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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179629
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/02 20060101AFI20241219BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20241219BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20241219BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241219BHJP
【FI】
F21S8/02 410
F21V9/40
F21V23/00 140
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098616
(22)【出願日】2023-06-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1-1)発行日 令和5年 4月20日 (1-2)刊行物 あかり専科vol.42,2023-2024 第31頁,第549頁,第578~581頁,第583~593頁 (1-3)公開者 コイズミ照明株式会社 (2-1)ウェブサイトの掲載日 令和5年 5月17日 (2-2)ウェブサイトのアドレス https://webcatalog.koizumi-lt.co.jp/kensaku/item/detail?itemid=AD1220W等 (2-3)公開者 コイズミ照明株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505455945
【氏名又は名称】コイズミ照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 陸
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
(57)【要約】
【課題】感温性材料のスイッチング温度まで透光性パネルの温度を効率よく変化させることができる照明器具とする。
【解決手段】LED素子23を有する光源部20と、感温性材料を含む透光性パネル25と、を備える照明器具100において、透光性パネル25は、光源部20の照射面に対向するように配置されるものである。また、光源部20は、複数のLED素子23を実装したモジュール基板21を有するものである。また、感温性材料は、スイッチング温度が摂氏30~50度であることが好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を有する光源と、感温性材料を含む透光性パネルと、を備える照明器具において、
前記透光性パネルは、前記光源の照射面に対向するように配置される、照明器具。
【請求項2】
前記光源は、複数の前記LED素子を実装した基板を有する、
請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記感温性材料は、スイッチング温度が摂氏30~50度である、
請求項2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記透光性パネルは、前記感温性材料と樹脂素材とを含み、前記感温性材料および樹脂素材を含む材料を射出成型することにより形成する、
請求項1に記載の照明器具。
【請求項5】
前記光源は調光可能であり、
前記光源の調光率が低いときは、前記透光性パネルの透光率が低くなる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境温度によって透明性が変化する感温性材料が開発されている。
例えば、多層構造体であって、トランス型ポリイソプレン樹脂よりなる層と、全光線透過率80%以上の合成樹脂層を少なくとも一層有する感温性多層樹脂材料が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2674141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような感温性材料を照明装置の透光性カバーに採用する場合、例えば白熱灯や蛍光灯などの照明器具カバー類に用いることができる。特許文献2のような感温性材料を採用した透光性カバー用いた照明装置は、消灯時は内部の電球あるいはフィラメント類を隠し、点灯時において、透過光量が増すことにより、発光量を増加させることができる。
