(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179716
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/28 20060101AFI20241219BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20241219BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241219BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20241219BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L21/28 301R
H10B43/27
H01L29/78 371
H01L29/58 G
H01L21/88 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098769
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 検世
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA09
4M104BB16
4M104BB30
4M104BB34
4M104CC05
4M104DD03
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4M104EE03
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4M104GG16
4M104HH20
5F033HH19
5F033HH20
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5F083PR03
5F083PR05
5F083PR21
5F101BA45
5F101BB02
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不純物の拡散を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体装置は、第1絶縁膜31を備える。第1絶縁膜31は、絶縁膜5bと、上に電極材層6bを形成するバリアメタル層6aと、の間に設けられる。膜31は、カーボン(C)またはシリコン(Si)を含む層である。第1絶縁膜31を設けることにより、バリアメタル層6aの連続性を改善させることができ、かつ、電極材層6bのプリカーサ由来のフッ素(F)拡散による絶縁膜5bへのダメージを抑制することができ、これにより、電気特性劣化を抑制する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁膜と、
導電層と、
前記第1絶縁膜と、前記導電層と、の間に設けられ、カーボン(C)またはシリコン(Si)を含む膜と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記膜と、前記導電層と、の間に設けられる第1バリアメタル膜をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記導電層は、タングステン(W)を含む、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1絶縁膜と、前記膜と、の間に設けられる第2バリアメタル膜をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2バリアメタル膜は、カーボンまたはシリコンを含む、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導電層は、タングステンを含み、
前記膜は、ボロン(B)をさらに含む、請求項4または請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記導電層は、モリブデン(Mo)を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1絶縁膜と、前記導電層と、の間におけるカーボンの濃度は、所定値以上である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記所定値は、1×1019atom/cm3である、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
絶縁層と前記導電層が交互に第1方向に沿って積層された積層体と、
前記積層体内に前記第1方向に沿って配置された半導体層と、
前記積層体と前記半導体層との間に前記第1方向に沿って配置された第2絶縁膜と、
前記積層体と前記第2絶縁膜との間に前記第1方向に沿って配置された第3絶縁膜と、
前記積層体と前記第3絶縁膜との間に前記第1方向に沿って配置された第4絶縁膜と、
をさらに備え、
