(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179654
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】検出器の案内装置および燃料内装物押え装置並びに原子炉
(51)【国際特許分類】
G21C 17/10 20060101AFI20241219BHJP
G21C 5/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G21C17/10 420
G21C5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098662
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】最上 雄一
(72)【発明者】
【氏名】猪又 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大祐
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 啓太
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA03
2G075BA03
2G075CA08
2G075DA01
2G075FA06
2G075FC14
2G075GA05
2G075GA06
(57)【要約】
【課題】検出器の案内装置および燃料内装物押え装置並びに原子炉において、振動によるガイドシンブルの摩耗を抑制可能とする。
【解決手段】上端部が上部炉心支持板に連結されて下端部が上部炉心板に向けて延出される案内通路と、上部炉心板に設けられる貫通孔と、案内通路を通して貫通孔に延出されて内部に中性子束検出器を挿通可能なガイドシンブルと、を備え、案内通路は、下端部が貫通孔まで延出される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が上部炉心支持板に連結されて下端部が上部炉心板に向けて延出される案内通路と、
前記上部炉心板に設けられる貫通孔と、
前記案内通路を通して前記貫通孔に延出されて内部に中性子束検出器を挿通可能なガイドシンブルと、
を備え、
前記案内通路は、下端部が前記貫通孔まで延出される、
検出器の案内装置。
【請求項2】
前記案内通路は、下端部が前記貫通孔に位置する連結管を有する、
請求項1に記載の検出器の案内装置。
【請求項3】
前記上部炉心支持板と前記上部炉心板は、上下方向に沿う支持孔を有する連結ロッドにより連結され、前記案内通路は、前記支持孔の内部に配置される支持管と、外周部が前記支持孔の下端部に固定されると共に前記支持管の下端部に連結されるノズルとを有し、前記ノズルの下端部に前記連結管の上端部が連結される、
請求項2に記載の検出器の案内装置。
【請求項4】
前記支持孔は、小径部と、前記小径部より下方に位置する大径部とを有し、前記ノズルは、前記大径部と前記小径部の段付き部に固定され、前記連結管は、上端部が前記ノズルに嵌合して固定される、
請求項3に記載の検出器の案内装置。
【請求項5】
前記連結管は、内径が前記ノズルの内径より小径である、
請求項4に記載の検出器の案内装置。
【請求項6】
前記連結管は、下端部が先細形状をなす、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の検出器の案内装置。
【請求項7】
前記上部炉心板の下方に配置される燃料から上方に向けて延出されるガイド管を有し、前記案内通路は、下端部が前記ガイド管の内部に隙間をもって位置する、
請求項1に記載の検出器の案内装置。
【請求項8】
基板と、
軸方向の一端部が前記基板に連結されるガイド管と、
前記ガイド管における軸方向の他端部に軸方向に沿って移動自在に支持される押え部材と、
前記基板と前記押え部材との間に配置されて前記基板に対して前記押え部材が離間する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記ガイド管は、中性子束検出器用のガイドシンブルをガイドする案内通路の下端部が挿入可能である、
燃料内装物押え装置。
【請求項9】
前記ガイド管は、外周部に軸方向に沿うガイド凹部が設けられ、前記押え部材は、前記ガイド凹部に移動自在なガイドピンが設けられる、
請求項8に記載の燃料内装物押え装置。
【請求項10】
原子炉容器と、
燃料から構成される炉心と、
請求項1に記載の検出器の案内装置と、
請求項8に記載の燃料内装物押え装置と、
を備える原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出器の案内装置および燃料内装物押え装置並びに原子炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉は、原子炉容器の内部に炉心が設けられて構成される。原子炉は、炉心で生成される中性子を制御棒により吸収することで、その中性子数を調整して出力を制御する。そのため、炉心における中性子(中性子束)の分布を正確に計測する必要がある。中性子束検出器は、原子炉容器の蓋からガイドシンブルを通して炉心を構成する燃料集合体へ挿入可能である。原子炉は、中性子束検出器の案内装置が設けられる。中性子束検出器の案内装置としては、例えば、特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3153833号公報
