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▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

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  • 特開-圧縮機の取付構造および圧縮機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179664
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】圧縮機の取付構造および圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20241219BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F04B39/00 102Q
F04D29/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098675
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】都築 将文
(72)【発明者】
【氏名】鴻村 哲志
(72)【発明者】
【氏名】永川 聖
(72)【発明者】
【氏名】横井 宏尚
(72)【発明者】
【氏名】大脇 健太
(72)【発明者】
【氏名】木村 直文
【テーマコード(参考)】
3H003
3H130
【Fターム(参考)】
3H003AA06
3H003AB05
3H003AC03
3H003BB06
3H003CA02
3H003CD01
3H003CF04
3H130AA14
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC11
3H130BA13A
3H130BA16A
3H130BA87A
3H130CA24
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DB02Z
3H130DB06Z
3H130DD01Z
3H130DJ06X
3H130EA08A
3H130ED02A
(57)【要約】
【課題】車両の振動に伴って生じる圧縮機構の振動を抑制する。
【解決手段】回転軸12と、回転軸12の軸方向Xにおける第1端12aに設けられるとともに回転軸12と共に回転することで流体を圧縮する圧縮機構13と、を含む回転体19と、回転軸12をラジアル方向で回転可能に支持するラジアル軸受15、及び回転軸12をスラスト方向で回転可能に支持するスラスト軸受16と、回転体19、ラジアル軸受15、及びスラスト軸受16を収容するハウジング11と、を備える圧縮機10を車両の取付面に取り付けるための圧縮機10の取付構造であって、ラジアル軸受15及びスラスト軸受16は気体軸受であり、ハウジング11と取付面とに固定される弾性部材からなる取付足を備え、取付足の共振周波数は、ラジアル軸受15の共振周波数よりも小さく、かつスラスト軸受16の共振周波数よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸の軸方向における少なくとも一端に設けられるとともに前記回転軸と共に回転することで流体を圧縮する圧縮機構と、を含む回転体と、
前記回転軸をラジアル方向で回転可能に支持するラジアル軸受、及び前記回転軸をスラスト方向で回転可能に支持するスラスト軸受と、
前記回転体、前記ラジアル軸受、及び前記スラスト軸受を収容するハウジングと、を備える圧縮機を車両の取付面に取り付けるための圧縮機の取付構造であって、
前記ラジアル軸受及び前記スラスト軸受は気体軸受であり、
前記ハウジングと前記取付面とに固定される弾性部材からなる取付足を備え、
前記取付足の共振周波数は、前記ラジアル軸受の共振周波数よりも小さく、かつ前記スラスト軸受の共振周波数よりも小さいことを特徴とする圧縮機の取付構造。
【請求項2】
前記圧縮機構は、前記回転軸の軸方向における一端に設けられ、他端には設けられていない請求項1に記載の圧縮機の取付構造。
【請求項3】
