(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179627
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】開口部装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/10 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
E06B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098613
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】西田 健
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036JA06
2E036JB02
2E036JC02
2E036KA06
2E036KB01
2E036LA01
(57)【要約】
【課題】上枠の上方に換気枠を有する開口部装置に対して、強度を向上させる。
【解決手段】上枠と、換気枠を備え、上枠は、室外側の外周面に受材が設けてあり、換気枠は、室外側に受材に対して下方から係止する係止部を有するとともに、室外側の内周面に受材に上方から当接もしくは近接する変形防止部材が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と、換気枠を備え、
上枠は、室外側の外周面に受材が設けてあり、
換気枠は、室外側に受け材に対して下方から係止する係止部を有するとともに、室外側の内周面に受け材に上方から当接もしくは近接する引き抜き防止部材が設けられている開口部装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部に配置される開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に配置され、上枠の上方に換気枠を有する開口部装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の開口部に配置され、上枠の上方に換気枠を有する開口部装置に対して、強度を向上させることが求められている。
【0005】
本発明は、建物の開口部に配置され、上枠の上方に換気枠を有する開口部装置に対して、強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、上枠と、換気枠を備え、上枠は、室外側の外周面に受材が設けてあり、換気枠は、室外側に受材に対して下方から係止する係止部を有するとともに、室外側の内周面に受材に上方から当接もしくは近接する変形防止部材が設けられている開口部装置である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、建物の開口部に配置され、上枠の上方に換気枠を有する開口部装置に対して、強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】(a)は、一実施形態の開口部装置の上枠部分の縦断面図であり、(b)は、(a)の一部拡大縦断面図である。
【
図5】一実施形態の開口部装置の上枠部分の分解縦断面図であり、(a)は換気枠の上部材の図であり、(b)は換気枠の連結部材の図であり、(c)は換気枠の下部材の図であり、(d)は上枠の図である。
【
図6】(a)、(b)は、一実施形態の開口部装置の上枠部分の施工方法を説明するための図である。
【
図7】(a)、(b)は、一実施形態の開口部装置の上枠部分の施工方法を説明するための図である。
【
図8】他の実施形態の開口部装置の上枠部分の縦断面図である。
【
図9】実施形態の開口部装置の効果を説明するための図であり、上枠付近の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態の開口部装置について、建物の開口部等に配置され、内、外障子2,3を開閉自在に支持してなり、上方に換気枠を備える引違い窓の例を用いて、図面を参考にして説明する。
【0010】
(全体の構成)
本実施形態の引違い窓は、
図1に示すように、上枠11,下枠12及び左、右縦枠13,14を四周に組んでなる枠体1と、上框21,31、下框22,32及び左、右縦框23,33,24,34を四周に組んだ框体の内周に複層ガラス等のパネル体25,35が嵌め込まれてなる内、外障子2,3を備えており、上枠11の外周側に換気枠5が取付けられている。
【0011】
枠体1を構成する上枠11は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2に示すように、内周側に内障子2を案内する室内側案内溝11xと外障子3を案内する室外側案内溝11yを有しており、室外側案内溝11yの内周面に外上レール11zが設けられている。
【0012】
上枠11は、外周側に換気枠5が取り付けられている。換気枠5は、建物の開口部にアンカー(図示はない)等によって固定されており、上枠11は、換気枠5を介して建物の開口部の上方の内周面に支持されている。
【0013】
引き違い窓は、建物の開口部に固定された換気枠5及び上枠11の室内側に隣接して、換気枠5の室内側開口の開閉を行うための換気ユニット6が設けられており、上枠11の上方に換気枠5及び換気ユニット6を介して換気通路Wが形成されている。
【0014】
枠体1を構成する下枠12は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2に示すように、内周側に内、外下レール12a,12bが設けられており、内、外障子2,3が左右方向に移動自在に支持されている。
