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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179660
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ロータ及びロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241219BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K15/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098670
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】ブリッジ部の変形を抑制できるロータ及びロータの製造方法を提供する。
【解決手段】ロータ10は、ロータコア11と、磁石収容孔20に収容された磁石30と、ロータコア11に対して磁石30を固定する樹脂材40とを備えている。ロータコア11は、外周部13と、内周部14と、ロータコア11の周方向において隣り合う2つの磁石収容孔20の間に位置し、外周部13と内周部14とを連結するブリッジ部15とを有している。磁石収容孔20の内面は、外周部13を構成する第1面21と、内周部14を構成する第2面22とを含む。磁石収容孔20の内部には、第2面22と磁石30の第2外面32との間の空間を直交方向における両側から閉塞する突起24が設けられている。第1面21は、磁石30の第1外面31に接触している。樹脂材40は、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分に充填されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータであって、
前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、
前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、
前記第1面と前記第2面とが対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、
前記磁石収容孔の内部には、前記第1面及び前記第2面のいずれか一方と前記磁石の外面との間の空間を前記直交方向における両側から閉塞する閉塞部が設けられており、
前記第1面及び前記第2面の前記一方とは異なる他方は、前記磁石の外面に接触しており、
前記樹脂材は、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に充填されている、
ロータ。
【請求項2】
複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータであって、
前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、
前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、
前記第1面及び前記第2面が対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、
前記磁石収容孔の内部には、前記第1面と前記磁石の外面との間の空間、及び前記第2面と前記磁石の外面との間の空間を前記直交方向における両側から閉塞する閉塞部が、前記空間のそれぞれに対応して設けられており、
前記樹脂材は、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に充填されている、
ロータ。
【請求項3】
前記閉塞部は、前記対向方向における前記磁石収容孔の内面と前記磁石の外面との間に設けられており、前記磁石の外面に接触している、
請求項1または請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記閉塞部における前記磁石の外面に接触する部分は、前記磁石の外面に向かって凸となるように湾曲している、
請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記閉塞部は、前記磁石収容孔の内面から前記対向方向に突出するとともに、前記直交方向に互いに間隔をおいて形成された一対の突起により構成されている、
請求項1または請求項2に記載のロータ。
【請求項6】
前記2つの磁石収容孔は、前記ブリッジ部から離れるほど前記ロータコアの径方向の外側に位置するように延びている、
請求項1または請求項2に記載のロータ。
【請求項7】
複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータの製造方法であって、
前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、
前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、
前記第1面及び前記第2面が対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、
前記磁石収容孔に前記磁石を収容する磁石収容工程と、
前記磁石が収容された前記磁石収容孔に前記樹脂材を充填する充填工程と、を備え、
前記磁石収容工程では、前記第1面及び前記第2面のいずれか一方と前記磁石の外面との間の空間を、前記磁石収容孔の内部に設けられた閉塞部によって前記直交方向における両側から閉塞し、且つ前記第1面及び前記第2面の前記一方とは異なる他方に前記磁石の外面を接触させ、
