(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179679
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241219BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F25B1/00 304H
F25B49/02 510K
F25B1/00 304T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098707
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】伊豆野 優作
(57)【要約】
【課題】液戻り状態から回復させた際、庫内の温度上昇を抑制することが可能な冷却装置を提供する。
【解決手段】この冷却装置2は、圧縮機200aと、凝縮器200bと、電子膨張弁200cと、蒸発器200dとを含む冷却回路200と、過熱度Hに対して設定された設定過熱度Htに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを調整して過熱度Hを制御する制御部210とを備える。制御部210は、気液二相A3の冷媒が蒸発器200dから流出して圧縮機200aに流入する液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを下げて過熱度Hを上昇させることにより液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧の気相の冷媒を流す圧縮機と、気相の前記冷媒を冷却して凝縮する凝縮器と、凝縮させた液相の前記冷媒の流量を調整するとともに膨張させる電子膨張弁と、膨張させた気液二相の前記冷媒を蒸発させて空気を冷却する蒸発器とを含む冷却回路と、
前記蒸発器に流入する前記冷媒の温度と前記蒸発器から流出する前記冷媒の温度との温度差に基づいて取得される過熱度に対して設定された設定過熱度に基づいて、前記電子膨張弁の開度を調整して前記過熱度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、気液二相の前記冷媒が前記蒸発器から流出して前記圧縮機に流入する液戻り状態になると判定したことに基づいて、前記電子膨張弁の開度を下げて前記過熱度を上昇させることにより前記液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている、冷却装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記過熱度が前記設定過熱度以下であるという過熱度条件を含む回復制御開始条件に基づいて、前記液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記液戻り状態になると判定したことに基づいて、前記電子膨張弁の開度を複数のタイミングに分けて徐々に下げる制御を行うように構成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数のタイミングのうちのいずれかで前記液戻り状態から回復したことに基づいて、元の制御に戻るように構成されている、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のタイミングのうちの最後のタイミングになったことに基づいて、前記電子膨張弁の開度を下げるとともに、前記圧縮機の回転数を通常よりも下げて前記冷媒の流量を減少させる制御を行うように構成されている、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記圧縮機の回転数を通常よりも下げた後、所定の状態になったことに基づいて、前記液戻り状態であることを、ユーザに報知する制御を行うように構成されている、請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記所定の状態は、
前記蒸発器において冷却された空気の温度が設定温度よりも高い報知温度以上になった第1状態と、
所定時間内において、前記圧縮機の回転数を通常よりも下げて前記液戻り状態から回復した後、再度、前記液戻り状態から回復させる制御を行った第2状態とのうちの少なくとも一方を含む、請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1状態になったことに基づいて、装置を停止させるとともに、前記ユーザに報知する制御を行うように構成されている、請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記圧縮機の駆動を開始した際に行う初期運転モードと、前記初期運転モード後の通常運転モードと、前記初期運転モードおよび前記通常運転モード以外の前記圧縮機の駆動開始後の他の運転モードの各々において、前記回復制御開始条件に基づいて、前記液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている、請求項2に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記蒸発器に流入する前記冷媒の温度を計測する流入側温度計測センサと、
前記蒸発器から流出する前記冷媒の温度を計測する流出側温度計測センサと、
前記蒸発器において冷却された空気の温度を計測する冷却空気温度計測センサとをさらに備え、
前記回復制御開始条件は、前記過熱度条件に加えて、前記蒸発器において冷却された空気の温度が設定温度以下であるという冷却空気温度条件をさらに含み、
前記制御部は、前記流入側温度計測センサにより計測された温度と前記流出側温度計測センサにより計測された温度との差である前記過熱度と、前記冷却空気温度計測センサにより計測された冷却された空気の温度とに基づいて、前記回復制御開始条件に含まれる、前記過熱度条件および前記冷却空気温度条件の両方を満たすか否かを判定する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却装置に関し、特に、冷却回路を備える冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却回路を備える冷却装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、冷却回路を含む庫内ユニット(冷却装置)が開示されている。この庫内ユニットの冷却回路は、配管と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、圧縮機とを含んでいる。庫内ユニットは、庫内温度検出手段と、過熱度検出手段と、制御装置とを備えている。
