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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179624
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ロール
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/00 20240101AFI20241219BHJP
   B08B 5/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B08B1/00
B08B5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098610
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(72)【発明者】
【氏名】服部 茂寿
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉孝
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA01
3B116AA46
3B116BA08
3B116BB72
3B116BB75
3B116BB77
(57)【要約】
【課題】 吸引装置による吸引効果を維持しつつ、ダム効果及び吸排効果を高めることができると共に、製造コストを低減させることができるロールを提供する。
【解決手段】ロール10は、ロール部1と、台座2と、を有し、台座2は、端部のみに配置され、外周面に形成された流体孔3と、流体孔3と連通する本体流体基管通路4を備えた中空形状部5aとを有する本体5と、本体5の端部と連接して設けられると共に、本体流体基管通路4と吸引装置11aとを連通させる継手体6とを有し、ロール部1は、台座2に積層される複数のロール片7を有し、ロール片7は、内周側に切欠き部7aが形成されているものであって、切欠き部7aは、台座2の長手方向に沿って連なる位置に積層されることで、台座2との間に流体細管通路8が形成され、流体細管通路8は、流体孔3と連通する位置まで延出している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の部材の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を、吸引装置又は噴射装置を用いて除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、
前記ロールは、ロール部と、台座と、を有し、
前記台座は、
一方又は両方の端部のみに配置され、外周面に形成された流体孔と、該流体孔と連通する本体流体基管通路を備えた中空形状部と、を有する本体と、
前記本体の少なくとも一方の端部と連接して設けられると共に、前記本体流体基管通路と前記吸引装置又は噴射装置とを連通させる継手体と、を有し、
前記ロール部は、前記台座に積層される不織布からなる概円環状の複数のロール片を有し、前記ロール片は、内周側に切欠き部が形成されているものであって、
前記切欠き部は、前記台座の長手方向に沿って連なる位置に積層されることで、前記台座との間に流体細管通路が形成され、前記流体細管通路は、前記台座の流体孔と連通する位置まで延出していることを特徴とするロール
【請求項2】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の部材の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を、吸引装置又は噴射装置を用いて除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、
前記ロールは、ロール部と、台座と、を有し、
前記台座は、
本体と、該本体の端部と連接して設けられると共に、前記吸引装置又は噴射装置と連通する流体基管通路が形成された継手体と、を有し、
前記ロール部は、前記台座に積層される不織布からなる概円環状の複数のロール片を有し、前記ロール片は、内周側に切欠き部が形成されているものであって、
前記切欠き部は、前記台座の長手方向に沿って連なる位置に積層されることで、前記台座との間に流体細管通路が形成され、前記流体細管通路は、前記継手体の流体基管通路と連通する位置まで延出していることを特徴とするロール
【請求項3】
流体細管通路と流体基管通路とは、シール部材を介して連結されている請求項2に記載のロール
【請求項4】
ロール部の硬度は、75度以上98度以下の範囲である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール
【請求項5】
台座の本体は、長手方向の中央に中実形状部を有している請求項1~3のいずれか1項に記載のロール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス、製紙、あるいはフィルム状のシートの被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄、吸引する為のロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被洗浄面に付着した水分等を除去、搾取、洗浄、吸引する為のロールが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のロールは、少なくとも一方が開口し、本体の軸方向に開設した中空部及びこの中空部に連通する透孔を、その本体周面に多数開設した筒状の軸本体と、この軸本体の両端に一体に形成した貫通孔を有する軸受部と、前記軸本体にフランジを介して不織布と、この不織布と異質材料でなるロール本体構成部材とを設けて圧着状に多数枚重畳したロール本体とからなるものであり、ロールに連通する真空ポンプ等を備えた吸引装置によって、ロールに含侵された水分等を外部に排出する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭61-392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のロール等に使用される筒状の軸本体は、耐久性を考慮して通常金属で作製されており、大径の中空部と周面の透孔を形成するための製造コストは嵩むものであった。