(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179674
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】露光装置、露光方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20241219BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241219BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241219BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20241219BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
H01L21/02 B
H10B43/27
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098698
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 吉郎
【テーマコード(参考)】
2H197
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197AA10
2H197DA03
2H197EA11
2H197EB16
2H197EB23
2H197HA03
2H197JA17
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP32
5F083EP76
5F083ER21
5F083GA10
5F083GA27
5F083JA37
5F083MA06
5F083MA16
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5F083ZA01
5F101BA46
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
(57)【要約】
【課題】半導体装置の歩留まりを改善する。
【解決手段】実施形態の露光装置は、露光処理を実行する制御装置を含む。制御装置は、露光処理において、基板に配置された3つ以上のアライメントマークの計測結果を直交座標系で関数近似して倍率成分の算出値を算出し、倍率成分のアライメント補正値について第1下限値及び/又は第1上限値を設定し、算出値が第1下限値以上及び/又は第1上限値以下である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を第1補正値に設定し、第1下限値を設定し且つ算出値が第1下限値未満である場合に、倍率成分のアライメント補正値を算出値よりも大きく且つ第1補正値よりも小さい第2補正値に設定し、第1上限値を設定し且つ算出値が第1上限値超である場合に、倍率成分のアライメント補正値を第1補正値よりも大きく且つ算出値よりも小さい第3補正値に設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光処理を実行する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記露光処理において、
基板に配置された3つ以上のアライメントマークの計測結果を直交座標系で関数近似して倍率成分の算出値を算出し、
倍率成分のアライメント補正値について第1下限値及び/又は第1上限値を設定し、
前記算出値が第1下限値以上及び/又は第1上限値以下である場合に、倍率成分のアライメント補正値を第1補正値に設定し、
前記第1下限値を設定し且つ前記算出値が前記第1下限値未満である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記算出値よりも大きく且つ前記第1補正値よりも小さい第2補正値に設定し、
前記第1上限値を設定し且つ前記算出値が前記第1上限値超である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記第1補正値よりも大きく且つ前記算出値よりも小さい第3補正値に設定する、
露光装置。
【請求項2】
前記第2補正値は、前記第1補正値に前記算出値を加算し、さらに前記第1下限値を減算した値であり、
前記第3補正値は、前記第1補正値に前記算出値を加算し、さらに前記第1上限値を減算した値である、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1下限値は、前記露光処理の対象工程における前記倍率成分の重ね合わせずれの下限管理値に前記第1補正値を加算した値であり、
前記第1上限値は、前記露光処理の対象工程における前記倍率成分の重ね合わせずれの上限管理値に前記第1補正値を加算した値である、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
前記直交座標系は、第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含み、
前記第1補正値と前記第2補正値と前記第3補正値とのそれぞれは、前記第1方向の倍率成分のアライメント補正値であり、
前記制御装置は、前記露光処理において、
倍率成分のアライメント補正値について第2下限値及び/又は第2上限値をさらに設定し、
前記算出値が第2下限値以上及び/又は第2上限値以下である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を第4補正値に設定し、
前記第2下限値を設定し且つ前記算出値が前記第2下限値未満である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を前記算出値よりも大きく且つ前記第4補正値よりも小さい第5補正値に設定し、
前記第2上限値を設定し且つ前記算出値が前記第2上限値超である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を前記第4補正値よりも大きく且つ前記算出値よりも小さい第6補正値に設定し、
前記第2下限値は、前記第1下限値と異なり、
前記第2上限値は、前記第2上限値と異なる、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項5】
前記直交座標系は、第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含み、
前記第1補正値と前記第2補正値と前記第3補正値とのそれぞれは、前記第1方向の倍率成分のアライメント補正値であり、
前記制御装置は、前記露光処理において、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を、前記算出値と略同じ値に設定する、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項6】
基板に配置された3つ以上のアライメントマークの計測結果を直交座標系で関数近似して倍率成分の算出値を算出することと、
倍率成分のアライメント補正値について第1下限値及び/又は第1上限値を設定することと、
前記算出値が第1下限値以上及び/又は第1上限値以下である場合に、倍率成分のアライメント補正値を第1補正値に設定することと、
前記第1下限値を設定し且つ前記算出値が前記第1下限値未満である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記算出値よりも大きく且つ前記第1補正値よりも小さい第2補正値に設定することと、
前記第1上限値を設定し且つ前記算出値が前記第1上限値超である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記第1補正値よりも大きく且つ前記算出値よりも小さい第3補正値に設定することと、を備える、
露光方法。
【請求項7】
前記第2補正値は、前記第1補正値に前記算出値を加算し、さらに前記第1下限値を減算した値であり、
前記第3補正値は、前記第1補正値に前記算出値を加算し、さらに前記第1上限値を減算した値である、
請求項6に記載の露光方法。
【請求項8】
前記第1下限値は、露光処理の対象工程における前記倍率成分の重ね合わせずれの下限管理値に前記第1補正値を加算した値であり、
前記第1上限値は、露光処理の対象工程における前記倍率成分の重ね合わせずれの上限管理値に前記第1補正値を加算した値である、
請求項6に記載の露光方法。
【請求項9】
前記直交座標系は、第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含み、
前記第1補正値と前記第2補正値と前記第3補正値とのそれぞれは、前記第1方向の倍率成分のアライメント補正値であり、
倍率成分のアライメント補正値について第2下限値及び/又は第2上限値をさらに設定することと、
前記算出値が第2下限値以上及び/又は第2上限値以下である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を第4補正値に設定することと、
前記第2下限値を設定し且つ前記算出値が前記第2下限値未満である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を前記算出値よりも大きく且つ前記第4補正値よりも小さい第5補正値に設定することと、
前記第2上限値を設定し且つ前記算出値が前記第2上限値超である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を前記第4補正値よりも大きく且つ前記算出値よりも小さい第6補正値に設定することと、をさらに備え、
前記第2下限値は、前記第1下限値と異なり、
前記第2上限値は、前記第1上限値と異なる、
請求項6に記載の露光方法。
【請求項10】
前記直交座標系は、第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含み、
前記第1補正値と前記第2補正値と前記第3補正値とのそれぞれは、前記第1方向の倍率成分のアライメント補正値であり、
前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を、前記算出値と略同じ値に設定することをさらに備える、
請求項6に記載の露光方法。
【請求項11】
第1露光工程において、
基板に配置された3つ以上のアライメントマークの計測結果を直交座標系で関数近似して倍率成分の第1算出値を算出することと、
倍率成分のアライメント補正値について第1下限値及び/又は第1上限値を設定することと、
前記第1算出値が第1下限値以上及び/又は第1上限値以下である場合に、倍率成分のアライメント補正値を第1補正値に設定することと、
前記第1下限値を設定し且つ前記第1算出値が前記第1下限値未満である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記第1算出値よりも大きく且つ前記第1補正値よりも小さい第2補正値に設定することと、
前記第1上限値を設定し且つ前記第1算出値が前記第1上限値超である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記第1補正値よりも大きく且つ前記第1算出値よりも小さい第3補正値に設定することと、を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2補正値は、前記第1補正値に前記第1算出値を加算し、さらに前記第1下限値を減算した値であり、
前記第3補正値は、前記第1補正値に前記第1算出値を加算し、さらに前記第1上限値を減算した値である、
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1下限値は、前記第1露光工程における前記倍率成分の重ね合わせずれの下限管理値に前記第1補正値を加算した値であり、
前記第1上限値は、前記第1露光工程における前記倍率成分の重ね合わせずれの上限管理値に前記第1補正値を加算した値である、
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記直交座標系は、第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含み、
前記第1補正値と前記第2補正値と前記第3補正値とのそれぞれは、前記第1方向の倍率成分のアライメント補正値であり、
前記第1露光工程において、
倍率成分のアライメント補正値について第2下限値及び/又は第2上限値をさらに設定することと、
前記第1算出値が第2下限値以上及び/又は第2上限値以下である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を第4補正値に設定することと、
前記第2下限値を設定し且つ前記第1算出値が前記第2下限値未満である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を前記第1算出値よりも大きく且つ前記第4補正値よりも小さい第5補正値に設定することと、
前記第2上限値を設定し且つ前記第1算出値が前記第2上限値超である場合に、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を前記第4補正値よりも大きく且つ前記第1算出値よりも小さい第6補正値に設定することと、をさらに備え、
前記第2下限値は、前記第1下限値と異なり、
