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特開2024-179637特殊清掃現場における清掃および消臭方法
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  • 特開-特殊清掃現場における清掃および消臭方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179637
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】特殊清掃現場における清掃および消臭方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20241219BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20241219BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20241219BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20241219BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20241219BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20241219BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61L9/01 M
A61L2/18
B08B3/02 F
B08B3/08 Z
A61L9/01 F
A61L9/00 C
A61L9/14
A61L9/014
A61L101:34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098632
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】521394657
【氏名又は名称】グッドベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】宮田 昌次
【テーマコード(参考)】
3B201
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
3B201AA31
3B201AB52
3B201BA08
3B201BA23
3B201BB01
3B201BB21
3B201BB82
3B201BB92
3B201BB95
3B201CB25
4C058AA23
4C058BB07
4C058CC07
4C058CC08
4C058JJ02
4C058JJ08
4C058JJ22
4C058JJ24
4C180AA02
4C180AA05
4C180AA07
4C180AA10
4C180BB15
4C180CB01
4C180CC04
4C180EA26X
4C180EA28X
4C180EA34X
4C180EA36X
4C180EA57X
4C180EB05X
4C180EB06X
4C180EB15X
4C180EB17X
4C180EB23X
4C180EB24X
4C180EB34X
4C180GG06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特殊清掃現場における,オゾンを用いない清掃および消臭方法を提供する。
【解決手段】対象箇所の残置物に,液体殺菌剤を噴霧・散布する殺菌剤処理工程と,対象箇所に,固着剤を散布し,残置物を固着化させる残置物固着化工程と,固着化された固着化残置物を収集除去する,固着化残置物除去工程と,対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧して殺菌洗浄を行う殺菌洗浄工程と,対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧し浸透させる浸透工程と,対象箇所を温めることにより,浸透した液体殺菌剤とともに吹き出る体液等をふき取る殺菌剤ふき取り工程と,対象箇所を十分に乾燥させた後,染み抜き剤を塗布し,染み抜き剤を浸透させる染み抜き剤浸透工程と,染み抜き剤をふき取る,染み抜き剤ふき取り工程と,洗浄剤により,染み抜き剤の中和洗浄を行う中和洗浄工程と,対象箇所における室内の空間消臭を行う空間消臭工程と,からなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊清掃現場における清掃および消臭方法であって,