前記充填工程では、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に前記樹脂材を充填する、
ロータの製造方法。
【請求項8】
複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータの製造方法であって、
前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、
前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、
前記第1面及び前記第2面が対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、
前記磁石収容孔に前記磁石を収容する磁石収容工程と、
前記磁石が収容された前記磁石収容孔に前記樹脂材を充填する充填工程と、を備え、
前記磁石収容工程では、前記第1面と前記磁石の外面との間の空間、及び前記第2面と前記磁石の外面との間の空間を、前記空間のそれぞれに対応して前記磁石収容孔の内部に設けられた閉塞部によって前記直交方向における両側から閉塞し、
前記充填工程では、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に前記樹脂材を充填する、
ロータの製造方法。
【請求項9】
前記充填工程の前に、前記磁石収容孔に前記樹脂材を射出するゲートを有する金型を、前記磁石が収容された前記磁石収容孔の開口を覆うように前記ロータコアの軸線方向の端面に配置する配置工程と、
前記磁石収容孔に収容された前記磁石を前記金型に押し付ける押付工程と、を備える、
請求項7または請求項8に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及びロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は筒状のステータと、ステータの内側において回転するロータとを備えている。
特許文献1には、磁石埋込型の回転電機に用いられるロータが開示されている。このロータは、複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、磁石収容孔に収容された磁石と、磁石収容孔に充填され、ロータコアに対して磁石を固定する樹脂材とを備えている。
【0003】
複数の磁石収容孔は、ロータコアの周方向に互いに間隔をおいて形成されている。周方向に隣り合う2つの磁石収容孔は、径方向の内側の部分ほど周方向において互いに近付くようにV字状に延びている。ロータコアのうち2つの磁石収容孔の径方向の内側の端部同士の間には、薄肉状のブリッジ部が形成されている。
【0004】
樹脂材は、磁石収容孔の内部において磁石の外面の全周にわたって充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-119766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のロータでは、射出装置を用いて磁石収容孔に樹脂材を充填する際に、樹脂材の圧力が磁石収容孔の内面の全体に作用する。このとき、樹脂材の圧力に基づく力がロータコアの外周側に向かって作用する。これにより、ブリッジ部が変形することでロータコアの外周形状が変形するおそれがある。この場合、ロータとステータとの間のエアギャップが適切に保たれないおそれがあるため、ブリッジ部の変形を抑制することが望まれている。
【0007】
なお、樹脂材が熱可塑性樹脂である場合には、樹脂材が熱硬化性樹脂である場合と比較して、樹脂材の充填時に磁石収容孔の内面に作用する圧力が高くなる。このため、上記課題がより顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのロータは、複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータであって、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、前記第1面と前記第2面とが対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、前記磁石収容孔の内部には、前記第1面及び前記第2面のいずれか一方と前記磁石の外面との間の空間を前記直交方向における両側から閉塞する閉塞部が設けられており、前記第1面及び前記第2面の前記一方とは異なる他方は、前記磁石の外面に接触しており、前記樹脂材は、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に充填されている。
【0009】
ロータの製造時において、磁石収容孔の第1面と磁石の外面との間に樹脂材が充填される場合は、当該樹脂材の圧力が外周部に作用しやすくなる。また、磁石収容孔の第2面と磁石の外面との間に樹脂材が充填される場合は、当該樹脂材の圧力が磁石を介して外周部に作用しやすくなる。
【0010】
この点、上記構成によれば、磁石収容孔の第1面及び第2面のいずれか一方と磁石の外面との間の空間が、閉塞部によって直交方向の両側から閉塞されている。また、第1面及び第2面のいずれか他方は、磁石の外面に接触している。このため、磁石収容孔のうち磁石の直交方向における両側の部分への樹脂材の充填時に、磁石収容孔の第1面及び第2面のそれぞれと、磁石の外面との間に樹脂材が流入しにくくなる。これにより、磁石収容孔への樹脂材の充填時に外周部に作用する樹脂材の圧力を低減することができる。その結果、ロータコアの外周側に向かって作用する樹脂材の圧力に基づく力を低減できる。したがって、ブリッジ部の変形を抑制できる。
【0011】
