(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179635
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/16 20060101AFI20241219BHJP
A01K 85/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A01K85/16
A01K85/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098628
(22)【出願日】2023-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年2月13日~6月5日にウェブサイトにて公開 https://www.youtube.com/watch?v=_OYe2fRCJ5Q 他、令和5年2月13日、4月13日、5月13日、6月13日にメールマガジンによる公開 https://rss.breaden.net/mailmagazine/vol136 他、令和5年4月29日に三重テレビ放送の番組内で公開、令和5年1月31日~2月2日に開催された中央漁具株式会社第58回ビッグセールにて展示
(71)【出願人】
【識別番号】503275521
【氏名又は名称】株式会社ブリーデン
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307BA41
2B307BA44
2B307BA46
2B307BA70
(57)【要約】
【課題】ルアーで海老の泳ぎを真似る動作を行なえるようにして、食い付きの良いルアーを提供する。
【解決手段】ルアー本体2に設けた凹溝14に回転自由にして海老足動作模擬具3を設け、海老足動作模擬具3の足疑似体15が、ルアー前進時の水の流れを受けて下腹部7の下方位置で表出した状態でルアーの胴部6の前方から後方に向けて移動して、海老腹肢の遊泳動作を模擬表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海老足形状を真似た複数の足疑似体を回転軸体の周りに配置した海老足動作模擬具と、
ルアー胴部の下腹部側を開口した凹溝が、ルアー胴部内に凹陥形成されているルアー本体とを備え、
前記ルアー本体の前記凹溝内に、前記海老足動作模擬具が回転自由にして取り付けられ、
前記海老足動作模擬具が、前記凹溝の開口部分から下腹部の下方に表出していて、
ルアー前進時の水の流れを受けて前記足疑似体が、前記凹溝の開口部分がある下腹部の下方位置でルアー胴部の前方から後方に向けて移動して、海老腹肢の遊泳動作を模擬表示することを特徴とするルアー。
【請求項2】
前記凹溝の内天面の形状が、前記足疑似体の移動軌跡に沿った凹曲面とされていて、前記内天面の頂部となる位置に、ルアー胴部の背部まで貫通する空気抜き孔が配置されている請求項1に記載のルアー。
【請求項3】
前記凹溝の開口部分のルアー本体の先端部側にシンカーが取り付けられていて、前記シンカーと前記ルアー本体との間には、前記足疑似体の移動線方向に対応する位置にしてスリットを備えており、
前記スリットは、ルアー前進時のシンカー前の水の流れを、前記下腹部下方に表出する海老足動作模擬具に向けて案内する請求項1または2に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からルアーには形状として海老に似せたものがある。また、ルアーの一部に可動体を取り付けて、水中でルアーを引いたときにルアーに不規則な動きが生じるようにした工夫がある。
【0003】
例えば特許文献1に示さされたルアーでは、先端部分から入った水の流れによってルアー本体の内部に配置した水車が回転するように設けられている。そして、この特許文献1では、ルアー本体の内部を通過しながら前記水車の回転で乱された水の流れが、ルアー本体の後部の餌羽に不規則な動きを生じさせるようにした工夫が示されている。
【0004】
また、特許文献2ではスプーンタイプのルアーであって、筒状の透明樹脂器に水車が回転軸を伴なって収められて蓋をし、この水車を有した透明樹脂器がルアー本体の内部となるように配置されたルアーが示されている。
この特許文献2に示されたルアーでは、天板となるステンレス板の開口部分側に透明樹脂器での入水口と排水口とが対応している。そして、ルアーが入水口から排水口への水の流れで水車が回転し、水車が回転することでルアー本体に不規則な動きが発生し、ルアー本体に接着の貝片の光沢がよく見えるようにした工夫を有するものである。
【0005】