また、軸本体は、ロール本体の軸中心に設けられた貫通孔に設置されることから、ロール本体を構成するロール片が柔らかい材料や硬度が低い材料で形成されている場合は、軸本体から離れている外周側が被洗浄面との当接時に生じる応力によって変形し易く、軸方向に倒れ易く、ダム効果や吸排効果が低くなるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、吸引装置による吸引効果を維持しつつ、ダム効果及び吸排効果を高めることができると共に、製造コストを低減させることができるロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の部材の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を、吸引装置又は噴射装置を用いて除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールは、ロール部と、台座と、を有し、前記台座は、一方又は両方の端部のみに配置され、外周面に形成された流体孔と、該流体孔と連通する本体流体基管通路を備えた中空形状部と、を有する本体と、前記本体の少なくとも一方の端部と連接して設けられると共に、前記本体流体基管通路と前記吸引装置又は噴射装置とを連通させる継手体と、を有し、前記ロール部は、前記台座に積層される不織布からなる概円環状の複数のロール片を有し、前記ロール片は、内周側に切欠き部が形成されているものであって、前記切欠き部は、前記台座の長手方向に沿って連なる位置に積層されることで、前記台座との間に流体細管通路が形成され、前記流体細管通路は、前記台座の流体孔と連通する位置まで延出していることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明では、流体孔を台座の本体の外周面であって、一方又は両方の端部のみに配置していることから、台座の本体の中央部は端部と比べて剛性が高く、被洗浄面にロール部を強く押し当てることができるため、被洗浄面に付着した液体等に対するダム効果及び吸排効果を高めることができる。また、吸引装置又は噴射装置と連通させた本体流体基管通路と、この本体流体基管通路と流体孔を介して連通している流体細管通路とによって、ロール部内に含浸されている液体等を吸引又は噴射させることができるため、ダム効果との相乗効果により、被洗浄面に付着した液体等の除去性能を向上させることができる。また、ダム効果によりせき止めた被洗浄面上の液体等を、効率よくロール部に吸収させることができるため、被洗浄面上に液体等が残ることを低減させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の部材の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を、吸引装置又は噴射装置を用いて除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールは、ロール部と、台座と、を有し、前記台座は、本体と、該本体の端部と連接して設けられると共に、前記吸引装置又は噴射装置と連通する流体基管通路が形成された継手体と、を有し、前記ロール部は、前記台座に積層される不織布からなる概円環状の複数のロール片を有し、前記ロール片は、内周側に切欠き部が形成されているものであって、前記切欠き部は、前記台座の長手方向に沿って連なる位置に積層されることで、前記台座との間に流体細管通路が形成され、前記流体細管通路は、前記継手体の流体基管通路と連通する位置まで延出していることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明では、台座の継手体に流体基管通路が形成されており、この流体基管通路と流体細管通路とが連通していることから、台座の本体の剛性を高くすることができ、被洗浄面にロール部を強く押し当てることができるため、被洗浄面に付着した液体等に対するダム効果及び吸排効果を高めることができる。また、吸引装置又は噴射装置と連通させた流体基管通路と、この流体基管通路と連通している流体細管通路とによって、ロール部内に含浸されている液体等を吸引又は噴射させることができるため、ダム効果との相乗効果により、被洗浄面の液体等に対する除去性能を向上させることができる。また、ダム効果によりせき止めた被洗浄面上の液体等を、効率よくロール部に吸収させることができるため、被洗浄面上に液体等が残ることを低減させることができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、流体細管通路と流体基管通路とは、シール部材を介して連結されていることを特徴としている。これにより、流体細管通路と流体基管通路の連結部分から液体が漏れるのを防ぐことができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれかの発明において、ロール部の硬度は、75度以上98度以下の範囲であることを特徴としている。