(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179650
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】計測方法、評価方法、および計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20241219BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20241219BHJP
G01N 33/2028 20190101ALI20241219BHJP
【FI】
G01N27/26 351J
G01N27/416 300F
G01N33/2028
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098656
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 陽介
【テーマコード(参考)】
2G055
【Fターム(参考)】
2G055AA03
2G055BA16
2G055BA18
2G055CA05
2G055EA10
2G055FA06
(57)【要約】
【課題】現地での測定が可能で、腐食性を高い精度で評価することができる計測方法を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼をpHが15~16の電解液に接触させ、前記ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定し、前記アノード分極曲線からクロム炭化物および/またはクロム窒化物の前記電解液への溶解による電荷量を計測する、計測方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼をpHが15~16の電解液に接触させ、
前記ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定し、
前記アノード分極曲線からクロム炭化物および/またはクロム窒化物の前記電解液への溶解による電荷量を計測する、計測方法。
【請求項2】
前記ステンレス鋼が二相ステンレス鋼である、請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記電解液に接触する前記ステンレス鋼の一部が前記ステンレス鋼の溶接部である、請求項1に記載の計測方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の計測方法で得られた電気量に基づいて前記ステンレス鋼中のクロム炭化物および/またはクロム窒化物の析出量を評価する評価方法。
【請求項5】
pHが15~16の電解液が収容された電解槽と、
前記電解槽に形成され、前記電解液をステンレス鋼に接触させる開口と、
前記電解液に接触する前記ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定するポテンショスタットと、を有し、
前記アノード分極曲線からクロム炭化物および/またはクロム窒化物の前記電解液への溶解による電荷量を計測する、計測装置。
【請求項6】
前記開口に設けられ、前記電解液に接触する前記ステンレス鋼と前記開口との間を密閉するシール材を有する、請求項5に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、評価方法、および計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は、優れた耐食性と強度を有しており、排ガス浄化装置用等の様々な用途で使用されている。ステンレス鋼は、その表面に主にクロム(Cr)からなる不働態被膜を形成することで優れた耐食性を有している。
【0003】
ステンレス鋼は、構造物を製造する過程で溶接がされることがあるが、溶接時の入熱条件によっては鋭敏化(鋼中にCr炭化物やCr窒化物が析出し、その近傍でCrが欠乏して耐食性が低下する現象)が起こることが知られている。鋭敏化が起こると、本来形成するはずであるCrの不働態膜が形成せず、致命的な腐食や応力腐食割れを招く危険がある。
【0004】
従来から、このようなステンレス鋼における溶接部を観察する手法がある。例えば、特許文献1には、二相ステンレス鋼母材と、溶接金属及び熱影響部とを含む溶接部とを備える溶接構造物から、溶接熱影響部及び溶接金属近傍の鋼母材から孔食試験片を採取し、50℃の3.5%NaCl溶液中にて孔食電位の測定をJIS G0577に規定される方法に準拠して実施することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-178953号公報
【特許文献2】特開2021-181559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の手法では、現地での測定ができず、観察に手間がかかる。また、従来の手法は、鋭敏化の原因となるCr炭化物やCr窒化物を確認するものではないため、腐食性の評価の精度が低い。
【0007】