【特許文献2】特許第5452798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の中性子束検出器の案内装置は、上部炉心支持板と上部炉心板との間に設けられた案内管と、炉心を構成する燃料集合体に挿入された燃料内装物に設けられたガイド筒とを有する。ガイドシンブルは、案内管から上部炉心板の貫通孔を通ってガイド筒に挿入され、ガイド筒から燃料集合体の内部に挿入される。中性子束検出器は、ガイドシンブルの内部を通って燃料集合体に挿入される。この場合、案内管の下端部とガイド筒の上端部とは、上下方向に離間している。そのため、ガイドシンブルは、案内管とガイド筒との間で露出する部分が発生し、原子炉容器の内部を流動する一次冷却材の影響を受けて振動する。ガイドシンブルが振動すると、外面が案内管やガイド筒の内面に接触し、ガイドシンブルの外面が摩耗してしまうという懸念がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、振動によるガイドシンブルの摩耗を抑制可能とする検出器の案内装置および燃料内装物押え装置並びに原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の検出器の案内装置は、上端部が上部炉心支持板に連結されて下端部が上部炉心板に向けて延出される案内通路と、前記上部炉心板に設けられる貫通孔と、前記案内通路を通して前記貫通孔に延出されて内部に中性子束検出器を挿通可能なガイドシンブルと、を備え、前記案内通路は、下端部が前記貫通孔まで延出される。
【0007】
また、本開示の燃料内装物押え装置は、基板と、軸方向の一端部が前記基板に連結されるガイド管と、前記ガイド管における軸方向の他端部に軸方向に沿って移動自在に支持される押え部材と、前記基板と前記押え部材との間に配置されて前記基板に対して前記押え部材が離間する方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記ガイド管は、中性子束検出器用のガイドシンブルをガイドする案内通路の下端部が挿入可能である。
【0008】
また、本開示の原子炉は、原子炉容器と、燃料から構成される炉心と、前記検出器の案内装置と、前記燃料内装物押え装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の検出器の案内装置および燃料内装物押え装置並びに原子炉によれば、振動によるガイドシンブルの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の燃料内装物押え装置が装着された燃料集合体を表す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の検出器の案内装置を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
<加圧水型原子炉>
図1は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【0013】
原子力発電プラントは、図示しないが、原子炉格納容器内に配置される原子炉および蒸気発生器と、蒸気タービン発電設備とを有する。本実施形態の原子炉は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。但し、原子炉は、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)や高速増殖炉(FBR:Fast Breeder Reactor)などいずれの原子炉であってもよい。
【0014】
図1に示すように、加圧水型原子炉10において、原子炉容器11は、内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体12とその上部に装着される原子炉容器蓋13により構成され、原子炉容器本体12に対して原子炉容器蓋13が複数のスタッドボルト14およびナット15により開閉可能に固定される。
【0015】
原子炉容器本体12は、上部が開口し、下部が半球形状をなして閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却材としての軽水を供給する入口ノズル16と、軽水を排出する出口ノズル17が形成される。原子炉容器本体12は、内部に炉心槽18が配置され、上部が原子炉容器本体12の内壁面に支持される。上部炉心支持板19は、原子炉容器本体12の内部に配置され、上部が炉心槽18の上部に支持される。上部炉心板20は、複数の炉心支持ロッド21により上部炉心支持板19に吊下げ支持される。
