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特開2024-179639コンクリート構造物の変状情報自動記録システム及びコンクリート構造物の変状情報自動記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179639
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の変状情報自動記録システム及びコンクリート構造物の変状情報自動記録方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20241219BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241219BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098636
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】東 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】遠隔計測によって作業員の移動作業を削減し、変状位置および変状面積の計算と記録を自動化可能とした。
【解決手段】遠隔計測で取得した変状領域を含むコンクリート構造物の3次元位置情報データの点群データから生成された3Dメッシュモデル(3DMモデル)を入力する位置情報データ入力手段と、入力された3DMモデルから2D画像にレンダリングし、2D画像上で領域分割をすることにより領域分割後の2D画像上の変状領域を認識する変状領域認識手段と、認識された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに付与して領域分割付きの3DMモデルを作成する3Dメッシュ化手段と、作成された3DMモデルの位置と、予め保存されている3DMモデルに対応するコンクリート構造物の3D設計モデルの位置との複数の対応点を選択し、誤差を最小化するように位置合せを行う変状領域位置合せ手段と、変状面積抽出手段と、変状領域記録手段と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔計測で取得した変状領域を含むコンクリート構造物の3次元位置情報データの点群データから生成された3Dメッシュモデルを入力する位置情報データ入力手段と、
前記位置情報データ入力手段により入力された3Dメッシュモデルから2D画像にレンダリングし、前記2D画像上で領域分割をすることにより領域分割後の2D画像上の変状領域を認識する変状領域認識手段と、
前記変状領域認識手段により認識された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに付与して領域分割付きの3Dメッシュモデルを作成する3Dメッシュ化手段と、
前記3Dメッシュ化手段により作成された3Dメッシュモデルの位置と、予め保存されている前記3Dメッシュモデルに対応するコンクリート構造物の3D設計モデルの位置との複数の対応点を選択し、誤差を最小化するように位置合せを行う変状領域位置合せ手段と、
前記変状領域位置合せ手段により誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域の面積を抽出する変状面積抽出手段と、
前記変状領域面積抽出手段により抽出された変状領域の面積を記録する変状領域記録手段と、
を備えたことを特徴とするコンクリート構造物の変状情報自動記録システム。
【請求項2】
前記変状面積抽出手段は、前記誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域を凸包で包み、前記凸包内部の3D設計モデル部分の面積を抽出することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の変状情報自動記録システム。
【請求項3】
前記変状領域認識手段は、さらに前記領域分割のユーザ補助を行う人工知能(AI)を有し、前記人工知能(AI)によりユーザ補助しながら領域分割を行うこと
を特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート構造物の変状情報自動記録システム。
【請求項4】
前記3Dメッシュ化手段は、領域分割された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに投影し、領域分割付き3Dメッシュモデルを生成すること
を特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の変状情報自動記録システム。
【請求項5】
前記変状領域位置合せ手段は、前記3Dメッシュモデルの位置と前記3D設計モデルの位置との3点程度対応点を選択し、選択された対応点同士の誤差を最小化すること
を特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の変状情報自動記録システム。
【請求項6】
遠隔計測で取得した変状領域を含むコンクリート構造物の3次元位置情報データの点群データから生成された3Dメッシュモデルを入力する位置情報データ入力ステップと、
