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特開2024-179704樹脂組成物、硬化被膜およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179704
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化被膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 14/10 20060101AFI20241219BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20241219BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241219BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20241219BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20241219BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08G14/10
C08F290/00
C09D4/02
C09D7/40
C09D133/04
C09D179/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098753
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】流尾 知充
【テーマコード(参考)】
4J033
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J033EA02
4J033EA45
4J033EA46
4J033EB12
4J033EB23
4J033HA07
4J033HB08
4J038CG141
4J038DJ011
4J038FA071
4J038JA33
4J038KA02
4J038NA11
4J038NA12
4J038PA17
4J038PA19
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BB031
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD061
4J127BD411
4J127BG281
4J127BG28Y
4J127CB341
4J127CB371
4J127CC161
4J127DA51
4J127DA55
4J127EA15
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】外観、透明性、耐ブロッキング性、加熱伸張性、および硬度に優れる硬化被膜を形成可能な樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明による樹脂組成物は、(A)アルキル化メラミン樹脂、(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、(C)重量平均分子量が2,000以上20,000以下である(メタ)アクリレート樹脂、および(D)分子量が250以上である光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキル化メラミン樹脂、(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、(C)重量平均分子量が2,000以上20,000以下である(メタ)アクリレート樹脂、および(D)分子量が250以上である光重合開始剤を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分と、前記(B)成分および(C)成分の合計との質量比(成分(A):(成分(B)+成分(C)))が、固形分換算で、8.0:2.0~3.0:7.0である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(E)硬化促進剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
熱硬化及び光硬化型塗料である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成される、硬化被膜。
【請求項7】
基材と前記基材上に設けられた請求項6に記載の硬化被膜とを備える、硬化被膜付き基材。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を熱硬化させて、半硬化被膜を形成する第一の硬化工程と、
前記半硬化被膜を光硬化させて、完全硬化被膜を形成する第二の硬化工程と
を含む、硬化被膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。また、本発明は、樹脂組成物から形成される硬化被膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの加飾分野では、耐擦傷性や耐薬品性などの機能性を有する塗装フィルムを樹脂と一緒に熱成型することで一体化し、表面に機能性を有する樹脂成型物を製造している。この分野で使用される塗装フィルムには、熱成型時の熱成型性(加熱伸張性)と耐擦傷性などのハードコート性、耐薬品性などの両立が必要とされている。その中でも、近年では成型技術が発展し、より複雑な成型が可能となっているため、塗装フィルムにもより高い成型性が必要とされている。
【0003】
通常、熱成型は完全硬化状態の塗装フィルムを用いて行うプレキュア方式が主流であるが、より高い成型性が必要な場合には、未硬化状態もしくは半硬化状態の塗装フィルムを用いて熱成型を行った後で塗膜を完全硬化させるアフターキュア方式が有効である。しかし、アフターキュア方式の場合、未硬化状態もしくは半硬化状態の塗装フィルムのハンドリング性(フィルムの取り扱い時に表面に傷が入ったり、ゴミが付着する等の問題の生じにくさ)や耐ブロッキング性に大きな課題があり、また、完全硬化後の被膜のハードコート性にも課題があり、これらの性能の両立が要求されている。
【0004】
これまでに、特許文献1では、硬化させると優れた耐擦傷性と高い硬さを有するハードコート層を製造できるとともに、加工時の成形性にも優れたハードコート組成物として、特定の(メタ)アクリロイルポリマーと、特定の無機酸化物ナノ粒子とを含むハードコート組成物が提案されている。また、特許文献2では、二重硬化用途のための、特定のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート化合物(A1)とジイソシアネート官能性化合物(A3)及び2つの水酸基を含み化合物(A1)とは異なる任意選択的な化合物(A2)との反応生成物であるヒドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクレート化合物(A)を含む放射線硬化性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/031967号
