(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179715
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241219BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241219BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
G05D1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098768
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
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2B043BB04
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2B043EE06
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
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5H301LL01
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL06
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】 動く障害物に対して、自動走行時の安全性をより向上できる自動走行システムを提供する。
【解決手段】
圃場内の作業車両を自動走行させる自動走行システムAであって、
作業車両1は、障害物を検出する障害物検出センサS1と、障害物検出センサS1によって検出された障害物の位置及び形状を示す三次元撮像情報を取得可能な光学式撮像装置S5とを備え、
三次元撮像画像情報から検出された障害物の分類を行う障害物分類処理部t11を備え、
障害物分類処理部t11は、検出された障害物を、移動しない障害物と、移動する障害物とに分類し、
障害物分類処理部t11による障害物の分類結果に応じて、自動走行時における障害物の回避ルートL2を変更可能に構成されたことを特徴とする自動走行システムAによって、上記課題が解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内の作業車両を自動走行させる自動走行システムであって、
前記作業車両は、障害物を検出する障害物検出センサと、前記障害物検出センサによって検出された障害物の位置及び形状を示す三次元撮像情報を取得可能な光学式撮像装置とを備え、
前記三次元撮像画像情報から検出された障害物の分類を行う障害物分類処理部を備え、
障害物分類処理部は、前記検出された障害物を、移動しない障害物と、移動する障害物とに分類し、
前記障害物分類処理部による障害物の分類結果に応じて、自動走行時における障害物の回避ルートを変更可能に構成されたことを特徴とする自動走行システム。
【請求項2】
前記回避ルートを決定する回避ルート決定部と、
障害物の回避範囲を設定可能な回避範囲設定部とを備え、
前記回避ルート決定部は、前記回避範囲設定部によって設定された回避範囲に基づき回避ルートを決定するように構成され、
前記回避範囲は、前記作業車両の機体の中心基準位置に対して、前方回避距離、後方回避距離、左方回避距離、右方回避距離をそれぞれ設定することにより画定される矩形の領域となっていることを特徴とする請求項1に記載の自動走行システム。
【請求項3】
前記作業車両は、装着された作業機の形状に関する情報を、前記三次元撮像情報から取得することで、前記装着された作業機の種類を自動認識するよう構成され、
これにより、前記装着された作業機の作業幅を算出し、算出された作業幅に基づいて、前記回避範囲を設定するよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
障害物との接触を防止する接触防止処理部を備え、
前記接触防止処理部は、自動走行中、設定された走行減速範囲に障害物が侵入すると、障害物が前記走行減速範囲外に移動するまで前記作業車両を減速させ、また、設定された走行停止範囲に障害物が侵入すると、走行停止範囲外に障害物が移動するまで、前記作業車両を停止させるよう構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動走行システム。
【請求項5】
回避ルート決定部は、自動走行時の作業車両の走行速度に応じて、回避ルートの回避角度を、走行速度が所定速度よりも速い場合に、より鈍角とし、また所定速度よりも遅い場合に、より鋭角とするよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載の自動走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業のスマート化のニーズが益々高まっており、作業車両の技術分野においては、GPS等の測位衛星システムを利用し、圃場内において、作業車両を無人操縦により自動走行させ、農作業を行う取り組みがなされている。
【0003】