対象箇所の残置物に,液体殺菌剤を噴霧・散布する殺菌剤処理工程と,
対象箇所に,固着剤を散布し,残置物を固着化させる残置物固着化工程と,
固着化された固着化残置物を収集除去する,固着化残置物除去工程と,
対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧して殺菌洗浄を行う殺菌洗浄工程と,
対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧し浸透させる浸透工程と,
対象箇所を温めることにより,浸透した液体殺菌剤とともに吹き出る体液等をふき取る殺菌剤ふき取り工程と,
対象箇所を十分に乾燥させた後,染み抜き剤を塗布し,染み抜き剤を浸透させる染み抜き剤浸透工程と,
染み抜き剤をふき取る,染み抜き剤ふき取り工程と,
洗浄剤により,染み抜き剤の中和洗浄を行う中和洗浄工程と,
対象箇所における室内の空間消臭を行う空間消臭工程と,
からなることを特徴とする特殊清掃現場における清掃および消臭方法。
【請求項2】
液体殺菌剤が,クロロフェノール系殺菌剤である請求項1に記載の清掃および消臭方法。
【請求項3】
クロロフェノール系殺菌剤として,オルトベンジルパラクロロフェノール,オルトフェニルフェノール,パラターシャリーアミルフェノールのいずれか又は複数を含む請求項2に記載の清掃および消臭方法。
【請求項4】
固着剤が,吸水性化合物を主要成分とする請求項1に記載の清掃および消臭方法。
【請求項5】
吸水性化合物として,ポリアクレートナトリウム,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミド,珪藻シリカ,ゼオライト,これらのいずれか又は複数から選択される請求項4に記載の清掃および消臭方法。
【請求項6】
固着剤が,さらに殺菌化合物を含む請求項5に記載の清掃および消臭方法。
【請求項7】
空間消臭工程において,二酸化塩素水を用いた燻蒸処理により消臭を行う請求項1から6のいずれかに記載の清掃及び消臭方法。
【請求項8】
空間消臭工程において,灯酸化触媒を主成分とする薬剤を噴霧することにより消臭を行う請求項1から6のいずれかに記載の清掃および消臭方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,特殊清掃現場における清掃および消臭方法に関する。さらに詳しくいうと本発明は,狭義の特殊清掃現場として,マンションや一軒家等における孤独死などの遺体発見現場における清掃および消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊清掃の現場では,通常では考えられない様々な物が残っている。
すなわち,死後発見された遺体は腐乱し,強烈な死臭を漂わせることとなる。また,遺体は,蠅や蛆・ゴキブリなどの害虫に覆われ,腐り落ちた肉は塊となっている。
【0003】
かかる場合,どのような遺体であっても遺体そのものは,警察により引き取られ処分される。
一方,腐乱して崩れ落ちた皮膚や流れでた腐敗液・血液,抜け落ちた毛髪などは,そのまま現場に残置されることとなる。そのため,これら残置物の処理や,残置物により汚染された部屋の清掃等は,遺族や家主などが行わなければならない。
通常,このような現場においては,精神的な動揺もさることながら,強烈な臭い,劣悪な衛生環境であることも多い。加えて,遺体から出た腐敗液や血液は,壁や床板・床下にまで染み込んでいることも多く,このことが原因で,いつまでも臭いが取れなかったり,害虫が発生したりしてしまう。
これらの事情もあって,特殊清掃の現場は,専門家でなければ適切な処置を行うことは極めて困難であり,高度な技術を要するものといえる。このような特殊清掃現場における消臭方法に関する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-096694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は,所定の清掃作業を行った後,特殊清掃現場における家屋をオゾン燻蒸することにより消臭を行う技術が開示されている。かかる技術は,家屋空間をオゾン燻蒸することで消臭しうる点において有用である。