【特許文献2】特表2021-524523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および2に記載の硬化性組成物は、耐ブロッキング性に改善の余地があった。また、硬化被膜を表面保護層として用いる場合には、透明性や硬度等の性能も要求される。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ハンドリング性、透明性、耐ブロッキング性、加熱伸張性、および硬度に優れる硬化被膜を形成可能な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の熱硬化成分と特定の光硬化成分を併用したデュアルキュアタイプの樹脂組成物を用いることにより、熱硬化による半硬化状態の塗装フィルムのハンドリング性、耐ブロッキング性と、その後の光硬化による完全硬化状態の塗装フィルムのハードコート性を両立できることを知見した。具体的には、樹脂組成物において、(A)アルキル化メラミン樹脂、(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、(C)重量平均分子量が2,000以上20,000以下である(メタ)アクリレート樹脂、および(D)分子量が250以上である光重合開始剤を配合することにより、上記効果を得られることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)アルキル化メラミン樹脂、(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、(C)重量平均分子量が2,000以上20,000以下である(メタ)アクリレート樹脂、および(D)分子量が250以上である光重合開始剤を含む、樹脂組成物。
[2] 前記(B)成分が、水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーである、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記(A)成分と、前記(B)成分および(C)成分の合計との質量比(成分(A):(成分(B)+成分(C)))が、固形分換算で、8.0:2.0~3.0:7.0である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (E)硬化促進剤をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 熱硬化及び光硬化型塗料である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物から形成される、硬化被膜。
[7] 基材と前記基材上に設けられた[6]に記載の硬化被膜とを備える、硬化被膜付き基材。
[8] [1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物を熱硬化させて、半硬化被膜を形成する第一の硬化工程と、
前記半硬化被膜を光硬化させて、完全硬化被膜を形成する第二の硬化工程と
を含む、硬化被膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハンドリング性、透明性、耐ブロッキング性、加熱伸張性、および硬度に優れる硬化被膜を形成可能な樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような樹脂組成物から形成される硬化被膜およびその製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<樹脂組成物>
本発明による樹脂組成物は、少なくとも、下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含むものであり、さらに、(E)成分および溶剤等を含んでもよい。本発明による樹脂組成物から形成された硬化被膜は、ハンドリング性、透明性、耐ブロッキング性、加熱伸張性、および硬度に優れるものである。本発明による樹脂組成物は、熱硬化成分と光硬化成分の両方を含むため、熱硬化及び光硬化型塗料として好適に用いることができる。
【0012】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を表し、「(メタ)アクリレート樹脂」とは、アクリレート樹脂およびメタクリレート樹脂を表す。「固形分」とは、樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。以下、樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0013】
((A)成分)
(A)成分は、アルキル化メラミン樹脂である。アルキル化メラミン樹脂とは、メラミンをホルムアルデヒドと反応させてアミノ基の水素原子の一部または全部をメチロール基と置換し、メチロールメラミンとした後、さらに脂肪族アルコールと反応させてメチロール基の一部または全部をアルコキシメチル基に変性したものを加熱により重縮合すると得られる樹脂である。
【0014】
アルキル化メラミン樹脂は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。アルキル化メラミン樹脂のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。当該アルキル基は直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。アルキル化メラミン樹脂は、1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(A)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上75質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以上75質量%以下である。(A)成分の含有量が上記数値範囲内であれば、半硬化状態の被膜のハンドリング性および耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0016】
((B)成分)
(B)成分は、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーである。3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に官能基として3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。
【0017】
3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、3価以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは、1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーの中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを用いることで、(B)成分中の水酸基が、(A)成分中のメラミン樹脂と加熱により反応して硬化するため、完全硬化状態の被膜の硬度をより向上させることができる。
【0019】
((C)成分)
