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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179625
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】地図処理装置及び地図処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20241219BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20241219BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20241219BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241219BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241219BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G01C21/34
G16Y40/60
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098611
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】安保 圭介
(72)【発明者】
【氏名】天谷 真一
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB38
2F129BB39
2F129BB49
2F129BB56
2F129CC06
2F129CC16
2F129DD15
2F129DD17
2F129DD20
2F129DD27
2F129DD62
2F129DD70
2F129EE02
2F129EE04
2F129EE36
2F129EE43
2F129EE52
2F129EE53
2F129EE59
2F129EE72
2F129EE73
2F129EE79
2F129EE82
2F129EE84
2F129FF18
2F129FF20
2F129FF25
2F129FF32
2F129FF43
2F129FF63
2F129FF66
2F129FF68
2F129GG17
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH18
2F129HH19
2F129HH20
2F129HH22
(57)【要約】
【課題】 車の走行支援に用いられる地図処理装置において、装置内で地図データを保持するストレージの容量削減と、装置の性能維持との両立を図る。
【解決手段】 本発明の地図処理装置は、レーンの延在方向におけるレーン区間同士の接続情報を示すレーン接続データ、及び、1以上のレーンで構成されたレーングループの延在方向におけるレーングループ区間同士の接続情報を示すレーングループ接続データを含む複数種の地図データを取得可能であり、自車前方の所定地点の地図データを取得する際には、所定地点の条件に応じた種類の地図データを取得する地図データ先読み部を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーンの延在方向におけるレーン区間同士の接続情報を示すレーン接続データ、及び、1以上のレーンで構成されたレーングループの延在方向におけるレーングループ区間同士の接続情報を示すレーングループ接続データを含む複数種の地図データを取得可能であり、自車前方の所定地点の前記地図データを取得する際には、前記所定地点の条件に応じた種類の地図データを取得する地図データ先読み部を備える
地図処理装置。
【請求項2】
前記所定地点の条件は、自車位置から前記所定地点までの距離であり、
前記地図データ先読み部は、自車位置から前記所定地点までの距離が所定範囲内の距離であれば、前記複数種の地図データを取得し、自車位置から前記所定地点までの距離が前記所定範囲内より遠い特定範囲内の距離であれば、前記レーングループ接続データのみを取得する
請求項1に記載の地図処理装置。
【請求項3】
前記所定地点の条件は、前記所定地点が自車の走行予定経路上の地点であるか否かであり、
前記地図データ先読み部は、前記所定地点が自車の走行予定経路上の地点である場合には前記レーン接続データを取得し、前記所定地点が自車の走行予定経路から分岐した経路上の地点である場合には前記レーングループ接続データを取得する
請求項1に記載の地図処理装置。
【請求項4】
自車が前記走行予定経路から逸脱した際に、逸脱後に自車が走行可能な経路上の地点で取得済みの前記レーングループ接続データを参照して、新たな走行予定経路になり得る候補経路を探索する経路探索部を、さらに備える
請求項3に記載の地図処理装置。
【請求項5】
前記複数種の地図データには、レーンの特徴及び走行状況に関する情報を含むレーン属性データが含まれ、
前記経路探索部により複数の前記候補経路が得られた場合に、予め設定された選択順序に従って、複数の前記候補経路から一つの前記候補経路を順次選択し、該選択された前記候補経路の前記レーン属性データを取得して、該選択された前記候補経路が自車の走行に適しているか否かを判定する経路決定部をさらに備える
請求項4に記載の地図処理装置。
【請求項6】
前記地図データ先読み部は、自車の走行予定経路から分岐した経路上の地点であり且つ分岐点以降の一部の地点については前記レーン接続データを取得する
請求項3に記載の地図処理装置。
【請求項7】
自車前方の周辺画像を撮影する撮影装置をさらに備え、
前記地図データ先読み部は、前記周辺画像に写らないレーンに関する前記地図データを取得しない
請求項1に記載の地図処理装置。
【請求項8】
レーンの延在方向におけるレーン区間同士の接続情報を示すレーン接続データ、及び、1以上のレーンで構成されたレーングループの延在方向におけるレーングループ区間同士の接続情報を示すレーングループ接続データを含む複数種の地図データを取得可能な地図データ先読み部を備える地図処理装置の前記地図データ先読み部が、自車前方の所定地点の前記地図データを取得する際に、前記所定地点の条件に応じた種類の地図データを取得することを含む
地図処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図処理装置及び地図処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子地図表示システム等で利用される地図作成アプリケーションにおいて、地図データを先読みする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、利用可能な全体の地図データから、第1の経路を包含する地域、及び、第1の経路に基づいて選択された二次的な経路(戻り経路等)を包含する地域の地図データタイルを選択して地図データを取り出す技術が開示されている。特許文献1に開示の地図データの先読み技術では、第1の経路に基づいて二次的な経路の地図データを先読みするが、アクセスされた地図データの量は、二次的な経路の優先度に基づいて調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-501956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来、地図処理装置において、地図データを先読みする技術が提案されているが、この技術分野では、装置内で地図データを保持するストレージの容量を低減してコストを下げることが求められている。この課題を解決するためには、地図処理装置内に保持する地図データの容量を低減する必要があるが、保持する地図データの容量を低減しすぎると、地図処理装置の性能が低下する可能性がある。それゆえ、地図処理装置の技術分野では、装置内で地図データを保持するストレージの容量削減と、装置の性能維持との両立を図ることが可能な技術の開発が求められている。
【0005】
