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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179713
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241219BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20241219BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20241219BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K5/13
C08K5/524
C08K5/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098765
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌和
(72)【発明者】
【氏名】小瀬垣 公穗
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
4J002BP021
4J002EJ016
4J002EJ026
4J002EL097
4J002EL126
4J002EN097
4J002EN107
4J002EU196
4J002EW027
4J002EW067
4J002FD076
4J002FD077
4J002GB01
4J002GB02
4J002GG01
4J002GK00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【解決課題】
パルスドキセノン殺菌を施しても黒点の発生を抑制するパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
条件(A1)を満足するプロピレン系重合体(A)と、条件(B1)を満足するフェノール系酸化防止剤(B)とを含有し、条件(1)を満足することを特徴とするパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(A1)を満足するプロピレン系重合体(A)と、下記条件(B1)を満足するフェノール系酸化防止剤(B)とを含有し、下記条件(1)を満足することを特徴とするパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(A1)
プロピレン系重合体(A)が、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン系ブロック共重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
条件(B1)
フェノール系酸化防止剤(B)が、クロマン骨格を有していない。
条件(1)
パルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物が、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B)0.01~1.2重量部を含有する。
【請求項2】
プロピレン系重合体(A)が、下記条件(A2)及び条件(A3)を更に満足する請求項1に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(A2)
プロピレン系重合体(A)が、プロピレン単独重合体、α-オレフィン含有量が20重量%以下のプロピレン系ランダム共重合体及びα-オレフィン含有量が20重量%以下のプロピレン系ブロック共重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
条件(A3)
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(JIS K7210に準拠、230℃、2.16kg荷重)が0.5~300g/10分の範囲である。
【請求項3】
フェノール系酸化防止剤(B)が、下記条件(B2)を更に満足する請求項1に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(B2)
フェノール系酸化防止剤(B)が、ヒドロキシフェニルプロピオン酸骨格を有するフェノール系酸化防止剤(B-1)及びイソシアヌレート骨格を有するフェノール系酸化防止剤(B-2)から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
【請求項4】
下記条件(D1)を満足する添加剤(D)を更に含有し、下記条件(2)を満足する請求項3に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(D1)
添加剤(D)が、リン系酸化防止剤(D-1)、アミン系酸化防止剤(D-2)及びクロマン骨格を有するフェノール系酸化防止剤(D-3)から成る群から選ばれる少なくとも1種の添加剤である。
条件(2)
パルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物が、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、添加剤(D)を更に0.01~1重量部含有する。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型ウイルスの猛威により、製品の消毒や殺菌の重要性が向上しており、その中でパルスドキセノン殺菌もその手法の1つとして考えられている。ポリプロピレン製品も多岐用途で使用されており、殺菌が必要な場合もあり、パルスドキセノン殺菌の重要性がましてきている。
しかしながら、パルスドキセノン殺菌によって、条件によっては製品中に黒点が発生する問題があり、対応が必要となっており、優れたポリプロピレン系材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-103621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、パルスドキセノン殺菌を施しても黒点の発生を抑制するパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プロピレン系重合体に特定のフェノール系酸化防止剤を特定量含有させることにより、上記課題を解決できることを知見して、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下の構成を有するものである。
【0006】
[1]下記条件(A1)を満足するプロピレン系重合体(A)と、下記条件(B1)を満足するフェノール系酸化防止剤(B)とを含有し、下記条件(1)を満足することを特徴とするパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(A1)
