(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179705
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】表示装置及び当該装置を搭載した乗り物
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241219BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241219BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
H04N5/64 501D
H04N5/64 521Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098755
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梶川 啓之
(72)【発明者】
【氏名】山本 智貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA17
2H199DA18
2H199DA22
2H199DA23
2H199DA27
2H199DA42
2H199DA43
3D344AA21
3D344AA30
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】
映像光線の光路を遮ることなく、太陽光による視認性の低下の抑制を図ること。本発明によれば、持続可能な開発目標の「3すべての人に健康と福祉を」に貢献する。
【解決手段】
車両のウィンドシールドに映像光を出射可能な表示パネルと、表示パネルへ光を出射する光源と、を備え、表示パネルは、車両の運転者側に向けられており、水平面に対して、表示パネルが傾いて配置されている、ことを特徴とする表示装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウィンドシールドに映像光を出射可能な表示パネルと、
前記表示パネルへ光を出射する光源と、を備え、
前記表示パネルは、前記車両の運転者側に向けられており、
水平面に対して、前記表示パネルが傾いて配置されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記表示パネルと水平面がなす角度が30°以上である、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記表示パネルの垂線より車両前方側に向かって映像光が表示パネルから出射するときの表示パネルからの映像光の出射角度を、正の数値で表す場合、
前記表示パネルからの映像光の出射角度は、-5°以上50°以下である、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記表示パネルの垂線より車両前方側に向かって映像光が表示パネルから出射するときの表示パネルからの映像光の出射角度を、正の数値で表す場合、
前記表示パネルからの映像光の出射角度は、-5°以上40°以下である、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項3に記載の表示装置であって、
前記ウィンドシールドの水平面に対する角度は、25°以上50°以下である、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の表示装置であって、
前記ウィンドシールドの水平面に対する角度は、25°以上50°以下である、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記表示パネルは、運転者の視界から遮蔽されるように、前記車両に配置される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記表示パネルの垂線が、前記車両の屋根と交わるように配置される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の表示装置が搭載された乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、虚像表示装置及び当該表示装置を搭載した乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラス等に映像光を投写して虚像を形成し、例えば、ルート情報や渋滞情報などの交通情報、燃料残量や冷却水温度等の自動車情報を表示する虚像表示装置またはヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示装置の映像表示部は、例えば、車両のダッシュボード上または内側に配置される。このとき、太陽光などの外光が映像表示部で反射し、アイボックス(EyeBox)に入射することで、不要な迷光となり視認性を悪化させることがある。そこで、太陽光が入りにくいよう、例えば、表示装置の周りにカバーなどを設けることが考えられるが、映像光線の光路をカバーなどで遮ると虚像が見えなくなってしまい、完全な対策は容易ではないと考えられる。
【0005】
そのため、映像光線の光路を遮ることなく、太陽光による視認性の低下の抑制を図ることに課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、下記の表示装置が提供される。表示装置は、車両のウィンドシールドに映像光を投射可能な表示パネルと、表示パネルへ光を出射する光源と、を備える。この表示パネルは、車両の運転者側に向けられており、水平面に対して、表示パネルが傾いて配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表示パネルが傾くことで、映像光線の光路を遮ることなく、太陽光による視認性の低下の抑制を図ることができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】車両情報の取得に用いる装置の一例を示す図である。
【
図5】太陽光対策の一例を説明するための図である。
【
