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特開2024-179690層形成組成物、膜形成方法、および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179690
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】層形成組成物、膜形成方法、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241219BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241219BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B32B7/12
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098730
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 雛子
(72)【発明者】
【氏名】今村 成希
(72)【発明者】
【氏名】大谷 智教
(72)【発明者】
【氏名】石田 真幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊樹
【テーマコード(参考)】
4F100
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F100AH03B
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100CA02B
4F100CA18B
4F100CB00B
4F100JA20B
4F100JB12C
4F100YY00B
4F209AA44
4F209AB10
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209PA02
4F209PB01
4F209PH02
4F209PH27
4F209PJ06
4F209PN09
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】低欠陥な密着層を形成可能な層形成組成物を提供する。
【解決手段】基材と硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物は、HLB値が1~5である界面活性剤(D)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物であって、
HLB値が1~5である界面活性剤(D)を有する、
ことを特徴とする層形成組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤(D)の常圧における沸点が160℃以上かつ300℃以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤(D)は、1分子中にアセチレン結合を含み、且つ、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤(D)は、1分子中に少なくともベンゼン環およびエーテル結合を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤(D)は、炭素数7以上の高級アルコールを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤(D)におけるフッ素原子が1原子%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤(D)はフッ素原子を含まない、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項8】
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、前記界面活性剤(D)の含有量が0.02質量%以上かつ20質量%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項9】
前記層形成組成物は溶剤(C)を含み、
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、前記溶剤(C)の含有量が70質量%以上かつ99.5質量%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項10】
前記層形成組成物は溶剤(C)を含み、
前記溶剤(C)は、常圧における沸点が80~200℃である第1溶剤(C-1)と、常圧における沸点が200℃~300℃である第2溶剤(C-2)との二種を少なくとも含有し、
前記溶剤(C)の合計を100質量部としたとき、前記第2溶剤(C-2)の含有量が1~50質量部である、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項11】
前記層形成組成物は光重合開始剤を含有しない、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項12】
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、粒径が0.2μmより大きい粒子の含有量が3質量%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項13】
前記層形成組成物は、前記基材と結合する少なくとも1つの官能基および少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)、を少なくとも有する、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項14】
前記架橋剤(B)は、以下の式で表される化合物であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、またはアルキロール基のいずれかを表し、R1~R6の少なくとも5つはアルコキシアルキル基またはアルキロール基である、ことを特徴とする請求項13に記載の層形成組成物。
【請求項15】
前記架橋剤(B)は、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、(ヒドロキシメチル)ペンタキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンの中から選択される少なくとも一種を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の層形成組成物。
【請求項16】
前記架橋剤(B)は、1分子中に、アルコキシアルキル基またはアルキロール基のいずれか一方または両方を合計で少なくとも5つ有する化合物である、ことを特徴とする請求項13に記載の層形成組成物。
【請求項17】
前記化合物(A)は、1分子中に水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基を少なくとも1つ有する、ことを特徴とする請求項13に記載の層形成組成物。
【請求項18】
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(A)および前記架橋剤(B)の重量分率をそれぞれα、βとすると、α/βが、0.11以上9以下である、ことを特徴とする請求項13に記載の層形成組成物。
【請求項19】
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(A)および前記架橋剤(B)の重量分率をそれぞれα、βとすると、αとβとの和が、0.01以上10以下である、ことを特徴とする請求項13に記載の層形成組成物。
【請求項20】
前記層形成組成物は、光ナノインプリント用である、ことを特徴とする請求項1に記載の層形成組成物。
【請求項21】
基材上に硬化性組成物の硬化膜を形成する膜形成方法であって、
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の層形成組成物を前記基材上に配置し、前記基材と前記硬化性組成物とを密着させるための密着層を前記基材上に形成する第1の工程と、
前記密着層の上に前記硬化性組成物を配置する第2の工程と、
型を用いて前記硬化性組成物を成形して前記硬化性組成物を硬化させることにより、前記基材上に前記硬化膜を形成する第3の工程と、
を含むことを特徴とする膜形成方法。
【請求項22】
前記硬化性組成物は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物を含有する、ことを特徴とする請求項21に記載の膜形成方法。
【請求項23】
前記第1の工程は、表面に水酸基を有する前記基材上に前記層形成組成物を配置する工程を含む、ことを特徴とする請求項21に記載の膜形成方法。
【請求項24】
請求項21に記載の膜形成方法を用いて、基材上に硬化性組成物の硬化膜を形成する形成工程と、
前記形成工程を経た前記基材を処理する処理工程と、
前記処理工程を経た前記基材から物品を製造する製造工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層形成組成物、膜形成方法、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMS等のような微細構造を有する物品を製造するための技術として、インプリント技術が注目されている。インプリント技術では、表面に微細な凹凸パターンが形成されたモールド(型)を、基材上に供給された硬化性組成物(レジスト)に押しつけた状態で当該硬化性組成物を硬化させる。これにより、モールドの凹凸パターンが転写された硬化性組成物の硬化膜が基材上に形成される。インプリント技術によれば、数ナノメートルオーダーの微細な構造体を基材上に形成することができる。
【0003】
インプリント技術によるパターン形成方法は、配置工程、接触工程、硬化工程、および離型工程を含みうる。配置工程では、基材のパターン形成領域上に硬化性組成物が配置される。接触工程では、凹凸パターンが形成されたモールドを基材上の硬化性組成物に接触させることにより当該硬化性組成物が成形される。硬化工程では、例えば硬化性組成物に光を照射することによって当該硬化性組成物が硬化されて硬化物が基材上に形成される。離型工程では、硬化性組成物の硬化物からモールドが分離される。これらの工程を実施することにより、モールドのパターンが転写された硬化膜が基材上に形成される。
【0004】
インプリント技術によるパターン形成方法(特に離型工程)においては、硬化性組成物と基材との間の密着性が重要である。硬化性組成物と基材との間の密着性が低いと、離型工程において硬化性組成物の硬化物からモールドを分離させる際に、当該硬化物の一部がモールドに付着したまま基材から引き剥がされ、硬化物に形成されるべきパターンの一部が欠損しうるからである。
【0005】
硬化性組成物と基材との間の密着性を向上させる技術として、硬化性組成物と基材との間に、硬化性組成物と基材とを密着させるための層である密着層を形成する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-202982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基材上に形成された密着層自体に欠陥が存在していると、この密着層の欠陥に由来して、インプリント技術によって基材(密着層)上に形成される硬化性組成物の硬化膜に未充填欠陥や膜厚不均一性が生じうる。未充填欠陥は、モールドのパターンを構成する凹部に十分に硬化性組成物が充填されていない状態で硬化性組成物が硬化されることによって起こりうる。膜厚不均一性は、硬化性組成物の硬化膜における膜厚の不均一性を意味し、例えば、密着層自体に存在する欠陥によってモールドと基材とが平行にならなかったり、モールドが変形したりすることによって生じうる。また、密着層に欠陥が存在していると、密着層上の硬化性組成物にモールドを接触させることによってモールドが恒久的に変形したり、モールドが破損したりする可能性がある。このような密着層の欠陥は、密着層を形成するための材料(層形成組成物)に起因するものと考えられ、インプリント技術では、密着層の欠陥を低減することができる層形成組成物が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題に鑑み、低欠陥な密着層を形成可能な層形成組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての層形成組成物は、基材と硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物であって、HLB値が1~5である界面活性剤(D)を有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、低欠陥な密着層を形成可能な層形成組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】膜形成方法および物品製造方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
本実施形態に係る密着層形成組成物100(層形成組成物)は、基材102(基板)と硬化性組成物103との間に密着層101を形成するための組成物である。密着層形成組成物100は、基材102と結合する少なくとも1つの官能基および少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)を少なくとも有する。また、密着層形成組成物100は、HLB値が1~5である界面活性剤(D)を有する。ここで、「基材102と硬化性組成物103を密着させる」とは、離型工程において、硬化性組成物103の硬化膜からモールドを分離させるための力よりも強い強度で、密着層101を介して基材102と当該硬化膜とが結合している状態として定義されうる。離型工程とは、後述するが、インプリント処理において、基材102上に形成された硬化性組成物103の硬化膜からモールドを分離させる工程である。
【0015】
本実施形態に係る密着層形成組成物100は、基材上に硬化性組成物103の硬化膜(硬化物)を形成する場合に特に好ましく用いられる。また、本実施形態に係る密着層形成組成物100によって形成される密着層101と基材102とを有する積層体は、硬化膜109を得るために硬化性組成物103が配置(供給)される基材として好ましく用いることができる。また、本実施形態の密着層形成組成物100は、インプリント用の密着層形成組成物として用いることができ、特に、光ナノインプリント用の密着層形成組成物として有用である。ここで、本実施形態では、硬化性組成物103として、光の照射によって硬化する性質を有する光硬化性組成物を用いる例を説明する。但し、硬化性組成物103としては、光硬化性組成物に限られるものではなく、加熱によって硬化する性質を有する熱硬化性組成物が用いられてもよい。
【0016】
以下、本実施形態に係る密着層形成組成物100が有する各成分について、詳細に説明する。本実施形態に係る密着層形成組成物100は、前述のとおり、化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)および界面活性剤(D)を有する。
【0017】
<化合物(A)>
化合物(A)は、基材102と結合する少なくとも1つの官能基、及び、硬化性組成物103と結合する少なくとも1つの重合性官能基を有する。ここで、「結合する官能基」とは、共有結合、イオン結合、水素結合、分子間力などの化学結合を生じる官能基をいう。化合物(A)は、密着層形成組成物100の全体を100質量%としたときに、1質量%未満の割合で含まれる。本実施形態で用いることができる化合物(A)の種類は、公知の化合物を広く採用でき、特に定めるものではない。
【0018】
本実施形態に係る化合物(A)は、1分子中に水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基を少なくとも1つ有する。例えば、化合物(A)としては、エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0019】
エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物(A)としては、具体的に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリジノン、2-アクリロイロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシ2-ヒドロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1-または2-ナフチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以後「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以後「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p-イソプロペニルフェノール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、o-,m-,p-キシリレンジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジアクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
エポキシ基を有する化合物(A)としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類、高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0021】
ビニルエーテル基を有する化合物(A)としては、例えば、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール-1,4-ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,3-プロパンジオールジビニルエーテル、1,3-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1-トリス〔4-(2-ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0022】
一例としては、エチレン性不飽和基(P)と親水性基(Q)を有するポリ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。エチレン性不飽和基(P)としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、マレイミド基、アリル基、ビニル基が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。親水性基(Q)としては、アルコール性水酸基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、エーテル基(好ましくはポリオキシアルキレン基)、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレイド基、ウレタン基、シアノ基、スルホンアミド基、ラクトン基、シクロカーボネート基などが挙げられる。親水性基がウレタン基である場合、ウレタン基に隣接する基が酸素原子、例えば、「-O-C(=O)-NH-」として樹脂中に存在することが好ましい。
【0023】
ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、エチレン性不飽和基(P)を含む繰り返し単位、および、親水性基(Q)を含む繰り返し単位を、同一の繰り返し単位に含んでいてもよいし、別々の繰り返し単位に含んでいてもよい。但し、ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、これらの繰り返し単位を、20~100モル%の割合で含むことが好ましい。さらに、ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、エチレン性不飽和基(P)および親水性基(Q)の両方を含まない、他の繰り返し単位を含んでいてもよく、他の繰り返し単位の割合は、アクリル樹脂中の50モル%以下であることが好ましい。
【0024】
ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、下記の一般式(I)(II)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0025】
(一般式(I)および(II)において、R1およびR2は、それぞれ、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシメチル基を表す。L1は、3価の連結基を表し、L2aは、単結合または2価の連結基を表し、L2bは、単結合、2価の連結基、または3価の連結基を表す。Pはエチレン性不飽和基を表し、Qは親水性基を表し、nは1または2である。)
【0026】
1およびR2は、各々独立に、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基を表す。R1およびR2としては、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0027】
1は、3価の連結基を表す。3価の連結基は、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた3価の基であり、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、および窒素原子を含んでいても良い。3価の連結基の炭素数は1~9が好ましい。
【0028】
2aは、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、またはこれらを組み合わせた2価の基であり、エステル結合、エーテル結合、およびスルフィド結合を含んでいてもよい。2価の連結基の炭素数は1~8が好ましい。
【0029】
2bは、単結合、2価の連結基、または3価の連結基を表す。L2bが表す2価の連結基は、L2aが表す2価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。L2bが表す3価の連結基は、L1が表す3価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0030】
Pは、エチレン性不飽和基を表す。Pが表すエチレン性不飽和基は、上記で例示したエチレン性不飽和基と同義であり、好ましいエチレン性不飽和基も同様である。また、Qは、親水性基を表す。Qが表す親水性基は、上記で例示した親水性基と同義であり、好ましい親水性基も同様である。
【0031】
nは、1または2であり、1が好ましい。
【0032】
なお、L1、L2aおよびL2bは、エチレン性不飽和基、親水性基を含まない。
【0033】
ポリ(メタ)アクリレート化合物(アクリル樹脂)は、さらに、下記の一般式(III)および/または一般式(IV)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0034】
(一般式(III)および(IV)において、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシメチル基を表す。L3およびL4は、それぞれ、単結合または2価の連結基を表す。Qは親水性基を表す。R5は、炭素数1~12の脂肪族基、炭素数3~12の脂環族基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。)
【0035】
3およびR4は、それぞれ、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基を表す。R3およびR4としては、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0036】
3およびL4は、それぞれ、単結合または2価の連結基を表す。L3およびL4の各々が表す2価の連結基としては、一般式(I)中のL2aが表す2価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0037】
Qは親水性基を表す。Qが表す親水性基は、上記で例示した親水性基と同義であり、好ましい親水性基も同様である。
【0038】
5は、炭素数1~12の脂肪族基、脂環族基、芳香族基を表す。炭素数1~12の脂肪族基としては、例えば、炭素数1~12のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、3,3,5-トリメチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基)などが挙げられる。炭素数3~12の脂環族基としては、炭素数3~12のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基)などが挙げられる。炭素数6~12の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。中でも、フェニル基、ナフチル基が好ましい。脂肪族基、脂環族基および芳香族基は、置換基を有していてもよい。
【0039】
以下に、本実施形態で用いることができるアクリル樹脂の具体例を示す。なお、下記の具体例中、xは0~50mol%を表し、yは0~50mol%を表し、zは20~100mol%を表している。
【0040】
【0041】
また、本実施形態で用いることができる化合物(A)の他の例としては、主鎖が芳香環を含むものが挙げられる。芳香環を含む化合物(A)としては、主鎖が芳香環とアルキレン基とからなり、主鎖がベンゼン環とメチレン基とが交互に結合した構造であるものを例示することができる。この化合物(A)は、側鎖に反応性基を有することが好ましく、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましく、側鎖にアクリロイル基を有することがより好ましい。
【0042】
主鎖が芳香環を含む化合物(A)は、下記の一般式(A)で表される構成単位を主成分とするポリマーが好ましく、下記の一般式(A)で表される構成単位が90モル%以上を占めるポリマーであることがより好ましい。
【0043】
一般式(A)
(一般式(A)において、Rはアルキル基であり、L1およびL2は、それぞれ、2価の連結基であり、Pは重合性基である。nは0~3の整数である。)
【0044】
Rは、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。L1は、アルキレン基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキレン基であることがより好ましく、「-CH2-」であることがより好ましい。L2は、「-CH2-」、「-O-」、「-CHR(Rは置換基)-」、およびこれらの2以上の組み合わせからなる2価の連結基であることが好ましい。Rは、OH基が好ましい。Pは、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。nは、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態で用いることができる化合物(A)の他の例としては、エポキシポリ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。その他、化合物(A)としては、例えば、特表2009-503139号公報の段落番号0040~0056に記載されたものが挙げられ、この内容は、参照により本明細書に組み込まれうる。
【0046】
上述した化合物(A)の中でも、基材との結合性が高い官能基を有するものが好ましい。基材との結合性が高い官能基としては、水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基のいずれかから選ばれ、水酸基またはカルボキシル基が特に好ましい。
【0047】
化合物(A)は、低分子化合物でもポリマーでもよいが、ポリマーが好ましい。分子量は、通常200以上100,000以下であり、好ましくは500以上50,000以下であり、さらに好ましくは1,000以上10,000以下である。化合物(A)の分子量が200以下だとベーク工程にて揮発する虞があり、100,000以上だとスピンコート工程において気泡が残りやすい虞がある。
【0048】
なお、化合物(A)は、一種類の化合物で構成されていてもよく、複数種類の化合物で構成されていてもよい。
【0049】
<架橋剤(B)>
本実施形態に係る架橋剤(B)は、1分子中に、アルコキシアルキル基またはアルキロール基のいずれか一方または両方(以下、「官能基a」と称する)を合計で少なくとも5つ有する化合物である。
【0050】
本実施形態に係る架橋剤(B)が有する官能基aは、後述する密着層形成工程において、化合物(A)の有する水酸基またはカルボキシル基と反応する官能基である。その結果、化合物(A)と架橋剤(B)との間に結合が生成される。架橋剤(B)は1分子中に官能基aを複数個有するため、架橋剤(B)は、複数個の化合物(A)との間にそれぞれ結合を生じさせることができる。架橋剤(B)が複数個の化合物(A)との間にそれぞれ結合を生じることによって、密着層101を構成する化合物同士が架橋した構造(架橋構造)を形成することができる。
【0051】
本実施形態に係る架橋剤(B)が有する官能基aと、化合物(A)が有する水酸基またはカルボキシル基との反応は、後述する密着層形成工程における加熱プロセスによって生じることが好ましい。
【0052】
このように架橋構造を有する密着層101を形成することで、基材102に接続されていない、遊離した未反応の化合物(A)または架橋剤(B)の量を低減させることができる。これにより、密着層101の膜強度を向上させることができる。
【0053】
未反応の化合物(A)や架橋剤(B)が密着層101中に遊離した状態で存在していると、後述する硬化性組成物103の配置工程において、これらの化合物が硬化性組成物103中へと溶出する可能性がある。その結果、硬化性組成物103の組成が変化することによって硬化性組成物103の特性が変化し、例えば硬化性組成物103を硬化させて得られる硬化膜109のパターンの剥がれ欠陥などが生じてしまう。
【0054】
一方、本実施形態に係る密着層形成組成物100を用いると、密着層101中の、基材102に接続されていない遊離した化合物(A)や架橋剤(B)の量を従来よりも大幅に低減させることができる。これにより、硬化性組成物103の配置工程における硬化性組成物103中への化合物(A)または架橋剤(B)の溶出も大幅に抑制することができる。その結果、上述した硬化膜109のパターンの剥がれ欠陥などの発生を抑制することができる。
【0055】
また、架橋剤(B)が有する官能基aは、基材102の表面に存在する官能基との間で、共有結合、イオン結合、水素結合、分子間力などのいずれかの化学結合または相互作用を生じてもよい。例えば、基材102として表面にシラノール基などの水酸基を有する基材を用いた場合には、アルコキシアルキル基とシラノール基との間で脱アルコール反応が生じる。その結果、架橋剤(B)と基材102との間に共有結合を形成することができる。これにより、密着層101と基材102との間の密着性を向上させることができる。
【0056】
さらに、架橋剤(B)は、下記の一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0057】
一般式(1)
【0058】
一般式(1)において、R1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、またはアルキロール基のいずれかを表す。但し、R1~R6の少なくとも5つはアルコキシアルキル基またはアルキロール基である。
【0059】
上記の一般式(1)で表される化合物は、構造の中心にトリアジン環を有するメラミンの誘導体である。すなわち、一般式(1)で表される化合物は、1,3,5-トリアジンの2位、4位、6位に窒素原子がそれぞれ結合した構造を有している。さらに、一般式(1)で表される化合物は、5つまたは6つの官能基aを有する。即ち、上記の一般式(1)で表される化合物は、グリコールウリルの誘導体等の尿素系化合物に比べて、官能基aを多く有する。
【0060】
架橋剤(B)が有するアルコキシアルキル基またはアルキロール基の種類は、特に限定はされないが、アルコキシアルキル基としてはメトキシメチル基が好ましく、アルキロール基としてはメチロール基が好ましい。このようにアルコキシアルキル基またはアルキロール基として式量の小さな官能基を用いることで、密着層101中の単位質量あたりの架橋密度を向上させることができる。その結果、密着層101の膜強度を向上させることができる。
【0061】
架橋剤(B)の具体例としては、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、(ヒドロキシメチル)ペンタキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどが挙げられる。架橋剤(B)は、これらの中から選択される少なくとも一種を含みうるが、これに限定されるものではない。
【0062】