前記位置情報データ入力ステップにより入力された3Dメッシュモデルから2D画像にレンダリングし、前記2D画像上で領域分割をすることにより領域分割後の2D画像上の変状領域を認識する変状領域認識ステップと、
前記変状領域認識ステップにより認識された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに付与して領域分割付きの3Dメッシュモデルを作成する3Dメッシュ化ステップと、
前記3Dメッシュ化ステップにより作成された3Dメッシュモデルの位置と、予め保存されている前記3Dメッシュモデルに対応するコンクリート構造物の3D設計モデルの位置との複数の対応点を選択し、誤差を最小化するように位置合せを行う変状領域位置合せステップと、
前記変状領域位置合せステップにより誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域の面積を抽出する変状面積抽出ステップと、
前記変状領域面積抽出ステップにより抽出された変状領域の面積を記録する変状領域記録ステップと、
を特徴とするコンクリート構造物の変状情報自動記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の変状情報自動記録システム及びコンクリート構造物の変状情報自動記録方法に関し、特にコンクリート構造物の変状位置情報と変状面積情報を自動的に記録するのに好適な自動記録システム及び自動記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物、例えば橋梁(橋桁、橋脚、橋台)、道路、トンネル、ケーソン、及びビル等のコンクリート構造物には各種の変状が発生し、時間と共に進行していくため、コンクリート構造物の安全を確保するには、変状の状況に応じて補修を行う必要がある。コンクリート構造物の変状箇所を枠で囲った領域を変状領域という。コンクリート部材の場合の変状の種類としては、はらみだし、ひび割れ、うき、はく離、剥落、部材等の変形、変色(黒化、白化)、さび、湧水の発生(痕跡)、湿潤等がある。変状領域の補修を行う際は、変状箇所を含む領域を四角の枠で囲み、変状箇所の周辺も含めて補修を行う。この変状領域の例を図12に示す。図12の例では、変状領域121の中に変状箇所122があり、道路橋の上部構造の側面部に変状領域がある例を示している。従来、変状の検査は作業員による目視あるいは器具を用いた検査により行われてきたが、作業時間及びコスト、作業現場の環境等の問題により、近年は撮像装置及び/又は画像処理装置により電子的な処理が行われるようになってきている。
【0003】
コンクリート構造物は、例えばコンクリート構造物が道路橋であれば、国土交通省 道路局 の道路橋定期点検要領などに、定期点検の頻度、定期点検の体制、状態の把握、健全性の診断、記録などが決められている。
【0004】
従来のコンクリート構造物の変状領域の検査(点検)は、以下のように行っていた。先ず、検査対象のコンクリート構造物がある場所まで作業員が移動し、作業員がメジャー(測定器)を変状領域(変状部分)にあてて変状面積を手計測する。次に、手計測値から変状面積の算出を手作業で行い、計測値を手作業で検査調書に記入し、記録する。次に、変状位置の手計測を行う。すなわち、コンクリート構造物上のランドマーク点などから変状部までの距離をメジャー(測定器)で計測する。次に、変状位置の算出及び記録を行う。変状位置の算出された計測値を手作業で2D図面に記録する。
【0005】
国土交通省により推進されていたBIM/CIMが建設業界又は土木業界に適用して2023年より義務化されており、3次元モデルの導入や活用が期待されている。BIM(Building/ Construction Information Modeling)とは、計画・調査・設計段階から3次元モデルを導入し、その後の施工、維持管理の各段階においても、情報を充実させながらこれを活用し、あわせて事業全体にわたる関係者間で情報を共有することにより、一連の建設生産・管理システムにおける受発注者双方の業務効率化・高度化を図るものをいう。3次元モデルに部材(部品)等の情報を結びつければ生産性の向上のみならず品質の向上も可能となる。この3次元モデルに各種の情報(属性情報等)を結び付け利活用していくことをBIM/CIMと呼ぶ。
【0006】
このようなCIMに関連する技術としては、例えばコンクリート構造物の検査結果および修復内容を管理者に把握しやすくなる技術を提供したコンクリート構造物管理装置が挙げられる(特許文献1)。
【0007】
また、コンクリート表面の変状領域の検出方法の例としては、特許文献2が挙げられる。特許文献2は、トンネル覆工面などのコンクリート表面を撮像した元画像データを画像処理し、当該コンクリート表面に発生したひび割れなどからの漏水箇所を、所定の形状と大きさの漏水画像として表示させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-154465号公報