しかるに,かかる消臭効果を発揮しうるオゾン濃度は,人体への影響も少なくないため取り扱いには高度な専門性が必要と特殊な機械が必要である。そのため先行技術は,比較的,煩雑な作業となりうるとともに,コストがかかる点において課題を有するものである。
【0006】
上記事情を背景として,本発明では,オゾンを用いない特殊清掃現場における清掃ならびに消臭方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は,鋭意研究の結果,複数の工程を組み合わせるとともに,対象箇所の深部に浸透する体液等を効率よく除去する手法を見出し,発明を完成させたものである。
本発明は,以下の構成からなる。
【0008】
[1]特殊清掃現場における清掃および消臭方法であって,
対象箇所の残置物に,液体殺菌剤を噴霧・散布する殺菌剤処理工程と,
対象箇所に,固着剤を散布し,残置物を固着化させる残置物固着化工程と,
固着化された固着化残置物を収集除去する,固着化残置物除去工程と,
対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧して殺菌洗浄を行う殺菌洗浄工程と,
対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧し浸透させる浸透工程と,
対象箇所を温めることにより,浸透した液体殺菌剤とともに吹き出る体液等をふき取る殺菌剤ふき取り工程と,
対象箇所を十分に乾燥させた後,染み抜き剤を塗布し,染み抜き剤を浸透させる染み抜き剤浸透工程と,
染み抜き剤をふき取る,染み抜き剤ふき取り工程と,
洗浄剤により,染み抜き剤の中和洗浄を行う中和洗浄工程と,
対象箇所における室内の空間消臭を行う空間消臭工程と,
からなることを特徴とする特殊清掃現場における清掃および消臭方法。
【0009】
[2]液体殺菌剤が,クロロフェノール系殺菌剤である[1]に記載の清掃および消臭方法。
[3]クロロフェノール系殺菌剤として,オルトベンジルパラクロロフェノール,オルトフェニルフェノール,パラターシャリーアミルフェノールのいずれか又は複数を含む[2]に記載の清掃および消臭方法。
【0010】
[4]固着剤が,吸水性化合物を主要成分とする[1]に記載の清掃および消臭方法。
[5]吸水性化合物として,ポリアクレートナトリウム,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミド,珪藻シリカ,ゼオライト,これらのいずれか又は複数から選択される[4]に記載の清掃および消臭方法。
[6]固着剤が,さらに殺菌化合物を含む[5]に記載の清掃および消臭方法。
【0011】
[7]空間消臭工程において,二酸化塩素水を用いた燻蒸処理により消臭を行う[1]から[6]のいずれかに記載の清掃及び消臭方法。
[8]空間消臭工程において,灯酸化触媒を主成分とする薬剤を噴霧することにより消臭を行う[1]から[6]のいずれかに記載の清掃および消臭方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により,オゾンを用いない特殊清掃現場における清掃ならびに消臭方法の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の特殊清掃現場における清掃および消臭方法の工程を説明した図。
図2】本発明の特殊性清掃現場における清掃および消臭方法を行っている様子を示した図
図3】本発明の特殊性清掃現場における清掃および消臭方法を行っている様子を示した図
図4】本発明の特殊性清掃現場における清掃および消臭方法を行っている様子を示した図
図5】本発明の特殊性清掃現場における清掃および消臭方法を行っている様子を示した図
図6】本発明の特殊性清掃現場における清掃および消臭方法を行っている様子を示した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の特殊清掃現場における清掃および消臭方法について説明を行う。
本発明の特殊清掃現場における清掃および消臭方法は,対象箇所の残置物に,液体殺菌剤を噴霧・散布する殺菌剤処理工程と,対象箇所に,固着剤を散布し,残置物を固着化させる残置物固着化工程と,固着化された固着化残置物を収集除去する,固着化残置物除去工程と,対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧して殺菌洗浄を行う殺菌洗浄工程と,対象箇所に,液体殺菌剤を噴霧し浸透させる浸透工程と,対象箇所を温めることにより,浸透した液体殺菌剤とともに吹き出る体液等をふき取る殺菌剤ふき取り工程と,対象箇所を十分に乾燥させた後,染み抜き剤を塗布し,染み抜き剤を浸透させる染み抜き剤浸透工程と,染み抜き剤をふき取る,染み抜き剤ふき取り工程と,洗浄剤により,染み抜き剤の中和洗浄を行う中和洗浄工程と,対象箇所における室内の空間消臭を行う空間消臭工程と,からなることを特徴とする。
