(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179659
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】非接触充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241219BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20241219BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241219BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241219BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20241219BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20241219BHJP
B60L 53/60 20190101ALI20241219BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J7/04 C
H02J7/00 P
H02J50/10
H02J50/80
H02J7/10 L
H02J7/04 L
B60L53/12
B60L53/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098669
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋孝
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB06
5G503CB11
5G503CC02
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB08
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC25
5H125BC21
5H125DD02
5H125EE25
(57)【要約】
【課題】ドライバビリティ悪化や燃費悪化を抑制することができる非接触充電システムを提供すること。
【解決手段】本発明の非接触充電システムは、受電装置を搭載した車両に、給電設備から電力を非接触で供給して車両に搭載された蓄電装置を充電する非接触充電システムであって、充電スケジュールにしたがって設定された時間帯において、給電設備を用いた非接触充電であるタイマー充電が実行可能であり、タイマー充電を行う場合には、充電終了時に蓄電装置が有する電池セルの温度が所定の電池セル温度となるように、タイマー充電の開始時刻及び充電効率を設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置を搭載した車両に、給電設備から電力を非接触で供給して前記車両に搭載された蓄電装置を充電する非接触充電システムであって、
充電スケジュールにしたがって設定された時間帯において、前記給電設備を用いた非接触充電であるタイマー充電が実行可能であり、
前記タイマー充電を行う場合には、充電終了時に前記蓄電装置が有する電池セルの温度が所定の電池セル温度となるように、前記タイマー充電の開始時刻及び充電効率を設定することを特徴とする非接触充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、充電スケジュールにしたがって設定された時間帯において、受電装置を搭載した車両に、給電設備から電力を非接触で供給して車両に搭載された蓄電装置を充電するタイマー充電が実行可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイマー充電の充電終了時に蓄電装置が有する電池セルの温度が低温の場合には、出力制限となって、電気自動車(BEV)ではドライバビリティが悪化したり、プラグインハイブリッド車(PHEV)ではエンジンがかかって燃費が悪化したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ドライバビリティ悪化や燃費悪化を抑制することができる非接触充電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る非接触充電システムは、受電装置を搭載した車両に、給電設備から電力を非接触で供給して前記車両に搭載された蓄電装置を充電する非接触充電システムであって、充電スケジュールにしたがって設定された時間帯において、前記給電設備を用いた非接触充電であるタイマー充電が実行可能であり、前記タイマー充電を行う場合には、充電終了時に前記蓄電装置が有する電池セルの温度が所定の電池セル温度となるように、前記タイマー充電の開始時刻及び充電効率を設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る非接触充電システムは、タイマー充電の充電終了時における電池セル温度を最適に制御できるため、ドライバビリティ悪化や燃費悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態における非接触充電システムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、タイマー待機中に定期的に電池ECUを起動させて定期的に電池セル温度チェックを実施することを示したタイムチャートである。