従来の自動走行システムは、例えば、下記特許文献1に示されるように、作業開始前に、圃場内を一巡する目標走行経路が設定され、自動走行中においては、所定の時間間隔で、作業車両の現在位置を示す位置情報を取得し、設定された目標走行経路に対する自車位置の偏差(方位及び距離のズレ)を算出するよう構成されており、算出された偏差に基づいてステアリングハンドルを自動操舵することで、目標走行経路に沿うように作業車両が自動走行する仕組みとなっている。
【0004】
また、特許文献2には、自動走行中に、作業車両が障害物を検出した場合に、障害物を回避する新たな回避経路を生成し、これにより、作業車両が、自動で障害物を回避して自動走行を継続できるようにした自動走行システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-266608号公報
【特許文献2】特開2022-94624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献2に記載のような従来の自動走行システムは、障害物を回避するための一連の処理において、検出された障害物が動かないことが前提となっている。しかしながら、現実には、人や動物、同じ圃場で走行する作業車両などが障害物として検出された場合、検出後に障害物が動くことが想定されるため、障害物との接触をより確実に回避し、より安全な自動走行を実現する上で、改善の余地が存在するものであった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、動く障害物に対して、自動走行時の安全性をより向上できる自動走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、
圃場内の作業車両を自動走行させる自動走行システムであって、
前記作業車両は、障害物を検出する障害物検出センサと、前記障害物検出センサによって検出された障害物の位置及び形状を示す三次元撮像情報を取得可能な光学式撮像装置とを備え、
前記三次元撮像画像情報から検出された障害物の分類を行う障害物分類処理部を備え、
障害物分類処理部は、前記検出された障害物を、移動しない障害物と、移動する障害物とに分類し、
前記障害物分類処理部による障害物の分類結果に応じて、自動走行時における障害物の回避ルートを変更可能に構成されたことを特徴とする自動走行システムを提供する。
【0009】
上記第1の発明によれば、障害物分類処理部による障害物の分類結果に応じて、自動走行時における障害物の回避ルートを変更可能に構成されたことで、動く障害物に対して、自動走行時の安全性をより向上できる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明の構成に加え、
前記回避ルートを決定する回避ルート決定部と、
障害物の回避範囲を設定可能な回避範囲設定部とを備え、
前記回避ルート決定部は、前記回避範囲設定部によって設定された回避範囲に基づき回避ルートを決定するように構成され、
前記回避範囲は、前記作業車両の機体の中心基準位置に対して、前方回避距離、後方回避距離、左方回避距離、右方回避距離をそれぞれ設定することにより画定される矩形の領域となっていることを特徴とする。
【0011】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、
作業車両の前後左右で、それぞれ、回避距離を定めて回避範囲を設定できるため、畦際等の自動走行にも良好に対応でき、安全性をより向上できる。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明の構成に加え、
前記作業車両は、装着された作業機の形状に関する情報を、前記三次元撮像情報から取得することで、前記装着された作業機の種類を自動認識するよう構成され、
これにより、前記装着された作業機の作業幅を算出し、算出された作業幅に基づいて、前記回避範囲を設定するよう構成されたことを特徴とする。
【0013】
上記第3の発明によれば、上記第2の発明の効果に加え、
作業機の大きさを自動算出して、適切な回避範囲を設定することで、安全性をより向上できる。
【0014】
第4の発明は、上記第1から上記第3のいずれかの発明の構成に加え、
障害物との接触を防止する接触防止処理部を備え、
前記接触防止処理部は、自動走行中、設定された走行減速範囲に障害物が侵入すると、障害物が前記走行減速範囲外に移動するまで前記作業車両を減速させ、また、設定された走行停止範囲に障害物が侵入すると、走行停止範囲外に障害物が移動するまで、前記作業車両を停止させるよう構成されたことを特徴とする。
【0015】
上記第3の発明によれば、上記第1から第3のいずれかの発明の効果に加え、
、障害物と作業車両との距離に応じて、作業車両を減速または停止させることで、安全性をより向上できる。
【0016】
第5の発明は、上記第2の発明の構成に加え、
回避ルート決定部は、自動走行時の作業車両の走行速度に応じて、回避ルートの回避角度を、走行速度が所定速度よりも速い場合に、より鈍角とし、また所定速度よりも遅い場合に、より鋭角とするよう構成されたことを特徴とする。
【0017】
