(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179720
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電子デバイス装着用基材
(51)【国際特許分類】
B32B 15/04 20060101AFI20241219BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20241219BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241219BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B15/04 Z
B32B15/20
B32B15/08 J
B32B27/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098776
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 真平
(72)【発明者】
【氏名】小賦 雄介
(72)【発明者】
【氏名】林 賢治
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20C
4F100AB10A
4F100AB10C
4F100AB33A
4F100AB33C
4F100AK02D
4F100AK03D
4F100AK13B
4F100AK25E
4F100AK42D
4F100AK46D
4F100AK49D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA02B
4F100EH66C
4F100GB43
4F100JD01C
4F100JD09E
4F100JD15B
4F100JK17
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】水分の透過を防止させて電子デバイスを乾燥状態に保持することが可能であるとともに、フレキシブル性に優れた電子デバイス装着用基材を提供する。
【解決手段】金属箔(A)、吸湿層およびバリアシートが、この順に積層されており、前記金属箔(A)の厚みが5~20μmであることを特徴とする電子デバイス装着用基材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔(A)、吸湿層およびバリアシートが、この順に積層されており、
前記金属箔(A)の厚みが5~20μmであることを特徴とする電子デバイス装着用基材。
【請求項2】
前記金属箔(A)がアルミニウムから形成される請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項3】
前記吸湿層は、イオン性ポリマー(i)中に吸湿剤(ii)が分散された樹脂組成物を含む請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項4】
前記バリアシートは樹脂層を含み、該樹脂層の少なくとも一方の面に無機バリア層を有する請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項5】
前記樹脂層は、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂または環状オレフィン系樹脂の少なくとも1つから形成される請求項4に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項6】
前記無機バリア層は、金属、或いは金属酸化物の蒸着膜である請求項4に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項7】
前記バリアシートはアルミニウムから形成された金属箔(B)を有し、該金属箔(B)の厚みが5~20μmである請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項8】
前記金属箔(A)と前記吸湿層の間、又は前記吸湿層と前記バリアシートの間の少なくとも一つの箇所に、準吸湿層が設けられている請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項9】
前記準吸湿層は、イオン性ポリマー、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂の少なくとも1つから形成される請求項8に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項10】
前記金属箔(A)または前記バリアシートの何れか一方の面であって、前記吸湿層が積層されていない側の面に紫外線遮断層が設けられている請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
【請求項11】
全体の厚みが25~250μmである請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス装着用基材に関するものであり、より詳細には、水分を遮断及び吸収させて、電子デバイスを乾燥状態に保持するために使用される電子デバイス装着用基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥剤が分散されている吸湿性樹脂層を備えた吸湿シートが、吸湿や防湿のために広く使用されている。
このような吸湿シートとしては、種々の層構成を有するものが提案されており、特許文献1には、乾燥剤層と、乾燥剤の一方の面に設けられた透湿性シートと、乾燥剤層の他方の表面に設けられた粘着剤層とからなる吸湿シートが提案されており、透湿性シートとしては、セロハンシート、アセテートシート、ナイロンシートなどが使用されることが記載されている。
【0003】
ところで、近年において開発された有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、太陽電池パネル、液晶タッチパネル、電子ペーパーなどの電子デバイスは、電荷のリークを嫌うため、その回路基板などを形成するプラスチック基材或いは回路基板を封止するフィルムなどのプラスチック基材に対して高い水分バリア性が要求される。