【
図3】
図3は、タイマー充電における電池ECUの起動タイミングと電池セル温度とを示したタイムチャートである。
【
図4】
図4は、高圧バッテリの残SOCと充電効率との関係を示したグラフである。
【
図5】
図5は、電池セル温度と充電効率との関係の一例を示したグラフである。
【
図6】
図6は、制御周波数と充電効率との関係の一例を示したグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る非接触充電システムにおけるタイマー充電の開始時刻補正に関するタイムチャートを示した図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る非接触充電システムにおけるタイマー充電に関する制御の第1例であるフローチャートAを示した図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る非接触充電システムにおけるタイマー充電に関する制御の第2例であるフローチャートBを示した図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る非接触充電システムにおけるタイマー充電に関する制御の第3例であるフローチャートCを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る非接触充電システムの実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態における非接触充電システム1を示す模式図である。非接触充電システム1は、給電設備2と、車両3とを備える。非接触充電システム1は、給電設備2から車両3へ非接触にて電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムを含む。非接触充電システム1では、車両3が駐車場4に停車した状態において、給電設備2が有する地上ユニットである送電装置10の送電コイル11から非接触で伝送された電力を、車両3が有する車載ユニットである受電装置20の受電コイル21が受け取ることができる。
【0011】
給電設備2は、車両3に電力を供給する設備である。給電設備2は、商業施設や公共施設や宿泊施設などの駐車場4に設けられている。給電設備2は、送電装置10と、送電装置10に電力を供給する交流電源5とを備える。交流電源5は商用電源や家庭用電源である。
【0012】
送電装置10は、送電コイル11を有する送電部12と、ボックス13とを備える。送電装置10は、駐車場4の駐車スペース6に設置されている。例えば駐車場4は複数の駐車スペース6を有する。この場合、送電装置10は駐車スペース6ごとに設置されている。
【0013】
送電部12は、駐車スペース6内の地面に設置されている。ボックス13は、駐車スペース6の近く、例えば駐車場4の壁などに設置されている。送電部12とボックス13とは電気的に接続されている。送電部12には交流電源5から電力が供給される。送電装置10は、交流電源5から供給された交流電力を送電用電力に変換して送電コイル11に出力する電力変換部を有する。
【0014】
また、送電装置10は、電力変換部を制御する送電ECU14と、車両3と通信する通信装置15とを備える。ボックス13の中には、送電ECU14と通信装置15とが設けられている。
【0015】
送電ECU14は、プロセッサと、メモリ(主記憶部)とを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などにより構成される。メモリは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより構成される。各種センサからの信号が送電ECU14に入力される。送電ECU14は各種センサから入力された信号に基づいて各種制御を実行する。例えば、送電ECU14は、電力変換部に含まれるスイッチング素子を制御して送電用電力を調整する。送電ECU14は、送電装置10の送電を制御する送電制御を実行する。また、送電ECU14は、通信装置15の通信を制御する通信制御を実行する。
【0016】