上記第5の発明によれば、上記第2の発明の効果に加え、回避ルートの回避角度を、走行速度が所定速度よりも速い場合に、より鈍角とし、また所定速度よりも遅い場合に、より鋭角とすることで、スリップを防止して安全性を向上できる。加えて、速度を考慮した適切な回避ルートの設計が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、動く障害物に対して、自動走行時の安全性をより向上できる自動走行システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両の平面図である。
【
図4】
図4は、作業車両の目標走行経路を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、光学式撮像装置の検出範囲を示す作業車両の概略平面図である。
【
図7A】
図7Aは、作業機の認識方法を説明する説明図である。
【
図8A】
図8Aは、第1のパターン(最小範囲)における障害物の回避範囲の設定内容を説明する説明図である。
【
図8B】
図8Bは、第2のパターン(左右余裕幅追加)における障害物の回避範囲の設定内容を説明する説明図である。
【
図8C】
図8Cは、第3のパターン(前後余裕幅追加)における障害物の回避範囲の設定内容を説明する説明図である。
【
図9A】
図9Aは、第1回避範囲による障害物の回避ルートの説明図である。
【
図9B】、
図9Bは、第2回避範囲による障害物の回避ルートの説明図である。
【
図9C】、
図9Cは、第3回避範囲による障害物の回避ルートの説明図である。
【
図10A】
図10Aは、障害物の接触防止範囲(作業車両中心)の設定内容を説明する説明図である。
【
図10B】
図10Bは、障害物の接触防止範囲(作業機中心)の設定内容を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、障害物検出時の自動走行システムの処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、別の実施形態による障害物の回避ルートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.自動走行システムAの全体構成>
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムAの構成を示すブロック図である。まず、自動走行システムAの全体構成について以下説明する。
【0021】
図1に示されるように、自動走行システムAは、作業車両1と、情報端末T1と、管理端末T2を含んで構成されている。これらの、作業車両1、情報端末T1、管理端末T2は、図示しない通信装置によって、通信網Nを介して、相互に通信可能となっている。なお、通信網Nによる通信手段として、例えば、携帯電話回線網、パケット回線網、無線LAN等が利用可能である。また、自動走行システムAは、通信網Nを介し、クラウドCL上に存在する各種データを取得可能となっている。
【0022】
作業車両1は、作業機WMを備えて、農作業(以下、単に「作業」ということがある。)を実施しながら圃場を自動走行可能に構成された車両である。作業車両1は、
図1に示されるように、制御機構として、機体の走行を制御する走行制御装置C1、作業機WMを制御する作業機制御装置C2を備えている。これらの制御装置は、複数のECU(Electronic Control Unit)を組み合わせて構成された情報処理装置である。この複数のECUは、それぞれが、演算処理を行うCPUと、演算処理に必要な情報を読み書き可能なメモリとを備えて構成されており、メモリに記憶された各種制御プログラムに従ってCPUが動作することにより、
図1中に機能ブロックとして記載された構成が実現される。
【0023】
また、これらの制御装置の入力側には、障害物検出センサS1、カメラS2、測位装置S3、慣性計測装置S4、光学式撮像装置S5を備えている。なお、これらの詳細な説明は、後述する。
【0024】
情報端末T1は、作業車両1と連係して作業上必要な処理を実行する情報処理装置であり、作業車両1及び管理端末T2との間で、作業上必要な各種情報を送受し、これにより、例えば、作業車両1に作業を実行させ、また、管理端末T2に作業に関する各種の情報を管理や表示させる。この情報端末T1は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などの装置によって構成される。
【0025】
情報端末T1は、障害物分類処理部t11、障害物情報記憶部t12、操作部t13を備えている。なお、これらの詳細な説明は、後述するが、操作部t13は、作業者から各種の操作を受け付ける入力装置であり、例えば、キーボードやタッチパネルなどの装置によって構成される。
【0026】
管理端末T1は、主に管理機能を司る情報処理装置であり、作業車両1及び情報端末T1との間で、作業上必要な各種情報を送受し、これにより、作業に関する情報を管理したり表示する。この管理端末T1は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などの装置によって構成される。
【0027】
<2.作業車両1の構成>
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両1の側面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両1の平面図である。なお、本明細書においては、特に断りがない限り、
