(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179708
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】プラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B65D1/02 232
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098759
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 亮
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033CA02
3E033CA05
3E033CA07
3E033DA03
3E033DB01
3E033DD02
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】想定よりも高い温度に加熱された場合であっても、また、ボトルを小型化した場合であっても、形状品質及び自立性を保つことができるプラスチックボトルを提供すること。
【解決手段】接地面31aを含む環状のボトル底31の内側で当該ボトル底31から立ち上がるボトル底山32を備えたプラスチックボトル1において、ボトル底山32は、第1の形状51と、第1の形状51よりもボトル内の空間に向かって突出した第2の形状52と、を周方向に交互に並べて構成された周壁部42を有する。第2の形状52の下端は、ボトル底31につながり、第1の形状51の下端は、隣り合う第2の形状同士52、52の間に位置する平坦な又は湾曲した接続面53を介してボトル底31につながる。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を含む環状のボトル底の内側で当該ボトル底から立ち上がるボトル底山を備えたプラスチックボトルにおいて、
前記ボトル底山は、第1の形状と、前記第1の形状よりもボトル内の空間に向かって突出した第2の形状と、を周方向に交互に並べて構成された周壁部を有し、
前記第2の形状の下端は、前記ボトル底につながり、
前記第1の形状の下端は、隣り合う第2の形状同士の間に位置する平坦な又は湾曲した接続面を介して前記ボトル底につながる、プラスチックボトル。
【請求項2】
前記第1の形状は、円筒形状又は円錐形状の側壁の一部からなる、請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記第1の形状は、円錐形状の側壁の一部からなり、下方にかけてボトル外側に傾斜している、請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記第2の形状は、正面視、三角形又は台形の形状からなる、請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
前記第2の形状は、正面視の形状に対応する正面壁と、前記正面壁の両側を前記第1の形状につなぐ一対の側壁と、を有し、
前記正面壁の下端は、前記ボトル底につながり、
前記一対の側壁の下端は、前記接続面につながる、請求項4に記載のプラスチックボトル。
【請求項6】
前記正面壁は、下方にかけてボトル外側に向かって傾斜している、請求項5に記載のプラスチックボトル。
【請求項7】
前記三角形は、底辺を下側とする二等辺三角形である、請求項4から6のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項8】
前記ボトル底山は、前記周壁部につながる頂部を有しており、
前記第1の形状の上端は、前記頂部につながり、
前記第2の形状の上端は、段差を介して前記頂部につながる、請求項1から6のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項9】
前記ボトル底山は、前記周壁部につながる頂部を有しており、
前記頂部は、
中央が最も下方に位置するように湾曲した凹部と、
前記凹部を囲む環状の周縁と、を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項10】
前記接続面は、傾斜しており、
前記接続面は、前記第1の形状及び前記第2の形状のそれぞれの正面壁よりも、水平面に対する斜度が緩い、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項11】
