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特開2024-179706処理装置、処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179706
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20241219BHJP
   C21B 7/24 20060101ALI20241219BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20241219BHJP
   G01S 13/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01S7/40 139
C21B7/24 302
G01S13/88
G01S13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098756
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 理彩
(72)【発明者】
【氏名】柴本 浩児
(72)【発明者】
【氏名】大竹 広野
【テーマコード(参考)】
4K015
5J070
【Fターム(参考)】
4K015KA03
5J070AC02
5J070AD01
5J070AE07
5J070AF01
5J070AK32
(57)【要約】
【課題】 装入物の表面までの距離を非接触で測定する際に、容器内の状況に応じて多様に変化する測定環境の良否の情報を得る。
【解決手段】 処理装置100は、非接触式原料レベルの測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、非接触式測定装置10の測定環境の良否を判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定する測定装置の測定環境を判定するための処理を行う処理装置であって、
前記測定装置の測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する判定部を備える、処理装置。
【請求項2】
前記操業情報は、実行中の操業工程または実行中でない操業工程を特定可能な操業フェーズ情報と、前記容器に対する操作の内容を特定可能な操業アクション情報と、のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記操業フェーズ情報は、実行中の操業工程または実行中でない操業工程として、前記測定装置が測定を行う操業工程を特定可能な情報を含み、
前記操業アクション情報は、前記測定装置が測定中であるときの操作の内容を特定可能な情報を含む、請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記操業アクション情報は、前記容器の内部に供給される物質に関する情報を含む、請求項2または3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記操業フェーズ情報に基づいて特定される前記操業工程が所定の操業工程である場合または所定の操業工程でない場合に、前記測定値に基づいて、前記測定環境の良否を判定する、請求項2または3に記載の処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記測定値の時間変化に基づいて、前記測定環境の良否を判定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記判定の結果に基づく情報を出力する第1出力部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記第1出力部は、前記判定の結果を報知するための情報である報知情報を出力する報知情報出力部を有する、請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記第1出力部は、前記判定部による前記測定環境の良否の判定結果が変わった場合に、前記報知情報を出力する、請求項8に記載の処理装置。
【請求項10】
前記第1出力部は、前記判定の結果に基づく操業指示を示す操業指示情報を出力する操業指示情報出力部を有する、請求項7に記載の処理装置。
【請求項11】
前記測定値に基づく前記装入物の表面の高さ位置を示すレベル情報を出力する第2出力部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項12】
前記判定部は、
nを2以上の整数として、それぞれが、少なくとも前記測定値に基づいて、前記測定環境の良否を判定する第1判定部~第n判定部と、
前記第1判定部~前記第n判定部の判定結果に基づいて前記測定環境の良否を判定する第1最終判定部と、
をさらに有し、
前記第1判定部~前記第n判定部のうちの少なくとも1つは、前記測定値を含む複数種類の前記操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項13】
前記操業情報は、実行中または実行中でない操業工程を特定可能な操業フェーズ情報と、前記容器に対する操作の内容を特定可能な操業アクション情報と、を含み、
前記判定部は、前記測定値と、前記操業アクション情報と、に基づいて、前記測定環境の良否を判定する第2最終判定部をさらに有し、
前記第1判定部~前記第n判定部のうちの少なくとも1つは、前記測定値と、前記操業フェーズ情報と、に基づいて、前記測定環境の良否を判定し、
前記第1最終判定部の判定結果と、前記第2最終判定部の判定結果と、が、前記判定部における前記測定環境の良否の判定結果に含まれる、請求項12に記載の処理装置。
【請求項14】
前記容器は、高炉である、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項15】
容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定する測定装置の測定環境を判定するための処理を行う処理方法であって、
前記測定装置の測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する判定工程を備える、処理方法。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置の判定部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
容器内の装入物の表面の高さ位置を測定するために、容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定することが行われている。この種の技術として特許文献1には、マイクロ波距離計で測定された距離が異常である場合には測定値を更新せず、その後、その状態が継続した場合には測定値として出力することにより、特殊な現象が生じた場合の測定誤差を低減することが記載されている。また、特許文献2には、マイクロ波距離計で測定された距離の時間変化が閾値よりも小さい場合に距離の現在値を測定値として出力するに際し、距離に応じて閾値を可変とすることにより、測定範囲を拡大および測定精度を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭60-16586号公報
【特許文献2】特開昭61-226670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、測定視野内に原料が存在する場合に、測定値を出力しないことに留まる。したがって、容器内の状況に応じて多様に変化する測定環境の良否を判定することが容易ではない。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、装入物の表面までの距離を非接触で測定する際に、容器内の状況に応じて多様に変化する測定環境の良否の情報を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の処理装置は、容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定する測定装置の測定環境を判定するための処理を行う処理装置であって、前記測定装置の測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する判定部を備える。
【0007】
本発明の処理方法は、容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定する測定装置の測定環境を判定するための処理を行う処理方法であって、前記測定装置の測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する判定工程を備える。
【0008】
本発明のプログラムは、前記処理装置の判定部としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装入物の表面までの距離を非接触で測定する際に、容器内の状況に応じて多様に変化する測定環境の良否の情報を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】処理装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図2】高炉の(一部の)概略構成の一例を示す図である。
図3】正常時の原料レベルの測定結果の一例を示す図である。
図4】異常時の原料レベルの測定結果の第1の例を示す図である。
図5】異常時の原料レベルの測定結果の第2の例を示す図である。
図6】第1判定部が有する機能の一例を説明するフローチャートである。
図7】第2判定部が有する機能の一例を説明するフローチャートである。
図8】第3判定部が有する機能の一例を説明するフローチャートである。
図9】第1最終判定部が有する機能の一例を説明するフローチャートである。
図10】第2最終判定部が有する機能の一例を説明するフローチャートである。
図11】報知情報出力部が有する機能の一例を説明するフローチャートである。
図12】非接触式測定装置の測定環境の良否を判定する際の処理方法の一例を説明するフローチャートである。
図13】操業指示情報を出力する際の処理方法の一例を説明するフローチャートである。
図14】原料レベル情報を出力する際の処理方法の一例を説明するフローチャートである。
図15】指示飛びおよび荷下がり中の指示上昇の検知結果の一例を示す図である。
図16】指示保持および荷下がり中の指示上昇の検知結果の一例を示す図である。
図17】散水流量を用いた測定環境の良否の検知結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。なお、長さ、位置、大きさ、間隔など、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。また、各図では、説明および表記の都合上、説明に必要な部分のみを必要に応じて簡略化して示す。
【0012】
図1は、処理装置100の機能的な構成の一例を示す図である。処理装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)など、一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)など、一またはそれ以上の数のメモリと、をハードウェアとして有し、メモリに格納される一またはそれ以上の数のプログラムを一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサにより実行することで各種の演算を実行する。さらに、処理装置100は、入力装置および出力装置をハードウェアとして有する。
【0013】
処理装置100は、非接触式測定装置の測定環境を判定するための処理を行う。非接触式測定装置は、容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定する装置である。容器は限定されないが、本実施形態では、容器が高炉である場合を例示する(容器の変形例については<変形例>の欄で後述する)。そこで処理装置100が有する機能の一例を説明する前に、まず、図2を参照しながら、高炉の一例の概要を説明する。
【0014】
<高炉設備の概要>
図2において、炉体2の炉口部(炉頂において開口している領域)には旋回シュート4が設置される。高炉1に装入される原料(例えば、鉄鉱石やコークス)は、旋回シュート4を通って高炉1内に装入され、高炉内装入物3として高炉1内に堆積する。このように図2では、高炉1が旋回シュート4を備える場合を例示するが、高炉1は、旋回シュートに代えてベル式装入装置を備えていても良い。以下の説明では、不図示のホッパーから旋回シュート4を介して高炉1内に原料を供給(落下)するための処理を行うことを、必要に応じてダンプと称する。
【0015】
図2に示すように本実施形態では、炉体2の炉頂部付近の、炉体2よりも外側に非接触式測定装置10が設置される場合を例示する。非接触式測定装置10は、非接触式測定装置10から高炉内装入物3の表面までの距離を非接触で測定(算出)する。以下の説明では、非接触式測定装置10から高炉内装入物3の表面までの距離を、必要に応じて、装入物までの距離と称する。また、高炉内装入物3の表面を、必要に応じて原料面と称する。本実施形態では非接触式測定装置10が、装入物までの距離に基づいて原料面の高さ位置を算出する場合を例示する。以下の説明では、原料面の高さ位置を、必要に応じて原料レベルと称する。本実施形態では、原料レベルが、炉底側(下側)の所定位置(例えば地面)を原点(基準位置)として、炉頂側(上側)であるほど大きい正の値を有する場合を例示する。なお、原料レベルがどのような値をとるのかは、例えば、製鉄所における原料レベルの管理方法に応じて定められ、必ずしも前述したようにして値が定められる必要はない。例えば、原料レベルは負の値を有していても良い。また、原料レベルは、装入物までの距離に基づいて処理装置100で算出されても良い。
【0016】
非接触式測定装置10自体は公知の技術で実現され、その構成は限定されないが、本実施形態では、非接触式測定装置10が、特開2017-20078号公報に記載の装置である場合を例示する。以下に非接触式測定装置10の一例を概説する。
【0017】
図2において、非接触式測定装置10は、電子ユニット部10aと、マイクロ波送受信部10bと、支持管10cと、短管10dと、断熱板10eと、遮断弁10fと、を備える。
【0018】
マイクロ波送受信部10bは、例えば、電子ユニット部10aの制御に基づいて、原料面に向けてマイクロ波(送信波)を送信する。マイクロ波(送信波)は原料面で反射され、反射波はマイクロ波送受信部10bで受信され、電子ユニット部10aに送られる。支持管10cは、マイクロ波送受信部10b、電子ユニット部10a、および不図示のアンテナを短管10dに接続するための構造物であり、例えば、鋼管である。また、支持管10cは、送受信波の伝播路の役割も果たす。電子ユニット部10aは、マイクロ波送受信部10bで受信された反射波に基づいて、装入物までの距離を、例えば高速フーリエ変換解析技術を用いて算出し、算出した装入物までの距離に基づいて原料レベルを算出する。以下の説明では、このようにして非接触式測定装置10で測定(算出)される原料レベルを、必要に応じて非接触式原料レベルの測定値、または単に非接触式原料レベルと称する。