本発明により,オゾンを用いることなく,残置物の衛生的な処置・除去,体液等の分解・殺菌処理,対象箇所外観の原状回復・殺菌,室内の消臭,これらを効率的かつ安全に行うことが可能となる効果を有する。
【0015】
本発明の特殊清掃現場における清掃および消臭方法について,図1を用いて説明を行う。
<<残置物の衛生的な処置・除去(S1からS4)>>
本発明において残置物を衛生的に処置しつつ除去するための一連の工程として,殺菌剤処理工程S1,残置物固着化工程S2,固着化残置物除去工程S3,殺菌洗浄工程S4が挙げられる。
【0016】
殺菌剤処理工程S1は,対象箇所の残置物に,液体殺菌剤を噴霧・散布(以下,噴霧又は散布することを「噴霧等」と称する)する工程である。
すなわち,遺体そのものは警察により引き取られるものの,遺体があった場所やその周辺(以下,「対象箇所」)には,腐乱して崩れ落ちた皮膚や流れでた腐敗液・血液,また,抜け落ちた毛髪などが残置物として残されている。残置物そのものならびにこれの周辺は,悪臭を伴うとともに,細菌やウイルスなどで極めて不衛生な状態となっている。
このような事情から,殺菌剤処理工程は,殺菌剤を噴霧等することで,残された残置物を大まかに除去する際の予備的処置として行うものである。
【0017】
殺菌剤処理工程S1において用いる液体殺菌剤は,残置物に含まれる細菌やウイルスなどに対して強力な殺菌効果を発揮しうる殺菌剤である限り特に限定する必要はなく,種々のものを用いることができる。
このような液体殺菌剤として,例えば,クロロフェノール系殺菌剤,アルコール系殺菌剤,クロルヘキシジン系殺菌剤を用いることができ,好ましくはクロロフェノール系殺菌剤を用いることができる。
クロロフェノール系殺菌剤としては,例えば,オルトベンジルパラクロロフェノール,オルトフェニルフェノール,パラターシャリーアミルフェノールなどを単独もしくは組み合わせて用いることができる。
アルコール系殺菌剤としては,例えば,エタノール,イソプロピルアルコールなどを単独もしくは組み合わせて用いることができる。
クロルヘキシジン系殺菌剤としては,例えば,クロルヘキシジングルコン酸塩,クロルキシジンなどを単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0018】
残置物固着化工程S2は,残置物に対して固着剤を散布し,残置物を固着化させる工程である。
すなわち,液体殺菌剤が噴霧等された残置物に,固着剤を散布し,かき混ぜるなどすることで,残置物を泥状ないし固体状とする。残置物固着化工程は,この固着化した残置物を,スクレーパー等でかき集めて一括除去するための予備的処置として行うものである。
残置物固着化工程は,残置物の固着化が可能である限り特に限定する必要はなく,種々の固着剤を用いることができる。
固着剤としては,吸水性化合物を主成分とする固着剤を用いればよい。吸水性化合物としては,例えば,ポリアクレートナトリウム,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミド,珪藻シリカ,ゼオライトなどが挙げられ,これらを単独しくは組み合わせて用いることができる。
固着剤は,殺菌成分を含むことが好ましい。これにより,残置物のより効果的な殺菌が可能となり,その後の処置を,より衛生的に行うことが可能となる効果を有する。
【0019】
固着化残置物除去工程S3は,殺菌剤処理工程S1と残置物固着化工程S2により,殺菌処置を施しながら泥状ないし固体状となった固着化残置物を,収集除去するための工程である。
固着化残置物除去工程は,固着化された残置物の収集除去が可能である限り特に限定する必要はなく,種々の手法を用いることができる。
固着化残置物除去工程では,典型的には,固着化された残置物を,スクレーパーなどでかき集めて,塵取りを使用して除去することにより行うことができる。
【0020】
殺菌洗浄工程S4は,洗浄液として殺菌剤を用いることで,対象箇所を洗浄しつつ殺菌処置を施す工程である。
すなわち,固着化された残置物の大まかな除去後,細かく残った残置物を収集・除去しつつ,収集除去の際に液体殺菌剤を用いることで,残置物の完全な除去と対象箇所の殺菌を行うものである。
