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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179662
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B60T7/12 E
B60T7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098672
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】磯部 良太
(72)【発明者】
【氏名】国田 篤
(72)【発明者】
【氏名】三浦 諒
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246BA08
3D246GA02
3D246GB15
3D246GB21
3D246GC11
3D246HA25A
3D246HA48A
3D246HA51A
3D246HA64A
3D246HA65B
3D246HA94A
3D246HC08
3D246JA13
3D246JB02
3D246JB43
3D246KA09
3D246LA13Z
3D246MA22
(57)【要約】
【課題】駐車状態にある車両の移動を電動機構の作動によって抑制するための制御装置に関して、不要な電動機構の作動を抑制する。
【解決手段】制御装置10は、電動アクチュエータ63a、63bの駆動によって摩擦制動力を増大させることができる電動機構を備えている車両90に適用される。制御装置10は、カウンタの値がしきい値以上である場合に電動アクチュエータ63a、63bを作動させることで摩擦制動力を増大させる。制御装置10は、前後加速度の振幅が小さい場合には、パルス信号に含まれるパルスが入力された際にカウンタの値を増加させる。一方で、制御装置10は、前後加速度の振幅が大きい場合には、パルスが入力されてもカウンタの値を増加させない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、該車輪に摩擦制動力を発生させる摩擦制動装置と、電動アクチュエータの駆動によって前記摩擦制動力を増大させることができる電動機構と、を備えている車両に適用される車両の制御装置であって、
前記車輪の回転に応じて出力されるパルス信号、および前記車両の前後加速度を取得するように構成されている取得部と、
前記パルス信号および前記前後加速度に基づいてカウンタの値を増加させるように構成されているパルス判定部と、
前記カウンタの値がしきい値以上である場合に前記電動アクチュエータを作動させることで前記摩擦制動力を増大させるように構成されている制御部と、を備え、
前記パルス判定部は、
前記前後加速度が振動する幅が判定値よりも小さい場合には、前記パルス信号に含まれるパルスが入力された際に前記カウンタの値を増加させる一方で、
前記前後加速度が振動する幅が前記判定値以上である場合には、前記パルスが入力されても前記カウンタの値を増加させないように構成されている
車両の制御装置。
【請求項2】
前記パルス判定部は、
前記前後加速度が振動する幅が前記判定値よりも小さい場合であり、且つ、駐車状態にある前記車両に関して規定の判定時間内において前記前後加速度が振動する回数である振動回数が規定回数よりも少ない場合には、前記パルスが入力された際に前記カウンタの値を増加させる一方で、
前記前後加速度が振動する幅が前記判定値よりも小さい場合であっても前記振動回数が前記規定回数以上である場合には、前記パルスが入力されても前記カウンタの値を増加させないように構成されている
請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駐車時に動き出した車両を停止させる駐車ブレーキ安全装置が開示されている。駐車ブレーキ安全装置は、車輪の回転に応じて出力されるパルス信号が規定パルス数に達している場合に制動力を増大させる駐車補助制動手段を備えている。具体的には、出力されたパルス信号に基づいて算出した車両の移動加速度が、規定加速度以下であるパルス信号のみを使って、規定のパルス数に達したか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-25590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駐車状態にある車両において、車輪が回転していない場合、すなわち車両が動き出していない場合でも、パルスが出力されることがある。たとえば、車両が揺れている場合に、揺れに応じてパルスが出力されることがある。このような車両が動き出していない場合のパルスに基づいて特許文献1に開示されているような制動力を増大させる装置を作動させると、装置の不要な作動になることがある。たとえば、車両の揺れが比較的緩やかな場合、所定時間内に出力されるパルス信号の数は少なく、パルス信号に基づいて算出された車両の移動加速度は規定加速度以下となることが多い。この場合、規定加速度以下であるパルス信号が規定のパルス数に達すると、車両が動き出していないにも関わらず、制動力が増大される。こうした装置の不要な作動を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、車輪と、該車輪に摩擦制動力を発生させる摩擦制動装置と、電動アクチュエータの駆動によって前記摩擦制動力を増大させることができる電動機構と、を備えている車両に適用される車両の制御装置であって、前記車輪の回転に応じて出力されるパルス信号、および前記車両の前後加速度を取得するように構成されている取得部と、前記パルス信号および前記前後加速度に基づいてカウンタの値を増加させるように構成されているパルス判定部と、前記カウンタの値がしきい値以上である場合に前記電動アクチュエータを作動させることで前記摩擦制動力を増大させるように構成されている制御部と、を備え、前記パルス判定部は、前記前後加速度が振動する幅が判定値よりも小さい場合には、前記パルス信号に含まれるパルスが入力された際に前記カウンタの値を増加させる一方で、前記前後加速度が振動する幅が前記判定値以上である場合には、前記パルスが入力されても前記カウンタの値を増加させないように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