図6(a)】表示装置の構造の一例を示す図である。
【
図6(b)】表示装置の導光部の光反射部を示す拡大図。
【
図10】角度θ1、θ2、θ3を説明するための図である。
【
図11】角度θ2をより具体的に説明するための図である。
【
図12】表示パネルの傾きが小さい場合の使用状況の一例を示す図である。
【
図13】表示パネルの傾きが大きい場合の使用状況の一例を示す図である。
【
図14】角度θ1、θ2、θ3の関係について説明するための図である。
【
図15】角度θ1と太陽光受光長さ割合いの関係について説明するための図である。
【
図16】角度θ2と虚像サイズ減少割合いの関係について説明するための図である。
【
図17】角度θ1とθ3が所定の関係にある場合の使用状況について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0010】
先ず、
図1を参照しながら、システム構成の一例について説明する。
図1は、表示装置または虚像表示装置1を搭載した車両2の構成例を示す概略図である。車両2および運転者に対して、水平方向Xは、左右方向、車両の横方向または車両の幅方向であり、鉛直方向Zは、車両の上下方向、縦方向であり、車両の横方向に対し直交する水平方向Yは、車両の前後方向または車両の進行方向である。表示装置1は、虚像表示装置と称してもよい。以下は、表示装置という名称を用いて説明する。
【0011】
表示装置1は、車両2の各部に設置されたカメラ及び各種センサなどから車両情報4を取得する。各種センサは、例えば、車両2で生じた各種イベントを検出したり、走行状況に係る各種パラメータの値を定期的に検出したり、ナビゲーション装置からの道路等の情報を取得したりする。車両情報4には、例えば、車両2の速度情報やギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、カメラ映像情報、加速度ジャイロ情報、GPS(Global Positioning System)情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、および路車間通信情報などが含まれる。カメラ映像情報は、車内カメラ映像情報や車外カメラ映像情報がある。GPS情報の中には緯度および経度の他に現在時刻情報なども含まれる。また、車両情報4には、運転者からの入力情報が含まれる。
【0012】
表示装置1は、このような車両情報4に基づいて、ウィンドシールド3の表示領域5へ映像光を投射/出射する。これによって、表示装置1は、表示映像に対応する虚像を、風景に重畳させて車両2の運転者(運転者の視点)に視認させる。本実施形態では、ウィンドシールド3の表示領域5へ映像光を投射することを説明するが、映像光を投射する投射部はコンバイナなどの投射部材でもよい。
【0013】
表示装置1は、情報伝送経路を用いて車両2のコントローラ100と接続されており、表示装置1とコントローラ100は通信可能である。車両2のコントローラ100は、ECU(Electronic Control Unit)とされる。表示装置1と車両2のコントローラ100は、情報伝送経路を介して、例えば、CAN(Controller Area Network)による通信を行う。なお、表示装置1と車両2のコントローラ100は、情報伝送経路を介して、車載Ethernet等による通信を行ってもよい。
【0014】
また、他の接続形態が採用されてもよい。例えば、1つの情報伝送経路で映像情報を含むすべての情報を伝送する場合、車両2側のコントローラ100(映像情報などの供給元)と表示装置1の接続(言い換えれば、情報伝送経路の接続形態)は、FPD-Link III、GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)等であってもよい。
【0015】
コントローラ100は、データの入出力に基づいて車両2の制御を行い、表示装置1に接続される構成により、車載システムが構成される。車載システムは、車両情報4を用いてコントローラ100が車両2を制御可能なシステムである。
【0016】
次に、
図2を参照しながら、車両情報の取得に用いる装置の一例について説明する。また、
図3および
図4を参照しながら、表示装置の制御について説明する。
図2は、車両情報の取得に用いる装置の一例を示す。
図3および
図4は、表示装置における制御の主要部の構成例を示す機能ブロック図である。
【0017】
表示装置1の制御は、例えば、CAN(Controller Area Network)インタフェースやLIN(Local Interconnect Network)インタフェースなどに対応した通信プロトコルに基づいて、車両情報のデータを取得することができる。なお、車両2のコントローラ100も同様にしてデータを取得することができる。
【0018】
図2に示すように、車両情報4は、コントローラ100または制御装置に接続されるカメラ及び各種センサなどのデバイスを用いて取得される。なお、
図2の各種デバイスに関しては、適宜、削除や、他の種類のデバイスの追加や、他の種類のデバイスへの置換が可能である。また、一例として、車両2のコントローラ100が、表示装置1の制御との機能を有してもよい。
【0019】
車速センサ901は、車両2の速度を検出し、検出結果である速度情報の生成に用いられる。シフトポジションセンサ902は、現在のギアを検出し、検出結果となるギア情報の生成に用いられる。ハンドル操舵角センサ903は、現在のハンドル操舵角を検出し、検出結果となるハンドル操舵角情報の生成に用いられる。ヘッドライトセンサ904は、ヘッドライトのON/OFFを検出し、検出結果となるランプ点灯情報の生成に用いられる。
【0020】
照度センサ905および色度センサ906は、車両2の外光を検出し、検出結果となる外光情報の生成に用いられる。測距センサ907は、車両2と外部の物体との間の距離または外部の物体と物体との間の距離などを検出し、検出結果となる距離情報の生成に用いられる。赤外線センサ908は、車両2の近距離における物体の有無や距離などを検出し、検出結果となる赤外線情報の生成に用いられる。エンジン始動センサ909は、エンジンのON/OFFを検出し、検出結果となるON/OFF情報の生成に用いられる。