【0019】
短管10dは、その中空領域が支持管10cの中空領域と連通するように支持管10cよりも炉底側に設置される。短管10d内には、断熱板10eへの粉塵の付着の抑制や、電子ユニット部10aなどを冷却することなどを目的としてN2ガスが吹き込まれる。断熱板10eは、電子ユニット部10aなどを高炉1内の熱から保護するために支持管10cよりも炉底側に設置される。なお、断熱板10eの形状および大きさは、送信波および反射波の伝播が断熱板10eによって妨げられないように定められる。遮断弁10fは、短管10dよりも炉底側に設置される。遮断弁10fは、例えば、非接触式原料レベルを測定する場合に開かれ、そうでない場合には閉じる。非接触式測定装置10は、遮断弁10fが開いているときに限りマイクロ波(送信波および反射波)の送受信を行うことが出来る。例えば、非接触式原料レベルを測定する場合にのみ遮断弁10fを開くことにより、電子ユニット部10aなどを高炉1内の熱から保護することと、高炉1内の物質(原料塊、粉塵など)が非接触式測定装置10の内部に進入することを抑制することと、を実現することが出来る。
【0020】
非接触式測定装置は、装入物までの距離を非接触で測定する装置であれば良く、公知の技術で実現することが出来る。例えば、非接触式測定装置は、特許文献1、2に記載の装置であっても良い。また、非接触式測定装置は、その他の公知のマイクロ波距離計を備えていても良い。
【0021】
また、伝播中に受ける高炉1内の粉塵の影響を低減するために、非接触式測定装置が測定に用いる電磁波は、マイクロ波、ミリ波、またはサブミリ波であるのが好ましい。しかしながら、高炉1内の環境などによっては、その他の電磁波を用いても良いし、電磁波以外の(空気中を伝播することが可能な)波を用いても良い。
【0022】
また、本実施形態では、非接触式測定装置10が、後述する処理装置100に測定値を不図示の通信ケーブル等の有線で送信する場合を例示する。ただし、非接触式測定装置10が測定値を出力する手段は有線通信に限定されない。例えば、非接触式測定装置10は、送受信機を備えて無線を介して測定値を出力しても良い。
【0023】
また、図2では、高炉1に設置される非接触式測定装置10が一つである場合を例示する。しかしながら、高炉1に設置される非接触式測定装置10の数は2以上であっても良い。例えば、高炉1(炉体2)の中心軸線C1周りに、複数の非接触式測定装置10が設置されていても良い。例えば、高炉1(炉体2)の中心軸線C1を対称軸として軸対称となる位置に設置された二つの非接触式測定装置10の組が一組または複数組、高炉1に設置されていても良い。
なお、以下の説明では、マイクロ波を用いた非接触式測定装置による非接触式原料レベルの測定を、必要に応じてμ波サウンジングと称する。
【0024】
図2に示すように本実施形態では、炉体2の炉頂部付近に、接触式測定装置20が設置される場合を例示する。接触式測定装置20も非接触式測定装置10と同様に装入物までの距離を測定する。ただし、接触式測定装置20は、接触式の測定装置である。後述するように本実施形態では、接触式測定装置20が、回転ドラム20cに巻かれていないワイヤー20bの長さを装入物までの距離として測定する場合を例示する。また、非接触式測定装置10は、ダンプ(旋回シュート4を介した原料の高炉1内への装入)中であるか否かに関わらず、装入物までの距離を測定することが出来る。これに対し、接触式測定装置20は、ダンプ中には装入物までの距離を測定せずに、ダンプが行われていないときに装入物までの距離を測定する。なお、本実施形態では接触式測定装置20が、装入物までの距離に基づいて原料レベルを算出する場合を例示する。ただし、原料レベルは、装入物までの距離に基づいて処理装置100で算出されても良い。以下の説明では、接触式測定装置20で測定される原料レベルを、必要に応じて接触式原料レベルの測定値、または単に接触式原料レベルと称する。
【0025】
図2では、接触式測定装置20が、重錘20aと、ワイヤー20bと、回転ドラム20cと、モータ20dと、ロータリーエンコーダ20eと、電子ユニット部20fと、を備える場合を例示する。ワイヤー20bの一端には重錘20aが取り付けられている。ワイヤー20bの他端は回転ドラム20cに取り付けられる。回転ドラム20cは、モータ20dの回転に伴い回転する。回転ドラム20cの回転により、重錘20aの巻き上げおよび巻き下げが行われる。なお、モータ20dは、例えば、減速機付きモータであっても良い。ロータリーエンコーダ20eは、モータ20dの回転に伴う変位に応じたパルス信号を発生する。電子ユニット部20fは、例えば、ロータリーエンコーダ20eから出力されるパルス信号と、ワイヤー20bの直径と、回転ドラム20cの直径と、に基づいて回転ドラム20cに巻かれていないワイヤー20bの長さを算出し、算出した長さに基づいて重錘20aの底面の高さ位置を、接触式原料レベルとして算出する。また、電子ユニット部20fは、例えば、ワイヤー20bの張力(モータ20dのトルク)の変化に基づいて、重錘20aが原料面に接触(着床)したか否かを判定する。重錘20aが原料面に接触している状態での重錘20aの底面の高さ位置が高炉内装入物3の表面の高さ位置になる。以下の説明では説明の都合上、重錘20aが原料面に接触しているか否かに関わらず、以上のようにして算出される重錘20aの底面の高さ位置を接触式原料レベル(または接触式原料レベルの測定値)と称する。すなわち、接触式原料レベル(または接触式原料レベルの測定値)と表記している場合であっても、当該接触式原料レベルが、重錘20aが原料面に接触している状態での重錘20aの底面の高さ位置を測定したものではない場合もある。
【0026】
接触式測定装置は、当該接触式測定装置から容器内の装入物(本実施形態では、高炉1内の高炉内装入物3)の表面までの距離を、当該装入物に接触子を接触させて測定する装置であれば良く、公知の技術で実現することが出来る。接触式測定装置は、例えば、特開2017-20078号公報に記載の装置であっても良い。
【0027】
また、本実施形態では、接触式測定装置20が、後述する処理装置100に測定値を不図示の通信ケーブル等の有線で送信する場合を例示する。ただし、接触式測定装置20が測定値を出力する手段は有線通信に限定されない。例えば、接触式測定装置20は、送受信機を備えて無線を介して測定値を出力しても良い。
【0028】
また、図2では、高炉1に設置される接触式測定装置20が一つである場合を例示する。しかしながら、高炉1に設置される接触式測定装置20の数は2以上であっても良い。例えば、高炉1(炉体2)の中心軸線C1周りに、複数の接触式測定装置20が設置されていても良い。
なお、以下の説明では、接触式測定装置による接触式原料レベルの測定を、必要に応じて機械式サウンジングと称する。
【0029】
また、後述するように本実施形態では、重錘20aの底面の高さ位置に基づいて、ダンプ中であるか否かを判定する場合を例示する。しかしながら、ダンプ中であるか否かを判定する手法は、このような手法に限定されない。例えば、旋回シュート4に原料を供給する(落下させる)不図示のホッパーの弁が開いたことを示す信号に基づいてダンプ中であるか否かを判定しても良い。また、不図示の外部装置(制御装置)が当該ホッパーを動作させるアクチュエータにダンプ(弁の開動作)を指示する信号を出力したことに基づいてダンプ中であるか否かを判定しても良い。このようにしてダンプ中であるか否かを判定する場合、接触式測定装置20は高炉1に設置されていなくても良い。以下の説明では、これらの信号(不図示のホッパーの弁が開いたことを示す信号や、当該ホッパーを動作させるアクチュエータにダンプ(弁の開動作)を指示する信号)を、必要に応じてダンプ中信号と称する。
【0030】
また、図2において本実施形態では炉体2の炉頂側の領域に、ノズル30a~30bが設置される場合を例示する。なお、以下の説明では、ノズル30a~30bを区別しない場合、これらをノズル30と総称する。ノズル30は、高炉1内(例えば炉頂ガス)の温度を低下させることなどを目的として、炉頂温度の上昇を基に高炉1内に散水を行う。このように炉頂温度を制御量としてノズル30(から噴射される水の流量)が操作され、開度に応じた流量の水が高炉1内に供給される。ノズル30自体は既存の高炉1に設置されているもので良い。炉頂温度は、高炉1(炉体2)内の炉頂付近の温度であり、例えば、不図示の炉頂温度計によって測定される。
【0031】
図2では、高炉1に設置されるノズル30が二つである場合を例示する。しかしながら、高炉1に設置されるノズル30の数は1であっても3以上であっても良い。例えば、高炉1(炉体2)の中心軸線C1周りに、三つ以上のノズル30が設置されていても良い。また、複数のノズル30のうちの少なくとも二つのノズル30による水の噴射の狙い位置は同じであっても異なっていても良い。
【0032】
また、図2において本実施形態では、高炉1に設置されている全てのノズル30から噴射されている水の流量の合計値が流量計31で測定される場合を例示する。ただし、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、一つのノズル30ごとにノズル30から噴射されている水の流量を流量計で測定しても良い。以下の説明では、流量計31で測定された流量(高炉1に設置されている全てのノズル30から噴射されている水の流量の合計値)を、必要に応じて散水流量の測定値、または単に散水流量と称する。なお、高炉1に設置されている全てのノズル30から噴射されている水の流量の合計値を散水流量としなくても良い。例えば、非接触式測定装置10の測定環境に影響を与えない領域に散水を行うノズル30がある場合、当該ノズル30から噴射される水の流量を散水流量に含めなくても良い。
【0033】
また、本実施形態では、散水流量の測定値が不図示の操業管理装置から処理装置100に不図示の通信ケーブル等の有線で送信される場合を例示する。ただし、処理装置100に散水流量の測定値を入力する手段は有線通信に限定されない。例えば、不図示の操業管理装置は、散水流量の測定値を、送受信機を備えて無線を介して出力しても良い。
【0034】
<知見および着想>
次に、本発明者らが得た知見と当該知見から得た本実施形態の着想とを説明する。
機械式サウンジングでは、ダンプが完了した後にワイヤー20bに吊られた重錘20aを原料面に着床させ、ワイヤー20bの張力の変化に基づいて原料レベルを測定する。このような機械式サウンジングでは、重錘20aが原料面に着床した状態で上から原料を撒かれると重錘20aが原料に引き込まれることなどによりワイヤー20bが切れる虞がある。このため、ダンプを開始する前に重錘20aを巻き上げ、ダンプが完了した後に重錘20aの巻き下げを行うが、この間は、原料の高炉1内への装入処理を停止することになるため、操業上のタイムロスとなる。したがって、重錘20aの巻き上げおよび巻き下げを行う必要がなく、原料レベルを常時測定することが可能なμ波サウンジングを行えば、前述の操業上のタイムロスを低減することができる。
【0035】
しかしながら、本発明者らは、ノズル30による散水や、高炉1内の粉塵などにより非接触式測定装置10の測定環境が悪化した場合に、マイクロ波の強度が減衰することなどにより測定不良を起こすことがあるという知見を得た。非接触式原料レベルの測定不良により本来の原料レベルと異なる測定結果が非接触式測定装置10から出力された場合、高炉1の操業(例えばダンプを開始するタイミング)に支障をきたす虞がある。このため、例えば、オペレータは運転室にて操作画面上に表示される原料レベルの測定結果を目視で監視して、高炉1の操業のための操作を行う。例えば、異常な測定結果が頻発する場合、オペレータは、ダンプを開始するタイミングを算出する際に、異常な測定結果が用いられないようにするための操作を行う。例えば、複数の非接触式測定装置10が高炉1に設置されており、かつ、複数の非接触式測定装置10で測定された非接触原料レベルの算術平均値に基づいてダンプを開始するタイミングを決定する場合、オペレータは、操作画面を操作して、異常な測定結果を当該算術平均値の算出対象から外すための操作を行う。なお、以下の説明では、非接触式測定装置10の測定環境を、必要に応じて単に測定環境と称する。
【0036】
以上のように非接触式測定装置10が測定不良となった後、例えば、ノズル30による散水が停止したり、振動や衝撃で断熱板10eに付着した粉塵が剥がれ落ちたりすることなどにより、非接触式測定装置10の測定結果が安定する(正常値に戻る)ことがある。この場合、オペレータは、操作画面を操作して、当該非接触式測定装置10が測定不良になる前の状態に戻す操作を行う必要がある。しかしながら、オペレータが常に非接触式測定装置10の測定結果のみを監視し続けることは現実的ではなく、非接触式測定装置10において非接触式原料レベルを正常に測定することが出来るようになったことに気づくのが遅れる可能性がある。さらに、非接触式測定装置10の測定結果の良否の判断はオペレータの感覚に依存する。
【0037】
以上のように高炉1(炉体2)内の状況に応じて様々に変化する測定環境の良否を自動判定する技術が望まれる。測定環境の良否を自動判定することにより、例えば、測定環境の良否をオペレータへ自動通知し、オペレータの判断を支援することが出来る。なお、測定環境の良否は、測定環境が良いことと、悪いことと、のうちのいずれかを指すものとする。測定環境が良いとは、非接触式測定装置10の測定不良が起こる可能性が相対的に低いことを指し、測定環境が悪いとは、非接触式測定装置10の測定不良が起こる可能性が相対的に高いことを指す。測定環境が良いことと悪いこととの境界は、例えば、後述する判定部120が測定環境の良否を判定する際に用いる閾値で定められる。
【0038】
前述したように本発明者らは、μ波サウンジングの測定を阻害する主要な要因として、ノズル30による散水と、粉塵(高炉1内で浮遊している粉塵および断熱板10eに付着している粉塵の双方)と、があるという知見を得た。
【0039】
そこで、本発明者らは、ノズル30から高炉1内に供給される水の流量に基づいて測定環境の良否を判定することを着想した。図2を参照しながら前述したようにこのような水の流量は流量計31により測定されるものであるので、専用の測定装置を設置しなくても測定することが出来る。なお、流量に代えて流量に換算可能な物理量(例えば、流速および圧力)を用いても良い。
【0040】
また、高炉1内の粉塵量(濃度)に基づいて測定環境の良否を判定しても良い。しかしながら、高炉1内の粉塵量の測定は容易ではない。また、断熱板10eへの粉塵の付着量は、高炉1の休風中に非接触式測定装置10を取り外さなければ確認することが出来ず、このような粉塵量を直接測定することは容易ではない。そこで、本発明者らは、非接触式原料レベルの測定値に基づいて、マイクロ波の減衰による測定不良が生じているか否かを判定することにより測定環境の良否を判定することを着想した。