特に、近年開発が進んでいる車の自動運転に必要な道路の車線(以下、単に「レーン」と称する)レベルでの走行支援を可能にする地図処理装置では、道路レベルでの走行支援で使用可能な従来のカーナビゲーションシステムに比べて、詳細度の高い地図データを利用する。それゆえ、このような詳細度の高い地図データを扱う地図処理装置では、装置内に保持する地図データの容量も大きくなるので、上述した要望も大きい。なお、例えば、上記特許文献1には、自車位置と経路とから想定される別の経路(二次的な経路)を先読みする技術が開示されているが、高速道路上では、二次的な経路が長距離になる傾向がある。それゆえ、例えば、詳細度の高い地図データを扱う地図処理装置に対して上記特許文献1に開示の技術を適用しても、走行支援で必要となる二次的な経路の全ての地図データを先読みすることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望に応えるためになされたものである。本発明の目的は、車の走行支援に用いられる地図処理装置において、装置内で地図データを保持するストレージの容量削減と、装置の性能維持との両立を図ることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の地図処理装置は、複数種の地図データを取得可能である地図データ先読み部を備える。複数種の地図データは、レーンの延在方向におけるレーン区間同士の接続情報を示すレーン接続データ、及び、1以上のレーンで構成されたレーングループの延在方向におけるレーングループ区間同士の接続情報を示すレーングループ接続データを含む。そして、地図データ先読み部は、自車前方の所定地点の地図データを取得する際には、所定地点の条件に応じた種類の地図データを取得する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の地図処理方法は、前記本発明の地図処理装置の地図データ先読み部が、自車前方の所定地点の地図データを取得する際に、所定地点の条件に応じた種類の地図データを取得することを含む。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明によれば、車の走行支援に用いられる地図処理装置において、装置内で地図データを保持するストレージの容量削減と、装置の性能維持との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る地図処理装置を含む車載システムの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る地図処理装置の機能ブロック構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る地図処理装置の記憶部に格納される各種地図データと、各種地図データが使用される各種アプリケーションとの関係性を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る地図処理装置のハードウェアの構成図である。
図5】本発明の一実施形態に係る地図処理装置において先読みされる各種地図データと、自車位置から先読み対象地点までの距離との関係を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る地図処理装置による各種地図データの先読み処理の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る地図処理装置による各種地図データの先読み実行処理の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る地図処理装置で行われる、ルート逸脱発生時の第1のルート変更動作例の概要を説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態に係る地図処理装置による、ルート逸脱発生時の第1のルート変更動作例の動作フローを示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る地図処理装置で行われる、ルート逸脱発生時の第2のルート変更動作例の概要を説明するための図である。
図11】本発明の一実施形態に係る地図処理装置による、ルート逸脱発生時の第2のルート変更動作の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る地図処理装置及び地図処理方法(地図データの先読み方法)について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本発明は、例えば、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)、又は自動運転(AD:Autonomous Driving)向けの車載ECU(Electronic Control Unit)が通信可能な車両制御用の演算装置(例えば、MPU(Map Positioning Unit)等)に適用可能である。
【0012】
[車載システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る地図処理装置を含む車載システムの概略構成図である。なお、図1には、地図処理装置で行われる各種処理に関する構成部のみを示す。
【0013】
自動運転機能を備えた自車の車載システム1は、図1に示すように、地図処理装置2と、カーナビゲーションシステム3(以下、「カーナビ3」と称する)と、自動運転制御装置4とを備え、各構成部は、車載システム1内において互いに接続される。また、地図処理装置2は、通信ネットワーク6を介して、例えばクラウド等の外部に設けられた地図配信サーバー5に接続される。
【0014】
地図配信サーバー5には、自車の自動運転の走行支援で必要となるレーンレベルでの詳細度の高い各種地図データ(例えば、後述のレーン接続データ、レーン属性データ、レーン境界データ等:以下では、「高精度地図データ」と称する)が格納される。そして、地図処理装置2は、起動中には、自車周辺の各種高精度地図データを、地図配信サーバー5からオンデマンドで取得する。なお、図示を省略するが、カーナビ3は、通信ネットワークを介して、例えばクラウド等の外部に設けられたカーナビ用の地図配信サーバーに接続され、自車周辺の道路レベルの各種地図データを、カーナビ用の地図配信サーバーからオンデマンドで取得する。
【0015】
地図処理装置2は、自車の自動運転支援で必要となる目的地までの推奨経路(以下、「走行予定経路」とも称する)及びその周辺経路の各種高精度地図データを地図配信サーバー5から予め取得(以下、「先読み」と称する)する機能を備える。なお、ここでいう、「走行予定経路の周辺経路」は、走行予定経路から分岐可能な経路を意味する。そして、地図処理装置2は、先読みした各種高精度地図データを用いて、走行予定経路を探索し、当該探索処理により決定された走行予定経路に関する情報を自動運転制御装置4に出力する。また、本実施形態では、後述するように、自車が走行予定経路を逸脱した際には、地図処理装置2は、先読み済みの各種高精度地図データを用いて、新たな走行予定経路の探索及び決定処理も行う。なお、地図処理装置2の内部構成及び処理内容については、後で、図面を参照しながら説明する。
【0016】
カーナビ3は、カーナビ用の地図配信サーバーから取得した自車周辺の道路レベルの各種地図データを用いて、目的地までの推奨経路を探索し、当該探索処理により得られた推奨経路を走行予定経路として設定する。また、カーナビ3は、例えば、カーナビ3で設定された走行予定経路、目的地、経路の探索条件等の各種情報を地図処理装置2に出力する。
【0017】
自動運転制御装置4は、地図処理装置2又はカーナビ3により設定された目的地までの走行予定経路の情報を使用して、自車の自動運転制御を行う。
【0018】
[地図処理装置の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る地図処理装置2が有する機能ブロックの構成図である。なお、図2には、地図処理装置2による各種高精度地データの先読み処理、及び、目的地までの走行予定経路の探索及び決定処理に関わる構成部のみを示す。
【0019】
地図処理装置2は、図2に示すように、制御部10と、記憶部11と、センサー部12と、第1通信部13と、第2通信部14と、第3通信部15とを備える。なお、制御部10は、記憶部11、センサー部12、第1通信部13及び第2通信部14に接続され、記憶部11は、第3通信部15に接続される。
【0020】
制御部10は、記憶部11、センサー部12及び第1通信部13から取得した各種データ(情報)を用いて、目的地までのレーンレベルの推奨経路を探索し、探索の結果、得られた走行予定経路の情報を、第2通信部14を介して自動運転制御装置4に出力する。また、後述するように、自車が走行予定経路を逸脱した際にも、制御部10は、新たな走行予定経路の探索及び決定処理を行う。なお、制御部10の内部構成については、後で説明する。
【0021】
記憶部11は、第3通信部を介して、外部の地図配信サーバー5に接続される。そして、記憶部11には、地図配信サーバー5から配信されるレーンレベルでの自動走行支援を可能とする各種高精度地図データが格納される。なお、本実施形態では、地図配信サーバー5には、高速道だけでなく、一般道についても、レーンレベルでの自動走行支援を可能とする各種高精度地図データが格納されているものとする。
【0022】
また、記憶部11は、レーン接続・属性データ記憶部31、レーン境界データ記憶部32、レーン形状データ記憶部33及びレーングループ接続データ記憶部34を有する。
【0023】
レーン接続・属性データ記憶部31には、走行レーン上において物理的に構造が変化する分岐点(例えば、交差点等:以下、「ノード」と称する)を介して互いに接続されるレーン区間同士の接続関係に関する情報(以下、「レーン接続データ」と称する)が格納される。なお、レーン接続データには、例えば、レーンの延在方向におけるレーン区間同士(ノード間)の接続情報だけでなく、ノードの位置座標に関する情報、レーンの識別情報、走行方向、ノードでのレーンの変更可否に関する情報等の各種情報が含まれる。
【0024】
また、レーン接続・属性データ記憶部31には、ノード間における各レーンの属性(性質や特徴)に関する情報(以下、「レーン属性データ」と称する)が格納される。レーン属性データには、ノード間における、例えば、レーンの種別情報、レーンの幅、レーンの曲率、レーンの勾配種別、レーンの通行可否を示す情報等の各種情報が含まれる。なお、レーン属性データに含まれるレーンの通行可否を示す情報には、例えば、渋滞の情報や工事中の情報などのリアルタイム又は期限付きの交通情報が含まれる。