前記接続面は、ボトル中心軸から見て、放射状に延在している、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項12】
前記接続面は、ボトル内の空間に向かって凸となるように湾曲している、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項13】
前記ボトル底は、
前記接地面と、
前記接地面の外周縁をボトル胴部につなぐ傾斜した外側底面と、
前記接地面の内周縁を前記周壁部の下端につなぐ傾斜した内側底面と、からなり、
前記内側底面は、前記外側底面よりも、水平面に対する斜度が緩くかつ高さが低い、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【請求項14】
前記ボトル胴部の胴径に対する前記ボトル底山の高さは、0.2~0.4である、請求項13に記載のプラスチックボトル。
【請求項15】
前記接地面を介して加熱エリアに接地された当該プラスチックボトルが前記加熱エリアによって所定温度以上に加熱された場合、
前記ボトル底山のうち、前記接続面が落ち込むように変形して前記接地面とともに又は前記接地面を超えて前記加熱エリアに接地するように、前記ボトル底山の形状が不可逆的に変化する、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル(以下、単に「ボトル」ともいう。)の底部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
PETボトルに代表されるプラスチックボトルは、これに充填する内容物によって要求される特性が異なり、形状、構造が異なる。例えば、炭酸飲料用のプラスチックボトルは耐圧性が求められるため、一般には、円筒形の容器を用い、その底部をペタロイド形状としている。一方、コーヒー、紅茶などの非炭酸飲料用のプラスチックボトルでは、飲料の充填後等に生じる負圧を吸収するため、一般には、ボトル胴部に減圧吸収パネルを設けている。
【0003】
非炭酸飲料は、常温、冷却又は加温した状態で提供される。例えばコンビニエンスストアなどにおいて店頭販売で加温する場合は、プラスチックボトルを立てた状態でホットウォーマー(保温ショーケース)に入れ、加熱棚によりボトル底部を加熱し、飲料を所定温度(例えば55°前後)に保温している(例えば特許文献1参照)。加温時にボトルの内圧が上昇した際には、ボトル胴部の減圧吸収パネルによって内圧が吸収され得るようになっている。
【0004】
プラスチックボトルは、一次成型品のプリフォームをインジェクションブロー成形等により製造される。インジェクションブローでは、プリフォームを加熱し、延伸ロッドでプリフォームの底を押しながらプリフォーム内に空気を吹き込み、プリフォームを膨らませる。このとき、ボトル胴部は、延伸によって配向結晶化が生じ、強度・耐熱性が向上する。一方、ボトル底部は、延伸倍率が低いため、局所的に耐熱性が低くなる。
【0005】
加温用プラスチックボトルは、その使用時の態様、具体的にはホットウォーマーの加熱棚に載せる態様の観点から、ボトル底部の耐熱性を考慮した構造に設計されている。例えば、現在市場で流通している加温用プラスチックボトルでは、ボトル底部の底山の高さを比較的高くしている。これにより、ホットウォーマーの加熱棚からの熱が、耐熱性の低い底山の頂部に伝わりにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、状況によっては、ホットウォーマーによる温度が想定温度を超える加温温度(例えば70度前後)となることがある。この加温温度は、PETのガラス転移温度(75°前後)に近い温度である。このような高い温度での仕様は、加温用プラスチックボトルでは本来想定されていない。このため、過剰な加温によってボトル底部の底山が反転し、それによってボトルが加熱棚上で転倒することが懸念される。
【0008】
このような反転・転倒は、ボトル胴部の胴径が小さいほど、生じやすいと考えられる。これは、加熱によりボトル内部の圧力が上昇した際、胴径が小さいボトルでは胴部の形状で吸収できる余地が少なく(減圧吸収パネルが動きにくく)、その結果、ボトル内部の圧力が高くなり、底山を下方に押す力が大きくなるからである。この下方への力により底山の上部が反転し、底部接地面を超えると、ボトルが傾く。胴径が小さいほど、底落ち反転部と底部接地面との距離が小さいため、ボトルの傾きが大きくなり、転倒しやすくなる。
【0009】