【特許文献2】特開2012-202859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のコンクリート構造物の変状領域の検査は、作業員は検査対象物が存在する現場まで移動し、変状面積を手計測で行い、計測値を手作業で検査調書に記入したり、変状位置をメジャーによる手計測で行い、計測値を手作業で2D図面に記録していたので、作業員の移動が大変で、作業工数がかかるという問題があった。
【0010】
しかしながら、特許文献1の開示技術では、コンクリート構造物の選択された部分の検査結果および修復内容の情報を、選択された部分と関連付けて2次元または3次元の画像を画面に表示させることを行っていたが、変状位置や変状面積を自動記録することまでは考慮されていなかった。
【0011】
上記特許文献2では、トンネル覆工面などのコンクリート表面の漏水箇所を検出することができるが、コンクリート表面の欠損箇所を検出することができなかった。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、遠隔計測によって作業員の移動作業を削減し、変状位置および変状面積の計算と記録を自動化可能とし、作業時間の短縮および労力の削減が図れるコンクリート構造物の変状情報自動記録システム及びコンクリート構造物の変状情報自動記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係るコンクリート構造物の変状情報自動記録システムは、遠隔計測で取得した変状領域を含むコンクリート構造物の3次元位置情報データの点群データから生成された3Dメッシュモデルを入力する位置情報データ入力手段と、前記位置情報データ入力手段により入力された3Dメッシュモデルから2D画像にレンダリングし、前記2D画像上で領域分割をすることにより領域分割後の2D画像上の変状領域を認識する変状領域認識手段と、前記変状領域認識手段により認識された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに付与して領域分割付きの3Dメッシュモデルを作成する3Dメッシュ化手段と、前記3Dメッシュ化手段により作成された3Dメッシュモデルの位置と、予め保存されている前記3Dメッシュモデルに対応するコンクリート構造物の3D設計モデルの位置との複数の対応点を選択し、誤差を最小化するように位置合せを行う変状領域位置合せ手段と、前記変状領域位置合せ手段により誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域の面積を抽出する変状面積抽出手段と、前記変状領域面積抽出手段により抽出された変状領域の面積を記録する変状領域記録手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
第2発明に係るコンクリート構造物の変状情報自動記録システムは、第1発明において、前記変状面積抽出手段は、前記誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域を凸包で包み、前記凸包内部の3D設計モデル部分の面積を抽出することを特徴とする。
【0015】
第3発明に係るコンクリート構造物の変状情報自動記録システムは、第1発明又は第2発明において、前記変状領域認識手段は、さらに前記領域分割のユーザ補助を行う人工知能(AI)を有し、前記人工知能(AI)によりユーザ補助しながら領域分割を行うことを特徴とする。
【0016】
第4発明に係るコンクリート構造物の変状情報自動記録システムは、第1発明において、前記3Dメッシュ化手段は、領域分割された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに投影し、領域分割付き3Dメッシュモデルを生成することを特徴とする。
【0017】
第5発明に係るコンクリート構造物の変状情報自動記録システムは、第1発明において、前記変状領域位置合せ手段は、前記3Dメッシュモデルの位置と前記3D設計モデルの位置との3点程度対応点を選択し、選択された対応点同士の誤差を最小化することを特徴とする。
【0018】
第6発明に係るコンクリート構造物の変状情報自動記録方法は、遠隔計測で取得した変状領域を含むコンクリート構造物の3次元位置情報データの点群データから生成された3Dメッシュモデルを入力する位置情報データ入力ステップと、前記位置情報データ入力ステップにより入力された3Dメッシュモデルから2D画像にレンダリングし、前記2D画像上で領域分割をすることにより領域分割後の2D画像上の変状領域を認識する変状領域認識ステップと、前記変状領域認識ステップにより認識された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに付与して領域分割付きの3Dメッシュモデルを作成する3Dメッシュ化ステップと、前記3Dメッシュ化ステップにより作成された3Dメッシュモデルの位置と、予め保存されている前記3Dメッシュモデルに対応するコンクリート構造物の3D設計モデルの位置との複数の対応点を選択し、誤差を最小化するように位置合せを行う変状領域位置合せステップと、前記変状領域位置合せステップにより誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域の面積を抽出する変状面積抽出ステップと、前記変状領域面積抽出ステップにより抽出された変状領域の面積を記録する変状領域記録ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明~第6発明によれば、遠隔計測によって作業員の移動作業が減り、変状位置および変状面積の計算と記録を自動化可能となるので、作業時間を短縮することができ、労力の削減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態におけるコンクリート構造物の変状情報自動記録システムの全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態における3D設計モデルデータを保管しているコンクリート構造物管理装置の概略構成図である。