【0025】
レーン境界データ記憶部32には、レーンの延在方向と直交する方向に隣り合うレーン間の境界に関する情報(以下、「レーン境界データ」と称する)が格納される。なお、レーン境界データには、例えば、レーン間の境界線の種別(例えば、白線、オレンジ線等)、境界線のパターン種別等の情報が含まれる。
【0026】
レーン形状データ記憶部33には、ノード間における各レーンの形状に関する情報(以下、「レーン形状データ」と称する)が格納される。本実施形態では、レーン形状データとして、各レーンの中心線の形状データ(以下、「レーン中心線形状データ」と称する)と、各レーンの境界の形状データ(以下、「レーン境界形状データ」と称する)とが、別個に設けられる。なお、レーン中心線形状データ及びレーン境界形状データはともに、座標の点列データで構成される。
【0027】
また、地図処理装置2による自動運転の走行支援では、ノード間に存在する複数のレーンを一つのグループに集約したもの(以下、「レーングループ」と称する)の接続情報が使用される。また、本実施形態では、ノード間に存在するレーン数が1である場合の走行経路(例えば、後述の図8図10中の一般道)に対してもレーングループを設定する。すなわち、本実施形態では、レーングループは1以上のレーンで構成される。そして、レーングループ接続データ記憶部34には、ノードを介して互いに接続されるレーングループ同士の接続に関する情報(以下、「レーングループ接続データ」と称する)が格納される。レーングループ接続データには、レーングループ間における最低限の接続情報が含まれていればよく、レーングループの延在方向におけるレーングループ同士(ノード間)の接続情報以外では、例えば、レーングループの識別情報等の各種情報が含まれる。
【0028】
センサー部12は、自車周辺の構造物や車両、自車の位置、自車の走行状況等を認識するための各種機器を有する。具体的には、自車周辺の状況を撮影可能なカメラ(撮影装置)、道路レベルでの自車位置を測定可能なGPS(Global Positioning System)モジュール、自車の走行状況を測定可能な加速度センサー及び角速度センサー等の各種機器がセンサー部12に含まれる。センサー部12で取得された各種情報は、制御部10に入力され、制御部10は、これらの情報に基づいて、自車周辺の構造物や車両の認識処理や自己位置の推定処理を行う。
【0029】
第1通信部13は、カーナビ3に接続される。そして、カーナビ3で設定された例えば、走行予定経路、目的地、経路探索条件等の各種情報が、第1通信部13を介して制御部10に送信される。第2通信部14は、自動運転制御装置4に接続される。そして、制御部10より決定された目的地までの走行予定経路の情報が、第2通信部14を介して自動運転制御装置4に送信される。また、第3通信部15は、通信ネットワーク6を介して外部の地図配信サーバー5に接続され、地図配信サーバー5から配信された各種高精度地図データを受信し、該受信した各種高精度地図データを記憶部11に出力する。なお、第1通信部13~第3通信部15の動作は、制御部10により制御される。
【0030】
[制御部の構成]
制御部10は、図2に示すように、機能上、周辺認識部20、自己位置推定部21、候補経路探索部22(経路探索部)、経路選択部23(経路決定部)、レーンデータ先読み部24(地図データ先読み部)及び地図アクセス部25を有する。
【0031】
各機能ブロック間の機能処理上の接続関係は、次の通りである。周辺認識部20は、センサー部12、自己位置推定部21及びレーンデータ先読み部24に接続される。自己位置推定部21は、センサー部12、候補経路探索部22及びレーンデータ先読み部24に接続される。候補経路探索部22は、第1通信部13、経路選択部23及びレーンデータ先読み部24に接続される。経路選択部23は、第2通信部14及び地図アクセス部25に接続される。レーンデータ先読み部24は、地図アクセス部25に接続される。また、地図アクセス部25は、記憶部11内のレーン接続・属性データ記憶部31、レーン境界データ記憶部32、レーン形状データ記憶部33及びレーングループ接続データ記憶部34のそれぞれに接続される。
【0032】
周辺認識部20は、センサー部12内のカメラ(不図示)から入力される自車前方の周辺画像、及び、レーンデータ先読み部24から入力される各種高精度地図データに基づき、自車の前方周辺の構造物や車両の有無、位置等を認識する。そして、周辺認識部20は、自車周辺の構造物や車両の認識結果を自己位置推定部21及びレーンデータ先読み部24に出力する。
【0033】
自己位置推定部21は、周辺認識部20から入力される自車周辺の構造物や車両の認識結果、センサー部12から入力される各種センサー情報、及び、レーンデータ先読み部24から入力される各種高精度地図データに基づき、レーンレベルでの自車位置を推定する。
【0034】
なお、本実施形態では、自己位置推定部21による自車位置の推定アプリケーションとして、2種類のアプリケーションが搭載されている。具体的には、自車前方の周辺画像及び高精度地図データを用いて自車位置を推定するアプリケーションと、高精度地図データを用いて自車位置を推定するアプリケーションとが搭載されている。以下では、前者のアプリケーションを「高精度ロケータ(カメラ認識)」と称し、後者のアプリケーションを「高精度ロケータ(マップマッチング)」と称する。
【0035】
また、本実施形態では、自己位置推定部21による自車位置の推定処理で利用する高精度地図データの種別も、使用する自車位置の推定アプリケーションに応じて変わる。図3は、自車位置の推定アプリケーションの種別と、使用する高精度地図データの種別との関係を示す図であり、使用される高精度地図データは丸印で示される。なお、図3には、候補経路探索部22による後述の候補経路の探索処理、及び、経路選択部23による後述の走行予定経路の決定処理で使用される高精度地図データも合わせて示す(図中の「レーンレベル探索」欄参照)。図中では、候補経路探索部22による後述の候補経路の探索処理で使用される高精度地図データを丸印で示し、経路選択部23による後述の走行予定経路の決定処理で使用される高精度地図データを三角印で示す。
【0036】
高精度ロケータ(カメラ認識)で使用する高精度地図データは、図3に示すように、レーン接続データ、レーン属性データ、レーン境界データ、レーン中心線形状データ、レーン境界形状データ及びレーングループ接続データである。すなわち、高精度ロケータ(カメラ認識)では、記憶部11に格納された全種別の高精度地図データが利用される。一方、高精度ロケータ(マップマッチング)で使用する高精度地図データは、レーン接続データ、レーン属性データ、レーン中心線形状データ及びレーングループ接続データである。すなわち、高精度ロケータ(マップマッチング)で使用する高精度地図データには、レーンの境界に関する高精度地図データは含まれない。
【0037】
そして、自己位置推定部21は、高精度ロケータ(カメラ認識)又は高精度ロケータ(マップマッチング)により推定した自車位置の情報を候補経路探索部22及びレーンデータ先読み部24に出力する。
【0038】
候補経路探索部22は、設定された目的地までの推奨経路になり得る候補(以下、「候補経路」と称する)を探索する。この際、候補経路探索部22は、自己位置推定部21から入力される自車位置、レーンデータ先読み部24から入力される各種高精度地図データ、及び、カーナビ3から入力される目的地の情報(位置情報等)に基づき、複数の候補経路の探索を行う。なお、後述するように、自車が設定済みの走行予定経路から逸脱した際には、候補経路探索部22は、高精度地図データとしてレーングループ接続データのみを使用して、候補経路の探索処理を行う(図3中の「レーンレベル探索」欄の丸印参照)。そして、候補経路探索部22は、探索処理により得られた複数の候補経路の情報を経路選択部23に出力する。
【0039】
経路選択部23は、地図アクセス部25を介して入力されるレーン接続データ及びレーン属性データに基づき(図3中の「レーンレベル探索」欄の三角印参照)、候補経路探索部22から入力された複数の候補経路の中から走行予定経路を選択(決定)する。なお、経路選択部23による走行予定経路の選択処理では、複数の候補経路に対して所定の順序で候補経路をピックアップし、ピックアップされた候補経路のレーン属性データに基づき、当該候補経路が実際に自動走行に適しているか否かを判定する。そして、ピックアップされた候補経路が自動走行に適している経路(走行可能な経路)である場合には、経路選択部23は、ピックアップされた候補経路を走行予定経路として決定する。その後、経路選択部23は、選択された走行予定経路(図中の「確定経路」)に関する情報を、第2通信部14を介して自動運転制御装置4に送信する。
【0040】
また、経路選択部23による走行予定経路の選択処理では、次のような複数種の候補経路のピックアップ順序(選択順序)から、一つの順序が、運転手等により予め設定される。
(1)高精度地図データの読み込み量が少ない順
(2)候補経路の距離の短い順
(3)目的地までの所要時間が短い順
(4)カーナビ3等で設定された最初の走行予定経路の探索条件を考慮した順
【0041】