【0041】
以下に、非接触式測定装置10における非接触式原料レベルの測定が、測定環境の悪化により、正常時(測定環境が良いとき)に対してどのように変化するのかについて本発明者らが得た知見を説明する。
【0042】
図3は、正常時(測定環境が良いとき)の原料レベルの測定結果の一例を示す図である。ここでは、高炉1内への原料の装入および停止が繰り返される場合を例示する。また、非接触式測定装置10および接触式測定装置20は隣接して設置され、原料面の凡そ同一の位置の原料レベルを測定する場合を例示する。図3において、非接触式原料レベル301は、非接触式測定装置10(μ波サウンジング)による測定結果を示し、接触式原料レベル302は、接触式測定装置20(機械式サウンジング)による測定結果を示す。
【0043】
高炉1内への原料の装入および停止が繰り返されるので、原料レベル(非接触式原料レベル301および接触式原料レベル302)は、上昇と下降とを繰り返す。また、非接触式原料レベル301から分かるように、高炉1内への原料の装入が停止している間は、ほぼ一定の速度で原料が降下する。なお、ダンプ中は重錘20aを巻き上げるため、接触式原料レベル302は一時的に高くなる。一方、μ波サウンジングは常時行うことが出来るので、非接触式原料レベル301は図3に示す全期間において実際の原料レベルに対応する値になる。
【0044】
図4図5は、異常時(測定環境が悪いとき)の原料レベルの測定結果の第1の例、第2の例を示す図である。
図4および図5において、非接触式原料レベル401、501は、非接触式測定装置10(μ波サウンジング)による測定結果を示し、接触式原料レベル402、502は、接触式測定装置20(機械式サウンジング)による測定結果を示す。
【0045】
図4および図5において、接触式原料レベル402、502は、図3に示す接触式原料レベル302と同様に原料の降下に対応する。これに対し、非接触式原料レベル401、501には、図3に示す非接触式原料レベル301と大きく異なる挙動を示す期間がある。
【0046】
本発明者らは、図4に示す時刻t3、t4付近のように、非接触式原料レベル401が急激に上昇することがあるという知見を得た。このような非接触式原料レベル401の時間変化は、非接触式測定装置10に比較的近い位置でノイズが一時的に発生し、当該ノイズの強度が実際の原料面からの反射波の強度よりも大きい場合に生じると考えられる。当該ノイズとして、例えば、マイクロ波(送信波)がノズル30から供給された水で反射されることにより生成される反射波が挙げられる。以下の説明では、図4に示す時刻t3、t4付近のように原料レベルが急激に上昇することを、必要に応じて指示飛びと称する。
【0047】
また、本発明者らは、図4に示す時刻t1~t2の期間のように、非接触式原料レベル401の時間変化がない期間があるという知見を得た。このような非接触式原料レベル401の時間変化(時間変化がないこと)は、断熱板10eへの大量の粉塵の付着やノズル30による散水などによって、固定位置に強いノイズが発生している場合に生じると考えられる。また、非接触式測定装置10として、反射波の強度が所定の閾値を下回っている場合に、原料レベルの測定結果を更新せずに保持する機能を有する装置がある。このような非接触式測定装置10においては、実際の原料面からの反射波の強度と、ノイズによる反射波の強度と、の双方が、当該所定の閾値以下である場合、非接触式原料レベル401は時間変化しない。このような場合にも、非接触式原料レベル401が変動しない期間が生じ得る。以下の説明では、図4に示す時刻t1~t2の期間のように一定期間原料レベルの測定値の時間変化がないことを、必要に応じて指示保持と称する。
【0048】
また、本発明者らは、図5に示す時刻t5~t6の期間のように、実際の原料レベル(接触式原料レベル502)は降下しているのにも関わらず非接触式原料レベル501が上昇することがあるという知見を得た。このような非接触式原料レベル501の時間変化は、ノズル30による散水や原料面の傾斜具合などによって原料面からの反射波の強度が小さくなったときに、原料面の周囲のノイズを非接触式測定装置10が測定することにより生じると考えられる。以下の説明では、図5に示す時刻t5~t6の期間のように実際の原料レベルは降下しているのにも関わらず非接触式原料レベル501が上昇することを、必要に応じて荷下がり中の指示上昇と称する。
【0049】
以上のように本発明者らは、測定環境が良い場合とそうでない場合とで非接触式原料レベルの測定値の時間変化が異なるという知見を得、かかる知見から、非接触式原料レベルの測定値を操業情報の一つとして用い、非接触式原料レベルの測定値の時間変化に基づいて、マイクロ波の減衰などによる測定不良が生じているか否かを判定することにより測定環境の良否を判定することを着想した。
【0050】
ここで、荷下がり中の指示上昇は、ダンプ中でないときに生じる。したがって、非接触式原料レベルの測定値の時間変化だけでは、荷下がり中の指示上昇の有無を正確に判定することは出来ない。そこで、本発明者らは、非接触式原料レベルの測定値に加え、ダンプ中であるか否かを特定可能な情報を操業情報の一つとして用いることにより、荷下がり中の指示上昇の有無を判定することを着想した。このように、ダンプ中であるか否かを特定可能な情報を用いれば、例えば、当該情報により、非接触式測定装置の測定値の時間変化がダンプ中でないときの時間変化であるか否かを特定することが出来るので、荷下がり中の指示上昇の有無を判定することが出来る。
【0051】
前述したように接触式測定装置20は、ダンプ中には装入物までの距離を測定しない。そこで、本実施形態では、重錘20aの底面の高さ位置(接触式原料レベル)に基づいて、ダンプ中であるか否かを判定する場合を例示する。したがって本実施形態では、重錘20aの底面の高さ位置が、ダンプ中であるか否かを特定可能な情報の一例である場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はなく、例えば、重錘20aの底面の高さ位置に代えて、<高炉設備の概要>の項で前述したダンプ中信号を、ダンプ中であるか否かを特定可能な情報の一例として用いても良い。例えば、重錘20aの底面の高さ位置が測定されていることにより、実行中の操業工程がダンプでないことが特定される。また、ダンプ中信号が出力されていることにより、実行中の操業工程がダンプであることが特定される。このように、重錘20aの底面の高さ位置やダンプ中信号を用いることにより、不図示のホッパーへの原料の装入、ダンプ、熱風などの吹き込み、および出銑などの複数の操業工程から構成される高炉1の操業において、特定の操業工程が実行されているか否かを判定することが出来る。なお、一般に、各操業工程で取られる操業アクション(または複数の操業アクションの組み合わせ)は相互に異なる。
【0052】
本実施形態の処理装置100および処理方法は、以上の知見および着想に基づいてなされたものである。なお、以上の知見および着想は、非接触式測定装置10においてマイクロ波以外の(空気中を伝播することが可能な)波を用いた場合においても得られるものである。
【0053】
<処理装置100の各部の機能>
図1において、本実施形態では処理装置100が、データ取得部110と、判定部120と、第1出力部130と、第2出力部140と、を備える場合を例示する。以下に、処理装置100が有する各部の機能の一例を説明する。
【0054】
<<データ取得部110>>
データ取得部110は、処理装置100が処理を行う際に必要な各種の情報を取得する。
本実施形態では、データ取得部110が、非接触式原料レベルの測定値と、接触式原料レベルの測定値と、散水流量の測定値と、を取得する場合を例示する。なお、これらの測定値が連続値として得られる場合、本実施形態では、データ取得部110が所定の制御周期(例えば1秒周期)でこれらの測定値を取得(更新)する場合を例示する。制御周期は、処理装置100が測定環境の良否を判定する周期である。また、本実施形態では、接触式原料レベルの測定値が、実行中の操業工程または実行中でない操業工程を特定可能な操業フェーズ情報である場合を例示する。また、本実施形態では、散水流量の測定値が、容器(本実施形態では高炉1(炉体2))に対する操作の内容を特定可能な操業アクション情報である場合を例示する。しかしながら、接触式原料レベルの代わりに、例えば、<高炉設備の概要>の項で前述したダンプ中信号を用いても良い。この場合、データ取得部110は、ダンプ中信号を取得しても良い。
【0055】
また、本実施形態では、データ取得部110が、処理装置100が処理を行う際に用いる各種の定数情報(閾値など)を取得する場合を例示する。
また、本実施形態では、データ取得部110が、異常装置情報を取得する場合を例示する。後述するように本実施形態では、処理装置100が測定環境の良否の判定結果に基づく情報を出力し、オペレータが当該情報に基づいて測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定する場合を例示する。異常装置情報は、このようにしてオペレータによって特定される測定環境が悪い非接触式測定装置10を示す情報である。
【0056】
また、本実施形態では、データ取得部110が、各種の定数情報および異常装置情報を、オペレータによる処理装置100に対する入力操作に基づいて取得する場合を例示する。しかしながら、これらの情報は、外部装置からの無線通信または有線通信により処理装置100に入力されても、その他の方法(例えば記憶媒体からの読み出し)により処理装置100に入力されても良い。
【0057】
<<判定部120>>
判定部120は、非接触式原料レベルの測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、測定環境の良否を判定する。以下の説明では、複数種類の操業情報は、非接触式原料レベルの測定値を含んでいれば良い。ただし、<知見および着想>の項で説明したように、操業情報は、散水流量の測定値で例示される操業アクション情報と、接触式原料レベルの測定値で例示される操業フェーズ情報と、のうちの少なくとも一方を含むのが好ましい。そこで、本実施形態では、操業情報に、非接触原料レベルの測定値と、接触式原料レベルの測定値と、散水流量の測定値と、が含まれる場合を例示する。また、操業情報には、容器の状態を特定可能な情報と、(測定装置から装入物の表面までの距離以外の)装入物の状態を特定可能な情報と、のうち、少なくとも一方を含まないのが好ましい。装入物の高さ位置を得るための測定装置において、これらの情報は、測定環境の良否に大きな影響を与えないからである。
【0058】
また、本実施形態では、判定部120が、第1判定部121と、第2判定部122と、第3判定部123と、第1最終判定部124と、第2最終判定部125と、を有する場合を例示する。
【0059】
第1判定部121、第2判定部122、および第3判定部123は、少なくとも非接触式原料レベルの測定値に基づいて、測定環境の良否を判定する。第1最終判定部124は、第1判定部121~第3判定部123の判定結果に基づいて、測定環境の良否を判定し、判定部120の判定結果(の一つ)とする。ここで、第1判定部121、第2判定部122、および第3判定部123が測定環境の良否を判定する際に用いる判定条件は相互に異なる。なお、本実施形態では、第1判定部121、第2判定部122、および第3判定部123の判定結果は、判定部120の(最終的な)判定結果ではない。
【0060】
このように本実施形態では、第1最終判定部124が三つの判定部(第1判定部121~第3判定部123)の判定結果に基づいて、測定環境の良否を判定する場合を例示する。しかしながら、第1最終判定部124に判定結果を出力する判定部の数は複数であれば三つに限定されない。例えば、第1判定部121、第2判定部122、および第3判定部123のうちのいずれか一つはなくても良い。また、判定部120は、第1最終判定部124に判定結果を出力する判定部として、第1判定部121~第3判定部123以外の判定部を有していても良い。また、例えば、第1判定部121、第2判定部122、および第3判定部123のうちの一つのみを判定部120が有していても良い。この場合、判定部120は第1最終判定部124を有していなくても良い。
第2最終判定部125は、少なくとも操業情報に基づいて、測定環境の良否を判定し、判定部120の判定結果(の一つ)とする。
【0061】
以上のように本実施形態では、測定環境の良否の判定結果として、第1最終判定部124における判定結果と、第2最終判定部125における判定結果と、が判定部120の判定結果として第1出力部130に出力される場合を例示する。ただし、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、第1最終判定部124における判定結果と、第2最終判定部125における判定結果と、のうちの一方の判定結果のみが判定部120の判定結果として第1出力部130に出力されても良い。この場合、判定部120は、他方の判定結果を得るための判定部(すなわち、第1判定部121~第3判定部123および第1最終判定部124と、第2最終判定部125と、のうちの一方)を有していなくても良い。
【0062】
以下に、第1判定部121、第2判定部122、第3判定部123、第1最終判定部124、および第2最終判定部125が有する機能の具体例を説明する。複数の非接触式測定装置10が高炉1に設置されている場合、第1判定部121、第2判定部122、第3判定部123、第1最終判定部124、および第2最終判定部125における測定環境の良否の判定は、一つの非接触式測定装置10ごとに行われるのが好ましい。なお、本実施形態においては、第2最終判定部125における判定結果は、非接触式測定装置10ごとに変わるものではなく、複数の非接触式測定装置10において同じである場合を例示する。
【0063】
<<<第1判定部121>>>
第1判定部121は、非接触式原料レベルの測定値に基づいて、図4を参照しながら説明した指示飛びの有無を判定する。図6のフローチャートを参照しながら第1判定部121が有する機能の一例を説明する。図6のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
【0064】
まず、ステップS601において、第1判定部121は、現在の制御周期の時刻tにおける非接触式原料レベルの測定値Atから、1つ前の制御周期の時刻t-1における非接触式原料レベルの測定値At-1を減算した値が0(零)を上回り、かつ、それらの差の絶対値が閾値J以上(At-At-1>0かつ|At-At-1|≧J)であるか否かを判定する。制御周期の時刻は、制御周期内の基準となるタイミングの時刻であり、例えば、制御周期の開始時刻である。以下の説明では、制御周期の時刻を、必要に応じて単に制御周期と称する。
【0065】