特許文献3は高運動性ルアーに関するものであり、回転軸周りに複数の羽を等間隔にして配置した回転片を備えていて、ルアー本体の前部下腹部側を開口にしてルアー本体長さ方向に沿った回動溝に前記回転片を回転できるように取り付けている。この特許文献3では、回動溝の内天面形状が円弧形状として示されているとともに、上記スプーンタイプのルアーの場合と同様に、回動溝の上方がルアー本体を貫通してもよい点が示されている。
【0006】
そして、この特許文献3についても、回転片の内の一枚の羽がルアー本体の前方下方に突出するようにこの回転片が回転することで、ルアー本体が上下方向に動いたり、羽形状をねじられた形状とすることで横方向に動くようにすることができきるなどの工夫が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実願平1- 68436号(実開平3- 9157号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願平1-107314号(実開平3-48462号)のマイクロフィルム
【特許文献3】特開2004-275157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内部に回転部材を備える上述のルアーは、前記回転部材の回転によってルアー内部を通る水の流れを乱して後部の餌羽に不規則な動きを生じさせたり(特許文献1)、ルアー本体全体の不規則な動きで貝片の光具合や色合いを変化させたり(特許文献2)、ルアー本体全体に不規則な動きで餌となる小魚を模す(特許文献3)ものである。
【0009】
しかしながら、ルアー本体の内部に回転部材を備える従来のルアーでは、餌として食い付きが良好な海老の泳ぎ(遊泳脚(腹肢)を順次後方に向けて水をかく動作での遊泳)を真似るようにしたものは存在していなかった。
【0010】
そこで本発明は上記事情に鑑み、ルアーで海老の泳ぎを真似るようにすることを課題とし、食い付きの良いルアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、海老足形状を真似た複数の足疑似体を回転軸体の周りに配置した海老足動作模擬具と、
ルアー胴部の下腹部側を開口した凹溝が、ルアー胴部内に凹陥形成されているルアー本体とを備え、
前記ルアー本体の前記凹溝内に、前記海老足動作模擬具が回転自由にして取り付けられ、
前記海老足動作模擬具が、前記凹溝の開口部分から下腹部の下方に表出していて、
ルアー前進時の水の流れを受けて前記足疑似体が、前記凹溝の開口部分がある下腹部の下方位置でルアー胴部の前方から後方に向けて移動して、海老腹肢の遊泳動作を模擬表示することを特徴とするルアーを提供して、上記課題を解消するものである。
【0012】
そして、本発明において、前記凹溝の内天面の形状が、前記足疑似体の移動軌跡に沿った凹曲面とされていて、前記内天面の頂部となる位置に、ルアー胴部の背部まで貫通する空気抜き孔が配置されていることが良好である。
【0013】
また、本発明において、前記凹溝の開口部分のルアー本体の先端部側にシンカーが取り付けられていて、前記シンカーと前記ルアー本体との間には、前記足疑似体の移動線方向に対応する位置にしてスリットを備えており、
前記スリットは、ルアー前進時のシンカー前の水の流れを、前記下腹部下方に表出する海老足動作模擬具に向けて案内するものであることが良好である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水に投下されたルアーが引かれると、ルアー前進時の水の流れを受けて足疑似体が、凹溝の開口部分がある下腹部の下方位置でルアー胴部の前方から後方に向けて移動し、この移動の動きで海老腹肢の遊泳動作を模擬表示するので、生きた海老のような遊泳をするようになり、魚などによる食い付きが良好になる。
【0015】
また、本発明によれば、凹溝の内天面の形状が、前記足疑似体の移動軌跡に沿った凹曲面とされていて、前記内天面の頂部となる位置に、ルアー胴部の背部まで貫通する空気抜き孔が配置されているので、水に投入されても直ぐに凹溝内から空気が抜けて、海老足動作模擬具のスムーズな動きが凹溝内の空気泡で損なわれるということがない。
【0016】
また、本発明によれば、凹溝の開口部分のルアー本体の先端部側にシンカーが取り付けられていて、前記シンカーと前記ルアー本体との間には、前記足疑似体の移動線方向に対応する位置にしてスリットを備えており、前記スリットは、ルアー前進時のシンカー前の水の流れを、前記下腹部下方に表出する海老足動作模擬具に向けて案内するので、水中にてルアーを引いたときに、ルアー本体の下腹部に沿う水の流れがシンカー自体に邪魔されずにスリットにて海老足動作模擬具側に案内されて、海老足動作模擬具の足疑似体がよりスムーズに移動するようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るルアーでの魚を釣る仕様の形態とした第一の例を側方から見た状態で示す説明図である。