また、架橋剤(B)として尿素系化合物を適用してもよい。具体的には、テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、4,5-ジメトキシ-1,3ビス(メトキシメチル)イミダゾリジン-2-オン、テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(エトキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(イソプロポキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(アミルオキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(ヘキソキシメチル)グリコールウリルなどのメチル化された尿素系架橋剤が挙げられる。
【0063】
尿素系化合物の市販品としては、三和ケミカル社より市販されているニカラックMX-270、ニカラックMX-280、ニカラックMX-290、アメリカンシアナミド社(American Cyanamid Co.)より市販されているパウダーリンク(Powderlink)1174、サイテックインダストリーズ社より市販されているサイメル1170等を好ましく使用することができる。
【0064】
また、上記の樹脂の単量体も使用することができ、例えば、下記の化合物、ジメトキシメチル尿素等を挙げることができる。
【0065】
【0066】
なお、架橋剤(B)は、一種類の化合物で構成されていてもよく、複数種類の化合物で構成されていてもよい。
【0067】
<化合物(A)および架橋剤(B)の配合比率>
密着層形成組成物100のうち、化合物(A)または架橋剤(B)のどちらか一方の配合比率が極端に小さいと、密着層101の架橋密度が小さくなり、膜強度や硬化性が不十分となる。したがって、密着層形成組成物100の全重量に対する化合物(A)および架橋剤(B)の重量分率をそれぞれα、βとすると、α:βは1:9~9:1であることが好ましく、1:5~5:1であることがより好ましい。すなわち、α/βは、0.11以上9以下であることが好ましく、0.2以上5以下であることが好ましい。なお、最適な配合比率は、化合物(A)および架橋剤(B)の官能基の数や分子量、反応性によって異なるが、概ね上述の範囲内の配合比率とすることで、密着層形成組成物100の硬化性を高めることができる。
【0068】
密着層形成組成物100における化合物(A)および架橋剤(B)の配合割合(αとβとの和)は、密着層形成組成物100の粘度や、目的とする密着層101の膜厚などによって適宜調整することができる。αとβとの和は、密着層形成組成物100の全重量に対して、0.01以上10以下であることが好ましく、0.1以上10以下であることがより好ましく、0.1以上7以下であることがさらに好ましい。密着層形成組成物100における化合物(A)と架橋剤(B)との配合割合を上記範囲にすることで、密着層形成組成物100の粘度を低くすることができ、形成される密着層101の膜厚を小さくすることができる。
【0069】
<揮発性溶剤(C)>
本実施形態に係る密着層形成組成物100は、揮発性溶剤(C)(以下、単に「溶剤(C)」と称する)を含有する。密着層形成組成物100が溶剤(C)を含有することによって、密着層形成組成物100の粘度を低下させることができる。その結果、基材102に対する密着層形成組成物100の塗布性を向上させることができる。
【0070】
溶剤(C)は、常圧における沸点が80~200℃である第1溶剤(C-1)と、常圧における沸点が200℃~300℃である第2溶剤(C-2)を混合して使用してもよい。或いは、溶剤(C)は、第1溶剤(C-1)を単独で使用してもよいし、第2溶剤(C-2)を単独で使用してもよい。
【0071】
第1溶剤(C-1)は、化合物(A)および架橋剤(B)が溶解することができる溶剤であれば、特に限定はされないが、常圧における沸点が80~200℃である溶剤が好ましい。また、第1溶剤(C-1)は、水酸基、エーテル構造、エステル構造、ケトン構造のいずれかを少なくとも1つ有する有機溶剤であることが好ましい。これらの溶剤は、化合物(A)および架橋剤(B)の溶解性や、基材102に対する濡れ性などに優れる。
【0072】
本実施形態に係る第1溶剤(C-1)として用いることが可能な溶剤の具体例としては、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、sec-ウンデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、プロピレングリコールなどのアルコール系溶剤;n-ブチルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、2-n-ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1-n-ブトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;ブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、フェンチョンなどのケトン系溶剤;ジエチルカーボネート、酢酸アミル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、マロン酸ジエチルなどの酢酸系溶剤;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミドなどのアミド系から選ばれる単独、あるいはこれらの混合溶剤が挙げられる。この中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはその混合溶液が、塗布性の観点で特に好ましい。
【0073】
第2溶剤(C-2)は、化合物(A)および架橋剤(B)が溶解することができる溶剤であれば、特に限定はされないが、常圧における沸点が200~300℃である溶剤が好ましい。また、第2溶剤(C-2)は、水酸基、エーテル構造、エステル構造、ケトン構造のいずれかを少なくとも1つ有する有機溶剤であることが好ましい。これらの溶剤は、化合物(A)および架橋剤(B)の溶解性や、基材102に対する濡れ性などに優れる。
【0074】
本実施形態に係る第2溶剤(C-2)として用いることが可能な溶剤の具体例としては、n-ノニルアルコール、n-デカノール、sec-テトラデシルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのアルコール系溶剤;n-ヘキシルエーテル、2-n-ヘキソキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-(2-エチルブトキシ)エタノール、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、1-フェノキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤;アセトフェノンなどのケトン系溶剤;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸ベンジル、酢酸n-ノニル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸n-アミル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどの酢酸系溶剤;アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系から選ばれる単独、あるいはこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0075】
上述のように、溶剤(C)は、第1溶剤(C-1)および第2溶剤(C-2)の二種を含有していてもよい。この場合、第1溶剤(C-1)および第2溶剤(C-2)の合計を100質量部としたとき、第2溶剤(C-2)は1~50質量部が好ましく、2~40質量部がより好ましく、5~25質量部がよりさらに好ましい。第2溶剤(C-2)の質量部を上記範囲内とすることで、膜厚の面内均一性および欠陥密度が改善される。なお、溶剤(C)は三種類以上の溶剤を含有していてもよい。
【0076】
本実施形態に係る溶剤(C)の、密着層形成組成物100における配合割合は、化合物(A)および架橋剤(B)の粘度や塗布性、形成する密着層101の膜厚などによって適宜調整することができる。密着層形成組成物100における溶剤(C)の配合割合(含有量)は、密着層形成組成物100の全体を100質量%としたとき、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。密着層形成組成物100における溶剤(C)の配合割合が大きいほど、形成する密着層101の膜厚を薄くできるため、インプリント用の密着層形成組成物として好ましい。密着層形成組成物100における溶剤(C)の配合割合が70質量%未満である場合には、十分な塗布性が得られない場合がある。なお、溶剤(C)の配合割合の上限は特に限定はされないが、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
<界面活性剤(D)>
界面活性剤とは、親水基と疎水基とを持つ物質の総称である。界面活性剤を選択するうえで指標として使用される数値に、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値がある。HLB値とは、界面活性剤における親水性と疎水性とのバランスを表した1~20の数値であり、1に近いほど疎水性が高く、20に近いほど親水性が高いことを示す。
【0078】
一般に、HLB値が1~3である界面活性剤は消泡剤として添加され、HLB値が3~6である界面活性剤はW/O乳化剤として添加され、HLB値が7~9である界面活性剤は湿潤剤として添加されることが多い。また、HLB値が13~15である界面活性剤は洗浄剤として添加され、HLB値が15~18である界面活性剤は可溶化剤として添加されることが多い。しかし、その他の添加物、溶媒のHLBバランスも考慮されるため、一概にその範囲ではない。
【0079】
ここで、基材102上に形成された密着層101自体に欠陥が存在していると、この密着層101の欠陥に由来して、インプリント技術によって基材102(密着層101)上に形成される硬化性組成物103の硬化膜に未充填欠陥や膜厚不均一性が生じうる。本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、このような密着層101の欠陥は、真円状の形状を有する傾向があることから、密着層形成組成物100(溶液)中に含まれているバブルが消泡しないまま、スピンコート後のベーク工程で硬化されたものであると推察した。よって、本実施形態では、低HLBの界面活性剤を消泡剤として密着層形成組成物100に添加している。消泡剤は、泡膜に吸着して泡膜に不均一な部分をつくることで泡膜の安定性を低くさせ、バブルを消泡させる性質を有する。
【0080】
本実施形態に係る界面活性剤(D)は、HLB値が1~5である界面活性剤である。本明細書のHLB値は、Davies法による基数(以下の表1参照)をもとにして計算されている。具体的には、HLB値は、「HLB=7+Σ(親水基の基数)-n(CH2基の基数)」によって計算されうる。
【0081】
HLBの基数
【0082】
本実施形態に係る界面活性剤(D)は、HLB値が1~5であるとともに、1分子中にアセチレン結合を含み、且つ、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を含むものであってもよい。また、本実施形態に係る界面活性剤(D)は、HLB値が1~5であるとともに、1分子中に少なくともベンゼン環およびエーテル結合を含むものであってもよい。本実施形態に係る界面活性剤(D)は、HLB値が1~5であるとともに、炭素数7以上の高級アルコールを含むものであってもよい。ここで、本実施形態に係る界面活性剤(D)は、表面活性剤(D)におけるフッ素原子が1原子%以下であることが好ましく、フッ素原子を含まないことがより好ましい。
【0083】
HLB値が1~5である界面活性剤としては、アセチレン系、芳香族系、アルコール系、ソルビタン系、プルロニック(登録商標)系、Si系、アミン系などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0084】
アセチレン径アセチレン系界面活性剤としては、2,4,7,9ーテトラメチルー5ーデシンー4,7ージオールなどが挙げられる。製品としては、日信化学社製のサーフィノールDF110D、サーフィノール104シリーズ、サーフィノール420、オルフィンD-10A、オルフィンD-10PG、川研ファインケミカル社製のアセチレノールE00などの具体例が挙げられる。
【0085】
芳香族系界面活性剤としては、ベンゾフェノンジメチルケタールなどの具体例が挙げられる。
【0086】
アルコール系界面活性剤としては、一価アルコールでは炭素数7以上、二価アルコールでは炭素数13以上、三価アルコールでは炭素数17以上のアルコールが含まれる。また、炭素鎖に二重結合、三重結合を含んでいてもよい。また、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基を含んでいてもよい。例えば、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、セタノール、インステアリルグリセリルエーテル、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、モノミリスチン、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ペンタオレイン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、モノグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸モノ・ジグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、カプリル酸モノ・ジグリセライド、モノステアリン酸プロピレングリコール、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、ドデカベヘン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-4、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-4、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、デカオレイン酸ポリグリセリル-10、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-4、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカステアリン酸ポリグリセリル-10、ヘキサステアリン酸ポリグリセリル-5、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、トリステアリン酸ポリグリセリル-4、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-6、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどの具体例が挙げられる。製品としては、日光ケミカルズ製のNIKKOL MGS-F75V、NIKKOL MGS-BMV、NIKKOL MGS-BV2、NIKKOL MGS-BV2F、NIKKOL MGM、NIKKOL MGS-F50V、NIKKOL Decaglyn 5-SV、NIKKOL Decaglyn 5-ISV、NIKKOL Decaglyn 5-OV、NIKKOL PMS-1CV、NIKKOL EGMS-70、NIKKOL EGMS-70V、NIKKOL MGS-F50VF、NIKKOL Decaglyn 5-OVF、NIKKOL Decaglyn 5-SVF、NIKKOL PMS-1CSEV、NIKKOL MGS-AV、NIKKOL MGS-AMV、NIKKOL MGS-F40V、NIKKOL MGS-TGV、NIKKOL MGIS、NIKKOL SO-15V、NIKKOL SO-15MV、NIKKOL MYS-2V、NIKKOL MYS-2、NIKKOL MYO-2、NIKKOL MYS-NIKKOL MGS-F40VF、NIKKOL DEGS、NIKKOL GS-6、花王製のレオドールMS-50、レオドールMS-60、レオドールMO-60、エキセルS-95、エキセルVS-95、エキセルO-95R、エキセル200、エキセル122V、エキセルP-40、エキセルP-40S、エキセル122V、エキセル200、エキセルO-95N、エキセルO-95F、ホモテックスPT、ホモテックスPS-200V、ペネトールGE-IS、阪本薬品工業製のSフェイスIS-204P、SYグリスターDDB-750、SYグリスターPS-3S、SYグリスターPO-3S、SフェイスIS-202P、SYグリスターCRS-75、SYグリスターDAO-7S、SYグリスターCR-310、SフェイスIS-1009P、SYグリスターDAS-7S、SYグリスターHB-750、SYグリスターPS-5S、SYグリスターTS-3S、SフェイスIS-201P、SYグリスターPO-5S、BASF製のCUTINA GMSV、太陽化学製のサンソフトA-186E-C、東邦化学工業製のソルボンMG-100、ミヨシ油脂製のペレテックス2917H、竹本油脂製の竹サーフD-1402、ADEKA製のアデカトールPC-1、LION製のカデナックスGS-90、青木油脂工業製のブラウノンSR-702Lなどの具体例が挙げられる。