上記(1)のピックアップ順序では、読み込む地図データの容量は事前には分からないので、新たに読み込むレーングループの数(ノード数)が少ない順に候補経路をピックアップする。上記(2)のピックアップ順序では、レーングループ接続データにレーングループの距離(ノード間距離)の情報を含ませる必要がある。上記(3)のピックアップ順序では、レーングループ接続データに平均速度の情報を含ませるとともに、レーングループ接続データと交通情報とを紐付ける必要がある。また、上記(4)のピックアップ順序では、第1通信部13等を介して取得された、例えば、高速道路利用、到着時刻等のカーナビ3での探索条件に応じた候補経路のピックアップ順序が設定される。ただし、経路選択部23による走行予定経路の選択処理では、レーングループ又はレーンの次のノード(分岐点)までの距離が短くて高精度地図データの読み込みが間に合わない候補経路は除外される。
【0042】
レーンデータ先読み部24は、自車の自動運転支援を円滑に行うために必要な自車前方の走行予定経路及びその周辺経路の複数種の高精度地図データを地図配信サーバー5から先読み(取得)する。具体的には、レーンデータ先読み部24は、タイル状に区画された地図から自車前方の走行予定経路及び/又はその周辺経路のエリアを含むタイル(以下、「地図タイル」と称する)を選択し、その地図タイルに含まれる道路の各種高精度地図データを先読みする。この際、先読みされる高精度地図データの種別は、自車前方の先読み対象地点(所定地点)の条件に応じて変化する。具体的には、例えば、自車位置から先読み対象地点までの走行経路上の距離、先読み対象地点が走行予定経路上の地点であるか否か、走行予定経路からの逸脱可能性(二次経路へのなり易さ)等の条件に応じて、先読みされる高精度地図データの種別が変化する。なお、レーンデータ先読み部24による先読み処理の具体的な内容については、後で図面を参照しながら詳述する。
【0043】
地図アクセス部25は、記憶部11にアクセスして、記憶部11に格納されている各種高精度地図データを取得し、取得した各種高精度地図データをレーンデータ先読み部24及び経路選択部23に出力する。なお、地図アクセス部25からレーンデータ先読み部24には、上述した先読み対象地点の条件に応じた種別の高精度地図データが出力され、地図アクセス部25から経路選択部23には、候補経路のレーン接続データ及びレーン属性データが出力される。なお、上述のように、本実施形態では、経路選択部23はレーン属性データに基づいて走行予定経路を決定するので、地図アクセス部25から経路選択部23に入力される高精度地図データは、候補経路のレーン属性データのみであってもよい。
【0044】
[地図処理装置のハードウェア構成]
本実施形態の地図処理装置2は、演算機能及び通信機能を備えたコンピューター装置等の演算処理装置で構成することができる。図4は、地図処理装置2として適用可能な演算処理装置100のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【0045】
演算処理装置100は、バスライン108に接続されたCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102及びRAM(Random Access Memory)103を備える。また、演算処理装置100は、バスライン108に接続されたネットワークI/F(インターフェース)104、操作部105、表示部106及び不揮発性ストレージ107を備える。なお、図4には示さないが、演算処理装置100は、外部機器との間で各種データ(各種情報)の入出力処理を実行する際に使用される各種インターフェースも備える。さらに、図4には示さないが、演算処理装置100は、図2中のセンサー部12に相当する構成部も備える。
【0046】
CPU101は、地図処理装置2が備える各種処理機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードをROM102からRAM103に読み出して実行する。この際、RAM103には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータなども一時的に書き込まれる。すなわち、図2中の地図処理装置2が備える制御部10は、CPU101に含まれる。
【0047】
ネットワークI/F104は、例えば、NIC(Network Interface Card)等で構成され、接続される各装置との間で、各種データを送受信する。
【0048】
操作部105は、例えば、キーやボタンなどで構成され、オペレーターによって入力された操作内容に応じた操作信号を生成して該操作信号をCPU101に供給する。なお、例えば、上述した経路選択部23による走行予定経路の選択処理での候補経路のピックアップ順序の設定は、操作部105を操作して行うことができる。なお、このような操作はカーナビ3が備える操作部(不図示)を介して行ってもよく、この場合には、地図処理装置2は操作部105を備えない構成となる。
【0049】
表示部106は、例えば、液晶パネルなどで構成され、文字や画像などを画面に表示する。また、表示部106をタッチパネルで構成してもよく、その場合には、表示部106と操作部105とが一体的に構成される。なお、地図処理装置2からの出力情報は、例えばカーナビ3等から出力された各種情報を表示するために設けられた表示部(不図示)で表示されてもよく、この場合には、地図処理装置2は表示部106を備えない構成となる。
【0050】
不揮発性ストレージ107は、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリなどで構成することができる。不揮発性ストレージ107には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、演算処理装置100を地図処理装置2として機能させるためのプログラムが記憶される。また、本実施形態では、不揮発性ストレージ107に上述した各種高精度地図データが格納され、図2中の地図処理装置2が備える記憶部11は、不揮発性ストレージ107に含まれる。なお、地図処理装置2が備える各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報(データ)は、ROM102や不揮発性ストレージ107以外に、例えば、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納されていてもよい。
【0051】
[高精度地図データの先読み機能の概要]
本実施形態では、次の(A)~(C)のような、レーンデータ先読み部24による高精度地図データの先読み機能が設けられている。
(A)先読み対象地点が走行予定経路上の地点である場合、レーンデータ先読み部24は、自車位置から先読み対象地点までの走行経路上の距離に応じて、先読み(取得)する高精度地図データの種別を変える。
(B)先読み対象地点が走行予定経路から分岐可能な周辺経路の地点である場合、レーンデータ先読み部24は、レーングループ接続データのみを先読みする。
(C)走行予定経路から逸脱して走行可能な経路上において、逸脱点から所定距離の範囲内にある地点に対しては、レーンデータ先読み部24は、レーングループ接続データだけでなく、レーン接続データ等の自動運転支援に必要な各種高精度地図データを先読みする。この際、先読みする高精度地図データは、例えば、図3に示す全種別の高精度地図データとしてもよいし、レーンの境界に関する高精度地図データ以外の高精度地図データとしてもよい。
【0052】
なお、本実施形態の地図処理装置2では、上記(A)~(C)の先読み機能を全て備える構成例を説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記(C)の先読み機能(以下、「逸脱予測機能」と称する)は、例えば、地図処理装置2の処理性能、メモリ容量等に応じて設けない構成もあり得る。また、例えば、上記(A)及び(B)の一方の先読み機能を備える構成にしてもよい。上記(A)の先読み機能のみを備える場合、周辺経路上の先読み対象地点で先読みされる高精度地図データの種別も、自車位置から先読み対象地点までの走行経路上の距離に応じて変わる。一方、上記(B)の先読み機能のみを備える場合、走行予定経路上の先読み対象地点では、自車位置からの距離に関係なく、レーングループ接続データだけでなく、レーン接続データ等の自動運転支援に必要な各種高精度地図データが先読みされる。
【0053】
ここで、上記(A)の先読み機能の内容を具体的に説明する。図5は、上記(A)の先読み機能(先読み対象地点が走行予定経路の地点である場合)において、レーンデータ先読み部24で先読みされる高精度地図データの種別と、自車位置から先読み対象地点までの走行経路上の距離との関係性を示す模式図である。なお、図5では、片側2車線の道路を例示する。それゆえ、図5に示す例では、4本のレーンを集約して一つのレーングループが構成される。
【0054】