【
図2】同じく第一の例を前方から見た状態で示す説明図である。
【
図3】同じく第一の例をルアー本体長手方向に沿った縦断面で示す説明図である。
【
図4】同じく第一の例であって、水中を水平移動している時の例を示す説明図である。
【
図5】同じく第一の例であって、水中を沈降している時の例を示す説明図である。
【
図6】イカを釣る仕様の形態とした第二の例を側方から見た状態で示す説明図である。
【
図7】同じく第二の例を前方から見た状態で示す説明図である。
【
図8】同じく第二の例をルアー本体長手方向に沿った縦断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は本発明に係るルアーであって、ルアー1はルアー本体2と海老足動作模擬具3とを備えたものであり、
図1から
図5には第一の例として魚を釣る仕様の形態としたものが示されている。
【0019】
(第一の例、ルアー本体)
ルアー本体2は、
図1と
図2に示されているように先端部4をルアー長さ方向前方に向けて先細り状にし、また後端部5をルアー長さ方向後方に向けて先細り状にし、そして前記先端部4と前記後端部5の間の胴部6を太くして、ルアー本体2全体を略紡錘形状にしている。
【0020】
ルアー本体2の胴部6はルアー長さ方向前方から後方にかけて上下方向にわずかにうねった形状に成形されており、ルアーを側面から見た状態の
図1に示されているように略S字状にくねられて、下腹部7において胴部6における先端部4側を下方に凸となる形状とするとともに、背部8において胴部6の後端部5側の上方に凸となる形状にしている。
【0021】
第一の例のルアー本体2は、図示されているように、先端部4に釣り糸9を掛ける釣り糸係止金具10が取り付けられ、胴部6のほぼ中央であって下腹部7の最下端位置となる部分と後端部5とのそれぞれに、釣り針11を掛けるための釣り針係止金具12が取り付けられている。
さらにルアー本体2の先端部4には生き餌としての海老の眼を真似た疑似眼13が設けられている。
【0022】
(海老足動作模擬具)
ルアー本体2には、
図1と
図3とに示されているようにルアー本体2の胴部6の下腹部7側を開口した凹溝14を有していて、前記凹溝14は胴部6内に凹陥形成されている。
【0023】
そして、前記凹溝14内に、前記海老足動作模擬具3が回転自由にして取り付けられている。
前記海老足動作模擬具3は、腹肢(遊泳脚)の海老足形状を真似た複数の足疑似体15を回転軸体16の周りに等間隔にして配置したものである。そして、回転軸体16の部分が、凹溝14での対向する内壁面部分に枢支されて、海老足動作模擬具3が回転自由に設けられている。
【0024】
前記海老足動作模擬具3の下部が、前記凹溝14の開口部分17から下腹部7の下方に表出していて、海老足動作模擬具3が回転することによって、複数の足疑似体15が順次下腹部7の下方の位置に現れて移動するように設けられている。
【0025】
(水平移動時)
図4は水内にルアー1が投入されてほぼ水平に引かれた水平移動するときの状態が示されている。このように水平方向でのルアー前進時の水の流れaを足疑似体15が受けることで、海老足動作模擬具3が回転する。
【0026】
そして、海老足動作模擬具3の回転によって、前記足疑似体15が順次胴部6の下腹部7の下方の位置に表れてこの下腹部7の前方から後方に向けて
図4(及び
図5)の矢印bで示す旋回による移動をして、海老腹肢の遊泳動作を模擬表示することとなり、ルアー1全体で海老が遊泳しているがごとくの形態を疑似表示する。
【0027】
(フリーフォール時)
第一の例のルアー1では、凹溝14よりルアー本体2の長さ方向前方である先端部4の下部側に球状シンカー18を取り付けていて、この球状シンカー18の取付によって重心がルアー本体2の先端部4側に寄った状態となるように設定されている。
【0028】
上述したように重心がルアー本体2の先端部4側に寄るように設定されているので、水に投入したルアー1を引かずに自重で沈降するフリーフォール時には、ルアー1は、海老足動作模擬具3より前方側である先端部4が下向きとなるように沈降し、そのため、前記水平移動時の場合と同じく、下向きのルアー前進時で生じる水の流れaを足疑似体15が受けて、海老足動作模擬具3が回転する。
【0029】