前記圧縮機構はインペラを含む請求項1又は請求項2に記載の圧縮機の取付構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の取付構造によって前記車両の前記取付面に取り付けられ、前記流体は冷媒であることを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の取付構造および圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮機を車両の取付面に取り付けるための圧縮機の取付構造が記載されている。圧縮機は、例えば、回転体と、軸受と、ハウジングと、を備える。回転体は、例えば、回転軸と、回転軸の軸方向における少なくとも一端に設けられるとともに回転軸と共に回転することで流体を圧縮する圧縮機構と、を含む。軸受は、例えば、回転軸をラジアル方向で回転可能に支持するラジアル軸受と、回転軸をスラスト方向で回転可能に支持するスラスト軸受と、を含む。ハウジングは、例えば、回転体、ラジアル軸受、及びスラスト軸受を収容する。特許文献1に記載された取付構造は、取付足を備える。取付足は、例えば、圧縮機のハウジングと車両の取付面とに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-44313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の振動に伴って、車両から圧縮機に振動が伝達することで、圧縮機が振動することがある。このとき、圧縮機構が大きく振動すると、圧縮機構にて衝突が生じるため好ましくない。そのため、車両の振動に伴って生じる圧縮機構の振動を抑制することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する圧縮機の取付構造は、回転軸と、前記回転軸の軸方向における少なくとも一端に設けられるとともに前記回転軸と共に回転することで流体を圧縮する圧縮機構と、を含む回転体と、前記回転軸をラジアル方向で回転可能に支持するラジアル軸受、及び前記回転軸をスラスト方向で回転可能に支持するスラスト軸受と、前記回転体、前記ラジアル軸受、及び前記スラスト軸受を収容するハウジングと、を備える圧縮機を車両の取付面に取り付けるための圧縮機の取付構造であって、前記ラジアル軸受及び前記スラスト軸受は気体軸受であり、前記ハウジングと前記取付面とに固定される弾性部材からなる取付足を備え、前記取付足の共振周波数は、前記ラジアル軸受の共振周波数よりも小さく、かつ前記スラスト軸受の共振周波数よりも小さいことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、回転体が最も大きく振動するタイミングであるラジアル軸受の共振時において、回転体の振れ量を小さくできる。したがって、車両の振動に伴って生じる圧縮機構の振動を抑制できる。
【0007】
圧縮機の取付構造において、前記圧縮機構は、前記回転軸の軸方向における一端に設けられ、他端には設けられていなくてもよい。
上記構成によれば、圧縮機構が回転軸の軸方向における両端に設けられている場合と比較して、回転体の振れ量が大きくなりやすい。こうして回転体の振動がより懸念される場合においても、圧縮機の取付構造を採用することによって、車両の振動に伴って生じる圧縮機構の振動を抑制できる。
【0008】
圧縮機の取付構造において、前記圧縮機構はインペラを含んでもよい。
上記構成によれば、ハウジングのシュラウド面とインペラとの間に形成されるチップクリアランスの寸法が小さい。そのため、圧縮機構が大きく振動するとインペラがハウジングに衝突しやすいが、車両の振動に伴って生じる圧縮機構の振動を抑制することで、インペラがハウジングに衝突することを抑制できる。
【0009】
上記課題を解決する圧縮機は、上記の取付構造によって前記車両の前記取付面に取り付けられ、前記流体は冷媒であることを特徴とする。
上記構成によれば、冷媒はエアよりも負荷密度が高いため、仮に圧縮機構によって圧縮される流体としてエアを採用する場合と比較して、ハウジングへの加振の作用時に回転軸がラジアル軸受及びスラスト軸受に衝突しにくくなる。その一方で、ハウジングへの加振の作用時に回転軸がラジアル軸受及びスラスト軸受に衝突しないことで懸念される圧縮機構の振動については、圧縮機の取付構造を採用することで抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、車両の振動に伴って生じる圧縮機構の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】圧縮機および圧縮機の取付構造を示す模式図である。
図2】圧縮機を示す模式図である。
図3】圧縮機の一部を示す断面図である。