図3図3は、本実施形態におけるコンクリート構造物の変状情報自動記録システムの処理動作を示すフローチャートである。
図4図4は、図1の本実施形態におけるコンクリート構造物の変状情報自動記録システムのハードウェア構成例を示す図である。
図5図5は、本実施形態におけるコンクリート構造物の変状情報自動記録システムの処理全体の流れを示す図である。
図6図6は、変状領域の認識処理の流れを示す図である。
図7図7は、認識された変状箇所を含む変状領域の一例を示す図である。
図8図8は、3Dメッシュ化部の処理の流れを示す図である。
図9図9は、変状領域位置合せ部の処理の流れを示す図である。
図10図10(a)は、変状面積抽出部の凸包処理の流れを示す図である。図10(b)は、変状面積抽出部の面積抽出処理の流れを示す図である。
図11図11は、抽出した変状面積の一例を示す図である。
図12図12は、変状箇所を含む変状領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用したコンクリート構造物の変状情報自動記録システムついて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0022】
<本実施形態>
図1は、本発明を適用した変状情報自動記録システム全体の構成図である。
【0023】
<本実施形態 構成>
本実施形態の変状情報自動記録システム3は、図1に示すように、遠隔計測装置としての計測装置1と、コンクリート構造物管理装置2とが、通信ネットワーク4を介して接続されている。計測装置1は、多視点画像撮影用のデジタルカメラ、3次元レーザ測定装置、トータルステーション、ドローンに搭載されたデジタルカメラやレーザ測定器、ロボットに搭載されたカメラなど、種々の計測装置を利用することができる。また、デジタルビデオカメラの動画撮影による静止画、デジタルカメラの動画撮影モードにおける静止画、作業員等がデジタルカメラで撮影した画像等を利用しても良い。デジタルカメラによる多視点画像の場合は、複数の多視点画像を統合して3次元の位置情報を作成するか、別途位置情報を取得し、3次元位置情報から3Dメッシュモデルを作成する。コンクリート構造物管理装置2は、コンクリート構造物の3D設計モデル(例えば、3DCADデータ)などを保管し、点検データや補修データと関連付けて管理されている。これらの3D設計モデルはBIM/CIMのシステムを構築し、データの利活用に使用することができ、また必要に応じて測量、調査プロセス、計画・設計プロセス、維持管理プロセス、施工プロセス間でのモデル連携による効率化・高度化への展開が可能となる。コンクリート構造物管理装置2は、クラウドサーバ上に備えて、どこからでもアクセス可能なシステムを構築したり、変状情報自動記録システム3とコンクリート構造物管理装置を一体化構成としても良い。ここで、コンクリート構造物は、例えばコンクリートで構成された橋梁や、建築物等又はこれらの一部分である。本実施形態では、例えば図12に示すような道路橋の上部構造の側面部に変状領域があり、その中に変状領域がある一例について説明する。具体的には、コンクリートの変状箇所が欠損(欠け)の例について説明する。
【0024】
本実施形態の変状情報自動記録システム3は、詳細には、図1に示すように、位置情報データ入力部31と、変状領域認識部32と、3Dメッシュ化部33と、変状領域位置合せ部34と、変状面積抽出部35と、変状面積記録部36と、変状面積出力部37と、を有する。
【0025】
<本実施形態 構成の説明>
位置情報データ入力部31は、遠隔計測で取得した変状領域を含むコンクリート構造物の3次元位置情報データの点群データから生成された3Dメッシュモデルを入力する。
【0026】
変状領域認識部32は、位置情報データ入力部31により入力された3Dメッシュモデルから2D画像にレンダリングし、2D画像上で領域分割をすることにより領域分割後の2D画像上の変状領域を認識する。変状領域認識部32は、さらに前記領域分割のユーザ補助を行う人工知能(AI)を有し、前記人工知能(AI)によりユーザ補助しながら領域分割を行う。
【0027】
3Dメッシュ化部33は、変状領域認識部32により認識された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに付与して領域分割付きの3Dメッシュモデルを作成する。3Dメッシュ化部33は、領域分割された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに投影し、領域分割付き3Dメッシュモデルを生成する。