通信装置15は、駐車スペース6内に駐車する車両3との間で無線通信を行う。通信装置15は送電ECU14からの情報を車両3に送信し、車両3から送信された情報を受信する。通信装置15は、例えばWi-Fi(登録商標)や無線LANによる無線通信が可能である。通信装置15は、駐車場4内の車両3を対象とする近距離無線通信としての電波信号を出力する。
【0017】
車両3は、外部電源から供給された電力を充電可能な電動車両であり、例えば、電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などにより構成される。車両3は、送電コイル11が設置された駐車スペース6に停車可能な車両である。車両3は、受電装置20、受電装置20が受け取った電力を蓄える蓄電装置である高圧バッテリ22、車両3を制御する車両ECU23、通信装置24、高圧バッテリ22を制御する電池ECU25、及び、不図示の入力装置などを備える。
【0018】
受電装置20は、受電コイル21を有する。受電コイル21は、送電コイル11から非接触で伝送された電力を受け取る。受電装置20は、送電装置10から受け取った電力を高圧バッテリ22に供給する。受電装置20と高圧バッテリ22とは電気的に接続されている。非接触充電時の受電装置20の発熱(充電時の損失)を利用して高圧バッテリ22を加熱可能なように、受電装置20は高圧バッテリ22近傍に搭載されており、高圧バッテリ22に接するか、高圧バッテリ22付近に配置される。
【0019】
高圧バッテリ22は、外部充電が可能な車載バッテリである。高圧バッテリ22は受電装置20から供給された電力を蓄える二次電池により構成されている。
【0020】
車両ECU23は、車両3に搭載された車両制御装置である。車両ECU23のハードウェア構成としては、例えば、送電ECU14と同様に構成されている。車両ECU23は、車両3に搭載された各種センサから入力される信号や、通信装置24を用いた通信により取得した情報や、表示装置への操作により入力された情報などに基づいて各種の車両制御を実行する。車両ECU23は車両制御として、例えば、送電コイル11から受電コイル21に非接触で電力を伝送させ、受電コイル21が受け取った電力を高圧バッテリ22に蓄える非接触充電制御を実行する。
【0021】
通信装置24は、外部装置との間で無線通信を行う。通信装置24は送電装置10の通信装置15と無線通信を行う。通信装置24は、車両3から送電装置10へと情報を送信し、送電装置10から車両3に送信された情報を受信する。通信装置24は、車両3が駐車場4内に存在する場合、駐車場4内の送電装置10から送信された近距離無線通信としての電波信号を受信する。つまり、通信装置24は、近距離無線通信を可能にする近距離通信装置と、遠距離無線通信を可能にする遠距離通信装置とを含む。
【0022】
電池ECU25は、電源装置が有する高圧バッテリ22の充電状態の管理や異常検出や電圧制御を実行する。電池ECU25のハードウェア構成としては、例えば、送電ECU14及び車両ECU23と同様に構成されている。電池ECU25には、電池情報として、高圧バッテリ22が有する電池セルの温度である電池セル温度を示す電気信号、高圧バッテリ22の出力電圧を示す電気信号、及び、高圧バッテリ22の出力電流を示す電気信号などの各種電気信号が入力される。また、電池ECU25は、温度、出力電圧、及び、電流などに基づいて高圧バッテリの残量(以下において、「SOC(State Of Charge)」とも記載する)を算出する。電池ECU25は、出力電圧、温度、及び、SOCなどの各種信号を車両ECU23に送信する。また、電池ECU25は、車両ECU23から受信した指令信号に基づいて電源装置に対する制御信号を出力する。
【0023】
入力装置は、ユーザーによる操作の入力を受ける。例えば、入力装置は、車両3の目的地および出発予定時刻の設定、並びに、タイマー充電の実行指示及び充電完了時刻のためのユーザー操作を受ける。入力装置は、例えば、ハードウェアキーボードであってもよいし、ソフトウェアキーボードであってもよい。タイマー充電は、例えば、充電スケジュールにしたがって設定された時間帯において実行され、且つ、駐車スペース6に駐車された車両3の出発予定時刻よりも前の充電完了時刻までに自動的に完了する非接触充電(外部充電)である。
【0024】
ここで、電気自動車(BEV)及びプラグインハイブリッド車(PHEV)においては、車両が走り出したいタイミングで電池セル温度が想定よりも下がっていると、高圧バッテリ22が出力できる電力Woutが小さい値になる。すなわち、電気自動車(BEV)では走りが悪くなったり(ドライバビリティが悪化したり)、プラグインハイブリッド車(PHEV)ではエンジンがかかるため燃費悪化につながったりする。実施形態に係る非接触充電システム1では、車両3がタイマー充電を実施する際に充電効率を変化させることによって、充電終了時の電池セル温度を狙いの温度まで上昇させる。それにより、車両3が走り出した際のドライバビリティ悪化や燃費悪化を回避させることできる。
【0025】
