(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179642
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】バルブの開閉位置検出装置、及びバルブ開閉位置学習プログラムを起動する方法
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
F16K37/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098643
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】594020363
【氏名又は名称】巴バルブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【復代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【復代理人】
【識別番号】100221556
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 隆章
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】菅 真人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 清治
【テーマコード(参考)】
3H065
【Fターム(参考)】
3H065BA01
3H065BA06
3H065BB11
3H065BC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バルブの状態をリモートモニタリングするためのバルブ状態監視装置によりバルブの全閉時の角度位置と全開時の角度位置とを簡易に把握する。
【解決手段】本開示のバルブ開閉位置検出装置は、バルブの回転動作に合わせて回転する磁石の生成する磁場により、バルブの作動角度を検知する磁気角度センサ4と、プロセッサと6を含む。プロセッサは、バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度を確定してメモリ8に記憶する、開閉位置学習のためのプログラムを、稼働するものである。更にプロセッサは、磁気角度センサが磁石を検知できない状態の発生から所定時間が経過すれば、開閉位置学習のためのプログラムを起動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブの回転動作に合わせて回転する磁石の生成する磁場により、バルブの作動角度を検知する磁気角度センサと、
プロセッサとを含み、
前記プロセッサは、
バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度を確定してメモリに記憶する、開閉位置学習のためのプログラムを、
稼働するものである、
バルブ開閉位置検出装置において、
前記プロセッサは、
前記磁気角度センサが前記磁石を検知できない状態の発生から所定時間が経過すれば、前記開閉位置学習のためのプログラムを起動する、
バルブ開閉位置検出装置。
【請求項2】
前記バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度は、バルブの全開時及び全閉時における、前記磁石の回転における角度である、
請求項1に記載のバルブ開閉位置検出装置。
【請求項3】
バルブの回転動作に合わせて回転する磁石の生成する磁場により、バルブの作動角度を検知する磁気角度センサが、前記磁石を検知できない状態の発生から所定時間が経過すれば、
バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度を確定してメモリに記憶する、開閉位置学習のためのプログラムを起動する、
バルブ開閉位置学習プログラムを起動する方法。
【請求項4】
前記バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度は、バルブの全開時及び全閉時における、前記磁石の回転における角度である、
請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブの開閉位置検出装置、及びバルブ開閉位置学習プログラムを起動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なプラントや工場の様々な箇所においてバルブが用いられている。用いられるバルブはプラントや工場設備に組み込まれた後、長期間連続して安定的に稼働することが要求される。但し、組み込まれるバルブはオペレータや点検者が直接接触し難い位置や箇所や環境に配置されることが多い。