上記車両の制御装置によれば、制動力を増大させる電動アクチュエータの不要な作動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、車両の制御装置の一実施形態と、車両とを示す概略図である。
図2図2は、駐車状態にある車両が移動し始めている状態におけるパルス信号および前後加速度の推移を例示する図である。
図3図3は、車両が揺れている状態におけるパルス信号および前後加速度の推移を例示する図である。
図4図4は、図1の制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、図1の制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、図1の制御装置によって設定されるカウンタの推移を説明するタイミングチャートである。
図7図7は、図1の制御装置によって設定されるカウンタの推移を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、車両の制御装置の一実施形態である制御装置10について、図1図7を参照して説明する。
図1は、制御装置10と、制御装置10が適用される車両90と、を示す。
【0009】
制御装置10は、処理回路によって構成されている。たとえば、処理回路は、実行装置および記憶装置を備えている。記憶装置は、実行装置によって実行される各種の制御プログラムを記憶している。各処理回路は、実行装置が制御プログラムを実行することによって、各種の機能部として機能する。
【0010】
<車両>
車両90は、たとえば、四輪の車両である。図1には、車両90が備える車輪のうち二つの車輪を例示している。第1車輪91aは、たとえば、左後輪である。第2車輪91bは、たとえば、右後輪である。
【0011】
車両90は、摩擦制動装置80を備えている。摩擦制動装置80は、車両90の常用ブレーキとして用いられる。摩擦制動装置80は、車両90が備える車輪に摩擦制動力を付与することができる。
【0012】
車両90は、電動駐車制動装置を備えている。電動駐車制動装置は、「電動アクチュエータの駆動によって摩擦制動力を増大させることができる電動機構」の一例である。
図1には、電動駐車制動装置として、第1EPB装置61aと第2EPB装置61bとを例示している。第1EPB装置61aは、第1車輪91aに対応して取り付けられている。第2EPB装置61bは、第2車輪91bに対応して取り付けられている。
【0013】
車両90は、たとえば一つ以上の電動駐車制動装置を備えている。車両90は、複数の車輪のうち一部の車輪に対応する電動駐車制動装置を備えていてもよいし、全ての車輪に対応する電動駐車制動装置を備えていてもよい。
【0014】
車両90は、たとえばスタートスイッチ92を備えていてもよい。スタートスイッチ92は、車両90の運転者によって操作が可能な部材である。スタートスイッチ92は、車両90に駆動力を発生させる駆動装置を始動させるためのスイッチである。すなわち、車両90は、スタートスイッチ92がオフである場合には駆動装置が作動しないように構成されている。
【0015】
車両90は、たとえばパーキングスイッチ93を備えていてもよい。パーキングスイッチ93は、車両90の運転者によって操作が可能な部材である。車両90ではパーキングスイッチ93がオフからオンにされることで、制動力を発生させるべく電動駐車制動装置が作動するように構成されている。
【0016】
詳細は後述するが、スタートスイッチ92およびパーキングスイッチ93は、車両90が駐車状態にあるか否かを判定するために用いることができる。
<摩擦制動装置>
摩擦制動装置80の一例は、液圧制動装置である。
【0017】
摩擦制動装置80は、複数の車輪の各々に対応した制動機構を備えている。制動機構は、対応する車輪に制動力を付与することができる。
制動機構は、車輪と一体回転する回転体と、ホイールシリンダと、回転体に対して押し付けることができる摩擦部材と、によって構成されている。制動機構は、特に制限されないがたとえばディスクブレーキである。制動機構は、ドラムブレーキでもよい。
【0018】
摩擦制動装置80は、ホイールシリンダにブレーキ液を供給する制動アクチュエータ81を備えている。制動機構では、ホイールシリンダ内の液圧であるWC圧が増大されると、回転体に対して摩擦部材が押し付けられる。これによって、車輪に対して摩擦制動力が付与される。
【0019】
図1には、第1制動機構82aが備えているホイールシリンダ83a、回転体84aおよび摩擦部材85aを示している。図1には、第2制動機構82bが備えているホイールシリンダ83b、回転体84bおよび摩擦部材85bを示している。
【0020】
<電動駐車制動装置>
電動駐車制動装置は、摩擦制動装置80における制動機構と一部の構成を共用している。
【0021】