プロピレン系重合体(A)が、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン系ブロック共重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
条件(B1)
フェノール系酸化防止剤(B)が、クロマン骨格を有していない。
条件(1)
パルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物が、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B)0.01~1.2重量部を含有する。
[2]プロピレン系重合体(A)が、下記条件(A2)及び条件(A3)を更に満足する[1]に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(A2)
プロピレン系重合体(A)が、プロピレン単独重合体、α-オレフィン含有量が20重量%以下のプロピレン系ランダム共重合体及びα-オレフィン含有量が20重量%以下のプロピレン系ブロック共重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
条件(A3)
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(JIS K7210に準拠、230℃、2.16kg荷重)が0.5~300g/10分の範囲である。
[3]フェノール系酸化防止剤(B)が、下記条件(B2)を更に満足する[1]又は[2]に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(B2)
フェノール系酸化防止剤(B)が、ヒドロキシフェニルプロピオン酸骨格を有するフェノール系酸化防止剤(B-1)及びイソシアヌレート骨格を有するフェノール系酸化防止剤(B-2)から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
[4]下記条件(D1)を満足する添加剤(D)を更に含有し、下記条件(2)を満足する[1]~[3]のいずれか1項に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物。
条件(D1)
添加剤(D)が、リン系酸化防止剤(D-1)、アミン系酸化防止剤(D-2)及びクロマン骨格を有するフェノール系酸化防止剤(D-3)から成る群から選ばれる少なくとも1種の添加剤である。
条件(2)
パルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物が、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、添加剤(D)を更に0.01~1重量部含有する。
[5][1]乃至[4]の何れか1項に記載のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、パルスドキセノン殺菌を施しても黒点の発生を抑制するパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のパルスドキセノン殺菌用プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B)0.01~1.2重量部を含有することを特徴とする(以下「本発明のプロピレン系樹脂組成物」とも言う)。
以下、本発明のプロピレン樹脂組成物を構成する成分、樹脂組成物の製造方法、成形品について、詳細に説明する。
【0009】
[I]プロピレン系樹脂組成物を構成する成分
1.プロピレン系重合体(A)
条件(A1)
本発明のプロピレン系樹脂組成物で用いられるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン系ブロック共重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である。
プロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン系ブロック共重合体は、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体である。共重合に用いられるα-オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2~20のα-オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα-オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン-1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。
具体的な共重合体の例を挙げると、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-ジエン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ヘキセン-1共重合体、プロピレン-オクテン-1共重合体等を例示できる。このうちプロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体が特に好ましい。
【0010】
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、プロピレン系重合体(A)は、好ましくは、プロピレン単独重合体、α-オレフィン含有量が20重量%以下のプロピレン系ランダム共重合体及びα-オレフィン含有量が20重量%以下のプロピレン系ブロック共重合体から成る群から選ばれる少なくとも1種である(条件(A2))。
プロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン系ブロック共重合体において、α-オレフィン含有量を20重量%以下とすることにより、適切な製品剛性を得る事ができる。
プロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン系ブロック共重合体において、α-オレフィン量は、より好ましくは0.05~10.0重量%、更に好ましくは0.1~5.0重量%程度である。勿論重合段階で、EPRのようなゴム成分をソフトセグメントとして、ポリプロピレン主体の結晶相からなるハードセグメントへ導入した、いわゆるポリプロピレン系重合体アロイも使用できる。
【0011】
プロピレン系重合体(A)において、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン系ブロック共重合体のいずれも使用することができるが、透明性の観点からプロピレン系ランダム共重合体が望ましい。
【0012】
プロピレン系重合体(A)のガラス転移温度は、-100~20℃が好ましい。
【0013】