【0004】
しかるに、特許文献1等に開示されている公知の吸湿シートは、上記のような電子デバイスの内部を乾燥状態に保持するための封止材としては、満足し得るような性能を示さない。即ち、デバイスの外部から侵入する大量の水分を吸収してしまうことで、吸湿シート内に存在する乾燥剤が短期間で飽和状態に達してしまう。水分吸収性が損なわれたり、或いは吸収した水分がデバイス内部に放出されてしまうことから、さらなる改善が必要である。
【0005】
また、特に電子デバイスは構造が複雑化していることから、封止フィルムなどのプラスチック基材に対して、設置や貼り付け等の際に曲げ応力が加わる場合があるが、そのような応力を受けた場合にも、水分バリア性が損なわれないようなフレキシブル性が要求されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、水分に対して優れたバリア性が長期にわたって安定に発揮される水分バリア性積層体(フィルム)が本出願人により提案され、既に特許されている。
【0007】
特許文献2の技術は、高湿度雰囲気側に配置される無機バリア層と吸湿層との間に、水分拡散性に優れた有機層を10μm以上の厚みで厚く形成することにより、吸湿層の失活を有効に抑制し、長期にわたって、優れた水分バリア性を発揮させるという技術である。即ち、無機バリア層には、少なからずクラックなどの欠陥が局部的に形成されており、これらの欠陥を通って、水分が吸湿層に集中して流れ込むことにより、吸湿層が速く消耗するが、特許文献2の技術では、無機バリア層の欠陥を通って流れた水分は、大きな厚み(10μm以上)の有機層によって、速やかに拡散されるため、局部的に集中して吸湿層に水分が流れ込むという不具合が有効に防止され、これにより、吸湿層の消耗が緩和され、優れた水分バリア性が長期にわたって発揮されるというものである。
【0008】
しかしながら、特許文献2による水分バリア性の長寿命化には限界があり、さらに、水分バリア性を長期にわたって発揮させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-326838号公報
【特許文献2】特許第6657651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、水分の透過を防止して電子デバイスを乾燥状態に保持することが可能であるとともに、フレキシブル性に優れた電子デバイス装着用基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
金属箔(A)、吸湿層およびバリアシートが、この順に積層されており、
前記金属箔(A)の厚みが5~20μmであることを特徴とする電子デバイス装着用基材が提供される。
【0012】
本発明の電子デバイス装着用基材においては、
(1)前記金属箔(A)がアルミニウムから形成されること、
(2)前記吸湿層は、イオン性ポリマー(i)中に吸湿剤(ii)が分散された樹脂組成物を含むこと、
(3)前記バリアシートは樹脂層を含み、該樹脂層の少なくとも一方の面に無機バリア層を有すること、
(4)前記樹脂層は、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂または環状オレフィン系樹脂の少なくとも1つから形成されること、
(5)前記無機バリア層は、金属、或いは金属酸化物の蒸着膜から形成されること、
(6)前記バリアシートはアルミニウムから形成された金属箔(B)を有し、該金属箔(B)の厚みが5~20μmであること、
(7)前記金属箔(A)と前記吸湿層の間、又は前記吸湿層と前記バリアシートの間の少なくとも一つの箇所に、準吸湿層が設けられていること、
(8)前記準吸湿層は、イオン性ポリマー、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂の少なくとも1つから形成されること、
(9)前記金属箔(A)または前記バリアシートの何れか一方の面であって、前記吸湿層が積層されていない側の面に紫外線遮断層が設けられていること、
(10)全体の厚みが25~250μmであること、
が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子デバイス装着用基材は、金属箔(A)により大部分の水分の透過を遮断し、金属箔(A)のピンホールを透過した微量の水分についても吸湿層に吸収される。さらに、吸湿層のデバイス側の面に、バリアシートがさらに設けられており、吸湿層で吸収しきれなかった水分の透過が遮断される。結果としてデバイスへの水分の侵入を防止し、当該デバイスを長期にわたって乾燥状態に保持することが可能となる。
また、本発明の電子デバイス装着用基材の別の態様においては、バリアシートにより、大部分の水分の透過を遮断し、バリアシートを透過した微量の水分についても吸湿層に吸収される。さらに、吸湿層のデバイス側の面に、金属箔(A)がさらに設けられており、吸湿層で吸収しきれなかった水分の透過が遮断される。結果としてデバイスへの水分の侵入を防止し、当該デバイスを長期にわたって乾燥状態に保持することが可能となる。
さらに、本発明の電子デバイス装着用基材は、フレキシブル性を有しており、耐屈曲性に優れる。即ち、本発明の電子デバイス装着用基材は、取り扱いが容易であるとともに、曲げ等の応力が加わっても、基材の水分バリア性は損なわれない。
【0014】
本発明において、この電子デバイス装着用基材は、金属箔を備えているため、基本的には、デバイスの光透過性が要求されない部位(例えば、太陽電池のバックシート、太陽電池の他の非受光面或いは有機エレクトロルミネッセンス素子の光非放射面、或いはこれらのデバイスの側面など)に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の電子デバイス装着用基材の層構造の一例を示す概略断面図。
【
図2】本発明の電子デバイス装着用基材の層構造の別の一例を示す概略断面図。
【
図3】本発明の電子デバイス装着用基材の層構造のその他の別の一例を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至