(C)成分は、特定の重量平均分子量を有する(メタ)アクリレート樹脂である。(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量は、2,000以上20,000以下であり、好ましくは3,000以上19,000以下であり、より好ましくは5,000以上17,000以下であり、さらに好ましくは7,000以上15,000以下である。(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量が上記数値範囲内であれば、半硬化状態の被膜の耐ブロッキング性を向上させたり、完全硬化状態の被膜の硬度を向上させたりすることができる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量は、従来公知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0020】
(メタ)アクリレート樹脂は、上記の重量平均分子量を有するものであれば、特に限定されない。(メタ)アクリレート樹脂とは、(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体、または、(メタ)アクリレートモノマーとそれに共重合可能なモノマーの共重合体である。(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂、およびエポキシ(メタ)アクリエート樹脂が挙げられる。これらの中でも、半硬化状態でタックフリーとなり被膜の耐ブロッキング性をより得やすいという観点から、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびアクリル(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、分子内にウレタン結合(-NHCOO-)と、分子内に官能基として(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂である。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネートと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートと、任意に用いるポリオールとのウレタン化反応により得られる。この反応において、ポリイソシアネートとポリオールとからイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成し、そこに、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを付加させてもよい。また、ポリイソシアネートに代えて、あるいはポリイソシアネートとともに、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート、例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いてもよい。さらに、任意にその他の共重合可能な(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを用いてもよい。
【0022】
ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系または脂環式系のポリイソシアネートが挙げられ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;これらの化合物のビューレット体、イソシアヌレート体またはアロファネート体;これらの化合物のイソシアネート基の一部をトリメチロールプロパン、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のアルコール、δ-ラクタム等のアミド、フタルイミド等のイミド、カルボジイミド、エポキシド等で変性した化合物が挙げられる。
【0023】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基含有単官能(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有多官能(メタ)アクリレート;これらのアルキレンオキサイド変性体またはカプロラクトン変性体が挙げられる。
【0024】
ポリオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、水添ビスフェノールA等の脂肪族または脂環式ポリオールが挙げられる。
【0025】
アクリル(メタ)アクリレート樹脂は、アクリロイル基を含有する(メタ)アクリル樹脂である。アクリル(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートを共重合した(メタ)アクリル樹脂にアクリル酸を付加した樹脂、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートを共重合したアクリル樹脂に2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を付加した樹脂、水酸基含有モノマーを共重合した(メタ)アクリル樹脂に2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加した樹脂等が挙げられる。
【0026】
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、分子内にアクリロイル基を有し、例えば、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。
ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂としては、分子内にアクリロイル基を有し、例えば、ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、分子内にアクリロイル基を有し、例えば、ポリグリシジルエーテル等のエポキシ基含有化合物のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を不可した化合物が挙げられる。
【0027】
(A)成分と、(B)成分および(C)成分の合計との質量比(成分(A):(成分(B)+成分(C)))は、固形分換算で、好ましくは8.0:2.0~3.0:7.0であり、より好ましくは7.5:2.5~3.5:6.5であり、さらに好ましくは7.0:3.0~4.0:6.0である。(A)成分と、(B)成分および(C)成分の合計との質量比が上記数値範囲内であれば、半硬化状態の被膜のハンドリング性、耐ブロッキング性、加熱伸張性を向上させたり、完全硬化状態の被膜の硬度を向上させたりすることができる。
【0028】
((D)成分)
(D)成分は、分子量が250以上である光重合開始剤である。光重合開始剤の分子量の下限値は、好ましくは255以上であり、より好ましくは260以上であり、より好ましくは270以上であり、また、上限値は500以下であってもよく、450以下であってもよく、400以下であってもよい。光重合開始剤の分子量が250以上であれば、熱硬化工程における加熱(例えば、130℃以上)によっても光重合開始剤が揮発し難く、完全硬化状態の被膜の硬度を向上させることができる。
【0029】
光重合開始剤としては、上記の分子量を有するものであれば、従来公知の紫外線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤等が挙げられる。