本発明の課題は、現地での測定が可能で、腐食性を高い精度で評価することができる計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ステンレス鋼をpHが15~16の電解液に接触させ、前記ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定し、前記アノード分極曲線からクロム炭化物および/またはCr窒化物の前記電解液への溶解による電荷量を計測する、計測方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現地での測定が可能で、腐食性を高い精度で評価することができる計測方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照して説明する。
【0012】
<計測方法>
本実施形態の計測方法では、ステンレス鋼をpHが15~16の電解液に接触させる。
【0013】
本明細書において、ステンレス鋼は、鉄を主成分として、炭素(C)を約2%以下、クロム(Cr)を約10%以上含んでいる合金鋼の総称である。ステンレス鋼の種類は、特に限定されず、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト・フェライト系(二相系)、フェライト系、マルテンサイト系のいずれでもよい。これらの中でも、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼(二相ステンレス鋼)が、好適に用いられる。
【0014】
また、電解液に接触するステンレス鋼の一部はステンレス鋼の溶接部であってもよい。ここで、溶接部とは、溶接金属及び熱影響部を含んだ部分を示す。また、ステンレス鋼の溶接部は、1つのステンレス鋼の一部が溶接部であるものに限定されず、ステンレス鋼同士を溶接でつなぎ合わせた溶接接手であってもよい。
【0015】
また、電解液は、イオン性物質(電解質)を水などの極性溶媒に溶解させた電気伝導性を有する溶液を示す。pHが15~16の電解液は、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム等の水酸化物(NaOH、KOH)、カルシウム、バリウム等の水酸化物(Ca(OH)2、Ba(OH)2)等の水溶液が挙げられる。これらの中でも、pH15~16の調整が容易な点で、水酸化カリウム(KOH)の飽和水溶液が好ましい。
【0016】
「ステンレス鋼を電解液に接触させる」とは、ステンレス鋼の一部が、電解液に浸漬すること、または電解液に晒されることを示す。
【0017】
本実施形態の計測方法では、ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定する。ここで、ステンレス鋼のアノード分極は、電解液に接触するステンレス鋼の電位を正の方向に掃引(印加)してゆくと、ステンレス鋼がアノードとして作用し、腐食または酸化皮膜の形成が進行することを示す。また、アノード分極曲線は、アノード分極の際に生じる電流密度(電解の流速密度または電荷量)を印加した電位に対してプロットした曲線を示す。
【0018】
本実施形態の計測方法では、上述のアノード分極曲線からクロム炭化物および/またはクロム窒化物の電解液への溶解による電荷量(電流または電流密度)を計測する。
【0019】
ここで、クロム炭化物(Cr炭化物)は、例えば、Cr23C6が等である。クロム窒化物(Cr窒化物)は、例えば、CrN、Cr2N等である。
【0020】
ステンレス鋼のアノード分極曲線には、ステンレス鋼中にCr炭化物および/またはCr窒化物が析出すると、Cr炭化物および/またはCr窒化物に由来する曲線領域が現れる。そこで、これらの曲線領域のピークや面積を読み取ることで、Cr炭化物および/またはCr窒化物に対応する電荷量を計測することができる。
【0021】
本実施形態の計測方法では、このようにpHが15~16の電解液に接触させたステンレス鋼のアノード分極曲線からCr炭化物および/またはCr窒化物の電荷量を計測することで、鋭敏化の原因となるCr炭化物やCr窒化物の析出を確認することができる。そのため、ステンレス鋼の腐食性を高い精度で評価することができる。
【0022】
また、本実施形態の計測方法では、Cr炭化物および/またはCr窒化物の電荷量を、溶接等の作業現場で(現地で)計測することができる。そのため、腐食性の評価を簡便に行うことができる。
【0023】
さらに、本実施形態の計測方法では、計測のための試料の採取が不要であり、またpHが15~16の電解液は、アノード分極下では、ステンレス鋼中に析出したCr炭化物および/またはCr窒化物のみを溶解させ、ステンレス鋼(母材)自体を溶解させることがない。そのため、ステンレス鋼の機械的強度の低下を防ぐことができる。
【0024】
また、二相ステンレス鋼は、Crの含有量が比較的多いことから、Cr炭化物および/またはCr窒化物が析出し易い傾向にある。これに対して、本実施形態の計測方法では、Cr炭化物および/またはCr窒化物の電荷量を計測することで、計測の対象となるステンレス鋼が二相ステンレス鋼である場合、鋭敏化が顕著になる二相ステンレス鋼の腐食性を高い精度で評価することができる。
【0025】
さらに、ステンレス鋼の溶接部は、溶接によりCrの不動態膜が形成される反面、Cr炭化物および/またはCr窒化物も同時に生じやすい。これに対して、本実施形態の計測方法では、Cr炭化物および/またはCr窒化物の電荷量を計測することで、計測の対象となるステンレス鋼の一部がステンレス鋼の溶接部である場合、鋭敏化が顕著になるステンレス鋼の溶接部の腐食性を高い精度で評価することができる。