前記第2上限値は、前記第1上限値と異なる、
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記直交座標系は、第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含み、
前記第1補正値と前記第2補正値と前記第3補正値とのそれぞれは、前記第1方向の倍率成分のアライメント補正値であり、
前記第1露光工程において、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値を、前記第1算出値と略同じ値に設定することをさらに備える、
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記基板に対する前記第1露光工程の後の第2露光工程において、
前記基板に配置された3つ以上のアライメントマークの計測結果を直交座標系で関数近似して倍率成分の第2算出値を算出することと、
倍率成分のアライメント補正値について第3下限値及び/又は第3上限値を設定することと、
前記第2算出値が第3下限値以上及び/又は第3上限値以下である場合に、倍率成分のアライメント補正値を第7補正値に設定することと、
前記第3下限値を設定し且つ前記第2算出値が前記第3下限値未満である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記第2算出値よりも大きく且つ前記第7補正値よりも小さい第8補正値に設定することと、
前記第3上限値を設定し且つ前記第2算出値が前記第3上限値超である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を前記第7補正値よりも大きく且つ前記第2算出値よりも小さい第9補正値に設定することと、を備える、
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記直交座標系は、第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含み、
前記第1補正値と前記第2補正値と前記第3補正値とのそれぞれは、前記第1方向の倍率成分のアライメント補正値であり、
前記第7補正値と前記第8補正値と前記第9補正値とのそれぞれは、前記第2方向の倍率成分のアライメント補正値である、
請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、露光装置、露光方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路基板を3次元に積層する3次元積層技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の歩留まりを改善する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の露光装置は、露光処理を実行する制御装置を含む。制御装置は、露光処理において、基板に配置された3つ以上のアライメントマークの計測結果を直交座標系で関数近似して倍率成分の算出値を算出し、倍率成分のアライメント補正値について第1下限値及び/又は第1上限値を設定し、算出値が第1下限値以上及び/又は第1上限値以下である場合に、前記倍率成分のアライメント補正値を第1補正値に設定し、第1下限値を設定し且つ算出値が第1下限値未満である場合に、倍率成分のアライメント補正値を算出値よりも大きく且つ第1補正値よりも小さい第2補正値に設定し、第1上限値を設定し且つ算出値が第1上限値超である場合に、倍率成分のアライメント補正値を第1補正値よりも大きく且つ算出値よりも小さい第3補正値に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】半導体装置の製造工程で使用されるアライメントマークの配置の一例を示す模式図。
【
図3】接合オーバーレイで残存し得るウエハ面内の重ね合わせ成分に対する露光装置及び接合装置の補正性能の一例を示すテーブル。
【
図4】第1実施形態に係る露光装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態に係る露光装置の露光方法の一例を示すフローチャート。
【
図6】第1実施形態に係る露光装置の露光処理による重ね合わせ結果の一例を示す模式図。
【
図7】第1実施形態に係る露光装置の露光処理によるウエハ倍率成分のアライメント補正値の一例を示すテーブル。
【
図8】第1実施形態に係る露光装置の露光処理後のウエハ倍率成分の分布の一例を示す散布図。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図10】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法によるウエハ倍率成分の分布の変化の一例を示す箱ひげ図。
【
図11】第3実施形態に係る露光装置の露光方法の一例を示すフローチャート。
【
図12】第3実施形態に係る露光装置の露光処理による重ね合わせ結果の一例を示す模式図。
【
図13】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図14】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法によるウエハ倍率成分の分布の変化の一例を示す箱ひげ図。
【
図15】第4実施形態に係るメモリデバイスの全体構成の一例を示すブロック図。
【
図16】第4実施形態に係るメモリデバイスが備えるメモリセルアレイの回路構成の一例を示す回路図。
【
図17】第4実施形態に係るメモリデバイスの構造の一例を示す斜視図。
【
図18】第4実施形態に係るメモリデバイスが備えるメモリセルアレイの平面レイアウトの一例を示す平面図。
【
図19】第4実施形態に係るメモリデバイスが備えるメモリセルアレイの断面構造の一例を示す断面図。
【
図20】第4実施形態に係るメモリデバイスが備えるメモリピラーの断面構造の一例を示す、
図19のXX-XX線に沿った断面図。
【
図21】第4実施形態に係るメモリデバイスの断面構造の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は、模式的又は概念的なものである。各図面の寸法や比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。構成の図示は、適宜省略されている。略同一の機能及び構成を有する構成要素には、同一の符号が付加されている。参照符号に付加された数字などは、同じ参照符号により参照され、且つ類似した要素同士を区別するために使用される。
【0008】
以下の説明では、互いに交差する2種類の水平方向のことを、それぞれ“X方向”及び“Y方向”と呼ぶ。以下の説明では、X方向とY方向とのそれぞれと平行な平面のことを、“XY平面”と呼ぶ。以下の説明では、水平に載置された基板などに対する垂直方向のことを、“Z方向”と呼ぶ。本明細書において、“上方”とは、水平に載置された層などの構成要素に対する垂直上方のことを意味する。本明細書において、“下方”とは、水平に載置された層などの構成要素に対する垂直下方のことを意味する。本明細書において、“平面視”とは、例えば、水平に載置された層などの構成要素を上方から視認ことを意味する。“視認”は、顕微鏡やカメラなどを用いて対象物を観察することを含む。
【0009】
本明細書における半導体装置は、それぞれに半導体回路が形成された2枚の半導体回路基板を接合し、接合された半導体回路基板をチップ毎に分離することにより形成される。以下では、半導体回路基板のことを“ウエハ”と呼ぶ。2枚のウエハを接合する処理のことを、“接合処理”と呼ぶ。接合処理を実行する装置のことを、“接合装置”と呼ぶ。接合処理の際に、上側及び下側に配置されるウエハのことを、それぞれ“上ウエハUW”及び“下ウエハLW”と呼ぶ。接合された上ウエハUW及び下ウエハLWの組のことを、“接合ウエハBW”と呼ぶ。“ウエハのおもて面”は、前工程により半導体回路が形成される側の面に対応する。“ウエハの裏面”は、ウエハのおもて面に対する反対側の面に対応する。
【0010】
<0>半導体装置の製造方法
図1は、半導体装置の製造方法の概要を示す概略図である。以下に、
図1を参照して、半導体装置の製造方法における大まかな処理の流れについて説明する。
【0011】
まず、ウエハがロットに割り当てられる(“ロット割当”)。ロットは、複数のウエハを含み得る。ロットは、例えば、上ウエハUWを含むロットと、下ウエハLWを含むロットとに分類される。各上ウエハUWは、1枚の下ウエハLWと関連付けられる。そして、上ウエハUWを含むロットと下ウエハLWを含むロットとのそれぞれに、前工程が実施される。前工程は、“露光処理”と“露光OL(オーバーレイ)計測”と“エッチング処理”との組み合わせを含む。
【0012】
露光処理は、マスク(レチクル)のパターンを、ショット単位でウエハ上のレジスト材料に転写する処理である。“ショット”は、露光処理における露光の区画領域に対応する。上ウエハUWのショットの配置と、下ウエハLWのショットの配置とは、同一に設定される。露光処理において、1ショットの露光は、位置をずらして繰り返し実行される。つまり、露光装置は、ステップアンドリピート方式によってウエハを露光する。その後、現像処理によってレジスト材料の一部が除去され、レジスト材料に所望のパターンが転写される。露光処理では、各ショットの配置や形状が、アライメントマークの計測結果や、様々な補正値などに基づいて補正される。これにより、下地のパターンと、露光処理により形成されるパターンとの重ね合わせ位置が調整(アライメント)される。
【0013】
露光OL計測は、下地のパターンと、露光処理によって形成されたレジスト材料のパターンとの重ね合わせのずれ量を計測する処理である。露光OL計測により得られた計測結果は、例えば、露光処理のリワーク判定や、後続のロットに適用されるアライメント補正値の算出などに使用される。
【0014】
エッチング処理は、露光処理により形成されたレジスト材料をマスクとして用いて、ウエハ上の部材を加工する処理である。エッチング処理によって、ウエハ上の部材が、レジスト材料のパターンに基づいた形状に加工される。層毎の回路パターンは、このような露光処理とエッチング処理との組み合わせによって形成され得る。
【0015】
なお、本明細書では説明を省略するが、前工程は、加熱工程、洗浄工程、成膜工程なども含み得る。そして、上ウエハUW及び下ウエハLWのそれぞれの前工程が実施されることによって、上ウエハUWと下ウエハLWとのそれぞれのおもて面に、所望の半導体回路が形成される(“前工程完了”)。その後、関連付けられた上ウエハUWと下ウエハLWとの組を用いて、接合処理が実行される。
【0016】
接合処理において、接合装置は、上ウエハUWのおもて面と下ウエハLWのおもて面とを向かい合わせて保持する。そして、接合装置は、上ウエハUWのおもて面に形成されたパターンと、下ウエハLWのおもて面に形成されたパターンとの重ね合わせ位置を、アライメントマークの計測結果に基づいて調整(アライメント)する。それから、接合装置は、上ウエハUWのおもて面と下ウエハLWのおもて面とを接触させる。これにより、上ウエハUWのおもて面と下ウエハLWのおもて面とが接合され、接合ウエハBWが形成される。その後、接合ウエハBWに対して、接合OL(オーバーレイ)計測が実行される。
【0017】
接合OL計測は、上ウエハUWの接合面に形成されたパターンと、下ウエハLWの接合面に形成されたパターンとの重ね合わせのずれ量を計測する処理である。“接合層”は、上ウエハUW及び下ウエハLWの境界部分と接する層に対応する。上ウエハUW及び下ウエハLWのそれぞれは、接合層を有している。接合OL計測により得られた計測結果は、後続のロットの露光処理に適用されるアライメント補正値の算出などに使用され得る。
【0018】
その後、接合ウエハBWに対して配線工程が実施され、接合ウエハBWに設けられた回路との外部接続に使用される配線やパッドが形成される。そして、接合ウエハBWがダイシング処理によってチップ毎に分離されることにより、1枚の接合ウエハBWから、複数の半導体装置が形成される。
【0019】
なお、本明細書において、アライメントは、露光装置基準におけるウエハの形状に対応する。重ね合わせのずれ量は、重ね合わせ元のパターンと重ね合わせ先のパターンとの間の位置ずれに対応する。すなわち、アライメントの計測結果に基づいた露光処理により補正できない成分が、重ね合わせずれとなる。以下では、重ね合わせ位置のアライメントで使用される補正値のことを、“アライメント補正値”と呼ぶ。アライメントの補正に多項式が使用される場合の、各項の係数のことを“アライメント補正係数”と呼ぶ。アライメント補正値は、各項のアライメント補正係数と、露光位置とに基づいて算出され得る。
【0020】
露光処理及び接合処理のそれぞれにおいて発生し得る重ね合わせのずれ量は、種々の成分の組み合わせによって表現され得る。例えば、重ね合わせ(アライメント)の計測結果は、多項式回帰によりK値毎に分解される。K値で表現される重ね合わせ成分は、オフセット(シフト)成分、倍率成分、及び直交度成分を含む。以下に、各成分に対応する数式を羅列する。なお、以下の数式において、“x”及び“y”は、それぞれX方向の座標(X座標)とY方向の座標(Y座標)とに対応する。“dx”及び“dy”は、それぞれX方向及びY方向の重ね合わせのずれ量に対応する。“K1”~“K6”のそれぞれは、アライメント補正係数(多項式回帰係数)に対応する。