【0030】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(分子量:340.4)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(分子量:279.4)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(分子量:256.3)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン(分子量:366.5)、および2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-[4-(モルホリン-4-イル)フェニル]ブタン-1-オン(分子量:380.5)等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(分子量:348.4)およびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(分子量:418.5)等が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン(分子量:254.4)等が挙げられる。
オキシムエステル系光重合開始剤としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)(分子量:445.6)および1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンO-アセチルオキシム(分子量:412.5)等が挙げられる。
【0031】
(D)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上15.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上7.0質量%以下である。(D)成分の含有量が上記数値範囲内であれば、樹脂組成物の硬化性が良好となる。
【0032】
((E)成分)
(E)成分は、硬化促進剤である。硬化促進剤としては、特に限定されず、熱硬化に用いられる従来公知の酸触媒であればよい。硬化促進剤としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、カンファ―スルホン酸等の有機スルホン酸化合物、およびこれらのアミン中和体や、リン酸化合物等を使用することができる。
【0033】
(E)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上5.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以上3.0質量%以下である。(E)成分の含有量が上記数値範囲内であれば、樹脂組成物の硬化性が良好となる。
【0034】
(その他の成分)
本発明による樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)成分~(E)成分以外の他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、帯電防止剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、レベリング剤、撥水撥油剤、熱安定剤、光安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、擦傷防止剤等を必要に応じて配合することができる。
【0035】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明による樹脂組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、樹脂組成物を塗布に適した粘度に調整する等、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤としては、樹脂組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-又はi-プロパノール、n-、i-、sec-又はt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
<硬化被膜>
本発明による樹脂組成物から形成された硬化被膜は、厚さ3.0~3.5μmの場合、JIS K 7136:2000に準拠して測定したヘイズが、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。また、当該硬化被膜は、厚さ3.0~3.5μm以下の場合、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定した全光線透過率が、90%以上であることが好ましい。ヘイズおよび全光線透過率が上記範囲内であれば、硬化被膜は透明性に優れる。
【0038】
本発明による樹脂組成物から形成された硬化被膜は、厚さ3.0~3.5μm、15mm×150mmの短冊状の試験片の場合、温度150℃の条件で測定した伸張性(伸張率)が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。伸張率の数値が上記範囲内であれば、硬化被膜は、加熱時の伸張性に優れ、熱成型用塗装フィルム用、特にインモールド成型用塗装フィルム用として好適に用いることができる。伸張性の測定方法は、後述する実施例に記載の方法である。
【0039】
<被膜付き基材>
本発明による被膜付き基材は、上記の硬化被膜を基材上に備えるものである。基材は、特に限定されるものではなく、従来公知の基材を用いることができる。例えば、被膜付き基材がインモールド成型用塗装フィルムである場合には、基材として、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメタクリル酸メチルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。
【0040】
本発明による被膜付き基材は、多層に塗布する必要のある用途においては他の層をさらに備えてもよい。例えば、本発明による被膜付き基材は、基材と硬化被膜の間に他の層を備えていてもよく、硬化被膜上に他の層を備えてもよい。本発明による被膜付き基材における他の層としては、例えば、中塗り層、プライマー層、保護層等が挙げられる。これらの他の層は、1層のみで構成されていてもよく、多層で構成されていてもよい。
【0041】
本発明による被膜付き基材は、基材上に上記の樹脂組成物を塗布した後、下記で詳述する方法(第一の工程、第二の工程)により被膜を硬化せることで製造することができる。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からグラビアコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0042】
<硬化被膜の製造方法>
本発明による硬化被膜の製造方法は、上記の樹脂組成物を、第一の硬化工程(熱硬化工程)および第二の硬化工程(光硬化工程)の2段階で硬化させる方法を含むものである。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0043】
(第一の硬化工程)
第一の硬化工程は、上記の樹脂組成物を熱硬化させて、半硬化被膜を形成する工程である。熱硬化の方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)等の加熱乾燥が挙げられる。加熱温度は、好ましくは100~200℃であり、より好ましくは110~150℃である。加熱温度が上記数値範囲であれば、十分な熱硬化反応を得ることができる。また、加熱時間は、特に限定されず、熱硬化温度に応じて適宜調節することができるが、例えば、130℃であれば3~5分であり、150℃であれば1~2分である。