前記第1絶縁膜は、前記導電層と、前記絶縁層および前記第4絶縁膜と、の間に配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1絶縁膜に配置され、前記導電層を有する配線をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
第1絶縁膜を形成し、
前記第1絶縁膜の上方に、カーボン(C)またはシリコン(Si)を含む膜を形成し、
前記膜の上方に、導電層を形成する、
ことを具備する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置としてメモリセルを3次元に配置したNANDフラッシュメモリが知られている。また、製造段階等における不純物の拡散は、電気特性の劣化につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不純物の拡散を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体装置は、第1絶縁膜と、導電層と、膜と、を備える。膜は、第1絶縁膜と、導電層と、の間に設けられ、カーボン(C)またはシリコン(Si)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の構造を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図4】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図5】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図6】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図7】第1実施形態の半導体装置の構造を示す断面図。
【
図8A】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図8B】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図8C】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図8D】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図9】第1実施形態におけるカーボンの濃度分布を示すグラフ。
【
図10】第1実施形態の第1比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図11A】第1実施形態の第2比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図11B】第1実施形態の第2比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図12】第2実施形態の半導体装置の構造を示す断面図。
【
図13A】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図13B】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図13C】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図13D】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図14A】第2実施形態の比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図14B】第2実施形態の比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図14C】第2実施形態の比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図15】第3実施形態の半導体装置の構造を示す断面図。
【
図16A】第3実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図16B】第3実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図17】第4実施形態の半導体装置の構造を示す断面図。
【
図18】第4実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図19】第4実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図20】第4実施形態の比較例の半導体装置の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の半導体装置の構造を示す斜視図である。
図1の半導体装置は、例えば3次元型のNANDメモリである。
【0009】
