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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017962
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/04 20060101AFI20240201BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A45D40/04 B
B65D83/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120954
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014AC03
(57)【要約】
【課題】気密性と作動性を両立し易い繰り出し容器を提供する。
【解決手段】ケース筒2と、ケース筒2に回転可能に保持される操作部材3と、軸部4aと軸部4aから突出する環状突出部4bを有する押し出し部材4と、少なくとも環状突出部4bによって内容物をケース筒2の先端側に押してケース筒2の内部から繰り出すために、ケース筒2に対する操作部材3の回転によって軸部4aをケース筒2の先端側に送るねじ送り機構6と、を有し、環状突出部4bが、軸部4aからケース筒2の先端側にラッパ状に広がるように延在し、外周縁部においてケース筒2の内周面に全周にわたって密接する、繰り出し容器1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース筒と、
前記ケース筒に回転可能に保持される操作部材と、
軸部と前記軸部から突出する環状突出部を有する押し出し部材と、
少なくとも前記環状突出部によって内容物を前記ケース筒の先端側に押して前記ケース筒の内部から繰り出すために、前記ケース筒に対する前記操作部材の回転によって前記軸部を前記ケース筒の先端側に送るねじ送り機構と、を有し、
前記環状突出部が、前記軸部から前記ケース筒の前記先端側にラッパ状に広がるように延在し、外周縁部において前記ケース筒の内周面に全周にわたって密接する、繰り出し容器。
【請求項2】
前記軸部が、前記環状突出部の径方向内側を密閉する、請求項1に記載の繰り出し容器。
【請求項3】
前記環状突出部が、少なくとも前記ケース筒への組み付け前の状態において、全周にわたって、内周縁部から前記外周縁部にかけて単一の曲率で湾曲する円弧状の縦断面形状をなす、請求項1又は2に記載の繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繰り出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ケース筒と、ケース筒に回転可能に保持される操作部材と、軸部と軸部から突出する環状突出部を有する押し出し部材と、少なくとも環状突出部によって内容物をケース筒の先端側に押してケース筒の内部から繰り出すために、ケース筒に対する操作部材の回転によって軸部をケース筒の先端側に送るねじ送り機構と、を有する繰り出し容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-171589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような従来の繰り出し容器は、気密性を高めるために環状突出部をケース筒の内周面に全周にわたって密接する構成とした場合に、ケース筒に対する環状突出部の摺動抵抗が過大となり作動性に影響し易い傾向があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、気密性と作動性を両立し易い繰り出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
ケース筒と、
前記ケース筒に回転可能に保持される操作部材と、
軸部と前記軸部から突出する環状突出部を有する押し出し部材と、
少なくとも前記環状突出部によって内容物を前記ケース筒の先端側に押して前記ケース筒の内部から繰り出すために、前記ケース筒に対する前記操作部材の回転によって前記軸部を前記ケース筒の先端側に送るねじ送り機構と、を有し、
前記環状突出部が、前記軸部から前記ケース筒の前記先端側にラッパ状に広がるように延在し、外周縁部において前記ケース筒の内周面に全周にわたって密接する、繰り出し容器。
【0008】
[2]
前記軸部が、前記環状突出部の径方向内側を密閉する、[1]に記載の繰り出し容器。
【0009】
[3]
前記環状突出部が、少なくとも前記ケース筒への組み付け前の状態において、全周にわたって、内周縁部から前記外周縁部にかけて単一の曲率で湾曲する円弧状の縦断面形状をなす、[1]又は[2]に記載の繰り出し容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、気密性と作動性を両立し易い繰り出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の繰り出し容器を示す縦断面図である。