<高炉設備の概要>の項で前述したように、本実施形態では原料レベルが、炉頂側(上側)であるほど大きい正の値を有する場合を例示する。したがって、ステップS601では、現在の制御周期tにおける非接触式原料レベルの測定値Atが、1つ前の制御周期t-1における非接触式原料レベルの測定値At-1よりも炉頂側(上側)にあり、かつ、それらの差が閾値J以上であるか否かが判定される。図4を参照しながら説明したように、指示飛びは急激に原料レベルが上昇することを指す。閾値Jが小さすぎると、測定誤差などによっても指示飛びであると判定され易くなる。一方、閾値Jが大きすぎると、指示飛びが発生しているのに指示飛びでないと判定され易くなる。閾値Jは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値Jは操業実績などに基づいて更新されても良い。
【0066】
ステップS601の判定の結果、At-At-1>0かつ|At-At-1|≧Jでない場合(ステップS601でNOの場合)、後述するステップS604の処理が行われる。一方、ステップS601の判定の結果、At-At-1>0かつ|At-At-1|≧Jである場合(ステップS601でYESの場合)、ステップS602の処理が行われる。
【0067】
ステップS602において、第1判定部121は、多重判定回避内部タイマーTJの値が0(零)(TJ=0)であるか否かを判定する。図4を参照しながら説明したように、指示飛びは急激に原料レベルが上昇することを指す。多重判定回避内部タイマーTJは、一回の指示飛びを複数回の指示飛びであると判定することを抑制するためにカウントされる。本実施形態では、At-At-1>0かつ|At-At-1|≧Jであると判定された場合(ステップS601でYESと判定された場合)であって、多重判定回避内部タイマーTJの値が0(零)である場合に、指示飛びが発生(開始)したと判定する場合を例示する。そして、本実施形態では、このようにして指示飛びが発生したと判定した後、多重判定回避内部タイマーTJの値が1から閾値TJA-1までの間は、ステップS601でAt-At-1>0かつ|At-At-1|≧Jであると判定されても、ステップS602でNOと判定されることにより後述するステップS603の処理が行われない(指示飛びが(再度)発生したと判定しない)場合を例示する。
【0068】
閾値TJAが小さすぎると、一回の指示飛びが継続しているのに当該指示飛びが複数回の指示飛びであると判定され易くなる。一方、閾値TJAが大きすぎると、一回の指示飛びが終了しているのに当該指示飛びが継続していると判定され易くなる。閾値TJAは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値TJAは操業実績などに基づいて更新されても良い。また、多重判定回避内部タイマーTJは、ソフトウェアタイマーであっても、ハードウェアのタイマーであっても良い。
【0069】
ステップS602の判定の結果、TJ=0でない場合(ステップS602でNOの場合)、現在の制御周期tでは指示飛びの回数をカウントしない。この場合、ステップS603の処理はスキップされ、後述するステップS604の処理が行われる。一方、TJ=0である場合(ステップS602でYESの場合)、現在の制御周期tで指示飛びが発生(開始)したと判定し、指示飛びの発生回数をカウントする。この場合、ステップS603において、第1判定部121は、指示飛び判定フラグFJの値を0(零)から1に変更する。本実施形態では、指示飛び判定フラグFJの値を0(零)から1に変更した回数が指示飛びの発生回数である場合を例示する。また、本実施形態では、フラグレジスタにおいて指示飛び判定フラグFJの記憶領域の値を設定することにより、指示飛び判定フラグFJの値が設定される場合を例示する。ステップS603の処理が終了すると、ステップS604の処理が行われる。
【0070】
ステップS604において、第1判定部121は、指示飛び判定フラグFJの値が1(FJ=1)であるか否かを判定する。この判定の結果、FJ=1でない場合(ステップS604でNOの場合)、指示飛びが発生および継続していないため、図6のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第1判定部121の処理)を終了する。
【0071】
一方、ステップS604の判定の結果、FJ=1である場合(ステップS604でYESの場合)、ステップS605の処理が行われる。ステップS605において、第1判定部121は、多重判定回避内部タイマーTJの値に1(秒)を加算して多重判定回避内部タイマーTJの値を更新する。
【0072】
次に、ステップS606において、第1判定部121は、多重判定回避内部タイマーTJの値が閾値TJA以上(TJ≧TJA)であるか否かを判定する。本実施形態では、多重判定回避内部タイマーTJの値が1から閾値TJA-1まで(1≦TJ<TJA-1)の間は、指示飛びが(再度)発生したか否かを判定しない場合を例示する。この場合(すなわち、ステップS606でNOの場合)、指示飛び判定フラグFJの値を1から変更せずに(指示飛びの状態が継続しているとして)、図6のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第1判定部121の処理)を終了する。
【0073】
一方、TJ≧TJAである場合(ステップS606でYESの場合)、ステップS607の処理が行われる。ステップS607において、第1判定部121は、現在の制御周期tにおいて一回の指示飛びが終了したと判定し、指示飛び判定フラグFJの値および多重判定回避内部タイマーTJの値をそれぞれ0(零)にリセットし(FJ=0およびTJ=0にし)、次の指示飛びの発生の有無を判定することが出来るようにする。ステップS607の処理が終了すると、図6のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第1判定部121の処理)は終了する。
【0074】
<<<第2判定部122>>>
第2判定部122は、非接触式原料レベルの測定値に基づいて、図4を参照しながら説明した指示保持の有無を判定する。図7のフローチャートを参照しながら第2判定部122が有する機能の一例を説明する。図7のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
【0075】
まず、ステップS701において、第2判定部122は、現在の制御周期tにおける非接触式原料レベルの測定値Atと、1つ前の制御周期t-1における非接触式原料レベルの測定値At-1との差が0(零)(At-At-1=0)であるか否かを判定する。図4を参照しながら説明したように、指示保持は、原料レベルの時間変化が一定期間ないことを指す。そこで、前述したように本実施形態では、ステップS701においてAt-At-1=0であるか否かを判定する場合を例示する。しかしながら、例えば、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて、0(零)を上回る閾値として、指示保持と見なせる原料レベルの変動量を予め定めても良い。この場合、第2判定部122は、例えば、現在の制御周期tにおける非接触式原料レベルの測定値Atと、1つ前の制御周期t-1における非接触式原料レベルの測定値At-1との差の絶対値が0(零)を上回る閾値以下であるか否かを判定しても良い。このように、非接触式原料レベル401の時間変化がないことを、非接触式原料レベル401の時間変化が完全にない(時間変化が0(零))である場合に限定しても良いが、非接触式測定装置10の測定誤差(公差)などに基づいて定められる所定範囲内の時間変化があっても非接触式原料レベル401の時間変化がないとして扱っても良い。
【0076】
ステップS701の判定の結果、At-At-1=0でない場合(ステップS701でNOの場合)、現在の制御周期tにおいて指示保持は発生していないと判定し、ステップS702の処理が行われる。ステップS702において、第2判定部122は、重複カウント回避フラグFhの値および指示保持判定タイマーThの値をそれぞれ0(零)にリセットする(Fh=0およびTh=0にする)。
【0077】
本実施形態では、重複カウント回避フラグFhの値を0(零)から1に変更した回数が指示保持の発生回数である場合を例示する。また、本実施形態では、フラグレジスタにおいて重複カウント回避フラグFhの記憶領域の値を設定することにより、重複カウント回避フラグFhの値が設定される場合を例示する。
【0078】
また、図4を参照しながら説明したように、指示保持は、一定期間原料レベルの測定値の時間変化がないことを指す。指示保持判定タイマーThは、当該一定期間をカウントするためのタイマーである。なお、指示保持判定タイマーThは、ソフトウェアタイマーであっても、ハードウェアのタイマーであっても良い。
【0079】
以上のようにステップS702においてFh=0およびTh=0にすることは、指示保持が発生および継続していないために、次の指示保持の発生の有無を判定することが出来るようにすることに対応する。このようにして次の指示保持の発生の有無を判定することが出来るようにして、図7のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2判定部122の処理)を終了する。
【0080】
一方、ステップS701の判定の結果、At-At-1=0である場合(ステップS701でYESの場合)、ステップS703の処理が行われる。ステップS703において、第2判定部122は、重複カウント回避フラグFhの値が0(零)(Fh=0)であるか否かを判定する。
【0081】
ステップS703の判定の結果、Fh=0でない場合(ステップS703でNOの場合)、指示保持が継続しているため、重複カウント回避フラグFhの値を1から変更せずに、図7のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2判定部122の処理)を終了する。一方、Fh=0である場合(ステップS703でYESの場合)、現在の制御周期tにおいて原料レベルの測定値が時間変化していない状態であるため(すなわち、ステップS701でYESと判定されているため)、ステップS704において、第2判定部122は、指示保持判定タイマーThの値に1秒を加算して指示保持判定タイマーThの値を更新し、原料レベルの測定値が時間変化していない期間を(1秒)カウントする。
【0082】
次に、ステップS705において、第2判定部122は、指示保持判定タイマーThの値が閾値H以上(Th≧H)であるか否かを判定する。閾値Hが小さすぎると、操業上影響を及ぼさない程度で測定値の時間変動が無かった場合でも指示保持として検出される。一方、閾値Hが大きすぎると、指示保持が発生しているのに指示保持でないと判定され易くなる。閾値Hは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値Hは操業実績などに基づいて更新されても良い。
【0083】
ステップS705の判定の結果、Th≧Hでない場合(ステップS705でNOの場合)、原料レベルの測定値が時間変化していない状態が指示保持であるとの判定に至るほど継続していないため(すなわち、ステップS701でYESと判定されているため)、重複カウント回避フラグFhの値を0(零)から変更せずに、図7のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2判定部122の処理)を終了する。一方、ステップS705の判定の結果、Th≧Hである場合(ステップS705でYESの場合)、ステップS706の処理が行われる。
【0084】
ステップS706において、第2判定部122は、指示保持に至った(原料レベルの測定値が時間変化していない状態が一定期間継続した)と判定し、重複カウント回避フラグFhの値を0(零)から1に変更する。本実施形態では、重複カウント回避フラグFhの値を0(零)から1に変更した回数が指示保持の発生回数である場合を例示する。以上のようにして重複カウント回避フラグFhの値を0(零)から1に変更して、図7のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2判定部122の処理)を終了する。この場合、その後のステップS701の処理でNO(At-At-1=0でない)と判定されるまで、指示保持の状態が継続していると扱われる。
【0085】
なお、通常の操業中において、原料レベルは時間と共に常に変動する。したがって、通常の操業では指示保持の検知の際に操業情報の参照は不要であるが、特定の場合には操業情報の参照が必要になる。例えば、休風中は出銑や原料の装入は行われないため、原料レベルの時間変化はほとんど生じなくなることが正常である。したがって、第2判定部122は、休風中であることを示す操業情報に基づいて休風中であると判定した場合、指示保持か否かを判定しないのが好ましい。また、第2判定部122は、休風中であることを示す操業情報に基づいて休風中であると判定した場合、重複カウント回避フラグFhの値(0(零)および1)を以下のようにしても良い。すなわち、第2判定部122は、休風中であることを示す操業情報に基づいて休風中であると判定した場合であって、指示保持に至った(原料レベルの測定値が時間変化していない状態が一定期間継続した)と判定した場合には、重複カウント回避フラグFhを(1ではなく)0(零)にする。これにより、休風中に指示保持に至った場合には、後述する第1最終判定部124によって、測定環境が良いと判定され得るようにすることが出来る。
【0086】
<<<第3判定部123>>>
第3判定部123は、非接触式原料レベルの測定値と、接触式原料レベルの測定値と、に基づいて、図5を参照しながら説明した荷下がり中の指示上昇の有無を判定する。図8のフローチャートを参照しながら第3判定部123が有する機能の一例を説明する。図8のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
【0087】
まず、ステップS801において、第3判定部123は、接触式原料レベルの測定値に基づいて、現在の制御周期tにおいてダンプ中でないか否かを判定する。本実施形態では、接触式原料レベルが重錘20aの底面の高さ位置で表される場合を例示する。図3の接触式原料レベル302に示すように、重錘20aはダンプを開始する前に巻き上げられているため、例えば、接触式原料レベルが炉頂側の待機位置に対応する位置であれば、ダンプ中であると判定することが出来る。そこで本実施形態では、第3判定部123は、現在の制御周期tにおける接触式原料レベルが閾値よりも炉頂側(上側)の位置にある場合に、現在の制御周期tにおいてダンプ中であると判定し、そうでない場合に、現在の制御周期tにおいてダンプ中でないと判定する場合を例示する。なお、第3判定部123は、接触式原料レベルの測定値に代えてダンプ中信号に基づいて、現在の制御周期tにおいてダンプ中であるか否かを判定しても良い。
【0088】
ステップS801の判定の結果、現在の制御周期tにおいてダンプ中である場合(ステップS801でNOの場合)、荷下がり中の指示上昇はダンプ中でないときに発生するものであるため現在の制御周期tにおいて荷下がり中の指示上昇は発生および継続していないと判定し、ステップS802の処理が行われる。ステップS802において、第3判定部123は、荷下がり開始内部タイマーTutの値および指示上昇フラグFuの値をそれぞれ0(零)にリセットする(Tut=0およびFu=0にする)。