図1に矢線Fで示される作業車両1の進行方向となる側を前方とし、作業車両1の進行方向に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という。また、作業車両1の車体を、単に「機体」ともいう。
【0028】
本実施形態における作業車両1は、トラクタとして構成されているが、これに限定されず、田植機、コンバイン、防除機、収穫機等であってもよい。また、作業車両1は、圃場Rを目標走行経路Lに沿って自動走行可能な、所謂、ロボットトラクタとして構成されている。
【0029】
作業車両1は、機体を走行させる走行装置Mを備えており、該走行装置Mは、エンジンm1、前輪m2、後輪m3、トランスミッションm4、フロントアクスルm5、リアアクスルm6、ステアリングハンドルm7等を備え、走行制御装置C1の制御により、ステアリングハンドルm7を自動操舵可能に構成されている。
【0030】
作業車両1の後部には、圃場Rに対して作業を実施する作業機WMが装着される。該作業機WMは、作業機制御装置C2によって駆動制御される。なお、作業機WMは、例えば、耕耘機、草刈機、プラウ、施肥機、又は播種機が、作業車両1の機体本体に対して着脱可能となっている。なお、本実施の形態においては、耕耘機が装着されている。
【0031】
障害物検出センサS1は、超音波センサであり、作業車両1周囲の障害物を検出する機能を果たす。この障害物検出センサS1は、作業車両1前方の障害物を検出する前方障害物センサs11と、作業車両1側方の障害物を検出する側方障害物センサs12、s12とを備えている。
【0032】
カメラS2は、作業車両1周囲を撮影し、デジタル画像データを取得する。このカメラS2は、作業車両1の機体の前後左右にそれぞれ設けられており、作業車両1の全方位に亘って撮影が可能となっている。
【0033】
測位装置S3は、受信アンテナGNSS衛星からの電波を受信する受信アンテナを有し、該受信アンテナにより受信した電波に基づき、作業車両1の現在位置Paの位置情報を取得可能となっている。
【0034】
慣性計測装置S4は、機体の三軸の傾きや加速度、方位を計測する装置(所謂、IMU)であり、該慣性計測装置S4により、機体の走行方向の算出や、測位装置S3の取得した位置情報の修正等が可能となっている。なお、方位の計測においては、これに加えて、方位センサが別途設けられてもよい。
【0035】
光学式撮像装置S5は、3Dライダーであり、パルス状に発光する光学式レーダーを対象に照射して散乱光を撮像することで、三次元撮像情報(3D画像データ)を取得する。取得した該三次元撮像情報の解析により、光学式レーダーの照射範囲(検出範囲)に存在する対象の距離と形状を検出可能となっている。これにより、光学式撮像装置S5は、障害物検出センサS1によって検出された障害物OBの位置及び形状を示す三次元撮像情報を取得可能となっている。また、この光学式撮像装置S5は、作業車両1前方の対象を検出する前方光学式撮像装置s51と、作業車両1後方の対象を検出する後方光学式撮像装置s52とを備えている。なお、光学式撮像装置S5の照射範囲(検出範囲)は、上下左右に調節可能となっている。
【0036】
<3.作業車両1の目標走行経路L>
図4は、作業車両1の目標走行経路Lを説明するための説明図である。
ここで、目標走行経路Lとは、自動走行時に作業車両1が目標とする走行経路を指し、目標走行経路Lを示す情報は、目標走行経路Lの軌跡を示す位置情報を含んで構成される。ここで、目標走行経路Lの算出は、例えば、走行制御装置C1によって、以下のような設計手順で行われる。
【0037】
まず、管理端末T2から圃場の形状、位置、領域を示す圃場情報を取得し、圃場領域R内を、周回状に走行して作業を行う枕地走行領域R1と、直線状に走行して作業を行う直線走行領域R2とに区画分けする。ここで、枕地走行領域R1は、予め設定された作業幅Wを有する枠形状の領域に設定され、枕地走行領域R1の内側に、矩形状の直線走行領域R2が設定される。
【0038】
次に、枕地走行領域R1内を周回状に走行する枕地走行経路l1が設計される(作業経路VI~IX)。続いて、直線走行領域R2内を直線状に走行する複数の直線走行経路l2が設計される(作業経路I~V)。ここで、直線走行経路l2同士は、1つの地点に重複して作業が行われないようにするため、予め設定された作業幅Wと略同一の間隔が設けられる。なお、地点PSは、枕地走行領域R1内における作業車両1の作業開始地点を示し、地点PEは、作業終了地点を示している。
【0039】
次に、一筆書きの要領で直線走行経路l2同士を移動し、また、直線走行経路l2同士の旋回や、直線走行経路l2から枕地走行経路l1へと移動するための、作業を行わない経路である非作業経路l3が設計される。以上のように、算出された目標走行経路Lを示す情報は、走行制御装置C1に記憶される。
【0040】
次に、走行制御装置C1は、作業経路(図示例においては、作業経路I~IX)の走行順を設定する。係る走行順は、所定のルールに基づいて設定されるが、作業者が、情報端末T1の操作により、任意の走行順に変更することもできる。係る走行順の設定情報は、目標走行経路Lを示す情報とともに走行制御装置C1に記憶される。例えば、走行制御装置C1に