【0028】
変状領域位置合せ部34は、3Dメッシュ化部33により作成された3Dメッシュモデルの位置と、予め保存されている前記3Dメッシュモデルに対応するコンクリート構造物の3D設計モデルの位置との複数の対応点を選択し、誤差を最小化するように位置合せを行う。変状領域位置合せ部34は、3Dメッシュモデルの位置と3D設計モデルの位置との3点程度対応点を選択し、選択された対応点同士の誤差を最小化する。
【0029】
変状面積抽出部35は、変状領域位置合せ部34により誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域の面積を抽出する。例えば、変状面積抽出部35は、変状領域位置合せ部34により誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域を凸包で包み、前記凸包内部の3D設計モデル部分の面積を抽出しても良い。
【0030】
変状面積記録部36は、変状領域面積抽出部35により抽出された変状領域の面積を記録する。
【0031】
変状面積出力部37は、変状領域面積抽出部35により抽出された変状領域の面積を通信ネットワーク4を介してコンクリート構造物管理装置の保管部などに保存する。
【0032】
<本実施形態 コンクリート構造物管理装置>
図2は、図1のコンクリート構造物管理装置のブロック構成図である。
【0033】
本コンクリート構造物管理装置2は、図2に示すように、制御部21と、受付部22と、表示処理部23と、記憶装置24と、保管部25と、通信部26と、を有する。ここで、コンクリート構造物管理装置2は、クラウドサーバ上に構成しても良い。
【0034】
制御部21は、システム全体の制御を行う。
【0035】
受付部22は、画面に表示されたコンクリート構造物のユーザによる選択操作を受け付ける。ここで、ユーザには、現場監督やデータ管理者、システムエンジニア、工事関係者、保守点検者、維持管理者などが含まれる。
【0036】
表示処理部23は、記憶装置24に記憶されたコンクリート構造物を示す3D設計モデル(例えば、3DCADデータ)の画像を画面に表示する。
【0037】
表示処理部23は、少なくとも、記憶装置24に記憶されたコンクリート構造物を示す3D設計モデル(例えば、3DCADデータ)が含まれる。その他、計画、設計、施工、維持管理のための各種データが蓄積されているデータベースを有する。補修データなども設計データと関連付けされて記憶される。
【0038】
保管部25は、変状情報自動記録システム3の変状面積出力部37からから出力された変状面積(情報)の記憶装置24への保管などを行う。
【0039】
通信部26は、記憶装置24に蓄積された3D設計モデル(3DCADデータ)などを制御部21の制御下で変状情報自動記録システム3に送信する。
【0040】
<本実施形態 変状情報自動記録方法>
図3は、本実施形態の変状情報自動記録方法における処理フローチャートである。以下、図3のフローチャートに従って、処理フローについて説明する。下記一連の処理を変状情報自動記録ソフトウェアを実行させることにより行う。全体の流れを図5に示す。すなわち、図5の例では、遠隔計測で取得した位置情報データ(多視点画像又はレーザ計測からの3Dメッシュモデル)を入力する。その3Dメッシュモデルを2D画像にレンダリングし、変状領域をソフトウェア上で認識し、2D→3D変換を行い、コンクリート構造物の領域分割付き3Dメッシュモデルを生成する。コンクリート構造物管理装置等に蓄積された対応するコンクリート構造物の3D設計モデル(変状領域が無い構造物)を入力し、領域分割付き3D設計モデルから変状領域の面積の自動抽出を行い、自動記録を行うことができる。その出力結果の一例を示した。変状ID「001」のとき、変状面積が0.5m2、変状ID「002」のとき、変状面積が1m2、変状ID「003のとき、0.3m2、変状ID「004」のとき、0.4m2となっている。
【0041】
まず、遠隔計測で取得した変状領域を含むコンクリート構造物の3次元位置情報データの点群データから生成された3Dメッシュモデルを入力する位置情報データ入力ステップを実行する(ステップ301)。
【0042】
次に、図6に示すように、位置情報データ入力ステップ301により入力された3Dメッシュモデルから2D画像にレンダリングし、前記2D画像上で領域分割をすることにより領域分割後の2D画像上の変状領域を認識する変状領域認識ステップを実行する(ステップ302)。この認識結果を図7に示す。図7の例では、変状箇所71(欠損)がある変状領域72を、欠損が無い3D設計モデルを用いて自動的に変状領域の面積を算出することができるので、作業工数の削減が可能となる。
【0043】
次に、図8に示すように、変状領域認識ステップにより認識された2D画像上の変状領域を3Dメッシュに付与して領域分割付きの3Dメッシュモデルを作成する3Dメッシュ化ステップを実行する(ステップ303)。
【0044】
次に、図9に示すように、3Dメッシュ化ステップ303により作成された3Dメッシュモデルの位置と、予め保存されている前記3Dメッシュモデルに対応するコンクリート構造物の3D設計モデルの位置との複数の対応点を選択し、誤差を最小化するように位置合せを行う変状領域位置合せステップを実行する(ステップ304)。