図3を参照して、全体として1で示す本発明の電子デバイス装着用基材は、金属箔(A)3、吸湿層9、バリアシート11をこの順に有している。
【0017】
<金属箔(A)3>
金属箔(A)3は、吸湿層9の外面側或いはデバイス側の一方の面に設けられる。
【0018】
金属箔(A)3が、吸湿層9の電子デバイス側に設けられる場合には、デバイスへ侵入しようとする水分(水蒸気)の大部分を遮断する役割を有する。金属箔(A)3が、吸湿層9の電子デバイス側に設けられる場合には、吸湿層9で吸収しきれなかった水分を遮断する役割を有する。結果として、デバイス内部を長期にわたって乾燥状態に保持することが可能となる。
【0019】
金属箔(A)3は、フレキシブル性、薄膜のしやすさ或いはコスト削減の観点から、アルミニウムから形成されることが好ましい。
金属箔(A)3の厚みは5~20μm、より好ましくは6~20μm、特に好ましくは6~15μmである。5μm未満の厚みの金属箔(A)3は製造が困難である。一方、20μmを超える厚みの金属箔(A)3ではフレキシブル性が不十分となり、取り扱いが難しくなる。
【0020】
ここで、フレキシブル性とは、耐屈曲性ともいい、折り曲げ等に対して耐久性がありながらも、柔軟性を有する性質をいう。金属箔(A)3は薄ければ薄いほどフレキシブル性に優れている。また、薄くなるほど金属箔(A)3の使用量を低減することができるため、基材1の全体として製造コストを削減することもできる。
【0021】
しかしながら、一般的に、金属箔(A)3は薄くなるほどピンホール数が増加していくことが知られている。そのため、金属箔(A)3の厚みが大きい場合に比べて、金属箔(A)3の厚みが小さい場合には、透過する水分量が多くなってしまい、十分な水分バリア性が発揮できないおそれがある。
そこで、本願発明では、吸湿層9の外面側に金属箔(A)3を設ける場合には、吸湿層9が、金属箔(A)3のピンホールを透過してしまった微量の水分を吸収することができるため、電子デバイスへの水分透過が防止され、電子デバイスを乾燥状態に維持することができる。即ち、外部からデバイスに侵入しようとする大部分の水分は金属箔3により遮断されるのであるが、金属箔(A)3のピンホールを透過した微量の水分についても、吸湿層9により吸収されるため、金属箔(A)3の厚みが薄いことに起因する水分バリア性の低下を吸湿層9が補完する関係となっているのである。
また、吸湿層9の電子デバイス側に金属箔(A)3を設ける場合には、金属箔(A)3は、吸湿層9で吸収しきれなかった水分を遮断する役割を有する。このとき、金属箔3に到達する水分は極めて微量であり、金属箔(A)3の厚みが薄いことによるピンホール増加に伴う水分透過の影響はほとんどない。
【0022】
<保護樹脂層5>
また、金属箔(A)3のみを有する構造でもよいが、金属箔(A)3に後述する接着剤層7を介して保護樹脂層5を形成しておいてもよい。保護樹脂層5は、金属箔(A)3の傷付や酸化劣化を防止するために設けられる樹脂層である。そのため、特に金属箔(A)3が吸湿層9の外面側に設けられる場合には、保護樹脂層5を有することが好ましい。
保護樹脂層5は、それ自体公知の種々の樹脂を用いて形成されるが、一般的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂やポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、好ましくはポリエステル樹脂により形成される。
このような保護樹脂層5は、通常、1~200μm程度の厚みを有していればよい。
【0023】
<接着剤層7>
接着剤層7は、金属箔(A)3及び保護樹脂層5を接着する層である。
【0024】
上記の接着剤層7の形成に使用される接着剤としては、ドライラミネート接着剤として知られているエポキシ系接着剤やウレタン系接着剤が好適である。
【0025】
エポキシ系接着剤;
上記のエポキシ系接着剤は、液状のエポキシ樹脂をエポキシ硬化剤により硬化させて接着するものである。
かかるエポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有する液状樹脂であり、エピクロルヒドリンとフェノール化合物やアミン化合物、カルボン酸などとの反応に得られるもの、ブタジエンなどの不飽和化合物を有機過酸化物などにより酸化することによって得られるものなどが代表的であり、何れのタイプのものも使用することができる。
【0026】
エポキシ系接着剤の具体例としては、これに限定されるものではないが、ビスフェノールA型或いはビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
本発明においては、特にグリシジルアミン型エポキシ樹脂が、弾性率の高い接着剤層7を形成できるという点で好適である。
【0027】
さらに、エポキシ硬化剤としては、アミン系、酸無水物、ポリアミドなど、公知のものを使用することができるが、特に弾性率が高く、熱収縮に追随しやすい塗膜(接着剤層7)を形成できるという観点から、アミン系硬化剤、中でもメタフェニレンジアミンに代表される芳香族ポリアミンが好適に使用される。
【0028】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、エポキシ樹脂が有するエポキシ当量に応じて、十分な硬化膜が形成されるように設定すればよい。
【0029】
ウレタン系接着剤;
ウレタン系接着剤は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応物からなる。この接着剤は、通常、アミン系触媒や金属触媒或いはリン酸変性化合物などの公知の硬化触媒を含んでいる。硬化触媒の量は、下地の樹脂の熱変形を伴わないような温度及び時間で緻密な硬化膜(接着剤層7)が形成し得るように硬化触媒の種類に応じて設定される。
【0030】
ポリウレタン接着剤の形成に使用されるポリオールは、一分子中にOH基を2つ以上有している化合物であり、例えば、以下の化合物が代表的である。
ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-ヒドロキシ化合物;
1分子中に2個以上のOH基を含有するポリエステルポリオール;
1分子中に2個以上のOH基を含有するポリエーテルポリオール;