【0004】
上記特許文献1の制御装置は、過熱度検出手段の検出値に基づいて、膨張弁の開度を制御することにより、蒸発器における過熱度を制御するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1の庫内ユニットでは、蒸発器から気液二相の冷媒が流出して圧縮機に流入する液戻り状態の発生を検出した場合、圧縮機の回転数を通常よりも下げることにより冷却回路における冷媒の循環量を減少させることによって、蒸発器内において気液二相の冷媒が気相に相変化しやすくしていると考えられる。これにより、気相の冷媒を蒸発器から流出させて蒸発器の過熱度を大きくすることにより、液戻り状態を解消していると考えられる。
【0007】
しかしながら、圧縮機の回転数を下げることにより冷媒の循環量を減少させた場合において、一時的に過熱度が小さくなっただけで、すぐに過熱度が元に戻った場合には、冷却回路における冷媒の循環量を減少させているので、膨張弁の開度を制御しても蒸発器内に流入させる冷媒の流量を適切に調整できず、蒸発器において熱交換された空気の温度が高くなる。このような場合、庫内の温度上昇を抑制することができない。このため、液戻り状態から回復しても、圧縮機の回転数を下げることにより過熱度を上げる制御を行ったことに起因して、蒸発器に流入させる冷媒の流量を適切に調整できず、庫内の温度上昇を抑制することができないという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、液戻り状態から回復させた際、庫内の温度上昇を抑制することが可能な冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一の局面による冷却装置は、高温高圧の気相の冷媒を流す圧縮機と、気相の冷媒を冷却して凝縮する凝縮器と、凝縮させた液相の冷媒の流量を調整するとともに膨張させる電子膨張弁と、膨張させた気液二相の冷媒を蒸発させて空気を冷却する蒸発器とを含む冷却回路と、蒸発器に流入する冷媒の温度と蒸発器から流出する冷媒の温度との温度差に基づいて取得される過熱度に対して設定された設定過熱度に基づいて、電子膨張弁の開度を調整して過熱度を制御する制御部とを備え、制御部は、気液二相の冷媒が蒸発器から流出して圧縮機に流入する液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁の開度を下げて過熱度を上昇させることにより液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。
【0010】
この発明の一の局面による冷却装置では、上記のように、制御部を、液相の冷媒が蒸発器から流出して圧縮機に流入する液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁の開度を下げて過熱度を上昇させることにより液戻り状態から回復させる制御を行うように構成する。これにより、液戻り状態になると判定した後、一時的に過熱度が小さくなっただけで、すぐに過熱度が元に戻った場合であっても、圧縮機の回転数を下げて冷却回路における冷媒の循環量を減少させていないので、電子膨張弁の開度を制御することにより、蒸発器に流入させる冷媒の流量を適切に調整することができる。その結果、液戻り状態から回復した際、庫内の温度上昇を抑制することができる。また、電子膨張弁により蒸発器の流出側の温度を飽和蒸気曲線よりも少し高温になるように過熱度を制御することができるので、蒸発器における気相の冷媒の箇所を減少させることによる蒸発器における効率的な熱交換を実現することができる。
【0011】
上記一の局面による冷却装置において、好ましくは、制御部は、過熱度が設定過熱度以下であるという過熱度条件を含む回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、過熱度が設定過熱度以下であるという過熱度条件を満たす場合、蒸発器から圧縮機に気液二相の冷媒が流出する可能性が高まるので、電子膨張弁の開度を下げて蒸発器に流入させる冷媒の流量を減少させることにより気液二相の冷媒が気相に相変化しやすくすることによって、過熱度を大きくして蒸発器から圧縮機への液相の冷媒の流出を抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による冷却装置において、好ましくは、制御部は、液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁の開度を複数のタイミングに分けて徐々に下げる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、早期のタイミングで液戻り状態から回復した場合、蒸発器への冷媒の供給量を減少させ過ぎないようにすることができるので、蒸発器への冷媒の供給量の低下に起因する庫内の温度上昇を抑制した状態で液戻り状態から回復させることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、複数のタイミングのうちのいずれかで液戻り状態から回復したことに基づいて、元の制御に戻るように構成されている。このように構成すれば、液戻り状態から回復した場合には、元の制御に戻ることにより、直前の冷却に関する制御を継続させることができるので、冷却装置による冷却対象(商品)の冷却を継続させることができる。
【0014】
上記制御部が、液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁の開度を複数のタイミングに分けて徐々に下げる制御を行うように構成された冷却装置において、好ましくは、制御部は、複数のタイミングのうちの最後のタイミングになったことに基づいて、電子膨張弁の開度を下げるとともに、圧縮機の回転数を通常よりも下げて冷媒の流量を減少させる制御を行うように構成されている。ここで、電子膨張弁の開度を下げて蒸発器に流入させる冷媒の流量を減少させても過熱度が大きくならなかった場合、さらに電子膨張弁の開度を小さくしても過熱度を大きくできないと考えられる。しかしながら、圧縮機の回転数を通常よりも下げて冷媒の流量を減少させることにより、過熱度を大きくして液戻り状態から回復させることができる場合がある。その結果、冷却装置の運転を停止させずに、冷却装置による冷却対象(商品)の冷却を継続させることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、制御部は、圧縮機の回転数を通常よりも下げた後、所定の状態になったことに基づいて、液戻り状態であることを、ユーザに報知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザが液戻り状態にあることを認識することができるので、ユーザが冷却装置に対して液戻り状態を解消するための処置を施すことができる。