図5に示す例では、一つのレーングループエリア40、すなわち、一つのレーングループ区間を略矩形状のブロックで表す。レーングループ接続データ41は、白抜き丸印のノード(分岐点)で表され、各レーングループエリア40の進入地点及び退出地点にそれぞれ設けられる。レーン接続データ42は、黒丸印のノード(分岐点)で表され、各レーングループエリア40内の対応するレーンの進入地点及び退出地点にそれぞれ設けられる。なお、レーンの属性・形状データ43(レーン属性データ及びレーン中心線形状データ)は、レーン接続データ42のノード間を繋ぐ実線(リンク)で表される。また、レーンの境界に関する地図データ44(レーン境界データ及びレーン境界形状データ)は、白抜き長方形を道路の延在方向に沿って所定間隔で配置した模様(白線パターン)で表される。なお、レーンの境界に関する地図データ44には、図示する白線パターン以外に、例えば、側壁との境界を示す線や、側壁そのもののデータなども含まれる。
【0055】
先読み対象地点が自車位置から近距離(例えば前方数km等)にある地点51であれば、図5に示すように、レーンデータ先読み部24は、高精度ロケータ(カメラ認識)による自車位置の推定処理で利用される各種高精度地図データを取得する。具体的には、近距離の地点51に対する先読みでは、レーンデータ先読み部24は、レーングループ接続データ41、レーン接続データ42、レーンの属性・形状データ43及びレーンの境界に関する地図データ44を先読み(取得)する。すなわち、近距離の地点51に対する先読みでは、レーンデータ先読み部24は、図3に示す全種別の高精度地図データを取得する。また、近距離の地点51に対する先読みでは、レーンデータ先読み部24は、センサー部12内のカメラで撮影された自車前方の周辺画像も取得し、これにより、自車の前方周辺に存在する物理的構造物45や車両に関する情報が取得される。
【0056】
なお、図5には、近距離の地点51に対する先読みにおいて、自車の走行方向の2車線分の高精度地図データだけでなく、反対の走行方向の2車線分の高精度地図データをレーンデータ先読み部24で先読み(取得)する例を示すが、本発明はこれに限定されない。近距離の地点51に対する先読みにおいて、例えば、自車前方の周辺に物理的構造物45がある場合には、レーンデータ先読み部24は、自車から見える範囲(例えば、周辺画像に写る範囲)のみの高精度地図データを先読みするようにしてもよい。例えば、自車の走行方向の2車線と反対車線との間に物理的構造物45として中央分離帯が設けられ、自車から見て、反対車線が見えない場合には、レーンデータ先読み部24は、自車の走行方向の2車線分の高精度地図データだけを先読みしてもよい。この場合には、反対車線の高精度地図データを読み込む必要が無いので、取得する高精度地図データの容量をより低減することができる。
【0057】
先読み対象地点が自車位置から中距離にある地点52であれば、レーンデータ先読み部24は、高精度ロケータ(マップマッチング)による自車位置の推定処理で利用される各種高精度地図データを取得する。具体的には、中距離の地点52に対する先読みでは、レーンデータ先読み部24は、レーングループ接続データ41、レーン接続データ42及びレーンの属性・形状データ43を先読み(取得)する。なお、中距離の地点52に対する先読みでは、レーンデータ先読み部24は、自車の走行方向の2車線分の高精度地図データのみを取得する。
【0058】
また、先読み対象地点が自車位置から遠距離である地点53であれば、レーンデータ先読み部24は、レーングループ接続データ41のみを先読み(取得)する。そして、先読み対象地点が、地点53よりさらに遠くなる地点54であれば、レーンデータ先読み部24は、高精度地図データを先読み(取得)しない。なお、上述した「近距離」、「中距離」及び「遠距離」の境界値や、高精度地図データの先読みを行わない距離の境界値など(後述の図7中の第1の所定距離D1~第3の所定距離D3)は、例えば、走行経路の種別(一般道、高速道等)、地図処理装置2の処理性能、メモリ容量等に応じて、適宜設定することができる。
【0059】
[地図処理装置による高精度地図データの先読み処理]
次に、地図処理装置2のレーンデータ先読み部24により実行される高精度地図データの先読み処理の処理フローを説明する。なお、以下に説明するレーンデータ先読み部24による先読み処理は、図4中のCPU101により制御される。
【0060】
また、以下に説明するレーンデータ先読み部24による先読み処理では、先読み対象地点が走行予定経路上である場合及び走行予定経路の周辺経路である場合の先読み処理、すなわち、上記(A)及び(B)の先読み機能について説明する。また、走行予定経路からの逸脱可能性を考慮した上記(C)の逸脱予測機能については、その概要を下記処理フローの説明の中で適宜説明する。
【0061】
<高精度地図データの先読み処理全体の処理フロー>
最初に、図6を参照して、レーンデータ先読み部24により実行される高精度地図データの先読み処理全体の処理フローを説明する。図6は、レーンデータ先読み部24により実行される高精度地図データの先読み処理全体の処理手順を示すフローチャートである。なお、図6に示す高精度地図データの先読み処理全体の処理は、地図処理装置2が起動(電源オン)されれば開始される。
【0062】
まず、レーンデータ先読み部24は、先読み処理を行うための空き時間があるか否かを判定する(S1)。この処理では、レーンデータ先読み部24は、CPU101の現在の処理負荷に基づいて、CPU101に地図データの先読み処理を実施可能な時間があるか否か、すなわち、CPU101の処理負荷に余裕がある否かを判定する。例えば、自車が走行予定経路から逸脱して、目的地までの新たな経路の探索処理等(例えば、後述の図8図11に記載の動作)が行われている場合には、経路の探索処理に対するCPU101の処理負荷が高くなるので、先読み処理を行う余裕がなくなる。それゆえ、このような状況では、先読み処理を行うための空き時間は無く、S1の判定処理はNO判定となり、後述のS3以降の処理(先読み処理)は行われない。
【0063】
S1において、レーンデータ先読み部24が、先読み処理を行うための空き時間がないと判定した場合(S1がNO判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、一定時間の待機処理を行う(S2)。そして、S2の処理後、レーンデータ先読み部24は、処理をS1の処理に戻し、S1以降の処理を繰り返す。
【0064】
一方、S1において、レーンデータ先読み部24が、先読み処理を行うための空き時間があると判定した場合(S1がYES判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、走行予定経路上の先読み処理を行うか否かを判定する(S3)。この処理では、この処理時点で、目的地までの走行予定経路上において先読み処理が行われていない地点が残っている場合には、レーンデータ先読み部24は、走行予定経路上の先読み処理を行うと判定する(YES判定)。一方、この処理時点で、目的地までの走行予定経路上において先読み処理が行われていない地点が残っていない場合には、レーンデータ先読み部24は、走行予定経路上の先読み処理を行わないと判定する(NO判定)。
【0065】
S3において、レーンデータ先読み部24が、走行予定経路上の先読み処理を行うと判定した場合(S3がYES判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、走行予定経路上における高精度地図データの未取得地点を含む地図タイルを取得する(S4)。すなわち、この処理では、レーンデータ先読み部24は、走行予定経路上において先読み処理が行われていない先読み対象地点を含む地図タイルを取得する。
【0066】
次いで、レーンデータ先読み部24は、高精度地図データの先読み実行処理を行う(S5)。この処理では、レーンデータ先読み部24は、S4の処理で取得した地図タイルに含まれる走行予定経路上の各先読み対象地点の高精度地図データを地図配信サーバー5から先読み(取得)する。この際、図5で説明したように、レーンデータ先読み部24で先読みする高精度地図データの種別は、自車位置から先読み対象地点までの走行経路上の距離により異なる。なお、S5の地図データの先読み実行処理の詳細については、後述の図7を参照しながら後で説明する。
【0067】
一方、S3において、レーンデータ先読み部24が、走行予定経路上の先読み処理を行わないと判定した場合(S3がNO判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、走行予定経路の周辺経路上における高精度地図データの未取得地点を含む地図タイルを取得する(S6)。すなわち、この処理では、レーンデータ先読み部24は、走行予定経路の周辺経路上において先読み処理が行われていない先読み対象地点を含む地図タイルを取得する。この際、レーンデータ先読み部24は、自車位置から最も近い地図タイルを取得する。
【0068】
次いで、レーンデータ先読み部24は、レーングループ接続データの先読み処理を行う(S7)。この処理では、レーンデータ先読み部24は、S6の処理で取得した地図タイルに含まれる周辺経路上の各先読み対象地点のレーングループ接続データを地図配信サーバー5から先読み(取得)する。なお、逸脱予測機能を備える場合には、S7の処理において、逸脱点から所定距離の範囲内にある周辺経路上の地点に対して、レーングループ接続データだけでなく、レーン接続データ等の自動運転支援に必要な各種高精度地図データも先読み(取得)される。
【0069】