【0087】
ソルビタン系界面活性剤としては、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレアート、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ソルビタンオレイン酸エステル、ソルビタントリオレイン酸エステル、ソルビタンステアリルエステル、ソルビタンオレイルエステル、ソルビタンモノラウレートなどの具体例が挙げられる。製品としては、三洋化成製イオネットS-85、イオネットS-80、イオネットS-60V、日光ケミカルズ製のNIKKOL SS-30V、NIKKOL SO-30V、NIKKOL SO-30VF 、NIKKOLSO-15VF、NIKKOL SS-15VF、NIKKOLSS-15V、NIKKOL SO-15VF、NIKKOLSS-15VF、NIKKOL SS-15V、NIKKOLSO-10V、NIKKOL SI-15RV、NIKKOLSO-10VF、NIKKOL SS-10VF、NIKKOLSS-10MV、花王製のレオドールSP-S10V、レオドールSP-20、レオドールSP-S30V、レオドールSP-O10V、レオドールSP-O30V、レオドールAS-10V、レオドールAO-15V、レオドールAO-10V、レオドールAO-15V、エマゾールS-10V、エマゾールS-30V、エマゾールO-10V、エマゾールO-30V、東邦化学工業製のソルボンS-80、ソルボンS-85、ソルボンS-60、竹本油脂製の竹サーフD-935、タケサーフD-935-T、ADEKA製のアデカエストールS-60、アデカエストールS-80、青木油脂工業製のブラウノンP-20、ブラウノンP-80などの具体例が挙げられる。
【0088】
プルロニック(登録商標)系界面活性剤としては、三洋化成PE-61、PE-71などの具体例が挙げられる。
【0089】
Si系界面活性剤としては、PEG-3ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG-12ジメチコンPPG-20クロスポリマー、ポリシリコーン-13、ラウリルPEG/PPG-18/18メチコン、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、セチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどの具体例が挙げられる。製品としては、ダウ・東レ製のDOWSILTM ES-5612 Formulation Aid、DOWSILTMBY 11-030 (DOWSILTM BY 25-337)、DOWSILTMBY 22-008 M、DOWSILTM EL-7040 Hydro Elastomer Blend、DOWSILTM FZ-2233、DOWSILTM 5200 Formulation Aid、DOWSILTMES-5300 Formulation Aid、DOWSILTM ES-5600Silicone Glycerol Emulsifier、DOWSILTMES-5700 Formulation Aid、信越シリコーン製のKF-6015、KF-6017、KF-6017P、KF-6048、KF-6028、KF-6028P、KF-6038などの具体例が挙げられる。
【0090】
アミン系界面活性剤としては、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。製品としては、ミヨシ油脂製のペレテックス4817、青木油脂工業製のブラウノンCHA-2Pなどの具体例が挙げられる。
【0091】
界面活性剤(D)は、常圧における沸点が160℃以上300℃以下であることが望ましい。界面活性剤(D)の沸点を160℃以上とすることで、室温で基材102上に密着層形成組成物100を供給している間(例えばスピンコート中)において、界面活性剤(D)は、揮発せずに、密着層形成組成物100中のバブルを消失させる消泡効果を発揮する。その結果、密着層101自体に生じる欠陥を低減することができる。また、界面活性剤(D)の沸点を300℃以下とすることで、後続のベーク工程で揮発し、インプリント工程で発揮すべき密着層101の基本性能を損なうことを回避することができる。
【0092】
常圧における沸点が160℃以上300℃以下である界面活性剤(D)の具体例としては、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール(沸点253℃)、ベンゾフェノンジメチルケタール(沸点290℃)、ヘプタノール(沸点177℃)、オクタノール(沸点195℃)、ノナノール(沸点212℃)、デカノール(沸点228℃)、ウンデカノール(沸点243℃)、ドデカノール(沸点258℃)、トリデカノール(沸点272℃)、テトラデカノール(沸点263℃)、ペンタデカノール(沸点299℃)などが挙げられる。製品としては、日信化学社製のサーフィノール104シリーズ(沸点253℃)、サーフィノール420(沸点253℃)、川研ファインケミカル社製のアセチレノールE00(沸点253℃)の具体例が挙げられる。
【0093】
密着層形成組成物100における界面活性剤(D)の配合割合(含有量)は、密着層形成組成物100の全体を100重量%としたとき、0.02質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。密着層形成組成物100における界面活性剤(D)の配合割合が大きいほど、密着層101の欠陥が減少するため、インプリント用の密着層形成組成物として好ましい。密着層形成組成物100における溶剤(C)の配合割合が0.02質量%未満である場合には、密着層101の欠陥を低減する性能が十分に得られない場合がある。なお、界面活性剤(D)の配合割合の上限は、特に限定はされないが、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。20質量%以上であると、密着層形成組成物100を硬化して得られる密着層101の密度が低くなるという懸念がある。
【0094】
なお、界面活性剤(D)は、一種類の化合物で構成されていてもよく、複数種類の化合物で構成されていてもよい。
【0095】
<その他の成分(E)>
本実施形態に係る密着層形成組成物100は、前述した化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)および界面活性剤(D)の他に、種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更なる添加成分(E)を含有していてもよい。このような添加成分(E)としては、架橋剤、ポリマー成分、酸化防止剤、重合禁止剤等が挙げられる。密着層形成組成物100は、基材102上に配置した後、加熱により溶剤(C)を揮発させつつ硬化されることで、基材102上に形成される密着層101の膜厚を薄くすることができる。そのため、本実施形態に係る密着層形成組成物100は、光照射によって密着層形成組成物100を硬化させる目的などで添加される光重合開始剤を含まないことが好ましい。密着層形成組成物100が光重合開始剤を含むと、密着層101の形成の過程で光重合が生じ、溶剤(C)が完全に揮発する前に密着層形成組成物100が硬化してしまい、密着層101の膜厚を薄くすることが困難になる可能性があるからである。
【0096】
<密着層形成組成物の粘度>
本実施形態に係る密着層形成組成物100の23℃における粘度は、好ましくは0.5mPa・s以上20mPa・s以下であり、より好ましくは1mPa・s以上10mPa・s以下であり、さらに好ましくは1mPa・s以上5mPa・s以下である。但し、密着層形成組成物100の23℃における粘度は、化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)、界面活性剤(D)および必要に応じて添加するその他の成分(E)などの各成分の種類や配合割合によって異なりうる。
【0097】
密着層形成組成物100の23℃における粘度を20mPa・s以下とすることにより、密着層形成組成物100の基材102に対する塗布性を向上させ、基材102上における密着層形成組成物100の膜厚の調整などを容易に行うことができる。
【0098】
<密着層形成組成物に混入している不純物>
本実施形態に係る密着層形成組成物100は、できる限り不純物を含まないことが好ましい。ここで記載する不純物とは、前述した化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)、界面活性剤(D)、および必要に応じて添加するその他の成分(E)以外のものを意味する。密着層形成組成物100をインプリント処理に用いる場合には、特に、パーティクルおよび固形成分を含まないことが好ましい。ここで、パーティクルとは、典型的には数nm~数μmの粒径(直径)を有するゲル状ないし固形状の粒状物質を指す。したがって密着層形成組成物100は、粒径が0.2μmより大きい粒子の含有量が、密着層形成組成物100の全体を100質量%としたときに0質量%以上3質量%未満であることが好ましい。
【0099】
したがって、本実施形態に係る密着層形成組成物100は、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過等が好ましい。具体的には、前述した化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)、界面活性剤(D)、および必要に応じて添加するその他の成分(E)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。また、孔径0.001μm以上0.2μm以下のフィルタで濾過することがより好ましい。フィルタを用いた濾過は、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすることがさらに好ましい。また、濾過した液を再度濾過してもよい。孔径の異なるフィルタを複数用いて濾過してもよい。濾過に使用するフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。
【0100】
このような精製工程を経ることで、密着層形成組成物100に混入したパーティクル等の不純物を取り除くことができる。これにより、パーティクル等の不純物によって、密着層形成組成物100を塗布した後に得られる密着層101に不用意に欠陥が発生することを防止することができる。
【0101】
なお、密着層形成組成物100を、半導体集積回路など、半導体素子で利用される回路基板を製造するために使用する場合、密着層形成組成物100中に、金属原子を含有する不純物(金属不純物)が混入することを極力避けることが好ましい。これは、金属などの不純物によって回路基板の動作を阻害しないようにするためである。このような場合、密着層形成組成物100に含まれる金属不純物の濃度としては、10ppm以下にすることが好ましく、100ppb以下にすることがさらに好ましい。
【0102】
したがって、密着層形成組成物100は、その製造工程において、金属に接触させずに調製されることが好ましい。すなわち、化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)、界面活性剤(D)、および必要に応じて添加するその他の成分(E)の各原料を秤量する際や、配合して撹拌する際には、金属製の秤量器具、容器などを使用しないことが好ましい。また、前述した精製工程において、さらに金属不純物除去フィルタを用いて濾過することが好ましい。金属不純物除去フィルタとしては、セルロース及び珪藻土製、イオン交換樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。これらの金属不純物除去フィルタは、洗浄してから用いることが好ましい。洗浄方法としては、超純水による洗浄、アルコールによる洗浄、密着層形成組成物100による共洗いの順で実施することが好ましい。
【0103】
<光硬化性組成物>
本実施形態に係る密着層形成組成物100から形成された密着層101の上に配置(供給)される硬化性組成物103は、通常、重合性化合物である成分(F)と、光重合開始剤である成分(G)と、を含有する。
【0104】
[成分(F):重合性化合物]
成分(F)は、重合性化合物である。ここで、本明細書において重合性化合物とは、光重合開始剤(成分(G))から発生した重合因子(ラジカル等)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物(重合体)からなる膜を形成する化合物である。なお、成分(F)は、一種類の重合性化合物で構成されていてもよいし、複数種類の重合性化合物で構成されていてもよい。
【0105】
成分(F)としての重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ以上有する化合物、すなわち、(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。したがって、成分(F)である重合性化合物は、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。また、成分(F)の主成分が(メタ)アクリル化合物であることがより好ましく、(メタ)アクリル化合物であることが最も好ましい。なお、ここで記載する成分(F)の主成分が(メタ)アクリル化合物であるとは、成分(F)の90重量%以上が(メタ)アクリル化合物であることを示す。
【0106】
ラジカル重合性化合物が、アクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合、成分(F)は、単官能(メタ)アクリレートモノマーと多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。これは、単官能(メタ)アクリレートモノマーと多官能(メタ)アクリレートモノマーを組み合わせることで、強度が強い硬化膜が得られるからである。
【0107】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0108】
上記の単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、アロニックスM101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO-1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2-MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO-A、EC-A、DMP-A、THF-A、HOP-A、HOA-MPE、HOA-MPL、PO-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、エポキシエステルM-600A(以上、共栄社化学製)、KAYARADTC110S、R-564、R-128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP-10G、AMP-20G(以上、新中村化学工業製)、FA-511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE-2、PHE-4、BR-31、BR-31M、BR-32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0109】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジアクリレート、o-キシリレンジ(メタ)アクリレート、m-キシリレンジ(メタ)アクリレート、p-キシリレンジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0110】