【0021】
X方向のオフセット(シフト)成分:dx=K1
Y方向のオフセット(シフト)成分:dy=K2
X方向の倍率成分:dx=K3*x
Y方向の倍率成分:dy=K4*y
X方向の直交度成分:dx=K5*y
Y方向の直交度成分:dy=K6*x
【0022】
本例において、X方向の重ね合わせずれ量Exは、“Ex=K1+K3*x+K5*y”により算出される。Y方向の重ね合わせずれ量Eyは、“Ey=K2+K4*y+K6*x”により算出される。なお、重ね合わせ成分が多項式回帰により表現される場合、多項式回帰係数として、K1~K6だけでなく、さらに高次の重ね合わせ成分に割り当てられた係数が利用されてもよい。また、上述された重ね合わせのずれ量は、ショット単位と、ウエハの面内とのそれぞれにおいて算出され得る。以下では、ウエハの面内で発生する倍率成分の重ね合わせ成分のことを、“ウエハ倍率成分”とも呼ぶ。ウエハ倍率成分は、ウエハの大きさに対応している。ウエハ面内でランダムに発生する重ね合わせ成分のことを、“ランダム成分”と呼ぶ。
【0023】
図2は、半導体装置の製造工程で使用されるアライメントマークAMの配置の一例を示す模式図である。
図2の(A)は、露光処理時に計測されるウエハWF上の複数のアライメントマークAMの配置を例示している。
図2の(B)は、接合処理時に計測されるウエハWF上の複数のアライメントマークAMの配置を例示している。
【0024】
図2の(A)に示すように、露光処理時に、露光装置は、ウエハWF(すなわち、上ウエハUW又は下ウエハLW)に配置された多点のアライメントマークAMを計測する。アライメントマークAMの計測数は、3つ以上であることが好ましい。露光装置は、多点のアライメントマークAMの計測結果を直交座標系で関数近似することによって、X方向及びY方向のそれぞれのシフト成分、倍率成分、直交度成分などのアライメント補正値を算出し得る。また、露光装置は、多点のアライメントマークAMの計測結果に基づいて、ショット単位の重ね合わせと、ウエハの面内の重ね合わせとのそれぞれを補正できる。
【0025】
図2の(B)に示すように、接合処理時に、接合装置は、例えば、上ウエハUW及び下ウエハLWのそれぞれに配置された3点のアライメントマークAM_C、AM_L及びAM_Rを計測する。アライメントマークAM_Cは、ウエハの中心近傍に配置される。アライメントマークAM_L及びAM_Rは、それぞれウエハWFの外周の一方側と他方側とに配置される。接合装置は、上ウエハUW及び下ウエハLWのそれぞれのアライメントマークAM_C、AM_L及びAM_Rの計測結果に基づいて、シフト成分及び回転成分のアライメント補正値を算出し得る。なお、接合装置は、ウエハを保持するステージを変形させることによって、X方向及びY方向で共通のウエハ倍率成分を補正することもできる。
【0026】
図3は、接合OLで残存し得るウエハ面内の重ね合わせ成分に対する露光装置及び接合装置の補正性能の一例を示すテーブルである。
図3に示すように、シフト成分は、露光装置及び接合装置のいずれも補正できる。X方向及びY方向で共通のウエハ倍率成分(XY共通倍率成分)は、露光装置及び接合装置のいずれも補正できる。X方向及びY方向で差があるウエハ倍率成分(XY差倍率成分)は、露光装置において補正できる。一方で、XY差倍率成分は、接合装置において補正困難である。回転成分(すなわち、X方向及びY方向で共通の直交度成分)は、露光装置及び接合装置のいずれも補正できる。直交度成分は、露光装置において補正できる。一方で、直交度成分は、接合装置において補正困難である。ランダム成分は、露光装置においてショット単位で補正できる。一方で、ランダム成分は、接合装置において補正困難である。
【0027】
例えば、接合処理において、接合装置は、上ウエハUWと下ウエハLWとの重ね合わせのウエハ倍率成分(XY共通倍率成分)を、下ウエハLWを保持するステージを変形させて、下ウエハLWのウエハ倍率成分を大きくすることによって調整し得る。しかしながら、重ね合わせのランダム成分の傾向は、下ステージの変形量に合わせて変化する。このため、下ステージによるウエハ倍率成分の補正量に応じて、接合OLのランダム成分が悪化するおそれがある。一方で、接合面のパターン形成時の露光処理で上ウエハUW及び下ウエハLWのそれぞれのウエハ倍率成分を揃えることによって、接合OLを改善することも考えられる。しかしながら、接合面におけるウエハ倍率成分を合わせることは、基準とされる一方のウエハのウエハ倍率成分に合わせて接合面の露光処理が実行される他方のウエハにおいて、接合面のパターンとその下地のパターンとの重ね合わせを悪化させるおそれがある。
【0028】
<1>第1実施形態
第1実施形態は、接合処理におけるウエハ倍率成分の重ね合わせを改善し、且つ接合層とその下地との重ね合わせを改善することが可能な露光装置及び露光方法に関する。以下に、第1実施形態の詳細について説明する。
【0029】
<1-1>露光装置1の構成
第1実施形態に係る露光装置1は、塗布現像装置との間でウエハWFを受け渡しできるように構成される。“塗布現像装置”は、露光処理の前処理と後処理とを実行する装置である。露光処理の前処理は、ウエハにレジスト材料(感光材)を塗布する処理を含む。露光処理の後処理は、ウエハに露光されたパターンを現像する処理を含む。露光処理の前処理及び後処理で使用される装置として、複数の半導体製造装置が利用されてもよい。
【0030】
図4は、第1実施形態に係る露光装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、露光装置1は、例えば、制御装置11、記憶装置12、搬送装置13、通信装置14、及び露光ユニット15を含む。
【0031】
制御装置11は、露光装置1の全体の動作を制御するコンピュータなどである。制御装置11は、記憶装置12、搬送装置13、通信装置14、及び露光ユニット15のそれぞれを制御する。制御装置11は、図示が省略されているが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。CPUは、装置の制御に関する様々なプログラムを実行するプロセッサである。ROMは、装置の制御プログラムを記憶する不揮発性の記憶媒体である。RAMは、CPUの作業領域として使用される揮発性の記憶媒体である。
【0032】
記憶装置12は、データやプログラムなどの記憶に使用される記憶媒体である。記憶装置12は、例えば、露光レシピ21及び補正値情報22を記憶する。なお、記憶装置12は、露光装置1に外部接続されてもよい。
【0033】
露光レシピ21は、露光処理の設定が記録されたテーブルである。露光レシピ21は、露光工程毎に、ショットの形状及びレイアウトや、露光量(Dose)や、フォーカスの設定や、アライメントの設定などの情報を含む。アライメントの設定は、通常モード及び上下限補正モードの選択を含む。通常モードのアライメントでは、複数のアライメントマークAMの計測結果に基づいて、下地のパターンと露光処理のパターンとの重ね合わせが可能な範囲でゼロに近づくように調整される。上下限補正モードのアライメントでは、複数のアライメントマークAMの計測結果に基づいて、露光処理対象のウエハにおけるウエハ倍率成分が、上限値U_Limit及び/又は下限値L_Limitを考慮しつつ、可能な範囲で目標値W_Mag_TGに近づくように調整される。
【0034】
補正値情報22は、上下限補正モードが適用される工程における目標値W_Mag_TG、上限値U_Limit及び下限値L_Limitの情報を含む。目標値W_Mag_TGは、関連付けられた上ウエハUW及び下ウエハLWの組のうち、既に前工程が完了した一方のウエハのウエハ倍率成分の数値に対応する。例えば、前工程が完了した上ウエハUWのウエハ倍率成分が、目標値W_Mag_TGとして使用される。この場合、下ウエハLWの接合面に関連付けられた露光処理において、アライメント時のウエハ倍率成分のアライメント補正値が、上限値U_Limit及び/又は下限値L_Limitを考慮しつつ、上ウエハUWのウエハ倍率成分に近づくように調整される。
【0035】
上限値U_Limit及び下限値L_Limitは、ウエハ倍率成分を目標値W_Mag_TGに調整することが許容されるアライメント計測値の範囲を示している。上限値U_Limit及び下限値L_Limitは、下地のパターンと露光処理のパターンとの間で許容されるウエハ倍率成分の重ね合わせずれの管理スペックに基づいている。管理スペックは、“管理値”と言い換えられてもよい。上限値U_Limitは、目標値W_Mag_TGに対して、管理スペックの上限値(上限管理値)を加算した値に対応する。下限値L_Limitは、目標値W_Mag_TGに対して、管理スペックの下限値(下限管理値)を加算した値に対応する。なお、管理スペックの上限値は、正の数値であり、管理スペックの下限値は、負の数値である。例えば、管理スペックが±2ppmであり、且つ目標値W_Mag_TGが0.5ppmである場合、上限値U_Limitは2.5ppmに設定され、下限値L_Limitは-1.5ppmに設定される。なお、ppmは、百万部率(parts per million)を表している。例えば、露光装置による直径300mmのウエハに対するアライメント計測の結果、ウエハ倍率成分が1ppmであった場合、そのウエハの直径が露光装置の基準で300.0003mmであったことを示している。同様に、露光装置による直径300mmのウエハに対するアライメント計測の結果、ウエハ倍率成分が-1ppmであった場合、そのウエハの直径が露光装置の基準で299.9997mmであったことを示している。
【0036】
搬送装置13は、ウエハWFを搬送することが可能な搬送アームや、複数のウエハを一時的に載置するためのトランジションなどを備える装置である。例えば、搬送装置13は、外部の塗布現像装置から受け取ったウエハWFを、露光ユニット15に搬送する。また、搬送装置13は、露光処理後に、露光ユニット15から受け取ったウエハWFを、外部の塗布現像装置に搬送する。
【0037】
通信装置14は、図示が省略されたネットワークに接続可能な通信インターフェースである。露光装置1は、ネットワーク上の端末による操作に基づいて動作してもよい。露光レシピ21及び補正値情報22は、ネットワーク上のサーバーに記憶されてもよい。
【0038】
露光ユニット15は、露光処理で使用される構成の集合である。露光ユニット15は、例えば、ウエハステージ31、レチクルステージ32、光源33、投影光学系34、及びカメラ35を含む。ウエハステージ31は、ウエハWFを保持する機能を有する。レチクルステージ32は、レチクルRT(マスク)を保持する機能を有する。ウエハステージ31とレチクルステージ32とのそれぞれのステージ位置は、制御装置11により制御され得る。光源33は、生成した光をレチクルRTに照射する。投影光学系34は、レチクルRTを透過した光を、ウエハWFの表面に集める。カメラ35は、アライメントマークAMの計測に使用される撮影機構である。なお、ウエハWFには、レチクルRTを反射した光が照射されてもよい。この場合、投影光学系は、複数のミラーを有する。
【0039】
<1-2>露光方法
図5は、第1実施形態に係る露光装置1の露光方法の一例を示すフローチャートである。以下に、
図5を参照して、第1実施形態に係る露光装置1の露光方法として、上下限補正モードが有効である露光工程の露光処理が実行される場合について説明する。
【0040】
露光装置1は、塗布現像装置からウエハWFの前処理が完了したことが通知されると、露光処理を開始する(開始)。
【0041】
まず、露光装置1は、ウエハWFをロードする(S101)。ロードされたウエハWFは、ウエハステージ31によって保持される。
【0042】
次に、露光装置1は、露光レシピ21を確認する(S102)。具体的には、制御装置11が、ロードされたウエハWFに適用する処理条件を、露光レシピ21に基づいて決定する。処理条件は、例えば、ショットの形状及びレイアウトや、露光量(Dose)や、フォーカスの設定や、アライメントの設定を含む。本例では、上下限補正モードのアライメントが有効である処理条件が読み出される。
【0043】
次に、露光装置1は、補正値情報22を確認する(S103)。具体的には、制御装置11は、上下限補正モードにおけるアライメントの詳細な設定、すなわち当該露光工程における、目標値W_Mag_TGと、上限値U_Limitと、下限値L_Limitとを取得する。
【0044】
次に、露光装置1は、アライメントマークAMを計測する(S104)。具体的には、ウエハステージ31が適宜移動して、カメラ35がウエハWF上の所定の位置に配置された複数のアライメントマークAMを撮影する。例えば、少なくとも3つ以上のアライメントマークAMを撮影する。S104の処理において撮影対象とされるアライメントマークAMの位置は、露光レシピ21に基づいて決定される。
【0045】
次に、露光装置1は、下地のウエハ倍率成分W_Mag_Bを算出する(S105)。具体的には、制御装置11が、複数のアライメントマークAMの計測結果を直交座標系で関数近似することによって、下地のウエハ倍率成分W_Mag_Bを算出する。ウエハ倍率成分W_Mag_Bの値は、プロセスばらつきに応じてウエハWF毎に変わり得る。
【0046】
次に、露光装置1は、ウエハ倍率成分W_Mag_Bの値を確認する(S106)。
【0047】
ウエハ倍率成分W_Mag_Bの値が下限値L_Limit未満である場合(S106:L_Limit未満)、露光装置1は、ウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG+ウエハ倍率成分W_Mag_B-下限値L_Limit”に設定して(S107)、S110の処理に進む。