【0021】
加速度センサ912およびジャイロセンサ913は、車両2の加速度および角速度を検出し、車両2の姿勢や挙動を表す加速度ジャイロ情報の生成に用いられる。
【0022】
温度センサ914は、車内外等の温度を検出し、検出結果となる温度情報の生成に用いられる。
【0023】
例えば、表示装置1が車両2のダッシュボード内に格納される場合、温度センサ914は、ダッシュボード内の温度の検知に用いられてもよい。そして、表示装置1の動作に影響が出る恐れのある温度が検出された場合、表示装置1は動作を停止してもよい。ここで、温度センサ914は、一例として、ダッシュボード内に配置されてもよい。ただし、温度センサ914は、ダッシュボード内と同様の温度になり得る他の箇所に配置されてもよい。
【0024】
また、ダッシュボード上など、表示装置1がダッシュボードに格納されない場合、温度センサ914は、表示装置1が設置された付近の温度の検知に用いられてもよい。そして、直射日光等により、表示装置1の動作に影響が出る恐れのある温度が検出された場合、表示装置1は動作を停止してもよい。ここで、温度センサ914は、一例として、ダッシュボード上に配置されてもよい。表示装置1の付近の温度と車外の温度が同様になるとみなして、温度センサ914は、車外に配置されてもよい。
【0025】
路車間通信用無線送受信機915は、車両2と、道路、標識、信号等との間の路車間通信によって、路車間通信情報を生成する。車車間通信用無線送受信機916は、車両2と周辺の他の車両との間の車車間通信によって、車車間通信情報を生成する。携帯端末車間通信用有線無線通信部917は、LTE(Long Term Evolution)網に接続する機器(例えば、WiFi機器)から、有線通信または無線通信によって情報を取得する装置である。コントローラ100または制御装置は、携帯端末車間通信用有線無線通信部917を介して、LTE網で送受信する情報を取得することができる。
【0026】
車内カメラ919および車外カメラ920は、車内および車外を撮影し、車内のカメラ映像情報および車外のカメラ映像情報の生成に用いられる。具体的には、車内カメラ919は、例えば、運転者の姿勢や、眼の位置、動きなどを撮影するDMS(Driver Monitoring System)用のカメラなどである。この場合、撮像された映像を解析することで、運転者の疲労状況や視線の位置などが把握できる。
【0027】
一方、車外カメラ920は、例えば、車両2の前方や後方などの周囲の状況を撮影する。この場合、撮像された映像を解析することで、周辺に存在する他の車両や人などの障害物の有無、建物や地形、雨や積雪、凍結、凹凸などといった路面状況、および道路標識などを把握可能になる。また、車外カメラ920には、例えば、走行中の状況を映像で記録するドライブレコーダなども含まれる。
【0028】
GPS受信機921は、GPS衛星からGPS信号を受信することで得られるGPS情報を生成する。例えば、GPS受信機921によって、現在時刻、緯度および経度を取得可能である。VICS(Vehicle Information and Communication System、登録商標)受信機922は、VICS信号を受信することで得られるVICS情報を生成する。GPS受信機921やVICS受信機922は、ナビゲーションシステムの一部として設けられてもよい。
【0029】
音声入力装置918には、運転者の音声が入力され、音声入力装置918は、音声情報の生成に用いられる。運転者は、音声を発することで、音声入力装置918を介して、操作内容を入力することができる。車操作スイッチ911は、ステアリングスイッチ等に対する運転者の操作情報の生成に用いられる。
【0030】
また、映像生成部910は、車両2のコントローラ100が取得した車両情報4に基づいて映像情報を生成する。
【0031】
図3及び
図4は、表示装置1の全体および各部を制御するブロック図であり、主に、表示装置1における投射映像(虚像)の表示の制御などを行う。
【0032】
図3では、表示装置1は、例えば、配線基板などに実装されているマイクロコントローラ(MCU)1010、不揮発性メモリ1011、揮発性メモリ1012、映像処理部1013、通信処理部1014、表示用ドライバ1021、および、光源駆動部1022等を備える。
図3の例では、通信処理部1014は、主な車両情報4を受送信するが、表示装置1の制御部として機能してもよい。映像処理部1013は、車両2のコントローラ100が映像生成部910にて生成した映像情報または映像データを受信する。また、映像処理部1013は、映像を生成せず、車両2から受け取った映像を処理する。映像処理部1013の処理とは、映像の歪み補正、変換(例えば、デコード)等の処理を行う。
【0033】
図4では、
図3の場合と同様に、配線基板に実装されているマイクロコントローラ(MCU)1010、不揮発性メモリ1011、揮発性メモリ1012、通信処理部1014、映像処理部1015、表示用ドライバ1021、および、光源駆動部1022等を備える。ただし、
図4の例では、映像処理部1015は、映像生成部910の機能を有し、映像情報の受信に代えて、取得する情報(例えば、車両情報4)を用いて映像情報を生成する。また、映像処理部1015は、生成した映像情報に歪み補正、変換等の処理を行うことができる。
【0034】
MCU1010は、広く知られているように、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサや、メモリに加え、各種周辺機能を備えている。したがって、このMCU1010を除く各ブロックは、適宜、MCU1010内に搭載されてもよい。また、表示装置1は、MCU1010を用いた実装に限定されず、ECUで実装してもよいし、他の半導体デバイスを用いた実装でもよい。
図3と
図4に示すような制御構造は、例えば、表示装置1の筐体内に実装された制御部であってもよいし、筐体外に実装された制御部であってもよい。
【0035】