また、プロピレン系重合体(A)は、一種類であってもよく二種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)は、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.5~300g/10分であることが望ましい(条件(A3))。MFRがこの範囲にあると、樹脂組成物の剛性と耐衝撃性、成形温度に由来する高生産速度に適した樹脂組成物を与え、MFRが0.5g/10分未満では、成形が困難になり、一方、300g/10分を超えると、良好な耐衝撃性が得られなくなる恐れがある。
ここで、230℃におけるMFRは、JIS K7210に準拠して230℃、2.16kg荷重下で測定する値である。
【0015】
プロピレン系重合体(A)として、プロピレン単独重合体を用いる場合のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、90%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは97%以上が望ましい。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が90%未満では、剛性および熱変形温度の低下に起因し、成形時に成形品が変形しやすくなる恐れがあり、逆に立体規則性が向上するほど、剛性や耐熱性も向上し、成形品の変形を防ぐことができる。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は13C-NMR法で測定する値である。
【0016】
該プロピレン系重合体(A)として、プロピレンランダム共重合体(以下、ランダム共重合体ということがある。)を用いる場合の、ランダム共重合体中に占めるα-オレフィン量は、0.1~10.0重量%が好ましい。0.1%未満だと透明性と耐衝撃性が悪化してしまい、逆に10.0%を超えると、剛性が低くなりすぎ、また、成形品の表面にブリードが発生するリスクも高くなる。
【0017】
プロピレン系重合体(A)として、プロピレン系ブロック共重合体、好ましくはエチレン-プロピレンブロック共重合体(以下、エチレン-プロピレンブロック共重合体を「ブロック共重合体」ということがある。)を用いる場合のブロック共重合体中に占めるポリプロピレンセグメントは、70~99重量%が好ましく、より好ましくは86~98重量%であり、エチレン・プロピレン共重合体セグメントは、1~30重量%が好ましく、より好ましくは2~14重量%である。この範囲にあると樹脂組成物の諸機械的な物性向上に適している。
【0018】
また、ポリプロピレンセグメントのアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、90%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは97%以上が望ましい。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が90%未満では成形時に成形品が変形しやすくなる。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は13C-NMR法で測定する値である。
【0019】
さらに、上記ブロック共重合体中の全エチレン含有量は、0.5~12重量%であり、好ましくは2~9重量%である。この範囲にあると樹脂組成物の耐衝撃性に適している。全エチレン含有量が0.5重量%未満であると耐衝撃性が不十分であり、12重量%を超えると剛性が不十分となる。
ここで、エチレン含有量は、IR法で測定する値である。
【0020】
プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。
【0021】
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0022】
メタロセン触媒としては、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0023】
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60-35007号、特開昭61-130314号、特開昭63-295607号、特開平1-275609号、特開平2-41303号、特開平2-131488号、特開平2-76887号、特開平3-163088号、特開平4-300887号、特開平4-211694号、特開平5-43616号、特開平5-209013号、特開平6-239914号、特表平7-504934号、特開平8-85708号の各公報に開示されている。
【0024】
更に、具体的には、メチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2-(4-フェニルインデニル)(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4-メチルシクロペンタジエニル)(3-t-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2-メチル-4-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(3’-t-ブチル-5’-メチル-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4-(1-フェニル-3-メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4,(1-ナフチル)-インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(3-フルオロビフェニリル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることが出来る。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
【0025】
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
【0027】
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0028】
プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常-80~150℃であり、好ましくは40~120℃である。重合圧力は、1~60気圧が好ましく、また得られるプロピレン系重合体の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
【0029】
また、プロピレン系重合体(A)に、メタロセン触媒を用いて製造した重合体を配合する場合、プロピレン系重合体(A)は、メタロセン触媒を用いて製造したものである方が、相溶性が良く、より好ましい。
【0030】
2.フェノール系酸化防止剤(B)