【0003】
そこで、バルブの状態をリモートモニタリングすることにより、プラントや工場設備の稼働の健全性を監視し、突発的なトラブルや故障の未然防止に寄与するバルブ状態監視装置が、昨今開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-73154号公報
【特許文献2】特開2019-191760号公報
【特許文献3】特開2004-169887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルブの状態をリモートモニタリングするためのバルブ状態監視装置により、バルブの開閉に関する角度・位置、例えば、バルブの全閉時の角度・位置と全開時の角度・位置とを、簡易に把握し得ることが、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のバルブ開閉位置検出装置は、バルブの回転動作に合わせて回転する磁石の生成する磁場により、バルブの作動角度を検知する磁気角度センサと、プロセッサとを含み、
該プロセッサは、バルブの開閉に関する、磁石の回転における複数の角度を確定してメモリに記憶する、開閉位置学習のためのプログラムを稼働するものである。このバルブ開閉位置検出装置において、プロセッサは、磁気角度センサが磁石を検知できない状態の発生から所定時間が経過すれば、開閉位置学習のためのプログラムを起動する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のバルブの開閉位置検出装置、及びバルブ開閉位置学習プログラムを起動する方法を利用することにより、バルブの状態をリモートモニタリングするためのバルブ状態監視装置は、バルブの開閉に関する角度・位置、例えば、バルブの全閉時の角度・位置と全開時の角度・位置とを簡易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置及び周辺の装置についての、構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置についての、(1)斜視図、並びに、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置、シリンダ、及びバルブ部についての、(2a)斜視図、及び(2b)一部拡大図である。
【
図3】
図3は、バルブ部の上部にあるシリンダの上面図であり、シリンダの動作に、更には、バルブ部における弁体(バルブ)の回転動作に、合わせて回転するように構成されている、開度インジケータ部、及び、特にセンサマグネット(磁石)を示すものである。
【
図4】
図4は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置の、開閉位置学習モードにおける処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置の、開閉位置学習モードに自動的に移行するオートリカバー学習の処理手順のフローチャートである。
【
図6】
図6(1)は、三方弁のバルブの模式的な横断面図である。
図6(2)は、三方弁のバルブについて、ボールバルブの位置(1)~(4)と、夫々の際の流路の状態を示す模式的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
1.[本開示に至る経緯]
本開示におけるバルブの開閉位置検出装置は、バルブ状態監視装置である。バルブ状態監視装置は、バルブの状態を監視するための監視ユニットであり、バルブの開閉に係る角度について経時的なプロファイルを記録するデータロガーである。
【0012】
監視ユニットとしてのバルブ状態監視装置、即ち、バルブの開閉位置検出装置は、バルブの開閉に関する位置を、即ち、流路に対する、バルブの全開と全閉との間の角度の変遷を、リアルタイムで監視するために、センサマグネットを伴う磁気角度センサを使用する。ここでの磁気角度センサはTMR(Tunneling Magneto Resistance)センサである。バルブ状態監視装置は、バルブの開閉に関する角度の変遷を、磁気角度センサを用いてリアルタイムで監視し、その角度の変遷を角度プロファイルとして、データログを採ってメモリに保存する。
【0013】