上記課題を解決するためのロータは、複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータであって、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、前記第1面及び前記第2面が対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、前記磁石収容孔の内部には、前記第1面と前記磁石の外面との間の空間、及び前記第2面と前記磁石の外面との間の空間を前記直交方向における両側から閉塞する閉塞部が、前記空間のそれぞれに対応して設けられており、前記樹脂材は、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に充填されている。
【0012】
ロータの製造時において、磁石収容孔の第1面と磁石の外面との間に樹脂材が充填される場合は、当該樹脂材の圧力が外周部に作用しやすくなる。また、磁石収容孔の第2面と磁石の外面との間に樹脂材が充填される場合は、当該樹脂材の圧力が磁石を介して外周部に作用しやすくなる。
【0013】
この点、上記構成によれば、磁石収容孔の第1面と磁石の外面との間の空間、及び第2面と磁石の外面との間の空間のそれぞれが、閉塞部によって直交方向の両側から閉塞されている。このため、磁石収容孔のうち磁石の直交方向における両側の部分への樹脂材の充填時に、磁石収容孔の第1面及び第2面のそれぞれと、磁石の外面との間に樹脂材が流入しにくくなる。これにより、磁石収容孔への樹脂材の充填時に、外周部に作用する樹脂材の圧力を低減することができる。その結果、ロータコアの外周側に向かって作用する樹脂材の圧力に基づく力を低減できる。したがって、ブリッジ部の変形を抑制できる。
【0014】
上記課題を解決するためのロータの製造方法は、複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータの製造方法であって、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、前記第1面及び前記第2面が対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、前記磁石収容孔に前記磁石を収容する磁石収容工程と、前記磁石が収容された前記磁石収容孔に前記樹脂材を充填する充填工程と、を備え、前記磁石収容工程では、前記第1面及び前記第2面のいずれか一方と前記磁石の外面との間の空間を、前記磁石収容孔の内部に設けられた閉塞部によって前記直交方向における両側から閉塞し、且つ前記第1面及び前記第2面の前記一方とは異なる他方に前記磁石の外面を接触させ、前記充填工程では、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に前記樹脂材を充填する。
【0015】
上記方法によれば、上記1つ目のロータの作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
上記課題を解決するためのロータの製造方法は、複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータの製造方法であって、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、前記第1面及び前記第2面が対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、前記磁石収容孔に前記磁石を収容する磁石収容工程と、前記磁石が収容された前記磁石収容孔に前記樹脂材を充填する充填工程と、を備え、前記磁石収容工程では、前記第1面と前記磁石の外面との間の空間、及び前記第2面と前記磁石の外面との間の空間を、前記空間のそれぞれに対応して前記磁石収容孔の内部に設けられた閉塞部によって前記直交方向における両側から閉塞し、前記充填工程では、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に前記樹脂材を充填する。
【0016】
上記方法によれば、上記2つ目のロータの作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態のロータを示す平面図である。
図2図2は、図1のロータを示す断面図である。
図3図3は、図1のロータにおける磁石収容孔を拡大して示す拡大平面図である。
図4図4は、一実施形態のモールド装置を示す断面図である。
図5図5は、図4のモールド装置における押付機構を拡大して示す断面図である。
図6図6は、図1のロータコアの磁石収容孔に磁石が収容された状態を示す平面図である。
図7図7は、第1変更例のロータを示す平面図である。
図8図8は、第2変更例のロータを示す平面図である。
図9図9は、第3変更例のロータを示す平面図である。
図10図10は、第4変更例のロータを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図6を参照して、ロータ及びロータの製造方法の一実施形態について説明する。
(ロータ10)
図1に示すように、ロータ10は、ロータコア11と、複数の磁石30と、複数の樹脂材40とを備えている。ロータ10は、例えば、磁石埋込型のモータに用いられるロータである。
【0019】
ロータコア11は、略円筒状をなしている。ロータコア11は、例えば、電磁鋼板から打ち抜かれた複数の鉄心片が積層されることにより構成されている。
以降において、ロータコア11の軸線方向を単に軸線方向と称する。また、ロータコア11の径方向を単に径方向と称する。また、ロータコア11の周方向を単に周方向と称する。
【0020】
図2に示すように、ロータコア11は、軸線方向において互いに反対側に位置する第1端面11aと第2端面11bとを有している。