実施形態に係る非接触充電システム1においては、高圧バッテリ22の残SOCに応じて充電効率を変化させる。そのとき、効率に応じた充電開始時刻を算出する。また、実施形態に係る非接触充電システム1においては、電池ECU25が高圧バッテリ22の電池セル温度を定期的に確認し、電池セル温度に応じて充電効率を変化させる。そのとき効率に応じた充電開始時刻を算出する。
【0026】
図2は、タイマー待機中に定期的に電池ECU25を起動させて定期的に電池セル温度チェックを実施することを示したタイムチャートである。実施形態に係る非接触制御システムにおいては、
図2に示すように、タイマー待機中に定期的に電池ECU25を起動させて定期的に電池セル温度チェックを実施する。そして、電池セル温度が想定より下がっていた場合には、効率悪化制御を実施する。このとき、満充電までの充電時間が延びてしまうため充電開始時刻を早める。一方、電池セル温度が想定より上がっていた場合には、効率改善制御を実施する。このとき、満充電までの充電時間が少なくなるため充電開始時刻を遅くする。これにより、実施形態に係る非接触充電システム1においては、ユーザーが出発する際に、電池セル温度を狙いの温度(例えば40[℃])にすることができ、電力Woutを確保することができる。よって、出力制限となって、電気自動車(BEV)でドライバビリティが悪化したり、プラグインハイブリッド車(PHEV)でエンジンがかかって燃費が悪化したりするのを抑制することができる。
【0027】
ここで、タイマー充電における時刻設定は、例えば、以下の通りである。
【0028】
タイマー充電における時刻設定として、充電開始時刻を設定した場合には、設定した開始時刻から充電を開始して指定の充電量になるまで充電を続ける。なお、設定した開始時刻を過ぎてから、駐車スペース6に車両3を駐車した場合には、次回の充電開始時刻まで充電が開始されない。タイマー充電における充電開始時刻は、電気料金が安い時間帯(例えば、深夜、午前0時~午前4時)に充電を行うためにユーザーが設定することが想定される。例えば、帰宅して駐車スペース6に車両3を駐車したのは午後8時であるが、電気料金の安い午前0時から充電を開始したい場合などである。
【0029】
タイマー充電における時刻設定として、充電停止(終了)時刻を設定した場合には、設定した充電停止時刻までに指定した充電量となるように、充電開始時刻が自動的に設定される。なお、駐車スペース6に車両3を駐車してから充電停止時刻までの時間が短いとき、または、外気温や供給される電力などの外的要因などによって当初よりも充電時間が延びたときには、充電停止時刻に指定した充電量まで充電されないことがある。タイマー充電における充電停止時刻の設定は、充電によって高圧バッテリ22を劣化させたくないユーザーが設定することが想定される。例えば、出発する予定が午前8時のため、午前7時50分に満充電状態になるようにタイマー充電を行うことによって、満充電状態になる期間を極力減らして、高圧バッテリ22の劣化を抑制することができる。
【0030】
タイマー充電における時刻設定として、充電開始時刻と充電停止時刻との両方を設定した場合には、設定した充電開始時刻から充電停止時刻までの時間帯のみで充電が行われる。なお、設定した時間帯が短い場合には、満充電または指定した充電量まで充電されないことがある。タイマー充電における充電開始時刻と充電停止時刻との両方の設定は、例えば、電気料金が安い時間帯(例えば、深夜、午前0時~午前4時)に充電を行うためにユーザーが設定することが想定される。
【0031】
そして、実施形態に係る非接触充電システム1においては、タイマー充電における時刻設定として、充電停止(終了)時刻を設定することを前提としている。
【0032】
実施形態に係る非接触充電システム1では、非接触充電時の受電装置20の発熱(充電時の損失)を利用して、高圧バッテリ22を加熱して温める。
【0033】
次に、実施形態に係る非接触充電システム1での電池セル温度をチェックする方法について説明する。実施形態に係る非接触充電システム1では、タイマー充電の待機期間において、高圧バッテリ22の電池セル温度を確認する必要がある。制御的に電池セル温度を直接確認しているECUは電池ECU25であるが、車両3の各ECUを起動させた状態でタイマー充電待機を行うことは、電力消費が激しく各ECUに電力を供給する補機バッテリあがりが短時間で発生し得るという観点から現実的ではない。
【0034】
例えば、一般的な車両においては、READY-OFF状態(ユーザーが車を使わない間の待機状態)でも、照合ECUや充電統合ECUなどの所定のECUを起動し続けている構成としている場合がある。これが補機バッテリ上がりの原因となり得る。なお、照合ECUは、スマートキーによるドアの開錠及び施錠やスライドドアの開け閉めを判定するためにREADY-OFF状態でも起動し続けている。また、充電統合ECUは、充電インレットへの充電コネクタやVPC(ビークルパワーコネクタ)の接続を検知するためにREADY-OFF状態でも起動し続けている。
【0035】