フリーフォール時も、水の流れaを受けた足疑似体15は、海老足動作模擬具3の回転によって順次胴部6の下腹部7の下方の位置に現れてその下腹部7の前方から後方に向けて移動bして、海老腹肢の遊泳動作を模擬表示することとなり、ルアー1全体で、海老が遊泳しているがごとくの形態を疑似表示する。
【0030】
(空気抜き孔)
海老足動作模擬具3が回転自由に取り付けられる凹溝14には、ルアー1を水に投入したときに空気が泡として残る可能性があるため、この空気泡が簡単に凹溝14から抜け出るようにする空気抜き孔19が設けられている。
【0031】
図3に示されているように凹溝14の内天面20の形状は、先端部4側の前部20a、頂部20b、後端部5側の後部20cが連なって凹曲面となっていて、前記足疑似体15の移動軌跡に沿った形状に形成されている。
海老足動作模擬具3の回転で旋回するように移動する足疑似体15と内天面20との間には隙間があって接触することはない。
【0032】
そして、凹曲面の内天面20の頂部20bとなる位置に前記空気抜き孔19が配置されており、この空気抜き孔19はルアー本体2の胴部6の背部8まで貫通している。ルアー1を水に投入したときに凹溝14内の空気が内天面20側に残りかけたとしても、前記空気抜き孔19から空気が抜け出る。
【0033】
水中にあるルアー1において、ルアー本体2の前記凹溝14内に空気が溜まったままであると、海老足動作模擬具3は回転し難い。
しかし、本発明のルアー1では上述ように凹溝14内に空気がとどまらないため、海老足動作模擬具3はスムーズに回転できる。
そして、水の流れaが緩やかである場合、海老足動作模擬具3はゆっくりと回転して、足疑似体15のゆっくりとした移動bで、海老がゆっくりと遊泳する状態を疑似表示できる。
【0034】
(第二の例)
魚を釣る仕様とされたルアー1を第一の例として示したが、本発明のルアー1は第一の例に限定されるものではない。
図6から
図8は第二の例を示していて、イカを釣る仕様のものである。
【0035】
第二の例のルアー1にあっては、ルアー本体2の後端部5にイカ釣り用の釣り針21が取り付けられている。さらに、凹溝14の開口部分17でのルアー本体2の先端部4側にシンカー22が取り付けられている。
【0036】
(シンカー)
前記シンカー22は、ルアー1を側方から見て海老の胸脚を模した形状に形成され、シンカー22の後端縁形状を、海老足動作模擬具3の足疑似体15の移動軌跡に沿う形状の円弧形状とし、前記足疑似体15と非接触にしている。このシンカー22のルアー本体2に対する内設箇所の背面も凹曲面となって内天面20での前部20aを形成している。
【0037】
この第二の例では、凹溝14の開口部分17から表出している足疑似体15の位置に対し、前方となる部分にシンカー22が配置されており、開口部分17から表出している足疑似体15に向かう水の流れaに対してシンカー22が大きな障害物とならないようにした工夫が設けられている。
【0038】
具体的には前記シンカー22とルアー本体2との間に、
図6に示されているように足疑似体15の移動線方向に対応する位置にしてスリット23を形成している。そして、ルアー前進時に前記スリット23に水の流れcが通るようになり、スリット23が水の流れcを、開口部分17から下腹部下方に表出する足疑似体15に向けて案内する。
【0039】
前記スリット23によって水の流れcが足疑似体15側に案内されてその足疑似体15に当たるようになり、足疑似体15がよりスムーズに移動bするようになるという効果を奏する。
【0040】
さらにシンカー22の下端と釣り針21とを結ぶ直線の位置24(
図8)の下方には前記海老足動作模擬具3がはみ出さず、前記位置24より上方で足疑似体15が配置されるレイアウトにして形成されている。
また、シンカー22の下端をルアー幅方向に幅広にしていて、このシンカー22の左右端とルアー本体2の胴部6の側面とを結ぶ直線の位置25(
図7)から外方に前記海老足動作模擬具3がはみ出さず、位置25より胴部6側の領域内で足疑似体15が配置されるレイアウトにして形成されている。
【0041】
そのため、第二の例でのルアー1が底着きした場合でも足疑似体15のスムーズな移動bが可能であり、海老が釣り場底を伝って遊泳する状態を疑似表示できる。
【符号の説明】
【0042】
1…ルアー
2…ルアー本体
3…海老足動作模擬具
4…ルアー本体の先端部
5…ルアー本体の後端部
6…ルアー本体の胴部
7…ルアー本体の下腹部
8…ルアー本体の背部
14…凹溝
15…足疑似体
16…回転軸体
17…凹溝の開口部分
18…球状シンカー
19…空気抜き孔
20…凹溝の内天面
20b…内天面の頂部
22…シンカー
23…スリット
a、c…水の流れ
b…足疑似体の移動