【0005】
しかし、白熱灯や蛍光灯の光は拡散性が強いため、これらの光源から出射された光は広範囲に広がってしまい、照明器具カバー類を均一に温度上昇させることが困難だった。また、照明器具カバー類の透過光量を輝度ムラなく変化させるためには、均一に温度上昇させて、感温性材料のスイッチング温度まで到達させる必要がある。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、感温性材料のスイッチング温度まで透光性パネルの温度を効率よく変化させることができる照明器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本願に開示する照明器具は、LED素子を有する光源と、感温性材料を含む透光性パネルと、を備える照明器具において、
前記透光性パネルは、前記光源の照射面に対向するように配置されるものである。
【0009】
本願に開示する照明器具は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
本願に開示する照明器具においては、前記光源は、複数の前記LED素子を実装した基板を有することが好ましい。
【0010】
本願に開示する照明器具においては、前記感温性材料は、スイッチング温度が摂氏30~50度であることが好ましい。
【0011】
本願に開示する照明器具においては、前記透光性パネルは、前記感温性材料と樹脂素材とを含み、前記感温性材料および樹脂素材を含む材料を射出成型することにより形成することが好ましい。
【0012】
本願に開示する照明器具においては、前記光源は調光可能であり、
前記光源の調光率が低いときは、前記透光性パネルの透光率が低くなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、光源として指向性の強いLED素子を有し、LED素子の照射面に対向するように透光性パネルを配置することで、効率よく透光性パネルに光源の照射光を照射することができ、感温性材料のスイッチング温度まで透光性パネルの温度を変化させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例に係る照明器具を示す斜視図。
図2】同じく照明器具を取付穴に取り付けた状態を示す側面図。
図3】同じく照明器具における図2のA-A線断面図。
図4】同じく照明器具の放熱部、光源部、第一反射部、パネル、パッキン、及び第二反射部を分解した状態を示す斜視図。
図5】同じく照明器具の光源部を示す底面図。
図6】同じく照明器具の第一反射部を示す底面図。
図7】同じく照明器具の第一反射部を示す平面図。
図8】同じく照明器具の放熱部と光源部と第一反射部とを示す底面図。
図9】同じく照明器具の放熱部と光源部と第一反射部とにおける図8のB-B線断面図。
図10】同じく照明器具の調光率と透光性パネルの温度変化の関係について示したグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る照明器具の一例である照明器具100について、図1から図9を用いて説明する。照明器具100は、図2に示すように取り付け面となる天井Cに形成された、例えば、丸型の取り付け穴Hに埋め込まれて設置される埋込型照明器具である。なお、本発明に係る照明器具としては、埋込型照明器具に限らず、天井面等に直付けされる直付け型の照明器具、又は、天井面等から吊り下げて設置される吊り下げ型の照明器具であってもよい。以下の説明では、照明器具100の上下方向は、照明器具100が天井Cに設置された状態における上下方向として説明する。上下方向に直交する方向を径方向として説明する。また、本実施形態の説明において、上方から照明器具100等を視た状態を平面視とする。上下方向に対して直交方向から照明器具100等を視た状態を側面視とする。照明器具100等の断面形状を視た状態を断面視とする。
【0016】
図1または図2に示すように、照明器具100は灯具10と電源部50とを主に備える。電源部50は、商用電源に接続される。電源部50は、スイッチや調光器を介して商用電源に接続してもよい。調光器は、調光率を設定可能な操作部を有する。調光器は、操作部が操作されることにより、商用電源から入力される交流電流を任意の導通角でオンまたはオフにすることで、電源部50に供給する電流量を増減させる。
【0017】