【0016】
上記制御部が、液戻り状態であることを、ユーザに報知する制御を行うように構成された冷却装置において、好ましくは、所定の状態は、蒸発器において冷却された空気の温度が設定温度よりも高い報知温度以上になった第1状態と、所定時間内において、圧縮機の回転数を通常よりも下げて液戻り状態から回復した後、再度、液戻り状態から回復させる制御を行った第2状態とのうちの少なくとも一方を含む。このように構成すれば、液戻り状態と判定した全ての場合においてユーザに報知する構成と比較して、ユーザに報知する状態をユーザに対して必要と考えられる状態を特定して報知することができるので、ユーザに報知する回数の増加を抑制することができる。また、電子膨張弁により蒸発器の流出側の温度を飽和蒸気曲線よりも少し高温になるように過熱度を制御した場合、蒸発器の流出側の温度が飽和蒸気曲線よりも低温になりやすくなってしまうが、すぐにユーザに報知するのではなく、先に回復制御を行わせることができる。その結果、蒸発器における気相の冷媒の箇所を減少させることによる蒸発器における効率的な熱交換を実現しつつ、ユーザに報知する回数の増加を抑制することができる。
【0017】
上記所定の状態が、第1状態を含む冷却装置において、好ましくは、制御部は、第1状態になったことに基づいて、装置を停止させるとともに、ユーザに報知する制御を行うように構成されている。ここで、蒸発器において冷却された空気の温度が設定温度よりも高い報知温度以上になった第1状態では、蒸発器から供給される空気の温度が高温になっている。これにより、装置を停止させて高温の空気が冷却対象に供給されないようにすることができるので、ユーザが液戻り状態を解消するための処置を施すまでの間、冷却対象の温度上昇を抑制することができる。
【0018】
上記制御部が、過熱度が設定過熱度以下であるという過熱度条件を含む回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成された冷却装置において、好ましくは、制御部は、圧縮機の駆動を開始した際に行う初期運転モードと、初期運転モード後の通常運転モードと、初期運転モードおよび通常運転モード以外の圧縮機の駆動開始後の他の運転モードの各々において、回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、初期運転モード、通常運転モードおよび他の運転モードの各々において、蒸発器から圧縮機に液相の冷媒が流出する可能性が高まった場合に、回復制御を行うことができるので、冷媒の循環量を減少させないようにしつつ、過熱度を回復させることができる。
【0019】
上記制御部が、過熱度が設定過熱度以下であるという過熱度条件を含む回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成された冷却装置において、好ましくは、蒸発器に流入する冷媒の温度を計測する流入側温度計測センサと、蒸発器から流出する冷媒の温度を計測する流出側温度計測センサと、蒸発器において冷却された空気の温度を計測する冷却空気温度計測センサとをさらに備え、回復制御開始条件は、過熱度条件に加えて、蒸発器において冷却された空気の温度が設定温度以下であるという冷却空気温度条件をさらに含み、制御部は、流入側温度計測センサにより計測された温度と流出側温度計測センサにより計測された温度との差である過熱度と、冷却空気温度計測センサにより計測された冷却された空気の温度とに基づいて、回復制御開始条件に含まれる、過熱度条件および冷却空気温度条件の両方を満たすか否かを判定する制御を行うように構成されている。ここで、過熱度が設定過熱度以下であるという過熱度条件だけでなく、冷却空気温度条件を満たす場合は、蒸発器における冷媒の過熱度の低下の影響が、蒸発器において熱交換をした空気にまで及んでいるので、さらに、蒸発器から圧縮機に気液二相の冷媒が流出する可能性が高まる。このような場合でも、回復制御を行うことにより過熱度が回復させることができるので、冷媒の循環量を減少させないようにしつつ、過熱度を回復させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、液戻り状態から回復させた際、庫内の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態の冷却装置が内蔵されるショーケースを示した模式図である。
【
図2】本実施形態の冷却装置を示した模式図である。
【
図3】比較例の冷却装置における機械式膨張弁と蒸発器とを示した模式図である。
【
図4】本実施形態の冷却装置の蒸発器の配管の温度変化と比較例の冷却装置の蒸発器の温度変化とを示したグラフである。
【
図5】本実施形態の冷却装置における電子膨張弁、蒸発器および制御部を示した模式図である。
【
図6】本実施形態の冷却装置の冷凍サイクルのモリエル線図である。
【
図7】本実施形態の冷却装置の冷却制御のタイミングチャートである。
【
図8】本実施形態の冷却装置の冷却制御における状態遷移図である。
【
図9】本実施形態の冷却装置の冷却制御における優先順位を示した表である。
【
図10】本実施形態の冷却装置の回復制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1~
図10を参照して、ショーケース100において、商品棚1に陳列された生鮮食品などの商品(冷却対象)を冷却(冷凍・冷蔵)する本実施形態の冷却装置2の構成について説明する。
図1に示すように、冷却装置2は、ショーケース100内の冷熱機器として構成されている。冷却装置2は、ショーケース100内に内蔵されている。ここで、ショーケース100における商品棚1により区切られた空間を庫内とする。
【0024】
図2に示すように、冷却装置2は、冷却回路200と、圧縮機用温度計測センサ201と、凝縮器用温度計測センサ202と、流入側温度計測センサ203と、流出側温度計測センサ204と、流入空気温度計測センサ205と、冷却空気温度計測センサ206と、庫内温度センサ207と、凝縮器用ファン208と、蒸発器用ファン209とを含んでいる。また、冷却装置2は、制御部210と、表示部211と、スピーカ212とを含んでいる。
【0025】