本発明は、想定よりも高い温度に加熱された場合であっても、また、ボトルを小型化した場合であっても、形状品質及び自立性を保つことができるプラスチックボトルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るプラスチックボトルは、接地面を含む環状のボトル底の内側で当該ボトル底から立ち上がるボトル底山を備えたプラスチックボトルにおいて、ボトル底山は、第1の形状と、第1の形状よりもボトル内の空間に向かって突出した第2の形状と、を周方向に交互に並べて構成された周壁部を有し、第2の形状の下端は、ボトル底につながり、第1の形状の下端は、隣り合う第2の形状同士の間に位置する平坦な又は湾曲した接続面を介してボトル底につながるものである。
【0011】
この態様によれば、接地面を介して立てたプラスチックボトルが想定よりも高い温度に加熱された場合、ボトル内部の上昇した圧力によって、ボトル底山が下方に押されるようになる。
【0012】
このとき、まず、ボトル底山では、接続面が落ち込むように変形する。そして、接続面がボトル底の接地面を超えて落ち込むと、プラスチックボトルが接地している部分が、接地面から接続面へと移行する。すなわち、接続面が、プラスチックボトルの新たな足として機能するようになる。接続面は、ボトル底山の周壁部の周方向に均等間隔で存在するため、複数の接続面によって、プラスチックボトルを安定して自立させることができる。
【0013】
また、ボトル底山では、第1の形状及び第2の形状の全体が内圧により収縮方向に潰されるように変形し得る。これによって、ボトル内部の上昇した圧力が吸収される。このとき、接続面が「足」として機能しているため、第1の形状及び第2の形状の全体の反転、すなわちボトル底山全体の反転は抑制される。
【0014】
このように、ボトル底山に変形が生じた場合を想定し、仮に変形した場合には接続面を接地個所にするという、従来の加温用プラスチックボトルに対する設計アプローチ(加温によりボトルを変形させないこと)とは根本的に異なる設計アプローチにより、想定よりも高い温度に加熱された場合であっても、全体として、形状品質及び自立性を保つことができる。また、ボトルを小型化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るプラスチックボトルの正面図である。
【
図2A】
図1のプラスチックボトルの底部を、ボトル内から見た斜視図である。
【
図2B】
図1のプラスチックボトルの底部を、ボトル外から見た斜視図である。
【
図2C】
図1のプラスチックボトルの底部の底面図である。
【
図2D】
図1のプラスチックボトルの底部の断面図であり、左半部が、
図2Cにおいて「A」が示す線で切断した断面図を示し、右半部が、
図2Cにおいて「B」が示す線で切断した断面図を示す。
【
図3】(A)比較例に係る底部の正面図であり、(B)実施形態に係る底部の正面図である。
【
図4】ボトル底山の熱変形挙動を説明するための図であり、(A)比較例に係る底部を示し、(B)実施形態に係る底部を示す。
【
図5】過剰な加熱により変形したボトル底山を示す図であり、(A)比較例に係る底部を示し、(B)実施形態に係る底部を示す。
【
図6】
図2Dと同じ図を用いて、寸法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るプラスチックボトルを説明する。
以下の説明では、ボトルの底部が存在する方を下側とし、ボトルの口部が存在する方を上側とする。横断面とは、ボトルの中心軸に直交する平面における断面形状を意味する。
【0017】
図1に示すように、プラスチックボトル1(以下、「ボトル1」という。)は、上側から順に、口部2、肩部3、胴部4及び底部5を有する。これらの部分(2、3、4及び5)は、一体に形成され、内部に飲料を貯留するための有底筒状のボトル壁を構成する。飲料としては、コーヒー、紅茶、水、緑茶、ウーロン茶又はブレンド茶等の非炭酸飲料を貯留するのに適している。また、ボトル1は、いわゆる加温用ボトルであり、加温飲料を提供するのに適したものである。
【0018】
ボトル1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成形等の延伸成形法により成形される。
ボトル1の製造工程の一例を説明する。先ず、金型内に熱可塑性樹脂を射出し、プリフォームを射出成形する。プリフォームは、口部2と同形状の口部と、その下側に連なる有底の筒状部と、で構成される。射出成形後は、プリフォームをブロー成形機にセットして、プリフォームの筒状部を加熱する。そして、延伸ロッドによって筒状部を縦方向に延伸させると共に、圧縮空気を吹き込んで筒状部を横方向に延伸させる。延伸させた筒状部の部位を金型の内面に押し付け、その後固化させる。これにより、肩部3、胴部4及び底部5が成形され、ボトル1の一連の成形が完了する。