図4の図示例においては、走行順は、作業経路I、作業経路II、作業経路III、作業経路IV、作業経路V、作業経路VI、作業経路VII、作業経路VIII、作業経路IXの順に設定される。これにより、走行制御装置C1は、測位装置S3により位置情報を取得しながら、自動走行処理部c11によって、設定された走行順で目標走行経路L上を走行するように、走行装置Mを制御することで、自動走行が可能となっている。
【0041】
<4.作業機WMの認識手段>
作業車両1は、作業機認識部c21により、光学式撮像装置S5を用いて、装着された作業機WMを認識可能となっている。作業機認識部c21による作業機WMの認識手段について、
図5、
図6、
図7A、
図7Bを用いて以下説明する。
【0042】
図5は、光学式撮像装置S5の検出範囲を示す作業車両の概略平面図であり、
図6は、概略側面図である。図中の領域X1は、前方光学式撮像装置s51の検出範囲を示しており、領域X2は、後方光学式撮像装置s52の検出範囲を示している。
図5及び
図6に示されるように、前方光学式撮像装置s51及び後方光学式撮像装置s52は、それぞれ、左右の後輪m3の一部を検出範囲として含むよう構成されている。これにより、作業機認識部c21は、光学式撮像装置S5によって取得された三次元撮像情報の解析により、予め設定された左右の後輪m3,m3の幅と、三次元撮像情報に含まれる作業機1の幅との比較によって、作業車両1に装着された作業機1の作業幅Wを算出し、これを作業機記憶部c22に記憶させる。これにより、装着された作業機1の作業幅Wの自動設定が可能となっている。
【0043】
このとき、作業機認識部c21は、装着された作業機WMの形状を以下のように認識する。
図7Aは、作業機WMの形状の認識方法を説明する説明図である。
図7Bは、同上の説明図である。より詳細には、
図7Aは、光学式撮像装置S5によって撮像された作業機WM装着前の作業車両1の機体後部の形状X3が示されており、
図7Bは、光学式撮像装置S5によって撮像された作業機WM装着後の作業車両1の機体後部の形状X3と、作業機WMの形状X4が示されている。作業機認識部c21は、作業機WMが装着されたことを公知の手段により判定すると、予め撮像されていた機体後部の形状X3と、作業機WMの装着後に撮像された機体後部の形状X3と、作業機WMの形状X4を比較し、装着後に撮像された機体後部の形状X3と、作業機WMの形状X4から、予め撮像されていた機体後部の形状X3を除去する加工処理を行うことで、作業機WMの形状X4を認識する。このようにして生成された作業機WMの形状X4に関する情報は、作業機記憶部c22に記憶される。なお、係る作業機WMの形状X4に関する情報の記憶にあたっては、点群画像で記憶することにより、記憶に必要なデータ容量を低減できる。
【0044】
このような構成によれば、作業機記憶部c22に、予め作業機WMの種類(例えば、耕耘機、草刈機、プラウ、施肥機、又は播種機)ごとに形状のパターンを記憶させておくことで、作業機認識部c21は、上記処理の実行により取得した作業機WMの形状X4の情報から、装着された作業機WMの種類を自動で判別できるため、これにより、作業実行部c23に、作業機WMの種類に応じた適切な制御を自動で実行させることができる。また、装着された作業機1の作業幅Wの自動設定により、後述する障害物回避に係る処理を適切に実行することができる。
【0045】
<5.障害物の回避範囲の設定>
障害物回避処理部c12は、障害物検出センサS1によって障害物が検出されると、障害物を回避するための処理を実行する。係る処理について、詳細は後述するが、回避ルート決定部c13によって、回避ルートを決定するために必要な障害物の回避範囲(すなわち、障害物を回避するための範囲)の設定が、回避範囲設定部c14によって、作業開始前に予め設定可能となっている。なお、係る設定は、情報端末T1の操作部t13の操作により可能となっている。
【0046】
障害物の回避範囲は、以下の3パターンの設定が可能である。
図8Aは、第1のパターン(最小範囲)における障害物の回避範囲の設定内容を説明する説明図である。
第1のパターン(最小範囲)における障害物の第1回避範囲D1は、作業車両1の機体の中心基準位置Prに対して、前方回避距離d1、後方回避距離d2、左方回避距離d3、右方回避距離d4をそれぞれ設定することにより画定される矩形の領域となっており、第1回避範囲D1の範囲は、作業車両1の前後幅、車幅と対応して設定されることが望ましい。第1回避範囲D1の左右幅が、作業幅Wよりも小なる幅であるときは、作業幅Wに自動修正されて設定されるように構成よいされもよい。なお、中心基準位置Prは、自動走行中、作業車両1の現在位置Paと対応する基準位置である。作業車両1の機体の中心基準位置Prに対して、左右それぞれに、回避距離d3、d4を設定可能にしたことで、例えば、圃場側、道路側に対する回避の余裕代を変更可能となり、利便性を向上できる。
【0047】
図8Bは、第2のパターン(左右余裕幅追加)における障害物の回避範囲の設定内容を説明する説明図である。第2のパターン(左右余裕幅追加)における障害物の第2回避範囲D2は、第1回避範囲D1に加え、左右それぞれに、左回避余裕幅d5、右回避余裕幅d6を付加して画定される画定される矩形の領域となっている。この左回避余裕幅d5、右回避余裕幅d6は、それぞれ、任意の幅を設定できる。この第2回避範囲D2によれば、第1回避範囲D1よりも、作業車両1の左右に余裕を持たせた回避が可能となる
。
【0048】