冷却回路200は、ショーケース100の庫内に冷却空気を供給するために、空気を冷却する冷媒を循環させるように構成されている。冷媒は、R448Aであるが、R404AまたはR2などの他の冷媒であってもよい。
【0026】
具体的には、冷却回路200は、圧縮機200aと、凝縮器200bと、電子膨張弁200cと、蒸発器200dと、第1冷媒封入用弁200eと、乾燥部200fと、ストレーナ200gと、第2冷媒封入用弁200hと、気液分離部200iと、ストレーナ200jとを有している。圧縮機200a、凝縮器200b、電子膨張弁200c、蒸発器200d、第1冷媒封入用弁200e、乾燥部200f、ストレーナ200g、第2冷媒封入用弁200h、気液分離部200iおよびストレーナ200jの各々は、互いに配管200kを介して接続されている。
【0027】
圧縮機200aは、圧縮機200aから吐出される冷媒の流量を調整するとともに、冷媒を圧縮するように構成されている。圧縮機200aは、制御部210により制御されたインバータ(図示せず)から出力された信号を介して制御されている。このように、圧縮機200aは、高温高圧の気相A1(
図6を参照)の冷媒を冷却回路200に流すように構成されている。凝縮器200bは、凝縮器用ファン208から送られる空気と、高温高圧の気相A1の冷媒とを熱交換させることにより、気相A1の冷媒を冷却して凝縮させるように構成されている。電子膨張弁200cは、凝縮させた液相A2(
図6を参照)の冷媒の流量を調整するとともに膨張させる。電子膨張弁200cは、たとえば、ニードル弁から構成されている。電子膨張弁200cは、制御部210により制御されたインバータ(図示せず)から出力された信号を介して制御される。電子膨張弁200cの開度Mは、コイルにより生じる磁力により調整される。蒸発器200dは、電子膨張弁200cにより膨張させた気液二相A3(
図6を参照)の冷媒を蒸発させて空気を冷却するように構成されている。すなわち、蒸発器200dは、蒸発器用ファン209から送られる空気と、低温低圧の気液二相A3の冷媒とを熱交換させることにより、空気を冷却するように構成されている。
【0028】
第1冷媒封入用弁200eおよび第2冷媒封入用弁200hの各々は、冷却回路200に冷媒を封入させるための弁である。乾燥部200fは、冷媒に含まれる水分を吸収して乾燥させる吸湿材を有するドライヤである。ストレーナ200gおよびストレーナ200jの各々は、冷媒に含まれる異物を除去するフィルタである。気液分離部200iは、蒸発器200dから流出した気液二相A3の冷媒を一時的に滞留させるアキュムレータである。
【0029】
圧縮機用温度計測センサ201は、圧縮機200aから吐出される高温高圧の気相A1の冷媒の温度を計測するセンサである。圧縮機用温度計測センサ201は、圧縮機200aの過剰な温度上昇を検出するためのセンサである。凝縮器用温度計測センサ202は、凝縮器200bから吐出される低温高圧の液相A2の冷媒の温度を計測するセンサである。凝縮器用温度計測センサ202は、凝縮器200bの過剰な温度上昇を検出するためのセンサである。流入側温度計測センサ203は、電子膨張弁200cから蒸発器200dに流入する冷媒の温度を計測するセンサである。流出側温度計測センサ204は、蒸発器200dから流出する冷媒の温度を計測するセンサである。流入空気温度計測センサ205は、蒸発器用ファン209により蒸発器200dに送られる空気の温度を計測するセンサである。冷却空気温度計測センサ206は、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度(冷却空気温度T)を計測するセンサである。庫内温度センサ207は、ショーケース100の庫内の温度を計測するセンサである。
【0030】
制御部210は、CPUと、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの記憶部とを有している。制御部210は、記憶部に記憶された冷却制御プログラムに基づいて、冷却装置2を制御するように構成されている。なお、冷却装置2の制御については、後に詳細に説明する。
【0031】
制御部210は、圧縮機用温度計測センサ201、凝縮器用温度計測センサ202、流入側温度計測センサ203、流出側温度計測センサ204、流入空気温度計測センサ205、冷却空気温度計測センサ206、庫内温度センサ207、凝縮器用ファン208、蒸発器用ファン209、表示部211、スピーカ212、圧縮機200a、および、電子膨張弁200cの各々と電気的に接続されている。
【0032】
表示部211は、液晶ディスプレイなどである。表示部211は、制御部210からの信号に基づいて、数値およびメッセージなどの少なくとも1つを表示するように構成されている。スピーカ212は、制御部210からの信号に基づいて、音および音声の少なくとも1つを出力するように構成されている。
【0033】
(電子膨張弁による過熱度制御)
ここで、
図3の比較例の冷却装置300について説明する。なお、説明の便宜上、冷却装置300における機械式膨張弁301、蒸発器302および蒸発器用ファン303のみを
図3において表示している。この比較例の冷却装置300では、機械式膨張弁301の開度を調節して、蒸発器302に流入する冷媒の圧力を調整することにより、蒸発器302の過熱度が調整されていた。ここで、蒸発器302において気液二相から気相に相変化する際、気液二相から気相になるにしたがって圧力が低下することに起因して温度が減少する温度グライドが生じるので、蒸発器302の流出側の冷媒の温度が飽和蒸気曲線における気液二相の領域にならないようにするために、機械式膨張弁301において圧力を過剰に低下させて、冷媒が気相に相変化しやすいようにしていた。
【0034】
このため、
図3に示すように、冷媒の圧力の低下に起因して冷媒の温度が下がるとともに、冷媒が低圧であることから蒸発しやすく、蒸発器302の配管の中間(
図4の蒸発器中間)よりも少し下流側で気液二相の冷媒が全て気相A1に変化してしまっていた。したがって、
図4に示すように、蒸発器入口の冷媒の温度と蒸発器出口の冷媒の温度との差に基づいて取得(算出)される過熱度が大きくなってしまっていた。
【0035】
そこで、
図5に示すように、冷却装置2の制御部210は、蒸発器200dに流入する冷媒の温度と蒸発器200dから流出する冷媒の温度との温度差に基づいて取得(算出)される過熱度Hに対して設定された設定過熱度Htに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを調整して過熱度Hを制御するように構成されている。ここで、制御部210は、冷媒の流入側の温度を計測する流入側温度計測センサ203の計測値と、冷媒の流出側の温度を計測する流出側温度計測センサ204の計測値との差分に基づいて、過熱度Hを取得(算出)する制御を行うように構成されている。したがって、制御部210は、電子膨張弁200cにより直接的に過熱度Hを制御することが可能である。