図3の例では、MCU1010は、通信処理部1014を介して、映像情報を、例えば、FPD-Link III、GMSLを介して受信する。MCU1010は、映像処理部1013の機能として、受信した映像情報に歪み補正、変換等の処理を行ってもよい。映像処理部1013は、主に、不揮発性メモリ1011または揮発性メモリ1012に格納されるプログラムをMCU1010のCPUが読み出して実行することで実現される。
【0036】
図4の例では、MCU1010は、通信処理部1014を介して、車両情報4を、例えば、CAN、車載Ethernetを介して受信する。MCU1010は、映像処理部1015の機能として、車両情報4などに基づいて、映像表示部200に向けた映像データなどを生成することができる。映像処理部1015は、主に、不揮発性メモリ1011または揮発性メモリ1012に格納されるプログラムをMCU1010のCPUが読み出して実行することで実現される。
【0037】
すなわち、映像処理部(1013、1015)は、取得する情報に基づいて、
図1等の表示領域5に投射される表示映像の表示内容を定める映像データを処理する。表示用ドライバ1021は、映像データに基づいて、表示パネル11に含まれる各表示素子(画素)を駆動する。これによって、映像表示部200または映像表示ユニット200は、映像データに基づいて、表示領域5へ投射するための映像を作成して表示する。
【0038】
なお、歪み補正では、具体的には、
図1に示したように、表示装置1からの映像を表示領域5に投射した場合にウィンドシールド3の曲率によって生じる映像の歪みを補正する。そして、表示用ドライバ1021は、補正後の映像データに基づいて、表示パネル11に含まれる各表示素子(画素)を駆動する。これによって、映像表示部200または映像表示ユニット200は、補正後の映像データに基づいて、表示領域5へ投射するための映像を作成、表示する。
【0039】
また、光源駆動部1022は、光源調整を行うことができ、光源駆動部1022は、画像形成部PGU1または画像形成ユニットPGU1内の光源20の輝度などを調整する。通信処理部1014を介して受信した車両情報4に基づき、光源の駆動に用いるドライバである光源駆動部1022を用いて光源20を制御する。
【0040】
また、表示装置1は、照度センサ905による外光情報などに基づいて、表示パネル11を保護してもよい。すなわち、表示パネル11に太陽光が当たり、表示パネル11が焼かれてしまうことを予防するために、照度センサ905の値に応じて、表示装置1は、太陽光からパネルを保護する動作を行ってもよい。より具体的には、照度センサ905により取得した外光または太陽光の強度が強く、表示パネル11が焼損する恐れのある場合、画像形成部PGU1内の光源20の輝度を低減し、表示パネル11に入射する光源20からの光の光量を抑制することで、表示パネル11の温度上昇を抑える。
【0041】
不揮発性メモリ1011は、主に、MCU1010内のCPUで実行されるプログラムや、MCU1010内の各部の処理で使用する設定パラメータや、規定の音声データおよび映像データなどを予め記憶する。
【0042】
揮発性メモリ1012は、主に、取得された情報や、MCU1010内の各部の処理過程で使用される各種データを適宜記憶する。通信処理部1014は、通信インタフェースが実装された装置であり、表示装置1の外部との間で、CANやLINなどに従った通信プロトコルに基づいて通信を行う。通信処理部1014は、車両情報取得部1015と一体であってもよい。
【0043】
図3および
図4の制御装置の各部は、適宜、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用回路によって実装されてもよい。本実施の形態では、不揮発性メモリ1011と揮発性メモリ1012をそれぞれ有する構成となっているが、上記の処理を一つのメモリによって機能させてもよい。
【0044】
次に、映像表示部200について具体的に説明する。映像表示部200または映像表示ユニット200は、映像光を投射する画像形成部PGU1を備える。画像形成部PGU1は、映像データに基づいて映像を表示し、表示した映像の映像光を投射する。画像形成部PGU1は、光源20と、映像表示素子を有する液晶パネルLCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネル11と、を備える。
【0045】
画像形成部PGU1は、光源20から出射される光(言い換えると、光源光)を用いて、表示パネル11に形成された映像の映像光を投射する、プロジェクタ(投射型映像表示装置)である。光源20は、代表的には、LED(Light Emitting Diode)を含んで構成される。
【0046】
表示パネル11は、映像データに基づいて、映像を作成し、当該表示パネル11の表示画面に表示する。本実施の形態の映像データは、映像処理部(1013、1015)から入力された映像データであるとして説明する。表示パネル11は、映像データに応じて、光源20からの光の透過率を画素毎に変調することで、表示領域5へ投射するための映像を形成し、映像光(言い換えると投射光)として投射する。
【0047】
また、表示パネル11は液晶パネルに限らず拡散機能を有するスクリーン板としてもよい。拡散機能を有するスクリーン板に映像を投写する手段として、DMD(Digital Micromirror Device)または液晶パネルの像を投写レンズと組み合わせて投写する手段や、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems)を用いる手段でもよい。
【0048】
光源20は、例えば半導体光源素子を用いて構成され、所定の光源光を生成して表示パネル11に供給する。光源20は、表示パネル11のバックライト光源として機能する。半導体光源素子は、代表的にはLED(Light Emitting Diode)素子が用いられる。光源20は、複数個の光源を配列した構成でもよい。
【0049】
光源20等を用いてバックライト部が構成される。なお、バックライト部の具体的な構成例については、後述する。
【0050】