図3に示すように、灯具10は、光源部20、透光性パネル25、放熱部26、第一反射部30、第二反射部40、一対の取り付けバネ70・70、及びパッキン80を主に有する。
【0018】
光源部20は、照明器具100の照射面側に向けて光を出射する部分である。図3に示すように、光源部20は、放熱部26に取り付けられるものであり、モジュール基板21を有する。
【0019】
図3から図5に示すように、モジュール基板21は、基板22と、発光素子としてLED素子23と、電源供給用のリード線27が接続される給電部24と、を備える。モジュール基板21は、平板状に加工された基板22に点光源である複数個のLED素子23が周方向に配列されたLED発光モジュールである。複数個のLED素子23と給電部24とは基板22の下面にそれぞれ配置される。複数個のLED素子23については、例えば、外側(基板22の縁部側)に十六個のLED素子23が概ね周方向に並べて配置され、その内側に八個のLED素子23が概ね周方向に並べて配置される。複数個のLED素子23は、第一反射部30の開口部31に対応するように基板22の下面に配置される。また、複数個のLED素子23の個数または配置等についてはこのような構成に限定されず、例えば、外、中、及び内にそれぞれ複数個のLED素子23が並べられてLED素子23の環状の列が三重に構成されてもよいものとする。基板22は、平面視で略四角形に構成される。基板22の四角(図5中の22a・22b・22c・22d)はそれぞれ円弧状に形成される。基板22の四角のうち対向する二か所の角22b・22dに切り欠きが形成される。また、基板22は、このような形状で構成されることに限定されるものではなく、例えば平面視で、四角形以外の多角形、略円形に長方形が連接された形、扇形、楕円形、または長円形等で構成されても良いものとする。給電部24は、リード線27の端部が着脱可能な接続端子であるコネクタとして構成される。また、給電部24は、このような構成に限定されるものではなく、例えば半田等でリード線27が接続される構成であっても良いものとする。給電部24にリード線27が接続されることによってモジュール基板21は電源部50と電気的に接続される。給電部24は、基板22の切り欠きが形成されない二か所の角のうちいずれか一方の角(本実施形態では、角22a)の近傍に配置される。このように、給電部24が基板22の四角のうち一つの角の近傍に配置されることによって、基板22が大型化することを抑制しつつ基板22におけるLED素子23の配置領域を確保することができる。また基板22は、基板素材(元基板)から切り出して作製され、1つの基板素材から複数の基板22が作製できる。基板22を略四角形に構成することで、基板素材から効率的に複数の基板22を切り出すことができる。これにより、基板素材の廃棄する部分が少なく、製造コストが抑えられる。LED素子23は、電源部50からの電力がリード線27を介して供給されることによって点灯可能とされる。LED素子23は点灯時に発熱する。
【0020】
モジュール基板21を、調光部(スイッチや調光器)によって光量を調整できるように(調光可能に)設けることもできる。すなわち、光源部20は、調光可能である。具体的には、電源部50からの制御により、LED素子23の明るさを調整することができる。
【0021】
モジュール基板21は、第一反射部30と放熱部26との間に挟まれるように配置され、基板22が放熱部26に当接して配置される。また、モジュール基板21の光源としてLED素子(表面実装タイプのLED素子)を用いたが、光源の種類はLED素子に限定されず、例えばCOB型発光モジュールや有機EL素子(OLED)などであっても実現可能である。モジュール基板21をCOB型発光モジュールとする場合、基板22に複数の発光ダイオード(例えば青色発光ダイオード)を形成し、複数の発光ダイオードの全体を蛍光体(例えば黄色蛍光体)で被膜する。この場合の複数の発光ダイオードの位置は、図5に示すLED素子23の位置に対応する位置である。また、モジュール基板21は、熱伝導性シート(図示せず)や放熱グリスを介して放熱部26に取り付けてもよく、これにより、より高い放熱性を得ることができる。
【0022】
放熱部26は、例えば、平板状に形成される。放熱部26は放熱効率を向上させるために熱伝導率の高いアルミニウム等の金属素材で形成される。放熱部26はモジュール基板21の上面に当接するように配置される。放熱部26におけるモジュール基板21が配置される表面は、光源部20から生じる熱を伝えるために、モジュール基板21との接触面積を増やすために平らな表面を有するように形成される。放熱部26はLED素子23が点灯時に発する熱が伝わって当該熱を放熱する。放熱部26はその縁部近傍に一対の孔部26a・26aと一対の取り付け部26bとを有する。孔部26aは貫通孔であり爪部34が挿通される。取り付け部26bは貫通孔でありビス55が挿通される。