【0089】
本実施形態では、指示上昇フラグFuの値を0(零)から1に変更した回数が荷下がり中の指示上昇の発生回数である場合を例示する。また、本実施形態では、フラグレジスタにおいて指示上昇フラグFuの記憶領域の値を設定することにより、指示上昇フラグFuの値が設定される場合を例示する。
【0090】
ステップS801においてダンプ中でないと判定された場合(ステップS801でYESの場合)でも、ダンプが終了した直後は、例えば、旋回シュート4に原料が残っていたり、炉壁付近の原料が炉芯側に崩れ落ちたりすることにより原料面が降下しない場合がある。そこで、本実施形態では、ステップS801においてダンプ中でないと判定されてから一定期間が経過してから、荷下がり中の指示上昇の有無(指示上昇フラグFuの値を0(零)から1に変更するか否か)を判定する場合を例示する。荷下がり開始内部タイマーTutは、当該一定期間をカウントするためのタイマーである。なお、荷下がり開始内部タイマーTutは、ソフトウェアタイマーであっても、ハードウェアのタイマーであっても良い。
【0091】
ステップS802においてTut=0およびFu=0にすることは、荷下がり中の指示上昇が発生および継続していないために、次の荷下がり中の指示上昇の有無を判定することが出来るようにすることに対応する。このようにして次の荷下がり中の指示上昇の発生の有無を判定することが出来るようにして、図8のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第3判定部123の処理)を終了する。
【0092】
一方、ステップS801の判定の結果、現在の制御周期tにおいてダンプ中でない場合(ステップS801でYESの場合)、ステップS803の処理が行われる。ステップS803において、第3判定部123は、荷下がり開始内部タイマーTutの値に1秒を加算して荷下がり開始内部タイマーTutの値を更新する。
【0093】
次に、ステップS804において、第3判定部123は、荷下がり開始内部タイマーTutの値が閾値Tu以上(Tut≧Tu)であるか否かを判定する。
閾値Tuが大きすぎると、ダンプが終了して原料面が定常状態になった(降下している)のにも関わらず荷下がり中の指示上昇の有無の判定(指示上昇フラグFuの値を0(零)から1に変更するか否かの判定)が行われ難くなる。一方、閾値Tuが小さすぎると、ダンプが終了した後、原料面が定常状態になる前に荷下がり中の指示上昇の有無の判定(指示上昇フラグFuの値を0(零)から1に変更するか否かの判定)が行われ易くなる。閾値Tuは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値Tuは操業実績などに基づいて更新されても良い。
【0094】
ステップS804の判定の結果、Tut≧Tuでない場合(ステップS804でNOの場合)、ダンプが終了した後、原料面が定常状態になっていないことから、荷下がり中の指示上昇の有無を判定しない。このため、図8のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第3判定部123の処理)は終了する。一方、Tut≧Tuである場合(ステップS804でYESの場合)、ステップS805の処理が行われる。
【0095】
ステップS805において、第3判定部123は、指示上昇フラグFuの値が0(零)(Fu=0)であるか否かを判定する。この判定の結果、Fu=0でない場合(ステップS805でNOの場合)、荷下がり中の指示上昇が継続中であると判定し、ステップS806の処理が行われる。ステップS806において、第3判定部123は、現在の制御周期tにおける非接触式原料レベルの測定値Atが、現在の制御周期tよりも差分判定時間Tudだけ前の制御周期t-Tudにおける非接触式原料レベルの測定値At-Tud以下(At≦At-Tud)であるか否かを判定する。すなわち、非接触原料レベルの測定値が降下しているか否かを判定する。
【0096】
図5の時刻t5~t6の期間の非接触式原料レベル501に示すように、荷下がり中の指示上昇においては、非接触式原料レベルの測定値は、或る程度の時間をかけて徐々に上昇する。差分判定時間Tudは、当該時間に対応する時間である。差分判定時間Tudが長すぎると、荷下がり中の指示上昇が発生している期間において、現在の制御周期tにおける非接触式原料レベルの測定値Atと、制御周期t-Tudにおける非接触式原料レベルの測定値At-Tudと、の比較が一度も行われない虞がある。一方、差分判定時間Tudが短すぎると、一回の荷下がり中の指示上昇が継続しているのに当該荷下がり中の指示上昇が複数回の荷下がり中の指示上昇であると判定され易くなる。差分判定時間Tudは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、差分判定時間Tudは操業実績などに基づいて更新されても良い。
【0097】
ステップS806の判定の結果、At≦At-Tudでない場合(ステップS806でNOの場合)、指示上昇フラグFuの値が1の状態であり、且つ、現在の制御周期tにおける非接触式原料レベルの測定値Atの方が、制御周期t-Tudにおける非接触式原料レベルの測定値At-Tudよりも炉頂側(上側)にあるので、現在の制御周期tにおいて荷下がり中の指示上昇が継続していると判定する。したがって、指示上昇フラグFuの値を1から変更せずに図8のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第3判定部123の処理)を終了する。
【0098】
一方、ステップS806の判定の結果、At≦At-Tudである場合(ステップS806でYESの場合)、現在の制御周期tにおける非接触式原料レベルの測定値Atの方が、制御周期t-Tudにおける非接触式原料レベルの測定値At-Tudよりも炉底側(下側)にあるので、指示上昇(At>At-Tud)は生じていない。このため、ステップS807において、第3判定部123は、指示上昇フラグFuの値を0(零)にリセットし(Fu=0にし)、次の荷下がり中の指示上昇の発生の有無を判定することが出来るようにして、図8のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第3判定部123の処理)を終了する。
【0099】
前述したステップS805の判定の結果、Fu=0である場合(ステップS805でYESの場合)、現在の制御周期tにおいて荷下がり中の指示上昇が発生している可能性があり、この場合、指示上昇フラグFuの値を0(零)から1に変更する必要がある。このため、ステップS808において、第3判定部123は、現在の制御周期の時刻tにおける非接触式原料レベルの測定値Atから、現在の制御周期tよりも差分判定時間Tudだけ前の制御周期t-Tudにおける非接触式原料レベルの測定値At-Tudを減算した値が0(零)を上回り、かつ、それらの差の絶対値が閾値U以上(At-At-Tud>0かつ|At-A-Tud|≧U)であるか否かを判定する。図5を参照しながら説明したように、荷下がり中の指示上昇は、実際の原料レベルは降下しているのにも関わらず非接触式原料レベルの測定値が上昇することを指す。閾値Uが小さすぎると、上から転がり落ちてきた原料によって本当に原料レベルが上昇した際に原料面からの反射波の強度が低下することによる指示値上昇と判定されやすくなる。一方、閾値Uが大きすぎると、荷下がり中の指示上昇が発生しているのに荷下がり中の指示上昇でないと判定され易くなる。閾値Uは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値Uは操業実績などに基づいて更新されても良い。
【0100】
ステップS808の判定の結果、At-At-Tud>0かつ|At-A-Tud|≧Uでない場合(ステップS808でNOの場合)、現在の制御周期tにおいて荷下がり中の指示上昇は発生していないと判定する。したがって、指示上昇フラグFuの値を0(零)から変更せずに図8のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第3判定部123の処理)を終了する。一方、At-At-Tud>0かつ|At-A-Tud|≧Uである場合(ステップS808でYESの場合)、現在の制御周期tにおいて荷下がり中の指示上昇が発生している可能性がある。このため、ステップS809において、第3判定部123は、現在の制御周期の時刻tにおける非接触式原料レベルの測定値Atから、現在の制御周期tよりも差分判定時間Tudだけ前の制御周期t-Tudにおける非接触式原料レベルの測定値At-Tudを減算した値の絶対値が閾値J未満(|At-A-Tud|<J)であるか否かを判定する。閾値Jは、図6のフローチャートのステップS601において、指示飛びの有無を判定するために用いられる閾値である。ステップS809は、At-At-Tud>0かつ|At-A-Tud|≧Uであること(ステップS808でYESと判定されたこと)が、指示飛びに起因するか否かを判定するために行われる。
【0101】
ステップS809の判定の結果、|At-A-Tud|<Jでない場合(ステップS809でNOの場合)、At-At-Tud>0かつ|At-A-Tud|≧Uであること(ステップS808でYESと判定されたこと)が指示飛びに起因すると判定し、指示上昇フラグFuの値を0(零)から変更せずに図8のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第3判定部123の処理)を終了する。一方、ステップS809の判定の結果、|At-A-Tud|<Jである場合(ステップS809でYESの場合)、現在の制御周期tにおいて荷下がり中の指示上昇が発生したと判定し、ステップS810の処理が行われる。ステップS810において、第3判定部123は、指示上昇フラグFuの値を0(零)から1に変更して、図8のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第3判定部123の処理)を終了する。この場合、その後のステップS801の処理でNO(ダンプ中でない)、または、ステップS806でYES(At≦A-Tud)と判定されるまで、荷下がり中の指示上昇の状態が継続していると扱われる。
【0102】
<<<第1最終判定部124>>>
第1最終判定部124は、第1判定部121、第2判定部122、および第3判定部123の判定結果に基づいて、測定環境の良否を判定し、判定部120の判定結果(の一つ)とする。本実施形態では、第1最終判定部124が、異常測定判定回数に基づいて、測定環境の良否を判定する場合を例示する。本実施形態では、第1判定部121により指示飛びが発生したと判定された場合と、第2判定部122により指示保持が発生したと判定された場合と、第3判定部123により荷下がり中の指示上昇が発生したと判定された場合に、測定環境が悪化したものとする場合を例示する。したがって、本実施形態では、図6のステップS603において指示飛び判定フラグFJの値が0(零)から1に変更された回数と、図7のステップS706で重複カウント回避フラグFhの値が0(零)から1に変更された回数と、図8のステップS810において指示上昇フラグFuの値が0(零)から1に変更された回数と、の合計値が、測定環境の悪化の発生回数である場合を例示する。
【0103】
なお、第1最終判定部124による測定環境の良否の最終判定の手法は、異常測定判定回数に基づく手法に限定されない。例えば、第1最終判定部124は、現在の制御周期tにおいて、第1判定部121、第2判定部122、および第3判定部123のうちのいずれか一つで測定環境が悪いと判定された場合に、測定環境が悪化したと判定しても良い。また、例えば、ダンプ中においては、第1判定部121および第2判定部122の判定結果に基づいて、測定環境の良否を判定し、ダンプ中でないときには、第3判定部123の判定結果に基づいて、測定環境の良否を判定しても良い。
【0104】
図9のフローチャートを参照しながら第1最終判定部124が有する機能の一例を説明する。図9のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
まず、ステップS901において、第1最終判定部124は、測定環境悪判定フラグFAの値が0(零)(FA=0)であるか否かを判定する。本実施形態では、測定環境悪判定フラグFAの値が1であることが、第1最終判定部124によって、測定環境が悪いと判定されていることを示す場合を例示する。したがって、測定環境悪判定フラグFAの値が0(零)であることは、第1最終判定部124によって測定環境が良いと判定されていることを示す。また、本実施形態では、フラグレジスタにおいて測定環境悪判定フラグFAの記憶領域の値を設定することにより、測定環境悪判定フラグFAの値が設定される場合を例示する。
【0105】
ステップS901の判定の結果、FA=0である場合(ステップS901でYESの場合)、ステップS902の処理が行われる。ステップS902において、第3判定部123は、過去TA時間(h)内における、異常測定判定回数が所定回数Cであるか否かを判定する。なお、過去TA時間(h)とは、現在の制御周期tよりもTA時間前の制御周期t-TAから、現在の制御周期tまでの期間を指す。所定回数Cが小さすぎると、第1最終判定部124によって測定環境が悪いと判定され易くなる。また、時間TAが短すぎても、第1最終判定部124によって測定環境が悪いと判定され易くなる。このため、例えば、操業上の問題がなくても、第1最終判定部124によって測定環境が悪いと判定される可能性が高くなる。一方、所定回数Cが大きすぎると、第1最終判定部124によって測定環境が悪いと判定され難くなる。また、時間TAが長すぎて、第1最終判定部124によって測定環境が悪いと判定され難くなる。このため、例えば、操業上の問題が生じるほど測定環境が悪い場合でも、第1最終判定部124によって測定環境が悪いと判定されない可能性が高くなる。所定回数Cおよび時間TAは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値Hは操業実績などに基づいて更新されても良い。
【0106】
ステップS902の判定の結果、過去TA時間(h)内における、測定環境の悪化の発生回数が所定回数Cである場合(ステップS902でYESの場合)、ステップS903の処理が行われる。ステップS903において、第1最終判定部124は、測定環境悪判定フラグFAの値を0(零)から1に変更して、図9のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第1最終判定部124の処理)を終了する。一方、過去TA時間(h)内における、測定環境の悪化の発生回数が所定回数Cでない場合(ステップS902でNOの場合)、測定環境悪判定フラグFAの値を0(零)から1に変更することなく、図9のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第1最終判定部124の処理)を終了する。