表示パネル11から出射された映像光、言い換えると投射光は、ウィンドシールド3の表示領域5へ向かう。従って、表示装置1のユーザーは、その映像光を虚像として視認できる。これにより、運転者は、表示領域5に投射された映像光を、透明のウィンドシールド3の先の虚像として、車外の風景(例えば道路や建物、人など)に重畳される形で視認することができる。投射映像である虚像は、例えば、道路標識や、自車の現速度や、風景上の対象物に付加される各種情報など、様々なものがある。これにより、風景上の対象物に各種情報を付加して表示するような拡張現実(AR)機能などが実現される。
【0051】
しかしながら、表示装置1内に太陽光が入射し、視認性を低下させる可能性がある。次に、太陽光による視認性の低下の抑制を図る技術を具体的に説明する。
【0052】
すなわち、
図5に示すように、虚像10として表示したい情報、アラートなどの映像は、LCDなどの表示パネル11で生成され、表示パネル11で生成した映像は、バックライト部の光源を用いて、映像光線13として投射される。映像光線13は、ウィンドシールド3で反射し、アイボックス14に入射することで、運転者は虚像10を認識することができる。
【0053】
ここで、一例として、ウィンドシールド3の角度、アイボックス14位置を基準とした虚像10に対する俯角、アイボックス14と虚像10との間の距離である虚像距離、の観点に基づいて、表示パネル11の位置(X,Y,Z)がおおよそ決定する。このとき、表示パネル11は、例えば車両2のダッシュボード上または中に配置されるが、太陽光などの外光が表示パネル11で反射しアイボックス14に入射することで、太陽光などの外光が、不要な迷光となり、視認性が悪化することがある。ここで、例えば、太陽光が入りにくいよう、表示装置1の周りにカバーなどが設けられると、映像光13の光路をカバーなどが遮り、虚像10が見えなくなってしまうこともあり、外光に対する完全な対策は容易ではない。
【0054】
そこで、
図5に示すように、表示パネル11を運転者側に傾かせることで、下記(1)~(3)の効果を得ることができる。
【0055】
(1)表示パネル11を適切な角度に傾け、太陽光線15など外光がアイボックス14から外れるように対策することで、太陽光線15などの外光が表示パネル11で反射し、視認性が悪化することを抑制することができる。すなわち、正反射による迷光対策が実現する。
【0056】
(2)太陽16からのエネルギーとバックライト光で表示パネル11は高温になり、温度特性による明るさ低下、画面焼けなど部品故障の原因となる。ここで、表示パネル11の傾きが大きいほど、表示パネル11に入射する太陽光エネルギーが少なくなり、表示パネル11の熱対策が実現できる。
【0057】
(3)表示パネル11が傾くことで、表示装置1の車両前後方向の長さが短くなるので、例えば、狭いダッシュボードの上部、または、その内部に、表示装置1を搭載しやすくなる。すなわち、レイアウトの自由度が改善される。
【0058】
次に、
図6-
図7を参照しながら、画像形成部の構成例について説明する。画像形成部または画像表示部は、光源部12aと表示パネル11を備える。
図6(a)に示すように、光源部12aは、バックライト部と称してもよい。光源部12aは、光源20と、反射ミラー21と、偏光変換素子22と、導光部23aと、を備えており、また、拡散板24を備えてもよい。反射ミラー21は、光源20からの光を反射し、平行光に制御することに用いられる構成である。反射ミラー21の反射面は、放物面であり、光源20の出射光の光軸に対して非対称な形状でもよい。また、反射ミラー21は、光源20に対して偏心して配置してもよい。反射ミラー21は、反射部またはリフレクタと称してもよい。偏光変換素子22は、偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)と位相差フィルム(1/2λ)によって構成され、入射光をS偏光とP偏光に分離し、分離したS偏光またはP偏光のどちらか一方を、位相差フィルム(1/2λ)で偏光変換して、偏光変換素子22に入射したランダム偏光を直線偏光として出射する。本実施形態では、偏光変換素子22で光源20から出射される光の偏光を揃えることで、画像投射の高効率化を図っている。
【0059】
導光部23aは、表示パネル11への光線の入射角を調整する構成であり、この例では、プリズム形状(ギザギザの形状)を有する光反射部60を用いて構成される。なお、導光部23aは、一例として、プリズムシートとしてもよい。この例では、導光部23aの光反射部60に入射する光線は、所定の配光に調整されて、表示パネル11側に向けて反射される。表示パネル11に入射する光の分布は、光反射部60の反射面の形状、反射面の傾き、面粗さなどにより調整できる。従って、
図6(a)の構造では、光源20の光線の向きは、一例として、同図に示すようになる。この構造では、光源20の光軸と、表示パネル11に入射する光の光軸が平行または略平行となる。導光部23aは、例えば、プリズム形状を有した樹脂部材で、反射面となるプリズム形状部分にAl反射膜などがコートされている。導光部23aの光反射部60は、
図6(a)に示すように、より高精度に反射光の調整を実現するため、1面に複数の傾きを持つような構成としてもよい。また、反射面において、
図6(b)に示すように、複数面または多面で構成してもよいし、曲面で構成してもよい。拡散板24は、導光部23からの入射光を均質に分散させる。拡散板24には、虚像面内の輝度均一性を向上させる効果がある。
【0060】
図6(b)に、導光部23aの光反射部60の拡大図を示す。光反射部60には、多数の反射面と連接面とが交互に鋸歯状に形成されており、導光部23aに入射した光は、各々の反射面上で反射されて上方に向かい、更には、拡散板24を介して、所定の配光特性に調整されて表示パネル11へ入射する。また、反射面仰角α1a、α2a、α3a、α4a…は、所定の配光特性が得られるよう任意に設定されており、他方、反射面と連接面との相対角度β1a、β2a、β3a、β4a…は、場所に依らず一定の角度、より好ましくは、90度以上の角度(βna≧90°)に設定されている。導光部23aを射出成形で作製する際、相対角度βnaを90度以上に設定することで、反射面および連接面の金型加工が容易になる。
【0061】