【0016】
炉心槽18は、下方に下部炉心支持板22が支持され、下部炉心支持板22は、外周部が位置決め部材23により原子炉容器本体12の内壁面に位置決め支持される。炉心槽18は、下部に下部炉心板24が支持されている。炉心25は、多数の燃料集合体26が配置されて構成され、内部に多数の制御棒27が配置され、制御棒27は、燃料集合体26に挿入可能である。上部炉心支持板19は、多数の制御棒クラスタ案内管28が固定され、内部に制御棒27が挿通可能である。原子炉容器蓋13は、半球形状をなし、制御棒駆動装置29が配置され、複数の制御棒クラスタ駆動軸30が制御棒クラスタ案内管28内に挿通され、下端部に制御棒27が連結される。制御棒駆動装置29は、各制御棒27を炉心25に対して抜き差しすることで、原子炉出力を制御する。
【0017】
また、原子炉容器11は、内部に検出器の案内装置31が配置される。検出器の案内装置31は、中性子束検出器(図示略)を原子炉容器蓋13の計装用管台32から案内部材33を通して炉心25(燃料集合体26)に案内するものである。中性子束検出器は、中性子レベルおよび分布(中性子束)を計測することができる。具体的には、検出器の案内装置31は、中性子束検出器(図示略)を原子炉容器蓋13の計装用管台32から案内部材33および案内部材33の下端に固定されたガイドシンブル(図示略)を通して炉心25(燃料集合体26)に案内する。
【0018】
<燃料集合体>
図2は、本実施形態の燃料内装物押え装置が装着された燃料集合体を表す概略図である。
【0019】
図2に示すように、燃料集合体26は、多数の燃料棒41が支持格子42により格子状に束ねられて構成される。燃料集合体26は、上端部に上部ノズル43が固定される一方、下端部に下部ノズル44が固定される。なお、
図2では、煩雑になるため、燃料棒41間の格子部分を省略し、外周部のみ模式的に図示している。燃料棒41は、燃料被覆管内に複数の燃料ペレットが収容されて構成される。燃料ペレットは、核分裂性物質を焼き固め、ペレット状に形成したものである。燃料被覆管は、内部に所定数の燃料ペレットが充填され、ヘリウムガスが充填される。
【0020】
燃料集合体26は、上部に燃料内装物押え装置51が装着される。燃料内装物押え装置51は、燃料集合体26の上部に装着される。燃料内装物押え装置51は、燃料集合体26が下部炉心板24に配置されたとき、上部炉心板20を介して燃料集合体26を押さえる。燃料内装物押え装置51は、基板52と、スプリングガイド(ガイド管)53と、押え部材54と、圧縮コイルばね(付勢部材)55とを有する。但し、付勢部材は、圧縮コイルばね55に限定されるものではなく、異なる種類のばねであってもよい。
【0021】
基板52は、例えば、円板形状をなし、板厚方向に貫通する複数の貫通孔が設けられる。但し、基板52は、この形状に限定されるものではない。スプリングガイド53は、円筒形状をなし、軸方向の下端部が基板52を貫通して連結される。押え部材54は、スプリングガイド53における軸方向の上端部側にて、スプリングガイド53の外周部に軸方向に沿って移動自在に支持される。圧縮コイルばね55は、スプリングガイド53の外周部に位置し、基板52と押え部材54との間に配置される。圧縮コイルばね55は、基板52に対して押え部材54が離間する方向に付勢する。
【0022】
<検出器の案内装置>
図3は、本実施形態の検出器の案内装置を表す断面図である。
【0023】
図3に示すように、検出器の案内装置31は、案内通路61と、貫通孔62と、ガイドシンブル63とを備える。
【0024】
上部炉心板20は、炉心支持ロッド21により上部炉心支持板19(
図1参照)に吊下げ支持される。炉心支持ロッド21は、ロッド本体部71と、連結部72とを有する。ロッド本体部71および連結部72は、円筒形状をなし、ロッド本体部71の外径に対して連結部72の外径が大径である。炉心支持ロッド21は、中心位置に支持孔73が設けられる。支持孔73は、第1支持孔74と、第2支持孔75とを有する。第1支持孔74は、円柱形状をなし、第2支持孔75は、円錐台形状をなす。第1支持孔74の内径に対して第2支持孔75の内径が大径である。なお、支持孔73は、内径が軸方向に一定な1つの支持孔から構成してもよい。炉心支持ロッド21は、連結部72の下端部に突起部76が設けられる。突起部76は、第2支持孔75の下端部に沿ったリング形状をなし、下方に向けて突出する。
【0025】
上部炉心板20は、板厚方向に貫通する貫通孔62が設けられる。貫通孔62は、第1貫通孔77と、第2貫通孔78と、第3貫通孔79とを有する。第1貫通孔77は、軸方向の上方側で上部炉心板20の上面に開口する。第3貫通孔79は、軸方向の下方側で上部炉心板20の下上面に開口する。第2貫通孔78は、第1貫通孔77と第3貫通孔79を連通する。なお、第2貫通孔78は、軸方向に内径が同じである。第1貫通孔77は、第2貫通孔78に対して大径の段付き孔である。第3貫通孔79は、第2貫通孔78に対して大径に広がるテーパ孔である。なお、貫通孔62は、内径が軸方向に一定な1つの貫通孔から構成してもよい。