これにより、高い硬度のロール部により被洗浄面を一層強く押し当てることができ、更にダム効果を高めることができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1~3のいずれかの発明において、台座の本体は、長手方向の中央に中実形状部を有していることを特徴としている。これにより、台座の本体の剛性を高くすることができ、被洗浄面にロール部を一層強く押し当てることができ、更にダム効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び2のロールの発明は、被洗浄面にロール部を強く押し当てることができ、ダム効果及び吸排効果を高めることができる。また、流体細管通路と吸引装置又は噴射装置とを連通させることによって、ロール部内に含浸されている液体等を吸引又は噴射させることができるため、ダム効果との相乗効果により、被洗浄面の液体等に対する除去性能を向上させることができる。また、請求項3の発明は、流体細管通路と流体基管通路の連結部分から液体が漏れるのを防ぐことができる。
【0015】
請求項4及び5の発明は、被洗浄面にロール部を一層強く押し当てることができ、ダム効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るロールの第1実施形態を示す正面図
図2】第1実施形態のロールの断面図
図3】(a)第1実施形態のロールを構成するロール片を示す側面図(b)第1実施形態のロールを構成する台座を示す正面図
図4】第1実施形態のロールを吸引装置又は噴射装置と連通させた状態を示す斜視図
図5】(a)本発明に係るロールの第2実施形態を示す正面図(b)第2実施形態のロールの断面図(c)第2実施形態のロールを構成する継手体の一部を示す斜視図
図6】(a)第2実施形態のロールを構成するロール片を示す側面図(b)第2実施形態のロールを構成する台座を示す正面図
図7】(a)本発明に係るロールの第3実施形態を示す正面図(b)第3実施形態のロールの断面図(c)第3実施形態のロールを構成する継手体の一部を示す斜視図
図8】第3実施形態のロールを吸引装置又は噴射装置と連通させた状態を示す斜視図
図9】(a)本発明に係るロールの第4実施形態を示す正面図(b)第4実施形態のロールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。図1は、本発明に係るロールの第1実施形態を示す正面図であり、図2は、第1実施形態のロールの断面図である。また、図3(a)は、第1実施形態のロールを構成するロール片を示す側面図であり、図3(b)は、第1実施形態のロールを構成する台座を示す正面図である。また、図4は、第1実施形態のロールを吸引装置又は噴射装置と連通させた状態を示す斜視図である。これらの図を用いて本発明に係るロールの第1実施形態について以下に説明する。
【0018】
第1実施形態のロール10は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の部材の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を、吸引装置又は噴射装置を用いて除去、搾取、洗浄する為のロール10であり、ロール部1と、台座2とを有している。
【0019】
台座2は、一方又は両方の端部2a、2bのみに配置され、外周面2cに形成された流体孔A3と、流体孔A3と連通する本体流体基管通路4を備えた中空形状部5aとを有する本体5と、本体5の少なくとも一方の端部2a、2bと連接して設けられると共に、本体流体基管通路4と吸引装置11a又は噴射装置11bとを連通させる継手体6とを有している。尚、継手体6には、流体基管通路6aが形成されており、この流体基管通路6aは、吸引装置11a又は噴射装置11bと連通している。尚、継手体6は、継手体本体6bとフランジ6cとから構成されており、流体基管通路6aは、継手体本体6bに形成されている。
【0020】
ロール部1は、台座2に積層される不織布からなる概円環状の複数のロール片7、7、7・・・を有しており、ロール片7は、内周側に切欠き部7aが形成されているものであって、切欠き部7aは、台座2の長手方向に沿って連なる位置に積層されることで、台座2との間に流体細管通路8が形成され、流体細管通路8は、台座2の流体孔A3と連通する位置まで延出していると共に、流体細管通路8は、継手体6の流体基管通路6aと連通する位置まで延出している。尚、継手体本体6bには、台座2の流体孔A3と連通するように、流体孔B6dが形成されている。また、ロール片7には、本体5との回り止めの為のキー溝7bが2か所に形成されており、このキー溝7bに対向する位置の本体5には、凸部5bが形成されている。そして、凸部5bにキー溝7bが嵌合することによって回り止めがなされる。
【0021】
流体孔A3の外径やピッチについて、特に限定されるものではないが、例えば、流体孔A3の外径は1~8mm程度、ピッチは20~100mm程度に設定されるのが望ましい。流体孔A3の外径が1mm未満の場合、径が小さすぎてロール部1から効率よく液体を吸引又は噴射することができず、8mmを超える場合、径が大きすぎて一孔あたりの吸引力又は噴射力が弱くなる。また、流体孔A3のピッチが20mm未満の場合、流体孔A3の数が多く、本体の端部2a、2bの剛性が低くなり、100mmを超える場合、流体孔A3の数が少なく、ロール部1から効率よく液体を吸引又は噴射することができなくなる。さらに、流体孔A3は本体の端部2a、2bの外周面に千鳥状に配置することが望ましく、千鳥状に配置することで本体5の端部2a、2bの剛性の低下を軽減することができる。