連接面Lc1a,Lc2a,Lc3a・・・・と反射面Lr1a,Lr2a,Lr3a・・・・の長さおよび比率を適宜設定することにより、導光部23aによって反射された光の照射範囲を、表示パネル11などの装置に対して必要な大きさ(面サイズ)に変更可能な光源部を実現することが可能となる。また、比率Lr/Lcを適宜調整することにより、部分的に反射光を強くし、または、弱くすることも可能となる。例えば、光反射部60に入射する光の強度分布に応じて、比率Lr/Lcを調整する。より具体的には、光反射部60において入射光の強度が強い箇所では、比率Lr/Lcを小さくする、すなわち、反射面仰角αnaを細かいピッチで設定することで、光の反射方向を緻密に制御し、表示パネル11に入射する光の輝度分布を均一に調整することが可能となる。
【0062】
図6(a)では、平行光制御に反射ミラー21を用いたが、
図7に示すような構成としてもよい。すなわち、
図7に示すように、光源部12bは、光源20,レンズ25、偏光変換素子22、及び導光部23bを備えており、光源20から光を出射してレンズ25で平行光となった入射光は、偏光変換素子22の働きにより偏光されて、導光部23bに入射し、導光部23bで反射された光を表示パネル11に向けて出射する。光源部12bは、反射ミラー21に代えて、平行光制御にレンズ25(コリメートレンズ)を備える。また、この光源部12bでは、レンズ25に向かって光を射出するように、光源20が配置される。レンズ25は、光源20からの光を平行光に制御する。
【0063】
また、
図6では、導光部23aは、プリズム形状を有する導光部によって表示パネル11側に光線を曲げる構成であったが、導光部23aは、
図7に示すような構成としてもよい。すなわち、
図7に示すように、導光部23bは、樹脂やガラスなどの透明部材で構成され、光入射部26と、光反射部27と、光出射部28と、を備え、これら3面の形状に基づいて、配光制御する構成であってもよい。この場合、反射部27では、光源20からの光が全反射によって反射されてもよいし、反射面にコートされたAl反射膜などによって反射されてもよい。
図7の構造では、バックライト光線の向き30は、一例として、同図に示すようになる。この構造では、光源20の光軸と、表示パネル11に入射する光の光軸が略直交となる。
【0064】
図7の導光部23bは、上述した光源20から、レンズ25および偏光変換素子22を介して平行光として入射部26から取り入れた光を内部で反射・屈折して所望の方向に導くと共に、所望の面積有する面状の光として取り出す機能を有する。導光部23bは、偏光変換素子22の出射面に対向する導光部の光入射部26と、斜面を形成する光反射部27と、表示パネル11へ光を出射する光出射部28を備えている。導光部23bの光入射部26では、主たる光線が、光反射部27に対して入射角が大きくなる方向に所定角度偏向されている。即ち、光入射部26は、光源20に傾斜した湾曲の凸形状に形成されている。光反射部27には、多数の反射面と連接面とが交互に鋸歯状に形成されており、導光部23bに入射した光は、各々の反射面上で反射されて上方に向かい、更には、光出射部28や拡散板24を介して、所定の配光特性に調整されて表示パネル11へ入射する。また、反射面仰角α1b、α2b、α3b、α4b…は、各々の反射面が入射光に対して臨界角以上の角度となるように設定されており、他方、反射面と連接面との相対角度β1b、β2b、β3b、β4b…は、場所に依らず一定の角度、より好ましくは、90度以上の角度(βnb≧90°)に設定されている。導光部23bを射出成形で作製する際、相対角度βnを90度以上に設定することで、反射面および連接面の金型加工が容易になる。各反射面が入射光に対して常に臨界角以上の角度となるような構成になっているので、光反射部27に金属等の反射膜を形成しなくても、全反射が可能となり、低コストで、所望の方向に導くと共に、所望の面積を有する面状の光として取り出す機能する導光部27を備えた光源装置を実現できる。一方、光反射部27に反射膜を形成する構造では、反射面に入射する角度を任意に設定できるので、導光部23bの設計自由度が増える。
【0065】
連接面Lcb1,Lcb2,Lcb3・・・・と反射面Lrb1,Lrb2,Lrb3・・・・の長さおよび比率を適宜設定することにより、光軸方向における光出射部28の長さを自由に変更することができることから、光入射部26に対して、光出射部28の大きさ(面サイズ)を、表示パネル11などの装置に対して必要な大きさ(面サイズ)に変更可能な光源部を実現することが可能となる。また、比率Lr/Lcを適宜調整することにより、部分的に反射光を強くし、または、弱くすることも可能となる。例えば、光反射部27に入射する光の強度分布に応じて、比率Lr/Lcを調整する。より具体的には、光反射部27において入射光の強度が強い箇所では、比率Lr/Lcを小さくする、すなわち、反射面仰角αnbを細かいピッチで設定することで、光の反射方向を緻密に制御し、表示パネル11に入射する光の輝度分布を均一に調整することが可能となる。
【0066】
なお、例えば、光源部は、
図6の構造において、導光部23aに代えて導光部23bを備える構造であってもよい。また、光源部は、
図7の構造において、導光部23bに代えて導光部23aを備える構造であってもよい。
【0067】
また、
図6および
図7において、角度40(θ1)は、太陽光対策のために、表示装置1の搭載時において表示パネル11を水平面に対して傾ける角度を示しており、表示パネル11または拡散板24と導光部の出射面がなす角度は、この角度40(θ1)とは異なってもよい。従って、表示装置1の搭載時において、光源の出射部分は、水平面に平行でなくてもよい。
【0068】
角度41(θ2)は、表示パネル11から出射する映像光の出射角度を示しており、角度43(θ2)は、表示パネル11に入射する映像光の入射角度を示している。これらの角度(41、43)は、表示パネル11の垂線44を基準として定められる角度であり、角度41と角度43は、それぞれ等しくなる。角度40(θ1)、角度41(θ2)、角度43(θ2)等の関係は、後で詳しく説明する。
【0069】
図8に示すように、光源部は、レンズ25によって平行光に制御された光が透過するプリズム形状の光学部品31を備える構造であってもよい。すなわち、光学部品31により曲げられた光線が、導光部23aの導光体部品、或いは、反射面27に入射する構造が採用されてもよい。また、