なお、本実施形態では、放熱部26を平板状に形成したが、これに限らず、放熱性を高めるために放熱フィンを設ける等、必要に応じて適宜形状を変更することができる。
【0023】
図3から図9に示すように、第一反射部30は、透光性パネル25とモジュール基板21とを所定間隔で離間しつつ、複数のLED素子23からの光を反射する笠状部材である。第一反射部30は、本発明の反射部に相当する。第一反射部30は、樹脂素材等で形成される。第一反射部30は、開口部31、周壁部32、基板ガイド部33、爪部34、押え部35、及びカバー部36を有する。
【0024】
開口部31は第一反射部30の上端中央部に位置する開口である。周壁部32は、開口部31の側方から下方に行くに従って拡径される笠状部分であり、斜面状に形成される。周壁部32の内周面は、LED素子23から発光される光を反射する反射面となっている。なお、本実施形態の第一反射部30としては、周壁部32が下方に行くに従って広がる斜面状に形成したものを説明したが、これに限定されない。例えば、第一反射部30の形状として、周壁部32が下方に行くに従って広がる放物面状に形成されるものであっても良い。基板ガイド部33は、基板22の外形の少なくとも一部と沿うように基板22の外周縁部を囲み、モジュール基板21の側面方向の位置を規制する。本実施形態の基板ガイド部33は、開口部31の周囲を囲む平面視略四角形の環状で、周壁部32の上端から上方に突出する。基板ガイド部33は、基板22の外周縁部の形状と概ね一致するように形成される。即ち、基板ガイド部33は、基板22の二か所の切り欠きに対応した形状とされる。基板22の切り欠き等に対応した形状に基板ガイド部33が構成されることによって、モジュール基板21に対して第一反射部30が位置決めされる。爪部34は、一対で構成され、周壁部32の上面から上方に突出する。開口部31を挟んでそれぞれ対向するように配置される。爪部34が放熱部26の孔部26aに挿通されることによって、放熱部26に対して第一反射部30が位置決めされる。
【0025】
図3に示すように、透光性パネル25は、第一反射部30の下端及び第二反射部40の開口部41を閉塞し、LED素子23からの光を透過及び拡散させて、照射面を形成する部材である。透光性パネル25は、光源部20の照射面に対向するように配置されている。なお、本実施形態においては、第一反射部30の下端及び第二反射部40の開口部41を閉塞するように配置されているが、光源部20の照射面に対向するように配置されていればこれに限定するものではなく、例えば、第二反射部40の下端を覆う形状とすることも可能である。
【0026】
透光性パネル25は、主に透光性を有する樹脂素材で形成されており、さらに感温性材料を含む。感温性材料は、所定の温度(以降、スイッチング温度という)を境にガラス転移などによって物質の構造が変化する材料のことであり、例えば、温度が上がると色が変化する材料や、温度が上がると透光率が高くなる材料等がある。本実施形態においては、温度が上がると透光率が高くなる材料が用いられる。感温性材料のスイッチング温度は、30~50℃であることが好ましい。本実施形態の感温性材料のスイッチング温度は40℃のものを用いた。スイッチング温度が40℃の感温性材料である場合には、感温性材料の材料温度が40℃を超えると、感温性材料の光透過性が高くなる。
本実施形態の透光性パネル25は、感温性材料のスイッチング温度よりも温度が低いときには、白色を呈した状態となり、透光性パネル25によって照射面側を覆われるように配置されるLED素子23などの部材を室内にいる使用者から視認し難くすることができる。
【0027】
一方、日本における一般的な建築物の室内の適温は18~28℃である。すなわち、このような温度の室内において照明器具100が点灯していない状態では、感温性材料のスイッチング温度よりも雰囲気温度が低くなる。このため、照明器具100を点灯していない状態において、意図しない透光性パネル25の透光率の変化を抑制し、透光性パネル25は透光率が低い状態を維持する。そのため、透光性パネル25は、透光性パネル25によって照射面側を覆われるように配置されるLED素子23などの部材を視認し難くすることができるので、照明器具100の意匠性が向上する。
【0028】