【0026】
炉心支持ロッド21は、連結部72の下面が上部炉心板20の上面に接触し、突起部76が上部炉心板20の第1貫通孔77に嵌合して連結される。そのため、炉心支持ロッド21の第2支持孔75は、上部炉心板20の第2貫通孔78に滑らかに連続するように連通する。
【0027】
案内通路61は、軸方向の上端部が上部炉心支持板19(
図1参照)の貫通孔に連通され、下端部が上部炉心板20に向けて延出される。具体的に、案内通路61は、下端部が貫通孔62まで延出される。案内通路61は、連結管80を有する。案内通路61は、連結管80の下端部が貫通孔62に位置する。
【0028】
また、案内通路61は、支持管81と、ノズル82とを有する。支持管81は、円筒形状をなし、炉心支持ロッド21の第1支持孔74に配置される。支持管81は、外径が第1支持孔74の内径より小径であり、支持管81と第1支持孔74との間に隙間が確保される。支持管81は、上端部が上部炉心支持板19に支持され、下端部が第1支持孔74の下端部に位置する。
【0029】
ノズル82は、支持孔73における第1支持孔(小径部)74と第2支持孔(大径部)75の段付き部に固定される。ノズル82は、取付部83と先端部84とを有する。取付部83は、円柱形状をなし、第1支持孔74に嵌合して固定される。先端部84は、円錐形状をなし、第2支持孔75に位置する。ノズル82は、軸方向に沿って挿通孔85が形成される。支持管81は、下端部がノズル82の挿通孔85の上端部に嵌合して固定されることで、支持管81とノズル82の挿通孔85が連通する。
【0030】
連結管80は、案内通路61の下端部を構成し、下端部が上部炉心板20の貫通孔62に位置する。連結管80は、円筒形状をなし、内部に挿通孔86が設けられる。連結管80は、下端部が先細形状をなす。つまり、連結管80は、下端部の外径が下方に行くほど小径となるテーパ形状をなす先細部87が設けられる。また、連結管80は、挿通孔86の上端部に拡径部88が設けられる。挿通孔86は、内径が軸方向に沿って同じであるが、拡径部88は、上方に行くほどに挿通孔86の内径に対大径となるテーパ形状をなす。連結管80は、上端部がノズル82の挿通孔85の下端部に嵌合して固定される。連結管80は、挿通孔86の内径がノズル82の挿通孔85の内径より小径である。ノズル82の挿通孔85は、連結管80の拡径部88により挿通孔86に滑らかに連続するように連通する。
【0031】
燃料集合体26が下部炉心板24(
図1参照)に配置されたとき、燃料内装物押え装置51は、上部炉心板20を介して燃料集合体26を押さえる。燃料内装物押え装置51は、上述したように、スプリングガイド53は、下端部に基板52が連結され、上端部に押え部材54が移動自在に支持される。この場合、スプリングガイド53は、外周部に軸方向に沿うガイド凹部56が設けられる。一方、押え部材54は、スプリングガイド53の外周部に嵌合するリング部57と、リング部57から径方向の外方に延びる複数(例えば、周方向に180度離間して2個)のアーム58とを有する。押え部材54は、リング部57に内周面に突出するガイドピン59が設けられる。押え部材54は、ガイドピン59がスプリングガイド53のガイド凹部56に移動自在に嵌合する。また、スプリングガイド53は、外周部に圧縮コイルばね55が配置され、圧縮コイルばね55は、付勢力により基板52に対して押え部材54を上方に付勢する。
【0032】
燃料内装物押え装置51は、燃料集合体26の上部に装着される。燃料集合体26が下部炉心板24に配置されると、燃料内装物押え装置51は、基板52が上部ノズル43に圧接し、押え部材54が上部炉心板20に下面に圧接する。そのため、燃料集合体26は、多数の燃料棒41が上部ノズル43と下部ノズル44(いずれも
図2参照)に付勢支持された状態で、上部炉心板20と下部炉心板24との間で支持される。
【0033】
このとき、燃料内装物押え装置51は、スプリングガイド53の上端部が押え部材54よりも上方に延出し、上部炉心板20の貫通孔62に位置する。すなわち、スプリングガイド53は、押え部材54よりも上方に延出する延出部53aを有する。また、スプリングガイド53は、挿通部53bと、拡径部53cと、大径部53dとを有する。スプリングガイド53は、挿通部53bの上端部が拡径部53cを介して大径部53dに連通し、大径部53dが上方に開口する。つまり、挿通部53bは、内径が上方に向けて大きくなる拡径部53cにより大径部53dに滑らかに連続する。ここで、挿通部53bは、内径が連結管80の挿通孔86の内径とほぼ同様であり、大径部53dは、内径が連結管80の外径より大きい。
【0034】