図4】加振周波数と回転体の振れ量とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、圧縮機の取付構造および圧縮機を具体化した実施形態を図面にしたがって説明する。なお、本実施形態の圧縮機は、電動圧縮機である。本実施形態の圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
【0013】
<圧縮機>
図1に示すように、圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、例えば円筒状である。ハウジング11は、金属製である。ハウジング11は、例えば、アルミニウム製である。ハウジング11の軸線mが延びる方向を軸方向Xとする。ハウジング11は、軸方向Xに分割可能とした複数のハウジング構成体によって構成されていてもよい。
【0014】
図2に示すように、圧縮機10は、回転体19と、軸受18と、を備えている。回転体19は、回転軸12と、圧縮機構13と、を含む。圧縮機構13は、圧縮部13aを含む。軸受18は、ラジアル軸受15と、スラスト軸受16と、を含む。すなわち、圧縮機10は、ラジアル軸受15、及びスラスト軸受16を備えている。ハウジング11は、回転体19、ラジアル軸受15、及びスラスト軸受16を収容する。
【0015】
図3に示すように、ハウジング11は、シュラウド面11bを備えている。シュラウド面11bは、円錐台形状である。シュラウド面11bで囲まれた空間に圧縮部13aは位置している。すなわち、ハウジング11は圧縮部13aを収容する。
【0016】
図2に示すように、回転軸12は、ハウジング11の軸線mと同方向に延びる。すなわち、軸方向Xは回転軸12の軸方向に相当する。回転軸12の軸線である回転軸線Lは、軸方向Xに延びる。回転軸12は、例えば、軸方向Xに延びる円柱状である。軸方向Xにおいて、回転軸12の一端を第1端12aとし、回転軸12の他端を第2端12bとする。第2端12bは、第1端12aとは反対側の回転軸12の端部である。軸方向Xのうち、圧縮機10の重心C1から第1端12aに向かう方向を第1方向X1とし、圧縮機10の重心C1から第2端12bに向かう方向を第2方向X2とする。本実施形態における圧縮機10の重心C1は、回転軸12上に位置する。
【0017】
図2及び図3に示すように、圧縮機構13は、回転軸12の軸方向Xにおける少なくとも一端としての第1端12aに設けられている。本実施形態における圧縮機構13は、回転軸12の軸方向Xにおける一端としての第1端12aに設けられ、他端としての第2端12bには設けられていない。本実施形態における圧縮部13aはインペラである。すなわち、圧縮機構13はインペラを含む。圧縮部13aは、円錐台形状である。圧縮部13aは、ハウジング11のシュラウド面11bによって覆われている。圧縮部13aは、シュラウド面11bから離れている。これにより、圧縮部13aとシュラウド面11bとの間にはチップクリアランス11cが形成されている。回転軸12が回転すると、圧縮部13aは回転軸12と一体的に回転する。
【0018】
図2に示すように、圧縮機10は電動モータ14を備えている。電動モータ14は、回転軸12に取り付けられている。電動モータ14は、不図示のインバータから電力が供給されることにより駆動する。電動モータ14の駆動に伴って、回転軸12が回転する。
【0019】
ラジアル軸受15は、回転軸12をラジアル方向で回転可能に支持する。ラジアル方向は、回転軸12の径方向である。本実施形態における軸受18は、2つのラジアル軸受15を含む。2つのラジアル軸受15のうち、一方を第1ラジアル軸受15aともいい、他方を第2ラジアル軸受15bともいう。第1ラジアル軸受15aは、回転軸12のうち、第1端12aと電動モータ14が設けられた部分との間を支持している。第2ラジアル軸受15bは、回転軸12のうち、電動モータ14が設けられた部分と第2端12bとの間を支持している。本実施形態における圧縮機10の重心C1は、軸方向Xにおける2つのラジアル軸受15の間に位置する。2つのラジアル軸受15は、ハウジング11に固定されている。2つのラジアル軸受15は、回転軸12をハウジング11に対して回転可能に支持する。
【0020】
回転体19は、支持部19aを備える。支持部19aは、回転軸12の外周面から環状に突出している。支持部19aは、円板状である。支持部19aは、回転軸12と一体的に回転する。
【0021】