【0107】
前述したステップS901において、FA=0でない場合(ステップS901でNOの場合)、ステップS904の処理が行われる。ステップS904において、第1最終判定部124は、過去TA時間(h)以内において、異常測定判定回数が0(零)回であるか否かを判定する。この判定の結果、過去TA時間(h)以内において、異常測定判定回数が0(零)回である場合(ステップS904でYESの場合)、ステップS905の処理が行われる。ステップS905において、第1最終判定部124は、測定環境悪判定フラグFAの値を1から0(零)に変更して、図9のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第1最終判定部124の処理)を終了する。一方、過去TA時間(h)以内において、異常測定判定回数が0(零)回でない場合(ステップS904でNOの場合)、測定環境悪判定フラグFAの値を1から0(零)に変更することなく、図9のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第1最終判定部124の処理)を終了する。なお、ステップS904での判定は異常発生回数を0(零)以外の任意の値としても良い。
【0108】
<<<第2最終判定部125>>>
第2最終判定部125は、非接触式原料レベルの測定値と、散水流量の測定値と、に基づいて、測定環境の良否を判定し、判定部120の判定結果(の一つ)とする。図10のフローチャートを参照しながら第2最終判定部125が有する機能の一例を説明する。図10のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
【0109】
まず、ステップS1001において、第2最終判定部125は、μ波サウンジングが行われているか否かを判定する。複数の非接触式測定装置10が高炉1に設置されている場合、第2最終判定部125は、例えば、少なくとも一つの非接触式測定装置10においてμ波サウンジングが行われているか否かを判定する。本実施形態では、非接触式原料レベルの測定値がデータ取得部110で取得されているか否かによってμ波サウンジングが行われているか否かの判定が行われる場合を例示する。しかしながら、μ波サウンジングが行われているか否かの判定は必ずしもこのようにして行われる必要はない。例えば、μ波サウンジングが行われているか否かの判定は、遮断弁10fの開閉状態を示す情報に基づいて行われても良いし、非接触式測定装置10がμ波サウンジングを行っていることを特定可能なその他の操業情報に基づいて行われても良い。
【0110】
ステップS1001の判定の結果、μ波サウンジングが行われていない場合(ステップS1001でNOの場合)、散水流量に基づいて測定環境の良否を判定しないため、図10のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2最終判定部125の処理)を終了する。なお、μ波サウンジングが行われているか否かに関わらず、ステップS1002以降の処理を行っても良い。この場合、ステップS1001の判定は不要になる。
【0111】
一方、ステップS1001の判定の結果、μ波サウンジングが行われている場合(ステップS1001でYESの場合)、ステップS1002の処理が行われる。ステップS1002において、第2最終判定部125は、測定環境悪判定フラグFWの値が0(零)(FW=0)であるか否かを判定する。本実施形態では、測定環境悪判定フラグFWの値が1であることが、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定されていることを示す場合を例示する。したがって、測定環境悪判定フラグFWの値が0(零)であることは、第2最終判定部125によって測定環境が良いと判定されていることを示す。また、本実施形態では、フラグレジスタにおいて測定環境悪判定フラグFWの記憶領域の値を設定することにより、測定環境悪判定フラグFWの値が設定される場合を例示する。
【0112】
ステップS1002の判定の結果、FW=0である場合(ステップS1002でYESの場合)、ステップS1003の処理が行われる。ステップS1003において、第2最終判定部125は、散水流量の移動平均値が閾値Wup以上(散水流量の移動平均値≧Wup)であるか否かを判定する。閾値Wupが小さすぎると、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定され易くなる。このため、例えば、操業上の問題がなくても、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定される可能性が高くなる。一方、閾値Wupが大きすぎると、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定され難くなる。このため、例えば、操業上の問題が生じるほど測定環境が悪い場合でも、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定されない可能性が高くなる。閾値Wupは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値Wupは操業実績などに基づいて更新されても良い。また、散水流量の移動平均値に代えて、例えば、散水流量の加重平均値(例えば、現在の制御周期tに近い散水流量の値であるほど大きな値の重みを用いた加重平均値)や、散水流量の中央値を用いても良い。これらの統計量を算出する際には、例えば、現在の制御周期tよりも一定期間前の制御周期から、現在の制御周期までの複数の制御周期における散水流量を用いる。また、散水流量の移動平均値などに代えて、例えば、散水用の開閉弁の状況(例えば開度)を用いても良い。
【0113】
ステップS1003の判定の結果、散水流量の移動平均値≧Wupである場合(ステップS1003でYESの場合)、ステップS1004の処理が行われる。ステップS1004において、第2最終判定部125は、測定環境悪判定フラグFWの値を0(零)から1に変更して、図10のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2最終判定部125の処理)を終了する。一方、散水流量の移動平均値≧Wupでない場合(ステップS1003でNOの場合)、測定環境悪判定フラグFWの値を0(零)から1に変更することなく、図10のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2最終判定部125の処理)を終了する。
【0114】
前述したステップS1002において、FW=0でない場合(ステップS1002でNOの場合)、ステップS1005の処理が行われる。ステップS1005において、第2最終判定部125は、散水流量の移動平均値が閾値Wdn以下(散水流量の移動平均値≦Wdn)であるか否かを判定する。閾値Wdnが大きすぎると、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定され難くなる。このため、例えば、操業上の問題が生じるほど測定環境が悪い場合でも測定環境が悪いと判定されない可能性が高くなる。一方、閾値Wdnが小さすぎると、第2最終判定部125によって測定環境が改善したと判定されづらくなる。このため、例えば、操業上の問題が生じない程度に測定環境が改善したとしても、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定される可能性が高くなる。閾値Wdnは、このような観点から、操業実績やコンピュータシミュレーションの結果などに基づいて予め定められる。なお、閾値Wdnは操業実績などに基づいて更新されても良い。また、移動平均値以外の統計量を用いても良いことはステップS1003の説明で前述した通りである。
【0115】
ステップS1005の判定の結果、散水流量の移動平均値≦Wdnである場合(ステップS1005でYESの場合)、ステップS1006の処理が行われる。ステップS1006において、第2最終判定部125は、測定環境悪判定フラグFWの値を1から0(零)に変更して、図10のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2最終判定部125の処理)を終了する。一方、散水流量の移動平均値≦Wdnでない場合(ステップS1005でNOの場合)、測定環境悪判定フラグFWの値を1から0(零)からに変更することなく、図10のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける第2最終判定部125の処理)を終了する。
【0116】
<<第1出力部130>>
第1出力部130は、判定部120による判定結果に基づく情報を出力する。本実施形態では、第1出力部130が、当該判定結果を(オペレータに)報知するための情報である報知情報と、当該判定結果に基づく高炉1に対する操業指示を示す操業指示情報と、を出力する場合を例示する。ただし、第1出力部130が出力する情報は、これらの情報に限定されない。例えば、第1出力部130は、報知情報と操業指示情報とのうちの一方を出力しなくても良い。
【0117】
本実施形態では第1出力部130が、報知情報を出力するための処理を行う報知情報出力部131と、操業指示情報を出力するための処理を行う操業指示情報出力部132と、を有する場合を例示する。以下に、報知情報出力部131および操業指示情報出力部132が有する機能の具体例を説明する。
【0118】
<<<報知情報出力部131>>>
報知情報出力部131は、第1最終判定部124および第2最終判定部125の判定結果に基づいて、報知情報を生成して出力する。本実施形態では、報知情報がコンピュータディスプレイに表示される場合を例示する。しかしながら、報知情報の出力形態は、コンピュータディスプレイへの表示に限定されない。例えば、コンピュータディスプレイへの表示に加えてまたは代えて報知情報を、音(例えば、ブザー音や音声)により出力しても良いし、ランプの発光により出力しても良いし、コンピュータディスプレイ以外の表示装置への表示により出力しても良い。また、本実施形態では、報知情報出力部131が、測定環境の悪化をオペレータに報知するためのアラーム情報を、報知情報の一例として出力する場合を例示する。図11のフローチャートを参照しながら報知情報出力部131が有する機能の一例を説明する。図11のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
【0119】
まず、ステップS1101において、報知情報出力部131は、第1最終判定部124から出力される測定環境悪判定フラグFAの値が1(FA=1)であるか否かを判定する。本実施形態では、測定環境悪判定フラグFAの値が1であることが、第1最終判定部124によって測定環境が悪いと判定されていることを示す場合を例示する。
【0120】
ステップS1101の判定の結果、FA=1である場合(ステップS1101でYESの場合)、ステップS1102の処理が行われる。ステップS1102において、報知情報出力部131は、第1アラーム情報を出力する。第1アラーム情報は、測定環境が悪いことをオペレータに報知するための情報の第1の例である。複数の非接触式測定装置10が高炉1に設置されている場合、どの装置の測定環境が悪いのかをオペレータが認識可能な情報が第1アラーム情報に含まれていても良い。ステップS1102の処理が終了すると後述するステップS1104の処理が行われる。
【0121】
一方、ステップS1101の判定の結果、FA=1でない場合(ステップS1101でNOの場合)、ステップS1103の処理が行われる。ステップS1103において、報知情報出力部131は、第1アラーム情報の出力を停止する。なお、第1アラーム情報が出力されていない場合、ステップS1103の処理はスキップされても良い。そして、ステップS1104の処理が行われる。
【0122】
ステップS1104において、報知情報出力部131は、第2最終判定部125から出力される測定環境悪判定フラグFWの値が1(FW=1)であるか否かを判定する。本実施形態では、測定環境悪判定フラグFWの値が1であることが、第2最終判定部125によって測定環境が悪いと判定されていることを示す場合を例示する。
【0123】
ステップS1104の判定の結果、FW=1である場合(ステップS1104でYESの場合)、ステップS1105の処理が行われる。ステップS1105において、報知情報出力部131は、第2アラーム情報を出力する。第2アラーム情報は、測定環境が悪いことをオペレータに報知するための情報の第2の例である。第2アラーム情報は、第1アラーム情報と同じ情報であっても異なる情報であっても良い。第1アラーム情報と第2アラーム情報とが同じ情報である場合であって、既に第1アラーム情報が出力されている場合、ステップS1105の処理はスキップされても良い。ステップS1105の処理が終了すると図11のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける報知情報出力部131の処理)は終了する。
【0124】
一方、ステップS1104の判定の結果、FW=1でない場合(ステップS1104でNOの場合)、ステップS1106の処理が行われる。ステップS1106において、報知情報出力部131は、第2アラーム情報の出力を停止する。なお、第2アラーム情報が出力されていない場合、ステップS1106の処理はスキップされても良い。ステップS1106の処理が終了すると図11のフローチャートによる処理(現在の制御周期tにおける報知情報出力部131の処理)は終了する。
【0125】
以上のように本実施形態では、FA=1である場合に第1アラーム情報を出力し、FA=1でない(FA=0である)場合、第1アラーム情報の出力を停止する場合を例示する。同様に、FW=1である場合に第2アラーム情報を出力し、FW=1でない(FW=0である)場合、第2アラーム情報の出力を停止する場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、FA=0からFA=1に変わったときにのみ第1アラーム情報を出力し、FW=0からFW=1に変わったときにのみ第2アラーム情報を出力しても良い。また、FA=0およびFW=0の場合に、測定環境が良好であることを報知しても良い。この場合、FA=0およびFW=0の条件が成立したと判定したタイミングにおいてのみ、測定環境が良好であることを報知しても良い。
【0126】
<<<操業指示情報出力部132>>>
操業指示情報出力部132は、判定部120(第1最終判定部124および第2最終判定部125)における判定結果に基づく操業指示情報を生成して出力する。本実施形態では、操業指示情報がダンプの開始を指示する情報である場合を例示する。また、ここでは、複数の非接触式測定装置10が高炉1に設置されている場合を例示する。なお、複数の非接触式測定装置10が非接触式の原料レベルの測定値を測定する原料面上の位置(目標位置)は、同じであっても異なっていても良い。以下に操業指示情報出力部132が有する機能の一例を説明する。