【0045】
次に、図10(a)に示すように、変状領域位置合せステップ304により誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域を凸包で包み、図10(b)に示すように、前記凸包内部の3D設計モデル部分の面積を抽出する変状面積抽出ステップを実行する(ステップ304)。この変状面積抽出結果を図11に示す。変状面積抽出ステップ304において、誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域を凸包で包み、前記凸包内部の3D設計モデル部分の面積を抽出したが、誤差が最小化された3D設計モデルの変状領域の面積を自動抽出しても良い。
【0046】
次に、変状領域面積抽出ステップ305により抽出された変状領域の面積を記録する変状領域記録ステップを実行する(ステップ306)。
【0047】
さらに、変状領域面積抽出ステップ305により抽出された変状領域の面積を出力する変状領域出力ステップを実行しても良い(ステップ307)。これにより得られた結果をコンクリート構造物管理装置に保管することができる。
【0048】
本変状情報自動記録システム3は、例えば図4に示すように、筐体40と、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、保存部44と、インターフェースI/F45~47とを備える。CPU41と、ROM42と、RAM43と、保存部44と、インターフェースI/F45~47とは、内部バス50により接続される。図4の例では、本変状情報自動記録システム3をパーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、デスクトップPCなどのハードウェアで実現した例を示している。
【0049】
CPU41は、変状情報自動記録システム3全体を制御する。ROM42は、CPU41の動作コードを格納する。RAM43は、CPU41の動作時に使用される作業領域である。保存部44は、3Dメッシュモデルや3D設計モデル(3DCADデータ)のデータや各種情報が保存される。保存部44は、例えばHDD(Hard Disk Drive)の他、SSD(Solid State Drive)やSDカード、miniSDカード等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば変状情報自動記録システム3は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0050】
インターフェースI/F45は、計測装置1等と各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F46は、入力部48との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部48として、例えばキーボードが用いられ、変状情報自動記録システム3を利用するユーザ等は、入力部48を介して、各種情報又は変状情報自動記録システム3の制御コマンド等を入力する。I/F47は、表示部49との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部49は、保存部44に保存された判定結果等の各種情報、または変状情報自動記録システム3の各種処理状況等を出力する。表示部49として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0051】
保存部44は、例えば計測装置1から取得した3次元の位置情報及び3D設計モデルが記憶されるほか、変状位置および変状面積の計算に用いられるアルゴリズム等が記憶される。
【0052】
表示部49は、各種情報を表示する。表示部49は、例えば変状位置および変状面積の計算結果等を表示する。
【0053】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、遠隔計測によって作業員の移動作業が減り、変状位置および変状面積の計算と記録を自動化可能となるので、作業時間を短縮することができ、労力の削減につながる。また、ソフトウェア上での作業が主になるため、1人で作業が可能になるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0054】
1 計測装置
2 コンクリート構造物管理装置
3 変状情報自動記録システム
4 通信ネットワーク
21 制御部
22 受付部
23 表示処理部
24 記憶装置
25 保管部
26 通信部
31 位置情報データ入力部
32 変状領域認識部
33 3Dメッシュ化部
34 変状領域位置合せ部
35 変状面積抽出部
36 変状面積記録部
37 変状面積出力部
40 筐体
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 保存部
45、46、47 I/F
48 入力部
49 表示部
50 内部バス
71 変状箇所
72 変状領域
121 変状領域
122 変状箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12