スプリングガイド53は、延出部53aが上部炉心板20の貫通孔62の内部で、貫通孔62の軸方向の中間位置より上方側に位置する。つまり、延出部53aは、上端面(大径部53dの開口面)が貫通孔62の軸方向の中間位置より上方側に位置する。そして、連結管80は、下端部がスプリングガイド53の延出部53aの大径部53dに隙間をもって配置される。すなわち、案内通路61は、連結管80によりガイドシンブル63を案内する通路が上部炉心板20の貫通孔62まで延長される。また、燃料内装物押え装置51は、スプリングガイド53の延出部53aによりガイドシンブル63を案内する通路が上部炉心板20の貫通孔62まで延長される。そして、連結管80の下端部がスプリングガイド53の延出部53aの内部に位置することで、ガイドシンブル63を案内する通路が連結管80やスプリングガイド53の外部に露出しない。なお、連結管80下端部とスプリングガイド53の延出部53aとの隙間は、部材の製造誤差や組み付け誤差を吸収すると共に、ガイドシンブル63や連結管80などの部材の熱膨張差を吸収するためのものであり、できるだけ小さくすることが望ましい。
【0035】
ガイドシンブル63は、内部に中性子束検出器(図示略)を挿通可能である。ガイドシンブル63は、
図1に示すように、原子炉容器蓋13の計装用管台32から案内部材33を通して炉心25(燃料集合体26)まで延出される。中性子束検出器は、ガイドシンブル63の内部を移動することで、炉心25(燃料集合体26)に案内される。中性子束検出器は、中性子レベルおよび分布(中性子束)を計測する。
【0036】
図3に示すように、ガイドシンブル63は、案内通路61により連結管80を通して上部炉心板20の貫通孔62まで延出される。そして、連結管80の下端部がスプリングガイド53の延出部53aの内部に位置することで、ガイドシンブル63は、連結管80からスプリングガイド53を通って燃料集合体26に延出される。そのため、中性子束検出器は、ガイドシンブル63を通って燃料集合体26に案内されることとなり、燃料集合体26の中性子レベルおよび分布(中性子束)を計測することができる。
【0037】
このとき、
図1に示すように、軽水が入口ノズル16から原子炉容器11の内部に供給され、炉心25に導かれて燃料集合体26により加熱される。すなわち、軽水が原子炉容器11の内部を流動することで、ガイドシンブル63を振動させる懸念がある。しかし、ガイドシンブル63は、支持管81、ノズル82、連結管80、スプリングガイド53の内部を通って燃料集合体26まで延出されており、軽水の流動が激しい領域に直接露出していない。つまり、軽水が連結管80とスプリングガイド53との隙間を通ってガイドシンブル63に至るものの、ガイドシンブル63はほとんど振動しない。そのため、ガイドシンブル63の振動が抑制され、連結管80やスプリングガイド53との接触によるガイドシンブル63の摩耗が抑制される。
【0038】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る検出器の案内装置は、上端部が上部炉心支持板19に連結されて下端部が上部炉心板20に向けて延出される案内通路61と、上部炉心板20に設けられる貫通孔62と、案内通路61を通して貫通孔62に延出されて内部に中性子束検出器を挿通可能なガイドシンブル63とを備え、案内通路61は、下端部が貫通孔62まで延出される。
【0039】
第1の態様に係る検出器の案内装置によれば、ガイドシンブル63を案内する案内通路61が貫通孔62まで延出されることで、ガイドシンブル63は、原子炉容器11の内部を流動する軽水の影響が軽減され、ガイドシンブル63の振動が抑制される。そのため、振動によるガイドシンブル63の摩耗を抑制することができる。
【0040】
第2の態様に係る検出器の案内装置は、第1の態様に係る検出器の案内装置であって、さらに、案内通路61は、下端部が貫通孔62に位置する連結管80を有する。これにより、連結管80を設けるだけで、ガイドシンブル63を貫通孔62まで案内する案内通路61を確保することができ、構造の複雑化を抑制することができる。
【0041】
第3の態様に係る検出器の案内装置は、第1の態様または第2の態様に係る検出器の案内装置であって、さらに、上部炉心支持板19と上部炉心板20は、上下方向に沿う支持孔73を有する炉心支持ロッド21により連結され、案内通路61は、支持孔73の内部に配置される支持管81と、外周部が支持孔73の下端部に固定されると共に支持管81の下端部に連結されるノズル82とを有し、ノズル82の下端部に連結管80の上端部が連結される。これにより、貫通孔62まで延出する案内通路61を容易に形成することができる。
【0042】
第4の態様に係る検出器の案内装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る検出器の案内装置であって、さらに、支持孔73は、第1支持孔(小径部)74と、第1支持孔74より下方に位置する第2支持孔(大径部)75とを有し、ノズル82は、第1支持孔74と第2支持孔75の段付き部に固定され、連結管80は、上端部がノズル82に嵌合して固定される。これにより、ノズル82を適切に固定することができると共に、ノズルの挿通孔85と連結管80の挿通孔86を容易に連通させることができる。
【0043】