【0048】
ウエハ倍率成分W_Mag_Bの値が下限値L_Limit以上上限値U_Limit以下の範囲内である場合(S106:L_Limit以上U_Limit以下の範囲内)、露光装置1は、ウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG”に設定して(S108)、S110の処理に進む。
【0049】
ウエハ倍率成分W_Mag_Bの値が上限値U_Limit超である場合(S106:L_Limit超)、露光装置1は、ウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG+ウエハ倍率成分W_Mag_B-上限値U_Limit”に設定して(S109)、S110の処理に進む。
【0050】
S110の処理において、露光装置1は、露光シーケンスを実行する(S110)。具体的には、制御装置11は、S107、S108及びS109のいずれかの処理で決定されたウエハ倍率成分のアライメント補正値に基づいてウエハステージ31を制御するとともに、光源33を用いて、レチクルRTを透過した光を適宜ウエハWFに照射する。
【0051】
S110の処理が完了すると、露光装置1は、ウエハWFをアンロードする(S111)。露光装置1は、ウエハWFがアンロードされると、露光処理を終了する(終了)。
【0052】
図6は、第1実施形態に係る露光装置1の露光処理による重ね合わせ結果の一例を示す模式図である。
図6には、例えば、下ウエハLWのウエハ倍率成分(2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの5条件)に応じた下地のショット形状と、“補正有り”の場合と“補正無し”の場合と“上下限補正”の場合との3条件における露光処理のショット形状とが示されている。また、本例において、上限値U_Limitは1ppmとし、下限値L_Limitは-1ppmとし、目標値W_Mag_TGは0ppmとする。
【0053】
“補正有り”は、通常モードのアライメントが適用された場合の露光処理の結果に対応する。下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmである場合、露光処理におけるウエハ倍率成分のアライメント補正値は、下地のウエハのアライメント計測値に基づいて、2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmにそれぞれ設定される。これにより、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの場合のそれぞれの下地に対する露光パターンの重ね合わせ(露光OL)ずれが、0ppmとなる。従って、補正有りの場合の露光処理は、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmのいずれの場合においても、下地パターンと露光パターンとのウエハ倍率成分の重ね合わせ(露光OL)ずれを管理スペック内に収めることができる(
図6の“OK”)。
【0054】
“補正無し”は、アライメント計測値に基づくウエハ倍率成分の補正が適用されない場合の露光処理の結果に対応する。つまり、露光処理におけるウエハ倍率成分のアライメント補正値は、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmのいずれである場合も、予め設定されたアライメント補正値に基づいて、例えば、0ppmに設定される。この予め設定されるアライメント補正値は、例えば、上ウエハUWのウエハ倍率成分の数値に基づいて設定される。すなわち、本例では、上ウエハUWのウエハ倍率成分の数値が、0ppmである。この場合、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの場合の、下地に対する露光パターンの重ね合わせ(露光OL)ずれは、それぞれ-2ppm、-1ppm、0ppm、1ppm、及び2ppmとなる。従って、補正無しの場合の露光処理は、下地のウエハ倍率成分が1ppm、0ppm、及び-1ppmの場合において、下地パターンと露光パターンとのウエハ倍率成分の重ね合わせずれを管理スペック内に収めることができる(
図6の“OK”)。一方で、補正無しの場合の露光処理は、下地のウエハ倍率成分が2ppm及び-2ppmの場合において、下地パターンと露光パターンとのウエハ倍率成分の重ね合わせずれを管理スペック内に収めることができない(
図6の“NG”)。
【0055】
“上下限補正”は、上下限補正モードのアライメントが適用された場合の露光処理の結果に対応する。下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmである場合、露光処理におけるウエハ倍率成分のアライメント補正値は、1ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-1ppmにそれぞれ設定される。具体的には、下地のウエハ倍率成分が-1ppm以上1ppm以下の範囲内にある場合、目標値W_Mag_TGに基づいて、露光処理時のウエハ倍率成分のアライメント補正値が0ppmに設定される。一方で、下地のウエハ倍率成分が2ppmである場合、上限値U_Limitに基づいて、露光処理時のウエハ倍率成分のアライメント補正値が0ppm(目標値W_Mag_TG)+2ppm(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-1ppm(上限値U_Limit)=1ppmに設定される。同様に、下地のウエハ倍率成分が-2ppmである場合、下限値L_Limitに基づいて、露光処理時のウエハ倍率成分のアライメント補正値が0ppm(目標値W_Mag_TG)+(-2ppm)(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-(-1ppm)(上限値U_Limit)=-1ppmに設定される。これにより、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの場合のそれぞれに対する露光パターンの重ね合わせ(露光OL)ずれが、それぞれ-1ppm、-1ppm、0ppm、1ppm、及び1ppmとなる。従って、上下限補正の場合の露光処理は、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmのいずれの場合においても、下地パターンと露光パターンとのウエハ倍率成分の重ね合わせずれを管理スペック内に収めることができる(
図6の“OK”)。
【0056】
図7は、第1実施形態に係る露光装置1の露光処理によるウエハ倍率成分のアライメント補正値の一例を示すデーブルである。
図7は、10枚のウエハWFに対して上下限補正モードのアライメントが適用された露光処理が実行された結果の一例を示し、これらの結果に対するアライメント計測値(下地のウエハ倍率成分W_Mag_B)と、適用されたウエハ倍率成分のアライメント補正値と、重ね合わせずれ予測値とを示している。本例において、上限値U_Limitは2ppmとし、下限値L_Limitは-2ppmとし、目標値W_Mag_TGは0.5ppmとする。
【0057】
図7に示すように、10枚のウエハ(No.1~No.10)のアライメント計測値は、それぞれ2.3ppm、-1.1ppm、1.2ppm、3.2ppm、1.6ppm、0.5ppm、-1.4ppm、-2.3ppm、-0.3ppm、1.5ppmである。本例では、No.4のウエハが上限値U_Limitを超過しており(上限NG)、No.8のウエハが下限値L_Limitを下回っている(下限NG)。
【0058】
この場合、No.4のウエハに適用されたウエハ倍率成分のアライメント補正値は、S109の処理に基づいて、0.5ppm(目標値W_Mag_TG)+3.2ppm(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-2.5ppm(上限値U_Limit)=1.2ppmに設定される。No.8のウエハに適用されたウエハ倍率成分のアライメント補正値は、S107の処理に基づいて、0.5ppm(目標値W_Mag_TG)+(-2.3ppm)(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-(-1.5ppm)(下限値L_Limit)=-0.3ppmに設定される。No.4及びNo.7以外のウエハに適用されたウエハ倍率成分のアライメント補正値は、S108の処理に基づいて、0.5ppmに設定される。
【0059】
以上で説明されたウエハ倍率成分の補正が適用されることによる、No.1~No.10のウエハの重ね合わせずれ予測値は、それぞれ-1.8ppm、1.6ppm、-0.7ppm、-2.0ppm、-1.1ppm、0ppm、1.9ppm、2.0ppm、0.8ppm、-1.0ppmである。このように、No.1~No.10のウエハのそれぞれの重ね合わせずれ予測値は、管理スペック内に収まっている。すなわち、No.1~No.10のウエハのそれぞれのウエハ倍率成分は、下地に対する重ね合わせずれが管理スペック内に調整された上で、目標値W_Mag_TGに可能な限り近い値に調整されている。
【0060】
図8は、第1実施形態に係る露光装置1の露光処理後のウエハ倍率成分の分布の一例を示す散布図である。
図8は、
図7に示された10枚のウエハWFに対して、通常モードのアライメントが適用された場合のウエハ倍率成分の分布と、上下限補正モードのアライメントが適用された場合のウエハ倍率成分の分布とを示している。
図8に示すように通常モードのアライメントが適用された場合のウエハ倍率成分の3σは、5.3ppmとなる。一方で、上下限補正モードが適用された場合のウエハ倍率成分の3σは、1.1ppmとなる。このように、上下限補正モードが適用された場合のウエハ倍率成分のばらつきは、通常モードのアライメントが適用された場合のウエハ倍率成分のばらつきよりも小さくなっている。
【0061】
<1-3>第1実施形態の効果
第1実施形態に係る露光装置1は、接合層の露光処理において、下地のウエハ倍率成分W_Mag_Bと、目標値W_Mag_TGと、上限値U_Limitと、下限値L_Limitとに基づいたアライメントを実行する。具体的には、接合層のウエハ倍率成分は、ウエハ倍率成分W_Mag_Bが下限値L_Limit以上上限値U_Limit以下の範囲内にある場合に、目標値W_Mag_TGに補正される。さらに、接合層のウエハ倍率成分は、ウエハ倍率成分W_Mag_Bが上限値U_Limit以上下限値L_Limit以下の範囲外である場合に、下地のパターンと露光処理のパターンとの間の重ね合わせの管理スペック内で目標値W_Mag_TGに近づくように補正される。
【0062】
これにより、第1実施形態に係る露光装置1は、接合層とその下地との間の重ね合わせを歩留まりへの影響が小さい範囲で補正し、且つ接合層におけるウエハ倍率成分のばらつきを抑制することができる。接合処理におけるウエハ倍率成分の補正量を略一定に調整することは、ウエハ倍率成分のばらつきに基づくランダム成分の悪化を抑制することができる。従って、第1実施形態に係る露光装置1は、接合層とその下地との重ね合わせと、接合処理における上ウエハUW及び下ウエハLWの重ね合わせとの双方を改善することができ、半導体装置の歩留まりを改善することができる。
【0063】
なお、露光処理におけるアライメントは、通常、下地のパターンと露光処理のパターンとの重ね合わせずれを極力ゼロに追い込む、すなわち倍率成分の算出値に合わせるように設定される。また、ウエハ倍率成分の目標値W_Mag_TGが設定された場合には、ウエハ倍率成分のアライメント補正値を目標値W_Mag_TGに設定することが想定される。これに対して、第1実施形態の露光方法における倍率成分のアライメント補正値は、目標値W_Mag_TGと算出値(ウエハ倍率成分W_Mag_B)とのいずれの値とも異なり得る。
【0064】
第1実施形態における倍率成分のアライメント補正値は、少なくとも、重ね合わせずれの管理スペックに応じて、ウエハ倍率成分の算出値(ウエハ倍率成分W_Mag_B)が下限値L_Limit以上上限値U_Limit以下の範囲内である場合に第1補正値(目標値W_Mag_TG)に設定され、ウエハ倍率成分W_Mag_Bが下限値L_Limit未満である場合にウエハ倍率成分W_Mag_Bよりも大きく且つ目標値W_Mag_TGよりも小さい第2補正値に設定され、ウエハ倍率成分W_Mag_Bが上限値U_Limit超である場合に目標値W_Mag_TGよりも大きく且つウエハ倍率成分W_Mag_Bよりも小さい第3補正値に設定されていればよい。第2補正値は、第1補正値に算出値を加算しさらに下限値L_Limitを減算した値であることがより好ましい。第3補正値は、第1補正値に算出値を加算し、さらに前記第2値を減算した値であることがより好ましい。
【0065】
<2>第2実施形態
第2実施形態は、第1実施形態で説明された露光方法を接合層の近傍の複数層に適用し、目標値に対するウエハ倍率成分のばらつきを段階的に抑制する半導体装置の製造方法に関する。以下に、第2実施形態の詳細について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0066】
<2-1>半導体装置の製造方法
図9は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下に、