1分子中に2個以上のOH基を含有するポリカーボネートポリオール;
1分子中に2個以上のOH基を含有するポリカプロラクトンポリオール;
1分子中に2個以上のOH基を含有するポリアクリルポリオール;
本発明において最も好適なポリオールは、ポリエステルポリオールである。
【0031】
また、ポリオールと反応させるポリイソシアネートは、一分子中にNCO基を2つ以上有している化合物である。その具体例としては、これに限定されるものではないが、以下の化合物を例示することができる。
エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン等の脂環族イソシアネート;
キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)ベンゼン、ビス(イソシアネートメチル)ナフタリン、ビス(イソシアネートメチル)ジフェニルエーテル等の芳香族イソシアネート;
チオジエチルジイソシアネート等の含イオウ脂肪族イソシアネート;
ビス[2-(イソシアナートメチルチオ)エチル]スルフィド等の脂肪族スルフィド系イソシアネート;
ジフェニルスルフィド-2,4’-ジイソシアネート等の芳香族スルフィド系イソシアネート;
ジフェニルジスルフィド-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジスルフィド系イソシアネート;
ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族スルホン系イソシアネート;
4-メチル-3-イソシアネートベンゼンスルホニル-4’-イソシアネートフェノールエステル等のスルホン酸エステル系イソシアネート;
4-メチル-3-イソシアネートベンゼンスルホニルアニリド-3’-メチル-4’-イソシアネート等の芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート;
チオフェン-2,5-ジイソシアネート等の含イオウ複素環イソシアネート;
【0032】
上記のポリイソシアネートは、通常、前述したポリオールが有している水酸基1モル当り、イソシアネート基(NCO基)が0.8~1.2モル程度となる量で使用される。
【0033】
上述したエポキシ系接着剤及びウレタン系接着剤は、炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系等の揮発性有機溶剤を用いて、所定の部位に塗布し、乾燥することにより、接着剤層7を形成する。このようにして形成されている接着剤層7は、通常、30~50℃程度の温度で24時間以上保持することにより硬化する。
【0034】
接着剤層7の厚みは0.1~10μm、好ましくは2~6μmである。接着剤層7の厚みが0.1μm未満の場合、層間での接着性が不十分となる可能性がある。接着剤層7の厚みが10μmを超える場合、層間での接着性は確保できる一方、製造コストが不必要に増加する。
【0035】
<吸湿層9>
吸湿層9は、水分トラップ層とも呼ぶことができる。吸湿層9は、その外面側に設けられた金属箔(A)3或いはバリアシート11を透過した微量の水分を吸収させる層であり、樹脂中に吸湿剤が分散されている層である。本発明においては、デバイスへ侵入しようとする水分の大部分が金属箔(A)3又はバリアシート11により遮断されることから、吸湿層9が膨潤しにくくなるため、吸湿層9の水分吸収能力が長期に維持される。
【0036】
このような吸湿層9は、樹脂マトリックス中に吸湿剤を分散させたものであるが、特に、水分に対する高いバリア性が要求される場合には、水分捕捉性が優れ、しかも水分吸収に起因する膨潤などの変形が有効に回避されているという観点から、前述した特許文献2に記載されているように、イオン性ポリマー中に吸湿剤が分散されている層であることが好ましい。
【0037】
上記のイオン性ポリマーは、この吸湿層9のマトリックスを形成するものであり、イオン性基としてカチオン性基(NH2基など)を有するカチオン性ポリマーと、イオン性基としてアニオン性基(COONa基,COOH基など)を有しているアニオン性ポリマーがあり、吸着剤としては、一般に、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いものが使用される。
【0038】
即ち、上記のイオン性ポリマーをマトリックスとする吸湿層9では、金属箔(A)3又はバリアシート11を通って流入した微量の水分は、このマトリックス(イオン性ポリマー)に吸収されることとなる。即ち、マトリックス自体が高い吸湿性を示し、水分を捕水し、吸収するわけである。
【0039】
ところで、単に水分がマトリックスに吸収されたに過ぎない場合には、温度上昇などの環境変化により、吸収された水分は容易に放出されてしまうこととなる。また、水分の侵入により、マトリックスを形成するポリマー分子の間隔を広げ、この結果、吸湿層9は膨潤し、大きな体積増大が生じる。しかるに、マトリックス(イオン性ポリマー)よりも到達湿度が低い吸着剤が分散されている場合には、マトリックス中に吸収された水分は、このマトリックスよりも吸湿性の大きい(即ち、到達湿度が低い)吸湿剤によってさらに捕捉されることとなり、吸収された水分子による膨潤が有効に抑制されるばかりか、この水分子は、吸湿層9中に閉じ込められ、この結果、吸湿層9からの水分の放出も有効に防止されることとなる。
【0040】
このように、イオン性ポリマー中に吸湿剤を分散させることにより吸湿層9を形成した場合には、高い吸湿能力と共に水分の捕捉と閉じ込めとの2重の機能を有しているため、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、水分が金属箔(A)3又はバリアシート11を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉し、著しく高い水分バリア性を実現することができる。
【0041】
イオン性ポリマー(カチオン性ポリマー);
本発明において、上記のようなマトリックスの形成に使用するイオン性ポリマーの内、カチオン性ポリマーは、水中で正の電荷となり得るカチオン性基、例えば、1~3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウムなどを分子中に有しているポリマーである。このようなカチオン性ポリマーは、カチオン性基が、求核作用が強く、かつ水素結合により水を補足するため、吸湿性を有するマトリックスを形成することができる。