【0044】
(第二の硬化工程)
第二の硬化工程は、第一の硬化工程で得られた半硬化被膜を光硬化させて、完全硬化被膜を形成する工程である。光硬化させる方法としては、半硬化被膜に対して、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cmであり、より好ましくは200~1,000mJ/cmである。
【実施例0045】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
<樹脂組成物の調製>
樹脂組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・アルキル化メラミン樹脂1:メチル化/ブチル化メラミン樹脂、オルネクスジャパン株式会社製、商品名:サイメル202
・アルキル化メラミン樹脂2:メチル化メラミン樹脂、オルネクスジャパン株式会社製、商品名:サイメル701
・アクリル樹脂:DIC株式会社製、商品名:アクリディックWNL-379
・3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー1:ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(5/6官能)、東亜合成株式会社製、商品名:アロニックスM400
・3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー2:ペンタエリスリトールトリアクリレート(3官能)、ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名:PETIA
・2官能の(メタ)アクリレートモノマー:トリプロピレングリコールジアクリレート(2官能)、Miwon株式会社製、商品名:MIRAMER M220
・(メタ)アクリレート樹脂1:ウレタンアクリレート(Mw:8,000)、根上工業株式会社製、商品名:アートレジンUN-952
・(メタ)アクリレート樹脂2:アクリルアクリレート(Mw:13,000)、ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名:IRR742
・ラジカル硬化型アクリルポリマー:ラジカル硬化型アクリルポリマー(Mw:22,000)、ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名:サイクロマーP(ACA)Z250
・光重合開始剤1:アルキルフェノン系光重合開始剤、分子量:340.4、IGM Resins社製、商品名:Omnirad 127
・光重合開始剤2:アルキルフェノン系光重合開始剤、分子量:279.4、IGM Resins社製、商品名:Omnirad 907
・光重合開始剤3:アルキルフェノン系光重合開始剤、分子量:164.2、IGM Resins社製、商品名:Omnirad 1173
・硬化促進剤:リン酸化合物、オルネクスジャパン株式会社製、サイキャット296-9
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)
【0047】
[実施例1]
表1に記載の配合に従って樹脂組成物を調製した。具体的には、溶剤49.1質量部に、(A)成分としてアルキル化メラミン樹脂1を34.3質量部と、(B)成分として3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー1を5.1質量部と、(C)成分として(メタ)アクリレート樹脂1を9.4質量部と、(D)成分として光重合開始剤1を1.0質量部と、(E)成分として硬化促進剤を1.1質量部とを添加し撹拌して、溶解させて、固形分40%の樹脂組成物を得た。
【0048】
[実施例2~10、比較例1~7]
表1および2に記載の配合に従って組成を変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0049】
<半硬化状態の被膜付き基材の作製>
PETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:コスモシャインA4360、厚さ100μm)に、上記で調製した樹脂組成物を乾燥膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで1回塗布し、続いて130℃の熱風乾燥機で3分間乾燥させて、半硬化状態の被膜付き基材を得た。
【0050】
<完全硬化状態の被膜付き基材の作製>
上記で得られた半硬化状態の被膜付き基材に、さらに高圧水銀ランプにて紫外線を照射(照射量:300mJ/cm)することで、完全硬化状態の被膜付き基材を得た。
【0051】
<性能評価>
(硬化被膜の状態)
上記で得た半硬化状態の被膜付き基材の外観を目視および指触により下記の基準で評価した。評価結果を表1および2に示した。「〇」であれば、ハンドリング性が優れていると評価した。
(評価基準)
○:硬化被膜の表面がべたついてゴミが付着したりする等の異常が無かった。
×:硬化被膜の表面がべたついてゴミが付着したりする等の異常が有った。
【0052】
(透明性)
上記で製造した半硬化状態の被膜付き基材について、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH4000)を用いて、JIS K7136:2000に準拠してヘイズを測定し、JIS K7361-1:1997に準拠して全光線透過率を測定した。測定結果を表1および2に示した。ヘイズが2.0%以下であり、全光線透過率が90.0%以上であれば、透明性に優れていると評価した。
【0053】
(耐ブロッキング性)
上記で作製した半硬化状態の被膜付き基材について、10cm×10cmの試験片を2枚作製した。続いて、試験片の塗装面同士を貼り合わせて、10kgの荷重をかけた状態で50℃の熱風乾燥機に24時間静置した。その後、取出した試験片を引き剥がした際の状態を確認し、下記の基準で評価した。評価結果を表1および2に示した。評価結果が「◎」または「〇」であれば、耐ブロッキング性が優れていると評価した。
(評価基準)
◎:塗装面同士の貼り付きの跡が全く無かった。
○:塗装面同士の貼り付きの跡が貼り合わせた面積の10%未満であった。
×:塗装面同士の貼り付きの跡が貼り合わせた面積の10%以上であった。
【0054】
(加熱伸張性)
上記で作製した半硬化状態の被膜付き基材について、15mm×150mmの短冊状の試験片を作製した。続いて、恒温槽付きの引張試験機(島津製作所社製、AG-X plus)で、温度:150℃、チャック間距離:100mm、引張速度:10mm/分の条件で引張り、目視で被膜にクラックが入るまでの伸長率(%)を測定した。測定結果を表1および2に示した。伸長率が30%以上であれば、加熱伸張性に優れていると評価した。
【0055】
(鉛筆硬度)
上記で作製した完全硬化状態の被膜付き基材について、JIS K5600-5-4:1999に準拠し、鉛筆引っかき試験機(株式会社安田製作所製、Nо.553-M)を用いて、硬度を測定した。具体的には、被膜上に、鉛筆を45度の角度でセットし、750gの荷重をかけて5cm引っかき、傷が入らなかった鉛筆の硬さで評価した。評価結果を表1および2に示した。鉛筆硬度がF以上(F、H、2H等)であれば、硬度が優れていると評価した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】