【0127】
報知情報出力部131により第1アラーム情報が出力されると、オペレータは、測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定する。どの測定環境が悪いのかをオペレータが認識可能な情報が第1アラーム情報に含まれている場合、オペレータは、第1アラーム情報の内容から、測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定することが出来る。オペレータは、以上のようにして測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定した後、処理装置100に対し、測定環境が悪い非接触式測定装置10を示す情報を異常装置情報として入力する操作を行う。データ取得部110は、このようにして入力された異常装置情報を取得する。
【0128】
操業指示情報出力部132は、異常装置情報に基づいて測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定し、非接触式原料レベルの測定値のうち、特定した非接触式測定装置10における測定値を除く測定値に基づいて、原料レベルを算出する。例えば、操業指示情報出力部132は、非接触式原料レベルの測定値のうち、特定した非接触式測定装置10を除く非接触式測定装置10の測定値の代表値(算術平均値、最頻値、中央値など)を、原料レベルとして算出する。操業指示情報出力部132は、算出した原料レベルに基づいて、ダンプ開始条件を満足するか否かを判定する。例えば、操業指示情報出力部132は、算出した原料レベルが基準レベルである場合に、ダンプ開始条件を満足すると判定する。操業指示情報出力部132は、ダンプ開始条件を満足すると判定すると、ダンプの開始を指示するダンプ指示情報を生成して、不図示のホッパーおよび旋回シュート4などに対し、ダンプを行うための動作指令を出力する。これによりダンプが開始する。
【0129】
なお、例えば、判定部120により測定環境が悪いと判定された場合、操業指示情報出力部132は、接触式測定装置20による接触式原料レベルの測定値に基づいてダンプ指示情報を生成して出力しても良い。この場合、高炉1に設置されている非接触式測定装置10の数が一つであっても複数であっても、操業指示情報を生成して出力することが出来る。また、この場合、操業指示情報出力部132は、オペレータによる操作を介さずに、判定部120(第1最終判定部124および第2最終判定部125)における判定結果に基づく操業指示情報を生成して出力しても良い。
【0130】
また、操業指示情報は、ダンプ指示情報に限定されない。例えば、第2最終判定部125により測定環境が悪いと判定された場合、ノズル30から噴射される水の流量や圧力を調整することを指示する情報を操業指示情報として用いても良い。また、例えば、第1最終判定部124により測定環境が悪いと判定された場合、不図示の羽口からの送風流量や圧力を調整することを指示する情報を操業指示情報として用いても良い。これらの場合、高炉1に設置されている非接触式測定装置10の数が一つであっても複数であっても、操業指示情報を生成して出力することが出来る。
【0131】
また、操業指示情報出力部132が、測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定することが出来れば、必ずしも、異常装置情報を用いる必要はない。例えば、データ取得部110は、異常装置情報に代えてまたは加えて、測定環境が良い非接触式測定装置10を示す情報である正常装置情報を取得しても良い。この場合、操業指示情報出力部132は、例えば、正常装置情報から特定される測定環境が良い非接触式測定装置10以外の非接触式測定装置10を、測定環境が悪い非接触式測定装置10として特定する。
【0132】
<<第2出力部140>>
第2出力部140は、原料レベルの測定値を示す情報を、高炉内装入物3の表面の高さ位置を示すレベル情報の一例として出力する。本実施形態では、第2出力部140が、非接触式原料レベルの測定値を示す情報と、接触式原料レベルの測定値を示す情報と、の双方を出力する場合を例示する。以下の説明では、非接触式原料レベルの測定値を示す情報を、必要に応じて非接触式原料レベル情報と称し、接触式原料レベルの測定値を示す情報を、必要に応じて接触式原料レベル情報と称し、これらの情報を、必要に応じて原料レベル情報と総称する。
【0133】
本実施形態では、第2出力部140が、原料レベル情報がコンピュータディスプレイに表示される場合を例示する。しかしながら、原料レベル情報の出力形態は、コンピュータディスプレイへの表示に限定されない。例えば、コンピュータディスプレイへの表示に加えてまたは代えて原料レベル情報を、音声により出力しても良いし、コンピュータディスプレイ以外の表示装置への表示により出力しても良い。
【0134】
また、本実施形態では、第2出力部140が、データ取得部110によって非接触式原料レベルの測定値が取得された場合には、当該測定値を測定した非接触式測定装置10の測定環境の良否に関わらず、当該測定値を示す非接触式原料レベル情報を出力する場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、第2出力部140は、第1最終判定部124により測定環境が悪いと判定された非接触式測定装置10における非接触式原料レベル情報を出力しなくても良いし、当該非接触式原料レベル情報として測定異常を示す情報を出力しても良い。
【0135】
また、本実施形態では、データ取得部110によって接触式原料レベルの測定値が取得された場合、第2出力部140が、当該測定値に関わらず当該測定値を示す接触式原料レベル情報を出力する場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、第2出力部140は、重錘20aの巻き上げが行われているときの接触式原料レベル情報を出力しなくても良い。
【0136】
<処理方法>
次に、処理装置100を用いて行われる本実施形態の処理方法の一例を説明する。
図12は、測定環境の良否を判定する際の処理方法の一例を説明するフローチャートである。図12のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
【0137】
まず、ステップS1201において、データ取得部110は、非接触式原料レベルの測定値と、接触式原料レベルの測定値と、散水流量の測定値と、本フローチャートの処理で用いる定数(閾値J、TJA、H、Tu、U、Wup、Wdn、差分判定時間Tud、所定回数C、時間TA)と、を取得する。なお、ステップS1201は前述した制御周期で繰り返し実行されるが、定数については、更新されない限り改めて取得しなくても良い。
【0138】
次に、ステップS1202、S1203、S1204、S1205において、第1判定処理、第2判定処理、第3判定処理、第2最終判定処理が行われる。本実施形態では、第1判定処理、第2判定処理、第3判定処理、第2最終判定処理を並列処理(同時刻に独立して処理)する場合を例示する。この場合、処理装置100は、複数のハードウェアプロセッサを備えていても良いし、マルチコアプロセッサを備えていても良い。ただし、これらの処理のうちの少なくとも二つの処理を直列処理(一つずつ順番に処理)しても良い。ステップS1202の第1判定処理の具体例は、図6に示したものとなる。ステップS1203の第2判定処理の具体例は、図7に示したものとなる。ステップS1204の第3判定処理の具体例は、図8に示したものとなる。ステップS1205の第2最終判定処理の具体例は、図10に示したものとなる。
【0139】
ステップS1202~S1204の第1判定処理~第3判定処理が終了すると、ステップS1206において第1最終判定処理が行われる。ステップS1206の第1最終判定処理の具体例は、図9に示したものとなる。本実施形態では、ステップS1206の第1最終判定処理が開始するタイミングでステップS1205の第2最終判定処理が終了していない場合、第1最終判定処理および第2最終判定処理を並列処理する場合を例示する。
【0140】
ステップS1205の第2最終判定処理およびステップS1206の第1最終判定処理が終了すると、ステップS1207において報知情報出力処理が行われる。ステップS1207の報知情報出力処理の具体例は、図11に示したものとなる。ステップS1207の処理が終了すると、図12のフローチャートによる処理は終了する。
【0141】
次に、図13のフローチャートを参照しながら、操業指示情報(本実施形態ではダンプ指示情報)を出力する際の処理方法の一例を説明する。ここでは、複数の非接触式測定装置10が高炉1に設置されている場合を例示する。
【0142】
まず、ステップS1301において、データ取得部110は、本フローチャートの処理で用いる定数(原料レベルの基準(基準レベル))を、例えば、オペレータによる処理装置100に対する入力操作に基づいて取得する。
次に、ステップS1302において、データ取得部110は、複数の非接触式測定装置10で測定された複数の非接触式原料レベルの測定値を取得する。
次に、ステップS1303において、操業指示情報出力部132は、データ取得部110により異常装置情報が取得されているか否かを判定する。なお、異常装置情報は、例えば、オペレータによる処理装置100に対する入力操作に基づいてデータ取得部110により取得される。
【0143】
ステップS1303の判定の結果、異常装置情報が取得されている場合(ステップS1303でYESの場合)、ステップS1304の処理が行われる。ステップS1304において、操業指示情報出力部132は、異常装置情報に基づいて測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定し、ステップS1302で取得された複数の非接触式原料レベルの測定値のうち、特定した非接触式測定装置10を除いた測定値の代表値(例えば算術平均値)を原料レベルとして算出する。
【0144】
一方、ステップS1303の判定の結果、異常装置情報が取得されていない場合(ステップS1303でNOの場合)、ステップS1305の処理が行われる。ステップS1305において、操業指示情報出力部132は、ステップS1302で取得された複数の非接触式原料レベルの測定値の代表値(例えば算術平均値)を原料レベルとして算出する。そして、ステップS1306の処理が行われる。
【0145】
ステップS1306において、操業指示情報出力部132は、ステップS1304またはS1305で算出した原料レベルに基づいて、ダンプ開始条件を満足するか否かを判定する。ここでは、ステップS1304またはS1305で算出した原料レベルがステップS1301で取得された基準レベルである場合に、ダンプ開始条件を満足すると判定する場合を例示する。
【0146】
ステップS1306の判定の結果、ダンプ開始条件を満足しない場合(ステップS1306でNOの場合)、ステップS1302の処理が再び行われる。ステップS1302~S1306の処理は、前述した制御周期で繰り返し実行される。そして、ステップS1306においてダンプ開始条件を満足すると判定されると(ステップS1306でYESの場合)、ステップS1307の処理が行われる。
【0147】
ステップS1307において、操業指示情報出力部132は、ダンプ指示情報を生成して出力する。ステップS1307の処理が終了すると、図13のフローチャートによる処理は終了する。
【0148】
次に、図14のフローチャートを参照しながら、原料レベル情報を出力する際の処理方法の一例を説明する。図14のフローチャートは、前述した制御周期で繰り返し実行される。
【0149】
まず、ステップS1401において、データ取得部110は、非接触式原料レベルの測定値と、接触式原料レベルの測定値と、のうちの少なくとも一方を取得する。なお、或る制御周期において、非接触式測定装置10および接触式測定装置20のうち、非接触式測定装置10のみで測定が行われている場合、当該制御周期における本ステップS1401においては、非接触式原料レベルの測定値のみが取得される。一方、或る制御周期において、非接触式測定装置10および接触式測定装置20のうち、接触式測定装置20のみで測定が行われている場合、当該制御周期における本ステップS1401においては、接触式原料レベルの測定値のみが取得される。
【0150】
次に、ステップS1402において、第2出力部140は、ステップS1401で取得された測定値に基づいて原料レベル情報を生成して出力する。ステップS1402の処理が終了すると、図14のフローチャートによる処理は終了する。
【0151】
<計算例>
次に、計算例を説明する。本計算例では、高炉の実操業で得られた操業実績データを用いて、本実施形態で説明した手法で、測定環境の良否を判定した。
【0152】
図15は、指示飛びおよび荷下がり中の指示上昇の検知結果の一例を示す図である。
図15に、非接触式原料レベル1501と、接触式原料レベル1502と、検知有無フラグ1503と、を示す。
【0153】
非接触式原料レベル1501および接触式原料レベル1502は、ノズルから炉内に水が噴射されているときに得られたものである。検知有無フラグ1503は、指示飛びまたは荷下がり中の指示上昇であると判定されたタイミングにおいて1を示し、それ以外のタイミングにおいて0(零)を示すものである。したがって図15では、検知有無フラグ1503の値が0(零)から1になったタイミングで指示飛びまたは荷下がり中の指示上昇が発生したことを示す。
【0154】
図15において検知有無フラグ1503の値が0(零)から1になったタイミングのうち、タイミングtAにおいて指示飛びが発生し、それ以外のタイミングにおいては荷下がり中の指示上昇が発生したことを示す。図15に示すように、本実施形態の手法を用いれば、非接触式原料レベル1501において指示飛びおよび荷下がり中の指示上昇が発生したことを正確に検知することが出来ていることが分かる。
【0155】
図16は、指示保持および荷下がり中の指示上昇の検知結果の一例を示す図である。
図16に、非接触式原料レベル1601と、接触式原料レベル1602と、検知有無フラグ1603と、を示す。
【0156】
非接触式原料レベル1601および接触式原料レベル1602は、ノズルから炉内に水が噴射されているときに得られたものである(ただし、非接触式原料レベル1501および接触式原料レベル1502とは異なる期間で得られたものである)。検知有無フラグ1603は、指示保持または荷下がり中の指示上昇であると判定されたタイミングにおいて1を示し、それ以外のタイミングにおいて0(零)を示すものである。したがって図16では、検知有無フラグ1603の値が0(零)から1になったタイミングで指示保持または荷下がり中の指示上昇が発生したことを示す。
【0157】
図16において検知有無フラグ1603の値が0(零)から1になったタイミングのうち、タイミングtB、tCにおいて指示保持が発生し、それ以外のタイミングにおいては荷下がり中の指示上昇が発生したことを示す。図16に示すように、本実施形態の手法を用いれば、非接触式原料レベル1601において指示保持および荷下がり中の指示上昇が発生したことを正確に検知することが出来ていることが分かる。