そのため、実施形態に係る非接触充電システム1における車両側制御としては、定期的(例えば、1時間おき)に電池ECU25を起動させ、電池セル温度を確認することが望ましい。
【0036】
図3は、タイマー充電における電池ECU25の起動タイミングと電池セル温度とを示したタイムチャートである。
図3に示すタイムチャートにように、定期的に電池ECU25を起動させることを実行するには、常時起動し続けているECUがタイマーなどで起動タイミングを判定し、起動させたいECUをじか線信号で起動させたり、リレーをON操作することで起動させたりする構成とすることによって実現することができる。実施形態に係る非接触充電システム1の場合には、常時起動し続けるECUを照合ECU及び充電統合ECUとして機能する車両ECU23とし、定期的に起動させられるECUを電池ECU25としている。例えば、充電統合ECUが充電制御を担当する場合には、電池ECU25を起動させた後に車両ECU23がCAN通信で電池ECU25から電池セル温度を取得して、タイマー充電の終了時に所定の電池セル温度となるように、取得した電池セル温度に応じてタイマー充電の開始時刻及び充電効率を補正して設定する電池セル温度補正制御を行う構成とすればよい。
【0037】
次に、タイマー充電の開始時刻を補正する計算例について説明する。タイマー充電の開始時刻を具体的に計算するときの例を以下に示す。なお、前提となる条件は、充電電力を3[kW]、充電効率を80[%](損失20[%])、受電装置20対送電装置10の損失比=1:1(損失で10[%]:10[%])、高圧バッテリ22の電池容量を10[kWh]として計算する。
【0038】
〔パターン1(計算の基準とする状態)〕
駐車スペース6への車両駐車時における高圧バッテリ22のSOC=20[%]を基準とすると、満充電(SOC=100[%])まで充電するのに必要な電力量は10[kWh]×0.8=8[kWh]である。また、充電効率80[%]で充電するため、1時間あたり充電できる電力量は3[kWh]×0.8=2.4[kWh]である。よって、充電に要する時間は、8[kWh]÷2.4[kWh]=3.33[h]である。
【0039】
〔パターン2〕
駐車スペース6への車両駐車時における高圧バッテリ22のSOC=80[%](走行距離が少なくSOCが大分残っている状態)とすると、満充電(SOC=100[%])まで充電するのに必要な電力量は10[kWh]×0.2=2[kWh]である。また、充電効率80[%]で充電するため、1時間あたり充電できる電力量は3[kWh]×0.8=2.4[kWh]である。よって、充電に要する時間は、2[kWh]÷2.4[kWh]=0.83[h]である。
【0040】
パターン1及び2に示すように、駐車スペース6への車両駐車時における高圧バッテリ22の残SOCに応じて、充電に要する時間は当然異なる。一方で、実施形態に係る非接触充電システム1では受電装置20の発熱(充電時の損失)を利用して、高圧バッテリ22を加熱して温めて電池セル温度を上げるため、パターン2のような短時間の充電では、電池セル温度を狙いの温度まで上げることができないおそれがある。そこで、実施形態に係る非接触充電システム1においては、充電効率を意図的に変化させることによって、電池セル温度を狙いの温度(所定の電池セル温度)まで上げることを実施する。
【0041】
(実施例1)
実施例1では、駐車スペース6への車両駐車時における高圧バッテリ22の残SOCに応じたタイマー充電の開始時刻の補正について説明する。実施例1では、
図4に示すように、高圧バッテリ22の残SOCに応じて充電効率を悪化させることにより、受電装置20の発熱(充電時の損失)を増やして、高圧バッテリ22に与える熱量を増加させることにより、電池セル温度を狙いの温度まで上げる。
【0042】
〔パターン3〕
駐車スペース6への車両駐車時における高圧バッテリ22の残SOC=20[%]、充電効率=80[%]を基準とした場合、残SOC=80[%]のときに、充電効率を例えば60[%]まで低下させる。また、満充電(SOC=100[%])まで充電するのに必要な電力量は10[kWh]×0.2=2[kWh]である。そして、充電効率=60[%]で充電するため、1時間あたり充電できる電力量は3[kWh]×0.6=1.8[kWh]である。よって、充電効率が60[%]の場合の充電に要する時間は、2[kWh]÷2.4[kWh]=1.11[h]となり充電効率が80[%]の場合よりも増える。ただし、タイマー充電を設定する状況は、十分な所要時間を確保できていると考えられるため、ユーザーが急遽出発するなどのイレギュラーな状況がない限り問題とならないと推定される。
【0043】
従来(パターン2:充電効率=80[%])での受電装置20の損失は、0.6[kW]×0.5=0.3[kW]である。また、0.83[h]充電するため、高圧バッテリ22に与える熱量は0.3[kW]×0.83[h]=0.249[kWh]=3600×0.249×1000[J]である。
【0044】