【0036】
これにより、
図5に示すように、蒸発器200dの全体を使って気液二相A3の冷媒を全て気相A1に変化させるように過熱度Hを調整することができるので、蒸発器200dにおいて熱交換を行う場所が増加することにより、冷媒の流入側の温度を比較例よりも高くしても熱交換を行う場所が増加した分だけ冷媒がエネルギーを得ることができる。この場合、冷媒の流入側の冷媒の圧力を比較例の圧力まで下げなくても、電子膨張弁200cの開度を調整することにより、気液二相A3の冷媒を全て気相A1に変化させることができる。これにより、圧力を下げない分だけ圧縮機200aによる仕事量を減少させることができるので、冷却装置2における冷却のエネルギー効率(成績係数)を向上させることができる。また、この場合、気液二相A3の領域が増加することにより、
図4に示すように、蒸発器200dの温度変化を小さくすることができるので、算出される過熱度Hを小さくすることができる。
【0037】
ここで、効率的な冷却装置2を追求して過熱度Hを小さくすると、
図6に示すように、蒸発器200dの流出側の温度が、飽和蒸気曲線に近付くので、蒸発器200dから気液二相A3の冷媒が流出して圧縮機200aに流入する液戻り状態(液バック状態)になりやすくなる。液戻り状態では、圧縮機200aに気液二相A3の冷媒が流入することに起因して、気液二相A3の冷媒を気相A1にするために圧縮機200aの回転数Rtが増大し、圧縮機200aに負荷が加えられるので、液戻り状態であることを報知する必要がある。
【0038】
しかしながら、一時的に過熱度Hが小さくなっただけで、すぐに過熱度Hが元に戻るような場合でも、液戻り状態であると判定していたのでは、報知が度々行われてしまう。
【0039】
(回復制御)
そこで、
図7に示すように、本実施形態の制御部210は、気液二相A3の冷媒が蒸発器200dから流出して圧縮機200aに流入する液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを下げて過熱度Hを上昇させることにより液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。
【0040】
具体的には、制御部210は、回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。回復制御開始条件は、過熱度Hが設定過熱度Ht以下であるという過熱度条件、および、過熱度条件に加えて、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度(冷却空気温度T)が設定温度Ts以下であるという冷却空気温度条件を含んでいる。すなわち、制御部210は、流入側温度計測センサ203により計測された温度と流出側温度計測センサ204により計測された温度との差である過熱度Hと、冷却空気温度計測センサ206により計測された冷却された空気の温度(冷却空気温度T)とに基づいて、回復制御開始条件に含まれる、過熱度条件および冷却空気温度条件の両方を満たすか否かを判定する制御を行うように構成されている。
【0041】
このように、制御部210は、過熱度条件および冷却空気温度条件の両方を満たした場合、液戻り状態になると判定する。ここで、液戻り状態になると判定した段階では、流出側温度計測センサ204により計測された温度は気液二相A3の領域の温度になっておらず、回復制御を終了したタイミングにおいても、流出側温度計測センサ204により計測された温度は気液二相A3の領域の温度になっていない。したがって、液戻り状態とは、このまま通常の制御を行った場合、圧縮機200aに気液二相A3の冷媒が流入すると推定される状態である。
【0042】
そして、制御部210は、液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを複数のタイミングに分けて徐々に下げる制御を行うように構成されている。具体的には、制御部210は、液戻り状態になると判定したことに基づいて、3回のタイミングで、回復制御開始条件を脱して液戻り状態から回復したか否かを判定する制御を行うように構成されている。回復制御開始条件を脱したとは、過熱度Hが設定過熱度Htを超え、かつ、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度(冷却空気温度T)が設定温度Tsを超えた場合である。
【0043】
以下の説明では、複数のタイミングは、条件脱出判定時間D経過後の第1タイミングTm1、第1タイミングTm1から条件脱出判定時間D経過後の第2タイミングTm2、および、第2タイミングTm2から条件脱出判定時間D経過後の第3タイミングTm3であると仮定して説明する。条件脱出判定時間Dは、90秒であることが好ましいが、時間は適宜設定される。また、条件脱出判定時間Dの合計である合計判定時間Dtは、回復制御を終了したタイミングにおいても、流出側温度計測センサ204により計測された温度が気液二相A3の領域の温度にならないように設定される。なお、複数のタイミングは、第1タイミングTm1、第2タイミングTm2および第3タイミングTm3に限定されず、2回、または、4回以上のタイミングであってもよい。
【0044】
図7に示すように、制御部210は、第1タイミングTm1、第2タイミングTm2および第3タイミングTm3の各々において、回復制御開始条件を脱していなかった場合、電子膨張弁200cの開度Mを開度Mdだけ小さくする。開度Mdは、電子膨張弁200cの全開の開度の10%であることが好ましい。
【0045】
また、制御部210は、第1タイミングTm1、第2タイミングTm2および第3タイミングTm3のいずれかで液戻り状態から回復したことに基づいて、元の制御に戻るように構成されている。元の制御に戻るとは、後述する、初期運転モードMo1(
図8を参照)、通常運転モードMo2(
図8を参照)、低負荷運転モードMo3(
図8を参照)および定速運転モードMo4(
図8を参照)の各々から回復制御モードRm(
図8を参照)に遷移した後、液戻り状態から回復したことに基づいて、回復制御モードRmから対応する、初期運転モードMo1、通常運転モードMo2、低負荷運転モードMo3および定速運転モードMo4の各々に戻ることである。
【0046】
制御部210は、複数のタイミングのうちの最後のタイミング(
