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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179670
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ケーシングチューブ
(51)【国際特許分類】
   E21B 17/00 20060101AFI20241219BHJP
   E21B 47/02 20060101ALI20241219BHJP
   E21B 47/12 20120101ALI20241219BHJP
【FI】
E21B17/00
E21B47/02
E21B47/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098689
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516031392
【氏名又は名称】日本マルチメディア・イクイップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】内田 昌志
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 功
(72)【発明者】
【氏名】涌井 優
(72)【発明者】
【氏名】高田 守康
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129BA01
2D129BB03
2D129CB12
2D129EA11
2D129EA23
2D129JA05
(57)【要約】
【課題】地中に打設されたケーシングチューブの鉛直度を精度良く計測することができるとともに、ケーシングチューブ内を挿通する掘削装置による掘削や土砂の排出時における衝撃によって位置計測装置やアンテナなどが故障することなく、掘削装置の挿通を阻害することがないケーシングチューブを提供する。
【解決手段】場所打ち杭掘削時に用いられるケーシングチューブであって、内周面に軸方向に沿って延設される保護部を有し、前記保護部は、軸方向両端に形成されたアンテナ収容部と、前記アンテナ収容部間に配置された本体収容部とを備え、前記アンテナ収容部には、互いに軸方向に隣接する前記ケーシングチューブ同士を無線通信するアンテナが互いに軸方向に重畳するように収容され、前記アンテナは前記保護部を介して前記本体収容部に収容された通信制御手段に接続される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ち杭掘削時に用いられるケーシングチューブであって、
内周面に軸方向に沿って延設される保護部を有し、
前記保護部は、軸方向両端に形成されたアンテナ収容部と、前記アンテナ収容部間に配置された本体収容部とを備え、
前記アンテナ収容部には、互いに軸方向に隣接する前記ケーシングチューブ同士を無線通信するアンテナが互いに軸方向に重畳するように収容され、前記アンテナは前記保護部を介して前記本体収容部に収容された通信制御手段に接続されることを特徴とするケーシングチューブ。
【請求項2】
請求項1に記載のケーシングチューブにおいて、
前記保護部は、前記内周面から中央に向かって円滑に突出することを特徴とするケーシングチューブ。
【請求項3】
請求項1に記載のケーシングチューブにおいて、
前記通信制御手段は、傾斜センサ基板、通信基板およびバッテリを備え、前記通信基板と前記アンテナは有線で接続されることを特徴とするケーシングチューブ。
【請求項4】
請求項1に記載のケーシングチューブにおいて、
前記本体収容部は、鋼板で形成されることを特徴とするケーシングチューブ。
【請求項5】
請求項1に記載のケーシングチューブにおいて、
前記内周面には、軸方向に沿って貫通する挿通孔が形成され、
前記挿通孔は、掘削時に用いる掘削手段が挿通可能であることを特徴とするケーシングチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭としての場所打ち杭を打設するオールケーシング工法において、場所打ち杭掘削時のケーシングチューブ切削圧入の際に、不可視部分となる地中部分のケーシングチューブの鉛直精度を把握することにより、場所打ち杭全長の施工精度を確保することができるケーシングチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