図9に示すように、光源20を含む平行光制御部を傾け、例えば、最適な角度となるように、光源20の角度32を調整(設定)してもよい。反射ミラー21の場合も同様に、傾けて向きを変更してもよい。
【0070】
次に、
図10、
図11を参照しながら、角度θ1、角度θ2、角度θ3について説明する。
【0071】
図10に示すように、表示パネル11の出射面側は、運転者側に向けられ、車両の水平方向または横方向においてこの表示パネル11と水平面がなす角度が、角度40(θ1)である。すなわち、角度40(θ1)は、水平面に対する表示パネル11の傾きである。そして、角度41(θ2)は、この表示パネル11の垂線44に対する映像光の出射角度であり、角度43(θ2)は、この表示パネル11の垂線に対する映像光の入射角度である。角度43(θ3)は、水平面に対するウィンドシールド3の角度を定める。
【0072】
また、角度関係の説明では、
図10および
図11に示すように、映像光13が表示パネル11から出射するときの、表示パネル11からの映像光線13の出射角度を、正の数値で表す。また、
図11に示すように、表示パネル11の垂直方向(垂線44)と映像光となす角度41(θ2)と角度43(θ2)は、互いに等しい関係となる。すなわち、出射角度41(θ2)=入射角度43(θ2)の関係がある。
【0073】
例えば、FoV:11×4[deg]、虚像距離:1100[mm]、俯角:5.5[deg]、アイボックス14:150×70[mm]となるように、虚像を投影する設計を行う場合、一例として、下記(1)~(3)のように、角度が設定される。
(1)水平面に対する表示パネル11の傾き角度40(θ1)=60[deg]、表示パネル11に対する映像光の入射角度41(θ2)=+26[deg]
(2)水平面に対する表示パネル11の傾き角度40(θ1)=31[deg]、表示パネル11に対する映像光の入射角度41(θ2)=+2[deg](ほぼ垂直)
(3)水平面に対する表示パネル11の傾き角度40(θ1)=14.5[deg]、表示パネル11に対する映像光の入射角度41(θ2)=-19[deg]
【0074】
なお、
図10に示すように、車両の水平方向と垂直方向において、表示パネル11の傾きとは、表示パネル11光入射面と水平面となす角度であり、表示パネル11の傾きを大きくしたい場合、バックライト部12からの光線入射角(言い換えれば、表示パネル11からの出射角)が、+方向(
図11において、符号θ+が示す方向)になるように、バックライト部12を設計する。
【0075】
次に、
図12、
図13を参照しながら、表示装置1の使用状況の一例について説明する。
図12は、表示パネルの傾きが小さい場合の使用状況の一例を示す。
図13は、表示パネルの傾きが大きい場合の使用状況の一例を示す。
【0076】
図12に示すように、表示パネル11の傾きが小さい場合では、表示パネル11の車両前後方向に沿った長さ51、言い換えると、表示パネル11に入射する太陽光15の範囲、または、太陽光の受光長さが大きくなり、表示パネル11に入射する太陽光が多くなる。そのため、表示パネル11は、太陽16からの太陽光15、および、映像光を吸収し、高温となってしまうため、例えば、温度特性による明るさ低下、焼けなどの故障などが発生すると考えられる。
【0077】
また、長さ51が大きくなることで、メータ、機器類などが配置される領域53に、物理的な干渉55が発生し、表示装置1の配置箇所が限定され得る。また、長さ51が大きくなることで、ダッシュボード52の内部で干渉が発生し、こうした観点からも表示装置1の配置箇所が限定される。
【0078】
そのため、表示パネル11の傾きを大きくし、表示パネル11の車両前後方向に沿った長さ51を小さくすることが好ましい。なお、
図12の例では、表示パネル11の設置角度(θ1):31[deg]、表示パネル11の面積:204[mm]×65[mm]と設定されている。そして、表示パネル11の車両前後方向に沿った長さ51は、65[mm]×cos(31°)であり、概ね56[mm]となる。
【0079】
図13に示すように、表示パネル11の傾きが大きい場合では、表示パネル11の車両前後方向に沿った長さ54、言い換えると、表示パネル11に入射する太陽光15の範囲、または、太陽光の受光長さが小さくなる。これによって場合、太陽16から表示パネル11が受ける太陽光エネルギーを小さくし、表示パネル11に対する太陽光15の影響を低下させることができる。すなわち、表示パネル11の太陽光入射による劣化を抑制し、表示装置1の信頼性を向上させることができる。
【0080】
また、長さ54が小さくなることで、メータ、機器類などが配置される領域53に物理的な干渉が発生しないように、表示装置1を配置しやすくなる。また、ダッシュボード52の内部で干渉が発生しないように、表示装置1を配置しやすくなる。このような観点から、レイアウトの自由度の向上を図ることができる。
【0081】
例えば、長さ54を小さくすることで、狭いダッシュボード52上、ダッシュボード52の内部などに、表示装置1が搭載しやすくなる。ここで、映像光線が通過する開口部が形成されたダッシュボード52の上面、および、表示パネル11の面が、面一となるように、表示装置1が設けられてもよい。また、ダッシュボード52の内部に表示パネル11を配置する場合、ダッシュボード52の開口部に透光性のカバーが設けられてもよい。
【0082】
図13の例では、表示パネル11の設置角度(θ1):60[deg]、表示パネル11の面積:202[mm]×73[mm]と設定されている。そして、表示パネル11の車両前後方向に沿った長さ54は、73[mm]×cos(60°)であり、概ね42[mm]となる。
【0083】
表示装置1の表示パネル11は、運転者50から直接見えないように配置されることが好ましい。そのため、
図12および
図13に示すように、表示パネル11の上端部に向かう運転者50の視線56上に、メータ、機器類などが配置され、表示パネル11が運転者50の視線56から隠れるように、表示装置1が設けられることが好ましい。もしくは、HUD装置1がダッシュボード52内に格納されてもよい。このように、運転者50からHUD装置1が直視されない配置では、HUD装置1に入射した外光が、表示パネル11で反射し、運転者50の眼に直接入射することで生じる迷光を防ぐことができる。