図9を参照して、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法として、上下限補正モードを利用した露光処理が、所定のウエハWFに対する3つの露光工程において実行される場合について説明する。
【0067】
まず、第1層に関連付けられた露光工程において、上下限補正モードを用いた露光処理が実行される(S201)。次に、第2層に関連付けられた露光工程において、上下限補正モードを用いた露光処理が実行される(S202)。次に、第3層(接合層)に関連付けられた露光工程において、上下限補正モードを用いた露光処理が実行される(S203)。そして、S201~S203のそれぞれの処理が実行されたウエハWFを用いて、接合処理が実行される(S204)。なお、S201~S203のそれぞれにおけるアライメント補正値の算出の際には、組み合わされるウエハWFが同じであるため、同じウエハ倍率成分の目標値W_Mag_TGが利用される。一方で、ウエハ倍率成分の上限値U_Limit及び下限値L_Limitは、露光工程毎に個別に設定され得る。
【0068】
図10は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法によるウエハ倍率成分の分布の変化の一例を示す箱ひげ図である。
図10は、所定のロットにおいて第1層~第3層のそれぞれで
図9で説明されたように上下限補正モードのアライメントが適用された露光処理が実行された場合のウエハ倍率成分のばらつきの変化を示している。なお、本例において、目標値W_Mag_TGは、0ppmである。
【0069】
図10に示すように、第1層の下地におけるウエハ倍率成分のばらつき(3σ)は、3.0ppmである(計測(1))。
【0070】
第1層では、ウエハ倍率成分のずれの許容値(管理スペック)が±1.0ppmである。第1層の露光処理は、この数値に基づいて設定された上限値U_Limit及び下限値L_Limitを用いて実行される(露光(1))。その結果、第1層におけるウエハ倍率成分のばらつき(3σ)は、1ppm改善し、2.0ppmとなる(計測(2))。
【0071】
第2層では、ウエハ倍率成分のずれの許容値(管理スペック)が±0.4ppmである。第2層の露光処理は、この数値に基づいて設定された上限値U_Limit及び下限値L_Limitを用いて実行される(露光(2))。その結果、第2層におけるウエハ倍率成分のばらつき(3σ)は、0.4ppm改善し、1.6ppmとなる(計測(3))。
【0072】
第3層では、ウエハ倍率成分のずれの許容値(管理スペック)が±0.5ppmである。第3層の露光処理は、この数値に基づいて設定された上限値U_Limit及び下限値L_Limitを用いて実行される(露光(3))。その結果、第3層におけるウエハ倍率成分のばらつき(3σ)は、0.5ppm改善し、1.1ppmとなる(計測(3))。
【0073】
<2-2>第2実施形態の効果
以上のように、第1実施形態で説明された上下限補正モードのアライメントは、接合層以外の層に使用されてもよいし、複数の工程で使用されてもよい。そして、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法は、複数の工程で上下限補正モードが適用されたアライメントを実行することによって、ウエハ倍率成分を段階的に目標値近傍まで到達させる。
【0074】
その結果、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法は、接合層とその下地との重ね合わせの補正量を小さくすることができ、接合層のみに上下限補正モードのアライメントを適用する場合よりも接合層とその下地との重ね合わせを改善することができる。また、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1実施形態と同様に、接合処理におけるランダム成分の悪化を抑制することができる。従って、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体装置の歩留まりを改善することができる。
【0075】
<3>第3実施形態
第3実施形態では、露光装置1が、X方向とY方向とで独立にウエハ倍率成分の上限値U_Limit及び下限値L_Limitが設定可能に構成される。そして、X方向とY方向とのそれぞれの重ね合わせマージンに応じて、X方向とY方向とのそれぞれの上限値U_Limit及び下限値L_Limitが設定され、目標値に対するウエハ倍率成分のばらつきが段階的に抑制される。以下に、第3実施形態の詳細について、第1及び第2実施形態と異なる点を主に説明する。
【0076】
<3-1>露光方法
図11は、第3実施形態に係る露光装置の露光方法の一例を示すフローチャートである。以下に、
図11を参照して、第3実施形態に係る露光装置1の露光方法として、上下限補正モードが有効である露光工程の露光処理が実行される場合について説明する。
【0077】
露光装置1は、塗布現像装置からウエハWFの前処理が完了したことが通知されると、露光処理を開始する(開始)。
【0078】
まず、露光装置1は、第1実施形態と同様に、S101~S104の処理を実行する。つまり、露光装置1は、ウエハWFをロードする(S101)。そして、露光装置1は、露光レシピ21を確認し(S102)、補正値情報22を確認する(S103)。それから、露光装置1は、アライメントマークAMを計測する(S104)。
【0079】
次に、露光装置1は、下地のウエハ倍率成分W_Mag_BX及びW_Mag_BYを算出する(S302)。具体的には、制御装置11が、複数のアライメントマークAMの計測結果を直交座標系で関数近似することによって、下地のX方向のウエハ倍率成分(W_MagBX)と、下地のY方向のウエハ倍率成分(W_MagBY)とを算出する。
【0080】
次に、露光装置1は、ウエハ倍率成分W_Mag_BX、目標値W_Mag_TG、下限値L_Limit_X、及び上限値U_Limit_Xに基づいて、X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を設定する(S302)。具体的には、露光装置1は、X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値の算出に、
図5のS106~S109と同様の処理を実行する。上限値U_Limit_Xは、当該露光工程におけるX方向のウエハ倍率成分の上限管理値に基づいた値である。下限値L_Limit_Xは、当該露光工程におけるX方向のウエハ倍率成分の下限管理値に基づいた値である。例えば、W_MagBXの値が下限値L_Limit_X未満である場合、露光装置1は、X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG+ウエハ倍率成分W_Mag_BX-下限値L_Limit_X”に設定する。W_MagBXの値が下限値L_Limit_X以上上限値U_Limit_X以下の範囲内である場合、露光装置1は、X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG”に設定する。W_MagBXの値が上限値U_Limit_X超である場合、露光装置1は、X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG+ウエハ倍率成分W_Mag_BX-上限値U_Limit_X”に設定する。
【0081】
次に、露光装置1は、ウエハ倍率成分W_Mag_BY、目標値W_Mag_TG、下限値L_Limit_Y、及びU_Limit_Yに基づいて、Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を設定する(S303)。具体的には、露光装置1は、Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値の算出に、
図5のS106~S109と同様の処理を実行する。上限値U_Limit_Yは、当該露光工程におけるY方向のウエハ倍率成分の上限管理値に基づいた値である。下限値L_Limit_Yは、当該露光工程におけるY方向のウエハ倍率成分の下限管理値に基づいた値である。上限値U_Limit_Yは、上限値U_Limit_Xと同じであってもよいし、異なっていてもよい。下限値L_Limit_Yは、下限値L_Limit_Xと同じであってもよいし、異なっていても良い。例えば、W_MagBYの値が下限値L_Limit_Y未満である場合、露光装置1は、Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG+ウエハ倍率成分W_Mag_BY-下限値L_Limit_Y”に設定する。W_MagBYの値が下限値L_Limit_Y以上上限値U_Limit_Y以下の範囲内である場合、露光装置1は、Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG”に設定する。W_MagBYの値が上限値U_Limit_Y超である場合、露光装置1は、Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値を“目標値W_Mag_TG+ウエハ倍率成分W_Mag_BY-上限値U_Limit_Y”に設定する。
【0082】
次に、露光装置1は、第1実施形態と同様に、露光シーケンスを実行する(S110)。具体的には、制御装置11は、S302及びS303の処理で決定されたウエハ倍率成分のアライメント補正値に基づいてウエハステージ31を制御するとともに、光源33を用いて、レチクルRTを透過した光を適宜ウエハWFに照射する。
【0083】
S110の処理が完了すると、露光装置1は、ウエハWFをアンロードする(S111)。露光装置1は、ウエハWFがアンロードされると、露光処理を終了する(終了)。
【0084】
なお、S302及びS303の処理において、下地のウエハ倍率成分の値として、X方向及びY方向のウエハ倍率成分の共通成分(ウエハ倍率成分W_Mag_B)が使用されてもよい。X方向及びY方向のうち一方のウエハ倍率成分のアライメント補正値の算出に上下限補正モードが適用され、他方のウエハ倍率成分のアライメント補正値の算出に通常モードが適用されてもよい。この場合、S302及びS303のうち一方の処理が省略される。また、上下限補正モードにおいて、管理スペックの上限値及び下限値のそれぞれが略ゼロである場合のアライメントは、通常モードと同様である。つまり、露光装置1は、上下限補正モードにおいて、X方向及びY方向のうち一方の管理スペックの上限値及び下限値を略ゼロに設定し、X方向及びY方向のうち他方の管理スペックの上限値及び下限値を適宜設定することによって、実質的に一方向に対してのみ上下限補正モードを適用したアライメントを実行することができる。
【0085】
図12は、第3実施形態に係る露光装置の露光処理による重ね合わせ結果の一例を示す模式図である。
図12には、ウエハ倍率成分(2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの5条件)に応じた下地のショット形状と、“X通常/Y上下限補正”の場合と“X上下限補正/Y通常”の場合と“X/Y上下限補正”の場合との3条件における露光処理のショット形状とが示されている。また、本例において、上限値U_Limit_X及びU_Limit_Yは1ppmとし、下限値L_Limit_X及びL_Limit_Yは-1ppmとし、目標値W_Mag_TGは0ppmとする。以下では、露光処理におけるX方向/Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値のことを、“補正値X/Y”と呼ぶ。また、露光パターンのX方向/Y方向の重ね合わせずれのことを、“OLずれX/Y”と呼ぶ。
【0086】
“X通常/Y上下限補正”は、X方向において通常モードのアライメントが適用され、Y方向において上下限補正モードのアライメントが適用された場合の露光処理の結果に対応する。下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmである場合、補正値X/Yは、2/1ppm、1/0ppm、0/0ppm、-1/0ppm、及び-2/-1ppmにそれぞれ設定される。
【0087】
具体的には、X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は、通常モードのアライメントが適用されていることに基づいて、下地のX方向のウエハ倍率成分と同じ値に設定される。一方で、Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は、下地のY方向のウエハ倍率成分が-1ppm以上1ppm以下の範囲内である場合、目標値W_Mag_TGに基づいて、0ppmに設定される。Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は下地のY方向のウエハ倍率が2ppmである場合、上限値U_Limit_Y超であることに基づいて、0ppm(目標値W_Mag_TG)+2ppm(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-1ppm(上限値U_Limit_Y)=1ppmに設定される。Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は、下地のウエハ倍率成分が-2ppmである場合、下限値L_Limit_Y未満であることに基づいて、0ppm(目標値W_Mag_TG)+(-2ppm)(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-(-1ppm)(上限値U_Limit_Y)=-1ppmに設定される。その結果、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの場合のそれぞれに対するOLずれX/Yは、それぞれ0/-1ppm、0/-1ppm、0/0ppm、0/1ppm、及び0/1ppmとなる。従って、X通常/Y上下限補正の場合の露光処理は、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmのいずれの場合においても、下地パターンと露光パターンとのウエハ倍率成分の重ね合わせずれを管理スペック内に収めることができる。