オールケーシング工法は、ケーシングドライバ装置やアースボーリングマシンで把持したケーシングチューブを回転又は揺動させながら地中に圧入し、ケーシングチューブ内の土砂を掘削装置で掘削して、地上に排土することによって地中孔を掘削している。そのため、杭の外周に土砂の混入が少なく、支持力の大きな場所打ち杭を施工することができ、場所打ち杭を打設する工法の中ではもっとも信頼性の高い工法として知られている。
【0003】
従来、オールケーシング工法における地中孔の掘削は、クレーンに吊支したハンマーグラブをケーシングチューブ内の掘削面に自重落下させて、その衝撃によって掘削したり、クレーンに吊支した回転力伝達手段であるケリーバに装備した掘削ドリルや掘削バケットをケーシングチューブ内の掘削面迄挿入し、回転駆動させて掘削することにより行っていた。
【0004】
このようなオールケーシング工法では、ケーシングチューブの切削圧入の際に、ケーシングチューブの鉛直度を測りながら圧入することが重要であり、このような鉛直度の測定方法は種々の方法が知られている。例えば、ケーシングチューブの地上部分の側面にデジタル傾斜計や二軸傾斜計を設置して当該傾斜計によって傾きを確認することで鉛直精度を確保したり、トータルステーションを用いてケーシングチューブの地上部分の上下端それぞれで外径2点を計測することで、地上部分での傾きを確認して杭芯位置の算出と鉛直精度を確認することなどが知られている。
【0005】
このような鉛直精度の確認方法によれば、地上部分での測定によってケーシングチューブの鉛直精度を確認しながらケーシングチューブの鉛直度を確保することができる。
【0006】
しかしながら、このような精度確認方法は、地上部分での鉛直精度確認技術であり、地中部分の精度が確認できないことに加え、地中に打設される長尺のケーシングチューブに対して、地上部分のみで確認しているため、必ずしも地中のケーシングチューブの鉛直度を確認することができていないという問題があった。また、軟弱地盤や硬質地盤では地中部分で杭の傾斜が生じやすく、正規の位置からずれる(鉛直精度が損なわれる)ことで、基礎杭としての支持力が確保できない懸念があった。さらに、従来の鉛直精度の測定には、従来1~2名の人員が必要であり、容易に鉛直精度の確認を行うことが難しいという問題があった。
【0007】
また、掘削機などに用いられるケーシングロッドの先端位置を精度よく計測する方法として、特許文献1に記載された先端位置計測システムが知られている。このシステムによれば、複数の管状のケーシングロッドが継ぎ足されたケーシング掘削機において、それぞれのケーシングロッドの内部に配置される位置計測装置と、互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドのジョイント部において、それぞれのケーシングロッドの内部に取り付けられた複数のアンテナと、互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドの内部において、位置計測装置とアンテナとの間に接続され、位置計測装置で得られた計測データを送受信する通信ケーブルとを具備し、複数のアンテナは、互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドのジョイント部において、一方のケーシングロッドから他方のケーシングロッドに向けて互いに対向して、且つオーバーラップして設置され、アンテナ同士間で無線通信を行っている。
【0008】
このような先端位置計測システムによれば、ケーシングロッドにおけるロッド先端位置の計測データを適所に配置した有線伝送路と、一対のアンテナ間通信による無線伝送路により伝送するようにしたため、精度良く、且つ確実な送受信によりケーシングロッドのロッド先端位置を計測することが可能となる。
【0009】
また、特許文献2に記載された回転式掘削機は、複数のロッドが継ぎ足された回転式掘削機であって、それぞれの前記ロッドに配置される傾斜測定装置と、前記傾斜測定装置に取り付け可能なアンテナ部材と、を具備し、前記傾斜測定装置の内部には、傾斜センサと、前記傾斜センサを駆動させる電源と、前記傾斜センサからの信号を送受信するアンテナ部と、が密封され、前記アンテナ部材と前記アンテナ部とは非接触で信号を送受信可能であり、前記ロッド同士の接続部において、前記アンテナ部材同士の間に発泡体が挟み込まれ、前記アンテナ部材同士が信号を送受信可能であるという構成を有している。
【0010】
このような回転式掘削機によれば、簡易な構造で精度よく回転式掘削機の先端位置を把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2022-127682号公報