図8Cは、第3のパターン(前後左右余裕幅追加)における障害物の回避範囲の設定内容を説明する説明図である。第3のパターン(左右余裕幅追加)における障害物の第3回避範囲D3は、第1回避範囲D1に加え、左右それぞれに、左回避余裕幅d5、右回避余裕幅d6を付加し、さらに、前方余裕幅d7、後方余裕幅d8を付加して付加して画定される矩形の領域となっている。この前方余裕幅d7、後方余裕幅d8は、それぞれ、任意の幅を設定できる。この第3回避範囲D3によれば、第1回避範囲D1よりも、作業車両1の前後左右に余裕を持たせた回避が可能となる。
【0049】
<6.障害物の回避ルートの決定>
図9Aは、第1回避範囲D1による障害物の回避ルートL2の説明図、
図9Bは、第2回避範囲D2による障害物の回避ルートL2の説明図、
図9Cは、第3回避範囲D3による障害物の回避ルートL2の説明図である。
【0050】
回避ルート決定部c13は、設定された第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3それぞれについて、回避ルートL2を算出可能である。障害物回避処理部c12は、算出された回避ルートL2に基づき、目標走行経路Lを修正することで、自動走行時に検出された障害物を回避できる。作業者は、第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3のいずれの回避ルートL2によって障害物を回避するか予め設定することができ、係る設定は、情報端末T1によって設定できるとともに、適宜設定変更可能である。
【0051】
回避ルート決定部c13は、設定された第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3のいずれについても、回避ルートL2の基本的な算出方法は同様であり、設定された第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3に基づき、回避開始点Pst、回避通過点Pmd、回避終了点Pedを算出し、算出された回避開始点Pst、回避通過点Pmd、回避終了点Pedを結ぶことで、回避ルートL2を算出する。
【0052】
回避開始点Pstは、目標走行経路L上において、第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3の前縁が、障害物に当接するときの中心基準位置Prの位置である。回避通過点Pmdは、障害物の右方(左方でもよい)であって、第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3の左右縁が、障害物に当接するときの中心基準位置Prの位置である。また、回避終了点Pedは、目標走行経路L上において、第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3の後縁が、障害物に当接するときの中心基準位置Prの位置である。
【0053】
<7.障害物の接触防止範囲の設定>
上述のように、障害物回避処理部c12は、障害物検出センサS1によって障害物が検出されると、障害物を回避するための処理を実行する。係る処理について、詳細は後述するが、接触防止処理部c15によって、障害物との接触を防止するために必要な障害物の接触防止範囲(すなわち、障害物との接触を防止するための範囲)の設定が、回接触防止範囲設定部c16によって、作業開始前に予め設定可能となっている。なお、係る設定は、情報端末T1の操作部t13の操作により可能となっている。
【0054】
図10Aは、障害物の接触防止範囲(作業車両中心)の設定内容を説明する説明図である。接触防止範囲は、接触防止処理部c15が、障害物の侵入により走行を停止する範囲である走行停止範囲D4と、障害物の侵入により通常速度(予め設定された自動走行時における通常の速度)よりも減速する範囲である走行減速範囲D5とで構成され、走行減速範囲D5は、走行停止範囲D4の周囲に設定される。
【0055】
走行停止範囲D4は、作業車両1の中心基準位置Prに対して、前方停止距離d41、後方停止距離d42、左方停止距離d43、右方停止距離d44を前後左右それぞれ設定することにより画定される矩形の領域となっている。これらは、作業者が操作部t13を操作することで、それぞれ、任意の距離を設定できるが、障害物との接触防止のため、作業車両1の前後幅、車幅よりも余裕のある距離が設定されることが望ましい。
【0056】
走行減速範囲D5は、作業車両1の中心基準位置Prに対して、走行停止範囲D4の前後左右幅に加え、前方減速距離d51、後方減速距離d52、左方減速距離d53、右方減速距離d54を、前後左右にそれぞれ設定することにより画定される矩形の領域となっている。
【0057】
接触防止処理部c15は、自動走行中、障害物が、設定された走行減速範囲D5に侵入すると、障害物が、走行減速範囲D5外に移動するまで作業車両1を減速させ、また、設定された走行停止範囲D4に侵入すると、障害物が、走行停止範囲D4外に移動するまで、作業車両1を停止させる。これにより、障害物との接触が良好に防止される。
【0058】
図10Bは、障害物の接触防止範囲(作業機中心)の設定内容を説明する説明図である。
接触防止範囲は、上述の作業車両1の中心基準位置Prに対して設定する場合に加えて、作業機WMの中心基準位置Pwmに対しても設定できる。ここで、中心基準位置Pwmは、中心基準位置Prよりも所定距離後方に設定される基準位置である。