【0022】
台座2の両端に設けられる継手体6の流体基管通路6aは、それぞれに吸引装置11a又は噴射装置11bと連通させることで、台座2の両方の端部から同時に吸引又は噴射させることができ、ロール部1の全体に含浸された液体等に対する吸引又は噴射のバラつきを軽減させることができる。尚、本体5の一方の端部にのみ流体孔A3を設け、流体孔A3と連通する継手体6の片側にのみ流体基管通路6aを形成した場合も、ロール部1に含浸された液体等に対して吸引又は噴射の効果が発揮されるものであり、本発明に含まれる。吸引装置11a又は噴射装置11bを稼動させると、ロール部1に含浸されている液体等が、迅速、且つ均一に吸引又は噴射してロール10の外部に排出することができるため、ロール部1の吸液飽和状態が解消され、ロール性能を維持することができると共に、ロール10の耐用年数の長期化を図ることができる。
【0023】
前述のように構成された第1実施形態のロール10は、台座2の本体5の中央部が、流体孔A3が形成されている端部2a、2bと比べて剛性が高いため、被洗浄面にロール部1を強く押し当てることができ、ダム効果及び吸排効果を高めることができる。また、流体細管通路8と吸引装置11a又は噴射装置11bとを連通させることによって、ロール部1内に含浸されている液体等を吸引又は噴射させることができるため、ダム効果との相乗効果により、被洗浄面に付着した液体等の除去性能を向上させることができる。
【0024】
ここで、ダム効果とは、ロール部1を被洗浄面に強く押し当てることで、被洗浄面とロール部1との間に洗浄液等の液体がせき止められてロール10の長手方向の両端部側から流れ落とすことで洗浄液等の液体の大部分を取り除くことができる効果をいう。また、ダム効果で取り除けなかった洗浄液等の液体は、ロール部1が押しつぶされて変形することで外部に排出され、押しつぶされて変形したロール部1が元の形状に復元する時に外部の洗浄液等の液体を、ロール部1の内部に毛細管現象により吸い込むこととなる現象を吸排効果という。
【0025】
また、第1実施形態のロール10は、ダム効果によりせき止められた洗浄液がロール10の長手方向の両端部側に流れ落ちることなく被洗浄面上に残った場合であっても、吸引又は噴射によりロール部1内の吸液飽和状態が解消されることで、ロール部1が被洗浄面上の液体等の残りを吸収することができる。
【0026】
第1実施形態のロール10は、ロール部1の表面の硬度は、75度以上98度以下の範囲の硬度のものを使用するのが好ましい。これにより、高い硬度のロール部により被洗浄面を一層強く押し当てることができ、更にダム効果を高めることができると共に、吸引又は噴射による相乗効果により、被洗浄面に付着した液体等の除去性能を更に向上させることができる。一方で、ロール部1の表面の硬度を45度以上75度未満の範囲の硬度のものを使用した場合は、ロール部の硬度が低く、被洗浄面と柔軟に当接しつつ形状に倣うことで、更に吸排効果を高めることができると共に、吸引又は噴射による相乗効果により、被洗浄面に付着した液体等の除去性能を更に向上させることができる。
【0027】
ロール片7は、繊維と、繊維同士を接着するバインダーと、繊維及びバインダー以外の部分を占める空隙部とで構成された不織布又はスポンジ等の合成樹脂多孔質体を使用することができる。また、不織布の製造方法は、例えば複数本の繊維を平板状に集積し3次元に絡合させた形成体にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、吸収等の方法を用いて付着させ、加熱することにより繊維の間を結合させるケミカルボンド法を採用することができる。他には、水流絡合法、スパンボンド法、メルトブロー法、ファイバーボンド法やサーマルボンド法等を適宜採用することができる。また、不織布を形成する繊維には、綿、麻、リンネル、羊毛、絹、カシミヤ、セルロース等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成樹脂繊維が単独使用、あるいは併用される。
【0028】
また、合成樹脂多孔質体の内部空隙率(気孔率)は約60~90%が好ましく、最適には約80~85%が更に好ましい。液体の粘性等により内部空隙率を適宜選択することで、液体の吸引効率と耐久性を共に向上させることができる。また、合成樹脂多孔質体の製造方法は、例えばポリウレタンを水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることで極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンを採用することができる。
【0029】
第1実施形態のロール10は、台座の本体5は、長手方向の中央に中実形状部9を有する構成とするのが好ましい。これにより、台座の本体5の剛性を高くすることができ、被洗浄面にロール部1を一層強く押し当てることができ、更にダム効果を高めることができる。
【0030】
図5(a)は、本発明に係るロールの第2実施形態を示す正面図であり、図5(b)は、第2実施形態のロールの断面図、図5(c)は、第2実施形態のロールを構成する継手体の一部を示す斜視図である。また、図6(a)は、第2実施形態のロールを構成するロール片を示す側面図であり、図6(b)は、第2実施形態のロールを構成する台座を示す正面図である。これらの図を用いて本発明に係るロールの第2実施形態について以下に説明する。
【0031】