【特許文献2】特許第6321056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、このような無線通信を利用した計測方法をオールケーシング工法に用いられるケーシングチューブに適用すると、ケーシングチューブ内は、掘削装置として、ハンマーグラブ等を挿通するので、ケーシングチューブ回転時の地中部分での摩擦や衝撃、およびハンマーグラブによる掘削・土砂の排出時におけるケーシングチューブ内壁との接触による衝撃から位置計測装置やアンテナなどを保護することができず、ケーシングチューブ内にこれらの位置計測装置やアンテナを組み込むことはできないという問題があった。
【0013】
また、ケーシングチューブは上述したように内部に掘削装置を挿通するための貫通孔を有しており、貫通孔に掘削装置を挿通するために内径を十分に確保する観点からも板厚が略50mm程度に設定されているので、貫通孔の内周面や内壁内にこれらの位置計測装置やアンテナを組み込むことは難しいという問題があった。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、地中に打設されたケーシングチューブの鉛直度を精度良く計測することができるとともに、ケーシングチューブ内を挿通する掘削装置による掘削や土砂の排出時における衝撃によって位置計測装置やアンテナなどが故障することなく、掘削装置の挿通を阻害することがないケーシングチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明に係るケーシングチューブは、場所打ち杭掘削時に用いられるケーシングチューブであって、内周面に軸方向に沿って延設される保護部を有し、前記保護部は、軸方向両端に形成されたアンテナ収容部と、前記アンテナ収容部間に配置された本体収容部とを備え、前記アンテナ収容部には、互いに軸方向に隣接する前記ケーシングチューブ同士を無線通信するアンテナが互いに軸方向に重畳するように収容され、前記アンテナは前記保護部を介して前記本体収容部に収容された通信制御手段に接続されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るケーシングチューブにおいて、前記保護部は、前記内周面から中央に向かって円滑に突出すると好適である。
【0017】
また、本発明に係るケーシングチューブにおいて、前記通信制御手段は、傾斜センサ基板、通信基板およびバッテリを備え、前記通信基板と前記アンテナは有線で接続されると好適である。
【0018】
また、本発明に係るケーシングチューブにおいて、前記本体収容部は、鋼板で形成されると好適である。
【0019】
また、本発明に係るケーシングチューブにおいて、前記内周面には、軸方向に沿って貫通する挿通孔が形成され、前記挿通孔は、掘削時に用いる掘削手段が挿通可能であると好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るケーシングチューブによれば、内周面に軸方向に沿って延設される保護部を有し、保護部は、軸方向両端に形成されたアンテナ収容部と、アンテナ収容部間に配置された本体収容部とを備え、アンテナ収容部には、互いに軸方向に隣接するケーシングチューブ同士を無線通信するアンテナが互いに軸方向に重畳するように収容され、アンテナは保護部を介して本体収容部に収容された通信制御手段に接続されるので、ケーシングチューブ内に掘削装置が挿通され、掘削装置による掘削や土砂の排出が行われても、保護部に収容されたアンテナや通信制御手段を適切に保護することができる。また、保護部はケーシングチューブの軸方向に沿って延設されているので、掘削装置の挿通を阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】オールケーシング工法における地中孔掘削装置の全体図。
図2】本発明の実施形態に係るケーシングチューブの断面図。
図3】本発明の実施形態に係るケーシングチューブの保護部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図。
図4】本発明の実施形態に係るケーシングチューブの概念図。
図5】本発明の実施形態に係るケーシングチューブの接合部の拡大図。