ところで、バルブの開閉位置検出装置の動作に当たっては、バルブの開閉に関する、例えば、バルブの全開時及び全閉時におけるセンサマグネットの、回転における角度を確定して、バルブの開閉位置検出装置(即ち、バルブ状態監視装置)のメモリに記録すること(以下、「開閉位置学習」と称する。)が、初期設定の一種として個別のバルブ毎に不可欠である。個別のバルブ毎に開閉位置学習が不可欠である主たる理由は、以下の(1)、(2)の通りである。
【0014】
(1)バルブ毎に全閉から全開までの作動範囲が異なる。
バルブやアクチュエータを構成する部品は加工公差などを含み、工業製品であるバルブにおいて、全開と全閉の間の作動範囲は必ず90°となる、とは限らない。例えば、89°、89.5°、90.2°等の値となることがある。センサマグネット及び磁気角度センサにより、バルブの全開と全閉とを精確に且つ確実に把握するためには、バルブ毎の全閉から全開までの作動範囲の把握が必要不可欠である。
【0015】
(2)シリンダに取り付けたセンサマグネットのS極とN極の位置がバラバラである。
図3は、バルブ部22の上部にあるシリンダ12の上面図であり、シリンダ12の動作(図示せず)に、更には、バルブ部22における弁体(バルブ)の回転動作(図示せず)に、合わせて回転するように構成されている、開度インジケータ部13、及び、特にセンサマグネット(磁石14)を示すものである。シリンダ12の上部に、開度インジケータ部13を挟んで取り付けられるセンサマグネット(磁石14)は、取り付けられた際のS極N極の位置及び方向が一定ではなく区々となる。よって、バルブの開閉に関する、例えば、バルブの全開時及び全閉時における、センサマグネット(磁石)のS極N極の位置及び方向(即ち、角度)を確定して記録することが必要不可欠である。
【0016】
以上の、(1)及び(2)に示す理由により行われる開閉位置学習は、通常、バルブ状態監視装置のプロセッサにて動作するコンピュータプログラムにより実行される。バルブ状態監視装置は、無線回線や有線回線を備えており、外部のパーソナルコンピュータやタブレット端末やスマートフォン等から、無線回線や有線回線を経由するコマンドにより、開閉位置学習のためのプログラムが動作され、バルブ状態監視装置は「開閉位置学習モード」に入ることとなる。
【0017】
従って、バルブ及びシリンダに対して、当初、センサマグネット(磁石)及びバルブ状態監視装置を設置した後に、通信コマンドにより、無線・有線回線を介して外部装置から、開閉位置学習モードが起動される。
【0018】
ところで、通信事情により、若しくは、情報セキュリティの観点から、バルブが設置されている現場設備にて、タイミングに依り、無線通信や有線通信が利用できない状況が在る。その場合、バルブが備わる現場設備の近傍にて、外部装置から通信コマンドをバルブ状態監視装置に送信できない。バルブ状態監視装置を「開閉位置学習モード」とするには、バルブが備わる現場設備からバルブ状態監視装置を十分に離した上で、外部端末から通信コマンドをバルブ状態監視装置に送信する、等の手順を踏む必要が生じてくる。このような手順は、煩雑であり、且つ、余分なコストも生じる。
【0019】
バルブ状態監視装置に依り、バルブ(即ち、センサマグネット(磁石))の開閉に関する角度、例えば、全閉時の角度と全開時の角度とを、簡易に把握し得ることが求められている。このような事情から本願の発明者らは、本開示に係る発明であるオートリカバー学習のプログラムの想到に至った。このオートリカバー学習のプログラムは、開閉位置学習モードへの自動的移行を実現するものである。
【0020】
なお、三方弁や五方弁と称されるバルブも様々なプラントや工場にて用いられている。三方弁とは、ボールバルブの一種であり、流体の出入口が3方向に備わるバルブである。
図6(1)は、例示の三方弁のバルブ22’の、模式的な横断面図である。
図6(1)に示す例示の三方弁のバルブ22’には、前部出入口23uと、右部出入口23rと、左部出入口23lとが備わる。
図6(1)に示す三方弁のバルブ22’では、
図6(2)に示すように流体を流すための4つのボールバルブ22’の位置・角度が、想定され、及び規定される。
まず、
図6(2)(1)は、ボールバルブ22’の位置・角度が0回転であり、その際流体は前部出入口23uと右部出入口23rと左部出入口23lの間を流れる。
また、
図6(2)(2)は、ボールバルブ22’の位置・角度が1/4回転であり、その際流体は前部出入口23uと右部出入口23rの間を流れる。
また、
図6(2)(3)は、ボールバルブ22’の位置・角度が1/2回転であり、その際流体は右部出入口23rと左部出入口23lの間を流れる。
更に、