ロータコア11は、図示しないシャフトが挿入される中心孔12と、磁石30が収容される複数の磁石収容孔20とを有している。複数の磁石収容孔20は、周方向に互いに間隔をおいて形成されている。
【0021】
中心孔12及び磁石収容孔20は、軸線方向においてロータコア11を貫通している。すなわち、中心孔12及び磁石収容孔20は、いずれも第1端面11a及び第2端面11bに開口している。
【0022】
図3に示すように、磁石収容孔20の軸線方向に直交する断面形状は、長辺及び短辺を有する略長方形状をなしている。磁石収容孔20の断面形状は、軸線方向の全体にわたって同一である。
【0023】
ロータコア11は、外周部13と、内周部14と、ブリッジ部15とを有している。外周部13は、ロータコア11の外周面を構成している。内周部14は、磁石収容孔20を挟んで外周部13とは反対側に位置するとともにロータコア11の内周面を構成している。ブリッジ部15は、外周部13と内周部14とを連結している。
【0024】
周方向において隣り合う対をなす2つの磁石収容孔20は、互いに近付くほど径方向の内側に位置するようにV字状に延びている。ブリッジ部15は、上記2つの磁石収容孔20の径方向における内側の端部同士の間に位置している。
【0025】
磁石収容孔20の内面は、第1面21と第2面22とを含む。第1面21は、外周部13を構成している。第2面22は、第1面21に沿って延びるとともに内周部14を構成している。したがって、第1面21は、第2面22よりも径方向の外側に位置している。
【0026】
以降において、第1面21と第2面22とが対向する方向を対向方向と称する。また、軸線方向と対向方向との両方に直交する方向を直交方向と称する。対向方向は、磁石収容孔20の短辺方向と一致する。直交方向は、磁石収容孔20の長辺方向と一致する。
【0027】
磁石30は、1つの磁石収容孔20に対して1つずつ収容されている。磁石30は、磁石収容孔20に充填された樹脂材40を介してロータコア11に対して固定されている。
磁石30は、例えば、永久磁石である。
【0028】
磁石30は、軸線方向に長い長尺状をなしている。軸線方向における磁石30の長さは、ロータコア11の軸線方向における長さよりも短い。
図2に示すように、磁石30の軸線方向における一端面は、例えば、第1端面11aと面一である。磁石30の軸線方向における一端面とは反対側の他端面は、例えば、第2端面11bよりも軸線方向の内側に位置している。
【0029】
図3に示すように、磁石30の軸線方向に直交する断面形状は、長辺及び短辺を有する略長方形状をなしている。磁石30は、長辺方向及び短辺方向が直交方向及び対向方向にそれぞれ一致する姿勢にて磁石収容孔20の内部に収容されている。
【0030】
磁石30の短辺方向における幅は、磁石収容孔20の対向方向における幅よりも小さい。磁石30の長辺方向における幅は、磁石収容孔20の直交方向における幅よりも小さい。
【0031】
磁石30の短辺方向の一方側における第1外面31の全体は、第1面21に接触している。磁石30の第1外面31とは反対側の第2外面32は、第2面22から離れている。すなわち、第2外面32と第2面22との間には、隙間が存在する。
【0032】
磁石収容孔20の内部には、第2面22と第2外面32との間の空間を直交方向における両側から閉塞する閉塞部23が設けられている。閉塞部23は、第2面22から対向方向に突出するとともに、直交方向に互いに間隔をおいて形成された一対の突起24により構成されている。
【0033】
突起24は、第2面22の軸線方向の全体にわたって軸線方向に延びている。すなわち、突起24は、第1端面11aから第2端面11bにかけて延びている。突起24は、第2面22と一体に形成されている。すなわち、突起24は、第2面22と切れ目無く連続して形成されている。
【0034】
一対の突起24の直交方向における距離は、磁石30の長辺よりも短い。したがって、突起24は、対向方向における第2面22と第2外面32との間に位置している。突起24は、対向方向において磁石30の第2外面32に接触している。
【0035】
突起24における第2外面32に接触する部分は、第2外面32に向かって凸となるように湾曲している。突起24の軸線方向に直交する断面形状は、例えば、半円状をなしている。
【0036】
磁石収容孔20に磁石30が収容される前の状態では、対向方向における第1面21と突起24との距離は、磁石30の短辺よりも僅かに短い。このため、磁石30は、第1面21と突起24との間に圧入されている。
【0037】
第2面22のうち一対の突起24よりも直交方向の外側の部分には、位置決め部25がそれぞれ形成されている。なお、直交方向の外側とは、直交方向において、一対の突起24からの距離が等しい第2面22上の中間部分から離れる側を指す。位置決め部25は、磁石収容孔20への樹脂材40の充填時に、樹脂材40の圧力によって移動し得る磁石30の直交方向における位置決めを行う。位置決め部25は、第2面22から突出する凸部によって構成されている。2つの位置決め部25の少なくとも一方は、磁石30の短辺を構成する外面に直交方向の外側から接触している。
【0038】
第2面22には、磁石30の長辺方向における両角部を逃がす2つの凹部26が形成されている。凹部26は、第2面22から内周部14側に向かって窪んでいる。凹部26は、位置決め部25の直交方向の内側において位置決め部25に連なっている。なお、直交方向の内側とは、上述した直交方向の外側とは反対側であって、直交方向において、一対の突起24からの距離が等しい第2面22上の中間部分に近付く側を指す。
【0039】
樹脂材40は、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分に充填されている。樹脂材40の軸線方向における一端面は、磁石30の軸線方向における一端面及びロータコア11の第1端面11aと面一である。