【0059】
作業機WM中心の接触防止範囲は、上記と同様に、走行停止範囲D6が、作業機WMの中心基準位置Pwmに対して、前方停止距離d61、後方停止距離d62、左方停止距離d63、右方停止距離d64を前後左右それぞれ設定することにより画定される矩形の領域となっている。また、走行減速範囲D7が、作業機WMの中心基準位置Pwmに対して、、走行停止範囲D6の前後左右幅に加え、前方減速距離d61、後方減速距離d62、左方減速距離d63、右方減速距離d64を、前後左右にそれぞれ設定することにより画定される矩形の領域となっている。
【0060】
接触防止処理部c15は、自動走行中、障害物が、設定された走行減速範囲D6に侵入すると、障害物が、走行減速範囲D6外に移動するまで作業車両1を減速させ、設定された走行停止範囲D7に侵入すると、障害物が、走行停止範囲D7外に移動するまで、作業車両1を停止させる。このように、作業機WMを中心として接触防止範囲を設定して、接触を回避することで、作業機WMが障害物に接触する事態を良好に防止できる。
【0061】
なお、接触防止処理部c15は、走行減速範囲D5または走行減速範囲D7に障害物が存在するとき、作業車両1を減速するが、障害物が走行停止範囲D4または走行停止範囲D6に存在するときは、作業車両1の走行を停止する。すなわち、安全上、走行の減速と停止の両方の条件を満たすときは、停止を優先するよう構成されている。
【0062】
また、接触防止処理部c15は、走行減速範囲D5または走行減速範囲D7に障害物が存在するとき、カメラS2によって取得される障害物のデジタル画像データを管理端末T2へと送信し、カメラ映像出力部t22に映像を出力して管理者が確認できるよう構成されている。また、このとき、アラート出力部t22により、アラートを出力し、管理者に報知するよう構成されてもよい。また、このとき、作業車両1から周囲にブザー等の警報を出力するよう構成されてもよい。これにより、安全性を向上できる。
【0063】
<10.障害物検出時の処理手順>
図11は、障害物検出時の自動走行システムAの処理手順を示すフローチャートである。
障害物検出センサS1によって障害物が検出されると、障害物回避処理部12は、障害物が検出された旨を情報端末T1に通知する。障害物が検出された旨の通知を受けた情報端末T1は、光学式撮像装置S5から、障害物の三次元撮像情報を取得する。次に、情報端末T1の障害物分類処理部t11は、取得した三次元撮像情報に基づき、障害物の移動の有無を判断すると共に、障害物情報記憶部t12に記憶された障害物のパターン情報(障害物の形状・大きさ等の記憶されている)を参照して、検出された障害物を分類する。なお、障害物の分類は、カメラS2によって取得される障害物OBのデジタル画像データの解析により行われてもよい。また、障害物の移動の有無は、撮像時間の異なる三次元撮像情報を比較し、作業車両1の走行速度及び方向を考慮して障害物の位置の変化を算出することで判定できる。
【0064】
図12は、検出された障害物のイメージ図である。
障害物分類処理部t11は、
図12に示されるように、検出された障害物OBを以下の3パターンに分類する。第1のパターンは、動かない障害物(不動障害物ob1)であり、例えば、電柱や木等である。第2のパターンは、動く障害物であって、他の作業車両ob2である。第3のパターンは、動く障害物であって、人や動物等ob3である。なお、例えば、所定時間内に障害物OBが移動しない場合、第1のパターンであると判別でき、障害物OBが移動するとき(すなわち、障害物OBの移動速度が、作業車両1の移動速度と異なる速度で変化するとき)は、その形状や大きさ、容積等が、規定の範囲内であるか否かを判定することにより、第2、第3のパターンを判別できる。
【0065】
障害物分類処理部t11は、検出された障害物OBを分類すると、分類結果に関する情報を、作業車両1に送信する(ステップS1)。このように、検出された障害物OBの分類に関する処理を情報端末Tが行うことで、作業車両1の情報処理に係る負荷を分散し、迅速な処理が可能となっている。
【0066】
作業車両1は、検出された障害物OBの分類結果に関する情報を取得すると、その分類結果に基づき、以下の処理を行う。障害物OBが不動障害物ob1の場合、回避ルート決定部c13によって回避ルートL2を決定し、障害物の回避を実行する(ステップS4、ステップS5)。なお、このとき、第1回避範囲D1、第2回避範囲D2、第3回避範囲D3のいずれの回避ルートL2によって障害物を回避するかは、予め設定されている。
【0067】
作業車両1は、障害物OBの回避が完了すると、管理端末T2に障害物の位置情報を送信し、障害物位置記録部t24に障害物OBの位置を記録する(ステップS5)。このとき、同時に、カメラS2によって取得された障害物OBのデジタル画像データが記録されてもよい。
【0068】
また、障害物OBが他の作業車両ob2の場合、予め設定された障害物OBの接触防止範囲に関する情報を取得し(ステップS8)、接触防止処理部c15によって、接触防止処理を実行し、自動走行中、障害物が、設定された走行減速範囲D5、D7に侵入すると、障害物が、走行減速範囲D5外に移動するまで作業車両1を減速させ、設定された走行停止範囲D4、D7に侵入すると、障害物が、走行停止範囲D4、D6外に移動するまで、作業車両1を停止させる。これにより、障害物OBとの接触が良好に防止される。なお、設定された走行減速範囲D5、D7及び走行停止範囲D4、D6外にあるときは、通常速度による自動走行を行う。そして、障害物OBが検出されなくなる(障害物検出センサS1の検出範囲外に出る)と処理を終了する(ステップS9)。