第1EPB装置61aは、第1車輪91aに対応する第1制動機構82aと一部の構成を共用している。第1EPB装置61aは、第1電動アクチュエータ63aを備えている。第1電動アクチュエータ63aは、たとえば第1電気モータ62aを備えている。第1EPB装置61aは、第1電気モータ62aの回転運動を直線運動に変換することができる。第1EPB装置61aは、第1電動アクチュエータ63aの作動に応じて働く直線運動によって摩擦部材85aを回転体84aに近づけるように構成されている。このようにして摩擦部材85aを回転体84aに押し付けることで、第1車輪91aに付与する摩擦制動力を増大させることができる。
【0022】
第2EPB装置61bは、第2車輪91bに対応する第2制動機構82bと一部の構成を共用している。第2EPB装置61bは、第2電動アクチュエータ63bを備えている。第2電動アクチュエータ63bは、たとえば第2電気モータ62bを備えている。第2EPB装置61bは、第2電気モータ62bの回転運動を直線運動に変換することができる。第2EPB装置61bは、第2電動アクチュエータ63bの作動に応じて働く直線運動によって摩擦部材85bを回転体84bに近づけるように構成されている。このようにして摩擦部材85bを回転体84bに押し付けることで、第2車輪91bに付与する摩擦制動力を増大させることができる。
【0023】
<各種センサ>
車両90は、各種センサを備えている。図1には、各種センサの一例として、第1車輪速センサSE1a、第2車輪速センサSE1b、および前後加速度センサSE2を示している。各種センサからの検出信号は、制御装置10に入力される。
【0024】
第1車輪速センサSE1aおよび第2車輪速センサSE1bは、車輪速度を検出するセンサの一例である。車輪速度を検出するセンサは、公知の構成を採用できる。車輪速度を検出するセンサは、複数の車輪の各々に対して設けられている。第1車輪速センサSE1aは、第1車輪91aに対応するセンサである。第2車輪速センサSE1bは、第2車輪91bに対応するセンサである。
【0025】
車輪速度を検出するセンサは、対応する車輪の回転速度をそれぞれ検出することができる。詳述すると、車輪速度を検出するセンサは、車輪の回転に応じてパルス信号を出力する。パルス信号に含まれるパルスの発生周期は、車輪の回転速度に応じた周期である。具体的には、車輪速度を検出するセンサは、車輪の回転速度が速いほどパルスの発生周期が短くなるようなパルス信号を検出信号として出力する。車輪速度を検出するセンサが出力するパルス信号を「パルス信号Pvw」という。
【0026】
前後加速度センサSE2は、車両90に作用する加速度のうち車両90の前後方向の加速度を検出できる。前後加速度センサSE2の検出信号に基づいた車両90の前後方向の加速度を「前後加速度Gx」という。前後加速度Gxは、前後加速度センサSE2の検出信号から得られる生の値でもよいし、生の値を加工して得られる値でもよい。
【0027】
<他の処理回路>
車両90は、制御装置10に加えて他の処理回路を備えていてもよい。処理回路は、それぞれが実行装置および記憶装置を備えている。
【0028】
図1には、制動制御装置99を例示している。制動制御装置99は、他の処理回路の一例である。制動制御装置99は、摩擦制動装置80を制御できるように構成されている。
制御装置10を含む車両90が備える各処理回路は、互いに情報の送受信が可能なように接続されていてもよい。車両90は、車載ネットワークを備えていてもよい。各処理回路は、車載ネットワークを介して接続されていてもよい。各種センサからの検出信号は、車載ネットワークを介して処理回路に入力されてもよい。
【0029】
<制御装置>
図1には、制御装置10が備えている機能部として、取得部M1、駐車判定部M2、パルス判定部M3および制御部M4を表示している。
【0030】
取得部M1は、パルス信号Pvwを取得できるように構成されている。取得部M1は、パルス信号Pvwに含まれているパルスを検出できるように構成されている。
取得部M1は、前後加速度Gxを取得できるように構成されている。前後加速度Gxは、正方向または負方向にオフセットされた値でもよい。たとえば、路面勾配に応じて前後加速度Gxをオフセットすることが考えられる。前後加速度Gxは、たとえばローパスフィルタ処理等のフィルタ処理が施された値でもよい。前後加速度Gxに施す処理は、制御装置10が行ってもよいし、他の処理回路が行ってもよい。
【0031】
取得部M1は、その他の情報を取得することもできる。取得部M1が取得できるその他の情報としては、たとえば、各種センサからの検出信号、他の処理回路から送信される情報、車載ネットワークを介して入力される情報等が挙げられる。
【0032】
駐車判定部M2は、車両90が駐車状態であるか否かを判定できるように構成されている。以下、車両90が駐車状態であるか否かを判定する一例を説明する。
たとえば、駐車判定部M2は、スタートスイッチ92がオフにされている場合に車両90が駐車状態であると判定する。たとえば、駐車判定部M2は、パーキングスイッチ93がオンにされている場合に車両90が駐車状態であると判定する。たとえば、駐車判定部M2は、車両90の走行レンジがPレンジである場合に車両90が駐車状態であると判定する。駐車判定部M2は、上記のような各条件を二つ以上組み合わせて車両90が駐車状態であるか否かを判定することもできる。たとえば、駐車判定部M2は、スタートスイッチ92がオフにされている場合であり、且つパーキングスイッチ93がオンにされている場合に車両90が駐車状態であると判定する。たとえば、駐車判定部M2は、パーキングスイッチ93がオンにされている場合であり、且つ車両90の走行レンジがPレンジである場合に車両90が駐車状態であると判定する。
【0033】