【0040】
樹脂材40は、例えば、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂である。
磁石収容孔20のうち第2面22と、磁石30の第2外面32と、一対の突起24とにより区画される空間には、樹脂材40が充填されない未充填部20aが形成されている。未充填部20aは、ロータ10の軸線方向における全体にわたって形成されている。なお、磁石収容孔20への樹脂材40の充填時に、磁石30の一端面とは反対側の他端面には、後述する押付部材71が接触する。このため、軸線方向における磁石30の他端面は、樹脂材40により覆われていない。なお、凹部26の内部には、樹脂材40が充填されている。
【0041】
(モールド装置50)
次に、磁石収容孔20に樹脂材40を充填するモールド装置50について説明する。
図4に示すように、モールド装置50は、第1型60と第2型80とを備えている。
【0042】
(第1型60)
第1型60は、第1型本体61と、パレット62とを備えている。
第1型本体61は、パレット62の下面をする支持面を有している。
【0043】
パレット62は、ロータコア11を支持した状態で第1型本体61と第2型80との間に搬送される。
パレット62は、ベース板63と、ベース板63の中央部から突出するポスト64と、ベース板63の上面に配置されるスペーサ66とを備えている。ポスト64は、スペーサ66を貫通している。
【0044】
ベース板63及びスペーサ66は、それぞれ平板状をなしている。ポスト64は、円筒状をなしている。
ベース板63におけるポスト64の外周側の部分には、複数の貫通孔63aが周方向に互いに間隔をおいて設けられている。貫通孔63aは、スペーサ66により覆われている。
【0045】
ポスト64は、ロータコア11の中心孔12に挿入される。ポスト64の突端には、複数の係合ピン65が周方向に互いに間隔をおいて設けられている。
スペーサ66は、ポスト64が挿入されたロータコア11の第2端面11bを支持する。
【0046】
図5に示すように、スペーサ66のうち各磁石収容孔20に対向する部分には、スペーサ66を厚さ方向に貫通する段付き孔67が形成されている。段付き孔67は、ベース板63に対向する大径部と、磁石収容孔20に対向する小径部とを有している。
【0047】
段付き孔67の内部には、押付機構70が設けられている。押付機構70は、磁石30を第2型80に向けて押し付ける押付部材71と、押付部材71を第2型80に向けて付勢する付勢部材74とを有している。
【0048】
押付部材71は、段付き孔67の内部において、スペーサ66の板厚方向に往復動可能に収容されている。押付部材71は、磁石30の他端面を支持する支持部72と、支持部72が段付き孔67から抜け出ることを規制する鍔部73とを有している。
【0049】
支持部72は、段付き孔67の小径部に収容されている。支持部72は、平面視において略長方形状をなしている。
支持部72の直交方向における幅は、例えば、直交方向における突起24同士の距離よりも長く、直交方向における位置決め部25同士の距離よりも短い。支持部72の対向方向における幅は、例えば、対向方向における第1面21と位置決め部25との距離と同一である。
【0050】
鍔部73は、段付き孔67の大径部に収容されている。鍔部73は、支持部72の下端部から外周側に突出している。鍔部73が下方から段付き孔67の内面に接触することにより、押付部材71の上方への移動が規制される。
【0051】
付勢部材74は、例えば、コイルスプリングである。付勢部材74の両端は、ベース板63及び鍔部73にそれぞれ連結されている。
(第2型80)
図4に示すように、第2型80は、第2型本体81と、ゲートプレート83とを備えている。第2型本体81とゲートプレート83とは、例えば、別体に構成されている。第2型80は、「金型」の一例である。
【0052】
第2型本体81は、例えば、第1型本体61に対して進退可能に構成された可動型である。第2型本体81は、図示しない射出装置から射出された樹脂材40が流通するスプルー82を有している。
【0053】
ゲートプレート83は、第2型本体81とロータコア11との間に配置される。ゲートプレート83は、スプルー82に連通するランナー84と、ランナー84から延びる複数のゲート85とを有している。
【0054】
ランナー84は、ゲートプレート83の上面に開口している。ランナー84は、ゲートプレート83の中央部から径方向において放射状に延びている。ゲート85は、ゲートプレート83の下面に開口している。ゲート85は、ランナー84と磁石収容孔20とを連通する。
【0055】
1つの磁石収容孔20には、2つのゲート85が連通している。2つのゲート85は、磁石収容孔20のうち直交方向における両側の部分に連通している。なお、2つのゲート85は、1つのランナー84から分岐して延びるものであってもよいし、2つの異なるランナー84のそれぞれから延びるものであってもよい。
【0056】
ゲートプレート83の下面には、ポスト64の複数の係合ピン65が係合する複数の係合孔86が設けられている。係合ピン65が係合孔86に係合することによって、パレット62に対してゲートプレート83が位置決めされる。
【0057】
(ロータ10の製造方法)
ロータ10の製造方法は、磁石収容工程、配置工程、押付工程、充填工程、及び固化工程を備えている。磁石収容工程、配置工程、押付工程、充填工程、及び固化工程は、この順で行われる。
【0058】
図4に示すように、磁石収容工程では、パレット62に支持されたロータコア11の磁石収容孔20に磁石30が収容される。