図6】本発明の実施形態に係るケーシングチューブの変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るケーシングチューブの実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、オールケーシング工法における地中孔掘削装置の全体図であり、図2は、本発明の実施形態に係るケーシングチューブの断面図であり、図3は、本発明の実施形態に係るケーシングチューブの保護部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図であり、図4は、本発明の実施形態に係るケーシングチューブの概念図であり、図5は、本発明の実施形態に係るケーシングチューブの接合部の拡大図であり、図6は、本発明の実施形態に係るケーシングチューブの変形例を示す断面図である。
【0024】
本実施形態に係るケーシングチューブは、全周回転式のオールケーシング工法に適用した場合について説明を行う。オールケーシング工法は、図1に示すように、杭の芯出し、掘削位置を示し、杭径を描いた上に地中孔掘削装置1をセットする。次に、ケーシングチューブ10の先端となるファーストチューブを建て込んで掘削を開始し、所定深度までケーシングチューブ10を建て込み・掘削・排土を繰り返す。ケーシングチューブ10が地中に入ったら、ハンマーグラブでケーシングチューブ10内中の土砂をかき出す。ファーストチューブの所定の長さまで掘削し終わるとさらにケーシングチューブ10を継ぎ足し、掘削を繰り返しながら所定の深さに達するまで掘削を行う。
【0025】
地中孔掘削装置1は、クローラクレーン等の自走可能なベースマシン2に起伏自在に起立させたジブ3の先端に配置したシーブ4から垂下させたワイヤロープ等の支持索5にスイベルを介して吊支して、ケーシングチューブ10内に挿入する。地中孔掘削装置1には、ハンマーグラブ6が支持索5に取り付けられる。また、地中孔掘削装置1には、作動油及び駆動源が、図示しない油圧ホース及びキャブタイヤケーブルで供給される。
【0026】
次に、ハンマーグラブ6をケーシングチューブ内の掘削面に自重落下させて、その衝撃によって掘削を行い、掘削した土砂を取り込む。そして、ハンマーグラブ6に所定量の土砂を取り込むと、地中孔掘削装置1をケーシングチューブ10の内壁から開放して地上に取り出し、ハンマーグラブ6から掘削した土砂を排土し、以後この作業を地中孔が所定の深さとなるまで繰り返して行う。
【0027】
その後、鉄筋かごの組み立て及び建込みを行ったうえで、トレミー管の建て込み及び、ケーシングチューブ10を引き抜きながらコンクリートの打設を行う。
【0028】
本実施形態に係るケーシングチューブ10は、図2に示すように、ケーシングチューブ本体11と、ケーシングチューブ本体11の内壁面に長手方向に沿って延設された保護部20とを有している。
【0029】
ケーシングチューブ本体11は、鋼板などで構成され、軸方向に貫通する挿通孔12を有する中空管状部材である。挿通孔12の内壁面には、上述した保護部20が軸方向に沿って延設されている。
【0030】
保護部20は、挿通孔12の内周面から中央に向かって突出するように配置され、挿通孔12の内周面と保護部20の外周面とは円滑に連続するように形成されている。保護部20が挿通孔12の内周面と円滑に連続するように形成されることで、挿通孔12を挿通する掘削装置の動作を阻害することがない。
【0031】
図3(a)に示すように、保護部20は、ケーシングチューブ10の軸方向に沿って伸びる長尺部材である保護部本体21を有している。保護部本体21は、略中央部に形成された本体収容部22と、保護部本体21の両端部に形成されたアンテナ収容部23を有している。本体収容部22及びアンテナ収容部23は、それぞれ後述する通信制御手段30を構成する傾斜センサ基板31、通信基板32及びバッテリ33並びにアンテナ34を収容する凹部であり、開口部は蓋体22a、23aで閉塞されている。本体収容部22及びアンテナ収容部23と蓋体22a、23aとは、図示しないシール手段を介して取り付けられており、保護部20の内部に水分等が侵入することを防止している。なお、保護部本体21及び蓋体22a、23aは、それぞれ鋼板で形成されていると好適である。
【0032】
図3(b)に示すように、保護部20の挿通孔12と対向する面は、本体収容部22とアンテナ収容部23とを連絡するケーブル挿通部24を備え、当該ケーブル挿通部24は、ケーブル35が挿通され、当該ケーブル35は、本体収容部22に収容された通信基板32等とアンテナ収容部23に収容されたアンテナ34とを接続している。
【0033】
さらに、ケーブル挿通部24は、本体収容部22とアンテナ収容部23の間に形成された凹部25内に配置されており、保護部本体21は、凹部25が形成されることで軽量化を図っている。
【0034】