なお、上記の走行レンジは、車両90が備えている駆動装置の状態を示す。走行レンジがPレンジである場合には、駆動装置における機械的な咬み合わせによって車両90の駆動輪の回転が規制されている。走行レンジを示す情報は、たとえば車載ネットワークを介して取得することができる。
【0034】
駐車判定部M2は、車両90が駐車状態であることを示す情報を取得してもよい。車両90が駐車状態であることを示す情報は、たとえば、制御装置10とは異なる他の処理回路によって車両90が駐車状態であると判定されている場合に送信される情報である。当該情報は、取得部M1が取得してもよい。駐車状態であるか否かを他の処理回路が判定するための条件は、駐車判定部M2が上述の判定を行う際の条件と同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0035】
パルス判定部M3は、パルス信号Pvwおよび前後加速度Gxに基づいてカウンタCpの値を増加させるように構成されている。カウンタCpは、パルス信号Pvwに含まれるパルスを検出した回数の指標である。カウンタCpを増加させる構成の詳細は後述する。
【0036】
制御部M4は、電動駐車制動装置を制御できるように構成されている。具体的には、制御部M4は、第1電動アクチュエータ63aおよび第2電動アクチュエータ63bを制御することができる。車両90が第1車輪91aおよび第2車輪91b以外の車輪に対応する電動駐車制動装置も備えている場合には、制御部M4は、それら電動駐車制動装置を制御することもできる。
【0037】
制御部M4は、補助制御を実施できる。補助制御は、たとえば第1電動アクチュエータ63aおよび第2電動アクチュエータ63bを作動させることによって、第1車輪91aおよび第2車輪91bに付与する摩擦制動力を増大させる制御である。補助制御を実施するための処理の流れは、後述する。
【0038】
<パルス信号と前後加速度との関係>
図2および図3を用いて、車両90の状態による前後加速度Gxの推移の違いを説明する。
【0039】
図2は、駐車状態にある車両90が、車両90の運転者の意図に反して車輪の回転を伴って移動し始める場合の例を示す。この例は、たとえば、坂路に駐車されている車両90がずり下がるような場合である。たとえば、車両90を坂路に停止させるための制動力が不足すると、車両90が移動し始める。
【0040】
図2の(a)に示すように、車輪の回転に応じてパルスが入力される。車両90がずり下がる場合には、前後加速度Gxが時間経過に伴って一方向に推移する。図2の(b)には、「0」以下の範囲で前後加速度Gxが減少し続ける例を示す。
【0041】
車両90がずり下がっている場合、車輪の回転速度がしだいに増加することがある。この場合にパルスが入力される間隔は、車輪の回転速度が速いほど小さくなる。図2には、徐々に車輪の回転速度が増加している例を示す。このため、図2の(a)に示すように、パルスが入力される間隔が徐々に小さくなっている。なお、車両90がずり下がる速度によっては、パルスが入力される間隔が必ずしも徐々に小さくなるとは限らない。
【0042】
図3は、駐車状態にある車両90が、外乱によって揺れている場合の例を示す。なお、車両90は、その場にとどまって移動していない。外乱によって発生する揺れの一例は、車両90の搭乗者が車両90内で動くことによる揺れである。外乱によって発生する揺れの一例は、車両90の外部から車両90の車体に力が加えられることによる揺れである。
【0043】
このように車両90が揺れる場合には、車輪が回転しないものの、図3の(a)に示すように車両90の揺れに伴って車輪速度を検出するセンサからパルスが入力されることがある。図3の(a)には、等間隔に入力されているパルスを示す。パルスが入力される間隔は、揺れの頻度、揺れの周期等に応じて異なる。車両90が周期的に揺れている場合には、パルスが等間隔に入力されることがある。車両90の揺れ方によっては、パルスが不規則な間隔で入力されることもある。車両90が揺れる場合には、前後加速度Gxが振動する。図3の(b)には、前後加速度Gxが正負の反転を伴って振動している例を示す。前後加速度Gxが振動する幅は、揺れの大きさ等に応じて異なる。
【0044】
以上、図2および図3に示したように、車両90の状態によって前後加速度Gxの推移が異なる。これによって、前後加速度Gxに基づいて車両90の状態を判別できることがわかる。より詳しく言えば、前後加速度Gxに基づいて、駐車状態にある車両90が移動し始めているか車両90が揺れているかを判別できることがわかる。
【0045】
<補助制御>
図4および図5を用いて、補助制御の一例について説明する。図4は、カウント処理の流れを示す。図5は、実行判定処理の流れを示す。カウント処理および実行判定処理が実行されることによって、実行判定処理の結果に応じて補助制御が実行される。
【0046】
〔カウント処理〕
図4は、制御装置10が実行するカウント処理の流れを示す。たとえば、制御装置10は、本処理ルーチンを所定の周期毎に繰り返し実行する。
【0047】
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS101において、制御装置10は、車両90が駐車状態であるか否かを判定する。この判定は、制御装置10が備えている駐車判定部M2によって行うことができる。
【0048】
車両90が駐車状態ではない場合には(S101:NO)、制御装置10は、処理をステップS109に移行する。一方、車両90が駐車状態である場合には(S101:YES)、制御装置10は、処理をステップS102に移行する。
【0049】
ステップS102では、制御装置10は、経過時間Tが判定時間Tthよりも小さいか否かを判定する。