図6に示すように、対向方向における第1面21と突起24との間の距離は、磁石30の短辺よりも僅かに短いため、磁石30は、第1面21と2つの突起24とに摺動しながら収容される。すなわち、磁石30は、磁石収容孔20に対して圧入される。これにより、磁石30が対向方向において位置決めされる。
【0059】
その後、パレット62は、第1型本体61と第2型本体81との間に配置される。
図5に示すように、配置工程では、ゲートプレート83がロータコア11の第1端面11aに配置される。このとき、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分にゲート85が対向する。
【0060】
押付工程では、ゲートプレート83が各磁石収容孔20の開口を覆うようにロータコア11の第1端面11aに配置されることにより、押付機構70が磁石30をゲートプレート83の下面に押し付ける。
【0061】
ゲートプレート83がロータコア11の第1端面11aに配置されるまでは、押付部材71の鍔部73が下方から段付き孔67の内面に接触することで、押付部材71の上方への移動が規制されている。このとき、押付部材71に支持された磁石30の上端部は、ロータコア11の第1端面11aよりも上方に突出している。ゲートプレート83がロータコア11の第1端面11aに配置されることにより、付勢部材74の付勢力に抗して磁石30を介して押付部材71が押し下げられる。これにより、付勢部材74の付勢力によって、磁石30が押付部材71を介してゲートプレート83の下面に押し付けられる。このとき、鍔部73は、段付き孔67の内面から下方に離れている。
【0062】
図6に示すように、充填工程では、第1型60と第2型80とが型締めされた状態で、2つのゲート85を通じて、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分に樹脂材40が充填される。このとき、磁石収容孔20の第2面22と磁石30の第2外面32との間の空間は、一対の突起24によって直交方向における両側から閉塞されているため、当該空間には樹脂材40が充填されない。このため、図3に示すように、上記空間には、未充填部20aが形成される。
【0063】
固化工程では、ロータコア11を冷却することにより、磁石収容孔20に充填された樹脂材40を固化する。ロータコア11の冷却は、常温雰囲気においてロータコア11を放置することにより行ってもよいし、送風を行う冷却装置を用いて行ってもよい。
【0064】
次に、図示は省略するが、ベース板63の貫通孔63aに挿入される昇降部材によってスペーサ66が下方から押圧される。これにより、ロータコア11がスペーサ66と共にポスト64から抜け出る方向に移動することで、ロータコア11がポスト64から取り外される。
【0065】
以上のようにしてロータ10が製造される。
本実施形態の作用について説明する。
ロータ10の製造時において、磁石収容孔20の第1面21と磁石30の第1外面31との間に樹脂材40が充填される場合は、当該樹脂材40の圧力が外周部13に作用しやすくなる。また、磁石収容孔20の第2面22と磁石30の第2外面32との間に樹脂材40が充填される場合は、当該樹脂材40の圧力が磁石30を介して外周部13に作用しやすくなる。
【0066】
この点、本実施形態のロータ10によれば、磁石収容孔20の第2面22と磁石30の第2外面32との間の空間が、一対の突起24によって直交方向の両側から閉塞されている。また、磁石収容孔20の第1面21は、磁石30の第1外面31に接触している。このため、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分への樹脂材40の充填時に、第1面21と第1外面31との間、及び第2面22と第2外面32との間に樹脂材40が流入しにくくなる。
【0067】
本実施形態の効果について説明する。
(1)磁石収容孔20の内部には、第2面22と第2外面32との間の空間を直交方向における両側から閉塞する一対の突起24が設けられている。第1面21は、第1外面31に接触している。樹脂材40は、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分に充填されている。
【0068】
上記構成によれば、磁石収容孔20への樹脂材40の充填時に外周部13に作用する樹脂材40の圧力を低減することができる。その結果、ロータコア11の外周側に向かって作用する樹脂材40の圧力に基づく力を低減できる。したがって、ブリッジ部15の変形を抑制できる。
【0069】
(2)突起24は、対向方向における第2面22と第2外面32との間に設けられている。突起24は、第2外面32に接触している。
上記構成によれば、対向方向において磁石30が突起24と接触することにより、磁石30が対向方向において位置決めされる。したがって第1面21と第1外面31との間、及び第2面22と第2外面32との間に樹脂材40が流入しにくくなる。
【0070】
また、ロータ10が回転する際の遠心力によって磁石30の位置が対向方向においてずれることを抑制できる。
(3)突起24における第2外面32に接触する部分は、第2外面32に向かって凸となるように湾曲している。
【0071】
上記構成によれば、突起24における第2外面32に接触する部分が第2外面32に沿う平面である場合と比較して、突起24と磁石30との接触面積を小さくすることができる。これにより、磁石30を磁石収容孔20に収容する際の磁石30と突起24との摺動抵抗が小さくなる。したがって、磁石30を磁石収容孔20に容易に収容できる。
【0072】
(4)閉塞部23は、第2面22から対向方向に突出するとともに、直交方向に互いに間隔をおいて形成された一対の突起24により構成されている。