本実施形態における軸受18は、1つのスラスト軸受16を含む。スラスト軸受16は、支持部19aを挟んで軸方向Xにおいて対をなすように配置されている。スラスト軸受16は、支持部19aをスラスト方向で回転可能に支持する。これにより、スラスト軸受16は、回転軸12をスラスト方向で回転可能に支持する。なお、スラスト方向は、回転軸12の軸方向Xである。スラスト軸受16は、回転軸12をハウジング11に対して回転可能に支持する。
【0022】
ラジアル軸受15及びスラスト軸受16は気体軸受である。気体軸受としての軸受18は、回転軸12の回転数が所定の回転数に到達するまでは、回転軸12が軸受18に接触する。そして、回転軸12の回転数が所定の回転数に到達したとき、回転軸12と軸受18との間には、回転軸12の回転により引き込まれた空気により空気膜が形成される。回転軸12と軸受18との間に形成される空気膜の動圧により回転軸12が浮上する。このため、回転軸12の回転数が所定の回転数に到達すると、軸受18は、回転軸12に接触することなく空気膜により回転軸12を支持する。軸受18として気体軸受を採用することによって、回転軸12とハウジング11とが接触することを抑制できる。
【0023】
圧縮機10において、圧縮機構13が回転軸12と共に回転することで流体を圧縮する。本実施形態における流体は冷媒である。圧縮機構13は、電動モータ14の駆動に伴い、ハウジング11内に吸入された冷媒を圧縮する。
【0024】
図1に示すように、圧縮機10は、複数の突出部11dを備えている。突出部11dは、ハウジング11の外面11aから突出している。突出部11dは、ハウジング11と一体化されている。そのため、突出部11dは、ハウジング11と同じ金属からなる。複数の突出部11dは、ハウジング11の外面11aから互いに同じ方向に延びている。複数の突出部11dは、例えば、ハウジング11の外面11aから取付面100aに向けて延びる円柱状である。本実施形態における圧縮機10は、2つの突出部11dを備えている。2つの突出部11dは、軸方向Xにおいて互いに離れている。
【0025】
図2に示すように、2つの突出部11dのうちの一方は、ハウジング11のうち、第1ラジアル軸受15aよりも第1方向X1側の回転軸12を覆う部分に設けられている。2つの突出部11dのうちの他方は、ハウジング11のうち、電動モータ14を囲む部分よりも第2方向X2側にある。2つの突出部11dの両方が、ハウジング11のうち、圧縮部13aを囲む部分よりも第2方向X2側にあってもよい。
【0026】
圧縮機10の重心C1から回転軸12の軸方向Xに対して直交する一方向に延びる仮想的な線を仮想線VLとする。圧縮機10の重心C1を含み、且つ、回転軸12の軸方向Xに対して直交する面を仮想面VPとする。仮想線VLは仮想面VP上で延びる。
【0027】
軸方向Xに対して直交する一方向を第1直交方向Yともいう。軸方向X及び第1直交方向Yに対して直交する方向を第2直交方向Zともいう。第2直交方向Zは、仮想線VLの延びる方向である。第1直交方向Yは、回転軸12の回転軸線Lと仮想線VLとに直交する仮想的な直線の延びる方向である。
【0028】
仮想面VPは、軸方向Xにおける2つの突出部11dの間に位置する。複数の突出部11dのうち、少なくとも1つの突出部11dは仮想面VPよりも第1方向X1に位置し、少なくとも1つの突出部11dは仮想面VPよりも第2方向X2に位置する。本実施形態においては、1つの突出部11dが仮想面VPよりも第1方向X1に位置し、1つの突出部11dが仮想面VPよりも第2方向X2に位置する。
【0029】
<圧縮機の取付構造>
図1に示すように、圧縮機10は、取付構造30によって車両100の取付面100aに取り付けられている。言い換えると、圧縮機10の取付構造30は、圧縮機10を車両100の取付面100aに取り付けるためのものである。取付面100aは、例えば、車両100を構成するフレーム101の一部分である。
【0030】
取付構造30は、複数の取付足20を備えている。取付足20は、複数の突出部11dの各々に固定されている。すなわち、取付足20は、ハウジング11に固定されている。本実施形態における取付構造30は、2つの取付足20を備えている。2つの取付足20は、軸方向Xにおいて互いに離れている。
【0031】
取付足20は、弾性部材からなる。弾性部材は、例えば、ゴム部材や、弾性変形可能な樹脂部材であるウレタン材などによって形成されている。取付足20は、例えば、突出部11dにおけるハウジング11の外面11aとは反対側の端部に取り付けられている。取付足20は、例えば、突出部11dにおけるハウジング11の外面11aとは反対側の端部から取付面100aに向けて延びる円柱状である。取付足20は、取付面100aにボルト締結等によって取り付けられている。これにより、取付足20は、取付面100aに固定されている。なお、本実施形態において、複数の取付足20が取り付けられる取付面100aは、同一の平面である。