経過時間Tおよび判定時間Tthについて説明する。経過時間Tの初期値は「0」である。経過時間Tは、後述するようにパルスが入力されてから加算が開始される値である。すなわち、経過時間Tは、パルスが初めて入力された時点から経過した時間を示す。判定時間Tthは、予め設定されている値である。判定時間Tthは、経過時間Tが判定時間Tthに達するまでの間に補助制御を実施するか否かを判定するための値として、予め実験等によって算出されている。
【0050】
経過時間Tが判定時間Tth以上である場合には(S102:NO)、制御装置10は、処理をステップS109に移行する。一方、経過時間Tが判定時間Tthよりも小さい場合には(S102:YES)、制御装置10は、処理をステップS103に移行する。
【0051】
ステップS103では、制御装置10は、パルスの入力があるか否かを判定する。この判定は、制御装置10が備えているパルス判定部M3によって行うことができる。パルスの入力がない場合には(S103:NO)、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、パルスの入力がある場合には(S103:YES)、制御装置10は、処理をステップS104に移行する。
【0052】
ステップS104では、制御装置10は、除外条件が成立しているか否かを判定する。この判定は、制御装置10が備えているパルス判定部M3によって行うことができる。除外条件は、検出したパルスに基づいてカウンタCpを増加させるかカウンタCpを保持するかを切り分けるための条件である。
【0053】
除外条件の一例について説明する。
パルス判定部M3は、駐車状態にある車両90に関して判定時間Tth内において振動回数Ntが規定回数Ntthよりも少ない場合であり、且つ振幅Amが判定値Amthよりも小さい場合には、除外条件が成立していないと判定する。ここで、判定時間Tth内とは、経過時間Tが判定時間Tthに達していないことを意味する。すなわち、判定時間Tth内とは、経過時間Tが判定時間Tthに達するまでの間であることを意味する。
【0054】
パルス判定部M3は、駐車状態にある車両90に関して判定時間Tth内において振動回数Ntが規定回数Ntthよりも少ない場合であっても振幅Amが判定値Amth以上である場合には、除外条件が成立していると判定する。
【0055】
パルス判定部M3は、駐車状態にある車両90に関して判定時間Tth内において振動回数Ntが規定回数Ntth以上である場合には、振幅Amが判定値Amth以上であるか判定値Amth未満であるかにかかわらず、除外条件が成立していると判定する。
【0056】
上述した除外条件の一例は、次のように言い換えることもできる。パルス判定部M3は、振幅Amが判定値Amth以上である場合には、駐車状態にある車両90に関して判定時間Tth内において振動回数Ntが規定回数Ntth以上であるか規定回数Ntth未満であるかにかかわらず、除外条件が成立していると判定する。パルス判定部M3は、振幅Amが判定値Amthよりも小さい場合であり、且つ、駐車状態にある車両90に関して判定時間Tth内において振動回数Ntが規定回数Ntthよりも少ない場合には、除外条件が成立していないと判定する。パルス判定部M3は、振幅Amが判定値Amthよりも小さい場合であっても、駐車状態にある車両90に関して判定時間Tth内において振動回数Ntが規定回数Ntth以上である場合には、除外条件が成立していると判定する。
【0057】
上記の振幅Amは、前後加速度Gxが振動する幅を示す。図3の(b)には、正のピーク値Gp1、負のピーク値Gp2、および振幅Amを例示している。振幅Amは、正のピーク値Gp1と負のピーク値Gp2との幅の大きさである。すなわち、振幅Amは、前後加速度Gxの両振幅に相当する。
【0058】
上記の判定値Amthは、予め設定されている値である。判定値Amthは、振幅Amが判定値Amth以上である場合には前後加速度Gxが振動する幅が大きいと判定するための値として、予め実験等によって算出されている。
【0059】
上記の振動回数Ntは、判定時間Tth内において前後加速度Gxが振動する回数を示す。すなわち、振動回数Ntは、前後加速度Gxの波の数を示す。前後加速度Gxの波を数える起点は、特に制限されない。正のピーク値Gp1を起点として振動回数Ntを数えてもよいし、負のピーク値Gp2を起点として振動回数Ntを数えてもよいし、「0」を起点として振動回数Ntを数えてもよい。
【0060】
振動回数Ntは、たとえば、判定時間Tth内において前後加速度Gxが正負の反転を伴って振動する回数である。ここで、前後加速度Gxは、正負の反転を伴うことなく振動することもある。たとえば、前後加速度Gxが路面勾配に応じてオフセットされていない値であると、車両90が揺れた場合の前後加速度Gxは、正負の反転を伴うことなく振動することがある。前後加速度Gxが正負の反転を伴うことなく振動している場合には、正のピーク値Gp1は、最も大きいピーク値に置き換えることができる。負のピーク値Gp2は、最も小さいピーク値に置き換えることができる。
【0061】
上記の規定回数Ntthは、予め設定されている値である。規定回数Ntthは、振動回数Ntが規定回数Ntth以上である場合には前後加速度Gxが振動する回数が多いと判定するための値として、予め実験等によって算出されている。
【0062】
たとえば、図3の(b)に例示したように、前後加速度Gxが振動している場合には、除外条件の判定結果が次のようになる。振動回数Ntが少なく、且つ振幅Amが小さい間は、除外条件が成立していないと判定される。振動回数Ntが少なくても、振幅Amが大きい場合には、除外条件が成立していると判定される。振動回数Ntが多くなると、振幅Amの大きさにかかわらず、除外条件が成立していると判定される。
【0063】