カチオン性ポリマー中のカチオン性基量は、一般に、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K-7209-1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%~45%となるような量であればよい。
【0042】
また、カチオン性ポリマーとしては、アリルアミン、エチレンイミン、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4-(4-ビニルフェニル)-メチル]-トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体;及び、それらの塩類;に代表されるカチオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に、重合乃至共重合し、さらに必要により、酸処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
【0043】
また、上記のカチオン性単量体を使用する代わりに、カチオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン等を使用し、重合後に、アミノ化、アルキル化(第4級アンモニウム塩化)などの処理を行ってカチオン性ポリマーを得ることもできる。
【0044】
本発明においては、上記のカチオン性ポリマーの中でも、特にアリルアミンが成膜性等の観点から好適である。
【0045】
上述したカチオン性ポリマーは、特許文献2にも記載されているように、一般には、重合開始剤を用いての加熱によるラジカル重合により製造される。
尚、カチオン性の官能基を導入可能な単量体が使用されて重合が行われている場合には、重合後に、アミノ化、アルキル化処理などのカチオン性基導入処理を行えばよい。
【0046】
本発明においては、前述したカチオン性ポリマーを用いて形成されるマトリックスには、架橋構造を導入しておくことが、吸湿能力を低下させることなく機械的強度を確保すると同時に、寸法安定性を向上させる上で好ましい。
即ち、吸湿性のマトリックス中に架橋構造が導入されていると、該マトリックスが水を吸収したとき、カチオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束されることとなり、膨潤(水分吸収)による体積変化を抑制し、機械的強度や寸法安定性の向上がもたらされる。
上記の架橋構造は、吸湿層9を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入することができる。
このような架橋構造は、特許文献2に記載されているように、カチオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えば、エポキシ基)と、加水分解と脱水縮合を経て架橋構造中にシロキサン構造を形成し得る官能基(例えば、アルコキシシリル基)を有している化合物を使用することができ、特に、下記式(2):
X-SiR1
n(OR2)3-n (2)
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
R1及びR2は、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピル基であり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表されるシラン化合物が好適に使用される。即ち、上記カチオン性ポリマーを含む吸湿層形成用コーティング組成物中に、上記架橋剤を配合して成膜を行うことにより架橋構造を導入することができる。
【0047】
イオン性ポリマー(アニオン性ポリマー);
吸湿性のマトリックスの形成に使用するアニオン性ポリマーは、水中で負の電荷となり得るアニオン性の官能基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基や、これらの基が部分的に中和された酸性塩基を分子中に有しているポリマーである。このような官能基を有するアニオン性ポリマーは、上記官能基が水素結合により水を補足するため、吸湿性マトリックスを形成することができる。
アニオン性ポリマー中のアニオン性官能基量は、官能基の種類によっても異なるが、前述したカチオン性ポリマーと同様、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K-7209-1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%~45%となるような量であればよい。
【0048】
上記のような官能基を有するアニオン性ポリマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体;α-ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体;及びこれら単量体の塩類;などに代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に重合乃至共重合させ、さらに必要により、アルカリ処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
【0049】
また、上記のアニオン性単量体を使用する代わりに、上記のアニオン性単量体のエステルや、アニオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン類等を使用し、重合後に、加水分解、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化などの処理を行ってアニオン性ポリマーを得ることもできる。
【0050】
本発明において、好適なアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸及びその部分中和物(例えば一部がNa塩であるもの)である。