透光性パネル25は、感温性材料とアクリル樹脂とを含み、感温性材料およびアクリル樹脂を含む材料を射出成型することにより形成する。例えば、感温性材料およびアクリル樹脂を含む材料を射出成型する場合、アクリル樹脂の粉末に感温性材料の粉末を加えて加熱して溶かし、金型に射出する。この際、金型内部には冷却水が循環しており、成形品が固まるまで冷却される。これにより、所望の形の透光性パネル25が形成される、また、アクリル樹脂の層に感温性材料の層を重ねて成形する場合に比べて、感温性材料の層の剥がれ等の不良が発生しない。
【0029】
また、調光部で設定された調光率が低い状態のときは、LED素子23へ供給される電流が少ないため光量レベルが低下する。LED素子23へ供給される電流が少なくなると、LED素子23の単位時間あたりの発熱量が下がる。LED素子23の温度低下により透光性パネル25の温度が感温性材料のスイッチング温度に到達しない場合、感温性材料の透光率が低下する。透光性パネル25の透光率が低くなることにより、透光性パネル25の光の拡散度合いが強くなり、LED素子23による輝度ムラ(粒感)が緩和される。
【0030】
調光部で設定された調光率が高い状態のときは、LED素子23へ供給される電流が多いため光量レベルが向上する。LED素子23へ供給される電流が多くなると、LED素子23の単位時間あたりの発熱量が上がる。LED素子23の温度上昇により透光性パネル25の温度が感温性材料のスイッチング温度に到達すると、感温性材料の透光率が高くなる。透光性パネル25の透光率が高くなるため、LED素子23による発光を妨げることなく効率よく照射面から室内を照射することができる。
【0031】
また、感温性材料を含む透光性パネル25は、第一反射部30の下端及び第二反射部40の開口部41を閉塞する。LED素子23が配置された空間が透光性パネル25によって密閉されるため、LED素子23からの熱がより透光性パネル25に伝達しやすくなる。これにより、透光性パネル25の温度を効率的に感温性材料のスイッチング温度まで到達させ、透光性パネル25の透光率を高めることができる。
本実施形態のモジュール基板21は、透光性パネル25と対向するように複数のLED素子23が略均等に実装されている。複数のLED素子23から出射された光は、透光性パネル25に到達する。LED素子23のような光源は、白熱電球や蛍光灯のような光源と比較して指向性が強いため、出射光を透光性パネル25に効率よく照射することができる。複数のLED素子23の照射面側に透光性パネル25を配置することで、複数のLED素子23からの光を透光性パネル25に略均等に照射することができる。これにより、複数のLED素子23からの光を透光性パネル25にムラなく効率よく照射することができる。そのため、複数のLED素子23によって粗密が少なく透光性パネル25の温度を上げることができるため、透光性パネル25の透光率を略均一に高めることができる。
【0032】
次に、照明器具100の光源部20の調光率と透光性パネル25の温度変化の関係について図10を用いて説明する。なお、光源部20の調光率は、調光器で設定される調光率と同等とする。
【0033】
図10の実線で示すように、調光率を100%から低下させるにつれて、透光性パネル25の温度が低下する。調光率30%前後でパネル温度が40℃に近づき、図10の一点鎖線で示すスイッチング温度(40℃に設定)以下となることがわかる。これにより、調光率を30%より小さくすることで、感温性材料の透光率が低下し、透光性パネル25の照射面におけるLED素子23による輝度ムラ(粒感)が緩和される。
また、図10の破線で示すように、周囲温度は、30℃付近であるため、スイッチング温度よりも小さくなり、通常の室温において、感温性材料の透光率は低いままであるので、点灯状態となるまでは、感温性材料の透光率が低下したままであり、透光性パネル25を介して照明器具100内部(LED素子23等の部材)を視認し難くすることができるのである。
【0034】
透光性パネル25は、平面視形状が円形で下方に突出するドーム状に形成される。透光性パネル25は、その周縁部が第一反射部30の下端と第二反射部40の上端(開口部41)との間に挟まれて位置決めされ、LED素子23に対向する位置に保持される。なお、透光性パネル25の形状は、円形形状に限らず、四角形等の多角形でも良い。また、下方に突出するドーム状に限らず、上方に突出する形状や平面状等でも良い。
【0035】
第二反射部40は、下方に向かって椀状に開いた形状のリフレクターである。第二反射部40は、透光性パネル25の下方に配置される。第二反射部40は、開口部41、周壁部42、及びビス取り付け部43を有している。