【0019】
口部2は、上端が開口しており、飲料の注ぎ口として機能する。口部2の開口は、図示省略したキャップにより開閉される。肩部3は、円形横断面が下方にかけて徐々に拡大してなり、口部2の下端を胴部4の上端につなげる。胴部4は、上下に最大径部12、14を有する。最大径部12、14は、ボトル1において最大外径を有する部分であり、上側の最大径部12が肩部3につながり、下側の最大径部14が底部5につながっている。最大径部14には、周方向に凹溝16が形成されている。胴部4は、最大径部12、14間に、正多角形の横断面からなる胴部中央部18を有する。胴部中央部18は、いわゆるスパイラル形状となっており、正多角形の断面形状がボトルの高さ方向に沿って中心軸Y-Yを中心に回転した形状となっている。他の実施態様では、胴部中央部18を円形の横断面で形成し、胴部中央部18に減圧吸収パネルを形成してもよい。口部2、肩部3及び胴部4の形状は、特に限定されるものではなく、適宜設計することができる。
【0020】
図2A~Dに示すように、底部5は、ボトル底31と、ボトル底31の内側でボトル底31から立ち上がるボトル底山32と、を有する。ボトル底31は、全体として、環状に形成されている。ボトル底山32は、底部5の中央部に位置し、その中心はボトル1の中心軸Y-Y上に位置している。ボトル底山32は、ボトル内方に向かってボトル底31からドーム状に突出していると把握することもできる。
【0021】
ボトル底31は、接地面31a、外側傾斜面31b及び内側傾斜面31cを有する。接地面31a、外側傾斜面31b及び内側傾斜面31cは、いずれも、底面視、円環状に形成されている(参照:
図2C)。
【0022】
接地面31aは、水平面に平行な面(すなわち平坦面)として形成されている。接地面31aは、ボトル1を設置面に自立させた場合に、ボトル1が接触する部位となる。接地面31aの外周縁には、外方かつ上方へと延在する外側傾斜面31bがつながっている。外側傾斜面31bの上端が、胴部4の下端(ここでは最大径部14)につながっている。一方、接地面31aの内周縁には、内方かつ上方へ延在する内側傾斜面31cがつながっている。内側傾斜面31cの上端が、ボトル底山32の下端につながっている。
【0023】
内側傾斜面31cは、外側傾斜面31bよりも、水平面に対する斜度が緩くかつ高さが低くなっている(参照:
図2D)。内側傾斜面31cによって、平坦な接地面31aと比較的急な角度で立ち上がるボトル底山32とを緩やかにつなげるようにしている。
【0024】
ボトル底山32は、頂部41及び周壁部42を有する。
【0025】
頂部41は、周壁部42の上端につながる部分であり、頂部41の中心は、ボトル1の中心軸Y-Y上に位置する。頂部41は、平坦面として形成されてもよいが、ここでは中央をわずかに凹ませて形成されている。具体的には、頂部41は、中央が最も下方に位置するように湾曲した凹部41aと、凹部41aを囲む環状の周縁41bと、を有する。周縁41bは、平面視、円環状に形成されている。周縁41bと接地面31aとの距離が、ボトル底山32の高さを規定する(参照:
図6)。
【0026】
周壁部42は、第1の形状51と、第1の形状51よりもボトル内の空間に向かって突出した第2の形状52と、を周方向に交互に並べて構成されている。第1の形状51と第2の形状52との数は、任意であるが、それぞれ5~10個の範囲であるとよい。例えば10個を超えると、周壁部42の凹凸(第1の形状51に対する第2の形状52の突出量)が小さくなるからである。
図2A~Dに示す例では、それぞれ8個となっている。
【0027】
第1の形状51及び第2の形状52は、各種の形状をとることができる。例えば、第1の形状51は、円筒形状又は円錐形状の側壁の一部から構成することができる。また、第2の形状52は、正面視、三角形又は台形の形状で構成することができる。
図2A~Dに示す例では、第1の形状51は、円錐形状の側壁の一部からなり、下方にかけてボトル外側に傾斜している。また、第2の形状52は、正面視、三角形の形状からなる。
【0028】
別の見方をすると、
図2A~Dに示す例では、周壁部42は、全体としては円錐形状を基本としつつ、この円錐形状の側壁に複数の三角形状をボトル内方へ凸となるようにかつ周方向に均等間隔に形成したものである、と把握することもできる。以下では、第1の形状51が円錐形状の側壁の一部からなり、第2の形状52が正面視三角形の形状からなる例を説明する。
【0029】