【0051】
上述したアニオン性ポリマーは、一般には、アニオン性基を有するモノマーを、重合開始剤を用いての加熱によりラジカル重合することにより製造される。モノマーとして、アニオン性官能基を導入可能な単量体が使用されている場合には、重合後に、加水分解、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化などのアニオン性基導入処理を行えばよい。
【0052】
また、本発明においては、前述したアニオン性ポリマーを用いて形成される吸湿性マトリックスに、架橋構造を導入しておくことが特に好ましく、これにより、吸湿層5の水分トラップ能力がさらに高められ、しかも、寸法安定性のさらなる向上がもたらされる。
即ち、アニオン性ポリマーの場合、カチオン性ポリマーとは異なって、水素結合による水の補足のみなので、吸湿に適した空間の網目構造(架橋構造)をマトリックス中に導入することにより、その吸湿性を大きく高めることができる。このような架橋構造は、例えば、網目構造中に脂環構造のような疎水部位を有しているものであり、これにより、親水部位の吸湿効果がより高められる。
さらに、吸湿性マトリックス中に架橋構造を導入することにより、該マトリックスが水を吸収したとき、アニオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束され、膨潤(水分吸収)による体積変化が抑制され、寸法安定性が向上する。このような寸法安定性向上効果は、前述したカチオン性ポリマーの場合と同様である。
【0053】
上記の架橋構造は、カチオン性ポリマーの場合と同様、吸湿層9を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入される。この架橋剤は、特許文献2に記載されているように、アニオン性ポリマーが有しているイオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えばエポキシ基)を2個以上有している化合物であり、例えば、式(1):
G-O(C=O)-A-(C=O)O-G (1)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基である、
で表されるジグリシジルエステルである。即ち、上記アニオン性ポリマーを含む吸湿層形成用コーティング組成物中に、上記架橋剤を配合して成膜を行うことにより架橋構造を導入することができる。
【0054】
吸湿剤;
上述したイオン性ポリマーをマトリックス(吸湿性マトリックス)とする吸湿層9中に分散される吸湿剤は、上記のマトリックスを形成するイオン性ポリマー(カチオン性或いはアニオン性ポリマー)よりも到達湿度が低く、極めて高い吸湿性能を有するものである。このようにマトリックスよりも高い吸湿性を有する吸湿剤を分散させることにより、前述したイオン性ポリマーにより形成されたマトリックスに吸収された水分が直ちに吸湿剤に捕捉され、吸収された水分のマトリックス中への閉じ込めが効果的に行われることとなり、極めて低湿度雰囲気でも水分の吸湿能力を有効に発揮することができるばかりか、水分の吸収による吸湿層9の膨潤も有効に抑制される。
【0055】
上記のような高吸湿性の吸湿剤としては、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いことを条件として、例えば後述する実施例で示されているように、湿度80%RH及び温度30℃の環境条件での到達湿度が6%以下のものが好適に使用される。即ち、この吸湿剤の到達湿度がイオン性ポリマーよりも高いと、マトリックスに吸収された水分の閉じ込めが十分でなく、水分の放出等を生じ易くなるため、水分バリア性の著しい向上が望めなくなってしまう。また、到達湿度がイオン性ポリマーよりも低い場合であっても、上記条件で測定される到達湿度が上記範囲よりも高いと、例えば低湿度雰囲気での水分のトラップが不十分となり、水分バリア性を十分に発揮できないおそれがある。
【0056】
上記のような吸湿剤は、一般に湿度80%RH及び温度30℃雰囲気下において50%以上の吸水率(JIS K-7209-1984)を有しており、無機系及び有機系のものがある。
無機系の吸湿剤としては、ゼオライト、アルミナ、活性炭、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカゲル、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。
有機系の吸湿剤としては、アニオン系ポリマー若しくはその部分中和物の架橋物を挙げることができる。このアニオン系ポリマーとしては、カルボン酸系単量体((メタ)アクリル酸や無水マレイン酸など)、スルホン酸系単量体(ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ホスホン酸系単量体(ビニルリン酸など)及びこれら単量体の塩類等に代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、重合或いは他の単量体と共重合させて得られるものを挙げることができる。特に透明性が求められる用途においては、有機系の吸湿剤が有効である。例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸Naの微細粒子などが代表的な有機系吸湿剤である。
【0057】
本発明においては、比表面積が大となり、高い吸湿性を示すという観点から粒径が小さな吸湿剤が好ましく(例えば、平均一次粒子径が100nm以下、特に80nm以下)、特に粒径の小さな有機系ポリマーの吸湿剤が最適である。
即ち、有機系ポリマーの吸湿剤は、イオン性ポリマーのマトリックスに対する分散性が極めて良好であり、均一に分散させることができるばかりか、これを製造するための重合法として乳化重合や懸濁重合などを採用することにより、その粒子形状を微細で且つ揃った球形状とすることができ、これをある程度以上配合することにより、極めて高い透明性を確保することが可能となる。
また、有機系の微細な吸湿剤では、前述した到達湿度が著しく低く、高い吸湿性を示すばかりか、架橋によって膨潤による体積変化も極めて少なくすることができ、従って、体積変化を抑制しながら、環境雰囲気を絶乾状態もしくは絶乾状態に近いところまで湿度を低下させる上で最適である。