図1の半導体装置は、コア絶縁膜1と、チャネル半導体層2と、トンネル絶縁膜3と、電荷蓄積膜4と、ブロック絶縁膜5と、電極層6とを備えている。ブロック絶縁膜5は、絶縁膜5aと、絶縁膜5bとを含んでいる。電極層6は、バリアメタル層6aと、電極材層6bとを含んでいる。絶縁膜5aは第1絶縁膜の例であり、トンネル絶縁膜3は第2絶縁膜の例であり、チャネル半導体層2は第1半導体層の例である。トンネル絶縁膜3、電荷蓄積膜4、およびブロック絶縁膜5は、セル積層膜とも呼ばれる。
【0010】
本実施形態の半導体装置は、基板上に複数の電極層と複数の絶縁層とが交互に積層されており、これらの電極層および絶縁層内にメモリホールH1が設けられている。
図1は、これらの電極層のうちの1つの電極層6を示している。これらの電極層は例えば、NANDメモリのワード線として機能する。
図1は、基板の表面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、基板の表面に垂直なZ方向とを示している。本明細書においては、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。-Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向とは一致していなくてもよい。
【0011】
コア絶縁膜1、チャネル半導体層2、トンネル絶縁膜3、電荷蓄積膜4、および絶縁膜5aは、メモリホールH1内に形成されており、NANDメモリのメモリセルを構成している。絶縁膜5aは、メモリホールH1内の電極層および絶縁層の表面に形成され、電荷蓄積膜4は、絶縁膜5aの表面に形成されている。電荷蓄積膜4は、外側の側面と内側の側面との間に電荷を蓄積することが可能である。トンネル絶縁膜3は、電荷蓄積膜4の表面に形成され、チャネル半導体層2は、トンネル絶縁膜3の表面に形成されている。チャネル半導体層2は、メモリセルのチャネルとして機能する。コア絶縁膜1は、チャネル半導体層2内に形成されている。
【0012】
絶縁膜5aは、例えばSiO膜(シリコン酸化膜)である。電荷蓄積膜4は、例えばSiN膜(シリコン窒化膜)である。トンネル絶縁膜3は例えば、SiON膜(シリコン酸窒化膜)である。チャネル半導体層2は、例えばポリシリコン層である。コア絶縁膜1は、例えばシリコン酸化膜である。
【0013】
絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極材層6bは、互いに隣接する絶縁層間に形成されており、上側の絶縁層の下面と、下側の絶縁層の上面と、絶縁膜5aの側面とに順に形成されている。絶縁膜5bは例えば、酸化アルミニウムなどの金属絶縁膜である。バリアメタル層6aは、例えばチタン窒化膜である。電極材層6bは、例えばW(タングステン)層である。
【0014】
図2乃至
図6は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0015】
まず、基板11の上方に絶縁膜12を形成し、絶縁膜12上に複数の犠牲層13と複数の絶縁層14とを交互に形成する(
図2)。その結果、絶縁膜12上に、複数の犠牲層13と複数の絶縁層14とを交互に含む積層膜S1が形成される。基板11は例えば、シリコン基板などの半導体基板である。絶縁膜12は、例えばシリコン酸化膜(SiO)である。犠牲層13は例えばシリコン窒化膜(SiN)であり、絶縁層14は例えばシリコン酸化膜(SiO)である。
【0016】
次に、積層膜S1と絶縁膜12とを貫通するメモリホールH1を形成する(
図2)。その結果、基板11と絶縁膜12との間に設けられた層の上面が、メモリホールH1内に露出する。この層の詳細については後述する。
【0017】
次に、メモリホールH1内に、絶縁膜5a、電荷蓄積膜4、トンネル絶縁膜3、およびチャネル半導体層2の一部を順に形成する(
図3)。次に、メモリホールH1の底部から、絶縁膜5a、電荷蓄積膜4、トンネル絶縁膜3、およびチャネル半導体層2の当該一部をエッチングにより除去した後、メモリホールH1内に、チャネル半導体層2の残部とコア絶縁膜1とを順に形成する(
図3)。その結果、メモリホールH1内の積層膜S1および絶縁膜12の側面に、絶縁膜5a、電荷蓄積膜4、トンネル絶縁膜3、チャネル半導体層2、およびコア絶縁膜1が順に形成される。
【0018】
次に、積層膜S1内にスリット(図示せず)を形成し、このスリットを利用してリン酸などの薬液により犠牲層13を除去する。その結果、絶縁層14間に複数の空洞H2が形成される(
図4)。
【0019】
次に、これらの空洞H2内の絶縁層14および絶縁膜5aの表面に、酸化アルミニウムを含む絶縁膜5bを形成する(
図5)。その結果、絶縁膜5aと絶縁膜5bとを含むブロック絶縁膜5が形成される。
【0020】
次に、これらの空洞H2内の絶縁膜5bの表面に、バリアメタル層6a、および電極材層6bを順に形成する(
図6)。その結果、各空洞H2内に、バリアメタル層6aと電極材層6bとを含む電極層6が形成され、絶縁膜12上に、複数の電極層6と複数の絶縁層14とを交互に含む積層膜S2が形成される。犠牲層13を除去して絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極材層6bを形成する処理は、リプレイス処理と呼ばれる。
【0021】
このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される(
図6)。
図1は、
図6に示す半導体装置の一部を示している。
【0022】
次に、絶縁膜5bと電極層6との界面の詳細について説明する。
【0023】
図7は、第1実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
図7は、絶縁膜5bと電極層6との界面を拡大した拡大断面図でもある。
【0024】
半導体装置は、膜31をさらに備える。膜31は、絶縁膜5bと、バリアメタル層6a(電極材層6b)と、の間に設けられる。膜31は、例えば、カーボン(C)を含む層である。後で説明するように、膜31を設けることにより、バリアメタル層6aの連続性を改善させることができる。また、電極材層6bのプリカーサ由来のフッ素(F)拡散による絶縁膜5bへのダメージを抑制することができる。これにより、電気特性劣化を抑制することができる。
【0025】
尚、
図7に示す例では、バリアメタル層6aは、膜31と電極材層6bとの間に設けられる。
【0026】
次に、膜31およびその周辺の構成の製造方法について説明する。
【0027】
図8A~
図8Dは、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0028】
まず、
図8Aに示すように、絶縁膜5b(Al
2O
3)を形成する(
図5を参照)。絶縁膜5bの最表面には、欠損が存在する場合がある。
図8Aに示す例では、一部のAl、Oが欠損している。
【0029】
次に、
図8Bに示すように、絶縁膜5b上に膜31を形成し、チタン(Ti)の初期核吸着を行う。膜31は、例えば、C系ガス(およびNH
3等)を供給することにより形成される。Tiの初期核吸着には、TiCl
4が用いられる。Cは絶縁膜5bのAl
2O
3と吸着しやすく、TiCl
4は膜31のCと吸着しやすい。膜31により、Tiの初期核吸着をより改善することができる。尚、TiCl
4等のバリアメタル層6aのプリカーサは、Cを含んでいなくてよい。
【0030】
次に、
図8Cに示すように、バリアメタル層6aを形成する。バリアメタル層6aは、例えば、窒化チタン(TiN)を含む。バリアメタル層6aは、例えば、吸着されたTiを窒化することにより形成される。バリアメタル層6aは、極薄膜であるため、絶縁膜5bへのTiの初期核吸着が不十分で、一部で不連続な状態(穴が開いた状態)になる可能性がある。しかし、Tiの初期核吸着前に膜31を形成することにより、バリアメタル層6aの連続性を改善させることができる。尚、
図8Cに示す例では、膜31の図示は省略されている。
【0031】
次に、
図8Dに示すように、バリアメタル層6a上に電極材層6bを形成する。電極材層6bは、例えば、LP-CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により形成される。電極材層6bは、例えば、六フッ化タングステン(WF
6)ガスの供給とジボラン(Diborane、B
2H
6)ガスの供給とを繰り返し行うことによって形成される。
【0032】
ここで、電極材層6bのプリカーサ由来のFが絶縁膜5bおよび絶縁層14へ拡散すると、電気特性に影響を与え、デバイス性能の悪化につながる可能性がある。
【0033】
しかし、
図8Dに示すように、膜31により、バリアメタル層6aの連続性が改善し、Fの拡散を抑制することができる。これにより、Fの拡散による絶縁膜5bへのダメージを抑制することができる。この結果、電気特性劣化を抑制することができる。
【0034】
図9は、第1実施形態におけるカーボン(C)の濃度分布を示すグラフである。
図9は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)の分析結果である。
図9は、膜31の製膜条件として、450℃(データD1)および650℃(データD2)の処理温度を用いた場合の例を示す。横軸は、Z方向の深さ(デプス)を示す。縦軸は、C濃度を示す。尚、
図9に示す絶縁層14(SiO2)は、基板11であってもよい。
【0035】
尚、膜31は、絶縁膜5bとバリアメタル層6aとの界面の領域に対応する。
【0036】
データD2のC濃度は、データD1のC濃度よりも高い。これは、膜31の形成をより高い温度で行うことにより、Cが絶縁膜5bに吸着しやすくなり、C濃度が高くなるためである。
【0037】
絶縁膜5bとバリアメタル層6aとの界面は、高いC濃度を有する。一方、絶縁層14は、
図9に示す破線の値と同等または破線の値以下の低いC濃度を有する。尚、Cが絶縁膜5bへ拡散することにより、絶縁膜5bは、絶縁層14のC濃度よりも高いC濃度を有する。絶縁膜5bとバリアメタル層6aとの界面におけるCの濃度、または、絶縁膜5bと電極材層6bとの間におけるCの濃度は、検出下限値として、例えば、1×10
18atom/cm
3以上であるが、所定値以上であることが好ましい。所定値は、例えば、1×10
19atom/cm
3である。
【0038】