図6(2)(4)は、ボールバルブ22’の位置・角度が3/4回転であり、その際流体は左部出入口23lと前部出入口23uの間を流れる。
このような三方弁のバルブに関する開閉位置検出装置の動作にあたっても、センサマグネットについての、回転における上述の4つの位置・角度を確定して、バルブの開閉位置検出装置のメモリに記録することが、個別のバルブ毎に矢張り不可欠となる。従って、三方弁のバルブについても、開閉位置学習のためのプログラムが用意され得、適時に稼働され得る。
【0021】
五方弁もボールバルブの一種であり、流体の出入口が5方向に備わるバルブである。五方弁のバルブについても当然ながら、開閉位置学習のためのプログラムが用意され得、適時に稼働され得る。
【0022】
更に一般的に、N(Nは2以上の自然数)方弁なるバルブも想定され得る。このような場合、初期設定として把握して記憶したい位置・角度が、例えば、M(Mは2以上の自然数であり、必ずしもNと等しいわけではない)個であることが想定される。このようなN方弁のバルブについても、開閉位置学習のためのプログラムが用意され得、適時に稼働され得る。
【0023】
本開示に係る発明であるオートリカバー学習のプログラムは、上述のいずれの開閉位置学習のためのプログラムによる、開閉位置学習モードへの自動的移行をも、実現するものである。
【0024】
2.[実施の形態]
以下、添付の図面を参照して、本開示の好ましい実施の形態を説明する。
【0025】
2.1.[バルブ開閉位置検出装置の構成]
図1は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2及び周辺の装置についての、構成を示すブロック図である。
図2を用いて後でも説明するように、バルブ状態監視装置であるバルブ開閉位置検出装置2は、バルブ部22における特に弁体(バルブ)を動作するためのシリンダ12の上部に設けられる。
【0026】
バルブ開閉位置検出装置2は、角度センサ4、プロセッサ6、メモリ8、及び、通信部10を含む。
【0027】
角度センサ4は、シリンダ12の上部に(開度インジケータ部13を介して)設けられる磁石14の回転動作を非接触で検知するセンサであり、主としてTMR素子により構成される。なお、磁石14は、シリンダ12の動作に合わせて、更には、バルブ部22におけるバルブの回転動作に合わせて、
図3で示す開度インジケータ部13を介して回転するように構成されている。従って、角度センサ4は、バルブの作動角度を検知するものである。磁石14は、主にリング形状であることが想定されるが、棒形状や扇型形状などの他の形状であってもよい。また、ここでの角度センサ4は、磁石14と対となる磁気角度センサである。一般的な角度センサは磁気角度センサに限定されるものではなく、角度センサとして、例えば、ポテンショメータによる角度センサや、ロータリエンコーダによる角度センサや、角速度センサであるジャイロセンサなども用いられ得るが、本開示おける角度センサ4は、磁石と対となる磁気角度センサである。
【0028】
プロセッサ6は、CPU(Central Processing Unit;中央処理ユニット)によって構成される。本実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2の諸機能は、各種プログラムをプロセッサ6が実行することによって実現される。なお、当該諸機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって実現されてもよいし、ASICと各種プログラムをロードするCPUとの組合せ等によって実現されてもよい。
【0029】
メモリ8は、バルブ開閉位置検出装置2内部のデータ書き換えが可能な記憶部であり、例えば、多数の半導体記憶素子を含むRAM(Random Access Memory)により構成される。メモリ8は、プロセッサ6が様々な処理を実行する際の、具体的なコンピュータプログラムや、変数値や、パラメータ値等を一時的に格納する。メモリ8は、例えば、バルブ状態監視の途中データや結果データである、(バルブ)開閉トレンドデータ、角度プロファイルデータ、ヒストグラムデータ、及び、稼働データ、並びに、各種設定データを格納する。
【0030】
ここで、(バルブ)開閉トレンドデータとは、バルブの作動日時/作動に要した時間/作動方向/最初の角度/最終的な角度、などバルブの作動状況を表す情報の集まりである。角度プロファイルデータとは、1回のバルブの作動について、縦軸を(全開から全閉までの、又は、全閉から全開までの)バルブの角度とし、横軸を(経過)時間としてプロットを行うことにより示される2次元のデータであり、バルブが開閉作動中にどのような動きをしたかを示すデータである。