図2図1に示す状態から蓋体を取り外し、内容物を繰り出した時の状態を示す縦断面図である。
図3】実施例の環状突出部を示す縦断面図である。
図4】第1比較例の環状突出部を示す縦断面図である。
図5】第2比較例の環状突出部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態において繰り出し容器1は、ケース筒2、操作部材3、押し出し部材4及び蓋体5を有する。
【0014】
ケース筒2、操作部材3、押し出し部材4及び蓋体5はそれぞれ例えば樹脂製の、一体成形物である。なお、これらの部材はそれぞれ、複数の部材を組み付けて形成する構成としてもよい。
【0015】
操作部材3は、ケース筒2に回転可能に保持される。操作部材3の回転軸線Oはケース筒2の中心を通る。押し出し部材4は、操作部材3の回転軸線Oを中心とする軸部4aと、軸部4aから突出する環状突出部4bを有する。
【0016】
ケース筒2の先端部(上端部)には、図示しない内容物の繰り出し口2aが設けられる。繰り出し口2aは本実施形態ではケース筒2の先端縁によって構成される。なお、内容物がクリーム状である場合などにおいて、繰り出し口2aを有するキャップ部材をケース筒2の先端部に取り付けることで、ケース筒2の先端部に繰り出し口2aを設ける構成としてもよい。内容物は特に限定されず、例えば化粧品である。
【0017】
なお、説明の便宜上、操作部材3の回転軸線Oに沿う方向である軸方向を上下方向ともいい、回転軸線Oに沿ってケース筒2の基端から先端に向かう方向を上方ともいい、その反対方向を下方ともいい、回転軸線Oに直交する直線に沿う方向を径方向ともいい、回転軸線Oを周回する方向を周方向ともいい、回転軸線Oを含む断面を縦断面ともいう。
【0018】
蓋体5は、回転軸線Oを中心とする有頂筒状をなし、ケース筒2の先端部の外周面に着脱可能に取り付けられることで繰り出し口2aを密封することができる。内容物を繰り出す時は蓋体5は取り外される。
【0019】
図1図2に示すように、繰り出し容器1は、押し出し部材4の軸部4aと環状突出部4bとの上面によって内容物をケース筒2の先端側に押してケース筒2の内部から繰り出し口2aを通して繰り出すために、ケース筒2に対する操作部材3の回転によって押し出し部材4の軸部4aをケース筒2の先端側に送るねじ送り機構6を有する。
【0020】
本実施形態では、ねじ送り機構6は、操作部材3に対して軸部4aを回転を規制しながら軸方向に案内し得る操作部材側案内部6aと、ケース筒2と軸部4aを回転軸線Oを中心とするねじの螺合によって連結するケース筒側ねじ連結部6bと、を有する。操作部材側案内部6aは、本実施形態では、操作部材3に設けられる回転軸線Oを中心とするスプライン軸と、軸部4aに設けられ下方からスプライン軸を嵌入される嵌合穴とによって構成されるがこれに限らない。ケース筒側ねじ連結部6bは、本実施形態では、ケース筒2に設けられる雌ねじ状の螺合部と、軸部4aの外周面に設けられる雄ねじ部とによって構成されるがこれに限らない。
【0021】
なお、ねじ送り機構6は、操作部材側案内部6aとケース筒側ねじ連結部6bを有する構成に限らない。例えば、ねじ送り機構6は、ケース筒2に対して軸部4aを回転を規制しながら軸方向に案内し得るケース筒側案内部と、操作部材3と軸部4aを回転軸線Oを中心とするねじの螺合によって連結する操作部材側ねじ連結部と、を有する構成としてもよい。
【0022】
操作部材3は、回転連結部7とラチェット部8を介してケース筒2に連結する。
【0023】
回転連結部7は嵌合によってケース筒2に対して操作部材3を回転可能に保持する。回転連結部7は本実施形態では、ケース筒2の内周面に設けられる環状溝と、操作部材3の外周面に設けられ、環状溝に嵌合する凸部とによって構成されるがこれに限らない。
【0024】
ラチェット部8は、ケース筒2に一体に設けられる歯車部8aと操作部材3に設けられる歯止め部8bとによって構成される。歯車部8aに対する歯止め部8bの周方向一方側への回転は、歯止め部8bの弾性変形によって許容される。歯車部8aに対する歯止め部8bの周方向他方側への回転は、歯止め部8bと歯車部8aとの係合によって規制される。ラチェット部8によれば、押し出し部材4がケース筒2に対して下方に移動することを規制でき、その結果、内容物(特に軟質の内容物)の内部への空気の混入を抑制することができる。なお、ラチェット部8を設けない構成としてもよい。
【0025】
押し出し部材4の環状突出部4bは、軸部4aからケース筒2の先端側にラッパ状に広がるように延在し、外周縁部においてケース筒2の内周面に全周にわたって密接する。このように環状突出部4bが先端側にラッパ状に広がる(つまり、縦断面において上側に凸となるアーチ形をなす)ように延在する構成によれば、上方からの荷重に対しては変形しにくく良好に支えることができ、しかも、締め代をもって当接するケース筒2の内周面からの荷重に対しては変形し易く摺動抵抗を抑制し易くできる。したがって本実施形態によれば、良好な気密性を実現しながら、ケース筒2に対する環状突出部4bの摺動抵抗を抑制し、良好な作動性を実現することができる。