上記の多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、ユピマーUVSA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート#195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート4EG-A、9EG-A、NP-A、DCP-A、BP-4EA、BP-4PA、TMP-A、PE-3A、PE-4A、DPE-6A(以上、共栄社化学製)、A-DCP、A-HD-N、A-NOD-N、A-DOD-N(以上、新中村化学工業製)、KAYARADPET-30、TMPTA、R-604、DPHA、DPCA-20、-30、-60、-120、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬製)、アロニックスM208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシVR-77、VR-60、VR-90(以上、昭和電工製)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0111】
なお、上述した化合物群において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。POは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性化合物Aとは、化合物Aの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基とがプロピレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。また、EOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性化合物Bとは、化合物Bの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基とがエチレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。
【0112】
[成分(G):光重合開始剤]
成分(G)は、光重合開始剤である。ここで、本明細書において光重合開始剤は、所定の波長の光を感知して重合因子(ラジカル)を発生させる化合物である。具体的には、光重合開始剤は、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線、放射線等)によりラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)である。より具体的には、例えば、150nm以上400nm以下の波長の光によりラジカルを発生する重合開始剤である。なお、成分(G)は、一種類の光重合開始剤で構成されていてもよいし、複数種類の光重合開始剤で構成されていてもよい。
【0113】
ラジカル発生剤としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-又はp-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の置換基を有してもよい2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン等のα-アミノ芳香族ケトン誘導体;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-t-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナンタラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン等のN-フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル誘導体;キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0114】
上記のラジカル発生剤の市販品として、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI-1700、-1750、-1850、CG24-61、Darocur 1116、1173、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0115】
硬化性組成物103における成分(G)の配合割合は、成分(F)の全量に対して、0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上7重量%以下であることがより好ましい。硬化性組成物103における成分(G)の配合割合を成分(F)の全量に対して0.01重量%以上とすることにより、硬化性組成物103の硬化速度が速くなり、反応効率を高めることができる。また、硬化性組成物103における成分(G)の配合割合を成分(F)の全量に対して10.0重量%以下とすることにより、得られる硬化膜(109、110)の機械的強度の劣化を防げることができる。
【0116】
[その他の添加成分(H)]
硬化性組成物103は、前述した、成分(F)および成分(G)の他に、種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更なる添加成分(H)を含有していてもよい。このような添加成分(H)としては、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、揮発性溶剤、ポリマー成分、成分(G)でない重合開始剤、等が挙げられる。
【0117】
増感剤は、重合反応促進や反応転化率の向上を目的として、適宜添加される化合物である。増感剤として、例えば、増感色素等が挙げられる。増感色素は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、成分(G)と相互作用する化合物である。なお、ここで記載する相互作用とは、励起状態の増感色素から成分(G)へのエネルギ移動や電子移動等である。
【0118】
増感色素の具体例としては、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が挙げられるが、これらに限定はされない。なお、増感剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0119】
水素供与体は、成分(G)から発生した開始ラジカルや、重合生長末端のラジカルと反応し、より反応性が高いラジカルを発生する化合物である。成分(G)が光ラジカル発生剤である場合に添加することが好ましい。
【0120】
このような水素供与体の具体例としては、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N-フェニルグリシンなどのアミン化合物、2-メルカプト-N-フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプト化合物、等が挙げられるが、これらに限定はされない。なお、水素供与体は、一種類を単独で用いてもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。また、水素供与体は、増感剤としての機能を有してもよい。
【0121】
硬化性組成物103が、その他の添加成分(H)として増感剤や水素供与体を含む場合、これらの含有量はそれぞれ、成分(F)の全量に対して、好ましくは0.1重量%以上20重量%以下である。また、より好ましくは0.1重量%以上5.0重量%以下であり、さらに好ましくは0.2重量%以上2.0重量%以下である。成分(F)の全量に対して、増感剤が0.1重量%以上含まれていれば、重合促進効果をより効果的に発現することができる。また、増感剤もしくは水素供与体の含量を5.0重量%以下とすることにより、作製される硬化膜を構成する高分子化合物の分子量を十分に高くすることができる。さらに、これらの成分の硬化性組成物103に対する溶解不良や硬化性組成物103の保存安定性の低下を抑制することができる。
【0122】
硬化性組成物103を硬化させて得られる硬化膜109とモールド104との間の界面結合力の低減、すなわち後述する離型工程における離型力の低減を目的として、硬化性組成物103に内添型離型剤を添加することができる。本明細書において、内添型とは、硬化性組成物103の配置工程の前に予め硬化性組成物103に添加されていることを意味する。内添型離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0123】
内添型離型剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤等を使用できる。本実施形態において、内添型離型剤は、重合性を有さない。
【0124】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物等が含まれる。なお、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基等を有してもよい。
【0125】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、メガファックF-444、TF-2066、TF-2067、TF-2068(以上、DIC製)、フロラードFC-430、FC-431(以上、住友スリーエム製)、サーフロン S-382(AGC製)、EFTOP EF-122A、122B、122C、EF-121、EF-126、EF-127、MF-100(以上、トーケムプロダクツ製)、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、OMNOVASolutions製)、ユニダインDS-401、DS-403、DS-451(以上、ダイキン工業製)、フタージェント 250、251、222F,208G(以上、ネオス製)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0126】
また、内添型離型剤は、炭化水素系界面活性剤でもよい。炭化水素系界面活性剤としては、炭素数1~50のアルキルアルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物等が含まれる。
【0127】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物としては、メチルアルコールエチレンオキサイド付加物、デシルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。なお、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の末端基は、単純にアルキルアルコールにポリアルキレンオキサイドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定はされない。このヒドロキシル基が他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基等の極性官能基やアルキル基、アルコキシ基等の疎水性官能基に変換されていてもよい。
【0128】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNONMP-400、MP-550、MP-1000)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキサイド付加物)(FINESURF D-1303、D-1305、D-1307、D-1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNONEL-1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON CH-305、CH-310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNONSR-705、SR-707、SR-715、SR-720、SR-730、SR-750)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNONSA-50/50 1000R、SA-30/70 2000R)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol A760E)、花王製のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲンシリーズ)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0129】
これらの炭化水素系界面活性剤の中でも内添型離型剤としては、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、長鎖アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物であることがより好ましい。
【0130】
硬化性組成物103がその他の添加成分(H)として内添型離型剤を含む場合、この内添型離型剤の含有量は、成分(F)の全量に対して、例えば、0.001重量%以上10重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.01重量%以上7重量%以下であり、さらに好ましくは、0.05重量%以上5重量%以下である。少なくとも0.001重量%以上10重量%以下とすることで、離型力低減効果及び充填性に優れる。
【0131】
また、硬化性組成物103はその他の添加成分(H)として、揮発性溶剤を含有していてもよいが、揮発性溶剤を実質的に含まない方が好ましい。ここで、実質的に溶剤を含まないとは、不純物等、意図せずに含まれてしまう揮発性溶剤以外の揮発性溶剤を含まないことを言う。即ち、例えば、硬化性組成物103における揮発性溶剤の含有量は、硬化性組成物103全体に対して3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。なお、ここで言う揮発性溶剤とは、硬化性組成物103やフォトレジストで一般的に用いられている揮発性溶剤を指す。すなわち揮発性溶剤の種類は、硬化性組成物103を構成する各化合物を溶解し均一分散させるもので、かつ該化合物と反応しないものであれば特に限定はされない。
【0132】
[光硬化性組成物の配合時の温度]
本実施形態に係る硬化性組成物103を調製する際には、少なくとも成分(F)と成分(G)とを、所定の温度条件下で混合して溶解させる。具体的には、0℃以上100℃以下の範囲で行う。その他の添加成分(H)を含有する場合も同様である。
【0133】
[光硬化性組成物の粘度]
本実施形態に係る硬化性組成物103のうち、揮発性溶剤を除く各成分の混合物の23℃での粘度は、1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。また、より好ましくは1mPa・s以上50mPa・s以下であり、さらに好ましくは1mPa・s以上20mPa・s以下である。
【0134】
硬化性組成物103の粘度を100mPa・s以下とすることにより、硬化性組成物103をモールド104に接触させる際に、モールド上の微細パターンのうち凹部に硬化性組成物103が充填するのにかかる時間が長時間とならずに済む。また、充填不良によるパターン欠陥が生じにくい。また、粘度を1mPa・s以上とすることにより、硬化性組成物103を基材102上に塗布する際に塗りムラが生じにくくなり、硬化性組成物103をモールド104に接触する際に、モールド104の端部から硬化性組成物103が流出しにくくなる。
【0135】
[光硬化性組成物の表面張力]
本実施形態に係る硬化性組成物103の表面張力は、溶剤を除く各成分の混合物の23℃での表面張力が、5mN/m以上70mN/m以下であることが好ましい。また、より好ましくは7mN/m以上35mN/m以下であり、さらに好ましくは10mN/m以上32mN/m以下である。ここで、表面張力を5mN/m以上とすることにより、硬化性組成物103をモールド104に接触させる際にモールド104上の微細パターンのうち凹部に硬化性組成物103が充填するのにかかる時間が長時間とならずにすむ。また、表面張力を70mN/m以下とすることにより、硬化性組成物103を光硬化して得られる硬化膜(109、110)が表面平滑性を有する硬化膜となる。
【0136】
[光硬化性組成物に混入している不純物]
本実施形態に係る硬化性組成物103は、密着層形成組成物100と同様に、できる限り不純物を含まないことが好ましい。したがって、硬化性組成物103は、密着層形成組成物100と同様に、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過等が好ましい。