周壁部42において、第2の形状52の下端は、ボトル底31の内側傾斜面31cに直接つながる一方、第1の形状51の下端は、隣り合う第2の形状同士52、52の間に位置する平坦な又は湾曲した接続面53を介して内側傾斜面31cにつながる。なお、接続面53の詳細について後述する。
【0030】
第2の形状52は、正面視の形状(三角形)に対応する正面壁52aと、正面壁52aの両側を第1の形状51につなぐ一対の側壁52b、52bと、を有する(参照:
図2A)。正面壁52aは、正面視、底辺を下側とする二等辺三角形で形成されている。他の実施態様では、正三角形で形成されてもよい。正面壁52aは、下方にかけてボトル外側に向かって傾斜している。正面壁52aは、平坦面で形成されてもよいが、ここでは湾曲した面で形成されている。より詳細には、正面壁52aは、曲率中心がボトル1の中心軸Y-Y側に位置する円弧面で形成されている(参照:
図2D)。
【0031】
第2の形状52の下端は、正面壁52aの下端及び一対の側壁52b、52bの下端からなるが、このうち、正面壁52aの下端(二等辺三角形の底辺)が、ボトル底31の内側傾斜面31cにつながっている。一対の側壁52b、52bの下端は、それぞれ、正面壁52aから見て両側に位置する接続面53、53につながっている。
【0032】
周壁部42において、第1の形状51の上端は、頂部41の周縁41bにつながる一方、第2の形状52の上端は、段差54を介して頂部41の周縁41bにつながる。第2の形状52に関して、正面壁52aの上端(二等辺三角形の頂点)は、周縁41bよりも高さベルが低い位置にあり、これにより正面壁52aの上端と周縁41bとの間に段差54が形成されている。
【0033】
接続面53は、ボトル1の中心軸Y-Yから見て、放射状に延在している。接続面53は、平面視、放射方向に縦長の長方形で形成されている。他の実施態様では、例えば台形など、別の形状とすることもできる。接続面53の長辺側が側壁52b、52bにつながり、接続面53の短辺側が第1の形状51の下端及び内側傾斜面31cにつながっている。接続面53は、平坦な又は湾曲した面であればよく、ここでは、ボトル内の空間に向かって凸となるように湾曲している。すなわち、接続面53は、曲率中心がボトル1の中心軸Y-Y側に位置する円弧面で形成されている(参照:
図2D)。
【0034】
接続面53は、全体として、ボトル1の中心軸Y-Yに向かって上向きに傾斜している。そして、接続面53は、第2の形状52の正面壁52a及び第1の形状51の正面壁(ここでは円錐形状の側壁の一部)よりも、水平面に対する斜度(傾斜角度)が緩いものとなっている(参照:
図2D)。水平面に対する斜度が大きい順は、第1の形状51の正面壁、第2の形状52の正面壁52a、接続面53となるが、第1の形状51の正面壁及び第2の形状52の正面壁52aの各斜度に比べると、接続面53の斜度はかなり緩くなっている。
【0035】
以上説明したボトル1の作用効果について説明する。
【0036】
図3及び4は、ボトルの底部を拡大して示しており、(A)は比較例に係る底部5´を示し、(B)は実施形態に係る底部5を示している。なお、比較例に関し、実施形態のボトル1の構成要素と関連した又は同様の構成要素については、実施形態の構成要素の符号に「´」が付けられている。比較例と実施形態との主な相違点は、ボトル底山の周壁部の形状である。
【0037】
図3(A)に示すように、比較例では、ボトル底山32´の周壁部42´は、上側周壁42a´と下側周壁42b´とからなる。下側周壁42b´は、凹凸のない曲面で形成され、上側周壁42a´とボトル底31´との間に介在する。上側周壁42a´は、凹部51´と凸部52´とを周方向に交互に並べて構成される。凹部51´及び凸部52´の各下端は、いずれも、下側周壁42bに直接つながる。凹部51´及び凸部52´の各上端は、いずれも段差なく、頂部41´の周縁41b´に直接つながる。
【0038】
プリフォームに対するインジェクションブロー成形によって、比較例においては、周壁部42´は、下側周壁42b´よりも上側周壁42a´の方が厚肉になる。すなわち、ボトル底山32´の上部である頂部41´及び上側周壁42a´は、肉が溜まりやすい。一方、実施形態においては、ボトル底山32の頂部41から接続面53よりも少し上側までの部分が、肉が溜まりやすい。すなわち、周壁部42では、第1の形状51及び第2の形状52に厚肉部分と薄肉部分とがあり、第1の形状51及び第2の形状52の上部がその下部よりも厚肉になっている。インジェクションブロー成形による延伸によって、口部2以外のボトル全体で配向結晶化は生じるところ、一般に、底部5は、局所的に胴部4よりも延伸倍率は低い。具体的には、ボトル底山32は、胴部4及び底部5のボトル底山32を除く部分よりも延伸倍率が低い。しかし、底部5のボトル底山32の各構成要素の中では、接続面53は、配向結晶化度が高くなるように設計されており、強度・耐熱性が向上している。