このような有機系の吸湿剤の微粒子としては、例えば架橋ポリアクリル酸Na微粒子(平均粒子径約70nm)がコロイド分散液(pH=10.4)の形で東洋紡株式会社よりタフチックHU-820Eの商品名で市販されている。
【0058】
本発明において、上記のような吸湿剤の量は、その特性を十分に発揮させ、水分バリア性の著しい向上及び膨潤による寸法変化を有効に抑制させると同時に、金属箔(A)3又は無機バリア層11bが示すバリア性よりも高い水分バリア性を長期間にわたって確保するという観点から、イオン性ポリマーの種類に応じて設定される。
例えば、上述したイオン性ポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中に吸湿剤が分散されている吸湿層9は、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合には、吸湿層9中のイオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至900重量部の量で存在することが好ましく、更には200乃至600重量部の量であることがより好ましい。また、マトリックスがアニオン性ポリマーにより形成されている場合には、吸湿層9中のアニオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至1300重量部の量で存在することが好ましく、更には150乃至1200重量部の量であることがより好ましい。
【0059】
上述した吸湿層9の厚みは、電子デバイス装着用基材1の用途や要求されるバリア性のレベルによっても異なるが、10-2g/m2・day以下、特に10-3g/m2・day以下の水蒸気透過率を確保する場合には、1乃至20μm、特に1乃至15μm程度の厚みに設定されていればよい。この厚みが薄いと、短期間で吸湿水分量が上限に達してしまい、水分バリア性が損なわれてしまう。また、過度に厚くすると、吸湿し得る水分量は多くなるが、その増大に伴い、膨潤による体積変化が大きくなり、この結果、デラミネーションを生じ易くなってしまう。
【0060】
<バリアシート11>
バリアシート11は、吸湿層9の金属箔(A)3を設けた面の反対側の面に設けられる。
バリアシート11が吸湿層9の外面側に設けられる場合には、デバイスへ侵入しようとする水分(水蒸気)の大部分を遮断する役割を有する。一方、バリアシート11が、吸湿層9の電子デバイス側に設けられる場合には、吸湿層9で吸収しきれなかった水分を遮断する役割を有する。何れの場合も、結果として、デバイス内部を長期にわたって乾燥状態に保持することが可能となる。
バリアシート11は、樹脂層11aの少なくとも一方の面に無機バリア層11bを有する態様、或いは金属箔(B)11cを有する態様の2つの態様がある。水分バリア性を発揮するのは、無機バリア層11bまたは金属箔(B)11cによるものである。
【0061】
<樹脂層11a>
まず、バリアシート11が、樹脂層11aの少なくとも一方の面に無機バリア層11bを有する態様について説明する。
樹脂層11aは、無機バリア層11bの下地となるものであり、通常、熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂により、その形態に応じて、射出乃至共射出成形、押出乃至共押出成形、フィルム乃至シート成形、圧縮成形、注型重合等により成形される。一般的には、成形性やコストの観点から、熱可塑性樹脂が好適である。
【0062】
このような熱可塑性樹脂の例としては、以下のものを挙げることができる。
オレフィン系樹脂:
低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、さらには、環状オレフィンコポリマーや環状オレフィンポリマー等;
エチレン・ビニル化合物共重合体:
エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等;
スチレン系樹脂:
ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等
ポリビニル化合物:
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド:
ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等;
熱可塑性ポリエステル:
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等;
その他:
ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸などの生分解性樹脂等;
さらに、上記樹脂のブレンド物や、これら樹脂が適宜共重合により変性されたもの(例えば、酸変性オレフィン樹脂など)であってもよい。
【0063】
また、この樹脂層11aは、エチレン・ビニルアルコール共重合体の如き酸素バリア性に優れたガスバリア性樹脂などにより形成することもでき、このようなガスバリア性樹脂により形成された層を含む多層構造を有していてもよい。即ち、このようなガスバリア性樹脂を含む樹脂層11aを下地として、無機バリア層11bを形成することができる。
【0064】
本発明においては、入手のし易さ、コスト、成形性、或いは酸素や水分に対して多少なりともバリア性を示し、さらには、後述する無機バリア層11bの下地として好適であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂や、ポリイミド樹脂、環状オレフィンコポリマーや環状オレフィンポリマー等の環状オレフィン系樹脂のフィルムを樹脂層11aとして使用することがより好適である。
【0065】
上述した樹脂層11aの厚みは特に制限されないが、この厚みが過度に大きいと、フレキシブル性が損なわれたり、取り扱い難くなることもある。従って、樹脂層11aの厚みは、通常、200μm以下とし、より好ましくは125μm以下とし、この範囲で適度な水分透過率を確保することができ、さらには無機バリア層11bの成膜を効果的に行い得るような厚み、例えば20μm以上とするのがよい。
【0066】
<無機バリア層11b>