【0137】
フィルタを用いた濾過を行う際には、具体的には、前述した成分(E)、成分(F)および必要に応じて添加するその他の添加成分(G)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。フィルタを用いた濾過は、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすることがさらに好ましい。また、濾過した液を再度濾過してもよい。孔径の異なるフィルタを複数用いて濾過してもよい。濾過に使用するフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。
【0138】
このような精製工程を経ることで、硬化性組成物103に混入したパーティクル等の不純物を取り除くことができる。これにより、パーティクル等の不純物によって硬化性組成物103を光硬化した後に得られる硬化膜109に不用意に凹凸が生じて、パターンの欠陥が発生することを防止することができる。
【0139】
なお、硬化性組成物103を、半導体集積回路など、半導体素子で利用される回路基板を製造するために使用する場合、硬化性組成物103中に、金属原子を含有する不純物(金属不純物)が混入することを極力避けることが好ましい。これは、密着層形成組成物100に混入している不純物と同様、金属などの不純物によって回路基板の動作を阻害しないようにするためである。このような場合、硬化性組成物103に含まれる金属不純物の濃度としては、10ppm以下にすることが好ましく、100ppb以下にすることがさらに好ましい。
【0140】
したがって、硬化性組成物103は、その製造工程において、金属に接触させずに調製されることが好ましい。即ち、成分(E)、成分(F)、および添加成分(G)の各原料を秤量する際や、配合して撹拌する際には、金属製の秤量器具、容器などを使用しないことが好ましい。また、前述した精製工程において、さらに金属不純物除去フィルタを用いて濾過することが好ましい。金属不純物除去フィルタとしては、セルロース及び珪藻土製、イオン交換樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。これらの金属不純物除去フィルタは洗浄してから用いることが好ましい。洗浄方法としては、超純水による洗浄、アルコールによる洗浄、硬化性組成物103による共洗いの順で実施することが好ましい。
【0141】
<膜形成方法、物品製造方法>
次に、本実施形態に係る膜形成方法および物品製造方法について説明する。図1は、本実施形態に係る膜形成方法および物品製造方法を説明するための図(膜形成方法を模式的に示す断面図)である。本実施形態に係る膜形成方法は、光ナノインプリント法を利用して、基材(基板)上に硬化性組成物の硬化膜を形成する方法である。本実施形態の膜形成方法では、光によって硬化する性質を有する光硬化性組成物を用いる例を説明するが、その他のエネルギ(例えば、熱、電磁波)によって硬化する性質を有する硬化性組成物が用いられてもよい。また、膜形成方法は、パターン形状を有する硬化膜を基材上に形成する方法(即ち、パターン形状方法)として実施されてもよいし、パターン形状を有しない硬化膜(例えば平坦化膜)を基材上に形成する方法(即ち、平坦化膜形成方法)として実施されてもよい。以下では、膜形成方法としてパターン形成方法を例示して説明する。
【0142】
本実施形態に係る膜形成方法は、密着層形成工程と、配置工程と、硬化膜形成工程(第3の工程)とを含みうる。密着層形成工程は、前述の密着層形成組成物100を基材上に配置し、基材と硬化性組成物とを密着させる密着層を基材上に形成する工程(第1の工程)であり、図1の工程[1]に相当する。配置工程は、密着層形成工程を経て基材上に形成された密着層の上に硬化性組成物を配置する工程(第2の工程)であり、図1の工程[2]に相当する。硬化膜形成工程は、モールドを用いて硬化性組成物を成形して当該硬化性組成物を硬化させることにより、基材上に硬化性組成物の硬化膜を形成する工程(第3の工程)であり、図1の工程[3]~[6]に相当する。硬化膜形成工程は、インプリント処理と呼ばれることもある。
【0143】
硬化膜形成工程は、接触工程と、硬化工程と、離型工程とを含みうる。接触工程は、基材上に配置された硬化性組成物とモールドとを接触させる工程であり、図1の工程[3]に相当する。硬化工程は、モールドと基材上の硬化性組成物とが接触している状態で当該硬化性組成物を硬化させる工程であり、図1の工程[5]に相当する。本実施形態の場合、硬化工程では、硬化性組成物に光を照射することによって当該硬化性組成物を硬化させる。離型工程は、硬化工程によって得られた硬化性組成物の硬化膜からモールドを分離する工程であり、図1の工程[6]に相当する。また、硬化膜形成工程は、必要に応じて、接触工程(工程[3])と硬化工程(工程[5])との間に位置合わせ工程を含んでもよい。位置合わせ工程は、モールドと基材との位置合わせを行う工程であり、図1の工程[4]に相当する。
【0144】
本実施形態に係る膜形成方法(パターン形成方法)によって得られる硬化膜は、1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましく、10nm以上100μm以下のサイズのパターンを有する膜であることがより好ましい。一般に、光を利用してナノサイズ(1nm以上100nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を作製するパターン形成技術は、光ナノインプリント法と呼ばれている。以下、膜形成方法の各工程について詳細に説明する。
【0145】
[1]密着層形成工程
密着層形成工程では、図1(a)に示すように、前述した密着層形成組成物100を用いて、高分子化合物(重合体)を主成分とする密着層101を基材102上に形成する。
【0146】
硬化性組成物103を配置する対象である基材102は、基板または支持体であり、種々の目的によって任意の基材を選択することができる。例えば、シリコンウエハ、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体デバイス用基板や、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材、紙、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基材、TFTアレイ基材、PDPの電極板、プラスチック基材、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材等を用いることができる。しかしながら、後述する基材加工工程(工程[8])において基材102をエッチング等により加工する場合には、基材102として、シリコンウエハなどの半導体デバイス用基板を用いることが好ましい。基材102としては、上述の基板上にスピン・オン・グラス、有機物、金属、酸化物、窒化物など、1種類あるいは複数種類の膜を成膜したものを用いてもよい。
【0147】
本実施形態では、特に、基材102として、表面にシラノール基(SiOH基)などの水酸基(OH基)を有する基材を用いることが好ましい。これらの基材としては、例えばシリコンウエハや石英、ガラスなどが挙げられる。表面に水酸基を有する基材を用いることで、加熱処理により、基材102が表面に有する水酸基と密着層形成組成物100の化合物(A)の官能基とが化学結合を形成すると考えられる。また、架橋剤(B)がアルコキシアルキル基を有する場合も、水酸基と化学結合を形成すると考えられる。
【0148】
密着層形成組成物100を基材102上に塗布する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を用いることができる。これらの方法の中でも、塗布性、特に膜厚均一性の観点から、スピンコート法が特に好ましい。
【0149】
密着層形成組成物100を基材102に塗布(配置)した後、密着層形成組成物100に含まれる溶剤(C)を乾燥によって揮発させ、基材102上に密着層101を形成する。このとき、溶剤(C)を揮発させると同時に、基材102と化合物(A)または架橋剤(B)とを反応させるとともに、化合物(A)と架橋剤(B)とを反応させるとよい。これにより、基材102と密着層101との間に結合を形成させ、密着層101の中における化合物(A)と架橋剤(B)との間に結合を形成させる。なお、化合物(A)と架橋剤(B)との間の結合によって架橋構造が形成されると推測される。
【0150】
このような揮発および反応を効果的に行うは、密着層形成組成物100が塗布された基材102に対して加熱処理(ベーク処理)が行われることが好ましい。加熱処理の温度は、化合物(A)または架橋剤(B)と基材102との反応性、化合物(A)と架橋剤(B)との反応性、化合物(A)や架橋剤(B)、溶剤(C)、界面活性剤(D)およびその他の成分(E)の沸点等により適宜選択することができる。加熱処理の温度は、好ましくは70℃以上250℃以下であり、より好ましくは100℃以上220℃以下であり、さらに好ましくは140℃以上220℃以下である。また、溶剤(C)の乾燥、基材102と化合物(A)または架橋剤(B)との反応、化合物(A)と架橋剤(B)との架橋反応は、同一の温度で行ってもよいし、別々の温度で行ってもよい。すなわち、これらの反応は同時に行ってもよいし、逐次的に行なってもよい。
【0151】
密着層形成工程により基材102上に形成される密着層101の膜厚は、使用する用途によっても異なるが、例えば、0.1nm以上100nm以下であり、より好ましくは0.5nm以上60nm以下であり、さらに好ましくは1nm以上10nm以下である。
【0152】
密着層形成組成物100を基材102上に適用して密着層101を形成する際には、1層目の密着層101の上に更に密着層形成組成物100を用いて2層目の密着層が形成されてもよい。このような方法は、多重塗布と呼ばれうる。また、基材102上に形成される密着層101の表面は、できる限り平坦であることが好ましい。表面の粗さが1nm以下であることが好ましい。
【0153】
このような密着層形成工程により、基材102と、基材102上に積層された重合体層(密着層101)とを有する積層体を形成することができる。上述のとおり、重合体層は、架橋剤(B)が有するアルコキシアルキル基またはアルキロール基と、化合物(A)が有する水酸基、カルボキシル基との間の反応によって架橋構造をとる。
【0154】
[2]配置工程
配置工程では、図1(b)に示すように、密着層形成工程を経て基材102上に形成された密着層101の上に、前述した硬化性組成物103を配置(供給)する。
【0155】
硬化性組成物103を基材102上に配置する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を用いることができる。これらの方法の中でも、光ナノインプリント法においては、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を用いる場合、密着層101の上に硬化性組成物103が複数の液滴として配置(供給)されうる。ここで、後述の接触工程を経てモールド104と基材102との間に形成される硬化性組成物103の液膜(被形状転写層)の膜厚は、使用する用途によっても異なるが、例えば、0.01μm以上100.0μm以下である。したがって、配置工程では、当該液膜が所望の膜厚になるように、密着層101の上に液状の硬化性組成物103が配置される。
【0156】
[3]接触工程
接触工程では、図1(c)に示すように、配置工程で密着層101の上に配置された硬化性組成物103にモールド104を接触させる(図1(c-1)。モールド104の表面には、硬化性組成物103の液膜(硬化工程を経た後では硬化膜)にパターン形状を転写するための原型パターンとして、凹凸パターン(微細パターン)が形成されている。これにより、モールド104の表面に形成されている凹凸パターンの凹部に硬化性組成物103(の一部)が充填され、当該凹部、並びに、モールド104と基材102との間に硬化性組成物103の液膜105が形成される(図1(c-2))。
【0157】
モールド104としては、後続の硬化工程を考慮して、光透過性の材料で構成されているとよい。モールド104を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が好ましい。但し、モールド104を構成する材料の材質として光透明性樹脂を使用する場合は、硬化性組成物103に含まれる成分に溶解しない樹脂を選択する必要がある。熱膨張係数が小さくパターン歪みが小さいことから、モールド104を構成する材料の材質は、石英であることが特に好ましい。
【0158】
モールド104の表面に形成されている凹凸パターン(微細パターン)は、4nm以上200nm以下のパターン高さおよび1以上10以下のアスペクト比を有することが好ましい。パターン高さとは、モールド104の凹凸パターンにおける凸部の上面と凹部の底面との間の距離(高さ)として定義されうる。
【0159】
モールド104には、後述の離型工程において硬化性組成物103の硬化膜とモールド104の表面との剥離性を向上させるため、硬化性組成物103とモールド104とを接触させる本工程(接触工程)の前に表面処理が行われていてもよい。表面処理の方法としては、モールド104の表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成する方法が挙げられる。
【0160】
ここで、モールド104の表面に塗布する離型剤としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSX等の市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。なお、離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、フッ素系および炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
【0161】
接触工程において、モールド104と硬化性組成物103とを接触させる際に硬化性組成物103に加える圧力(モールド圧力)は特に限定されない。通常、0MPa以上100MPa以下である。その中でも0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることがさらに好ましい。
【0162】
また、接触工程においてモールド104を硬化性組成物103に接触させる時間は、特に限定はされない。通常、0.1秒以上600秒以下であり、0.1秒以上300秒以下であることが好ましく、0.1秒以上180秒以下であることがより好ましく、0.1秒以上120秒以下であることが特に好ましい。
【0163】
接触工程は、大気雰囲気下、減圧雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれの条件下でも行うことができるが、酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐため、減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気下で接触工程を行う場合に使用することができる不活性ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、各種フロンガス等、あるいはこれらの混合気体が挙げられる。大気雰囲気下を含めて特定のガスの雰囲気下で接触工程を行う場合、好ましい圧力は、0.0001気圧以上10気圧以下である。
【0164】
接触工程は、凝縮性ガスを含む雰囲気(以下、「凝縮性ガス雰囲気」と称する)下で行われてもよい。本明細書において凝縮性ガスとは、充填時の圧力により発生する毛細管圧力で凝縮して液化するガスのことを指す。凝縮性ガスは、具体的には、モールド104上に形成された凹凸パターンの凹部、および、モールド104と基材102または密着層101との間隙に液膜105(の一部)と一緒に雰囲気中のガスが充填されたときに凝縮して液化する。凝縮性ガスは、接触工程で硬化性組成物103とモールド104とが接触する前(図1(c-1))では、雰囲気中に気体として存在する。凝縮性ガス雰囲気下で接触工程を行うと、モールド104の凹凸パターンの凹部に充填されたガスが液化することで気泡が消滅するため、充填性が優れる。凝縮性ガスは、硬化性組成物103中に溶解していてもよい。
【0165】