以上のように、第1実施形態によれば、膜31は、絶縁膜5bとバリアメタル層6aとの間に設けられ、カーボンを含む。これにより、バリアメタル層6aの連続性を改善させることができる。この結果、電極材層6bのプリカーサ由来のFの拡散を抑制することができる。Fの拡散による絶縁膜5bのダメージを抑制することができ、電気特性劣化を抑制することができる。
【0039】
尚、膜31は、Cに代えて、シリコン(Si)を含んでいてもよい。
【0040】
また、カーボンの濃度の検出は、SIMSに限られず、断面TEM(Transmission Electron Microscope)-EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピングが用いられてもよい。また、カーボンの濃度が高ければ、膜31はXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)によっても検出可能である。
【0041】
また、第1実施形態では、電極材層6bのプリカーサ由来のFが、絶縁層14の方向(Z方向)に拡散することについて説明した。しかし、電極材層6bのプリカーサ由来のFは、絶縁膜5aの方向(X方向およびY方向)にも拡散する可能性がある。絶縁膜5aへのFの拡散は、消去飽和劣化等の電気特性の悪化につながる可能性がある。
【0042】
また、バリアメタル層6aの膜厚が薄いほど、Fの拡散による問題が大きくなる。しかし、
図7に示す構成は、バリアメタル層6aの膜厚によらず適用可能である。例えば、
図7に示す構成は、
図1に示すメモリピラー構造に限られず、絶縁膜、バリアメタル層、および、電極材層が積層される構造、例えば、半導体装置内に用いられる配線等にも適用可能である。この場合、配線は、絶縁膜5bに対応する絶縁膜に配置され、電極材層6bに対応する電極材層を有する。
【0043】
図10は、第1実施形態の第1比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図である。第1実施形態の第1比較例では、膜31が設けられない点で、第1実施形態とは異なっている。
【0044】
図10に示すように、バリアメタル層6aの連続性が悪く、電極材層6bのプリカーサ由来のFが絶縁膜5bへ拡散して、絶縁膜5bへのダメージにつながる。
【0045】
これに対して、第1実施形態では、膜31が設けられる。これにより、バリアメタル層6aの連続性を改善させることができる。この結果、電極材層6bのプリカーサ由来のFの拡散を抑制することができる。Fの拡散による絶縁膜5bのダメージを抑制することができ、電気特性劣化を抑制することができる。
【0046】
図11A、
図11Bは、第1実施形態の第2比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図である。第1実施形態の第2比較例では、膜31が設けられない点で、第1実施形態とは異なっている。尚、
図11A、
図11Bに示す工程は、
図8Aに示す工程の後に行われる。
【0047】
絶縁膜5bを形成した後(
図8Aを参照)、
図11Aに示すように、絶縁膜5bの表面を一部除去し、Tiの初期核吸着を行う。絶縁膜5bの表面は、例えば、エッチングにより除去される。また、例えば、0.5原子層分の最表面の絶縁膜5bが除去される。Tiは、絶縁膜5bの表面のダングリングボンドDBを介して吸着される。
【0048】
次に、
図11Bに示すように、バリアメタル層6aを形成する。
【0049】
第1実施形態の第2比較例では、
図8Cを参照して説明した第1実施形態と同程度のバリアメタル層6aの連続性が得られる。しかし、第1実施形態の第2比較例では、
図11Aに示す工程で絶縁膜5bが薄膜化されてしまうため、消去飽和劣化等の電気特性劣化の可能性がある。
【0050】
これに対して、第1実施形態では、絶縁膜5bの表面のエッチングが行われないため、絶縁膜5bの薄膜化による電気特性劣化を抑制することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
図12は、絶縁膜5bと電極層6との界面を拡大した拡大断面図でもある。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、Cが含まれる膜の位置が異なっている。
【0052】
半導体装置は、膜32をさらに備える。膜32は、バリアメタル層6a(絶縁膜5b)と、電極材層6bと、の間に設けられる。膜32は、例えば、ボロン(B)およびカーボンを含む層である。後で説明するように、膜32を設けることにより、電極材層6bを製膜しながら拡散するFを除去することができる。
【0053】
尚、
図12に示す例では、バリアメタル層6aは、絶縁膜5bと膜32との間に設けられる。
【0054】
第2実施形態による半導体装置のその他の構成は、第1実施形態による半導体装置の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0055】
【0056】
まず、
図13Aに示すように、絶縁膜5bを形成し、バリアメタル層6aを形成し、膜31を形成する。
【0057】
次に、