【0031】
なおメモリ8は、いわゆるROM(Read Only Memory)を含んでもよい。ROMには、以下で説明するバルブ開閉位置検出装置2の処理を実現するコンピュータプログラムが予め格納されている。プロセッサ6がROMからコンピュータプログラムを読み出し、RAMに展開することにより、プロセッサ6が当該コンピュータプログラムを実行可能になる。
【0032】
通信部10は、外部との、有線通信と無線通信とを行う回路であり、各種ネットワーク端子、USB端子等を含む、外部へデータを出力可能な、及び、外部からデータを取得可能な、インタフェース回路である。有線通信及び無線通信は、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth)、RS485、USB等を含む。バルブ状態監視についての途中データや結果データは、通信部10の有線通信の機能を介して、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)16に送信され得る。同じくバルブ状態診断についての途中データや結果データは、通信部10の無線通信の機能を介して、例えば、スマートフォン18に送信され得る。スマートフォン18は、タブレット端末などであってもよい。
【0033】
更に、PC(パーソナルコンピュータ)16、スマートフォン18、若しくはタブレット端末等の、外部装置から、有線通信及び無線通信により、通信部10を介してプロセッサ6に対して、通信コマンドが送信され得る。
【0034】
本実施の形態では、バルブ開閉位置検出に係る各処理は、バルブ開閉位置検出装置2のプロセッサ6にて行うことを想定している。
【0035】
図2は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2についての、(1)斜視図、並びに、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2、シリンダ12、及びバルブ部22についての、(2a)斜視図、及び(2b)一部拡大図である。(2b)一部拡大図は、特に、バルブ開閉位置検出装置2と、シリンダ12の上部に開度インジケータ部13を介して設けられるリング状の磁石14との関係を示すものである。磁石14の上部のバルブ開閉位置検出装置2内部には、磁気角度センサを構成する3層、即ち、下方から、フリー層の磁性膜、非磁性の絶縁膜、及び、ピン層の磁性膜が設けられている(但し、図示せず)。
【0036】
また、
図2(2a)の斜視図に示すように、バルブ開閉位置検出装置2は、USB接続コネクタ24、及び、電源及びRS485接続コネクタ26を備えており、夫々、USB通信ケーブル28、及び、RS485通信ケーブル30と接続するように構成されている。
【0037】
バルブ開閉位置検出装置2は、取り付け穴34を用いて、ネジ32、及びシリンダ12上部のネジ穴により、シリンダ12に取り付けられる。取り付け穴34、ネジ32、及びネジ穴は、夫々、少なくとも一対のものであるが、
図2(1)及び(2a)の斜視図では、一対の内の一方に係るもののみ示されている。
【0038】
図3は、シリンダ12の上面図である。
図3の中央に示す開度インジケータ部13の上部の回転軸に、センサマグネットであるリング状の磁石14が取り付けられる。
図3に示すように、磁石14は、開度インジケータ部13の回転軸に取り付けられる際のS極N極の位置及び方向が一定ではなく区々となり得る。
【0039】
2.2.[バルブ開閉位置検出装置の動作]
2.2.1.[開閉位置学習モードにおける処理]
図4は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2の、開閉位置学習モードにおける処理のフローチャートである。
【0040】
バルブ開閉位置検出装置2が開閉位置学習モードに入ると、プロセッサ6にて開閉位置学習のためのプログラムが稼働を始める(ステップS52)。バルブ開閉位置検出装置2における開閉位置学習モードの起動は、以下の2つによる。
(1)PC16やスマートフォン18等の外部装置から、無線若しくは有線回線を介する、通信コマンドの送信。
(2)角度センサ4が磁石(センサマグネット)14を検知できない状態の、所定時間の継続。
【0041】
上記(1)は、通信コマンド入力によるマニュアル移行である。上記(2)は、バルブの開閉に関する、例えば、バルブの全閉時と全開時の、センサマグネット(磁石14)の角度(位置)が変動したことが想定され得る場合の、メモリ8への記憶のリカバーのための自動的(オート)移行である。特に、上記(2)については、