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いられるフェノール系酸化防止剤(B)は、クロマン骨格を有していない(条件(B1))。これにより、パルスドキセノン殺菌による黒点の発生を抑制する事ができる。
【0031】
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いられるフェノール系酸化防止剤(B)の添加量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、0.01~1.2重量部であり(条件(1))、好ましくは0.04~1.0重量部、更に好ましくは0.08~0.8重量部、より好ましくは0.1~0.5重量部、特に好ましくは0.15~0.4重量部である。添加量が0.01重量部以上であると、酸化防止剤としての効果が十分あり、1.2重量部以下では効果見合いの経済的な観点でも好ましい。
【0032】
フェノール系酸化防止剤(B)は、好ましくは、ヒドロキシフェニルプロピオン酸骨格を有するフェノール系酸化防止剤(B-1)及びイソシアヌレート骨格を有するフェノール系酸化防止剤(B-2)から成る群から選ばれる少なくとも1種である(条件(B2))。フェノール系酸化防止剤(B)として、上記のフェノール系酸化防止剤を使用することにより、パルスドキセノン殺菌による黒点の発生を抑制する事ができる。
【0033】
具体的な例として、B―1に該当するフェノール系酸化防止剤としては、1010:テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1076:n-オクタデシル-β-(4-ヒドロキシ3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、AO80:3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]―2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等がある。B-2に該当するフェノール系酸化防止剤としては、AO20:トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート、CY1790:1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート等があり、B-1およびB-2に該当しないその他のフェノール系酸化防止剤Bとしては1330:1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)ベンゼン等がある。
【0034】
3.添加剤(D)
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、好ましくは、更に以下の条件(D1)を満足する添加剤(D)を添加することができる。
条件(D1)
添加剤(D)が、リン系酸化防止剤(D-1)、アミン系酸化防止剤(D-2)及びクロマン骨格を有するフェノール系酸化防止剤(D-3)から成る群から選ばれる少なくとも1種の添加剤である。添加剤(D)を用いる事でパルスドキセノン殺菌による黒点の発生を抑制する事ができる。
【0035】
添加剤(D)の添加量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、0.01~1重量部が好ましく(条件(2))、更に好ましくは0.02~0.8重量部、より好ましくは0.03~0.5重量部、特に好ましくは0.04~0.3重量部、中でも好ましいのは0.04~0.2重量部である。添加剤(D)の添加量が、0.01重量部以上では、酸化防止剤としての効果が十分あり、1重量部以下であると効果見合いの経済的な観点で好ましい。
【0036】
リン系酸化防止剤D-1としては、PEP36:ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、PEP8:ジ-ステアリル-ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、PEP24:ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、IF168:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、PEPQ:テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト等が挙げられる。
【0037】
アミン系酸化防止剤D-2としては、下記式(1)や下記式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
クロマン骨格を有するフェノール系酸化防止剤D-3としては、下記式(3)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
【0041】
【化3】
【0042】
その他、ジ-ステアリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ミリスチル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ラウリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等を使用することもできる。
【0043】
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、上述した成分に加えて、中和剤や造核剤等の添加剤を添加することができる。
【0044】
中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸金属塩、ハイドロタルサイト(商品名:DHT-4A、協和化学工業(株)製の下記式(4)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(商品名、水澤化学工業(株)製の下記式(5)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。
Mg1-xAl(OH)(COx/2・mHO …(4)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
[AlLi(OH)X・mHO …(5)
[式中、Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
【0045】
造核剤としては、公知の造核剤が使用可能であり、例えば、芳香族リン酸金属塩、立体障害性アミド化合物、有機ジカルボン酸金属塩、芳香族カルボン酸金属塩、ソルビトール系若しくはその誘導体、ノニトール系若しくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩又はポリマー核剤等が挙げられる。
【0046】
さらに、その他に、既知の各種添加剤、例えば帯電防止剤、滑剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、染料、顔料等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0047】