図13Bに示すように、膜31上に膜33を形成する。膜33は、Bの核形成層であり、B
2H
6を供給することにより形成される。膜31により、膜33のカバレッジを改善させることができる。これは、Bが、バリアメタル層6aと比較して、Cに吸着しやすいためである。また、BがCに吸着しやすいため、Bの吸着量が大きくなる。
【0058】
尚、
図13Cに示すように、膜31のCが膜33へ拡散するにより、膜32が形成される。膜31は、例えば、膜33よりも薄い。膜31と膜33とが混ざって膜32が形成される。
【0059】
次に、
図13Dに示すように、膜32上に電極材層6bを形成する。電極材層6bは、例えば、LP-CVDにより形成される。電極材層6bは、電極材層6bのプリカーサとしてWF
6が供給されることにより形成される。WF
6のFは膜32中のCと結合して、CF
4が生成される。電極材層6bの製膜中に、CF
4が揮発することによりFが除去される。WF
6のFは膜32中のBと結合して、BF
3が生成される。電極材層6bの製膜中に、BF
3が揮発することによりFが除去される。これにより、電極材層6bのプリカーサ由来のFが絶縁膜5bへ拡散することを抑制することができる。
【0060】
膜32は、Fと反応するように、バリアメタル層6a上に配置されている。膜32に含まれるCにより、Fが除去されやすくなり、絶縁膜5bへのFの拡散をさらに抑制することができる。
【0061】
また、Bの吸着量が大きくなることにより、電極材層6bの初期吸着が改善される。これにより、電極材層6bのカバレッジが改善される。また、WF6がバリアメタル層6aに直接接する時間が短くなるため、バリアメタル層6aのエッチング量を低減することができる。また、Bの吸着量が大きくなることにより、より多くのBが拡散するFと反応して、BF3の発生量が大きくなる。これにより、Fが除去されやすくなる。
【0062】
第2実施形態のように、Cが含まれる膜の位置が変更されてもよい。第2実施形態による半導体装置は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
図14A~
図14Cは、第2実施形態の比較例の半導体装置の製造方法を示す断面図である。第2実施形態の比較例は、膜31(膜32)が設けられない点で、第2実施形態とは異なっている。
【0064】
まず、
図14Aに示すように、絶縁膜5bを形成し、バリアメタル層6aを形成する。
【0065】
次に、
図14Bに示すように、膜33を形成する。膜33は、Bの核形成層であり、B
2H
6を供給することにより形成される。尚、バリアメタル層6aが不連続な部分、すなわち、が絶縁膜5b露出している部分では、絶縁膜5bのAl
2O
3およびB
2H
6が反応し、AlBが形成される(Low-k化)。
【0066】
次に、
図14Cに示すように、電極材層6bを形成する。電極材層6bは、例えば、LP-CVDにより形成される。電極材層6bは、電極材層6bのプリカーサとしてWF
6が供給されることにより形成される。例えば、バリアメタル層6aが不連続な部分において、電極材層6bのプリカーサ由来のFが絶縁膜5bおよび絶縁層14へ拡散してしまう。
【0067】
これに対して、第2実施形態では、BがCに吸着しやすいため、膜31を設けることにより、バリアメタル層6aが不連続な部分においても膜33が形成されやすくなる。これにより、バリアメタル層6aが不連続な部分における、電極材層6bのプリカーサ由来のFの拡散を抑制することができる。
【0068】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
図15は、絶縁膜5bと電極層6との界面を拡大した拡大断面図でもある。第3実施形態は、バリアメタル層がCを含む点で、第2実施形態とは異なっている。
【0069】
半導体装置は、バリアメタル層6aに代えて、バリアメタル層6cを備える。バリアメタル層6cは、Cを含む。すなわち、第3実施形態のバリアメタル層6cは、第2実施形態のバリアメタル層6aと比較して、高濃度のCを含む。バリアメタル層6cは、例えば、TiCNを含む。
【0070】
第3実施形態による半導体装置のその他の構成は、第3実施形態による半導体装置の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0071】
【0072】
まず、
図16Aに示すように、絶縁膜5bを形成し、バリアメタル層6aおよび膜31を交互に形成し、電極材層6bを形成する。
図16Aに示す例では、2つのバリアメタル層6aの間に膜31が形成される。
【0073】
尚、
図16Bに示すように、膜31のCがバリアメタル層6aへ拡散することにより、バリアメタル層6cが形成される。また、電極材層6dの形成時に、バリアメタル層6cの最表面にB
2H
6が供給される。バリアメタル層6c中のCとB
2H
6とが反応することにより、BおよびCを含む極薄い膜32が、バリアメタル層6cと電極材層6bとの間に形成される。
【0074】