【0026】
また軸部4aは、環状突出部4bの径方向内側を密閉する密閉部4cを上端部に有する。したがって本実施形態によれば、密閉部4cによって気密性をより一層高めることができる。
【0027】
密閉部4cは、本実施形態では、環状突出部4bの内周縁部よりも上方まで延在し、上端面の中央部が窪んだ形状をなす。このような構成によれば、押し出し部材4によって内容物を保持する機能を密閉部4cによって高め、特に繰り出し操作の最後まで、内容物の塗布時のずれを抑制し使い易くすることができる。また、密閉部4cを繰り出し容器1の組み立て時に押し出し部材4の保持などのために利用してもよい。押し出し部材4を射出成形によって形成する場合に、密閉部4cの窪みの底にゲートを設定してもよい。このような構成によれば、ゲート残りが生じた場合でも密閉部4cによってゲート残りが外部と接触することなどを抑制することができる。なお、密閉部4cは、上述したような、環状突出部4bの内周縁部よりも上方まで延在し、上端面の中央部が窪んだ形状をなす構成に限らない。
【0028】
また本実施形態では、環状突出部4bは、少なくともケース筒2への組み付け前の状態において、全周にわたって、内周縁部から外周縁部にかけて単一の曲率で湾曲する、曲率半径方向の厚みTが一定の円弧状の縦断面形状をなす。このような構成によれば、より一層良好な気密性と作動性を実現することができる。
【0029】
本実施形態では、環状突出部4bの厚みTは、0.3mm以上であることが好ましく、2mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。0.3mm未満では安定した生産が難しく、2mmを超えると良好な作動性を得にくくなるためである。
【0030】
また、良好な気密性と作動性を実現する観点から、環状突出部4bの縦断面での下面の曲率半径は、3mm以上が好ましく、50mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。
【0031】
本実施形態の繰り出し容器1は、上述の構成を有することにより、高い気密性を求められる種類の内容物を対象とする場合に特に好適に用いることができる。
【0032】
また、例えば80℃程度での熱充填が求められる種類の内容物を対象とする場合、硬質であることにより摺動抵抗が大きくなり易いものの、耐熱性に優れるポリプロピレンによって押し出し部材4を形成することが好ましい。本実施形態によれば、このようにポリプロピレンを採用する場合でも良好な気密性と作動性を実現し易くすることができる。
【0033】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0034】
したがって、前述した実施形態の繰り出し容器1は、ケース筒2と、ケース筒2に回転可能に保持される操作部材3と、軸部4aと軸部4aから突出する環状突出部4bを有する押し出し部材4と、少なくとも環状突出部4bによって内容物をケース筒2の先端側に押してケース筒2の内部から繰り出すために、ケース筒2に対する操作部材3の回転によって軸部4aをケース筒2の先端側に送るねじ送り機構6と、を有し、環状突出部4bが、軸部4aからケース筒2の先端側にラッパ状に広がるように延在し、外周縁部においてケース筒2の内周面に全周にわたって密接する、繰り出し容器1である限り変更可能である。
【0035】
例えば、環状突出部4bは、少なくともケース筒2への組み付け前の状態において、全周にわたって、内周縁部から外周縁部にかけて単一の曲率で湾曲する円弧状の縦断面形状をなす構成に限らない。軸部4aは、環状突出部4bの径方向内側を密閉する構成に限らない。
【実施例0036】
図3に示す形状(前述した実施形態の形状)の環状突出部4bを有する実施例としての押し出し部材4と、図4に示す形状(全周にわたって、内周縁部から外周縁部にかけて横向きS字状に湾曲する縦断面形状をなす形状)の環状突出部4bを有する第1比較例としての押し出し部材4と、図5に示す形状(全周にわたって、横向きT字状の縦断面形状をなす形状)の環状突出部4bを有する第2比較例としての押し出し部材4をポリプロピレンによって製作し、気密性と作動性(摺動抵抗)を比較した。気密性はどの例でも良好であった。摺動抵抗は、実施例を基準(100%)とし、第1比較例が約184%であり、第2比較例が約144%であった。
【符号の説明】
【0037】
1 繰り出し容器
2 ケース筒
2a 繰り出し口
3 操作部材
4 押し出し部材
4a 軸部
4b 環状突出部
4c 密閉部
5 蓋体
6 ねじ送り機構
6a 操作部材側案内部
6b ケース筒側ねじ連結部
7 回転連結部
8 ラチェット部
8a 歯車部
8b 歯止め部
O 回転軸線
T 厚み
図1
図2
図3
図4
図5