図7では第3タイミングTm3)になったことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを下げるとともに、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げて冷媒の流量を減少させる制御を行うように構成されている。圧縮機200aの回転数Rtは、0よりも大きく、かつ、通常の回転数よりもかなり小さい回転数であることが好ましい。これにより、冷却回路200内において冷媒を多少なりとも循環させることができるので、ショーケース100内の庫内温度の急激な低下を抑制することが可能である。
【0047】
このように、制御部210は、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げる前に、電子膨張弁200cの開度Mを複数のタイミング(第1タイミングTm1、第2タイミングTm2および第3タイミングTm3)に分けて徐々に下げる制御を行うように構成されている。すなわち、回復制御開始条件を脱した場合、元の制御にすぐに戻れるようにするために、冷却回路200内における冷媒の循環量を維持したまま、過熱度Hを回復する制御が行われる。制御部210は、回復制御開始条件を脱した場合、上記したように元の制御に戻るとともに、記憶部に過熱度Hなどの履歴を記憶させる制御を行うように構成されている。
【0048】
しかしながら、制御部210は、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げた後、所定の状態になったことに基づいて、液戻り状態であることを、ユーザに報知する制御を行うように構成されている。ユーザには、表示部211にメッセージを表示する、および、スピーカ212により警告音を出力するの少なくともいずれかの方法により報知される。
【0049】
ここで、所定の状態は、第1状態および第2状態を有している。
【0050】
第1状態は、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度(冷却空気温度T)が設定温度Tsよりも高い報知温度Ta以上になった状態である。制御部210は、第1状態になったことに基づいて、装置を停止させるとともに、ユーザに報知する制御を行うように構成されている。この場合、制御部210は、記憶部に過熱度Hなどの履歴を記憶させる制御を行うように構成されている。すなわち、ショーケース100内の庫内の温度が上昇するおそれがある場合は、冷却装置2を停止させて、ユーザによる修理が行われることになる。修理の際、ユーザは、過熱度Hなどの履歴を表示部211に表示させて確認することができる。
【0051】
また、第2状態は、所定時間内において、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げて液戻り状態から回復した後、再度、液戻り状態から回復させる制御を行った状態である。この場合、制御部210は、装置を停止させずに、記憶部に過熱度Hなどの履歴を記憶させる制御を行うように構成されている。すなわち、ショーケース100を運転させつつ、ユーザによるショーケース100の点検が行われる。点検の際、ユーザは、過熱度Hなどの履歴を表示部211に表示させて確認することができる。ここで、上記所定時間とは、予め設定された制御サイクルの時間である。制御サイクルの時間は、たとえば、4時間であることが好ましい。
【0052】
図8に示すように、制御部210は、圧縮機200aの駆動を開始した際に行う初期運転モードMo1と、初期運転モードMo1後の通常運転モードMo2と、初期運転モードMo1および通常運転モードMo2以外の圧縮機200aの駆動開始後の他の運転モード(低負荷運転モードMo3および定速運転モードMo4)の各々において、回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。
【0053】
初期運転モードMo1は、電子膨張弁200cを全開にした状態で、圧縮機200aを一定の回転数Rtで運転させるモードである。通常運転モードMo2は、庫内温度を所定温度の維持するために、PID制御などにより圧縮機200aおよび電子膨張弁200cを制御するモードである。
【0054】
他の運転モードは、低負荷運転モードMo3を有している。低負荷運転モードMo3は、圧縮機200aの運転を停止させて、庫内温度の上昇に基づいて再度圧縮機200aの運転を再開させるモードである。他の運転モードは、定速運転モードMo4を有している。定速運転モードMo4は、冷却空気温度Tを計測できない場合、予め設定された回転数Rtで圧縮機200aを運転させるモードである。
【0055】
回復制御モードRmは、上記回復制御を行うモードである。過負荷モードLmは、圧縮機200aの過剰な温度上昇を検出した際のモードである。停止モードSmは、冷却装置2の全ての構成を停止させるモードである。ここで、回復制御モードRmおよび過負荷モードLmが同時に発生した場合、停止モードSmに遷移する。
【0056】
除霜モードFmは、庫内の霜を除去するモードである。
【0057】
図9に示すように、初期運転モードMo1、通常運転モードMo2、低負荷運転モードMo3、定速運転モードMo4、回復制御モードRm、過負荷モードLmおよび停止モードSmの各々の優先順位は、停止モードSm、過負荷モードLm、回復制御モードRm、定速運転モードMo4、低負荷運転モードMo3、初期運転モードMo1および通常運転モードMo2の順であり、この順に優先して行われる。
【0058】
(回復制御処理)
以下に、
図10を参照して、冷却装置2の制御部210による回復制御処理について説明する。
【0059】
図10に示すように、ステップS1において、初期運転モードMo1、通常運転モードMo2、低負荷運転モードMo3および定速運転モードMo4の各々の際、回復制御開始条件を満たしたか否かが判断される。回復制御開始条件を満たした場合にはステップS2に進み、回復制御開始条件を満たしていない場合にはステップS1を繰り返す。ステップS2において、回復制御開始条件を脱出したか否かが判断される。すなわち、過熱度Hが設定過熱度Htを超え、かつ、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度(冷却空気温度T)が設定温度Tsを超えたか否かが判断される。回復制御開始条件を脱出した場合は、回復制御処理を終了し、回復制御開始条件を脱出していない場合はステップS3に進む。
【0060】