たとえば、図2の(b)に例示したように、前後加速度Gxが振動していない場合には、振幅Amおよび振動回数Ntが「0」である。除外条件が上記のように設定されていることによって、図2に例示したような状態では、除外条件が成立していないと判定される。
【0064】
図4に戻り、除外条件が成立していない場合には(S104:NO)、制御装置10は、処理をステップS105に移行する。ステップS105では、制御装置10は、カウンタCpを増加する。カウンタCpの初期値は「0」である。たとえば、パルス判定部M3は、カウンタCpを「1」だけ増加させる。この結果として、パルスが入力されたことに伴ってカウンタCpが増加される。さらに、パルス判定部M3は、経過時間Tの加算を開始する。より詳しくは、経過時間Tが「0」である場合には制御装置10は、経過時間Tの加算を開始する。経過時間Tが「0」ではない場合にはパルス判定部M3は、経過時間Tの加算を継続する。パルス判定部M3は、後述するステップS109の処理を行うまでは経過時間Tを加算し続ける。ステップS105の処理を行った後、制御装置10は、本処理ルーチンを終了する。
【0065】
一方、除外条件が成立している場合には(S104:YES)、制御装置10は、処理をステップS106に移行する。ステップS106では、パルス判定部M3は、カウンタCpを保持する。すなわち、パルス判定部M3は、カウンタCpを増加させない。この結果として、パルスが入力されてもカウンタCpが増加されない。その後、制御装置10は、本処理ルーチンを終了する。
【0066】
図4に示すカウント処理では、ステップS101の処理において否定判定される場合、およびステップS102の処理において否定判定される場合に、ステップS109の処理が実行される。ステップS109では、パルス判定部M3は、経過時間Tを初期化する。すなわち、パルス判定部M3は、経過時間Tを「0」にする。ステップS109では、パルス判定部M3は、カウンタCpを初期化する。すなわち、パルス判定部M3は、カウンタCpを「0」にする。
【0067】
ステップS104、S105およびS106の処理を通じて、パルス判定部M3は、次のようにカウンタCpを設定することができる。
パルス判定部M3は、除外条件が成立していない場合には、パルスが入力された際にカウンタCpの値を増加させる。詳述すると次のようになる。パルス判定部M3は、駐車状態にある車両90に関して判定時間Tth内において振動回数Ntが規定回数Ntthよりも少ない場合であり、且つ振幅Amが判定値Amthよりも小さい場合には、パルスが入力された際にカウンタCpの値を増加させる。
【0068】
一方で、パルス判定部M3は、除外条件が成立している場合には、パルスが入力されてもカウンタCpの値を増加させない。詳述すると次のようになる。パルス判定部M3は、振動回数Ntが規定回数Ntthよりも少ない場合であっても振幅Amが判定値Amth以上である場合には、パルスが入力されてもカウンタCpの値を増加させない。パルス判定部M3は、振動回数Ntが規定回数Ntth以上である場合には、パルスが入力されてもカウンタCpの値を増加させない。
【0069】
制御装置10は、特定の車輪に対応する電動駐車制動装置を備えている当該車輪について、図4を用いて説明したカウント処理をそれぞれ実行することができる。制御装置10は、複数のカウント処理を並行して実行することができる。以下では、対応する電動駐車制動装置を備えている車輪のことを、EPB対象車輪ということもある。すなわち、本実施形態において、EPB対象車輪は、第1車輪91aおよび第2車輪91bのことをいう。
【0070】
制御装置10は、EPB対象車輪のそれぞれに対応するカウンタCpを、独立した値として記憶している。すなわち、制御装置10は、第1車輪91aについて、第1車輪速センサSE1aが出力するパルス信号Pvw(1)に基づいてカウンタCp(1)を設定することができる。また、制御装置10は、第2車輪91bについて、第2車輪速センサSE1bが出力するパルス信号Pvw(2)に基づいてカウンタCp(2)を設定することができる。上記においてパルス信号PvwおよびカウンタCpの末尾に付した括弧内の数字は、EPB対象車輪のそれぞれに対応する固有の数字である。
【0071】
〔実行判定処理〕
図5は、制御装置10が実行する実行判定処理の流れを示す。たとえば、制御装置10は、本処理ルーチンを所定の周期毎に繰り返し実行する。
【0072】
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS201において、制御装置10は、カウンタCpの値がしきい値Cpth以上であるか否かを判定する。
しきい値Cpthは、予め設定されている値である。しきい値Cpthは、カウンタCpの値がしきい値Cpth以上である場合には車輪が回転することで車両90が移動していると判定できるための値として、予め実験等によって算出されている。
【0073】
カウンタCpの値がしきい値Cpthよりも小さい場合には(S201:NO)、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、カウンタCpの値がしきい値Cpth以上である場合には(S201:YES)、制御装置10は、処理をステップS202に移行する。
【0074】
ステップS202では、制御装置10は、補助制御を実施する。具体的には、制御装置10が備えている制御部M4は、EPB対象車輪に付与する摩擦制動力を増大させるように、全ての電動駐車制動装置を作動させる。その後、制御装置10は、本処理ルーチンを終了する。
【0075】