【0015】
枠体1を構成する左、右縦枠13,14は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図3に示すように、内、外障子2,3の閉鎖時に、左縦枠13の室外側の内周に外障子3の左縦框33が当接し、右縦枠14の室内側の内周に内障子2の右縦框24が当接する。
【0016】
内障子2は、
図2,3に示すように、上框21、下框22及び左、右縦框23,24を四周に組んだ框体の内周に複層ガラス等のパネル体25が嵌め込まれて形成されている。
内障子2は、上框21が上枠11の室内側案内溝11xに飲み込まれて案内されるとともに、下框22に設けられた戸車29が下枠12の内下レール12aに案内されて、左右方向に移動自在に配置されている。
【0017】
外障子3は、
図2,3に示すように、上框31、下框32及び左、右縦框33,34を四周に組んだ框体の内周に複層ガラス等のパネル体35が嵌め込まれて形成されている。
外障子3は、上框31が上枠11の外上レール11zに案内されるとともに、下框32に設けられた戸車39が下枠12の外下レール12bに案内されて、左右方向に移動自在に配置されている。
【0018】
以上のように、本実施形態の引違い窓は、上枠11の外周側に換気枠5が取り付けられており、換気枠5を介して室内の換気をすることができる。
以下、換気枠5の構成について、さらに説明する。
【0019】
(換気枠の構成)
本実施形態の換気枠5は、
図2,
図4(a)に示すように、上部材51と、下部材52と、複数もしくは一つの連結部材53を有している。
【0020】
換気枠5を構成する上部材51は、アルミ合金等の金属材料からなり、上枠11と左右長さを同じくする長尺部材であり、
図4(a),
図5(a)に示すように、見込壁51aと、見込壁51aの室内側から上下に延びる室内側見付壁51bと、見込壁51aの室外側から上方に延びたのちに室外側に延び、その後下方に屈曲して延びる室外側カバー部51cを有している。
上部材51は、見込壁51aの内周面に連結部材53がスライド係合される被係合部51d,51dが設けられている。
【0021】
換気枠5を構成する下部材52は、アルミ合金等の金属材料からなり、上枠11と左右長さを同じくする長尺部材であり、
図4(a),
図5(c)に示すように、見込壁52aと、見込壁52aの室内側から下方に延びる室内側見付壁52bと、見込壁52aの室外側から上下に延びる室外側見付壁52cを有している。
【0022】
下部材52は、見込壁52aの外周面に連結部材53がスライド係合される被係合部52d,52dが設けられており、室外側見付壁52cの室内側面に室内方向に延びる係止部52eが設けられている。
下部材52は、左右方向の中央位置で見込壁52aの室外側にボルト等によって形成された変形防止部材7が上下方向に進退自在に設けられており、変形防止部材7の下端が下部材52の内周面から突出している。
【0023】
換気枠5を構成する連結部材53は、アルミ合金等の金属材料からなる短尺部材であり、
図4(a),
図5(b)に示すように、断面が複数の中空部を有し、上面(外周面)に上部材51の被係合部51d,51dにスライド係合される上係合部53a,53aが設けられ、下面(内周面)に下部材52の被係合部52d,52dにスライド係合される下係合部53b,53bが設けられている。
【0024】
そして、換気枠5は、
図2,
図4(a)に示すように、上部材51と下部材52が連結部材53を介して上下に連結されて形成されており、上下に連結された上部材51と下部材52が直接当接することなく、上部材51と下部材52の間に室内外に通じる換気通路Wが形成されている。
換気枠5に形成される換気通路の室外側開口(上部材51と下部材52との間)は、防虫ネット等の虫よけ部材61が取り付けられている。
【0025】
本実施形態の換気枠5は、引き違い窓を構成する上枠11の外周面に取り付けられ、全体として、換気装置を備えた開口部装置を形成している。
【0026】
(上枠に対する換気枠の取付構造)
本実施形態の換気枠5が取付けられる上枠11は、
図4(a),
図5(d)に示すように、見込壁11aと、室内側見付壁11bと、室外側見付壁11cと、室外側見付壁11cの上端から室内側に延びる取付見込壁11dと、取付見込壁11dの室内側が上方に屈曲して上方に延びる立上り壁11eを有している。
そして、上枠11は、左右方向で中央位置、すなわち内、外障子2,3の召合せ位置において、室外側の外周に受材4が配置されている。
【0027】
受材4は、スチール等の金属材料からなり、
図4(b),
図5(d)に示すように、水平壁である受け部4aと、垂直壁である立上り片4bを有する断面略L形の短尺部材であり、受け部4aが上枠11の取付見込壁11dの上面に載置され、立上り片4bが上枠11の立上り壁11eにビスb2止めされて取り付けられている。
上枠11の上面に取り付けられた受材4は、受け部4aの室外側が室外側見付壁11cよりも室外側に突出している。
【0028】
本実施形態の換気枠5は、上枠11に対して、
図4(a)(b)に示すように、下部材52の係止部52eが上枠11の室外側見付壁52cよりも室外側に突出した受材4の受け部4aに下方から係止され、下部材52の室内側見付壁52bが上枠11の室内側見付壁11bにビスb4止めされて取り付けられている。
そして、上枠11に取り付けられた換気枠5は、下部材52の見込壁52aの室外側に設けられた変形防止部材7の下端が上枠11に設けられた受材4の受け部4aに上方から当接もしくは近接している。
【0029】
(開口部装置の施工方法)
換気枠5を有する開口部装置の施工方法について、説明する。
四周組された枠体1の上枠11に対して、