ステップS3において、条件脱出判定時間Dが経過したか否かが判断される。条件脱出判定時間Dを経過した場合にはステップS4に進み、条件脱出判定時間Dを経過していない場合にはステップS2に戻る。ステップS4において、電子膨張弁200cの開度Mを開度Mdだけ下げる。ステップS5において、電子膨張弁200cの開度Mを開度Mdだけ下げる制御を所定回数繰り返したか否かが判断される。所定回数繰り返した場合にはステップS6に進み、所定回数繰り返していない場合にはステップS2に戻る。
【0061】
ステップS6において、電子膨張弁200cの開度Mを開度Mdだけ下げるとともに、圧縮機200aの回転数Rtを下げる。ステップS7において、所定状態(第1状態または第2状態)を満たすか否かが判断される。ここで、所定状態のうち第1状態を満たす場合にはステップS7に進み、ユーザに報知するとともに冷却装置2を停止させた後、回復制御処理を終了する。また、所定状態のうち第2状態を満たす場合にはステップS7に進み、ユーザに報知した後、回復制御処理を終了する。また、所定状態を満たさない場合には回復制御処理を終了する。
【0062】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
本実施形態では、上記のように、冷却装置2の制御部210は、気液二相A3の冷媒が蒸発器200dから流出して圧縮機200aに流入する液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを下げて過熱度Hを上昇させることにより液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。これにより、液戻り状態になると判定した後、一時的に過熱度Hが小さくなっただけで、すぐに過熱度Hが元に戻った場合であっても、圧縮機200aの回転数Rtを下げて冷却回路200における冷媒の循環量を減少させていないので、電子膨張弁200cの開度Mを制御することにより、蒸発器200dに流入させる冷媒の流量を適切に調整することができる。この結果、液戻り状態から回復させた際、庫内の温度上昇を抑制することができる。また、電子膨張弁200cにより蒸発器200dの流出側の温度を飽和蒸気曲線よりも少し高温になるように過熱度Hを制御することができるので、蒸発器200dにおける気相の冷媒の箇所を減少させることによる蒸発器200dにおける効率的な熱交換を実現することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、制御部210は、過熱度Hが設定過熱度Ht以下であるという過熱度条件を含む回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。これにより、過熱度Hが設定過熱度Ht以下であるという過熱度条件を満たす場合、蒸発器200dから圧縮機200aに気液二相A3の冷媒が流出する可能性が高まるので、電子膨張弁200cの開度Mを下げて蒸発器200dに流入させる冷媒の流量を減少させることにより気液二相の冷媒が気相に相変化しやすくすることによって、過熱度Hを大きくして蒸発器200dから圧縮機200aへの気液二相A3の冷媒の流出を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、制御部210は、液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを複数のタイミング(第1タイミングTm1、第2タイミングTm2および第3タイミングTm3)に分けて徐々に下げる制御(開度Md)を行うように構成されている。これにより、早期のタイミングで液戻り状態から回復した場合、蒸発器200dへの冷媒の供給量を減少させ過ぎないようにすることができるので、蒸発器200dへの冷媒の供給量の低下に起因する庫内の温度上昇を抑制した状態で液戻り状態から回復させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、制御部210は、複数のタイミング(第1タイミングTm1、第2タイミングTm2および第3タイミングTm3)のうちのいずれかで液戻り状態から回復したことに基づいて、元の制御に戻るように構成されている。これにより、液戻り状態から回復した場合には、元の制御に戻ることにより、直前の冷却に関する制御を継続させることができるので、冷却装置2による冷却対象(商品)の冷却を継続させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、制御部210は、複数のタイミングのうちの最後のタイミングになったことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを下げるとともに、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げて冷媒の流量を減少させる制御を行うように構成されている。ここで、電子膨張弁200cの開度Mを下げて蒸発器200dに流入させる冷媒の流量を減少させても過熱度Hが大きくならなかった場合、さらに電子膨張弁200cの開度Mを小さくしても過熱度Hを大きくできないと考えられる。しかしながら、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げて冷媒の流量を減少させることにより、過熱度Hを大きくして液戻り状態から回復させることができる場合がある。この結果、冷却装置2の運転を停止させずに、冷却装置2による冷却対象(商品)の冷却を継続させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、制御部210は、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げた後、所定の状態になったことに基づいて、液戻り状態であることを、ユーザに報知する制御を行うように構成されている。これにより、ユーザが液戻り状態にあることを認識することができるので、ユーザが冷却装置2に対して液戻り状態を解消するための処置を施すことができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、所定の状態は、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度が設定温度Tsよりも高い報知温度Ta以上になった第1状態と、所定時間内において、圧縮機200aの回転数Rtを通常よりも下げて液戻り状態から回復した後、再度、液戻り状態から回復させる制御を行った第2状態とを含んでいる。これにより、液戻り状態と判定した全ての場合においてユーザに報知する構成と比較して、ユーザに報知する状態をユーザに対して必要と考えられる状態を特定して報知することができるので、ユーザに報知する回数の増加を抑制することができる。