図5を用いて後で詳しく説明する。
【0042】
開閉位置学習のためのプログラムの稼働の開始(ステップS52)後、磁石(センサマグネット)14の位置が監視され、磁石(センサマグネット)14が、ある角度(位置)にて、所定の時間以上停止する事象が発生したかチェックされ(ステップS54/NO又はYES)、所定の時間以上停止する事象が発生すると(ステップS54・YES)、そのある角度が第1の角度とされて一時的に記憶される(ステップS56)。
【0043】
その後、続いて、磁石(センサマグネット)14が、第1の角度とは異なる角度(位置)にて、同様の所定の時間以上停止する事象が発生したかチェックされ(ステップS58/NO又はYES)、所定の時間以上停止する事象が発生すると(ステップS58・YES)、その異なる角度が第2の角度とされて一時的に記憶される(ステップS60)。
【0044】
その後、更に続いて、磁石(センサマグネット)14が、第1の角度及び第2の角度とは更に異なる角度(位置)にて、同様の所定の時間以上停止する事象が発生したかチェックされ(ステップS62/NO又はYES)、所定の時間以上停止する事象が発生すると(ステップS62・YES)、その更に異なる角度が第3の角度とされて一時的に記憶される(ステップS64)。
【0045】
第1の角度と、第2の角度と、第3の角度とについて、バルブが最も開いたときのものか(即ち、全開時のものか)、バルブが最も閉じたときのものか(即ち、全閉時のものか)、検証が行われる(ステップS66)。
【0046】
バルブ部22への電源投入時に、バルブが全開の位置でも全閉の位置でもない中途半端な位置で静止していることがある。そのため、
図4にてフローチャートを示す開閉位置学習モードの動作処理では、第1の角度、第2の角度、及び、第3の角度の、3回の静止状態を確認し記憶してから、検証により、全開時の角度(位置)と全閉時の角度(位置)を決定するようにされている。
【0047】
決定された全開時の角度(位置)と全閉時の角度(位置)がメモリ8に記憶されて(ステップS68)、バルブ開閉位置検出装置2の開閉位置学習モードが終了する(ステップS70)。
【0048】
なお、
図4に示す開閉位置学習モードにおける処理の手順は例示のものであり、バルブの全開時及び全閉時におけるセンサマグネット(磁石14)の、回転における角度を確定してメモリ8に記録するために、別の処理手順が用いられてもよい。
【0049】
上述の
図4に示す開閉位置学習モードにおける処理のフローチャートは、全開時の角度(位置)と全閉時の角度(位置)を決定して記憶するために、第1の角度、第2の角度、及び、第3の角度の、3回の静止状態を確認し一時記憶している。前述[本開示に至る経緯]で示したように、初期設定として把握して記憶したい位置・角度が、例えば、M(Mは2以上の自然数である。)個であることが想定されるバルブも存在する。
【0050】
そのようなバルブの場合、以下の順序;処理[1]~処理[M+1]、処理[検証・記憶]にて、処理が実行され得る。
処理[1]:「磁石(センサマグネット)14が、ある角度(位置)にて、所定の時間以上停止する事象が発生したかチェックされ、所定の時間以上停止する事象が発生すると、そのある角度が第1の角度とされて一時的に記憶される」、
処理[2]:「その後、続いて、磁石(センサマグネット)14が、第1の角度とは異なる角度(位置)にて、同様の所定の時間以上停止する事象が発生したかチェックされ、所定の時間以上停止する事象が発生すると、その異なる角度が第2の角度とされて一時的に記憶される」、
・・・・・・・・
処理[M+1]:「その後、更に続いて、磁石(センサマグネット)14が、第1の角度~第Mの角度のいずれとも異なる角度(位置)にて、同様の所定の時間以上停止する事象が発生したかチェックされ、所定の時間以上停止する事象が発生すると、その更に異なる角度が第(M+1)の角度とされて一時的に記憶される」。
【0051】
処理[検証・記憶]:第1の角度~第(M+1)の角度について、バルブの開閉に関する角度・位置のものか、検証が行われ、バルブの開閉に関する角度・位置のM個のものが決定される。決定されたバルブの開閉に関する角度・位置のM個のものが、メモリ8に記憶されて、初期設定として把握して記憶したい位置・角度がM個であることが想定されるバルブについての、開閉位置学習モードが終了する。
【0052】
2.2.2.[オートリカバー学習の処理手順]
次に