凝縮性ガスの沸点は、接触工程の雰囲気温度以下であれば制限がないが、-10℃~23℃が好ましく、さらに好ましくは10℃~23℃である。この範囲であれば、充填性がさらに優れる。凝縮性ガスの接触工程の雰囲気温度での蒸気圧は、接触工程におけるモールド圧力以下であれば制限がないが、0.1~0.4MPaが好ましい。この範囲であれば、充填性がさらに優れる。雰囲気温度での蒸気圧が0.4MPaより大きいと、気泡の消滅の効果を十分に得ることができない傾向がある。一方、雰囲気温度での蒸気圧が0.1MPaよりも小さいと、減圧が必要となり、本実施形態に係る膜形成方法を採用する装置(インプリント装置、平坦化装置)の装置構成が複雑になる傾向がある。また、接触工程の雰囲気温度は特に制限はないが、20℃~25℃が好ましい。
【0166】
凝縮性ガスとして、具体的には、トリクロロフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、フルオロカーボン(FC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(CHFCHCF、HFC-245fa、PFP)等のハイドロフルオロカーボン(HFC)、ペンタフルオロエチルメチルエーテル(CFCFOCH、HFE-245mc)等のハイドロフルオロエーテル(HFE)等のフロン類が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0167】
これらのうち、接触工程の雰囲気温度が20℃~25℃での充填性が優れるという観点から、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(23℃での蒸気圧0.14MPa、沸点15℃)、トリクロロフルオロメタン(23℃での蒸気圧0.1056MPa、沸点24℃)、およびペンタフルオロエチルメチルエーテルが好ましく、さらに安全性が優れるという観点から、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが特に好ましい。
凝縮性ガスは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。また、これら凝縮性ガスは、空気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の非凝縮性ガスと混合した混合ガスを用いてもよい。凝縮性ガスと混合する非凝縮性ガスとしては、充填性の観点から、ヘリウムが好ましい。ヘリウムはモールド104を透過することができる。そのため、接触工程でモールド104の凹凸パターンの凹部に液膜105(の一部)と一緒に雰囲気中のガス(凝縮性ガス及びヘリウム)が充填されたとき、凝縮性ガスが液化するとともに、ヘリウムがモールド104を透過する。そのため、上述の非凝縮性ガスとしてヘリウムを用いると、充填性が優れる。
【0168】
[4]位置合わせ工程
位置合わせ工程では、図1(d)に示すように、モールド104と基材102との位置合わせが行われる。位置合わせ工程は、接触工程の実施前、実施中、および/または実施御に行われうる。位置合わせ工程では、例えば、モールド104に形成されているマーク106と基材102に形成されているマーク107とが目標の位置関係になるように、モールド104と基材102との相対位置が調整される。モールド104に形成されているマーク106はモールド側アライメントマークと呼ばれることがあり、基材102に形成されているマーク107はモールド側アライメントマークと呼ばれることがある。
【0169】
[5]硬化工程
硬化工程では、図1(e)に示すように、モールド104と基材上の硬化性組成物103(液膜105)とが接触している状態で、当該硬化性組成物103を硬化させる。より詳細には、モールド104の凹凸パターンの凹部、並びに、モールド104と基材102との間に形成されている液膜105に、モールド104を介して光108を照射する(図1(e-1))。これにより、モールド104と基材102との間に形成されている硬化性組成物103の液膜105は、光108の照射によって硬化して硬化膜109となる(図1(e-2))。なお、硬化工程は、位置合わせ工程によりモールド104と基材102との位置合わせが行われた後に行われうる。
【0170】
硬化性組成物103(液膜105)に照射する光108は、硬化性組成物103の感度波長に応じて選択されうる。具体的には、光108として、150nm以上400nm以下の波長の紫外光や、X線、電子線等が適宜選択して使用されることが好ましい。これらの中でも、硬化性組成物103に照射する光108(照射光)は、紫外光が特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。紫外光の光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fエキシマレーザ等が挙げられる。その中でも、超高圧水銀灯が特に好ましい。また、使用する光源の数は、1つであってもよいし、または、複数であってもよい。また、液膜105への光108の照射は、モールド104と基材102との間に形成されている液膜105の全面に対して行われてもよいし、その一部の領域のみに対して行われてもよい。
【0171】
液膜104への光108の照射は、基材102上の全領域に対して断続的に複数回行ってもよいし、全領域に対して連続的に照射してもよい。さらに、第1の照射過程で、一部の領域Aに光108を照射し、第2の照射過程で、領域Aとは異なる領域Bに光108を照射してもよい。硬化工程における硬化性組成物103の露光量は、90mJ/cm以下であることが好ましく、30mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0172】
[6]離型工程
離型工程では、図1(f)に示すように、硬化工程を経て基材102上に形成された硬化性組成物103の硬化膜109からモールド104を分離させる(引き離す)。これにより、モールド104の凹凸パターンの反転パターンが硬化性組成物103の硬化膜109に転写され、所定のパターン形状を有する硬化性組成物103の硬化物パターン110が基材102上に形成される。
【0173】
ここで、上記の接触工程が凝縮性ガス雰囲気下で行われた場合、離型工程で硬化膜109とモールド104とを分離させる際に、硬化膜109とモールド104とが接触する界面の圧力が低下することに伴って凝縮性ガスが気化する。これにより、硬化膜109とモールド104とを分離させるために必要な力である分離力(離型力)を低減する効果を奏する傾向がある。
【0174】
硬化膜109とモールド104とを分離する方法としては、分離工程において硬化膜109の一部が物理的に破損しなければ特に限定されず、各種条件等も特に限定はされない。例えば、分離工程は、基材102を固定してモールド104を基材102から遠ざかるように移動させることによって行われてもよい。あるいは、分離工程は、モールド104を固定して基材102をモールド104から遠ざかるように移動させることによって行われてもよい。もしくは、分離工程は、モールド104と基材102とを反対の方向へ相対的に移動させることによって行われてもよい。
【0175】
以上の工程[1]~工程[6]を有する一連の工程(製造プロセス)を経ることにより、所望の凹凸パターン形状(モールド104の凹凸パターンが転写されたパターン形状)を有する硬化膜109を、基材102における所望の位置に形成することができる。基材102上に形成された硬化膜109は、例えば、フレネルレンズや回折格子などの光学部材(光学部材の一部材として用いる場合を含む)として利用することもできる。このような場合、少なくとも、基材102と、基材102上に形成された硬化膜109(硬化物パターン110)と、を有する光学部材とすることができる。
【0176】
本実施形態に係る膜形成方法では、上記の工程[1]~工程[6]からなる繰り返し単位が、同一の基材102上で繰り返して複数回行われうる。具体的には、本実施形態に係る膜形成方法における工程[1]~工程[6]が、基材102における複数のショット領域の各々に対して個別に実行されうる。工程[1]~工程[6]からなる繰り返し単位(ショット)を複数回繰り返すことで、基材102における複数の位置(即ち、複数のショット領域)の各々に、所望の凹凸パターン形状を有する硬化膜109を形成することができる。
【0177】
物品製造方法は、上記の膜形成方法(工程[1]~[6])を用いて基材102上に硬化性組成物103の硬化膜109を形成する形成工程に加えて、処理工程および製造工程を含みうる。処理工程は、形成工程を経た基材102を処理する工程であり、例えば以下の工程[7]~[8]を含みうる。また、製造工程は、処理工程を経た基材102から物品を製造する工程である。
【0178】
[7]残膜除去工程
離型工程の後に基材102上に形成される硬化膜109(硬化物パターン110)は、モールド104の凹凸パターンに対応するパターン形状を有するが、このパターン形状の凹部の下に硬化膜109の一部が残る場合がある。このような硬化膜109の一部は、「残膜RL」と呼ばれることがある。残膜除去工程では、図1(g)に示すように、硬化膜109の残膜RL、および、その下にある密着層101を除去する。具体的には、硬化膜109の凹部の下における基材102表面が露出するように残膜RLおよび密着層101を除去する。これにより、硬化膜109の凸部に対応する硬化物パターン111、即ち、所望の凹凸パターン形状(モールド104の凹凸パターンが転写されたパターン形状)のみを有する硬化物パターン111を、基材102上に形成することができる。
【0179】
残膜RLおよびその下の密着層101を除去する方法としては、例えば、残膜RLおよびその下の密着層101が除去されるように硬化膜109の全域をエッチングする方法が挙げられる。これにより、硬化膜109の凹部の下における基材102の表面を露出させることができる。硬化膜109の残膜RLおよびその下の密着層101をエッチングにより除去する場合、その具体的な方法は、特に限定はされないが、例えば、ドライエッチングを用いることができる。ドライエッチングには、従来公知のドライエッチング装置を用いることができる。そして、ドライエッチング時のソースガスとしては、エッチングに供される硬化膜109の元素組成によって適宜選択されるが、CF、C、C、CCl、CCl、CBrF、BCl、PCl、SF、Cl等のハロゲン系ガス、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは、ドライエッチングの際に混合して用いることもできる。
【0180】
以上の工程[1]~工程[7]を経ることによって、基材102における複数の位置(ショット領域)の各々に、所望の凹凸パターン形状(硬化物パターン111)を得ることができるとともに、硬化物パターン111を有する物品を得ることができる。即ち、基材102と、基材102上に形成された密着層101と、密着層101上に形成された凹凸パターンを有する硬化膜(硬化物パターン111)とを有するデバイス部品を得ることができる。当該デバイス部品は、密着層101が、化合物(A)と架橋剤(B)とから形成される架橋構造を有する。また、化合物(A)として、一般式(1)で表される化合物を用いた場合には、密着層101が、2位および4位および6位が窒素原子で置換された1,3,5-トリアジン環と、スルフィド結合を構造中に有する。即ち、当該デバイス部品は、基材102と、該基材102上に凹凸パターンを有する硬化膜109とを備えたデバイス部品であって、基材102と硬化膜109との間に有機層を有し、該有機層が、1,3,5-トリアジン環とスルフィド結合とを含む。
【0181】
さらに、得られた硬化物パターン111を利用して基材102を加工する場合には、後述の基材加工工程(工程[8])が行われる。一方、得られた硬化物パターン111を回折格子や偏光板などの光学部材(光学部材の一部材として用いる場合を含む)として利用し、光学部品を得ることもできる。このような場合、少なくとも、基材102と、この基材102の上に配置された硬化物パターン111と、を有する光学部品とすることができる。
【0182】
[8]基材加工工程
本実施形態に係る膜形成方法によって得られる、凹凸パターン形状を有する硬化物パターン111は、例えば半導体素子等の電子部品に含まれる層間絶縁膜用膜として利用することも可能である。また、半導体素子製造時におけるレジスト膜として利用することも可能である。ここでいう半導体素子とは、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM等が挙げられるが、これに限定はされない。
【0183】
硬化物パターン111をレジスト膜として利用する場合、上記の残膜除去工程(工程[7])を経て表面が露出した基材102の一部分(図1(g)における符号112の領域)に対して加工が行われる。当該加工は、エッチングまたはイオン注入等を含みうる。この際、硬化物パターン111は、エッチングマスクあるいはイオン注入マスクとして機能する。これに加えて、電子部材を形成することにより、硬化物パターン111のパターン形状に基づく回路構造113(図1(h))を基材102に形成することができる。これにより、半導体素子等で利用される回路基板を製造することができる。また、この回路基板と回路基板の回路制御機構などとを接続することにより、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。
【0184】
また、同様に、硬化物パターン111をレジスト膜として利用して、エッチング又はイオン注入等を行い、光学部品やマイクロフルイディクスの流路構造、パターンドメディアの構造体等のデバイス部品を得ることもできる。
【0185】
また、同様に、硬化物パターン111をマスク(レジスト膜)として利用して、エッチング又はイオン注入等を行い、光学部品を得ることもできる。
【0186】
あるいは、硬化物パターン111を用いて基材102である石英基板をエッチングすることにより、インプリント用モールドを製造することもできる。この場合、硬化物パターン111をマスクとして用いて、基材102である石英基板を直接エッチングしてもよい。または、硬化物パターン111をマスクとして用いてハードマスク材料層をエッチングし、これにより転写されたハードマスク材料からなるパターンをマスクとして用いて石英基板をエッチングしてもよい。もしくは、硬化物パターン111の凹部に第2の硬化性材料による第2の硬化物を形成し、該第2の硬化物をマスクとして用いて石英基板をエッチングしてもよい。
【0187】
硬化物パターン111をマスクとして利用して表面が露出した基材102の一部分をエッチングする場合、ドライエッチングを用いることができる。ドライエッチングには、従来公知のドライエッチング装置を用いることができる。そして、ドライエッチング時のソースガスとしては、エッチングに供される硬化膜の元素組成によって適宜選択されるが、CF、CHF、C、C、C、CCl、CCl、CBrF、BCl、PCl、SF、Cl等のハロゲン系ガス、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、H、NHのガス等を使用することができる。CF、CHF、C、C、C、CCl、CBrF、SFなどのフッ素系ガスが好ましい。本実施形態に係る硬化性組成物103は、上記のフッ素系ガスによるドライエッチングに対して高い耐性を示すからである。なお、これらのガスは、ドライエッチングの際に混合して用いることもできる。
【0188】
ここで、本実施形態では、硬化物パターン111をマスクとして用いて基材102を加工する方法としてエッチングおよびイオン注入について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、基材102上に硬化物パターン111が形成された状態で、めっき処理等を行うこともできる。また、回路基板や電子部品などの物品を製造(作製)する場合、最終的には、加工された基材102から硬化物パターン111を除去してもよいが、素子を構成する部材として残す構成としてもよい。
【0189】
[実施例]
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に使用される「部」および「%」は、特に示さない限りすべて重量基準である。
【0190】
<(1)界面活性剤(D)のベーク過程における揮発挙動確認試験>
以下に示す方法により、界面活性剤(D)のベーク過程における揮発挙動を確認した。
【0191】
(1-1)密着層形成組成物の調製
以下に示す化合物(A)、架橋剤(B)および界面活性剤(D)を、表1に示す重量(%)となるように、揮発性溶剤(C)に溶解した。揮発性溶剤(C)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業製)を用いた。次に、得られた混合溶液を、フィルタの孔径が0.005μmのポリエチレン製フィルタにて濾過した。これにより、消泡効果評価用の密着層形成組成物である組成物1~組成物4を調製した。
【0192】
(化合物(A))
(A-1)カルボン酸無水物変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(新中村化学工業製、商品名:EA-7140)(式(1))