第2実施形態のロール20と、第1実施形態のロール10と比較して異なる点は、継手体26を構成するフランジ26cにも流体基管通路26aが形成されている点と、流体孔Aが本体25に形成されておらず、流体孔B26dのみが継手体本体26bに形成されている点である。これにより、本体25が高い剛性を維持することができるため、被洗浄面にロール部1を一層強く押し当てることができ、更にダム効果を高めることができる。また、ロール部1の長手方向の全域に亘り流体細管通路8を形成することができるため、吸引又は噴射によるロール部1の吸液飽和状態を更に効率よく解消させることができる。尚、第1実施形態の本体5と継手体本体6bとは別体で形成されているが、第2実施形態は本体25と継手体本体26bとが一体的に形成されており、製造コストを考慮し適宜選択することができる。
【0032】
また、第2実施形態のロール20は、図6(a)に示すように、ロール片27には、隣り合う切欠き部27aの間にキー凸部27bが形成されており、図6(b)に示すように、キー凸部27bに対応する台座22の本体25の外面には、長手方向の一方の端部から他方の端部にわたって複数の凹溝25bが形成されている。そして、に凹溝25bにキー凸部27bが嵌合することによって回り止めがなされる。
【0033】
図6(a)のロール片27は、複数本の極細繊維が集束した繊維束が複数個形成されて不織布が形成されると共に、繊維束の周りに、極微細な気泡を有する発泡化したポリウレタンの基部が形成されている二重構造体により形成されている。極細繊維は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなり、繊度は1dTx未満である。一般的に、極細繊維はマイクロファイバーと呼ばれ、繊維束は海島構造と呼ばれている。このように構成することによって、極細繊維による毛細管現象と空隙部とにより、水分、油分或いは洗浄液等の液体をより効率よく吸引又は噴射することができる。
【0034】
図7(a)は、本発明に係るロールの第3実施形態を示す正面図であり、図7(b)は、第3実施形態のロールの断面図、図7(c)は、第3実施形態のロールを構成する継手体の一部を示す斜視図である。また、図8は、第3実施形態のロールを吸引装置又は噴射装置と連通させた状態を示す斜視図である。これらの図を用いて本発明に係るロールの第3実施形態について以下に説明する。
【0035】
第3実施形態のロール30と、第1実施形態のロール10と比較して異なる点は、本体35と継手体本体36b、36bとが一体的に形成されている点と、継手体36を構成するフランジ36cに流体基管通路36aが形成されている点と、フランジ36cに流体孔C36dが形成されている点と、ロール部1の長手方向の側面とフランジ36cの側面との間にシール部材37が形成されている点である。これにより、本体35高い剛性を維持することができるため、被洗浄面にロール部1を一層強く押し当てることができ、更にダム効果を高めることができる。また、ロール部1の長手方向の全域に亘り流体細管通路8を形成することができるため、吸引又は噴射によるロール部1の吸液飽和状態を更に効率よく解消させることができる。さらに、流体基管通路36aがフランジ36cにのみ形成されているため製造コストを低減させることができる。また、ロール部1の流体細管通路8とフランジ36cの流体基管通路36aとは、シール部材37を介して連結されており、これにより、流体細管通路8と流体基管通路36aの連結部分から液体や気体が漏れるのを防ぐことができる。
【0036】
そして、フランジ36cに形成された流体孔C36dを直接、吸引装置11a又は噴射装置11bと連通させることによって、流体細管通路38との距離が短くなり、吸引又は噴射の効果を高めるようにしている。尚、ロール30の両端に形成されているフランジ36c、36cの内、一方のフランジ36c(図7(b)の左側のフランジ)の流体孔C36dは嵌合蓋36eにより経路を遮断することで、吸引又は噴射の効果を確実に発揮させている。
【0037】
図9(a)は、本発明に係るロールの第4実施形態を示す正面図であり、図9(b)は、第4実施形態のロールの断面図である。これらの図を用いて本発明に係るロールの第4実施形態について以下に説明する。
【0038】
第4実施形態のロール40と、第1実施形態のロール10と比較して異なる点は、本体45の長手方向の中央に中実形状部を有しておらず、略管形状であって内部に中空形状部45aが形成されている点である。これにより、本体45を略管状にすることができるため、製造コストを低減させることができると共に、台座の中央部の外周面に流体孔が形成されている従来の吸引機能を有するロールよりもダム効果及び吸排効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係るロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の部材の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を、吸引装置又は噴射装置を用いて除去、搾取、洗浄する為のロールとして利用される。
【符号の説明】
【0040】
1 ロール部
2、22 台座
2a、2b 端部
2c 外周面
3 流体孔A
4 本体流体基管通路
5、25、35 本体
5a、45a 中空形状部
5b 凸部
6、26、36 継手体
6a、26a、36a 流体基管通路
6b、26b 継手体本体
6c、26c、36c フランジ
6d、26d 流体孔B
7、27 ロール片
7a、27a 切欠き部
7b キー溝
8、38 流体細管通路
9 中実形状部
10、20、30、40 ロール
11a 吸引装置
11b 噴射装置
25b 凹溝
27b キー凸部
36d 流体孔C
37 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9