【0032】
図1及び図2に示すように、2つの取付足20のうちの一方は2つの突出部11dのうちの一方に固定され、2つの取付足20のうちの他方は2つの突出部11dのうちの他方に固定されている。そのため、2つの取付足20のうちの一方は、ハウジング11のうち、第1ラジアル軸受15aよりも第1方向X1側の回転軸12を覆う部分に接続されている。2つの取付足20のうちの他方は、ハウジング11のうち、電動モータ14を囲む部分よりも第2方向X2側に接続されている。仮想面VPは、軸方向Xにおける2つの取付足20の間に位置する。2つの取付足20のうち、一方が仮想面VPよりも第1方向X1に位置し、他方が仮想面VPよりも第2方向X2に位置する。
【0033】
<共振周波数の大小関係>
取付足20の共振周波数を取付足共振周波数F1とする。ラジアル軸受15の共振周波数をラジアル軸受共振周波数F2とする。スラスト軸受16の共振周波数をスラスト軸受共振周波数F3とする。本実施形態において、圧縮機10の取付構造30に設けられた全ての取付足20の共振周波数を取付足共振周波数F1とする。圧縮機10の取付構造30に設けられた2つの取付足20における取付足共振周波数F1は、互いに同じ値であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0034】
なお、取付足共振周波数F1には、並進成分と回転成分とがある。並進成分としての取付足共振周波数F1は、軸方向Xに延びる仮想軸に沿う並進方向の成分と、第1直交方向Yに延びる仮想軸に沿う並進方向の成分と、第2直交方向Zに延びる仮想軸に沿う並進方向の成分と、の3種類がある。回転成分としての取付足共振周波数F1は、軸方向Xに延びる仮想軸を中心とする回転方向の成分と、第1直交方向Yに延びる仮想軸を中心とする回転方向の成分と、第2直交方向Zに延びる仮想軸を中心とする回転方向の成分と、の3種類がある。これら6種類の取付足共振周波数F1のうち、第1直交方向Yに延びる仮想軸に沿う並進方向の成分としての取付足共振周波数F1を以下では例示する。
【0035】
圧縮機10において、ラジアル軸受共振周波数F2は、圧縮機10に設けられたラジアル軸受15の数と同数だけ設定される。そのため、本実施形態における圧縮機10においては、ラジアル軸受共振周波数F2として2つの共振周波数が設定されている。
【0036】
圧縮機10において、スラスト軸受共振周波数F3は、圧縮機10に設けられたスラスト軸受16の数と同数だけ設定される。そのため、本実施形態における圧縮機10においては、スラスト軸受共振周波数F3として1つの共振周波数が設定されている。
【0037】
ハウジング11の重量をハウジング重量M1とする。回転体19の重量を回転体重量M2とする。複数の取付足20の剛性の合計を取付足剛性K1とする。ラジアル軸受15の剛性の合計をラジアル軸受剛性K2とする。スラスト軸受16の剛性の合計をスラスト軸受剛性K3とする。取付足剛性K1、ラジアル軸受剛性K2、及びスラスト軸受剛性K3は、N/mの単位で表される値である。取付足剛性K1、ラジアル軸受剛性K2、及びスラスト軸受剛性K3は、仮想線VLの延びる方向における成分である。仮想線VLの延びる方向における成分は、取付足20を介して車両100から圧縮機10に作用する加振方向である。
【0038】
取付足20の剛性は、取付足20の形状や材質などによって取付足20に固有に設定された値である。圧縮機10の取付構造30に設けられた2つの取付足20の剛性は、互いに同じ値であってもよいし、互いに異なる値であっていてもよい。なお、複数の取付足20の剛性の合計のうち、ラジアル方向における剛性の合計とスラスト方向における剛性の合計と、は互いに同じ値の取付足剛性K1である。
【0039】
ラジアル軸受15の剛性は、ラジアル軸受15の形状や材質などによってラジアル軸受15に固有に設定された値である。圧縮機10に設けられた2つのラジアル軸受15の剛性は、互いに同じ値でもよいし、互いに異なる値であってもよい。スラスト軸受16の剛性は、スラスト軸受16の形状や材質などによってスラスト軸受16に固有に設定された値である。
【0040】
取付足共振周波数F1は、以下の式(1)で表すことができる。
【0041】
【数1】
【0042】
ラジアル軸受共振周波数F2は、以下の式(2)で表すことができる。
【0043】