アンテナ34は、アンテナ収容部23の保護部本体21の端面側に保護部本体21の短手方向に延設されている。このようにアンテナ34を配置することで、ケーシングチューブ10を連結した場合に、アンテナ34同士をケーシングチューブ10の軸方向に重畳するように配置することができる。
【0035】
図4に示すように、通信制御手段30は、傾斜センサ基板31、通信基板32及びバッテリ33と、アンテナ34とを有している。傾斜センサ基板31は、ケーシングチューブ10の鉛直度を測定する傾斜センサを備えており、傾斜センサは例えば2軸傾斜センサが好適に用いられる。通信基板32は、傾斜センサによって計測された鉛直度をアンテナ34を介して通信するものであり、マイクロ波を用いて無線によるデータ通信を行う。
【0036】
アンテナ34は、マイクロ波による無線通信を行うことができれば、従来周知の種々のアンテナを用いることができる。なお、図5に示すように、アンテナ34は、アンテナ収容部23の短手方向に延設しているので、ケーシングチューブ10を連結した場合に、アンテナ34の長手方向同士が対向するため、アンテナ34による送受信を良好に行うことが可能となる。
【0037】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るケーシングチューブ10を用いたケーシング先端位置計測システム7について説明を行う。ケーシング先端位置計測システム7は、地中に切削圧入されたケーシングチューブ10に取り付けられた通信制御手段30によって測定された計測値を用いてケーシングチューブ10の鉛直精度を測定するものである。
【0038】
ケーシングチューブ10の鉛直度は、傾斜センサ基板31に取り付けられた傾斜センサによって計測され、当該計測値は、通信基板32を介してアンテナ34によって送信される。受信側のアンテナ34は、当該計測値を受信し、ケーシングチューブ10内を有線によって通信したのち、地上に設けられたリピータ41までデータ通信を行う。リピータ41は計算機43に接続されたレシーバ42に当該データを通信し、計算機43によって測定値を用いてケーシングチューブ10の鉛直精度を演算する。なお、計算機43はバッテリ44によって電力を供給されて動作する。
【0039】
このように構成された本実施形態に係るケーシングチューブ10は、挿通孔12に設けられた保護部20に通信制御手段30を収容しているので、地上からは不可視となるケーシングチューブ10の地中部分の傾斜を高精度に計測できるため、鉛直精度の見える化を図ることができる。
【0040】
また、保護部20の端部に短手方向に延設されたアンテナ34を有しているので、ケーシングチューブ10を長手方向に連結することで、アンテナ34同士を対向させることができ、ケーシングチューブ10のジョイント部において無線通信を行うことが可能となる。
【0041】
さらに、保護部20に通信制御手段30を収容しているので、ケーシングドライバ装置によるケーシングチューブ10の回転時の地中部分での摩擦や衝撃、及びハンマーグラブによる掘削や土砂の排出時におけるケーシングチューブ10の内周面との接触による衝撃から通信制御手段30を保護することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係るケーシングチューブ10は、挿通孔12の内周面に保護部20を取り付けた場合について説明を行ったが、図6に示すように、挿通孔12の内周面に凹部12aを形成し、当該凹部12aに通信制御手段30を収容して保護部20aによって通信制御手段30及び凹部12aを覆うように構成しても構わない。このように構成することで、挿通孔12内周側への突出量が少なくなり、挿通孔12を挿通する掘削装置との干渉をより減ずることが可能となる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1 地中孔掘削装置, 2 ベースマシン, 3 ジブ, 4 シーブ, 5 支持索, 6 ハンマーグラブ, 7 ケーシング先端位置計測システム, 10 ケーシングチューブ, 11 ケーシングチューブ本体, 12 挿通孔, 20 保護部, 21 保護部本体, 22 本体収容部, 23 アンテナ収容部, 24 ケーブル挿通部, 25 凹部, 30 通信制御手段, 31 傾斜センサ基板, 32 通信基板, 33 バッテリ, 34 アンテナ, 35 ケーブル, 41 リピータ, 42 レシーバ, 43 計算機, 44 バッテリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6