殺菌洗浄工程S4において用いられる液体殺菌剤は,前述の殺菌剤処理工程S1と同じものを用いればよい。
殺菌洗浄工程S4においては,かかる液体状菌剤の噴霧等とこれのふき取りにより行われる。また,対象箇所の状況に応じて,これら噴霧等とふき取りを繰り返すなどして,対象箇所を洗浄しつつ,殺菌処理を施すものである。
また,殺菌洗浄工程S4においては,液体殺菌剤を噴霧等しつつ,ランチャー,ブラシなどを使用して,ワックス剥離や洗浄を行ったり,スクレーパーでの収集除去を行うなどして,洗浄を行うことができる。
【0021】
<<残置物処理後の体液等の分解・殺菌処理(S5,S6)>>
本発明において,残置物を処理した後,対象箇所における体液等の分解・殺菌処理を行うための工程として,殺菌剤浸透工程S5,体液等ふき取り工程S6が挙げられる。
【0022】
殺菌剤浸透工程S5は,対象箇所に液体殺菌剤を浸透させることで,対象箇所の表面のみならず,深部までの殺菌洗浄を行うための工程である。合わせて,対象箇所の深部に浸透した体液等のふき取りを行うための予備的処置としても行われる。
殺菌剤浸透工程S5においては,液体殺菌剤を塗布し,これを浸透させるための処置を施すことで行われる。
かかる処置として,殺菌剤を塗布した後,一定程度の時間を置くことで,殺菌剤の浸透を図るなどすればよい。
また,殺菌剤浸透工程S5において,殺菌剤塗布後,シートを被せて静置することが好ましい(シート被膜工程)。これにより,殺菌剤がより浸透しやすくなり,後述する体液等の抜き取りをより効率的とする効果を有する。
シートとしては,殺菌剤の浸透が図れる限り特に限定する必要はなく,種々のものを用いることができる。シートとして,好ましくは,使い捨てが可能なシートを用いることができ,典型的には,ペーパーシートを用いることができる。
【0023】
体液等ふき取り工程S6は,浸透させた殺菌剤とともに,体液を抜き出して(抜出処置工程)ふき取る工程である。
すなわち,抜出処置を行うことで,浸透した殺菌剤とともにふき出る体液等をふき取りつつ,深部の洗浄,殺菌,消臭を行うものである。
かかる体液を抜き出す手法としては,加温処置を行うことができる(加温処置工程)。すなわち,殺菌剤を浸透させた箇所において,ヒートガンなどにより加温を行うことで,内部に浸透した殺菌剤と共に体液等が噴き出てくる。この噴き出た体液をペーパーシート等でふき取ることで,体液のふき取りが可能となる。
また,対象箇所が畳の場合は,対象箇所にシートを被せて,バイブレーターを用いて振動を与える(振動処置工程)ことで,体液等が噴き出てくる。噴き出た体液等は,ペーパーシートに浸み込むことから,この一連の作業により,体液等の抜出ならびにふき取りを効果的に行うことができる。
【0024】
<<対象箇所外観の原状回復・殺菌>>
本発明において,対象箇所外観の原状回復・殺菌のための工程として,染み抜き剤浸透工程S7,染み抜き剤ふき取り工程S8,中和洗浄工程S9が挙げられる。
【0025】
染み抜き剤浸透工程S7は,対象箇所に染み抜き剤を浸透させ,シミを除去するための予備的処置として行う工程である。
すなわち,残置物の処理,ならびに体液等の分解・殺菌処理を行った後の対象箇所は,変色した状態となっていることが多い。そのため,変色した対象箇所の染み抜きを行うことで,対象箇所の外観を自然な状態としつつ(原状回復),殺菌・消臭を行うものである。
染み抜き剤浸透工程S7では,残置物処理後の体液等の分解・殺菌処理を行った後(体液等ふき取り工程S6後),対象箇所を十分に乾燥させてから,染み抜き剤を塗布し,シートを被せ,静置する。シート下を適時確認しつつ,十分な染み抜きが確認出来た後,染み抜き剤のふき取りを行う(染み抜き剤ふき取り工程S8)。
かかる静置を行う時間としては,典型的には,20分から120分,好ましくは30分から90分,より好ましくは30分から80分,特に好ましくは30分から70分,最も好ましくは30分から60分とすることができる。
染み抜き剤としては,染み抜きが可能である限り特に限定する必要はなく,種々の染み抜き剤を用いることができる。
染み抜き剤として,木製床や畳,コンクリートなどに適用が可能な染み抜き剤である限り特に限定する必要はなく種々の染み抜き剤を用いることができる。このような染み抜き剤として,好ましくは,苛性ソーダ,過酸化水素,などを用いることができる。
【0026】
染み抜き剤をふき取った後は,中和洗浄を行う(中和洗浄工程S9)。中和洗浄では,対象箇所を水で洗浄しつつ,十分に乾燥して行うことができる。
【0027】
<<空間消臭工程S10>>