制御装置10は、カウンタCpのうち少なくとも一つがしきい値Cpth以上に増加した場合に、EPB対象車輪の全てを対象として補助制御を実行する。言い換えれば、制御装置10は、カウンタCpのうち少なくとも一つがしきい値Cpth以上に増加した場合に、EPB対象車輪に付与する摩擦制動力を増大させるように、全ての電動駐車制動装置を作動させる。
【0076】
本明細書において使用される「少なくとも一つ」という表現は、所望の選択肢の「一つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも一つ」という表現は、選択肢の数が二つであれば「一つの選択肢のみ」または「二つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも一つ」という表現は、選択肢の数が三つ以上であれば「一つの選択肢のみ」または「二つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0077】
たとえば、カウンタCp(1)の値がしきい値Cpth以上である場合には、カウンタCp(2)の値にかかわらず、第1車輪91aの摩擦制動力および第2車輪91bの摩擦制動力の両方が増大される。たとえば、カウンタCp(2)の値がしきい値Cpth以上である場合には、カウンタCp(1)の値にかかわらず、第1車輪91aの摩擦制動力および第2車輪91bの摩擦制動力の両方が増大される。
【0078】
すなわち、ステップS202の処理では、制御部M4は、第1電動アクチュエータ63aおよび第2電動アクチュエータ63bを作動させる。この結果として、第1車輪91aの摩擦制動力および第2車輪91bの摩擦制動力の両方が増大される。
【0079】
<作用および効果>
本実施形態の作用および効果について説明する。
図6および図7を用いて、制御装置10がカウント処理および実行判定処理を行う際の一例を説明する。なお、図6および図7では、便宜上、しきい値Cpthを「6」相当の値として説明するが、しきい値Cpthはこれに限定されるものではない。
【0080】
図6は、駐車状態にある車両90が、車輪の回転を伴って移動し始める場合の例を示す。
図6の(a)に示すように、タイミングt11において最初のパルスが入力されている。その後、タイミングt12、t13、t14、t15、t16およびt17において、パルスが入力されている。パルスが入力される間隔は、徐々に小さくなっている。
【0081】
図6の(b)に示すように、前後加速度Gxは、「0」以下の範囲で減少し続けている。前後加速度Gxが振動していないため、除外条件が成立していないと制御装置10によって判定される。図6に例示する全ての範囲において、除外条件は成立していない。これによって、最初のパルスが入力されるタイミングt11において、経過時間Tの加算が開始される(S105)。タイミングt11~t17までの期間は、判定時間Tthよりも短いものとする。
【0082】
図6の(c)に示すように、パルスが入力されているタイミングt11、t12、t13、t14、t15、t16およびt17では、カウンタCpが増加される(S105)。
【0083】
図6の(c)に示すように、タイミングt16において、カウンタCpの値がしきい値Cpthに達している。カウンタCpの値がしきい値Cpth以上となるため、補助制御が実施される(S202)。この結果、第1車輪91aおよび第2車輪91bに付与される摩擦制動力が増大される。これによって、駐車状態にある車両90の移動が抑制される。
【0084】
図7は、駐車状態にある車両90が、外乱によって揺れている場合の例を示す。
図7の(a)に示すように、タイミングt21において最初のパルスが入力されている。その後、タイミングt23、t24、t25、t26およびt27において、パルスが入力されている。パルスが入力される間隔は、等間隔である。
【0085】
図7の(b)に示すように、前後加速度Gxは、正負の反転を伴って振動している。タイミングt22よりも前では、前後加速度Gxの振幅Amは、判定値Amthよりも小さい。タイミングt22において、前後加速度Gxの振幅Amが判定値Amth以上となっている。タイミングt22以降では、タイミングt27までの期間において振幅Amが判定値Amth以上である。
【0086】
タイミングt22よりも前では、振幅Amが判定値Amthよりも小さいため、除外条件が成立していないと制御装置10によって判定される。これによって、最初のパルスが入力されるタイミングt21において、経過時間Tの加算が開始される(S105)。タイミングt21~t27までの期間は、判定時間Tthよりも短いものとする。
【0087】
タイミングt22よりも前では、除外条件が成立していないため、図7の(c)に示すように、タイミングt21では、カウンタCpが増加される(S105)。
タイミングt22以降では、振幅Amが判定値Amth以上であるため、除外条件が成立していると制御装置10によって判定される。これによって、タイミングt23、t24、t25、t26およびt27では、図7の(a)に示すようにパルスの入力があっても、図7の(c)に示すようにカウンタCpが増加されない(S106)。このため、判定時間Tthが経過するまでに入力されるパルスの数とカウンタCpの値とが異なる値になる。
【0088】
図7の(c)に示すように、カウンタCpの値がタイミングt22以降において保持されていることで、カウンタCpは、しきい値Cpth以上になることがない。このため、補助制御が実施されない。これによって、駐車状態にある車両90が移動し始めていない場合に電動アクチュエータが不要に作動されることが抑制される。
【0089】