【0158】
図17は、散水流量を用いた測定環境の良否の検知結果の一例を示す図である。
図17に、散水流量1701と、検知有無フラグ1702と、閾値Wup、Wdnと、を示す。
散水流量1701は、移動平均値である。検知有無フラグ1702は、指示飛びまたは荷下がり中の指示上昇であると判定されたタイミングにおいて1を示し、それ以外のタイミングにおいて0(零)を示すものである。したがって図17では、検知有無フラグ1702の値が0(零)から1になったタイミングで指示飛びまたは荷下がり中の指示上昇が発生したことを示す。
【0159】
図17において検知有無フラグ1503の値が0(零)から1になったタイミングのうち、タイミングtDにおいて指示飛びが発生し、それ以外のタイミングにおいては荷下がり中の指示上昇が発生したことを示す。図17に示すように、本実施形態の手法を用いれば、散水流量の移動平均値が閾値Wup以上であるときに指示飛びおよび荷下がり中の指示上昇が頻発しており、閾値Wdn以下であるときに指示飛びおよび荷下がり中の指示上昇は発生していないことから、散水流量の測定値に基づいて、測定環境の良否を正確に判定することが出来ていることが分かる。
【0160】
<まとめ>
本実施形態では、処理装置100は、非接触式原料レベルの測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、非接触式測定装置10の測定環境の良否を判定する。したがって、非接触式原料レベルの測定値とは別の種類の操業情報も用いて、非接触式測定装置10の測定環境の良否を判定することが出来る。よって、高炉1内の状況に応じて多様に変化する非接触式測定装置10の測定環境の良否の情報を得ることが出来る。これにより例えば、測定環境が悪いと判定された非接触式測定装置10の測定値を有用な測定値ではないとすることが出来る。また、測定環境を測定するための専用の測定装置を用いることなく測定環境の情報を得ることが出来る。
【0161】
また、本実施形態では、操業情報には、散水流量の測定値で例示される操業アクション情報と、接触式原料レベルの測定値で例示される操業フェーズ情報と、のうちの少なくとも一方が含まれる。したがって、測定環境の良否をより高精度に判定することが出来る。
【0162】
また、本実施形態では、処理装置100は、非接触式測定装置10が測定中であるときの操業情報に基づいて、測定環境の良否を判定する。したがって、非接触式測定装置10が測定中であるときの測定環境の良否を判定することが出来る。
【0163】
また、本実施形態では、処理装置100は、高炉1の内部に供給される物質に関する情報(本実施形態の例では散水流量)に基づいて、測定環境の良否を判定する。したがって、非接触式測定装置10と高炉内装入物3との間に存在する物質の影響を考慮して、非接触式測定装置10が測定中であるときの測定環境の良否を判定することが出来る。
【0164】
また、本実施形態では、処理装置100は、接触式原料レベルの測定値で例示される操業フェーズ情報から特定される操業工程が所定の操業工程でない(具体的にはダンプ中でない)場合に、非接触式原料レベルの測定値の時間変化に基づいて、測定環境の良否を判定する。したがって、例えば、特定の操業工程が実行されているときに限定して測定環境の良否を判定することが出来る。
【0165】
また、本実施形態では、処理装置100は、非接触式原料レベルの測定値の時間変化に基づいて、測定環境の良否を判定する。したがって、測定環境の良否をより高精度に判定することが出来る。
【0166】
また、本実施形態では、処理装置100は、測定環境の良否の判定結果に基づく情報を出力する。したがって、例えば、当該判定結果を処理装置100の外部で活用することが出来る。
【0167】
また、本実施形態では、処理装置100は、測定環境の良否の判定結果を報知するための情報である報知情報を出力する。したがって、当該判定結果をオペレータに自動的に報知することが出来、高炉1を操業するためのオペレータの意思決定を支援することが出来る。
【0168】
また、本実施形態では、処理装置100は、測定環境が変化(悪判定⇔良判定)した場合に当該報知情報の出力の切り替えを行う。したがって、例えば、オペレータは、報知情報の出力があった時に該当の非接触式原料レベルの測定値を代表値の算出に採用するかを判断すれば良くなる。したがって、オペレータの負担を低減することが出来る。
【0169】
また、本実施形態では、処理装置100は、測定環境の良否の判定結果に基づく操業指示情報を出力する。したがって、測定環境の良否に応じた操業を行うことが出来る。
【0170】
また、本実施形態では、処理装置100は、非接触式原料レベル情報を出力する。したがって、例えば、処理装置100の外部において非接触式原料レベルをリアルタイムで把握することが出来る。
【0171】
また、本実施形態では、処理装置100は、それぞれが、少なくとも非接触式測定装置10の測定値に基づいて当該非接触式測定装置10の測定環境の良否を判定する第1判定部121~第3判定部123の判定結果に基づいて、当該非接触式測定装置10の測定環境の良否を判定する。この際、第3判定部123は、非接触式原料レベルの測定値と、接触式原料レベルの測定値で例示される操業フェーズ情報と、に基づいて、測定環境の良否を判定する。したがって、複数の判定結果から、測定環境の良否を総合的に判定することが出来る。よって、測定環境の良否を多角的に判定することが出来、判定の精度をより向上することが出来る。
【0172】
また、本実施形態では、処理装置100は、非接触式原料レベルの測定値と、散水流量の測定値で例示される操業アクション情報と、に基づいて、測定環境の良否を判定する第2最終判定部125の判定結果と、前述の第1最終判定部124の判定結果と、の双方を、測定環境の良否の判定結果として含める。したがって、測定環境の良否をより多角的に判定することが出来る。
【0173】
<変形例>
本実施形態では、高炉内装入物3の挙動に対応しない非接触式原料レベルの測定値の時間変化として、指示飛び、指示保持、および荷下がり中の指示上昇を例示した。しかしながら、高炉内装入物3の挙動に対応しない非接触式原料レベルの測定値の時間変化は、これらに限定されない。例えば、測定環境は高炉ごとに異なるので、高炉ごとに操業実績データを参照して、高炉内装入物3の挙動に対応しない非接触式原料レベルの測定値の時間変化として、指示飛び、指示保持、および荷下がり中の指示上昇以外の時間変化を探索しても良い。
【0174】
また、本実施形態ではオペレータが、測定環境が悪い非接触式測定装置10を特定し、異常装置情報を処理装置100に入力する場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、第1最終判定部124で測定環境が悪いと判定された非接触式測定装置10を、測定環境が悪い非接触式測定装置10としても良い。このようにする場合、データ取得部110は、異常装置情報を取得しなくても良い。操業指示情報出力部132は、第1最終判定部124で測定環境が悪いと判定された非接触式測定装置10を示す情報を、本実施形態で説明した異常特定情報として用いて、原料レベルの算出、ダンプ開始条件の満足の有無、およびダンプ指示情報の生成および出力を行っても良い。このようにすれば操業指示情報出力部132は、オペレータの操作を介することなく判定部120における判定結果に基づく操業指示情報を生成して出力することが出来る。
【0175】
また、本実施形態では、容器が高炉である場合を例示した。しかしながら、装入物が装入され、かつ、装入物の表面までの距離を非接触で測定する測定装置が設置される容器であれば、容器は高炉に限定されない。例えば、容器は、サイロであっても良いし、高炉以外の工業炉であっても良い。この場合、当該容器における非接触式測定装置の測定環境は容器によって異なる。したがって、当該容器内の装入物の挙動に対応しない非接触式原料レベルの測定値の時間変化には、指示飛び、指示保持、および荷下がり中の指示上昇の少なくとも一つが含まれない場合があり、また、これら以外の時間変化が含まれる場合がある。例えば、容器の操業実績データを参照して、装入物の挙動に対応しない非接触式原料レベルの測定値の時間変化として、指示飛び、指示保持、および荷下がり中の指示上昇とは異なる時間変化を探索しても良い。このようにして探索された時間変化が特定の操業工程で生じる場合には、当該操業工程が実行中であると判定した場合に、測定環境の良否を判定しても良い。また、操業アクション情報は、本実施形態で説明した散水流量の測定値に限定されない。例えば、容器に対する操業時に容器の内部に供給される物質(本実施形態の例ではノズル30から供給される水)は、容器に応じて異なる。したがって、容器の内部に供給される物質は、水に限定されず、また、当該物質に関する情報は、流量や流量に換算可能な物理量に限定されない。また、例えば、当該物質の種類を異ならせる操業が行われる場合には、当該物質の種類が、当該物質に関する情報として含まれていても良い。
【0176】
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラムなどのコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)やDCS(Distributed Control System)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0177】
なお、以上の実施形態の開示は、例えば以下のようになる。
[開示1]
容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定する測定装置の測定環境を判定するための処理を行う処理装置であって、
前記測定装置の測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する判定部を備える、処理装置。
[開示2]
前記操業情報は、実行中の操業工程または実行中でない操業工程を特定可能な操業フェーズ情報と、前記容器に対する操作の内容を特定可能な操業アクション情報と、のうちの少なくとも一方を含む、開示1に記載の処理装置。
[開示3]
前記操業フェーズ情報は、実行中の操業工程または実行中でない操業工程として、前記測定装置が測定を行う操業工程を特定可能な情報を含み、
前記操業アクション情報は、前記測定装置が測定中であるときの操作の内容を特定可能な情報を含む、開示2に記載の処理装置。
[開示4]
前記操業アクション情報は、前記容器の内部に供給される物質に関する情報を含む、開示2または3に記載の処理装置。
[開示5]
前記判定部は、前記操業フェーズ情報に基づいて特定される前記操業工程が所定の操業工程である場合または所定の操業工程でない場合に、前記測定値に基づいて、前記測定環境の良否を判定する、開示2~4のいずれか一つに記載の処理装置。
[開示6]
前記判定部は、前記測定値の時間変化に基づいて、前記測定環境の良否を判定する、開示1~5のいずれか一つに記載の処理装置。
[開示7]
前記判定の結果に基づく情報を出力する第1出力部をさらに備える、開示1~6のいずれか一つに記載の処理装置。
[開示8]
前記第1出力部は、前記判定の結果を報知するための情報である報知情報を出力する報知情報出力部を有する、開示7に記載の処理装置。
[開示9]
前記第1出力部は、前記判定部による前記測定環境の良否の判定結果が変わった場合に、前記報知情報を出力する、開示8に記載の処理装置。
[開示10]
前記第1出力部は、前記判定の結果に基づく操業指示を示す操業指示情報を出力する操業指示情報出力部を有する、開示7~9のいずれか一つに記載の処理装置。
[開示11]
前記測定値に基づく前記装入物の表面の高さ位置を示すレベル情報を出力する第2出力部をさらに備える、開示1~10のいずれか一つに記載の処理装置。
[開示12]
前記判定部は、
nを2以上の整数として、それぞれが、少なくとも前記測定値に基づいて、前記測定環境の良否を判定する第1判定部~第n判定部と、
前記第1判定部~前記第n判定部の判定結果に基づいて前記測定環境の良否を判定する第1最終判定部と、
をさらに有し、
前記第1判定部~前記第n判定部のうちの少なくとも1つは、前記測定値を含む複数種類の前記操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する、開示1~11のいずれか一つに記載の処理装置。
[開示13]
前記操業情報は、実行中または実行中でない操業工程を特定可能な操業フェーズ情報と、前記容器に対する操作の内容を特定可能な操業アクション情報と、を含み、
前記判定部は、前記測定値と、前記操業アクション情報と、に基づいて、前記測定環境の良否を判定する第2最終判定部をさらに有し、
前記第1判定部~前記第n判定部のうちの少なくとも1つは、前記測定値と、前記操業フェーズ情報と、に基づいて、前記測定環境の良否を判定し、
前記第1最終判定部の判定結果と、前記第2最終判定部の判定結果と、が、前記判定部における前記測定環境の良否の判定結果に含まれる、開示12に記載の処理装置。
[開示14]
前記容器は、高炉である、開示1~13のいずれか一つに記載の処理装置。
[開示15]
容器内の装入物の表面までの距離を非接触で測定する測定装置の測定環境を判定するための処理を行う処理方法であって、
前記測定装置の測定値を含む複数種類の操業情報に基づいて、前記測定環境の良否を判定する判定工程を備える、処理方法。
[開示16]
開示1~14のいずれか一つに記載の処理装置の判定部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0178】
1 高炉
2 炉体
3 高炉内装入物
4 旋回シュート
10 非接触式測定装置
10a 電子ユニット部
10b マイクロ波送受信部
10c 支持管
10d 短管
10e 断熱板
10f 遮断弁
20 接触式測定装置
20a 重錘
20b ワイヤー
20c 回転ドラム
20d モータ
20e ロータリーエンコーダ
20f データ処理部
30a~30b ノズル
31 流量計
100 処理装置
110 データ取得部
120 判定部
121 第1判定部
122 第2判定部
123 第3判定部
124 第1最終判定部
125 第2最終判定部
130 第1出力部
131 報知情報出力部
132 操業指示情報出力部
140 第2出力部
301 非接触式原料レベル
302 接触式原料レベル
401 非接触式原料レベル
402 接触式原料レベル
501 非接触式原料レベル
502 接触式原料レベル
1501 非接触式原料レベル
1502 接触式原料レベル
1503 検知有無フラグ
1601 非接触式原料レベル
1602 接触式原料レベル
1603 検知有無フラグ
1701 散水流量(移動平均値)
1702 検知有無フラグ
C1 高炉の中心軸線
up 散水流量の閾値(上限)
dn 散水流量の閾値(下限)
図1
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