【0036】
開口部41は第二反射部40の上端中央部に位置する開口である。周壁部42は開口部41から下方に行くに従って広がる放物面状に形成される。周壁部42の内周面は、LED素子23から出射され透光性パネル25を通過した光を反射する反射面となっている。第二反射部40は、樹脂素材や金属素材等を用いて形成される。ビス取り付け部43は、周壁部42から上方に突出して形成される。ビス取り付け部43にはビス55が螺合される。ビス取り付け部43の上端の位置は開口部41よりも上方に位置する。ビス取り付け部43は、放熱部26の下方に位置し、放熱部26の取り付け部26bと対応した位置に配置される。なお、第二反射部40の平面視形状は、円形形状に限らず、四角形等の多角形でもよく、種々の取り付け穴Hの開口形状に取り付け可能な形状であってもよい。
【0037】
図1から図3に示すように、取り付けバネ70は、照明器具100を天井Cの取り付け穴Hに埋め込んで取り付けるための固定手段である。取り付けバネ70は、第二反射部40から側方に延出するように構成される。取り付けバネ70は、ステンレス素材等の板状金属部材の中途部を複数箇所屈曲及び湾曲させて形成された板バネである。取り付けバネ70を屈曲した状態で照明器具100を天井Cの取り付け穴Hに設置した場合、取り付けバネ70は、広がろうとする弾性力によって取り付け穴Hの周縁を押圧することで照明器具100を天井Cに固定される。なお、取り付けバネ70の形状、取り付け位置、及び個数等については、本実施形態のものに限定されない。取り付けバネ70はその基部に取り付け部71を有する。取り付け部71は放熱部26の上方に位置する。取り付け部71は貫通孔でありビス55が挿通される。
【0038】
図3または図4に示すように、パッキン80は、第二反射部40と透光性パネル25との間に配置される。パッキン80は、円環状に形成されている。パッキン80は、詳しくは後述するが、ビス55を用いて放熱部26、第二反射部40、及び取り付けバネ70を固定したときに、透光性パネル25と第二反射部40との間の気密性を高める。これにより、第二反射部40側から虫や埃等の異物が侵入することを抑制する。
また、透光性パネル25は、パッキン80の弾性力により上方に押圧される。それに伴い、第一反射部30及びモジュール基板21が放熱部26側に押圧されるため、第一反射部30の押え部35は基板22に隙間なく当接する。これにより、基板22のLED素子23が配置される側の面、周壁部32の反射面、及び透光性パネル25の内側の面で構成される内部空間Sへの異物の侵入防止をより高めることができる。また、基板22が放熱部26に押し付けられるように押圧されるため、より放熱性を高めることができる。
【0039】
図3または図4に示すように、第一反射部30の基板ガイド部33内にモジュール基板21を配置し、爪部34を放熱部26の孔部26aに挿通して、第一反射部30(開口部31)と放熱部26の下面との間にモジュール基板21を挟むように配置する。そして、第一反射部30の下端と第二反射部40の上端(開口部41)との間に透光性パネル25を挟むように配置する。このような状態で、放熱部26の取り付け部26b、第二反射部40のビス取り付け部43、及び取り付けバネ70の取り付け部71をそれぞれ一致させて、取り付け部26b及び取り付け部71にビス55を挿通して、当該ビス55をビス取り付け部43に螺合させることによって、光源部20、第一反射部30、透光性パネル25、放熱部26、第二反射部40、及び取り付けバネ70がそれぞれ組み付けられて、灯具10として構成される。
【0040】
図1から図3に示すように、電源部50は、光源部20が有するLED素子23に給電を行って、LED素子23を点灯させるための電源装置である。電源部50は、ビス等の固定具によって放熱部26の上面に取り付けられている。電源部50は、箱状の電源ケース52内に直方形状に加工されたプリント配線基板上に複数の電子部品が実装された電源回路が収容されたものである。複数の電子部品は、動作時に発熱する部品が含まれている。電子部品から発する熱は、電源ケース52に伝わる。電源部50は、外部商用電源から供給される交流電流を所定の直流電流に変換し、変換後の電流をモジュール基板21の複数のLED素子23に供給するためのものである。電源部50は、配線(図示せず)を介して端子台53に電気的に接続される。端子台53は、電源部50(電源ケース52)の一側面に配置される。照明器具100を天井Cに取り付ける際、配線(図示せず)により端子台53と天井裏側の外部商用電源(図示せず)とを接続することで、電源部50は外部商用電源と電気的に接続される。電源部50とモジュール基板21はリード線27によって電気的に接続される。