【0026】
<評価方法>
本実施形態の評価方法では、上述の計測方法で得られた電気量に基づいてステンレス鋼中のクロム炭化物および/またはクロム窒化物の析出量を評価する。
【0027】
アノード分極下で電解液へ溶解したCr炭化物および/またはCr窒化物は、ステンレス鋼中に析出したCr炭化物および/またはCr窒化物とみなすことができる。そのため、クロム炭化物(Cr炭化物)および/またはクロム窒化物(Cr窒化物)の電解液への溶解による電荷量をステンレス鋼中のCr炭化物および/またはCr窒化物の析出量に換算することができる。
【0028】
本実施形態では、例えば、ポテンショスタットを用いて、アノード分極測定を実施し、電位-電流密度曲線(
図1)を取得する。電位範囲は、自然電位から+0.5V程度まで掃引する。このとき、+0.5V以上になると酸素が発生する。電位掃引速度は、200mV以下が望ましい。200mV以上だと明瞭な電流値のピークが得られない。
【0029】
得られたピークのうち、片方がCr炭化物(
図1のA)、もう片方がCr窒化物(
図1のB)の溶解に対応する。得られた電位-電流密度曲線(
図1のB)からCr炭化物及びCr窒化物の溶解に対応している電荷量を算出する。
【0030】
本実施形態の評価方法では、このようにステンレス鋼中のCr炭化物および/またはCr窒化物の析出量を評価することで、ステンレス鋼の腐食性をさらに高い精度で評価することができる。
【0031】
また、本実施形態の評価方法を用いれば、現地(作業現場等)で簡便にステンレス鋼中のCr炭化物および/またはCr窒化物の析出量を評価することが可能である。
【0032】
<計測装置>
図2は、本実施形態に係る計測装置を示す。計測装置1は、電解槽10、開口10A、及びポテンショスタット70、およびデータ収録装置80を有する。
【0033】
電解槽10は、電解液20が収容されている。電解液20は、上述のpHが15~16の電解液である。本実施形態では、pH15~16に調整された水酸化カリウム(KOH)の飽和水溶液が容器10に収容されている。なお、電解槽10の材質は、pHが15~16の電解液に耐性を有する材質であることが好ましい。本実施形態では、電解槽10は、ポリエチレン等の樹脂製の容器で構成されている。
【0034】
電解槽10には、対象電極30と参照電極40が、電解液20に浸漬された状態で配置されている。対象電極30は、対電極ともいい、アノード分極下で陽極を構成する。対象電極30の材質は、特に限定されず、例えば、炭素(C)で構成することができる。また、参照電極40は、照合電極または基準電極ともいい、アノード分極下で陰極を構成する。参照電極40の材質は、特に限定されず、例えば、銀/塩化銀(Ag/AgCl)で構成することができる。
【0035】
開口10Aは、電解液20をステンレス鋼Mに接触させるために、電解槽10に形成されている。本実施形態では、ステンレス鋼Mが母材MPと溶接金属WP(溶接部)を有し、溶接金属WP(溶接部)が電解液20に接触するように、ステンレス鋼Mが開口10Aに固定されている。
【0036】
開口10Aには、さらにシール材50が設けられている。シール材50は、電解液20に接触するステンレス鋼Mと開口10Aとの間を密閉する。シール材50の態様は、特に限定されず、例えば、Оリング、ガスケットパッキン等を用いることができる。シール材50の材質は、pHが15~16の電解液に耐性を有する材質であることが好ましい。本実施形態では、シール材50はシリコーンゴム等のゴム材料で構成されたOリングである。
【0037】
なお、ステンレス鋼Mを電解液20に接触させる態様は、特に限定されない。例えば、開口10Aを上方に向けて置いた電解槽(容器)10に電解液20を注入し、ステンレス鋼Mを上方から開口10Aに被せ、シール材50で密閉された状態で固定する。そして、ステンレス鋼Mが固定された状態で電解槽(容器)10の上下に反転させればよい。また、電解液20をゲル状にして、流動しにくい状態で電解槽(容器)10に収容してもよい。
【0038】
このように構成された電解槽(容器)10、電解液20、対象電極30と参照電極40は、ステンレス鋼Mが電解槽(容器)10の開口10Aに固定された状態(電解液20にステンレス鋼Mが接触した状態)で、一つの電気化学セルを構成する。
【0039】
ポテンショスタット70は、電解液20に接触するステンレス鋼Mのアノード分極曲線を測定する。本実施形態では、ポテンショスタット70は、対象電極30と参照電極40に接続され、アノード分極下で、ステンレス鋼Mに電位を掃引(印加)する。
【0040】
また、ポテンショスタット70は、ステンレス鋼Mの母材MPのうち電解液20に接触しない部分に銅線等の導線60を介して接続されている。これにより、ポテンショスタット70は、アノード分極下でステンレス鋼Mに生じた電流を検知することができる。ポテンショスタット70は、このように検知した電流からステンレス鋼Mのアノード分極曲線(
図1)を作成することができる。
【0041】
データ収録装置80は、ポテンショスタット70に接続され、ポテンショスタット70で測定したアノード分極曲線(
図1)からCr炭化物および/またはCr窒化物の電解液への溶解による電荷量を計測する。具体的には、上述の計測方法と同様に、アノード分極曲線に現れたCr炭化物および/またはCr窒化物に由来する曲線領域のピークや面積を読み取ることで、Cr炭化物および/またはCr窒化物に対応する電荷量を計測する。