空間消臭工程S10は,残置物の処理ならびに対象箇所の原状回復を行った後,対象箇所が存する室内(以下,単に「室内」という)の空間消臭を行う工程である。
すなわち,対象箇所に対して重点的な殺菌・消臭処置を行った後であっても,室内空間は,臭いが残るのが通常である。そのため,残置物等の処理後に,改めて室内空間の殺菌を兼ねて,消臭処置を行うものである。
【0028】
空間消臭工程においては,二酸化塩素水を用いた燻蒸処理により行うことができる(二酸化塩素燻蒸処理工程)。
すなわち,下記の一連の手順により行うことができる。
(1) 室内を,窓を閉めて密閉した状態とする。
(2) 室内湿度が15から20%程度になるまで,エアコンやスポットヒーターなどを用いて室内を加温する。温度の目安として,30から35℃の状態を保つ。
(3) 湿度の十分な低下を確認した後,室内の窓を開けて,20分程度,通気を行う。必要に応じて,サーキュレーターを用い,室内の臭気を室外に排出する。
(4) 臭気の状況に応じて,(1)から(3)の手順(臭気排出工程)を,2から3回程度繰り返す。
(5) 室内を,窓を閉めて密閉とした状態とし,スポットヒーター等を用いて,室内温度を上昇させ,室内湿度を低下させる。
(6) 二酸化塩素水の噴霧を行い,室内全体を燻蒸状態とする。
(7) 燻蒸終了後,窓を開けて通気を行い,サーキュレーターを使用して,数日(2から3日)をめどに室内を乾燥させる。
【0029】
空間消臭工程においては,灯酸化触媒を主成分とする薬剤を噴霧することでも行われる。
すなわち,下記の一連の手順により行うことができる(灯酸化触媒含有薬剤処理工程)。
(1) 鉄酸化チタンならびに活性剤に水を加え,灯酸化触媒を混合させた薬剤を作製する。
(2) 室内を,窓を閉めた状態として,(1)の薬剤を室内全体に十分に塗布する。
(3) 塗布した後,窓を開けて通気を行う。さらにサーキュレーターを用いて,2から3日ほど室内を乾燥させる。
【実施例0030】
本発明について,図面を例にとり,さらに説明を行う。
【0031】
図2から図6は,本発明の特殊性清掃現場における清掃および消臭方法を行っている様子を示した図である。
【0032】
1.畳の上の対象箇所に,液体状の強力殺菌剤を噴霧している(図2,a)。強力殺菌剤としては,オルトベンジルパラクロロフェノール,ならびにオルトフェニルフェノールを主成分とする薬剤を用いている(製品名,テクトロール。株式会社フォンシュレーダージャパン製)。
2.続いて,固着剤を散布し(図2,b),これをスクレーパーでかき混ぜ泥状とする(図2,c)。固着剤としては,ポリアクレートナトリウム,珪酸シリカ,殺菌剤を含むものを用いている(製品名,サニティア。STAINSHEILED製)。
3.泥状となった残置物をスクレーパーでかき集めて,塵取りを使って除去を行う(図2,d)。
4.残置物の除去後,液体状殺菌剤をさらに噴霧して,対象箇所の表面の洗浄を行う(図2,e)。対象箇所は,残置物は除去されているものの,シミが残った状態となっている(図2,f)。
【0033】
5.対象箇所に,液体状殺菌剤を噴霧し,ペーパーシートを載せた状態とする(図3,g)。
6.さらに,上からペーパーシートを載せて,バイブレーターにより振動を与えて,畳に浸透した体液等を,殺菌剤と共にふき取る(図3,h)。
7.体液等の抜き取り後,染み抜き剤を塗布(図4,i),ペーパータオルを載せて(図4,j),しみの抜け具合を適時確認する。染み抜きにより,しみが消えている様子が確認できる(図5,k)。染み抜き剤としては,苛性ソーダ,ならびに過酸化水素水を用いている(製品名,染み抜き剤A,染み抜き剤B。株式会社iPS製)。
【0034】
8.図5は,ヒートガンを用いて加温を行っている様子を示した図である。ヒートガンにより加温を行いながら,噴き出る体液等をペーパータオルや雑巾でふき取りを行う。
【0035】
9.図5は,灯酸化触媒薬液による消臭の様子を示した図である。壁や天井など,まんべんなく薬剤を吹き付けた後(o,p),サーキュレーターで通気を行っている(q)。灯酸化触媒としては,二酸化チタン,アパタイト,過酸化物,クエン酸,水からなる灯酸化触媒を用いている(製品名,エコララメガクリーン/エコララハイブリッド。グローバル・エコロジー株式会社製)。
【0036】
10.図6は,二酸化塩素水による燻蒸の様子を示した図である。室内の臭気を排出させ,十分に乾燥させた後,二酸化塩素水を噴霧し,燻蒸を行う。燻蒸後は,サーキュレーターなどを用いて,通気を行う。

図1
図2
図3
図4
図5
図6