S5又はS7の処理後、レーンデータ先読み部24は、高精度地図データの先読み処理を継続するか否かを判定する(S8)。この処理は、レーンデータ先読み部24は、地図処理装置2の電源がオフされたか否かを判定し、地図処理装置2の電源がオフされていなければ、高精度地図データの先読み処理を継続するので、S8の判定処理はYES判定となる。一方、地図処理装置2の電源がオフされれば、S7の判定処理はNO判定となる。
【0070】
S8において、レーンデータ先読み部24が、高精度地図データの先読み処理を継続すると判定した場合(S8がYES判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、処理をS1の処理に戻し、S1以降の処理を繰り返す。一方、S8において、レーンデータ先読み部24が、高精度地図データの先読み処理を継続しないと判定した場合(S8がNO判定である場合:電源がオフされた場合)、レーンデータ先読み部24は、高精度地図データの先読み処理を終了する。
【0071】
<高精度地図データの先読み実行処理(上記S5の処理)の処理フロー>
次に、図7を参照して、図6に示す高精度地図データの先読み処理全体の処理フロー中のS5で行う先読み実行処理の処理フローについて説明する。図7は、上記S5で行う高精度地図データの先読み実行処理の手順を示すフローチャートである。
【0072】
まず、レーンデータ先読み部24は、取得した地図タイルに含まれる走行予定経路上の所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第1の所定距離D1未満であるか否かを判定する(S11)。なお、ここでは、「所定の先読み対象地点の自車位置からの距離d」は、自車位置から所定の先読み対象地点までの走行予定経路上における距離である。また、ここでいう「第1の所定距離D1」は、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが近距離であるか否かを判定するための閾値である。
【0073】
S11において、レーンデータ先読み部24が、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第1の所定距離D1未満であると判定した場合(S11がYES判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、後述のS14の処理を行う。一方、S11において、レーンデータ先読み部24が、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第1の所定距離D1未満でないと判定した場合(S11がNO判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第2の所定距離D2未満であるか否かを判定する(S12)。なお、ここでいう「第2の所定距離D2」は、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが中距離であるか否かを判定するための閾値である。
【0074】
S12において、レーンデータ先読み部24が、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第2の所定距離D2未満であると判定した場合(S12がYES判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、後述のS15の処理を行う。一方、S12において、レーンデータ先読み部24が、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第2の所定距離D2未満でないと判定した場合(S12がNO判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第3の所定距離D3未満であるか否かを判定する(S13)。なお、ここでいう「第3の所定距離D3」は、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが遠距離であるか否かを判定するための閾値である。
【0075】
S13において、レーンデータ先読み部24が、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第3の所定距離D3未満であると判定した場合(S13がYES判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、後述のS16の処理を行う。一方、S13において、レーンデータ先読み部24が、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが第3の所定距離D3未満でないと判定した場合(S13がNO判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、後述のS17の処理を行う。
【0076】
ここで、再度、S11の処理の説明に戻って、S11がYES判定である場合、すなわち、所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが近距離である場合、レーンデータ先読み部24は、レーン境界・境界形状データの先読み処理を行う(S14)。具体的には、レーンデータ先読み部24は、所定の先読み対象地点のレーン境界データ及びレーン境界形状データを先読み(取得)する。
【0077】
S14の処理後、又は、S12がYES判定である場合(所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが中距離である場合)、レーンデータ先読み部24は、レーン接続・属性・中心線形状データの先読み処理を行う(S15)。具体的には、レーンデータ先読み部24は、所定の先読み対象地点のレーン接続データ、レーン属性データ及びレーン中心線形状データを先読み(取得)する。
【0078】
S15の処理後、又は、S13がYES判定である場合(所定の先読み対象地点の自車位置からの距離dが遠距離である場合)、レーンデータ先読み部24は、所定の先読み対象地点のレーングループ接続データの先読み処理を行う(S16)。
【0079】
S16の処理後、又は、S13がNO判定である場合、レーンデータ先読み部24は、取得した地図タイルに含まれる全ての先読み対象地点を選択したか否かを判定する(S17)。
【0080】
S17において、レーンデータ先読み部24が、全ての先読み対象地点を選択していないと判定した場合(S17がNO判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、処理をS11の処理に戻し、S11以降の処理を繰り返す。この際、レーンデータ先読み部24は、先読み処理が行われていない先読み対象地点を新たに所定の先読み対象地点として選択し、S11以降の処理を繰り返す。
【0081】
一方、S17において、レーンデータ先読み部24が、全ての先読み対象地点を選択したと判定した場合(S17がYES判定である場合)、レーンデータ先読み部24は、先読み実行処理を終了し、処理を先読み処理(図6参照)中のS8に移す。
【0082】
上述のように、レーンデータ先読み部24による走行予定経路上の先読み実行処理では、先読み対象地点の自車位置からの距離dが近距離(d<D1:所定範囲内の距離)であれば、上記S14~S16の先読み処理が行われ、全種別の高精度地図データが先読みされる。走行予定経路上の先読み実行処理では、先読み対象地点の自車位置からの距離dが中距離(D1≦d<D2)であれば、上記S15及びS16の先読み処理が行われ、レーンの境界に関するデータ以外の高精度地図データが先読みされる。また、走行予定経路上の先読み実行処理では、先読み対象地点の自車位置からの距離dが遠距離(D2≦d<D3:特定範囲内の距離)であれば、上記S16の先読み処理が行われ、レーングループ接続データのみが先読みされる。なお、上述した本実施形態の先読み実行処理では、走行予定経路上であっても、先読み対象地点の自車位置からの距離dが第3の所定距離D3以上であれば、上記S14~S16の先読み処理は行われず、高精度地図データを先読み(取得)しない。
【0083】
[地図処理装置によるルート逸脱発生時のルート変更動作]
次に、本実施形態の地図処理装置2において、自車が、走行予定経路から逸脱した際に行われる目的地までのルート(走行予定経路)の変更動作について説明する。なお、ルート逸脱時のルートの変更動作は、地図処理装置2内の候補経路探索部22及び経路選択部23により行われ、その処理動作は、図4中のCPU101により制御される。
【0084】
<第1のルート変更動作例>
図8は、自車が一般道から高速道に入る際に、ルート逸脱が発生した場合の状況、及び、当該状況発生時に地図処理装置2により行われた第1のルート変更動作の概要を示す図である。第1のルート変更動作例では、次のようなルート逸脱状況が発生した場合を考える。
【0085】