上記構成によれば、閉塞部23がロータコア11とは別部材である場合と比較して、ロータ10を構成する部品の種類を低減することができる。したがって、ロータ10の構成が複雑化することを抑制できる。また、ロータ10の製造が容易となる。
【0073】
(5)2つの磁石収容孔20は、ブリッジ部15から離れるほどロータコア11の径方向の外側に位置するように延びている。
2つの磁石収容孔20がブリッジ部15から離れるほどロータコア11の径方向の外側に位置するように延びる場合、2つの磁石収容孔20の第1面21が周方向において互いに対向する。このため、外周部13のうち2つの磁石収容孔20の間に位置する部分には、当該2つの磁石収容孔20の第1面21のそれぞれに作用する樹脂材40の圧力が作用する。その結果、ブリッジ部15の変形が生じやすくなる。
【0074】
この点、上記構成によれば、磁石収容孔20への樹脂材40の充填時に、第1面21と第1外面31との間、及び第2面22と第2外面32との間に樹脂材40が流入しにくくなる。これにより、上記2つの磁石収容孔20の第1面21のそれぞれに作用する樹脂材40の圧力を低減することができる。したがって、ブリッジ部15の変形を効果的に抑制できる。
【0075】
(6)磁石収容工程では、第2面22と第2外面32との間の空間を、磁石収容孔20の内部に設けられた一対の突起24によって直交方向における両側から閉塞し、且つ第1面21に第1外面31を接触させる。充填工程では、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分に樹脂材40を充填する。
【0076】
上記方法によれば、上記効果(1)に準じた効果を奏することができる。
(7)配置工程では、充填工程の前に、ゲート85を有するゲートプレート83を、磁石30が収容された磁石収容孔20の開口を覆うようにロータコア11の第1端面11aに配置する。押付工程では、磁石収容孔20に収容された磁石30をゲートプレート83の下面に押し付ける。
【0077】
第2面22と、第2外面32と、一対の突起24とによって区画された空間は、磁石収容孔20の内部に位置している。このため、軸線方向における磁石30の長さが、軸線方向におけるロータコア11の長さよりも短い場合には、磁石収容孔20の内部において上記空間と上記空間以外の部分とが連通する。この場合、充填工程の際に上記空間に樹脂材40が流入するおそれがある。
【0078】
この点、上記方法によれば、磁石収容孔20に樹脂材40が射出される前に、磁石30がゲートプレート83に押し付けられる。これにより、磁石収容孔20の内部のうちゲートプレート83が位置する側において、上記空間と上記空間以外の部分とが磁石30によって仕切られる。このため、軸線方向における磁石30の長さが、軸線方向におけるロータコア11の長さよりも短い場合であっても、充填工程の際に上記空間に樹脂材40が流入することを抑制できる。
【0079】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0080】
・押付機構70は、付勢部材74に代えて、押付部材71を昇降させるアクチュエータを有していてもよい。この場合、押付部材71による磁石30の押し付けを、ロータコア11へのゲートプレート83の配置に対して遅延させてもよい。
【0081】
・押付工程は省略されてもよい。この場合、軸線方向における磁石30の長さは、軸線方向におけるロータコア11の長さと同一であってもよいし、ロータコア11の長さより短くてもよい。磁石30の長さがロータコア11の長さよりも短い場合には、磁石収容孔20の上端部において、第2面22と、第2外面32と、突起24とによって区画された空間と、当該空間以外の部分とが連通する。このため、磁石収容孔20に充填される樹脂材40が磁石30の上面を超えないように、樹脂材40の充填量が調整されることが好ましい。
【0082】
・2つの磁石収容孔20は、互いに近付くほど径方向の外側に位置するようにV字状に延びていてもよい。この場合であっても、上記2つの磁石収容孔20の径方向における外側の端部同士の間に位置するブリッジ部の変形を抑制できる。
【0083】
・対をなす2つの磁石収容孔20は、V字状に延びるものに限定されない。他に例えば、2つの磁石収容孔20は、軸線方向と径方向との両方に直交する方向に長手方向が一致するように、当該直交する方向に並んで設けられていてもよい。この場合であっても、上記2つの磁石収容孔20の互いに対向する端部同士の間に位置するブリッジ部の変形を抑制できる。
【0084】
・突起24は、直交方向に3つ以上設けられていてもよい。
図7に示すように、閉塞部23は、ロータコア11とは別部材によって構成されていてもよい。この場合、閉塞部23は、2つの突条によって構成されていてもよいし、2つの突条と、当該突条同士を連結する連結部とを有していてもよい。閉塞部23は、磁石収容孔20の内面に接着されていてもよい。磁石収容工程では、閉塞部23が配置された磁石収容孔20に対して磁石30が収容されてもよいし、磁石30が配置された磁石収容孔20に対して閉塞部23が収容されてもよい。
【0085】
・突起24の突出方向の先端部は、磁石30の外面に沿う平面を有していてもよい。この場合、突起24と磁石30との接触面積を大きくできるため、突起24と磁石30の外面との間の空間への樹脂材40の流入を効果的に抑制できる。
【0086】
図8に示すように、一対の突起24の直交方向の内側の面が、直交方向の外側から磁石30の外面に接触していてもよい。この場合、対向方向における磁石30の位置ずれを規制すべく、磁石30が一対の突起24の間に圧入されることが好ましい。また、この場合、磁石30が突起24によって直交方向において位置決めされるため、位置決め部25が省略されてもよい。
【0087】