図5は、実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2の、開閉位置学習モードに自動的に移行するオートリカバー学習の処理手順のフローチャートである。オートリカバー学習の処理の開始(ステップS02)後、プロセッサ6は、角度センサ4がそもそもセンサマグネット(磁石14)を検知できない状態(非検知状態)で無いか(ステップS10・NO)有るか(ステップS10・YES)をチェックし、非検知状態を確認すれば(ステップS10・YES)、非検知状態発生時を記憶した上で、非検知状態発生時から所定時間(例えば、1秒間)が経過したか(ステップS20・YES)否か(ステップS20・NO)をチェックする。
【0053】
プロセッサ6が、角度センサ4の非検知状態(ステップS10・YES)の所定時間以上の継続(ステップS20・NO)を確認すれば、
図4に示す「開閉位置学習モード」に自動的に移行して(ステップS50)、オートリカバー学習の処理手順の終了(ステップS80)に進む。ここでの「開閉位置学習モード」は、前述「初期設定として把握して記憶したい位置・角度がM個であることが想定されるバルブ」についてのものであってもよい。
【0054】
2.2.3.[オートリカバー学習の処理が必要である状況と、有益に活用できる状況]
オートリカバー学習の処理が必要である状況は、上述のように、「(2)角度センサ4が磁石(センサマグネット)14を検知できない状態の、所定時間の継続」の生じた状況であり、「バルブの開閉に関する、例えば、バルブの全閉時と全開時の、センサマグネット(磁石14)の角度(位置)が変動したことが想定され得る場合」である。具体的には、以下の[1]~[3]の場合が挙げられる。
【0055】
[1]センサマグネット(磁石14)を取り付けたシリンダ12から、通電中にバルブ開閉位置検出装置2を取り外した場合。
[2] シリンダ12にセンサマグネット(磁石14)を取り付けずに、バルブ開閉位置検出装置2を取り付けて通電した場合。
[3]バルブ開閉位置検出装置2が、センサマグネット(磁石14)の生成する磁場を検知できない環境で通電した場合。
【0056】
上記[1]の場合、バルブ開閉位置検出装置2を取り外し後、たとえ再びシリンダ12に取り付けたとしても、取り付け穴34やネジ32やネジ穴の僅かな遊びや隙間等により、バルブの開閉に関する、例えば、バルブの全閉時と全開時の、センサマグネット(磁石14)の角度(位置)が僅かに変動することが想定され得る。上記[2]の場合は、この状況前の、記憶されていた、バルブの開閉に関する、例えば、バルブの全閉時と全開時の、センサマグネット(磁石14)の角度(位置)の情報(データ)が、何も無かった場合である、とも言え、無かったが故にオートリカバー学習の処理が必要な状況である、と言える。上記[3]には、例えば、鉄板や鉄片等の電磁気遮蔽物がセンサマグネット(磁石14)と角度センサ4間に差し込まれて、角度センサ4が、センサマグネット(磁石14)の生成する磁場を検知できなくなった状態が含まれる。
【0057】
また更に、オートリカバー学習の処理を有益に活用できる状況として、「通信事情により、若しくは、情報セキュリティの観点から、バルブが設置されている現場設備にて、タイミングに依り、Bluetooth等の無線通信や、USBやRS485等の有線通信が利用できない状況」が挙げられる。このような状況では、先ず、通信コマンドによる開閉位置学習のためのプログラムの稼働を実施することはできない。
【0058】
このような状況にて、開閉位置学習のためのプログラムを簡易に稼働させるには、バルブ開閉位置検出装置2がセンサマグネット(磁石14)の生成する磁場を検知できない状態を、意図的に作出すればよいことになり、具体的には、例えば、以下の[A]、[B]の状態を作出すれば、オートリカバー学習の処理が実施されることになる。
[A]センサマグネット(磁石14)を取り付けたシリンダ12から、通電中にバルブ開閉位置検出装置2を取り外した状態。上記[1]の場合と同じ状態である。
[B]バルブから離れた場所で、バルブ開閉位置検出装置2に通電した状態。上記[3]の場合に含まれる状態である。
【0059】
上記[A]の場合、バルブ開閉位置検出装置2が、オートリカバー学習の機能により開閉位置学習モードに一旦成ると、その後通電オフとなったとしても、バルブ開閉位置検出装置2をシリンダ12に再び取り付けて、バルブ開閉位置検出装置2を通電状態にすれば、開閉位置学習のためのプログラムが稼働する。また、上記[B]の場合も、バルブ開閉位置検出装置2が、オートリカバー学習の機能により開閉位置学習モードに一旦成ると、その後通電オフとなったとしても、バルブ開閉位置検出装置2をシリンダ12に取り付けてバルブ開閉位置検出装置2を通電状態にすれば、開閉位置学習のためのプログラムが稼働する。
