、脱気経路を好適に確保することができる。
【符号の説明】
【0056】
4 プリプレグ
5 被接着体
5a 表層部
5b 積層部
6 接着体
7 フィルム接着剤
8 バッグフィルム
21 接着体の貫通孔
31 接着体の溝
41a フィルム接着剤の溝
41b フィルム接着剤の貫通孔