【数2】
【0044】
スラスト軸受共振周波数F3は、以下の式(3)で表すことができる。
【0045】
【数3】
【0046】
取付足共振周波数F1は、ラジアル軸受共振周波数F2よりも小さく、かつスラスト軸受共振周波数F3よりも小さい。そのため、上記の式(1)、式(2)、及び式(3)から、以下の式(4)が成立し、かつ以下の式(5)が成立する。
【0047】
【数4】
【0048】
【数5】
【0049】
なお、上記の式(4)及び上記の式(5)が成立する取付足共振周波数F1は、第1直交方向Yに延びる仮想軸に沿う並進方向の成分としての取付足共振周波数F1である。本実施形態では、この取付足共振周波数F1と、複数の他の取付足共振周波数F1と、のうち少なくとも1つの取付足共振周波数F1について、ラジアル軸受共振周波数F2よりも小さく、かつスラスト軸受共振周波数F3よりも小さい関係が成り立っている。上記した「他の取付足共振周波数F1」は、軸方向Xに延びる仮想軸に沿う並進方向の成分としての取付足共振周波数F1と、第2直交方向Zに延びる仮想軸に沿う並進方向の成分としての取付足共振周波数F1と、を含む。さらに、上記した「他の取付足共振周波数F1」は、軸方向Xに延びる仮想軸を中心とする回転方向の成分としての取付足共振周波数F1と、第1直交方向Yに延びる仮想軸を中心とする回転方向の成分としての取付足共振周波数F1と、を含む。さらに、上記した「他の取付足共振周波数F1」は、第2直交方向Zに延びる仮想軸を中心とする回転方向の成分としての取付足共振周波数F1と、を含む。
【0050】
<データの比較>
次に、第1実施例での圧縮機10の取付構造30と、第1比較例での圧縮機10の取付構造30とで、加振周波数と回転体19の振れ量との関係を実験によって取得した。その結果を図4に示す。図4において、横軸は加振周波数を示し、縦軸は回転体19の振れ量を示す。加振周波数は、圧縮機10の外部から圧縮機10に加えた振動の周波数である。回転体19の振れ量は、圧縮部13aの振れ量である。圧縮部13aの振れ量は、例えば、回転軸12の径方向における圧縮部13aの変位量である。図4において、第1実施例での数値の軌跡は実線で示す。図4において、第1比較例での数値の軌跡は一点鎖線で示す。
【0051】
第1実施例での圧縮機10の取付構造30は、実施形態と同様に、取付足共振周波数F1が、ラジアル軸受共振周波数F2よりも小さい関係となるものを採用した。第1比較例での圧縮機10の取付構造30は、実施形態とは異なり、取付足共振周波数F1が、ラジアル軸受共振周波数F2よりも大きい関係となるものを採用した。
【0052】
図4に示すように、第1実施例において回転体19の振れ量のピークが生じる加振周波数は、第1比較例において回転体19の振れ量のピークが生じる加振周波数よりも小さい。第1比較例での回転体19の振れ量のピークは、加振周波数がラジアル軸受共振周波数F2の付近であるときに生じたのに対して、第1実施例での回転体19の振れ量のピークは、加振周波数がラジアル軸受共振周波数F2よりも小さいときに生じた。そのため、加振周波数がラジアル軸受共振周波数F2であるときにおいて、第1実施例における回転体19の振れ量は第1比較例における回転体19の振れ量よりも小さくなった。
【0053】
加振周波数がラジアル軸受共振周波数F2であるときは、圧縮機10に加わった振動に伴ってラジアル軸受15が共振することによって、回転体19が最も大きく振動する。そのため、圧縮部13aの振動を抑えるためには、加振周波数がラジアル軸受共振周波数F2であるタイミングでの回転体19の振れ量を小さくすることが望ましい。図4からは、第1実施例での圧縮機10の取付構造30のように、取付足共振周波数F1が、ラジアル軸受共振周波数F2よりも小さい関係であれば、圧縮部13aの振動を抑制できることが示された。
【0054】
なお、スラスト軸受共振周波数F3の場合についても、上記のラジアル軸受共振周波数F2の場合と同様のことがいえる。すなわち、第2実施例での圧縮機10の取付構造30として、取付足共振周波数F1がスラスト軸受共振周波数F3よりも小さい関係となるものを採用する。第2比較例での圧縮機10の取付構造30として、取付足共振周波数F1がスラスト軸受共振周波数F3よりも大きい関係となるものを採用する。この場合、第2比較例での回転体19の振れ量のピークは、加振周波数がスラスト軸受共振周波数F3の付近であるときに生じるのに対して、第2実施例での回転体19の振れ量のピークは、加振周波数がスラスト軸受共振周波数F3よりも小さいときに生じる。そのため、加振周波数がスラスト軸受共振周波数F3であるときにおいて、第2実施例における回転体19の振れ量は第2比較例における回転体19の振れ量よりも小さくなる。