【0042】
データ収録装置80は、ポテンショスタット70で測定されたアノード分極曲線(
図1)やデータ収録装置80で計測したCr炭化物および/またはCr窒化物に対応する電荷量を、読み取り可能且つ書き換え可能に記憶することができる。
【0043】
また、データ収録装置80には、CPU等の制御部が設けられていてもよい。制御部は、例えば、ポテンショスタット70によるアノード分極曲線を測定する動作、およびデータ収録装置80によるクロム炭化物および/またはクロム窒化物の電荷量を計測する動作等を制御する。
【0044】
なお、データ収録装置80は、任意に設けることができ、データ収録装置80を設けずに、ポテンショスタット70にCr炭化物および/またはCr窒化物に対応する電荷量を計測する機能を持たせてもよい。
【0045】
本実施形態の計測装置1は、上述の計測方法の構成を実質的に含むため、上述の計測方法の同様の効果が得られる。具体的には、pHが15~16の電解液20に接触させたステンレス鋼Mのアノード分極曲線からCr炭化物および/またはCr窒化物の電荷量を計測することで、鋭敏化の原因となるCr炭化物やCr窒化物の析出を確認することができる。そのため、ステンレス鋼Mの腐食性を高い精度で評価することができる。
【0046】
本実施形態の計測装置1は、では、Cr炭化物および/またはCr窒化物の電荷量を、溶接等の作業現場で(現地で)計測することができる。そのため、腐食性の評価を簡便に行うことができる。
【0047】
さらに、本実施形態の計測装置1では、計測のための試料の採取が不要であり、またpHが15~16の電解液20は、アノード分極下では、ステンレス鋼M中に析出したCr炭化物および/またはCr窒化物のみを溶解させ、ステンレス鋼Mの母材MPを溶解させることがない。そのため、ステンレス鋼Mの機械的強度の低下を防ぐことができる。
【0048】
また、本実施形態の計測装置は、上述のように、電解槽10の開口10Aにシール材50が設けられていることで、電解液20に接触するステンレス鋼Mと開口との間を密閉することができる。これにより、電解槽(容器)10、電解液20、対象電極30と参照電極40は、ステンレス鋼Mが電解液20に接触した状態で、一つの電気化学セルを構成することができるため、ステンレス鋼Mのアノード分極曲線を高い精度で測定できる。
【実施例0049】
以下、本実施形態について、
図2のステンレス鋼Mとして二相ステンレス鋼を用い、二相ステンレス鋼の溶接部WPを対象として、二相ステンレス鋼中のCr炭化物及びCr窒化物の評価を実施した。
【0050】
二相ステンレス鋼には、S32750を用いた。
【0051】
二相ステンレス鋼Mの溶接部WPは、母材とほぼ同組成の溶接棒(図示せず)を用い、TIG溶接にて作製した溶接接手とした。作製した溶接接手は、表面を1000番のエメリー紙にて研磨した。
【0052】
二相ステンレス鋼Mの母材MPの一部と溶接金属WPが飽和水酸化カリウム水溶液(電解液20)に接液(接触)するように電気化学セル(
図2の電解槽10、電解液20、対象電極30、参照電極40、シール材50、二相ステンレス鋼M)を設置した。
【0053】
ポテンショスタット70を用いて、電位掃引速度を100mV/minとして0.3mVまで掃引し、電位-電流密度曲線(
図1)を取得した。
【0054】
-0.1~0.1mVの間で2つの電流ピークが得られた。測定前後の走査電子顕微鏡(SEM)による組織観察の結果、2つの電流ピークはそれぞれCr炭化物(
図1のA)、Cr窒化物(
図1のB)の溶解に対応していることが明らかとなった。
【0055】
これらのピークの電荷量を求めることで、Cr炭化物およびCr窒化物の析出量の評価することが可能となる。
【0056】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
【0057】
(付記1)
ステンレス鋼をpHが15~16の電解液に接触させ、
前記ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定し、
前記アノード分極曲線からクロム炭化物および/またはクロム窒化物の前記電解液への溶解による電荷量を計測する、計測方法。
【0058】
(付記2)
前記ステンレス鋼が二相ステンレス鋼である、付記1に記載の計測方法。
【0059】
(付記3)
前記電解液に接触する前記ステンレス鋼の一部が前記ステンレス鋼の溶接部である、付記1または2に記載の計測方法。
【0060】
(付記4)
付記1乃至3のいずれか一つに記載の計測方法で得られた電気量に基づいて前記ステンレス鋼中のクロム炭化物および/またはクロム窒化物の析出量を評価する評価方法。
【0061】
(付記5)
pHが15~16の電解液が収容された電解槽と、
前記電解槽に形成され、前記電解液をステンレス鋼に接触させる開口と、
前記電解液に接触する前記ステンレス鋼のアノード分極曲線を測定するポテンショスタットと、を有し、
前記アノード分極曲線からクロム炭化物および/またはクロム窒化物の前記電解液への溶解による電荷量を計測する、計測装置。
【0062】
(付記6)
前記開口に設けられ、前記電解液に接触する前記ステンレス鋼と前記開口との間を密閉するシール材を有する、付記5に記載の計測装置。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。