【0084】
次に、
図14-
図16を参照しながら、それぞれの角度(θ1、θ2、θ3)の関係について説明する。角度θ1、角度θ2、角度θ3の意味は、
図10および
図11を用いて上記で説明した通りである。なお、
図14に示す6つの折れ線グラフは、一番下の折れ線グラフから順に、θ3=25°、θ3=30°、θ3=35°、θ3=40°、θ3=45°、θ3=50°のデータである。
【0085】
図14に示すように、表示パネル11を傾けることによる太陽光対策として、水平面に対する表示パネル11の傾き角度θ1は、30°以上であることが好ましい。
図15を参照しながら具体的に説明すると、角度θ1を30°とすることで、表示パネル11を傾けない場合(θ1=0°)と比較して、太陽光受光長さ(すなわち、表示パネル11の上下方向長さ×cos(θ1))が約10%短くなり、表示パネル11に入る太陽光エネルギーを約10%低減することができる。また、角度θ1が30°未満では、太陽光受光長さの減少が緩やかであるが、角度θ1が30°以上では、太陽光受光長さの減少が線形的になり、良好な太陽光対策が実現できる。
【0086】
表示パネル11を傾けることで、虚像サイズ(FoV)が小さくなる(詳細には、虚像の上下方向のサイズが小さくなる)。ここで、FoVの低下を抑制させる観点から、表示パネル11に対する映像光の入射角度または出射角度θ2が40°以下であることが好ましい。
図16を参照しながら具体的に説明すると、角度θ2が40°以下の範囲では、虚像サイズ(FoV)の減少が緩やかであるが、角度θ2が40°以上の範囲では、虚像サイズの減少が線形的になり、角度θ2の増加に伴う虚像サイズの減少がより大きくなる。従って、
図14が示すように、角度θ2は40°以下であることが好ましい。
【0087】
なお、
図14が示す水平面に対する表示パネル11の角度θ1と水平面に対するウィンドシールド角度θ3の関係が、θ1≧90°-θ3であるとき、すなわち、表示パネル11の垂線が車両2の屋根と交わるとき、車両2の屋根で太陽光が遮光され、表示パネル11の正面から太陽光が入射しない。
図17は、水平面に対する表示パネル11の角度θ1と水平面に対するウィンドシールドの角度θ3の関係が、θ1=90°-θ3となるときを示しており、、表示パネル11の垂線と、ウィンドシール3と、が平行または略平行になり、車両2の屋根が、表示パネル11の正面へ入射する太陽光を遮光する。また、θ1>90°-θ3の条件では、表示パネル11の垂線が車両後方側へと倒れ、車両2の屋根と交わる。従って、表示パネル11の正面に太陽16が位置するとき、太陽光は車両2の屋根に遮光される。
【0088】
一方、表示パネル11に対する映像光の入射角度または出射角度θ2が大きくなりすぎると、表示パネル11の特性上、透過率の低下を原因として映像の明るさまたはコントラストが低下する可能性がある。そのため、
図14の(A)が示すように、角度θ2は50°以下で設定することが好ましい。
【0089】
また、
図14に示すように、水平面に対するウィンドシールドの傾き角度θ3に応じて、水平面に対する表示パネル11の角度θ1と、表示パネル11に対する映像光の入射角度または出射角度θ2の値が異なり、角度θ3が小さいほど、FoVの低減を抑制しやすい傾向があり、言い換えると、角度θ2が比較的小さく、角度θ3が小さいほど、FoVの低減を抑制しつつ、角度θ1を大きく設定しやすいことが分かった。
【0090】
上記の観点から、水平面に対する表示パネル11の傾き角度θ1、および、表示パネル11に対する映像光の入射角度または出射角度θ2、水平面に対するウィンドシールドの角度θ3の関係は、一例として、次のようにするのがよい。
(1)ウィンドシールド傾き(θ3):25~30[deg]の場合、θ1:30[deg]~80[deg]、θ2:-5deg~40[deg]
(2)ウィンドシールド傾き(θ3):30~35[deg]の場合、θ1:30[deg]~70[deg]、θ2:5[deg]~50[deg]
(3)ウィンドシールド傾き(θ3):35~40[deg]の場合、θ1:30[deg]~60[deg]、θ2:15[deg]~50[deg]
(4)ウィンドシールド傾き(θ3):40~45[deg]の場合、θ1:30[deg]~50[deg]、θ2:25[deg]~50[deg]
(5)ウィンドシールド傾き(θ3):45~50[deg]の場合、θ1:30[deg]~40[deg]、θ2:35[deg]~50[deg]
【0091】
以上、実施形態について説明されたが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をしてもよい。
【0092】
例えば、ウィンドシールド3の映像光が投射される部分は、投射する映像の背景が黒色になるように、黒色のフィルムが車内側に貼合された構成でもよいし、黒色のセラミックが車内側に塗布された構成でもよい。映像の背景が黒色になることで、映像輝度と背景輝度のコントラストが高くなり、映像に対する運転者の視認性が向上する。なお、この場合においても、表示パネル11を運転者側に向けて傾けることで、車両前後方向を短くすることによるレイアウト自由度の向上を図ることができる。
【0093】
表示装置1を搭載する車両2(乗り物)は、代表的には自動車である。
【0094】
本実施例に係る技術では、ウィンドシールドに対して、表示パネルを運転者側に向けて傾いて配置することで、太陽光対策が実現でき、よい虚像を表示でき、運転者の視点移動を軽減して安全運転の支援に寄与する情報表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)を提供することにより交通事故を防止することが可能となる。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「3すべての人に健康と福祉を」に貢献する。
【符号の説明】
【0095】
1 表示装置(虚像表示装置)
11 表示パネル