【0055】
加振周波数がスラスト軸受共振周波数F3であるときは、圧縮機10に加わった振動に伴ってスラスト軸受16が共振することによって、回転体19が大きく振動する。そのため、圧縮部13aの振動を抑えるためには、加振周波数がスラスト軸受共振周波数F3であるタイミングでの回転体19の振れ量を小さくすることが望ましい。したがって、第2実施例での圧縮機10の取付構造30のように、取付足共振周波数F1が、スラスト軸受共振周波数F3よりも小さい関係であれば、圧縮部13aの振動を抑制できる。
【0056】
[実施形態の作用および効果]
実施形態の作用および効果について説明する。
(1)取付足共振周波数F1は、ラジアル軸受共振周波数F2よりも小さく、かつスラスト軸受共振周波数F3よりも小さい。そのため、回転体19が最も大きく振動するタイミングであるラジアル軸受15の共振時において、回転体19の振れ量を小さくできる。したがって、車両100の振動に伴って生じる圧縮機構13の振動を抑制できる。
【0057】
(2)圧縮機構13は、回転軸12の軸方向Xにおける一端である第1端12aに設けられ、他端である第2端12bには設けられていない。そのため、圧縮機構13が回転軸12の軸方向Xにおける両端に設けられている場合と比較して、回転体19の重心の偏りによって、回転体19の振れ量が大きくなりやすい。こうして回転体19の振動がより懸念される場合においても、圧縮機10の取付構造30を採用することによって、車両100の振動に伴って生じる圧縮機構13の振動を抑制できる。
【0058】
(3)圧縮機構13はインペラとしての圧縮部13aを含んでいる。この場合、圧縮部13aがハウジング11に非接触であるため、圧縮部13aの振れ量が課題となる。そして、ハウジング11のシュラウド面11bと圧縮部13aとの間に形成されるチップクリアランス11cの寸法が小さいために、圧縮機構13が大きく振動すると圧縮部13aがハウジング11に衝突しやすい。こうした場合でも、車両100の振動に伴って生じる圧縮機構13の振動を抑制することで、圧縮部13aがハウジング11に衝突することを抑制できる。
【0059】
(4)圧縮機10は、取付構造30によって車両100の取付面100aに取り付けられている。圧縮機構13によって圧縮される流体は冷媒である。冷媒はエアよりも負荷密度が高いため、仮に圧縮機構13によって圧縮される流体としてエアを採用する場合と比較して、ハウジング11への加振の作用時に回転軸12がラジアル軸受15及びスラスト軸受16に衝突しにくくなる。その一方で、ハウジング11への加振の作用時に回転軸12がラジアル軸受15及びスラスト軸受16に衝突しないことで懸念される圧縮機構13の振動については、圧縮機10の取付構造30を採用することで抑制できる。
【0060】
(5)ラジアル軸受15及びスラスト軸受16は気体軸受である。気体軸受の剛性は、転がり軸受の剛性よりも低い傾向にある。そのため、ラジアル軸受15及びスラスト軸受16に気体軸受を採用する場合は、仮にラジアル軸受15及びスラスト軸受16に転がり軸受を採用する場合と比較して、ラジアル軸受共振周波数F2及びスラスト軸受共振周波数F3が小さくなる。こうして、ラジアル軸受共振周波数F2及びスラスト軸受共振周波数F3が取付足共振周波数F1に近い値になりやすい場合においても、圧縮機10の取付構造30を採用することによって、車両100の振動に伴って生じる圧縮機構13の振動を抑制できる。また、気体軸受であるラジアル軸受15及びスラスト軸受16は回転軸12に対して非接触であるため、圧縮機構13の振れ量が課題となる。こうした圧縮機構13の振動については、圧縮機10の取付構造30を採用することで抑制できる。
【0061】
(6)取付足20は弾性部材からなる。そのため、取付足20が金属部材からなる場合よりも取付足20による減衰効果が高まるため、車両100の振動時における圧縮機10の振動を抑制できる。したがって、車両100の振動に伴って生じる圧縮機構13の振動をさらに抑制できる。また、取付足20に弾性部材からなるものを採用することにより、例えば金属部材からなる取付足20と比較して、ハウジング11と取付面100aとに対する取付足20の取り付け剛性を低下させることができる。したがって、取付足剛性K1を低下させることができるため、取付足共振周波数F1を、ラジアル軸受共振周波数F2よりも小さく、かつスラスト軸受共振周波数F3よりも小さくできる。