充電効率の補正後(パターン3:充電効率=60[%])での受電装置20の損失は、1.2[kW]×0.5=0.6[kW]である。そして、高圧バッテリ22に与える熱量は、1.11[h]充電するため、0.6[kW]×1.11[h]=0.666[kWh]=3600×0.666×1000[J]であり、従来の高圧バッテリ22に与える熱量に対して約2.7倍になる。
【0045】
このように、実施例1では、従来(パターン2)の高圧バッテリ22に与える熱量に対し、充電効率の補正後(パターン3)に高圧バッテリ22に与える熱量を増加させることにより、狙いの電池セル温度に到達させるまたは近づけることができる。
【0046】
(実施例2)
実施例2では、電池セル温度による効率補正について説明する。前述した通り、実施例2では、定期的に電池ECU25を起動させて電池セル温度を確認するが、このときの効率補正計算について説明する。
【0047】
〔パターン1(計算の基準とする状態)〕
駐車スペース6への車両駐車時における高圧バッテリ22のSOC=20[%]を基準とすると、満充電(SOC=100[%])まで充電するのに必要な電力量は10[kWh]×0.8=8[kWh]である。また、充電効率80[%]で充電するため、1時間あたり充電できる電力量は3[kWh]×0.8=2.4[kWh]である。よって充電に要する時間は、8[kWh]÷2.4[kWh]=3.33[h]である。
【0048】
ここで、受電装置20の損失は、0.6[kW]×0.5=0.3[kW]である。また、3.33[h]充電するため、0.3[kW]×3.33[h]=0.999[kWh]=3600×0.999×1000[J]の熱量を高圧バッテリ22の与えることができており、この熱量によって電池セル温度を20[℃]から40[℃]に上がられていると仮定する。
【0049】
〔パターン4(計算の基準とする状態)〕
駐車スペース6への車両駐車時における高圧バッテリ22のSOC=20[%]を基準とすると、満充電(SOC=100[%])まで充電するのに必要な電力量は10[kWh]×0.8=8[kWh]である。また、所定のタイミングで電池セル温度を確認したところ、電池セル温度が0[℃]だったと仮定する。このとき、充電効率を悪化させることによって、受電装置20の損失を増やし、電池セル温度をより上げたい状況である。
【0050】
また、充電効率=60[%]で充電するため、1時間あたり充電できる電力量は3[kWh]×0.6=1.8[kWh]である。よって、充電に要する時間は、8[kWh]÷1.8[kWh]=4.44[h]に増える。ただし、タイマー充電を設定する状況は、十分な所要時間は確保できていると考えられるため、ユーザーが急遽出発するなどのイレギュラーな状況がない限り問題とならないと推定される。
【0051】
従来での受電装置20の損失は、0.6[kW]×0.5=0.3[kW]である。そして、高圧バッテリ22に与える熱量は、3.33[h]充電するため、0.3[kW]×3.33[h]=0.999[kWh]である。
【0052】
充電効率の補正後での受電装置20の損失は、1.2[kW]×0.5=0.6[kW]である。そして、高圧バッテリ22に与える熱量は、4.44[h]充電するため、0.6[kW]×4.44[h]=2.664[kWh]であり、従来の高圧バッテリ22に与える熱量に対して約2.6倍になる。
【0053】
このように、実施例2では、従来(パターン1)の高圧バッテリ22に与える熱量に対し、充電効率の補正後(パターン4)に高圧バッテリ22に与える熱量を増加させることにより、狙いの電池セル温度に到達させるまたは近づけることができる。
【0054】
以上の実施例1及び2の理論計算はあくまで一例であり、理論計算だけでなく試験的に適合値及び適合マップを算出し、制御的に反映する方法も適用可能である。
【0055】
次に、実施形態に係る非接触充電システム1における非接触充電での充電効率を変化させる方法について説明する。
【0056】
実施形態に係る非接触充電システム1においては、非接触充電での充電効率を変化させることが必要である。一般に、接触式AC充電では、充電効率が高くなるようにハード設計し、且つ、制御的に充電効率を変化させるようなことはしていない。一方で、非接触充電において充電効率を上げるためには、送電装置10の送電コイル11と受電装置20の受電コイル21とのインピーダンスマッチングが重要である。そのため、充電効率の最大効率を実現できるように、制御開発や適合を実施して制御周波数を決定する。
【0057】
制御周波数に対する充電効率の関係は、
図6に示すようになり、効率最適点が存在する。本発明を実施するにあたっては、最適点よりも効率が低い周波数を、基準周波数に設定し、周波数を変化させることによってインピーダンスのマッチングの程度を調整し、充電効率を変化させられるように設定することが望ましい。
【0058】
図7は、実施形態に係る非接触充電システム1におけるタイマー充電の開始時刻補正に関するタイムチャートを示した図である。