・第2面22から突出する一対の突起24に代えて、第1面21から突出する一対の突起24が採用されてもよい。この場合、第1面21と第1外面31との間の空間が、第1面21から突出する一対の突起24によって直交方向における両側から閉塞される。また、第2面22が、第2外面32に接触する。こうした構成であっても、上述した効果(1)に準じた効果を奏することができる。
【0088】
図9に示すように、磁石収容孔20の内部には、第1面21と第1外面31との間の空間、及び第2面22と第2外面32との間の空間を直交方向における両側から閉塞する閉塞部23が、上記空間のそれぞれに対応して設けられていてもよい。この場合、磁石収容孔20のうち磁石30の対向方向における両側の部分には、未充填部20aが形成される。この構成であっても、磁石収容孔20のうち磁石30の直交方向における両側の部分への樹脂材40の充填時に、第1面21と第1外面31との間、及び第2面22と第2外面32との間に樹脂材40が流入しにくくなる。こうしたロータ10の製造時における磁石収容工程では、第1面21と第1外面31との間の空間、及び第2面22と第2外面32との間の空間を、上記空間のそれぞれに対応して設けられた閉塞部23によって直交方向における両側から閉塞する。また、充填工程では、磁石収容孔20のうち磁石30の前記直交方向における両側の部分に樹脂材40を充填する。本変更例におけるロータ10及びロータ10の製造方法によれば、上述した効果(1)に準じた効果を奏することができる。
【0089】
図10に示すように、1つの磁石収容孔20に対して、2つの磁石130が収容されていてもよい。この場合、1つの磁石130に対して1つの突起24が接触していてもよい。突起24が4つ以上設けられる場合には、1つの磁石130に対して2つ以上の突起24が接触していてもよい。
【0090】
・樹脂材40は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよい。
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータであって、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、前記第1面と前記第2面とが対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、前記磁石収容孔の内部には、前記第1面及び前記第2面のいずれか一方と前記磁石の外面との間の空間を前記直交方向における両側から閉塞する閉塞部が設けられており、前記第1面及び前記第2面の前記一方とは異なる他方は、前記磁石の外面に接触しており、前記樹脂材は、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に充填されている、ロータ。
【0091】
[付記2]複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂材と、を備えるロータであって、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面を構成する外周部と、前記磁石収容孔を挟んで前記外周部とは反対側に位置する内周部と、前記ロータコアの周方向において隣り合う2つの前記磁石収容孔の間に位置し、前記外周部と前記内周部とを連結するブリッジ部と、を有しており、前記磁石収容孔の内面は、前記外周部を構成する第1面と、前記第1面に沿って延びるとともに前記内周部を構成する第2面と、を含み、前記第1面及び前記第2面が対向する方向を対向方向とし、前記ロータコアの軸線方向と前記対向方向との両方に直交する方向を直交方向とするとき、前記磁石収容孔の内部には、前記第1面と前記磁石の外面との間の空間、及び前記第2面と前記磁石の外面との間の空間を前記直交方向における両側から閉塞する閉塞部が、前記空間のそれぞれに対応して設けられており、前記樹脂材は、前記磁石収容孔のうち前記磁石の前記直交方向における両側の部分に充填されている、ロータ。
【0092】
[付記3]前記閉塞部は、前記対向方向における前記磁石収容孔の内面と前記磁石の外面との間に設けられており、前記磁石の外面に接触している、[付記1]または[付記2]に記載のロータ。
【0093】
[付記4]前記閉塞部における前記磁石の外面に接触する部分は、前記磁石の外面に向かって凸となるように湾曲している、[付記3]に記載のロータ。
[付記5]前記閉塞部は、前記磁石収容孔の内面から前記対向方向に突出するとともに、前記直交方向に互いに間隔をおいて形成された一対の突起により構成されている、[付記1]~[付記4]のいずれか一つに記載のロータ。
【0094】
[付記6]前記2つの磁石収容孔は、前記ブリッジ部から離れるほど前記ロータコアの径方向の外側に位置するように延びている、[付記1]~[付記5]のいずれか一つに記載のロータ。
【符号の説明】
【0095】
10…ロータ
11…ロータコア
11a…第1端面
11b…第2端面
12…中心孔
13…外周部
14…内周部
15…ブリッジ部
20…磁石収容孔
20a…未充填部
21…第1面
22…第2面
23…閉塞部
24…突起
25…位置決め部
26…凹部
30,130…磁石
31…第1外面
32…第2外面
40…樹脂材
50…モールド装置
60…第1型
61…第1型本体
62…パレット
63…ベース板
63a…貫通孔
64…ポスト
65…係合ピン
66…スペーサ
67…段付き孔
70…押付機構
71…押付部材
72…支持部
73…鍔部
74…付勢部材
80…第2型(金型)
81…第2型本体
82…スプルー
83…ゲートプレート
84…ランナー
85…ゲート
86…係合孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10