図7では、タイミングt22以降において振幅Amが判定値Amth以上となる例を説明した。この場合とは異なり、たとえば振幅Amが判定値Amthよりも小さくても、振動回数Ntが規定回数Ntth以上に多くなった場合には、除外条件が成立していると制御装置10によって判定される。これによって、振動回数Ntが規定回数Ntth以上となった時点以降では、カウンタCpが増加されない。振動回数Ntが規定回数Ntthよりも少ない間は、振幅Amが判定値Amthよりも小さければ、カウンタCpが増加される。
【0090】
駐車状態にある車両90が移動し始めていない状態において、仮に補助制御が実施されると、回転体84aに摩擦部材85aを押し付ける力および回転体84bに摩擦部材85bを押し付ける力が過大になることがある。これによって、電動駐車制動装置に過剰な負荷がかかるおそれがある。また、この場合には、補助制御が実施されたことが車両90の搭乗者に伝わることで、搭乗者は、車両90がずり下がっていると誤認するおそれもある。
【0091】
この点、制御装置10によれば、車両90が揺れている状態と、駐車状態にある車両90が移動し始めている状態と、を判別できる。換言すれば、制御装置10は、高い精度で車両90のずり下がりを検知することができる。このため、図6を用いて説明したように駐車状態にある車両90が移動し始めている場合には補助制御を実施するように構成する一方で、図7を用いて説明したように車両90が揺れている場合には補助制御を実施しないように構成することができる。これによって、制動力を増大させる電動アクチュエータの不要な作動を抑制できる。
【0092】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0093】
・上記実施形態では、車両90が備えている摩擦制動装置80として、液圧制動装置を例示した。摩擦制動装置としては、液圧制動装置に限らず、電気モータの回転が機械的に伝達されることによって摩擦制動力を発生させることができる電動摩擦制動装置でもよい。
【0094】
・上記実施形態では、補助制御において、電動駐車制動装置を作動させることで摩擦制動力を増大させる構成を例示した。これに替えて、車両90が摩擦制動装置として電動摩擦制動装置を備えている場合には、補助制御において、電動摩擦制動装置を作動させることで摩擦制動力を増大させるように構成してもよい。この場合には、電動摩擦制動装置が「電動アクチュエータの駆動によって摩擦制動力を増大させることができる電動機構」に対応する。
【0095】
・上記実施形態では、補助制御において、電動駐車制動装置を作動させることで摩擦制動力を増大させる構成を例示した。これに替えて、摩擦制動装置80としての液圧制動装置を制御することによって摩擦制動力を増大させることもできる。たとえば、液圧制動装置として、電気モータによって駆動する電動ポンプによってWC圧を加圧できる構成が知られている。上記構成としては、電磁弁を備えていてもよい。このようなWC圧を加圧できる構成を「電動アクチュエータの駆動によって摩擦制動力を増大させることができる電動機構」として、補助制御において作動させることで摩擦制動力を増大させることもできる。
【0096】
・上記実施形態では、図4に示すステップS105の処理として経過時間Tの加算を開始するように構成した。すなわち、ステップS104の処理において否定判定がなされた場合に経過時間Tの加算を開始するように構成した。これに替えて、ステップS103の処理において肯定判定がなされた時点で経過時間Tの加算を開始するように構成してもよい。
【0097】
・上記実施形態では、前後加速度Gxの両振幅を振幅Amとした。これに替えて、振幅Amは、前後加速度Gxの片振幅でもよい。なお、振幅Amとして片振幅を採用する場合には、判定値Amthは片振幅に応じた大きさの値として設定される。
【0098】
・上記実施形態では、振幅Amおよび振動回数Ntに基づいて判定を行う除外条件の一例を説明した。除外条件は、振幅Amのみに基づいて判定を行うように設定してもよい。
この場合には、パルス判定部M3は、振幅Amが判定値Amth以上である場合には、除外条件が成立していると判定する。一方で、パルス判定部M3は、振幅Amが判定値Amthよりも小さい場合には、除外条件が成立していないと判定する。
【0099】
・制御装置10等の処理回路は、以下のように構成できる。処理回路は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える回路として構成できる。処理回路は、各種処理を実行する一つ以上のハードウェア回路を備える回路として構成できる。処理回路は、各種処理のうち一部の処理を実行する一つ以上のプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する一つ以上のハードウェア回路とを組み合わせた回路として構成できる。
【0100】
プロセッサは、CPU等の処理装置を備える。プロセッサは、RAMおよびROM等のメモリを備える。メモリは、処理を処理装置に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。ハードウェア回路としては、たとえば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。ハードウェア回路の他の例としては、FPGA等がある。
【符号の説明】
【0101】
10…制御装置
61a…第1EPB装置
61b…第2EPB装置
63a…第1電動アクチュエータ
63b…第2電動アクチュエータ
80…摩擦制動装置
82a…第1制動機構
82b…第2制動機構
90…車両
91a…第1車輪
91b…第2車輪
SE1a…第1車輪速センサ
SE1b…第2車輪速センサ
SE2…前後加速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7