[2]プロピレン系樹脂組成物
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、パルスドキセノン殺菌を施しても黒点の発生を抑制するという顕著な効果を有する。
キセノンランプを用いた通常の耐候性試験機では、その波長を太陽光に近づけるべく、必要に応じて紫外線や赤外線制御フィルターを使用するが、パルスドキセノンを照射して殺菌を行う際の雰囲気下ではこれらのフィルターを使用しないため、キセノンランプ耐候性試験の条件下とは異なり、光による劣化に対して影響の大きな紫外線から、温度による劣化への影響が大きい赤外線にかけての幅広いスペクトル分布を有する光がプロピレン系樹脂に同時に照射されることとなる。本発明のプロピレン系樹脂組成物がパルスドキセノン殺菌を施しても黒点の発生が抑制されるという顕著な効果について、その作用機構の詳細は明らかではないが、上記の通り、パルスドキセノン照射時には従来想定されている以上の幅広いスペクトル分布の光がプロピレン系樹脂に同時に照射されることとなり、その作用や樹脂の劣化機構も従来とは異なっていると考えられることから、本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いられるフェノール系酸化防止剤(B)が、この様な複雑な状況下でプロピレン系重合体(A)の劣化を防止し、黒点の発生を抑制するという顕著な効果を示していると考えられる。
【0048】
[3]プロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)とフェノール系酸化防止剤(B)更には、必要に応じて添加剤(D)や他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190~260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
【0049】
[4]成形体
本発明のもう1つの実施態様は、本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体である(以下「本発明の成形体」とも言う)。
本発明の成形体は、上記のプロピレン系樹脂組成物を、公知の押出成形機、射出成形機、ブロー成形機により成形することで得られる。
【0050】
本発明の成形体としては、射出成形品、押出成形品、中空成形品、圧縮成形品、カレンダー成形品、積層成形品、流動浸漬成形品、吹込み成形品、スラッシュ成形品、回転成形品、熱成形品、CCM成形品などがあり、具体的には食品容器(プリン容器、ゼリー容器、ヨーグルト容器、茶碗蒸し容器、インスタントラーメン容器、チルドコーヒー容器、デザート容器、弁当容器等)、キャップ(ペットボトルキャップ、1ピースキャップ、2ピースキャップ、インスタントコーヒーのキャップ等)、医療用器具や容器(ディスポーザブルシリンジ及びその部品、カテーテル・チューブ、輸液バッグ、血液バッグ、真空採血管、手術用不織布、血液用フィルター、血液回路などのディスポーザブル器具や、人工肺、人工肛門などの人工臓器類の部品、ダイアライザー、プレフィルドシリンジ、キット製剤、薬剤容器、試験管、縫合糸、湿布基材、歯科用材料の部品、整形外科用材料の部品、コンタクトレンズのケース、PTP、SP・分包、Pバイアル、目薬容器、薬液容器、液体の長期保存容器等)、医療用容器(輸液パック、日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、筆記用具、)、自動車部品(インパネ、バンパー、灯体等)、電気部品(各種電気機器の筐体等)、太陽電池封止材、フィルム、繊維、シート、などが挙げられる。
【実施例0051】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた物性値の測定法、評価法、樹脂および添加剤は、以下の通りである。
【0052】
<1. 物性値の測定法、評価法>
(1)プロピレン系重合体(A)のエチレン含有量の算出
13C-NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm-1の特性吸収帯を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含有量を測定した。ペレットをプレス成形により約500μmの厚さのフィルムとしたものを用いた。
【0053】
(2)メルトフローレート(MFR):
JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0054】
(3)パルスドキセノン殺菌試験
・射出成形機にて成形品(12cm×12cm×2mm板)を成形し、そこから、評価用の成形品(6.5cm×3.5cm×2mm板)を打ち抜きにて得た。得られた成形品を岩崎電気製多灯式パルスドキセノン照射装置にて、発光時間0.5msecで、6.0J/cmと9.0J/cmを照射して目視で黒点の有無を確認した。
【0055】
<2. 樹脂、添加剤>
2-1.プロピレン系重合体(A)の製造
(1)PP-1の製造方法
特開2011-149980号公報に記載の触媒、重合設備ならびに重合圧力と温度設定条件より該当ポリマーを重合した。第1反応器の分子量制御剤としての水素を水素/プロピレンのモル比:0.00011となるように連続的に供給するとともにプロピレンとともにエチレンをエチレン/プロピレンのモル比:0.058となるように連続的に供給した。別途トリイソブチルアルミニウムを6g/hrで、触媒量を第1反応器生産レートが9kg/hとなるように供給し、反応器内の保有レベルが50容量%となるようにパウダーを抜出した。抜き出したパウダーは、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン-エチレンランダム共重合体を得た。
【0056】
(2)PP-2の製造方法
特開2008-150466号公報に記載の触媒、重合設備ならびに重合圧力と温度設定条件より該当ポリマーを重合した。第1反応器の分子量制御剤としての水素を水素/プロピレンのモル比:0.013となるように連続的に供給するとともにプロピレンとともにエチレンをエチレン/プロピレンのモル比:0.020となるように連続的に供給した。別途トリエチルアルミニウムを触媒中のTi原子1モルに対してモル比が100となるように供給し、触媒量は、第1反応器生産レートが9kg/hとなるように供給し、第1反応器内の保有レベルが50容量%となるようにパウダーを抜出し、第2反応器に供給した。第2反応器の分子量制御剤としての水素を水素/プロピレンのモル比:0.016なるように連続的に供給するとともにプロピレンとともにエチレンをエチレン/プロピレンのモル比:0.036となるように連続的に供給した。この時、第2反応器後の生産レートは14kg/hであった。第2反応器内の保有レベルが60容量%となるようにパウダーを抜出し、抜き出したパウダーは、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン-エチレンランダム共重合体を得た。