【0069】
また、障害物OBが人・動物ob3の場合、作業車両1から警告音(ブザー)を出力して、人に危険を報知し、あるいは、動物に対しては、退去を促す。そして、予め設定された障害物OBの接触防止範囲に関する情報を取得し(ステップS8)、接触防止処理部c15によって、接触防止処理を実行する(ステップS9)。
【0070】
ここで、検出された障害物OBが、小鳥等の小動物(所定の設定大きさ、容積以下の動く動物)の場合、パターン1~パターン3のいずれにも該当せず、回避の必要なしと判定して処理を終了する(ステップS10でN)。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、前記した実施形態にのみ限定されない。技術的思想の範囲内で、適宜変更であることは言うまでも無い。
【0072】
<11.回避ルートL2の設定>
図13は、別の実施形態による障害物の回避ルートL2の説明図である。
図13においては、回避ルート決定部c13を、作業車両1の走行速度により、回避ルートL2を変更するよう構成した例を示している。すなわち、作業車両1の走行速度により、回避ルートL2の回避角度(目標走行経路Lの直進方向に対して、障害物OBを回避するために変更した進行方向のなす角)を、所定速度より速い場合は、より鈍角に、所定速度より遅い場合は、より鋭角に修正する。すなわち、
図13に示されるように、走行速度が速い場合は、第1回避開始点Pst1、遅い場合は、第2回避開始点Pst2となり、回避通過点Pmdは、障害物OBの前後で、それぞれ、第1回避通過点Pmd1、第2回避通過点Pmd2が設計され、走行速度が速い場合は、第1回避終了点Ped1、遅い場合は、第2回避終了点Ped2が設計され、これらを結んで、回避ルートL2が決定される。すなわち、回避ルートL2は、速い場合は、回避開始点Pst1、第1回避通過点Pmd1、第2回避通過点Pmd2、回避終了点Ped1を通過するルート、遅い場合は、第2回避開始点Pst、第1回避通過点Pmd1、第2回避通過点Pmd2、第2回避終了点Ped2を通過するルートとなる。また、走行速度が速いほど、第1回避開始点Pst1は進行方向手前側、第1回避終了点Ped1は進行方向後ろ側に設定されることが望ましく、走行速度が遅いほど、第2回避開始点Pst1は進行方向後ろ側、第2回避終了点Ped2は、進行方向手前側に設定されることが望ましい。これにより、スリップを防止して安全性を向上できる。加えて、速度を考慮した適切な回避ルートL2の設計が可能となる。
【0073】
<12.その他の実施形態>
図11において、作業継続性を重視し、検出された障害物OBが、他の作業車両ob2のとき(ステップS7)、また、人・動物ob3のとき(ステップS10)も、障害物回避処理部c12によって、回避ルートL2を生成し、回避を実行するよう構成することもできる。すなわち、
図11におけるステップ7と、ステップ10の直後にそれぞれ、ステップS3~ステップS5と同様の処理を追加する。このとき、障害物OBが動くことを想定して、回避ルートL2は、不動障害物ob1の障害物の回避範囲に対し、障害物の回避範囲を、不動障害物(パターン1)の場合と比較して、他の障害物(パターン2)、人・動物(パターン3)の場合は、前後左右広く設けることが望ましく、さらには、第3のパターン(左右余裕幅追加)における障害物の第3回避範囲D3が自動選択されることが望ましい。したがって、他の障害物(パターン2)、人・動物(パターン3)の場合は、それぞれ、不動障害物(パターン1)の場合よりも、それぞれ、範囲を所定の設定倍率(例えば、パターン2では、パターン1の回避範囲に対して、回避範囲の前後左右幅を1.2倍とし、パターン3では、1.5倍)だけ、拡大するよう構成されることが望ましい。これにより、障害物の分類結果に応じて、自動走行時における障害物の回避ルートを変更可能となり、障害物の種類に応じて、接触防止のために、より最適な回避ルートを算出し、設定することができる。
【0074】
また、
図11において、不動障害物ob1の回避実行中に、パターン2またはパターン3の障害物ob2、ob3が検出された場合は、接触防止処理(ステップS9)を同時に実行してもよい。すなわち、回避ルートL2走行中においても、障害物ob2、ob3が、設定された走行減速範囲D5、D7に侵入すると、障害物が、走行減速範囲D5外に移動するまで作業車両1を減速させ、設定された走行停止範囲D4、D7に侵入すると、障害物が、走行停止範囲D4、D6外に移動するまで、作業車両1を停止させることで、より効率的かつ安全な自動走行が可能となる。
【符号の説明】
【0075】
A 自走走行システム
1 走行車体
M 走行装置
m1 エンジン
m2 前輪
m3 後輪
m4 トランスミッション
m5 フロントアスクル
m6 リアアスクル
m7 ステアリングハンドル
S1 障害物検出センサ
s11 前方障害物センサ
s12 側方障害物センサ
S2 カメラ
S3 測位装置
S4 慣性計測装置
S5 光学式撮像装置
s51 前方光学式撮像装置
s52 後方光学式撮像装置
T1 情報端末
T2 管理端末