【0039】
図4は、ボトル底山の熱変形挙動を説明するための図である。ボトルをホットウォーマー(図示省略)に入れ、ホットウォーマー内の加熱棚にボトルを立てた状態とし、加熱棚から底部5、5´を所定温度以上に加熱したとする。すなわち、接地面31a、31a´を介して加熱エリア(ここでは加熱棚)に接地されたボトルが加熱エリアによって所定温度以上に加熱されたとする。所定温度以上とは、通常使用される温度(例えば55°前後)を十分に超える温度であり、例えば70度前後である。
【0040】
図4(A)に示す底部5´の場合、上昇した内圧によってボトル底山32´の頂部41´が下方に押されると、頂部41´が落ちてくるようになり、ボトル底山32´の肉溜まり部(頂部41´及び上側周壁42a´)が下側周壁42b´に対して反転する(参照:
図5(A))。このようにして底落ちした部位が接地面31a´よりも下方に位置すると、ボトルが傾き、転倒する。
【0041】
これに対し、
図4(B)に示す底部5の場合、上昇した内圧によってボトル底山32の頂部41が下方に押されると、まず、接続面53が落ち込むように変形する。なお、このとき、ボトル底31の内側傾斜面31cも落ち込むように変形する。変形した接続面53が接地面31aを超えて落ち込むと、加熱棚に接地しているボトル部分が、接地面31aから接続面53へと移行する。すなわち、接続面53が、ボトル1の新たな足として機能するようになる。接続面53は、ボトル底山32の周壁部42の周方向に均等間隔で存在するため、複数の接続面53によって、ボトル1が安定して自立する。
【0042】
また、接続面53が新たな「足」として機能するため、ボトル底山32の肉溜まり部(あるいは第1の形状51及び第2の形状52の全体)の反転が抑制される。ボトル底山32では、第1の形状51及び第2の形状52の全体が内圧により収縮方向に潰されるように変形する(参照:
図5(B))。これによって、ボトル内部の上昇した圧力が吸収される。このようなボトル底山32の変形は、ボトル底山32の形状が不可逆的に変化するものである。
【0043】
したがって、実施形態のボトル1によれば、想定よりも高い温度に加熱された場合であっても、全体として、形状品質及び自立性を保つことができる。また、ボトルを小型化することもできる。
【0044】
以上説明したように、実施形態が採用する底部5の設計アプローチは、従来の加温用ボトルの底部に対する設計アプローチとは根本的に異なるものである。すなわち、従来の設計アプローチでは、過剰な加温により底部を変形させないことに着目しているのに対し、実施形態の設計アプローチでは、ボトル底山32に変形が生じた場合を想定し、仮に変形した場合には接続面53を接地箇所にし、それにより自立性と形状品質とを確保している。
【0045】
図6を参照して、寸法の一例を説明する。
ボトル1は小型化することができる。例えばボトル1の内容量は100~350mlとすることができる。また、胴部4の胴径(最大径部12、14の胴径)に対するボトル底山32の高さは、0.2~0.4とすることができ、好ましくは0.3~0.35とすることができる。例えば、胴部4の胴径55mmに対して、ボトル底山32の高さを18mmにすることができる。
【0046】
段差54に関しては、幅(d)が2mm以上で、高さ(e)が1mm以上であることが好ましい。これらの数値とすることで、ボトル底山32の上部に肉が溜まりやすくなるからである。なお、段差54の数は一段に限らず、複数段あってもよい。
【0047】
凹部41aに関しては、深さ(f)が1mm以上であることが好ましい。同様に、ボトル底山32の上部に肉が溜まりやすくなるからである。
【0048】
第1の形状51の傾斜の勾配(g)は、ボトル1の中心軸に対して1~12°であることが好ましく、2~10°であることがより好ましい。10°を超えると、小型化した場合、ボトル底山32の高さを確保しがたくなるからである。また、2°未満であると、ボトル1の製造の際に、ブロー成形機の金型が抜けにくくなるからである(抜き勾配の確保のためである)。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0050】
例えば、第1の形状51及び第2の形状52は、正面視、線対称の形状でもよいし、非線対称の形状でもよい。
【0051】
<さまざまな実施態様に関する追加の考察>
【0052】
[実施態様1]
接地面を含む環状のボトル底の内側で当該ボトル底から立ち上がるボトル底山を備えたプラスチックボトルにおいて、