また、電子膨張弁200cにより蒸発器200dの流出側の温度を飽和蒸気曲線よりも少し高温になるように過熱度Hを制御した場合、蒸発器200dの流出側の温度が飽和蒸気曲線よりも低温になりやすくなってしまうが、すぐにユーザに報知するのではなく、回復制御を行わせることができる。この結果、蒸発器200dにおける気相A1の冷媒の箇所を減少させることによる蒸発器200dにおける効率的な熱交換を実現しつつ、ユーザに報知する回数の増加を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、制御部210は、第1状態になったことに基づいて、装置を停止させるとともに、ユーザに報知する制御を行うように構成されている。ここで、蒸発器200dにおいて冷却された空気(冷却空気温度T)の温度が設定温度Tsよりも高い報知温度Ta以上になった第1状態では、蒸発器200dから供給される空気の温度(冷却空気温度T)が高温になっている。これにより、装置を停止させて高温の空気が冷却対象に供給されないようにすることができるので、ユーザが液戻り状態を解消するための処置を施すまでの間、冷却対象の温度上昇を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、制御部210は、圧縮機200aの駆動を開始した際に行う初期運転モードMo1と、初期運転モードMo1後の通常運転モードMo2と、初期運転モードMo1および通常運転モードMo2以外の圧縮機200aの駆動開始後の他の運転モード(低負荷運転モードMo3および定速運転モードMo4)の各々において、回復制御開始条件に基づいて、液戻り状態から回復させる制御を行うように構成されている。これにより、初期運転モードMo1、通常運転モードMo2および他の運転モード(低負荷運転モードMo3および定速運転モードMo4)の各々において、蒸発器200dから圧縮機200aに気液二相A3の冷媒が流出する可能性が高まった場合に、回復制御を行うことができるので、冷媒の循環量を減少させないようにしつつ、過熱度Hを回復させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、冷却装置2は、蒸発器200dに流入する冷媒の温度を計測する流入側温度計測センサ203と、蒸発器200dから流出する冷媒の温度を計測する流出側温度計測センサ204とを含んでいる。冷却装置2は、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度を計測する冷却空気温度計測センサ206を含んでいる。回復制御開始条件は、過熱度条件に加えて、蒸発器200dにおいて冷却された空気の温度(冷却空気温度T)が設定温度Ts以下であるという冷却空気温度条件をさらに含んでいる。制御部210は、流入側温度計測センサ203により計測された温度と流出側温度計測センサ204により計測された温度との差である過熱度Hと、冷却空気温度計測センサ206により計測された冷却された空気の温度(冷却空気温度T)とに基づいて、回復制御開始条件に含まれる、過熱度条件および冷却空気温度条件の両方を満たすか否かを判定する制御を行うように構成されている。ここで、過熱度Hが設定過熱度Ht以下であるという過熱度条件だけでなく、冷却空気温度条件を満たす場合は、蒸発器200dにおける冷媒の過熱度Hの低下の影響が、蒸発器200dにおいて熱交換をした空気にまで及んでいるので、さらに、蒸発器200dから圧縮機200aに気液二相A3の冷媒が流出する可能性が高まる。このような場合でも、回復制御を行うことにより過熱度Hが回復させることができるので、冷媒の循環量を減少させないようにしつつ、過熱度Hを回復させることができる。
【0073】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0074】
たとえば、上記実施形態では、制御部210は、液戻り状態になると判定したことに基づいて、電子膨張弁200cの開度Mを複数のタイミングに分けて徐々に下げる制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、液戻り状態になると判定したことに基づいて、一度に電子膨張弁の開度を下げてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、所定の状態は、第1状態と、第2状態とを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の状態は、第1状態および第2状態以外の状態を有していてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、冷却装置2は、ショーケース100内に内蔵されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷却装置は、エアーコンディショナなどの空調装置、および、自動販売機などに適用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、電子膨張弁200cの開度Mは、コイルにより生じる磁力により調整される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電子膨張弁の開度は、モータにより調整されてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、所定の状態は、第1状態および第2状態の両方を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の状態は、第1状態および第2状態の少なくとも一方を含んでいればよい。
【0079】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部210の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0080】
2 冷却装置
200 冷却回路
200a 圧縮機
200b 凝縮器
200c 電子膨張弁
200d 蒸発器
203 流入側温度計測センサ
204 流出側温度計測センサ
206 冷却空気温度計測センサ
210 制御部
A1 気相
A3 液相
H 過熱度
Ht 設定過熱度
M、Md 開度
Mo1 初期運転モード
Mo2 通常運転モード
Mo3 低負荷運転モード(他の運転モード)
Mo4 定速運転モード(他の運転モード)
Rt 回転数
T 冷却空気温度(冷却された空気の温度)
Ta 報知温度
Tm1 第1タイミング(複数のタイミング)
Tm2 第2タイミング(複数のタイミング)
Tm3 第3タイミング(複数のタイミング)
Ts 設定温度