【0088】
“X上下限補正/Y通常”は、X方向において上下限補正モードのアライメントが適用され、Y方向において通常モードのアライメントが適用された場合の露光処理の結果に対応する。下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmである場合、補正値X/Yは、1/2ppm、0/1ppm、0/0ppm、0/-1ppm、及び-1/-2ppmにそれぞれ設定される。
【0089】
具体的には、Y方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は、通常モードのアライメントが適用されていることに基づいて、下地のY方向のウエハ倍率成分と同じ値に設定される。一方で、X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は、下地のX方向のウエハ倍率成分が-1ppm以上1ppm以下の範囲内である場合、目標値W_Mag_TGに基づいて、0ppmに設定される。X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は、下地のX方向のウエハ倍率成分が2ppmである場合、上限値U_Limit_Xに基づいて、0ppm(目標値W_Mag_TG)+2ppm(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-1ppm(上限値U_Limit_X)=1ppmに設定される。X方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値は、下地のウエハ倍率成分が-2ppmである場合、下限値L_Limit_Xに基づいて、0ppm(目標値W_Mag_TG)+(-2ppm)(ウエハ倍率成分W_Mag_B)-(-1ppm)(上限値U_Limit_X)=-1ppmに設定される。その結果、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの場合のそれぞれに対するOLずれX/Yは、それぞれ-1/0ppm、-1/0ppm、0/0ppm、1/0ppm、及び1/0ppmとなる。従って、X上下限補正/Y通常の場合の露光処理は、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmのいずれの場合においても、下地パターンと露光パターンとのウエハ倍率成分の重ね合わせずれを管理スペック内に収めることができる。
【0090】
“X/Y上下限補正”は、X方向とY方向とのそれぞれにおいて上下限補正モードのアライメントが適用された場合の露光処理の結果に対応する。下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmである場合、補正値X/Yは、1/1ppm、0/0ppm、0/0ppm、0/0ppm、及び-1/-1ppmにそれぞれ設定される。すなわち、X/Y上下限補正が使用するウエハ倍率成分のアライメント補正値は、X通常/Y上下限補正の場合におけるY方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値と、X上下限補正/Y通常の場合におけるX方向のウエハ倍率成分のアライメント補正値とを組み合わせたものと同様である。その結果、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmの場合のそれぞれに対するOLずれX/Yは、それぞれ-1/-1ppm、-1/-1ppm、0/0ppm、1/1ppm、及び1/1ppmとなる。従って、X/Y上下限補正の場合の露光処理は、下地のウエハ倍率成分が2ppm、1ppm、0ppm、-1ppm、及び-2ppmのいずれの場合においても、下地パターンと露光パターンとのウエハ倍率成分の重ね合わせずれを管理スペック内に収めることができる。
【0091】
<3-2>半導体装置の製造方法
図13は、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下に、
図13を参照して、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法として、2つの方向で通常モードと上下限補正モードを使い分けることが可能な露光処理が、所定のウエハWFに対する3つの露光工程において実行される場合について説明する。
【0092】
まず、第1層に関連付けられた露光工程において、第1方向(例えば、X方向)のウエハ倍率成分が通常モードにより設定され、且つ第2方向(例えば、Y方向)のウエハ倍率成分が上下限補正モードにより設定された露光処理が実行される(S311)。次に、第2層に関連付けられた露光工程において、第2方向(例えば、Y方向)のウエハ倍率成分が通常モードにより設定され、且つ第1方向(例えば、X方向)のウエハ倍率成分が上下限補正モードにより設定された露光処理が実行される(S312)。次に、第3層(接合層)に関連付けられた露光工程において、第1方向及び第2方向のそれぞれのウエハ倍率成分が上下限補正モードにより設定された露光処理が実行される(S313)。そして、S311~S313のそれぞれの処理が実行されたウエハWFを用いて、接合処理が実行される(S314)。なお、S311~S313のそれぞれにおけるアライメント補正値の算出の際には、組み合わされるウエハWFが同じであるため、同じウエハ倍率成分の目標値W_Mag_TGが利用される。一方で、第1方向及び第2方向のそれぞれにおけるウエハ倍率成分の上限値U_Limit及び下限値L_Limitは、露光工程毎に個別に設定され得る。
【0093】
図14は、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法によるウエハ倍率成分の分布の変化の一例を示す箱ひげ図である。
図14は、所定のロットにおいて第1層~第3層のそれぞれで
図13で説明されたように上下限補正モードのアライメントが適用された露光処理が実行された場合のX方向のウエハ倍率成分(W_Mag_X)とY方向のウエハ倍率成分(W_Mag_Y)とのそれぞれのばらつきの変化を示している。なお、本例において、目標値W_Mag_TGは、0ppmである。
【0094】
図14に示すように、第1層の下地において、X方向のウエハ倍率成分のばらつき(3σ)は3.0ppmであり、Y方向のウエハ倍率成分のばらつき(3σ)は3.0ppmである(計測(1))。つまり、ウエハ倍率成分ばらつき3σX/Yは、3.0/3.0ppmである。
【0095】
第1層では、X方向のウエハ倍率成分のずれの許容値(管理スペック)が±1.5ppmである一方で、Y方向で高精度な重ね合わせが要求されている。このため、第1層の露光処理では、管理スペックに基づいて、X方向において上下限補正モードが適用され、Y方向において通常モードが適用されたアライメントが実行される(露光(1))。その結果、第1層の露光処理では、X方向のウエハ倍率成分のばらつき(3σ)のみ、1.5ppm改善する。その結果、第1層の処理後のウエハ倍率成分ばらつき3σX/Yは、1.5/3.0ppmとなる(計測(2))。
【0096】
第2層では、Y方向のウエハ倍率成分のずれの許容値(管理スペック)が±1.5ppmである一方で、X方向で高精度な重ね合わせが要求されている。このため、第2層の露光処理では、管理スペックに基づいて、Y方向において上下限補正モードが適用され、X方向において通常モードが適用されたアライメントが実行される(露光(2))。その結果、第2層の露光処理では、Y方向のウエハ倍率成分のばらつき(3σ)のみ、1.5ppm改善する。その結果、第2層の処理後のウエハ倍率成分ばらつき3σX/Yは、1.5/1.5ppmとなる(計測(3))。
【0097】
第3層では、X方向及びY方向のそれぞれのウエハ倍率成分のずれの許容値(管理スペック)が±0.5ppmである。このため、第3層の露光処理では、管理スペックに基づいて、X方向及びY方向のそれぞれにおいて上下限補正モードが適用される(露光(3))。その結果、第3層の露光処理では、X方向及びY方向のそれぞれのウエハ倍率成分のばらつき(3σ)が、0.5ppm改善する。その結果、第3層の処理後のウエハ倍率成分ばらつき3σX/Yは、1.0/1.0ppmとなる(計測(4))。
【0098】
なお、本例では、高精度な重ね合わせが要求された方向において、通常モードのアライメントが適用された場合について説明したが、これに限定されない。高精度な重ね合わせが要求された方向において、上下限補正モードのアライメントが適用されてもよい。この場合、高精度な重ね合わせが要求された方向における管理スペックは、ゼロ、若しくは可能な範囲で小さい値に設定される。
【0099】
<3-3>第3実施形態の効果
以上のように、第1実施形態で説明された上下限補正モードのアライメントには、X方向とY方向とのそれぞれに個別に上限値及び下限値が設けられてもよい。そして、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法は、X方向の重ね合わせの管理スペックとY方向の重ね合わせの管理スペックとに基づいて、管理スペックに余裕がある方向に上下限補正モードのアライメントを適用する。そして、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第2実施形態と同様に、ウエハ倍率成分を段階的に目標値近傍まで到達させる。
【0100】
その結果、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第2実施形態と同様に、接合層とその下地との重ね合わせの補正量を小さくすることができ、接合層のみに上下限補正モードのアライメントを適用する場合よりも接合層とその下地との重ね合わせを改善することができる。また、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1実施形態と同様に、接合処理におけるランダム成分の悪化を抑制することができる。従って、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体装置の歩留まりを改善することができる。
【0101】
<4>第4実施形態
第4実施形態は、上記実施形態で説明された露光方法を利用して製造される半導体装置の具体例に関する。以下に、半導体装置の具体例として、接合構造を有するメモリデバイスについて説明する。
【0102】
<4-1>メモリデバイス100の全体構成
図15は、第4実施形態に係るメモリデバイス100の全体構成の一例を示すブロック図である。
図15に示すように、メモリデバイス100は、例えば、メモリインターフェース(メモリI/F)101、シーケンサ102、メモリセルアレイ103、ドライバモジュール104、ロウデコーダモジュール105、及びセンスアンプモジュール106を含む。
【0103】
メモリI/F101は、チャネルCHを介して外部のメモリコントローラと接続されるハードウェアインターフェースである。メモリI/F101は、メモリデバイス100とメモリコントローラとの間のインターフェース規格に従った通信を行う。メモリI/F101は、例えば、NANDインターフェース規格をサポートする。
【0104】
シーケンサ102は、メモリデバイス100の全体の動作を制御する制御回路である。シーケンサ102は、メモリI/F101を介して受信したコマンドに基づいてドライバモジュール104、ロウデコーダモジュール105、及びセンスアンプモジュール106などを制御して、読み出し動作、書き込み動作、消去動作などを実行する。
【0105】
メモリセルアレイ103は、複数のメモリセルの集合を含む記憶回路である。メモリセルアレイ103は、複数のブロックBLK0~BLKn(nは1以上の整数)を含む。ブロックBLKは、例えば、データの消去単位として使用される。メモリセルアレイ103には、複数のビット線及び複数のワード線が設けられる。各メモリセルは、例えば、1本のビット線BLと1本のワード線WLとに関連付けられる。各メモリセルは、ワード線WLを識別するアドレスと、ビット線BLを識別するアドレスとに基づいて識別される。
【0106】
ドライバモジュール104は、読み出し動作、書き込み動作、消去動作などで使用される電圧を生成するドライバ回路である。ドライバモジュール104は、複数の信号線を介してロウデコーダモジュール105に接続される。ドライバモジュール104は、メモリI/F101を介して受信したページアドレスに基づいて、複数の信号線の各々に印加する電圧を変更し得る。
【0107】