前記ボトル底山は、第1の形状と、前記第1の形状よりもボトル内の空間に向かって突出した第2の形状と、を周方向に交互に並べて構成された周壁部を有し、
前記第2の形状の下端は、前記ボトル底につながり、
前記第1の形状の下端は、隣り合う第2の形状同士の間に位置する平坦な又は湾曲した接続面を介して前記ボトル底につながる、プラスチックボトル。
【0053】
[実施態様2]
前記第1の形状は、円筒形状又は円錐形状の側壁の一部からなる、実施態様1に記載のプラスチックボトル。
【0054】
[実施態様3]
前記第1の形状は、円錐形状の側壁の一部からなり、下方にかけてボトル外側に傾斜している、実施態様1に記載のプラスチックボトル。
【0055】
[実施態様4]
前記第2の形状は、正面視、三角形又は台形の形状からなる、実施態様1から3のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0056】
[実施態様5]
前記第2の形状は、正面視の形状に対応する正面壁と、前記正面壁の両側を前記第1の形状につなぐ一対の側壁と、を有し、
前記正面壁の下端は、前記ボトル底につながり、
前記一対の側壁の下端は、前記接続面につながる、実施態様4に記載のプラスチックボトル。
【0057】
[実施態様6]
前記正面壁は、下方にかけてボトル外側に向かって傾斜している、実施態様5に記載のプラスチックボトル。
【0058】
[実施態様7]
前記三角形は、底辺を下側とする二等辺三角形である、実施態様4から6のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0059】
[実施態様8]
前記ボトル底山は、前記周壁部につながる頂部を有しており、
前記第1の形状の上端は、前記頂部につながり、
前記第2の形状の上端は、段差を介して前記頂部につながる、実施態様1から7のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0060】
[実施態様9]
前記ボトル底山は、前記周壁部につながる頂部を有しており、
前記頂部は、
中央が最も下方に位置するように湾曲した凹部と、
前記凹部を囲む環状の周縁と、を有する、実施態様1から7のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0061】
[実施態様10]
前記接続面は、傾斜しており、
前記接続面は、前記第1の形状及び前記第2の形状のそれぞれの正面壁よりも、水平面に対する斜度が緩い、実施態様1から9のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0062】
[実施態様11]
前記接続面は、ボトル中心軸から見て、放射状に延在している、実施態様1から10のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0063】
[実施態様12]
前記接続面は、ボトル内の空間に向かって凸となるように湾曲している、実施態様1から11のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0064】
[実施態様13]
前記ボトル底は、
前記接地面と、
前記接地面の外周縁をボトル胴部につなぐ傾斜した外側底面と、
前記接地面の内周縁を前記周壁部の下端につなぐ傾斜した内側底面と、からなり、
前記内側底面は、前記外側底面よりも、水平面に対する斜度が緩くかつ高さが低い、実施態様1から12のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【0065】
[実施態様14]
前記ボトル胴部の胴径に対する前記ボトル底山の高さは、0.2~0.4である、実施態様13に記載のプラスチックボトル。
【0066】
[実施態様15]
前記接地面を介して加熱エリアに接地された当該プラスチックボトルが前記加熱エリアによって所定温度以上に加熱された場合、
前記ボトル底山のうち、前記接続面が落ち込むように変形して前記接地面とともに又は前記接地面を超えて前記加熱エリアに接地するように、前記ボトル底山の形状が不可逆的に変化する、実施態様1から14のいずれかに記載のプラスチックボトル。
【符号の説明】
【0067】
1…ボトル、2…口部、3…肩部、4…胴部、5…底部、12、14…最大径部、16…凹溝、18…胴部中央部、31…ボトル底、31a…接地面、31b…外側傾斜面、31c…内側傾斜面、32…ボトル底山、41…頂部、41a…凹部、41b…周縁、42…周壁部、51…第1の形状、52…第2の形状、53…接続面、Y-Y…中心軸