図6(a)に示すように、下部材52を、上枠11の室外側見付壁11cから突出する受材4の受け部4aに係止部52eが下方から係合するように近づけて(矢印x1)、係止部52eと受材4との係止部分を中心として室内側が下方に移動するように回動(矢印x2)させ、下部材52の室内側見付壁52bを上枠11の室内側見付壁11bに当接させる。
なお、下部材52は、予め連結部材53がスライド係合されており、ビスb3により固定されている。
【0030】
次に、
図6(b)に示すように、上枠11の室内側見付壁11bと下部材52の室内側見付壁52bを室内側からビスb4により固定し(矢印x3)、下部材52の室外側に設けられた変形防止部材7をねじ込んで、先端部を上枠11に取り付けられた受材4の受け部4aの上面に当接もしくは近接させる(矢印x4)。
なお、変形防止部材7は、受材4の受け部4aの上面に対して適切な位置となるように、予め位置調節されていてもよい。
【0031】
次に、
図7(a)に示すように、上部材51を、下部材52の上方に取り付けられた連結部材53にスライド係合し、上枠11と位置合わせをしたのちに、ビスb5により固定する(矢印x5)。
上部材51が固定された換気枠5の室外側の開口部分には、防虫ネット等の虫よけ部材61が取り付けられる。
なお、上枠11の外周に取り付けられた換気枠5の左右端部は、端部キャップ等によって塞ぐことが好ましい。
【0032】
換気枠5が取付けられた枠体1を建物の開口部に配置して、換気枠5,下枠12、及び左、右縦枠13,14を図示しないアンカー等に固定して設置した後に、
図7(b)に示すように、換気枠5及び上枠11の室内側に換気ユニット6を配置して、換気ユニット6を額縁材等にビス等によって固定する。
以上、開口部装置の施工方法について、説明した。
なお、上述の施工方法は一例であって、換気枠5を備えた開口部装置の施工方法について何ら限定されない。
【0033】
(本実施形態の開口部装置の効果)
本実施形態の開口部装置は、上枠11の外周側に換気枠5が取り付けられているので、障子を開閉することなく室外の空気を室内に取り入れることができ、室内の換気を行うことができる。
【0034】
本実施形態の開口部装置は、上枠11に受材4を取り付けて、換気枠5の室外側を上枠11に取り付けた受材4に係止させるとともに、換気枠5の室内側を上枠11の室内側にビス止めすることで換気枠5を取り付けているので、従来の上枠11を利用して換気枠5を取り付けることができ、施工も煩雑にならず、換気枠5を容易に施工することができる。
【0035】
本実施形態の開口部装置のような、換気枠5の室外側を上枠11に係止させるとともに、換気枠5の室内側を上枠11の室内側にビス止めして施工する開口部装置は、施工が容易であるが、台風等の気象条件によって引き違い窓に非常に大きな負圧がかかった場合には、例えば
図9に示すように、内、外障子2,3が室外側に引っ張られて上枠11に当接することで、上枠11の室外側が上方に転ぶように変形し、内、外障子2,3が室外側に外れる可能性がある。
特に、左右方向の中央部分は、左、右縦枠13,14に対する連結部位から離れているために、変形量が大きく、上枠11の室内側案内溝11x、室外側案内溝11yに対する内、外障子2,3の上框21,31の掛かりが浅くなり、室外側に外れる可能性があった。
【0036】
本実施形態の開口部装置は、換気枠5の室外側の内周面に上枠11の室外側の外周面に対して上方から当接もしくは近接する変形防止部材7が設けられているので、室外側の負圧により上枠11の室外側が上方に転ぶように変形しようとしても、変形防止部材7が上方から当接して変形を抑制して、内、外障子2,3が室外側に外れることを防止することができ、強度を向上させることができる。
【0037】
本実施形態の開口部装置は、上枠11の室外側の外周面にスチール等の金属製の受材4が設けられており、換気枠5の室外側に設けられた係止部52eを受材4に対して下方から係止しているとともに、受材4に対して下部材52に設けられた変形防止部材7を上方から当接させるので、強度がかかる部位をスチール等の強度の高い材料で形成された部材によって負担することができ、開口部装置全体の強度を向上させることができる。
【0038】
(他の実施形態の開口部装置)
本実施形態の換気枠5は、上部材51と、下部材52と、連結部材53によって形成されているが、例えば、
図8に示すように、内部に空気の換気通路Wが形成された一体的に形成された換気枠材55によって形成してもよく、また、上部材51と下部材52の二部材を連結して形成されるものであってもよい。
なお、
図8に示す換気枠5は、換気枠材55の変形防止部材7の上方位置に操作用の孔55aを形成しておけば、換気枠材55の上方から変形防止部材7を螺合することができる。
【0039】
また、換気枠5は、変形防止部材7を左右方向の中央のみに配置するだけではなく、他の部分に配置してもよく、変形防止部材7を複数設けてもよい。
それに合わせて、変形防止部材7が当接もしくは近接する受材4についても、変形防止部材7に対応する位置に複数設けてもよく、上枠11の全長に亘る長尺部材によって形成してもよい。
【0040】
また、受材4は、断面略L字形の部材に限定されるものではなく、断面形状や上枠に対する固定方法等は限定されない。
また、換気枠5が取付けられる建具は、引き違い窓に限定されるものではなく、開き窓等矛盾の生じない範囲で、どのような建具であってもよい。
以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
11 :上枠
4 :受材
4a :受け部
5 :換気枠
51 :上部材
52 :下部材
52e :係止部
53 :連結部材
7 :変形防止部材