まず、予めカーナビ3により設定された自動運転中の自車の走行予定経路(以下、「元ルートRo」と称する)が、一般道から高速道への進入地点INaから高速道との合流地点Aに向かうルート(図中の実線矢印)であるとする。また、自動運転中の自車が進入地点INaに到達前に、運転手が、一般道に設けられた高速道の混雑状況を表示する表示器を見て、又は、カーナビ3の誘導音声を聞いて、高速道において合流地点Aから次の合流地点Bまでの区間が渋滞していることを把握したとする。そして、運転手が、進入地点INaで右折する元ルートRoが良くないと判断し、急遽ステアリングをとって(手動運転に切り替えて)、進入地点INaを右折せずに直進した場合を考える。このようなルート逸脱が発生した場合、ルート逸脱後、地図処理装置2は、先読み済みのレーングループ接続データを用いて目的地までの新たな走行予定経路(以下、「新ルートRn」と称する)を探索する。そして、図8に示す例では、ルート逸脱後、進入地点INbから高速道との合流地点Bに向かう高速道への復帰ルート(図中の破線矢印)が、新ルートRnとして決定される。
【0086】
ここで、図9を参照して、図8に示すルート逸脱状況が発生した際に地図処理装置2により行われる第1のルート変更動作、すなわち、高速道へのルート復帰動作の内容をより詳細に説明する。図9は、図8に示すルート逸脱状況が発生した際に地図処理装置2により行われるルート変更動作の流れ(状況)と、ルート変更動作の各状況において、先読み済みの高精度地図データ及び取得される高精度地図データとの関係を示す図である。
【0087】
なお、図9では、図5と同様に、一つのレーングループエリアを略矩形状のブロックで表し、レーングループ接続データを白抜き丸印のノード(分岐点)で表し、レーン接続データを黒丸印のノードで表す。また、図9では、レーン属性データ及びレーン中心線形状データを黒丸印のノード間を繋ぐリンク(実線)で表す。また、図9では、説明を簡略化するため、レーンの境界に関する地図データ(レーン境界データ及びレーン境界形状データ)の図示は省略する。さらに、図9では、説明を簡略化するため、レーン接続データ(黒丸印のノード)が取得(先読み)されているレーングループエリアでは、取得されているレーングループ接続データ(白抜き丸印のノード)の図示を省略する。なお、図9に記載の各レーングループエリアは、自車から中距離(図5参照)までの範囲に存在するものとする。
【0088】
図9中の状況(a1)は、自車のルート逸脱前の状況である。それゆえ、この状況では、カーナビ3により予め設定された元ルートRoに沿って存在する各レーングループエリアにおいて、少なくとも、レーングループ接続データ、レーン接続データ、レーン属性データ及びレーン中心線形状データが先読み(取得)されている。なお、自車から近距離に存在するレーングループエリアでは、さらに、レーン境界データ及びレーン境界形状データ、並びに、センサー部12内のカメラで撮影された自車前方の周辺画像も取得されている。
【0089】
また、状況(a1)では、元ルートRoの周辺経路上のレーングループエリアでは、主に、レーングループ接続データのみが先読み(取得)されている(図中の白抜き丸印のノード参照)。ただし、高速道への進入地点INaでは元ルートRoとは別のルートに分岐する。それゆえ、状況(a1)では、当該別のルートへの自車の逸脱可能性を考慮して、進入地点INaを含むレーングループエリアから当該別のルートに沿って存在するいくつかのレーングループエリアにおいて、さらに、レーン接続データ、レーン属性データ及びレーン中心線形状データ等が先読みされている(図9中の「逸脱予測」参照)。
【0090】
状況(a1)の後、高速道の渋滞状況を鑑みて、自車が進入地点INaを右折せずに直進(逸脱)した場合の状況が、図9中の状況(b1)である。この場合、自車の地図処理装置2(候補経路探索部22)では、逸脱後のルート前方の各レーングループエリアで先読み済みのレーングループ接続データを用いて、目的地までの新ルートRnの探索処理が行われる。そして、状況(b1)では、この探索処理により、進入地点INbから合流地点Bに向かう高速道への復帰ルート(候補経路Rc)を含む複数のルートが新ルートRnの候補経路として得られる。
【0091】
状況(b1)の後、自車の地図処理装置2(経路選択部23)は、高精度地図データの読み込み量が少ない順(新たに読み込むノード数が少ない順)に候補経路を選択して、当該候補経路が自車の自動運転走行に適しているか否かを判定する。すなわち、経路選択部23は、高速道に早く復帰可能な順に候補経路を選択して、当該候補経路が自動運転走行に適しているか否かを判定する。それゆえ、図9に示す例では、地図処理装置2(経路選択部23)は、まず、候補経路Rcに沿って存在する各レーングループエリアのレーン接続データ及びレーン属性データを取得する。この状況が、図9中の状況(c1)である。それゆえ、状況(c1)では、進入地点INb及び合流地点B間の各レーングループエリアにおける取得データの表示態様が、黒丸印のノードとノード間のリンクとにより表される。
【0092】
状況(c1)では、地図処理装置2(経路選択部23)は、候補経路Rcに沿って存在する各レーングループエリアのレーン属性データを参照して、候補経路Rcが実際に自車の自動運転走行に適しているか否か(走行可能であるか否か)を判定する。そして、図9に示す例では、候補経路Rcが自動運転走行に適していると判断され、地図処理装置2(経路選択部23)は、候補経路Rcを新ルートRnとして決定する。その後、地図処理装置2は、新ルートRn上において、自車に近い先読み対象地点から順次、その他の高精度地図データを取得する。
【0093】
図8及び図9に示すルート逸脱の発生時には、上述のようにして、地図処理装置2によりルート変更動作が行われる。なお、上記第1のルート変更動作例において、自車の進行に伴い、使用済み又は未使用となる各レーングループエリアの高精度地図データは、適宜削除(破棄)される。また、上記第1のルート変更動作例では、逸脱前の元ルートRoがカーナビ3で設定されたものである場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、逸脱前の元ルートRoが地図処理装置2(制御部10)により設定された場合であっても、上記第1のルート変更動作例と同様にして、新ルートRnが決定される。
【0094】
<第2のルート変更動作例>
図10は、自車が一般道から高速道に入る際に、ルート逸脱が発生した場合の状況、及び、当該状況発生時に地図処理装置2により行われた第2のルート変更動作の概要を示す図である。
【0095】
図10に示すルート逸脱の発生状況は、図8で説明したそれと同様であるので、ここでは、その説明を省略する。そして、図10に示す例では、ルート逸脱後、進入地点INcから高速道との合流地点Cに向かう高速道への復帰ルートが、新ルートRnとして決定される例を示す。なお、図10に示す例では、進入地点INaと進入地点INcとの間に存在する進入地点INbから高速道との合流地点Bに向かう高速道への復帰ルートも候補経路Rc1となるが、この候補経路Rc1は走行不可である例を示す。
【0096】
ここで、図11を参照して、図10に示すルート逸脱状況が発生した際に地図処理装置2により行われる第2のルート変更動作、すなわち、高速道へのルート復帰動作の内容をより詳細に説明する。図11は、図10に示すルート逸脱状況が発生した際に地図処理装置2により行われるルート変更動作の流れ(状況)と、ルート変更動作の各状況において、先読み済みの高精度地図データ及び取得される高精度地図データとの関係を示す図である。なお、図11に示すレーングループエリア及び各種高精度地図データの表示態様は、図9で説明したそれらの表示態様と同様であり、図11に記載の各レーングループエリアも、自車から中距離(図5参照)までの範囲に存在するものとする。
【0097】
図11中の状況(a2)は、自車のルート逸脱前の状況である。それゆえ、この状況では、カーナビ3により予め設定された元ルートRoに沿って存在する各レーングループエリアにおいて、少なくとも、レーングループ接続データ、レーン接続データ、レーン属性データ及びレーン中心線形状データが先読み(取得)されている。なお、自車から近距離に存在するレーングループエリアでは、さらに、レーン境界データ及びレーン境界形状データ、並びに、センサー部12内のカメラで撮影された自車前方の周辺画像も取得されている。
【0098】
また、状況(a2)では、元ルートRoの周辺経路上のレーングループエリアでは、主に、レーングループ接続データのみが先読み(取得)されている(図中の白抜き丸印のノード参照)。ただし、高速道への進入地点INaでは元ルートRoとは別のルートに分岐する。それゆえ、状況(a2)では、当該別のルートへの自車の逸脱可能性を考慮して、進入地点INaを含むレーングループエリアから当該別のルートに沿って存在するいくつかのレーングループエリアにおいて、さらに、レーン接続データ、レーン属性データ及びレーン中心線形状データ等が先読みされている(図11中の「逸脱予測」参照)。
【0099】
状況(a2)の後、高速道の渋滞状況を鑑みて、自車が進入地点INaを右折せずに直進(逸脱)した場合の状況が、図11中の状況(b2)である。この場合、自車の地図処理装置2(候補経路探索部22)では、逸脱後のルート前方の各レーングループエリアで先読み済みのレーングループ接続データを用いて、目的地までの新ルートRnの探索処理が行われる。そして、状況(b2)では、この探索処理により、進入地点INbから合流地点Bに向かう高速道への復帰ルート(候補経路Rc1)、及び、進入地点INcから合流地点Cに向かう高速道への復帰ルート(候補経路Rc2)を含む複数のルートが新ルートRnの候補経路として得られる。
【0100】