ロウデコーダモジュール105は、メモリI/F101を介して受信したロウアドレスをデコードするデコーダである。ロウデコーダモジュール105は、デコード結果に基づいて1つのブロックBLKを選択する。そして、ロウデコーダモジュール105は、選択したブロックBLKに設けられた複数の配線(ワード線WLなど)に、複数の信号線に印加された電圧をそれぞれ転送する。
【0108】
センスアンプモジュール106は、読み出し動作において、ビット線BLの電圧に基づいて、選択されたブロックBLKから読み出されたデータをセンスするセンス回路である。センスアンプモジュール106は、読み出したデータを、メモリI/F101を介してメモリコントローラに送信する。また、センスアンプモジュール106は、書き込み動作において、ビット線BL毎に、メモリセルに書き込むデータに応じた電圧を印加し得る。
【0109】
<4-2>メモリセルアレイ103の回路構成
図16は、第4実施形態に係るメモリデバイス100が備えるメモリセルアレイ103の回路構成の一例を示す回路図である。
図16は、メモリセルアレイ103に含まれた複数のブロックBLKのうち1つのブロックBLKを表示している。
図16に示すように、ブロックBLKは、例えば、4つのストリングユニットSU0~SU3を含む。
【0110】
各ストリングユニットSUは、複数のNANDストリングNSを含む。NANDストリングNSは、それぞれビット線BL0~BLm(mは1以上の整数)に関連付けられている。ビット線BL0~BLmには、それぞれ異なるカラムアドレスが割り当てられる。各ビット線BLは、複数のブロックBLK間で同一のカラムアドレスが割り当てられたNANDストリングNSによって共有される。各NANDストリングNSは、例えば、メモリセルトランジスタMT0~MT7、並びに選択トランジスタSTD及びSTSを含む。
【0111】
各メモリセルトランジスタMTは、制御ゲート及び電荷蓄積層を含み、データを不揮発に記憶する。各NANDストリングNSのメモリセルトランジスタMT0~MT7は、直列に接続される。メモリセルトランジスタMT0~MT7の制御ゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に接続される。ワード線WL0~WL7のそれぞれは、ブロックBLK毎に設けられる。同一のストリングユニットSUで共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合は、例えば、“セルユニットCU”と呼ばれる。各メモリセルトランジスタMTが1ビットデータを記憶する場合、セルユニットCUは、“1ページデータ”を記憶する。セルユニットCUは、メモリセルトランジスタMTが記憶するデータのビット数に応じて、2ページデータ以上の記憶容量を有し得る。
【0112】
選択トランジスタSTD及びSTSのそれぞれは、ストリングユニットSUの選択に使用される。選択トランジスタSTDのドレインは、関連付けられたビット線BLに接続される。選択トランジスタSTDのソースは、直列に接続されたメモリセルトランジスタMT0~MT7の一端に接続される。ストリングユニットSU0~SU3に含まれた選択トランジスタSTDのゲートは、選択ゲート線SGD0~SGD3にそれぞれ接続される。選択トランジスタSTSのドレインは、直列に接続されたメモリセルトランジスタMT0~MT7の他端に接続される。選択トランジスタSTSのソースは、ソース線SLに接続される。選択トランジスタSTSのゲートは、選択ゲート線SGSに接続される。ソース線SLは、例えば、複数のブロックBLKで共有される。
【0113】
<4-3>メモリデバイス100の構造
以下に、第4実施形態に係るメモリデバイス100の構造の一例について説明する。第4実施形態において、X方向は、例えば、ワード線WLの延伸方向に対応する。Y方向は、例えば、ビット線BLの延伸方向に対応する。Z方向は、メモリデバイス100の形成に使用される半導体基板(ウエハ)のおもて面に対する鉛直方向に対応する。
【0114】
図17は、第4実施形態に係るメモリデバイス100の構造の一例を示す斜視図である。
図17に示すように、メモリデバイス100は、メモリチップMC及びCMOSチップCCを含む。メモリチップMCは、例えば、メモリ領域MR、引出領域HR1及びHR2、並びにパッド領域PR1を含む。CMOSチップCCは、例えば、センスアンプ領域SR、周辺回路領域PERI、転送領域XR1及びXR2、並びにパッド領域PR2を含む。
【0115】
メモリ領域MRは、メモリセルアレイ103を含む。引出領域HR1及びHR2は、メモリチップMCに設けられた積層配線とCMOSチップCCに設けられたロウデコーダモジュール105との間の接続に使用される配線などを含む。パッド領域PR1は、メモリデバイス100とメモリコントローラとの接続に使用されるパッドなどを含む。引出領域HR1及びHR2は、メモリ領域MRをX方向に挟んでいる。パッド領域PR1は、メモリ領域MR並びに引出領域HR1及びHR2のそれぞれとY方向に隣り合っている。
【0116】
センスアンプ領域SRは、センスアンプモジュール106を含む。周辺回路領域PERIは、シーケンサ102やドライバモジュール104などを含む。転送領域XR1及びXR2は、ロウデコーダモジュール105を含む。パッド領域PR2は、メモリI/F101を含む。センスアンプ領域SR及び周辺回路領域PERIは、Y方向に隣り合って配置され、メモリ領域MRとZ方向に重なっている。転送領域XR1及びXR2は、センスアンプ領域SR及び周辺回路領域PERIの組をX方向に挟み、それぞれ引出領域HR1及びHR2と重なっている。パッド領域PR2は、メモリチップMCのパッド領域PR1とZ方向に重なっている。
【0117】
メモリチップMCは、メモリ領域MR、引出領域HR1及びHR2、並びにパッド領域PR1のそれぞれの下部に、複数の接合パッドBPを有する。メモリ領域MRの接合パッドBPは、関連付けられたビット線BLに接続される。引出領域HRの接合パッドBPは、メモリ領域MRに設けられた積層配線のうち関連付けられた配線(例えば、ワード線WL)に接続される。パッド領域PR1の接合パッドBPは、メモリチップMCの上面に設けられたパッド(図示せず)に接続される。メモリチップMCの上面に設けられたパッドは、例えば、メモリデバイス100とメモリコントローラと間の接続に使用される。
【0118】
CMOSチップCCは、センスアンプ領域SR、周辺回路領域PERI、転送領域XR1及びXR2、並びにパッド領域PR2のそれぞれの上部に、複数の接合パッドBPを有する。センスアンプ領域SRの接合パッドBPは、メモリ領域MRの接合パッドBPとZ方向に重なっている。転送領域XR1及びXR2の接合パッドBPは、それぞれ引出領域HR1及びHR2の接合パッドBPとZ方向に重なっている。パッド領域PR1の接合パッドBPは、パッド領域PR2の接合パッドBPとZ方向に重なっている。
【0119】
メモリデバイス100は、メモリチップMCの下面(メモリチップMCが形成される半導体基板のおもて面)とCMOSチップCCの上面(CMOSチップCCが形成される半導体基板のおもて面)とが接合された構造を有する。メモリデバイス100に設けられた複数の接合パッドBPのうち、メモリチップMCとCMOSチップCCとの間で対向する2つの接合パッドBPは、接合されることによって電気的に接続される。これにより、メモリチップMC内の回路とCMOSチップCC内の回路との間が、接合パッドBPを介して電気的に接続される。メモリチップMCとCMOSチップCCとの間で対向する2つの接合パッドBPの組は、境界を有していてもよいし、一体化していてもよい。
【0120】
<4-3-1>メモリセルアレイ103の構造
以下に、メモリセルアレイ103の構造について説明する。
【0121】
(メモリセルアレイ103の平面レイアウト)
図18は、第4実施形態に係るメモリデバイス100が備えるメモリセルアレイ103の平面レイアウトの一例を示す平面図である。
図18は、メモリ領域MRのうち1つのブロックBLKを含む領域を表示している。
図18に示すように、メモリデバイス100は、例えば、複数のスリットSLTと、複数のスリットSHEと、複数のメモリピラーMPと、複数のビット線BLと、複数のコンタクトCVとを含む。メモリ領域MRでは、以下で説明される平面レイアウトが、Y方向に繰り返し配置される。
【0122】
各スリットSLTは、例えば、絶縁部材が埋め込まれた構造を有する。各スリットSLTは、当該スリットSLTを介して隣り合う配線(例えば、ワード線WL0~WL7、並びに選択ゲート線SGD及びSGS)を絶縁している。各スリットSLTは、X方向に沿って延伸して設けられた部分を有し、メモリ領域MR並びに引出領域HR1及びHR2をX方向に沿って横切っている。複数のスリットSLTは、Y方向に並んでいる。スリットSLTによって区切られた領域は、ブロックBLKに対応している。
【0123】
各スリットSHEは、例えば、絶縁部材が埋め込まれた構造を有する。各スリットSHEは、当該スリットSLTを介して隣り合う配線(少なくとも、選択ゲート線SGD)を絶縁している。各スリットSHEは、X方向に沿って延伸して設けられた部分を有し、メモリ領域MRを横切っている。複数のスリットSHEは、Y方向に並んでいる。本例では、3つのスリットSHEが、隣り合うスリットSLTの間に配置されている。スリットSLT及びSHEによって区切られた複数の領域は、それぞれストリングユニットSU0~SU3に対応している。
【0124】
各メモリピラーMPは、例えば、1つのNANDストリングNSとして機能する。複数のメモリピラーMPは、隣り合う2つのスリットSLTの間の領域において、例えば、19列の千鳥状に配置される。そして、紙面の上側から数えて、5列目のメモリピラーMPと、10列目のメモリピラーMPと、15列目のメモリピラーMPとのそれぞれに、1つのスリットSHEが重なっている。
【0125】
各ビット線BLは、Y方向に沿って延伸して設けられた部分を有し、複数のブロックBLKが設けられた領域をY方向に沿って横切っている。複数のビット線BLは、X方向に並んでいる。各ビット線BLは、ストリングユニットSU毎に少なくとも1つのメモリピラーMPと重なるように配置される。本例では、2本のビット線BLが、各メモリピラーMPと重なっている。
【0126】
各コンタクトCVは、メモリピラーMPと重なっている複数のビット線BLのうち1本のビット線BLと、当該メモリピラーMPとの間に設けられる。コンタクトCVは、メモリピラーMPとビット線BLとの間を電気的に接続する。なお、スリットSHEと重なったメモリピラーMPと、ビット線BLとの間のコンタクトCVは、省略される。
【0127】
(メモリセルアレイ103の断面構造)
図19は、第4実施形態に係るメモリデバイス100が備えるメモリセルアレイ103の断面構造の一例を示す断面図である。
図19は、メモリ領域MR内でメモリピラーMPとスリットSLTとを含み且つY方向に沿った断面を表示している。
図19に示すように、メモリデバイス100は、例えば、絶縁体層110~118、導電体層120~126、並びにコンタクトV1及びV2を含む。
【0128】
絶縁体層110は、例えば、メモリチップMCの最下層に設けられる。絶縁体層110が形成された層には、導電体層120やパッドPDの接続に使用される配線が設けられてもよい。絶縁体層110上に、導電体層120が設けられる。導電体層120上に、絶縁体層111が設けられる。絶縁体層111上に、導電体層121及び絶縁体層112が交互に設けられる。最上層の導電体層121上に、絶縁体層113が設けられる。絶縁体層113上に、導電体層122と絶縁体層114とが交互に設けられる。最上層の導電体層122上に、絶縁体層115が設けられる。絶縁体層115上に、導電体層123及び絶縁体層116が交互に設けられる。最上層の導電体層123上に、絶縁体層117が設けられる。絶縁体層117上に、導電体層124が設けられる。導電体層124上に、絶縁体層118が設けられる。絶縁体層118が形成された層は、コンタクトV1及びV2、並びに導電体層125及び126を含む。コンタクトV1は、導電体層124上に設けられる。コンタクトV1上に、導電体層125が設けられる。導電体層125の上に、コンタクトV2が設けられる。コンタクトV2上に、導電体層126が設けられる。
【0129】
導電体層120、121、122及び123のそれぞれは、例えば、XY平面に沿って広がった板状に形成された部分を有する。導電体層124は、例えば、Y方向に延伸したライン状に形成された部分を有する。導電体層120、121及び123は、それぞれソース線SL、選択ゲート線SGS、及び選択ゲート線SGDとして使用される。複数の導電体層123は、下方から順に、それぞれワード線WL0~WL7として使用される。導電体層124は、ビット線BLとして使用される。導電体層124と125との間は、コンタクトV1を介して接続される。導電体層125と導電体層126との間は、コンタクトV2を介して接続される。導電体層126は、メモリチップMCの界面(接合面)に接し、接合パッドBPとして使用される。導電体層126は、例えば、銅を含む。
【0130】
スリットSLTは、XZ平面に沿って広がった板状に形成された部分を有し、絶縁体層111~116及び導電体層121~123を分断している。各メモリピラーMPは、Z方向に沿って延伸して設けられ、絶縁体層111~116、及び導電体層121~123を貫通している。各メモリピラーMPは、例えば、コア部材130、半導体層131、及び積層膜132を含む。コア部材130は、Z方向に沿って延伸して設けられた絶縁体である。半導体層131は、コア部材130を覆っている。半導体層131の下部は、導電体層120と接している。積層膜132は、半導体層131の側面を覆っている。半導体層131上に、コンタクトCVが設けられる。半導体層131は、コンタクトCVを介して導電体層124と電気的に接続される。