【0060】
2.3.[実施の形態のまとめ]
実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2は、バルブの回転動作に合わせて回転する磁石14の生成する磁場により、バルブの作動角度を検知する磁気角度センサ4と、プロセッサ6とを含み、プロセッサ6は、バルブの開閉に関する、磁石14の回転における複数の角度を確定してメモリ8に記憶する、開閉位置学習のためのプログラムを、稼働するものである。プロセッサ6は、磁気角度センサ4が磁石14を検知できない状態の発生から所定時間が経過すれば、開閉位置学習のためのプログラムを起動する。
【0061】
実施の形態に係るバルブ開閉位置検出装置2を利用することにより、バルブの状態をリモートモニタリングするためのバルブ状態監視装置は、バルブの開閉に関する角度・位置、例えば、バルブの全閉時の角度・位置と全開時の角度・位置とを簡易に把握することができる。
【0062】
3.[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0063】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0064】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
2・・・バルブ開閉位置検出装置、4・・・角度センサ、6・・・プロセッサ、8・・・メモリ、10・・・通信部、12・・・シリンダ、13・・・開度インジケータ部、14・・・磁石(センサマグネット)、16・・・PC(パーソナルコンピュータ)、18・・・スマートフォン、22・・・バルブ部、24・・・USB接続コネクタ、26・・・電源及びRS485接続コネクタ、28・・・USB通信ケーブル、30・・・RS485通信ケーブル、32・・・ネジ、34・・・取り付け穴。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブの回転動作に合わせて回転する磁石の生成する磁場により、バルブの作動角度を検知する磁気角度センサと、
プロセッサと、
外部装置からの通信コマンドを受信する通信部とを含み、
前記プロセッサは、バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度を確定してメモリに記憶する、開閉位置学習のためのプログラムを稼働可能に構成され、
前記プロセッサは、
前記通信部を介して前記通信コマンドを受信した場合、前記開閉位置学習のためのプログラムを起動し、
前記通信部を介して前記通信コマンドを受信しない場合、前記磁気角度センサが前記磁石を検知できない状態の発生から所定時間が経過すれば、前記開閉位置学習のためのプログラムを起動する、
バルブ開閉位置検出装置。
【請求項2】
前記バルブ開閉位置検出装置及び前記磁石は、それぞれ、前記バルブを動作するために前記バルブに取り付けられるシリンダに取り外し可能に取り付けられ、
前記磁気角度センサは、
前記バルブ開閉位置検出装置の通電中に、前記磁石が取り付けられた前記シリンダから前記バルブ開閉位置検出装置が取り外された場合、又は、
前記シリンダに前記磁石が取り付けられていない状態で前記バルブ開閉位置検出装置が通電された場合、
前記磁石を検知できない状態となるように構成された、
請求項1に記載のバルブ開閉位置検出装置。
【請求項3】
前記バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度は、バルブの全開時及び全閉時における、前記磁石の回転における角度である、
請求項1に記載のバルブ開閉位置検出装置。
【請求項4】
外部装置からの通信コマンドを受信した場合に、バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度を確定してメモリに記憶する、開閉位置学習のためのプログラムを起動するバルブ開閉位置検出装置によって実行される方法であって、
前記通信コマンドを受信しない場合、バルブの回転動作に合わせて回転する磁石の生成する磁場により、バルブの作動角度を検知する磁気角度センサが、前記磁石を検知できない状態の発生から所定時間が経過すれば、前記開閉位置学習のためのプログラムを起動する、
方法。
【請求項5】
前記バルブの開閉に関する、前記磁石の回転における複数の角度は、バルブの全開時及び全閉時における、前記磁石の回転における角度である、
請求項4に記載の方法。