式(1)
【0193】
(架橋剤(B-1))
(B)2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン(東京化成工業製)(式(2))
式(2)
【0194】
(界面活性剤(D))
(D-1)2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール(川研ファインケミカル製、商品名:アセチレノールE00、HLB=4)(式(3))
式(3)
【0195】
【表1】
【0196】
(1-2)ベーク前後膜厚確認
組成物1~5をそれぞれ、2インチのシリコンウエハ上にスピンコートで塗布した。密着層組成物が塗布されたウエハを分光エリプソメーターで測定し、ベーク前の膜厚を測定した。その後220℃90秒という条件でベークを行い、密着層をそれぞれ形成した。密着層が形成されたウエハを分光エリプソメーターで測定し、ベーク後の膜厚を測定した。本実施例においては、界面活性剤(D)が添加されていない組成物5のベーク後膜厚を基準として評価を行った。組成物5のベーク後組成物から+0.1nm以下を「A」、+0.1nm以上4nm以下を「B」、+4nm以上8nm以下を「C」、+8nm以上12nm以下を「D」として評価した。その結果をまとめて表2に示す。
【0197】
【表2】
【0198】
組成物1~4は、ベーク前膜厚が、組成物5のベーク後膜厚より厚かった。(実施例1~4)
組成物1のベーク前膜厚が最も厚かった。(実施例1)
組成物1~4は、ベーク後膜厚が、組成物5のベーク後膜厚とほぼ同等であった。(実施例1~4)
組成物1~4は、組成物5のベーク後膜厚と比較し、膜厚が厚かった。界面活性剤(D)の添加量が最も多い組成物1が最も膜厚が厚かった。添加されている界面活性剤(D)が、スピンコート後もウエハ上に残留したためだと考えられる。
ベーク後膜厚は、組成物1~4は組成物5とほぼ同等となっている。これは、220℃で90秒というベーク条件中に界面活性剤(D)が揮発したためだと推察される。
【0199】
以上のように、本実施例に係る組成物1~組成物4が形成する密着層には界面活性剤(D)が含まれていないことがわかった。このことから、密着層に添加された界面活性剤(D)はベーク過程で揮発するため、界面活性剤(D)の添加による密着層の密着性能への影響はないと考えられる。
【0200】
<(2)界面活性剤(D)添加による消泡効果確認試験>
以下に示す方法により、界面活性剤(D)の消泡効果を評価した。
【0201】
(2-1)密着層形成組成物の調製
化合物(A-1)、架橋剤(B-1)および界面活性剤(D-1)を、表3に示す重量(%)となるように、揮発性溶剤(C)に溶解した。揮発性溶剤(C)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業製)を用いた。次に、得られた混合溶液を、フィルタの孔径が0.005μmのポリエチレン製フィルタにて濾過した。これにより、消泡効果評価用の密着層形成組成物である組成物1、3、4、5を調製した。
【0202】
【表3】
【0203】
(2-2)バブルの生成
調製した組成物1、3、4、5をボトルに1L秤量し、アスピレーターを用いて各組成物の液中にバブルを発生させた。
【0204】
(2-3)消泡効果確認
上記の(2-2)で生成された液中バブルを、液中パーティクルカウンタ(リオン製、商品名:KS-18F)で測定することにより、生成されたバブル数を確かめた。本実施例においては、粒径80nm以上の液中バブル数1000個以下を「A」、液中バブル数1000個以上2000個以下を「B」、液中バブル数2000個以上を「C」として評価した。その結果をまとめて表4に示す。
【0205】
【表4】
【0206】
組成物1、3、4は、液中バブル数が少なく、組成物1が最も少なかった。(実施例1~3)
一方、組成物5は、液中バブル数が組成物1、3、4に比べて多かった。(比較例1)
組成物1、3、4は、消泡効果を持つ界面活性剤が添加されていたため、生成された液中バブルが消泡すると推察される。その結果、液中バブル数が低かった。
また、組成物1が最も界面活性剤(D)の添加量が多かったため、高い消泡効果が生まれると推察される。その結果、最も液中バブル数が低かった。
一方で、組成物5は、界面活性剤(D)を含まないため、最も液中バブル数が多かった。
【0207】
以上のように、本実施例に係る組成物1、3、4は十分な消泡効果が得られることがわかった。このことから、実施例に係る組成物1、3、4で形成した密着層は、基板上のバブルも少ないと考えられる。
【0208】
<(3)HLB違いによる消泡効果の確認>
次に、以下に示す方法により、HLB違いによる消泡効果を評価した。
【0209】
(3-1)密着層形成組成物の調製
以下に示す化合物(A-1)、架橋剤(B-2)、界面活性剤(D)、および、その他の成分(E)を、表5に示す重量(%)となるように、揮発性溶剤(C-1)に溶解した。揮発性溶剤(C-1)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業製)を用いた。
【0210】
(その他の成分(E-1))
(E-1)フタル酸ジエチル(東京化成工業製、HLB=7)(式(4))
式(4)
【0211】
(E-2)トリエチレングリコール(東京化成工業製、HLB=9)(式(5))
式(5)
【0212】
【表5】
【0213】
(3-2)フィルタ濾過
次に、得られた混合溶液を、フィルタの孔径が0.002μmのポリエチレン製フィルタにて濾過した。
【0214】
(3-3)組成物中の液中バブル数確認
上記の(3-2)で作製された組成物を、液中パーティクルカウンタ(リオン製、商品名:KS-18F)で測定することにより、組成物中の液中バブル数を確かめた。フィルタによってバブルや異物はトラップされるため、検出されるカウント数はすべてフィルタ後に発生した液中バブルであると推察される。本実施例においては、粒径80nm以上の液中バブル数10個以下を「A」、液中バブル数10個以上20個以下を「B」、液中バブル数30個以上50個以下を「C」、液中バブル数50個以上を「D」として評価した。その結果をまとめて表6に示す。
【0215】
【表6】
【0216】
組成物1が最も液中バブル数が少なかった。(実施例1)
一方、組成物6~8は、液中バブル数が組成物1に比べて多かった。(比較例1~3)
フィルタ濾過時にゴミなどの異物やバブルはトラップされるが、フィルタを通過した瞬間の圧の開放で少量のバブルが発生する。組成物1に添加された界面活性剤(D-1)がHLB=4であることから、本実施例の密着層組成物に対し消泡効果をもっており、生成された液中バブルが消泡したと推察される。その結果、液中バブル数が低かった。
一方で、組成物6に添加されたその他成分(E-1)がHLB=7、組成物7に添加されたその他の成分(E-2)がHLB=9であることから、本実施例の密着層組成物に対し十分な消泡効果を持たず、生成されたバブルが消泡しなかったと推察される。その結果液中バブル数が多かった。
組成物8は、界面活性剤(D)、およびその他成分(E)を含まないため、最も液中バブル数が多かった。
【0217】
以上のように、本実施例に係る組成物1は、添加された界面活性剤がHLB=4であることから、十分な消泡効果が得られることがわかった。このことから、実施例に係る組成物1を用いて密着層を形成することで、液中バブルの生成を抑制できると考えられる。
【0218】
<(4)HLB違いによるウエハ上欠陥数の確認>
次に、以下に示す方法により、HLB違いによるウエハ上欠陥数を評価した。
【0219】
(4-1)密着層の形成
組成物1、7、8のそれぞれをスピンコーター装置にインストールし、直径300mmのシリコンウエハ上にスピンコートで塗布した。その後、220℃で90秒という条件で加熱を行い、膜厚5nm以下の密着層をそれぞれ形成した。
【0220】
(4-2)欠陥検査
上記の(4-1)で作製したそれぞれのウエハを欠陥検査装置にセットし、ウエハ上の欠陥を検出した。本実施例においては、欠陥数100個以下を「A」、欠陥数100個以上500個以下を「B」、欠陥数500個以上1000個以下を「C」として評価した。その結果をまとめて表7に示す。
【0221】
【表7】
【0222】
組成物1が最も欠陥数が少なかった。(実施例1)
一方、組成物7、8は、欠陥数が組成物1に比べて多かった。(比較例1、2)
組成物1に添加された界面活性剤(D-1)がHLB=4であることから、本実施例の密着層組成物に対し消泡効果をもっており、ウエハ上で生成されたバブルが消泡したと推察される。その結果、欠陥数が低かった。
一方で、組成物7に添加されたその他成分(E-2)がHLB=9であることから、本実施例の密着層組成物に対し十分な消泡効果を持たず、ウエハ上で生成されたバブルが消泡しなかったと推察される。その結果欠陥数が多かった。
組成物8は界面活性剤(D)を含まないため、最も欠陥数が多かった。
【0223】
以上のように、本実施例に係る組成物1は、添加された界面活性剤がHLB=4であることから、十分な消泡効果が得られることがわかった。このことから、実施例に係る組成物1を用いて密着層を形成することで、液中バブルの生成を抑制でき、ウエハ上の欠陥を減少できると考えられる。
【0224】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、少なくとも以下の層形成組成物、膜形成方法、および物品製造方法を含む。
(項目1)
基材と硬化性組成物とを密着させる密着層を形成するための層形成組成物であって、
HLB値が1~5である界面活性剤(D)を有する、
ことを特徴とする層形成組成物。
(項目2)
前記界面活性剤(D)の常圧における沸点が160℃以上かつ300℃以下である、ことを特徴とする項目1に記載の層形成組成物。
(項目3)
前記界面活性剤(D)は、1分子中にアセチレン結合を含み、且つ、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を含む、ことを特徴とする項目1又は2に記載の層形成組成物。
(項目4)
前記界面活性剤(D)は、1分子中に少なくともベンゼン環およびエーテル結合を含む、ことを特徴とする項目1乃至3のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目5)
前記界面活性剤(D)は、炭素数7以上の高級アルコールを含む、ことを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目6)
前記界面活性剤(D)におけるフッ素原子が1原子%以下である、ことを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目7)
前記界面活性剤(D)はフッ素原子を含まない、ことを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目8)
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、前記界面活性剤(D)の含有量が0.02質量%以上かつ20質量%以下である、ことを特徴とする項目1乃至7のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目9)
前記層形成組成物は溶剤(C)を含み、
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、前記溶剤(C)の含有量が70質量%以上かつ99.5質量%以下である、ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目10)
前記層形成組成物は溶剤(C)を含み、
前記溶剤(C)は、常圧における沸点が80~200℃である第1溶剤(C-1)と、常圧における沸点が200℃~300℃である第2溶剤(C-2)との二種を少なくとも含有し、
前記溶剤(C)の合計を100質量部としたとき、前記第2溶剤(C-2)の含有量が1~50質量部である、ことを特徴とする項目1乃至9のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目11)
前記層形成組成物は光重合開始剤を含有しない、ことを特徴とする項目1乃至10のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目12)
前記層形成組成物の全体を100質量%としたとき、粒径が0.2μmより大きい粒子の含有量が3質量%未満である、ことを特徴とする項目1乃至11のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目13)
前記層形成組成物は、前記基材と結合する少なくとも1つの官能基および少なくとも1つの重合性官能基を有する化合物(A)、架橋剤(B)、溶剤(C)、を少なくとも有する、ことを特徴とする項目1乃至12のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目14)
前記架橋剤(B)は、以下の式で表される化合物であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、またはアルキロール基のいずれかを表し、R1~R6の少なくとも5つはアルコキシアルキル基またはアルキロール基である、ことを特徴とする項目13に記載の層形成組成物。
(項目15)
前記架橋剤(B)は、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、(ヒドロキシメチル)ペンタキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンの中から選択される少なくとも一種を含む、ことを特徴とする項目13又は14に記載の層形成組成物。
(項目16)
前記架橋剤(B)は、1分子中に、アルコキシアルキル基またはアルキロール基のいずれか一方または両方を合計で少なくとも5つ有する化合物である、ことを特徴とする項目13乃至15のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目17)
前記化合物(A)は、1分子中に水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基を少なくとも1つ有する、ことを特徴とする項目13乃至16のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目18)
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(A)および前記架橋剤(B)の重量分率をそれぞれα、βとすると、α/βが、0.11以上9以下である、ことを特徴とする項目13乃至17のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目19)
前記層形成組成物の全重量に対する前記化合物(A)および前記架橋剤(B)の重量分率をそれぞれα、βとすると、αとβとの和が、0.01以上10以下である、ことを特徴とする項目13乃至18のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目20)
前記層形成組成物は、光ナノインプリント用である、ことを特徴とする項目1乃至19のいずれか1項目に記載の層形成組成物。
(項目21)
基材上に硬化性組成物の硬化膜を形成する膜形成方法であって、
項目1乃至20のいずれか1項目に記載の層形成組成物を前記基材上に配置し、前記基材と前記硬化性組成物とを密着させるための密着層を前記基材上に形成する第1の工程と、
前記密着層の上に前記硬化性組成物を配置する第2の工程と、
型を用いて前記硬化性組成物を成形して前記硬化性組成物を硬化させることにより、前記基材上に前記硬化膜を形成する第3の工程と、
を含むことを特徴とする膜形成方法。
(項目22)
前記硬化性組成物は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物を含有する、ことを特徴とする項目21に記載の膜形成方法。
(項目23)
前記第1の工程は、表面に水酸基を有する前記基材上に前記層形成組成物を配置する工程を含む、ことを特徴とする項目21又は22に記載の膜形成方法。
(項目24)
項目21乃至23のいずれか1項目に記載の膜形成方法を用いて、基材上に硬化性組成物の硬化膜を形成する形成工程と、
前記形成工程を経た前記基材を処理する処理工程と、
前記処理工程を経た前記基材から物品を製造する製造工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【0225】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0226】
100:密着層形成組成物、101:密着層、102:基材、103:硬化性組成物、104:モールド、105:液膜、109:硬化膜
図1