【0131】
なお、図示された領域には、2つのメモリピラーMPのうち、1つのメモリピラーMPに対応するコンタクトCVが示されている。当該領域においてコンタクトCVが接続されていないメモリピラーMPには、図示されない領域においてコンタクトCVが接続される。メモリピラーMPと複数の導電体層121とが交差した部分は、選択トランジスタSTSとして機能する。メモリピラーMPと導電体層122とが交差した部分は、メモリセルトランジスタMTとして機能する。メモリピラーMPと複数の導電体層123とが交差した部分は、選択トランジスタSTDとして機能する。以下では、導電体層124、125及び126を含む配線層のことを、それぞれ“M0”、“M1”及び“M2”と呼ぶ。
【0132】
(メモリピラーMPの断面構造)
図20は、第4実施形態に係るメモリデバイス10が備えるメモリピラーMPの断面構造の一例を示す、
図19のXX-XX線に沿った断面図である。
図20は、メモリピラーMPと導電体層122とを含み且つX方向とY方向とのそれぞれと平行な断面を表示している。
図20に示すように、積層膜132は、例えば、トンネル絶縁膜133、絶縁膜134、及びブロック絶縁膜135を含む。
【0133】
コア部材130は、例えば、メモリピラーMPの中心部に設けられる。半導体層131は、コア部材130の側面を囲っている。トンネル絶縁膜133は、半導体層131の側面を囲っている。絶縁膜134は、トンネル絶縁膜133の側面を囲っている。ブロック絶縁膜135は、絶縁膜134の側面を囲っている。導電体層122は、ブロック絶縁膜135の側面を囲っている。半導体層131は、メモリセルトランジスタMT0~MT7並びに選択トランジスタSTD及びSTSのチャネル(電流経路)として使用される。トンネル絶縁膜133及びブロック絶縁膜135のそれぞれは、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)を含む。絶縁膜134は、メモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層として使用され、例えば、窒化ケイ素(SiN)を含む。これにより、メモリピラーMPの各々が、1つのNANDストリングNSとして機能する。
【0134】
<4-3-2>メモリデバイス100の断面構造
図21は、第4実施形態に係るメモリデバイス100の断面構造の一例を示す断面図である。
図21は、メモリ領域MR及びセンスアンプ領域SRを含む断面、すなわちメモリチップMCとCMOSチップCCとを含む断面を表示している。
図21に示すように、メモリデバイス100は、センスアンプ領域SRにおいて、例えば、半導体基板140、導電体層GC及び141~144、並びにコンタクトCS及びC0~C3を含む。
【0135】
半導体基板140は、CMOSチップCCの形成に使用される基板である。半導体基板140は、複数のウェル領域(図示せず)を含む。複数のウェル領域のそれぞれには、例えば、トランジスタTRが形成される。複数のウェル領域の間は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)によって分離される。半導体基板140の上に、ゲート絶縁膜を介して導電体層GCが設けられる。センスアンプ領域SR内の導電体層GCは、センスアンプモジュール106に含まれたトランジスタTRのゲート電極として使用される。導電体層GCの上には、コンタクトC0が設けられる。トランジスタTRのソース及びドレインに対応して、半導体基板140の上に2つのコンタクトCSが設けられる。
【0136】
コンタクトCSの上とコンタクトC0の上とのそれぞれに、導電体層141が設けられる。導電体層141の上に、コンタクトC1が設けられる。コンタクトC1の上に、導電体層142が設けられる。導電体層141及び142の間は、コンタクトC1を介して電気的に接続される。導電体層142の上に、コンタクトC2が設けられる。コンタクトC2の上に、導電体層143が設けられる。導電体層142及び143の間は、コンタクトC2を介して電気的に接続される。導電体層143の上に、コンタクトC3が設けられる。コンタクトC3の上に、導電体層144が設けられる。導電体層143及び144の間は、コンタクトC3を介して電気的に接続される。以下では、導電体層141~144が設けられた配線層のことを、それぞれ“D0”、“D1”、“D2”、及び“D3”と呼ぶ。
【0137】
導電体層144は、CMOSチップCCの界面(接合面)に接し、接合パッドBPとして使用される。センスアンプ領域SR内の導電体層144は、対向して配置されたメモリ領域MR内の導電体層126(すなわち、メモリチップMCの接合パッドBP)と貼り合わされる。そして、センスアンプ領域SR内の各導電体層144は、1本のビット線BLと電気的に接続される。導電体層144は、例えば、銅を含む。メモリデバイス100では、CMOSチップCCの配線層D3とメモリチップMCの配線層M2とが、メモリチップMC及びCMOSチップCCとが接合されることにより隣接している。
【0138】
本例では、メモリチップMCの形成に使用された半導体基板が、接合処理後のパッドの形成などの工程に伴い除去されている。なお、メモリチップMCの形成に使用された半導体基板は、残っていてもよい。また、メモリチップMC及びCMOSチップCCのそれぞれの配線層の数は、メモリデバイス100の構成に応じて適宜変更され得る。
【0139】
<4-4>第4実施形態の効果
以上で説明された第4実施形態に係るメモリデバイス100の製造に、第1実施形態で説明された露光方法や、第2及び第3実施形態で説明された半導体装置の製造方法が適用され得る。以下に、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法が第4実施形態に係るメモリデバイス100に適用される場合について説明する。
【0140】
例えば、配線層M0では、Y方向に延伸して設けられた部分を有するビット線BLが主要なパターンであり、X方向の重ね合わせの難易度が高く、Y方向の重ね合わせの管理スペックに余裕がある。配線層M1では、X方向に延伸して設けられた部分を有する導電体層125が設けられ、Y方向の重ね合わせの難易度が高く、X方向の重ね合わせの管理スペックに余裕がある。配線層M0では、比較的ラフなパターンが取り扱われるため、X方向及びY方向の両方で重ね合わせの管理スペックに余裕がある。
【0141】
この場合、配線層M0に関連付けられた露光処理のアライメントにおいて、Y方向に上下限補正モードが適用され、X方向に通常モードが適用されることが好ましい。同様に、配線層M1に関連付けられた露光処理のアライメントにおいて、X方向に上下限補正モードが適用され、Y方向に通常モードが適用されることが好ましい。配線層M2に関連付けられた露光処理のアライメントにおいて、X方向及びY方向の両方に上下限補正モードが適用されることが好ましい。
【0142】
以上のように、X方向及びY方向の一方若しくは両方に対する上下限補正モードのアライメントが、各層に設けられるパターンに応じて適用される。その他の配線層においても、X方向とY方向の重ね合わせの管理スペックに基づいて、上下限補正モードのアライメントが適宜適用され得る。その結果、第4実施形態に係るメモリデバイス100の歩留まりは、第3実施形態に係る半導体装置の製造方法が適用されることによって改善し得る。 なお、第1実施形態で説明された露光方法や、第2及び第3実施形態で説明された半導体装置の製造方法が適用される対象は、メモリデバイス100のみに限定されない。第1実施形態で説明された露光方法や、第2及び第3実施形態で説明された半導体装置の製造方法が適用される対象は、接合構造を有する半導体装置であればよい。
【0143】
<5>変形例など
上記実施形態において、露光方法や半導体装置の製造方法の説明に用いたフローチャートは、あくまで一例である。フローチャートを用いて説明された各動作は、処理の順番が可能な範囲で入れ替えられてもよいし、その他の処理が追加されてもよいし、一部の処理が省略されてもよい。第2実施形態で説明された
図9では、上下限補正モードが適用される露光処理が3層で実行される場合が例示されているが、これに限定されない。第2実施形態では、上下限補正モードが適用される露光処理が2層以上で実行されていればよい。同様に、第3実施形態で説明された
図13では、X方向及び/又はY方向において上下限補正モードが適用される露光処理が3層で実行される場合が例示されているが、これに限定されない。第3実施形態では、X方向及び/又はY方向において上下限補正モードが適用される露光処理が2層以上で実行されていればよい。
【0144】
上記実施形態では、上下限補正モードにおいて、ウエハ倍率成分の上限値U_Limitと下限値L_Limitとの両方が設定されたアライメント補正が実行される場合について説明したが、これに限定されない。上下限補正モードにおいて、ウエハ倍率成分の上限値U_Limitのみが設定されてもよいし、ウエハ倍率成分の下限値L_Limitのみが設定されてもよい。例えば、上下限補正モードにおいて下限値L_Limitのみが設定される場合、
図5のS106の処理において、下地のウエハ倍率成分W_Mag_Bの値がL_Limit以上である場合に、S108の処理が実行される。また、上下限補正モードにおいて上限値U_Limitのみが設定される場合、
図5のS106の処理において、下地のウエハ倍率成分W_Mag_Bの値がU_Limit以下である場合に、S108の処理が実行される。このようにウエハ倍率成分の上限値U_Limit又は下限値L_Limitのみが設定されるアライメント補正は、第3実施形態のように、X方向とY方向とで独立に適用されてもよい。
【0145】
制御装置11としては、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、あるいはFPGA(field-programmable gate array)などが使用されてもよい。また、上記実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されてもよい。上記実施形態で説明された処理は、ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していてもよいし、どちらか一方のみであってもよい。
【0146】
第4実施形態で説明されたメモリデバイス100の回路構成、平面レイアウト、及び断面構造は、メモリデバイス100のデザインに応じて適宜変更され得る。例えば、第4実施形態では、CMOSチップCC上にメモリチップMCが設けられる場合について例示したが、メモリチップMCの上にCMOSチップCCが設けられてもよい。第4実施形態では、下ウエハLWにメモリチップMCが割り当てられ、上ウエハUWにCMOSチップCCが割り当てられる場合について説明したが、上ウエハUWにメモリチップMCが割り当てられ、下ウエハLWにCMOSチップCCが割り当てられてもよい。
【0147】
本明細書において、“接続”は、電気的に接続されている事を示し、別の素子を介することを除外しない。“電気的に接続される”は、電気的に接続されたものと同様に動作することが可能であれば、絶縁体を介していてもよい。“領域”は、半導体基板によって含まれる構成と見なされてもよい。例えば、半導体基板140がメモリ領域MRを含むと規定された場合、メモリ領域MRは、半導体基板140の上方の領域に関連付けられる。接合パッドBPは、“接合金属”と呼ばれてもよい。露光装置1のカメラ35は、光学系(顕微鏡)と受光センサとが分かれた構成を有していてもよい。カメラ35に相当する計測機構は、露光装置1に外部接続されてもよい。本明細書において、“重ね合わせずれ”は、“位置ずれ”と言い換えられてもよい。“視認”は、顕微鏡やカメラなどを介して対象物を所望の方向から観察することを含む。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1…露光装置、11…制御装置、12…記憶装置、13…搬送装置、14…通信装置、15…露光ユニット、21…露光レシピ、22…補正値情報、31…ウエハステージ、32…レチクルステージ、33…光源、34…投影光学系、35…カメラ、100…メモリデバイス、101…メモリインターフェース、102…シーケンサ、103…メモリセルアレイ、104…ドライバモジュール、105…ロウデコーダモジュール、106…センスアンプモジュール、110~118…絶縁体層、120~126…導電体層、130…コア部材、131…半導体層、132…積層膜、133…トンネル絶縁膜、134…絶縁膜、135…ブロック絶縁膜、140…半導体基板、GC,141~144…導電体層、MP…メモリピラー、SLT,SHE…スリット、TR…トランジスタ、BLK…ブロック、SU…ストリングユニット、NS…NANDストリング、MT…メモリセルトランジスタ、STD,STS…選択トランジスタ、BL…ビット線、WL…ワード線、SGD,SGS…選択ゲート線、SL…ソース線、MC…メモリチップ、CC…CMOSチップ、C0~C3,V1,V2,CV…コンタクト、BP…接合パッド、M0~M2,D0~D3…配線層、MR…メモリ領域、HR1,HR2…引出領域、XR1,XR2…転送領域、SR…センスアンプ領域、PR1,PR2…パッド領域、PERI…周辺回路領域