状況(b2)の後、自車の地図処理装置2(経路選択部23)は、高精度地図データの読み込み量が少ない順(新たに読み込むノード数が少ない順)に候補経路を選択して、当該候補経路が自車の自動運転走行に適しているか否かを判定する。すなわち、経路選択部23は、高速道に早く復帰可能な順に候補経路を選択して、当該候補経路が自動運転走行に適しているか否かを判定する。それゆえ、図11に示す例では、地図処理装置2(経路選択部23)は、まず、候補経路Rc1に沿って存在する各レーングループエリアのレーン接続データ及びレーン属性データを取得する。この状況が、図11中の状況(c2)である。
【0101】
状況(c2)では、地図処理装置2(経路選択部23)は、候補経路Rc1に沿って存在する各レーングループエリアのレーン属性データを参照して、候補経路Rc1が実際に自動運転走行に適しているか否か(走行可能であるか否か)を判定する。図11に示す例では、進入地点INbから合流地点Bまでの走行区間の途中で、例えば、工事中、渋滞、レーンの曲率が閾値を超えている等の原因により、候補経路Rc1が自車の自動運転走行に適していない場合を考える。この場合、状況(c2)において、地図処理装置2(経路選択部23)は、候補経路Rc1は走行不可であり、新ルートRnとして決定できないと判定する(図中の白抜きバツ印参照)。
【0102】
状況(c2)の後、自車の地図処理装置2(経路選択部23)は、候補経路Rc2に沿って存在する各レーングループエリアのレーン接続データ及びレーン属性データを取得する。この状況が、図11中の状況(d2)である。そして、状況(d2)では、地図処理装置2(経路選択部23)は、候補経路Rc2に沿って存在する各レーングループエリアのレーン属性データを参照して、候補経路Rc2が実際に自車の自動運転走行に適しているか否かを判定する。図11に示す例では、候補経路Rc2が実際に自動運転走行に適している場合を考える。この場合、状況(d2)において、地図処理装置2(経路選択部23)は、候補経路Rc2を新ルートRnとして決定する。その後、地図処理装置2は、新ルートRn上において、自車に近い先読み対象地点から順次、その他の高精度地図データを取得する。
【0103】
図10及び図11に示すルート逸脱の発生時には、上述のようにして、地図処理装置2によりルート変更動作が行われる。なお、上記第2のルート変更動作例においても、自車の進行に伴い、使用済み又は未使用となる各レーングループエリアの高精度地図データは、適宜削除(破棄)される。また、上記第2のルート変更動作例では、逸脱前の元ルートRoがカーナビ3で設定されたものである場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、逸脱前の元ルートRoが地図処理装置2(制御部10)により設定された場合であっても、上記第2のルート変更動作例と同様にして、新ルートRnが決定される。
【0104】
[各種効果]
上述のように、本実施形態の地図処理装置2では、地図配信サーバー5から高精度地図データを先読み(取得)する際、走行予定経路上では、自車位置から先読み対象地点までの距離に応じて先読み(取得)する地高精度図データの種別を変える。例えば、上述のように、自車位置から先読み対象地点までの走行経路上の距離が近距離であれば、全種別の高精度地図データを先読みし、遠距離であれば、レーングループ接続データのみを先読みする。それゆえ、本実施形態の地図処理装置2では、装置内で保持する高精度地図データの容量を低減することができ、これにより、装置内で地図データを保持するストレージの容量を削減し、コストを下げることができる。また、本実施形態では、自車位置から近距離に存在する先読み対象地点では、全種別の高精度地図データ、すなわち、自動運転等の支援に必要な各種高精度地図データが先読みされているので、地図処理装置2の性能が維持される。以上のことから、本実施形態の地図処理装置2では、装置内で地図データを保持するストレージの容量削減と、装置の性能維持との両立を図ることができる。
【0105】
本実施形態の地図処理装置2では、地図配信サーバー5から地図データを先読み(取得)する際、先読み対象地点が走行予定経路上でない場合には、当該先読み対象地点のレーングループ接続データのみを先読みする。それゆえ、本実施形態では、装置内で保持する高精度地図データの容量をより低減することができる。
【0106】
本実施形態の地図処理装置2では、自車から近距離に存在する地点に対しては、自車前方の周辺画像を取得し、当該周辺画像に写らないレーンについては高精度地図データを取得しない。それゆえ、本実施形態では、装置内で保持する高精度地図データの容量をより一層低減することができる。
【0107】
本実施形態の地図処理装置2は、上述のように、ルートの逸脱予測機能を備える。具体的には、走行予定経路上に逸脱可能性のある分岐点がある場合、逸脱可能性のある経路上において、当該分岐点から所定距離の範囲内になる地点(分岐点以降の一部の地点)に対して、レーングループ接続データだけでなく、例えばレーン接続データ等の自動運転等の支援に必要な各種高精度地図データも先読みする。それゆえ、本実施形態では、走行ルートが走行予定経路から逸脱しても、決定された新ルートの一部においてレーン接続データ等の各種高精度地図データが先読みされているので、新ルートでの自動運転への復帰をより迅速に行うことができる。
【0108】
本実施形態の地図処理装置2では、自動運転中に自車が走行予定経路から逸脱した際には、逸脱後の経路で先読みされているレーングループ接続データを用いて新たな走行予定経路の探索を行う。それゆえ、本実施形態では、自動運転中に自車が走行予定経路から逸脱しても、新たな走行予定経路を迅速に決定することができるとともに、新たな走行予定経路での自動運転への早期復帰も可能になる。
【0109】
また、本実施形態の地図処理装置2では、ルート逸脱時の候補経路の探索処理で複数の候補経路が求められた場合、各候補経路を予め設定された所定の順序でピックアップして、ピックアップされた候補経路が走行可能であるか否かを判定する。この際、本実施形態では、設定可能な候補経路のピックアップ順序の基準として複数種の基準が設けられている。具体的には、上述のように、高精度地図データの読み込み量が少ない順序、候補経路の距離の短い順序、目的地までの所要時間が短い順序、カーナビ3等で設定された最初の走行予定経路の探索条件を考慮した順序等のピックアップ順序の基準が設けられている。そして、本実施形態では、これらの基準の中から、運転手等により所定の基準を選択することができる。それゆえ、このような機能を設けた場合、利用者のニーズや優先度に応じた新ルートの決定処理を行うことができる。
【0110】
[各種変形例]
上記実施形態では、地図処理装置2とは別個にカーナビ3を設ける構成例を説明したが、本発明はこれに限定されない。地図処理装置2の上述した各種機能を、カーナビ3が備えていてもよい。この場合には、カーナビ3が地図処理装置2として機能する。また、カーナビ3の機能が地図処理装置2に設けられていてもよく、この場合には、カーナビ3を設ける必要が無い。また、同様に、地図処理装置2の上述した各種機能を、自動運転制御装置4が備えていてもよい。
【0111】
上記実施形態では、処理対象の高精度地図データとして、レーン接続データ、レーン属性データ、レーン境界データ、レーン中心線形状データ、レーン境界形状データ及びレーングループ接続データを別個に設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されない。これらの高精度地図データのうち、一部の高精度地図データが一つの高精度地図データとしてまとめられていてもよいし、一つの高精度地図データが複数の高精度地図データに細かく分けられていてもよい。また、処理対象の高精度地図データとして、例えば、上述した各種高精度地図データと同様の情報を含む類似の地図データや、上述した各種高精度地図データを導出可能な関連データを用いてもよい。
【0112】
上記実施形態では、自動運転機能を備えた車に地図処理装置2を設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されず、自動運転機能を備えない車にも、上記実施形態の地図処理装置2を適用可能である。
【0113】
また、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置の構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得る。
【符号の説明】
【0114】
1…車載システム、2…地図処理装置、3…カーナビ、4…自動運転制御装置、5…地図配信サーバー、10…制御部、11…記憶部、12…センサー部、20…周辺認識部、21…自己位置推定部、22…候補経路探索部、23…経路選択部、24…レーンデータ先読み部、25…地図アクセス部、31…レーン接続・属性データ記憶部、32…レーン境界データ記憶部、33…レーン形状データ記憶部、34…レーングループ接続データ記憶部、40…レーングループエリア、41…レーングループ接続データ、42…レーン接続データ、43…レーン属性データ,レーン中心線形状データ、44…レーン境界データ,レーン境界形状データ、45…物理的構造物、51,52,53,54…先読み対象地点
図1
図2
図3
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図10
図11