なお、電源部50は、放熱部26の上面に取り付ける構成でなくてもよい。例えば、放熱部26に取り付けずに、放熱部26から分離している構成でもよい。
【0041】
図3から図9に示すように、押え部35は、基板ガイド部33の内側に配置される。押え部35は、開口部31の周囲を囲む平面視円環状で、周壁部32の上端から上方に突出する。押え部35の上端部は基板ガイド部33の上端部よりも低く構成される。押え部35は、第一反射部30の基板ガイド部33内にモジュール基板21が配置された状態で、基板22の下面(LED素子23が配置される側の面)に当接して押圧する。押え部35は、基板22の下面に当接して、モジュール基板21(基板22)のLED素子23が配置される領域の全周を囲む。押え部35は、基板22の縁部の内側且つ基板22のLED素子23が配置される領域の外側において基板22に当接する。このように、押え部35がモジュール基板21(基板22)のLED素子23が配置される領域の全周を囲むことから、基板22のLED素子23が配置される側の面、周壁部32の反射面、及び透光性パネル25の内側の面で構成される内部空間Sに、虫等の異物が入り込むことを防止することができる。またこのように構成されることから、LED素子23が点灯時に発する熱が第一反射部30(押え部35)に伝わって当該熱を放熱することができる。
【0042】
基板22に配置される複数個のLED素子23のうち少なくとも一部のもの(外側に周方向に並べて配置されるもの)は、押え部35に沿うように押え部35の近傍に配置される。このため、基板22におけるLED素子23の配置領域を広く構成することができる。
【0043】
カバー部36は、給電部24を覆う。カバー部36は、周壁部32における給電部24に相当する位置に配置される。カバー部36は、周壁部32の反射面からモジュール基板21(基板22)に対して給電部24が配置される方向(下方)に突出する。このように、カバー部36を周壁部32の反射面からモジュール基板21に対して給電部24が配置される方向に突出するように設けることで、基板22において給電部24をLED素子23の実装位置から必要以上に離さずに配置することができる。これにより、モジュール基板21を小型化することができ、それに伴い、照明器具100を小型化することができる。
【0044】
カバー部36は、周壁部32の反射面の中途部から周壁部32の開口部31側端部に亘って形成される。カバー部36下方に突出する面と側方に突出する面とを有し、前記下方に突出する面と前記側方に突出する面との境界部分はそれぞれ円弧状に構成されて傾斜面を有するように構成される。このため、前記下方に突出する面と前記側方に突出する面との境界部分が角張るように構成されるものと比べて、LED素子23から照射される光が遮られることを抑制してLED素子23から照射される光を比較的均一なものとすることができる。
【0045】
カバー部36の開口部31側端部は、底面視で直線状に構成される。このため、カバー部36の開口部31側端部が例えば平面視でV字状またはU字状に構成されて突出する部分や頂点等を有するものに比べて、カバー部36に反射するLED素子23から照射された光の輝度について比較的高くなる部分が生じることを抑制して、グレアが生じることを低減させることができる。
【0046】
カバー部36は、リード線27が挿通される通線部37を有する。通線部37は、挿通されたリード線27を密着した状態で保持可能とされる。通線部37は、カバー部36の上面が側方に向かって切り欠かれるように形成される。リード線27は電線二本からなるものであり、当該二本の電線をそれぞれ保持可能なように前記切り欠きが二個形成される。このようにリード線27が挿通される通線部37を有することから、リード線27が移動または変形すること等を抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 灯具
20 光源部
21 モジュール基板
22 基板
23 LED素子(発光素子)
24 給電部
25 透光性パネル
26 放熱部
30 第一反射部(反射部)
31 開口部
32 周壁部
33 基板ガイド部
34 爪部
35 押え部
36 カバー部
37 通線部
40 第二反射部
41 開口部
42 周壁部
43 取り付け部
50 電源部
80 パッキン
100 照明器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10