第5の態様に係る検出器の案内装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る検出器の案内装置であって、さらに、連結管80は、内径がノズル82の内径より小径である。これにより、ガイドシンブル63をノズル82まで容易に挿通することができると共に、連結管80によりガイドシンブル63を適切に支持することができる。
【0044】
第6の態様に係る検出器の案内装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る検出器の案内装置であって、さらに、連結管80は、下端部が先細形状をなす。これにより、連結管80をスプリングガイド53に容易に挿入することができる。
【0045】
第7の態様に係る検出器の案内装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る検出器の案内装置であって、さらに、上部炉心板20の下方に配置される燃料集合体26から上方に向けて延出されるスプリングガイド53を有し、案内通路61は、下端部がスプリングガイド53の内部に隙間をもって位置する。これにより、ガイドシンブル63や連結管80などの部材の熱膨張差を吸収することができる。
【0046】
第8の態様に係る燃料内装物押え装置は、基板52と、軸方向の一端部が基板52に連結されるスプリングガイド(ガイド管)53と、スプリングガイド53における軸方向の他端部に軸方向に沿って移動自在に支持される押え部材54と、基板52と押え部材54との間に配置されて基板52に対して押え部材54が離間する方向に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)55とを備え、スプリングガイド53は、中性子束検出器用のガイドシンブル63をガイドする案内通路61の下端部が挿入可能である。
【0047】
第8の態様に係る燃料内装物押え装置によれば、ガイドシンブル63をガイドする案内通路61の下端部がスプリングガイド53に挿入されることで、ガイドシンブル63は、原子炉容器11の内部を流動する軽水の影響が軽減され、ガイドシンブル63の振動が抑制される。そのため、振動によるガイドシンブル63の摩耗を抑制することができる。
【0048】
第9の態様に係る燃料内装物押え装置は、第8の態様に係る検出器の案内装置であって、さらに、スプリングガイド53は、外周部に軸方向に沿うガイド凹部56が設けられ、押え部材54は、ガイド凹部56に移動自在なガイドピン59が設けられる。これにより、スプリングガイド53の板厚方向にガイドピン59が貫通するガイド孔を設ける必要がなく、軽水がガイド孔を通してスプリングガイド53の内部に流入することがなく、スプリングガイド53の振動を抑制することができる。
【0049】
第10の態様に係る原子炉は、原子炉容器11と、燃料から構成される炉心25と、検出器の案内装置31と、燃料内装物押え装置51とを備える。これにより、振動によるガイドシンブル63の摩耗を抑制することができ、中性子束検出器による計測精度の向上を図ることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、案内通路61として、連結管80と支持管81とノズル82とを設けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、支持管81やノズル82の下端部を貫通孔62まで延長してもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、燃料内装物押え装置51を構成するスプリングガイド(ガイド管)53を上部炉心板20の貫通孔62の上部まで延出し、スプリングガイド53の上端部に連結管80の下端部を挿入可能としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、スプリングガイド53の上端部を上部炉心板20の貫通孔62の下部に位置させ、連結管80の下端部を貫通孔62の下部まで延長して挿入可能としてもよい。
【0052】
また、スプリングガイド53の上端部をノズル82の下端部まで延長し、ノズル82の下端部をスプリングガイド53の上端部に挿入可能としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 加圧水型原子炉
11 原子炉容器
12 原子炉容器本体
13 原子炉容器蓋
18 炉心槽
19 上部炉心支持板
20 上部炉心板
21 炉心支持ロッド
25 炉心
26 燃料集合体
31 検出器の案内装置
32 計装用管台
33 案内部材
41 燃料棒
51 燃料内装物押え装置
52 基板
53 スプリングガイド(ガイド管)
53a 延出部
54 押え部材
55 圧縮コイルばね(付勢部材)
56 ガイド凹部
59 ガイドピン
61 案内通路
62 貫通孔
63 ガイドシンブル
73 支持孔
80 連結管
81 支持管
82 ノズル
85 挿通孔
86 挿通孔
87 先細部
88 拡径部