【0062】
(7)圧縮機10は、車両100に取り付けられている。そのため、車両100の振動が圧縮機10に伝わるため、例えば圧縮機10が車両100以外の箇所に設けられる場合と比較して、圧縮機10の外部から圧縮機10への加振が大きい。こうして外部から受ける加振が大きい圧縮機10に対して、圧縮機10の取付構造30を採用することで、圧縮機構13の振動を抑制できる。
【0063】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
○ 圧縮機10の取付構造30が備える取付足20の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、取付足20の数に応じて、ハウジング11に設ける突出部11dの数を変更してもよい。
【0065】
○ 取付足20は、突出部11dを介さずに、ハウジング11の外面11aに直接固定されていてもよい。この場合、圧縮機10から突出部11dを省略してもよい。
○ 圧縮機10の取付構造30が複数の取付足20を備える場合、複数の取付足20が固定される取付面100aは同一の平面に限らない。また、複数の取付足20のうち、少なくとも1つの取付足20とその他の少なくとも1つの取付足20とで固定される取付面100aの延びる方向が異なってもよい。この場合、ハウジング11から取付面100aに向けて延びる取付足20の軸線方向が取付足20毎で異なってもよい。
【0066】
○ 圧縮機10の取付構造30が複数の取付足20を備える場合、2つ以上の取付足20が仮想面VPよりも第1方向X1に位置し、2つ以上の取付足20が仮想面VPよりも第2方向X2に位置してもよい。圧縮機10の取付構造30が備える全ての取付足20が、仮想面VPよりも第1方向X1に位置してもよいし、仮想面VPよりも第2方向X2に位置してもよい。
【0067】
○ 圧縮機10が備えるラジアル軸受15は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。圧縮機10が備えるスラスト軸受16は、2つ以上であってもよい。
○ 圧縮機構13は、回転軸12の軸方向Xにおける両端に設けられていてもよい。
【0068】
○ 圧縮機構13は、圧縮部13aとしてインペラを含むものに限らない。例えば、圧縮機10は、ピストン式やスクロール型などであってもよい。
○ 圧縮機10は、車両空調装置に用いられていたが、これに限らない。圧縮機10は、冷媒を圧縮するものであればよく、圧縮機10の用途は適宜変更可能である。
【0069】
○ 圧縮機構13は、冷媒以外の流体を圧縮するものであってもよい。例えば、圧縮機構13は、流体としての空気を圧縮するものであってもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0070】
[態様1]
回転軸と、前記回転軸の軸方向における少なくとも一端に設けられるとともに前記回転軸と共に回転することで流体を圧縮する圧縮機構と、を含む回転体と、前記回転軸をラジアル方向で回転可能に支持するラジアル軸受、及び前記回転軸をスラスト方向で回転可能に支持するスラスト軸受と、前記回転体、前記ラジアル軸受、及び前記スラスト軸受を収容するハウジングと、を備える圧縮機を車両の取付面に取り付けるための圧縮機の取付構造であって、前記ラジアル軸受及び前記スラスト軸受は気体軸受であり、前記ハウジングと前記取付面とに固定される弾性部材からなる取付足を備え、前記取付足の共振周波数は、前記ラジアル軸受の共振周波数よりも小さく、かつ前記スラスト軸受の共振周波数よりも小さいことを特徴とする圧縮機の取付構造。
【0071】
[態様2]
前記圧縮機構は、前記回転軸の軸方向における一端に設けられ、他端には設けられていない[態様1]に記載の圧縮機の取付構造。
【0072】
[態様3]
前記圧縮機構はインペラを含む[態様1]又は[態様2]に記載の圧縮機の取付構造。
[態様4]
[態様1]~[態様3]のうちいずれか一つに記載の取付構造によって前記車両の前記取付面に取り付けられ、前記流体は冷媒であることを特徴とする圧縮機。
【符号の説明】
【0073】
X…軸方向、F1…取付足共振周波数、F2…ラジアル軸受共振周波数、F3…スラスト軸受共振周波数、10…圧縮機、11…ハウジング、12…回転軸、12a…一端としての第1端、12b…他端としての第2端、13…圧縮機構、15…ラジアル軸受、16…スラスト軸受、19…回転体、20…取付足、30…取付構造、100…車両、100a…取付面。
図1
図2
図3
図4