また、電極材層6bは、電極材層6bのプリカーサとしてWF6が供給されることにより形成される。WF6のFは膜32およびバリアメタル層6c中のCと結合して、CF4が生成される。電極材層6bの製膜中に、CF4が揮発することによりFが除去される。WF6のFは膜32中のBと結合して、BF3が生成される。電極材層6bの製膜中に、BF3が揮発することによりFが除去される。これにより、電極材層6bのプリカーサ由来のFが絶縁膜5bへ拡散することを抑制することができる。
【0075】
膜32およびバリアメタル層6cは、Fと反応するように配置されている。膜32(膜31)およびバリアメタル層6cに含まれるCにより、Fが除去されやすくなり、絶縁膜5bへのFの拡散をさらに抑制することができる。
【0076】
尚、バリアメタル層6aおよび膜31の交互形成に代えて、バリアメタル層6cを直接形成してもよい。
【0077】
また、膜32がCに代えてSiを含む場合、バリアメタル層6cは、Cに代えて、Siを含んでいてもよい。
【0078】
第3実施形態のように、バリアメタル層がCを含んでいてもよい。第3実施形態による半導体装置は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(第4実施形態)
図17は、第4実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
図17は、絶縁膜5bと電極層6との界面を拡大した拡大断面図でもある。第4実施形態は、電極材層の材料が異なる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0080】
半導体装置は、電極材層6bに代えて、電極材層6dを備える。電極材層6dは、例えば、モリブデン(Mo)層である。
【0081】
また、第4実施形態では、バリアメタル層6aが設けられない。これは、電極材層6bが形成されないため、電極材層6bのプリカーサ由来のFの拡散を抑制する必要がないためである。
【0082】
膜31は、絶縁膜5bと電極材層6dとの間に設けられる。膜31は、例えば、カーボン(C)を含む層である。後で説明するように、膜31を設けることにより、拡散するO*を膜31でトラップすることができ、O*が絶縁膜5bおよび絶縁層14へ拡散することによる電気特性劣化を抑制することができる。
【0083】
第4実施形態による半導体装置のその他の構成は、第1実施形態による半導体装置の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0084】
図18は、第4実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0085】
まず、絶縁膜5bを形成し、膜31を形成し、電極材層6dを形成する。電極材層6dの核形成層の原料ガスとして、例えば、NH3が用いられる。O*は、電極材層6dから絶縁膜5bへ拡散する。膜31は、絶縁膜5bの手前で拡散するO*をトラップする。これにより、O*が絶縁膜5bへ拡散することによる電気特性劣化を抑制することができる。
【0086】
図19は、第4実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0087】
電極材層6dは、電極材層6dのプリカーサとしてMoO2Cl2が供給されることにより形成される。膜31により、C-Clを介して電極材層6dのプリカーサを吸着しやすくして、プリカーサの吸着量を大きくすることができる。
【0088】
図20は、第4実施形態の比較例の半導体装置の構造を示す断面図である。第4実施形態の比較例では、膜31が設けられない点で、第4実施形態とは異なっている。
【0089】
図20に示すように、膜31が設けられないため、O
*が絶縁膜5bおよび絶縁層14へ拡散してしまう可能性がある。O
*が絶縁膜5bおよび絶縁層14へ拡散すると、電気特性に影響を与え、デバイス性能の悪化につながる可能性がある。
【0090】
これに対して、第4実施形態では、膜31により、拡散するO*を膜31でトラップすることができ、O*が絶縁膜5bへ拡散することによる電気特性劣化を抑制することができる。
【0091】
第4実施形態のように、電極材層の材料が変更されてもよい。第4実施形態による半導体装置は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1・・・コア絶縁膜、2・・・チャネル半導体層、2a・・・半導体層、2b・・・半導体層、3・・・トンネル絶縁膜、4・・・電荷蓄積膜、5・・・ブロック絶縁膜、5a・・・絶縁膜、5b・・・絶縁膜、6・・・電極層、6a・・・バリアメタル層、6b・・・電極材層、11・・・基板、12・・・絶縁膜、13・・・犠牲層、14・・・絶縁層、15・・・絶縁膜、16・・・電極層、16a・・・酸化膜、17・・・接続層、7a・・・酸化膜、18・・・絶縁膜、21・・・絶縁膜、22・・・ソース線、22a・・・金属層、22b・・・下部半導体層、22c・・・上部半導体層、22d・・・中間半導体層、22e・・・酸化膜、22f・・・酸化膜、23・・・絶縁膜、24・・・半導体層、25・・・絶縁膜、26・・・絶縁膜、27・・・ゲート層、27a・・・酸化膜、28・・・絶縁膜、29・・・絶縁膜、31・・・膜