図8は、実施形態に係る非接触充電システム1におけるタイマー充電に関する制御の第1例であるフローチャートAを示した図である。
図8に示したフローチャートAは、高圧バッテリ22の残SOCに応じてタイマー充電の開始時刻を補正するフローである。
【0059】
ステップS1の処理では、駐車スペース6に車両3が駐車されたか否かを判断する。そして、駐車スペース6に駐車されたと判断した場合(ステップS1の処理にてYes)には、ステップS2の処理に移行する。一方、駐車スペース6に駐車されていないと判断した場合(ステップS1の処理にてNo)には、ステップS7の処理に移行し、充電を開始しない。そして、一連の制御を終了する。
【0060】
ステップS2の処理では、タイマー充電が設定されているか否かを判断する。そして、タイマー充電が設定されていると判断した場合(ステップS2の処理にてYes)には、ステップS3の処理に移行する。一方、タイマー充電が設定されていないと判断した場合(ステップS2の処理にてNo)には、ステップS8の処理に移行し、通常の非接触充電を開始する。そして、一連の制御を終了する。
【0061】
ステップS3の処理では、電池ECU25が高圧バッテリ22の残SOCを取得する。その後、ステップS4の処理に移行する。ステップS4の処理では、充電効率を算出する。その後、ステップS5の処理に移行する。ステップS5の処理では、タイマー充電の開始時刻を算出する。その後、ステップS6の処理に移行する。ステップS6の処理では、タイマー充電の開始時刻までタイマー待機する。そして、一連の制御を終了する。
【0062】
図9は、実施形態に係る非接触充電システム1におけるタイマー充電に関する制御の第2例であるフローチャートBを示した図である。
図9に示したフローチャートBは、高圧バッテリ22の電池セル温度に応じてタイマー充電の開始時刻を補正するフローである。
【0063】
ステップS11の処理では、タイマー充電でのタイマー待機中において、電池ECU25による電池セル温度の確認時刻に到達したか否かを判断する。そして、電池ECU25による電池セル温度の確認時刻に到達したと判断した場合(ステップS11の処理にてYes)には、ステップS12の処理に移行する。一方、電池ECU25による電池セル温度の確認時刻に到達していないと判断した場合(ステップS11の処理にてNo)には、ステップS16の処理に移行する。
【0064】
ステップ12の処理では、電池ECU25を起動する。その後、ステップS13の処理に移行する。ステップS13の処理では、電池ECU25が電池セル温度を取得する。その後、ステップS14の処理に移行する。ステップS14の処理では、充電効率を算出する。その後、ステップS15の処理に移行する。ステップS15の処理では、現在の電池セル温度に応じて開始時刻を補正する。その後、ステップS16の処理に移行する。
【0065】
ステップS16の処理では、次の電池セル温度の確認時刻またはタイマー充電の開始時刻までタイマー待機する。そして、一連の制御を終了する。
【0066】
図10は、実施形態に係る非接触充電システム1におけるタイマー充電に関する制御の第3例であるフローチャートCを示した図である。
【0067】
ステップS21の処理では、タイマー充電でのタイマー待機中に開始時刻に到達したか否かを判断する。そして、タイマー待機中の開始時刻に到達したと判断した場合(ステップS21の処理にてYes)には、ステップS22の処理に移行する。一方、タイマー待機中に開始時刻に到達していないと判断した場合(ステップS21の処理にてNo)には、ステップS24の処理に移行し、タイマー待機を継続して行う。そして、一連の制御を終了する。
【0068】
ステップS22の処理では、充電に関わるECUを起動する。その後、ステップS23の処理に移行し、タイマー充電による非接触充電を開始する。そして、一連の制御を終了する。
【0069】
実施形態に係る非接触充電システム1は、受電装置20を搭載した車両3に、給電設備2から電力を非接触で供給して車両3に搭載された蓄電装置である高圧バッテリ22を充電する非接触充電システムであって、充電スケジュールにしたがって設定された時間帯において、給電設備2を用いた非接触充電であるタイマー充電が実行可能であり、タイマー充電を行う場合には、充電終了時に高圧バッテリ22が有する電池セルの温度が所定の電池セル温度となるように、タイマー充電の開始時刻及び充電効率を設定する。これにより、実施形態に係る非接触充電システム1は、タイマー充電の充電終了時における電池セル温度を最適に制御できるため、電気自動車(BEV)でのドライバビリティ悪化やプラグインハイブリッド車(PHEV)での燃費悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0070】
1 非接触充電システム
2 給電設備
3 車両
6 駐車スペース
10 送電装置
20 受電装置
22 高圧バッテリ
25 電池ECU