【0057】
(3)PP-3の製造方法
特開2015-39816号公報に記載の触媒、重合設備を使用して重合した。第1反応器にて重合温度:75℃、プロピレン分圧:1.8MPa(絶対圧)分子量制御剤としての水素を水素/プロピレンのモル比:0.026となるように連続的に供給するとともに、別途トリエチルアルミニウムを5.2g/hrで、触媒量を20kg/hの生産量となるように供給した。生産したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように20kg/hで連続的に抜出し、第2反応器に連続的に移送した。第2反応器で、重合温度:80℃、モノマー圧力:1.5MPaになるようにプロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で1.1となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.0020となるように連続的に供給すると共に、エチルアルコールを第一反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.6倍モルになるように供給した。第二反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を40kgとなるように連続的に22.5kg/hでベッセルに抜き出し、抜き出したパウダーは、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
【0058】
(4)PP-4の製造方法
特開2015-39816号公報に記載の触媒、重合設備を使用して重合した。第1反応器にて重合温度:75℃、プロピレン分圧:1.8MPa(絶対圧)、分子量制御剤としての水素を水素/プロピレンのモル比:0.053となるように連続的に供給するとともに、別途トリエチルアルミニウムを5.2g/hrで、触媒量を20kg/hの生産量となるように供給した。生産したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように20kg/hで連続的に抜出し、第2反応器に連続的に移送した。第2反応器で、重合温度:80℃、モノマー圧力1.5MPaになるようにプロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.47となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.014となるように連続的に供給すると共に、エチルアルコールを第一反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.1倍モルになるように供給した。第二反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を40kgとなるように連続的に26.7kg/hでベッセルに抜き出し、抜き出したパウダーは、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
【0059】
2-2.添加剤
酸化防止剤B-1
・IR1076:イルガノックス1076(BASF社製)。n-オクタデシル-β-(4-ヒドロキシ3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート。
・IR1010:イルガノックス1010(BASF社製)。テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン。
【0060】
酸化防止剤B-2
・CY1790:サイアノックス1790(サイテックインダストリーズジャパン合同会社製)1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート。
・AO20:アデガスタブAO20(ADEKA社製)。トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート。
【0061】
酸化防止剤D-1
・IF168:イルガフォス168(BASF社製)。トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、PEPQ:テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト。
・PEPQ:フォスタノックスP-EPQ(クライアントジャパン社製)。テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト。
【0062】
酸化防止剤D-3
・ビタミンE:(±)-α-トコフェロール(富士フィルム和光純薬社製)。
【0063】
HALS
・TNV944:キマソーブ944LD(BASF社製)。ポリ[{6一(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5一トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ビペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]。
【0064】
中和剤
・DHT4A:DHT-4A(協和化学工業社製)。マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート。
【0065】
<3.実施例1~16、比較例1~3>
各重合体及び添加剤を表1に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM-35B二軸押出機を用いて、窒素雰囲気下ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて、評価を実施した。それらの評価結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
比較例1と3は、酸化防止剤が添加されていないサンプルで黒点が多数、発生している事が確認できる。また、本発明の添加剤以外の酸化防止剤を使用した比較例2も、黒点が多数、発生している事が分る。
一方で、本発明の実施例1~11は、黒点の発生が少なく、効果が確認できる。実施例1~5は、フェノール系酸化防止剤B-1であるIR1076の量を振った系、実施例6は、実施例3に更にD-1であるIF168を添加した系、実施例7と8はプロピレン系重合体を変更しフェノール系酸化防止剤B-1であるIR1010にD-1であるIF168を添加した系、実施例9はプロピレン系重合体を変更しフェノール系酸化防止剤B-1であるIR1076を使用した系、実施例10はフェノール系酸化防止剤B-1とB-2を併用した系、実施例11はフェノール系酸化防止剤B-2のみを使用した系、実施例12~16に関しても本発明の配合で、それぞれ黒点発生を抑制している事が確認できる。