無機バリア層11bは、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、プラズマCVDに代表される化学蒸着などによって形成される無機質の蒸着膜、例えば各種金属乃至金属酸化物により形成される膜であるが、特に、凹凸を有する面にも均一に成膜され、水分のみならず酸素等に対しても優れたバリア性を発揮するという点で、プラズマCVDにより形成される蒸着膜(金属、或いは金属酸化物の蒸着膜)であることが好ましい。このような無機バリア層11bは、前述した樹脂層11a上に形成されるわけである。
【0067】
尚、プラズマCVDによる蒸着膜は、所定の真空度に保持されたプラズマ処理室内に無機バリア層11bを支持すべき樹脂層11aを配置し、膜形成する金属若しくは該金属を含む化合物のガス(反応ガス)及び酸化性ガス(通常酸素やNOxのガス)を、適宜、アルゴン、ヘリウム等のキャリアガスと共に、ガス供給管を用いて、金属壁でシールドされ且つ所定の真空度に減圧されているプラズマ処理室に供給し、この状態でマイクロ波電界や高周波電界などによってグロー放電を発生させ、その電気エネルギーによりプラズマを発生させ、上記化合物の分解反応物をプラスチック基材の表面に堆積させて成膜することにより得られる。
マイクロ波電界により成膜する場合は、導波管等を用いてマイクロ波をプラズマ処理室内に照射することにより成膜が行われ、高周波電界による場合は、プラズマ処理室内の樹脂層11aを一対の電極の間に位置するように配置し、この電極に高周波電界を印加して成膜が行われる。
【0068】
上記の反応ガスとしては、一般に、樹脂層11aに炭素成分を含む柔軟な領域を有し且つその上に酸化度の高いバリア性に優れた領域を有する膜を形成できるという観点から有機金属化合物、例えばトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物等のガスを用いることが好ましく、特に、酸素に対するバリア性の高い無機バリア層11bを比較的容易に効率良く形成できるという点で、有機ケイ素化合物が最も好ましい。
【0069】
このような有機ケイ素化合物の例としては、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これら以外にも、アミノシラン、シラザンなどを用いることもできる。
上述した有機金属化合物は、単独でも或いは2種以上の組合せでも用いることができる。
【0070】
上記のような有機金属化合物の反応ガス及び酸化性ガスを用いてのプラズマCVDによる成膜に際しては、グロー放電出力(例えばマイクロ波或いは高周波出力)を低くし、低出力で成膜を開始した後、高出力でプラズマ反応による成膜を行うことが好適である。
【0071】
即ち、有機金属化合物の分子中に含まれる有機基(CH3やCH2など)は、通常、CO2となって揮散するが、低出力では、その一部はCO2まで分解せず、樹脂層の表面に堆積して膜中に含まれることとなる。一方、出力が高められるほど、有機基はCO2まで分解していくこととなる。従って、出力を高めることにより、膜中のC含量を少なくし、有機金属化合物中に含まれる金属の酸化度の高い膜を形成することが可能となる。しかるに、金属の酸化度の高い膜は、酸素等のガスに対するバリア性は極めて高いが、可撓性が乏しく、樹脂層との密着性が十分でないのに対して、金属の酸化度が低く、有機成分含量の多い膜は、ガスに対するバリア性は十分ではないが、可撓性に富み、樹脂層11aに対して高い密着性を示すこととなる。
【0072】
上記の説明から理解されるように、本発明では、反応ガスとして有機金属化合物を使用し且つプラズマCVDによる成膜初期に低出力で成膜を行った後に出力を増大させて成膜を行うことにより、樹脂層11aの表面に接する部分に有機成分(炭素)を多く含む密着性の高い領域が形成され、その上に、金属の酸化度が高く、ガスバリア性の高い領域が形成されることとなる。
【0073】
従って、本発明における無機バリア層11bは、優れたガスバリア性を確保するために、金属(M)の酸化度をx(x=O/Mの原子比)としたとき、この酸化度xが1.5乃至2.0の高酸化度領域を含んでいることが好ましい。また、この高酸化度領域の下側(樹脂層11aの表面と接する側)には、金属(M)、酸素(O)及び炭素(C)の3元素基準で、炭素(C)濃度が20元素%以上の有機領域が形成されていることが好ましい。さらに、この金属(M)としては、ケイ素(Si)が最も好ましい。
【0074】
尚、無機バリア層11bにおける上記高酸化度領域は、無機バリア層11bの全体厚みの60%以上の割合で存在していることが好ましく、上記有機領域は、無機バリア層11bの全体厚みの5乃至40%程度の厚みで樹脂層11aの表面と接触側に形成されていることが好ましい。
【0075】
上述した有機領域や高酸化度領域を有する無機バリア層11bをプラズマCVDにより成膜する際のグロー放電出力は、マイクロ波による場合と高周波による場合とで多少異なっている。例えばマイクロ波の場合は、30乃至100W程度の低出力で有機領域の形成が行われ、高酸化度領域では、90W以上の高出力で成膜が行われる。また、高周波の場合は、20乃至80W程度の低出力で有機領域の形成が行われ、高酸化度領域では、100W以上の高出力で成膜が行われる。
成膜時間は、各領域の厚みが、前述した範囲内となるように設定すればよい。
【0076】
また、上述した無機バリア層11bの全体厚みは、電子デバイス装着用基材1の用途や要求されるバリア性のレベルによっても異なるが、一般的には、10-2g/m2・day以下、特に10-3g/m2・day以下の水蒸気透過率が確保できる程度の厚みとするのがよく、上述した高酸化度領域が占める割合によっても異なるが、一般に、4乃至500nm、特に30乃至400nm程度の厚みを有していればよい。
【0077】
<金属箔(B)11c>
次に、バリアシート11が金属箔(B)11cを有する態様について説明する。
金属箔(B)11cとしては、金属箔(A)3と同様のものを使用することができる。即ち、金属箔(B)11cの材質は、フレキシブル性、薄膜のしやすさ或いはコスト削減の観点から、アルミニウムであることが好ましい。
金属箔(B)11cの厚みは5~20μm、より好ましくは6~20μm、特に好ましくは6~15μmである。5μm未満の厚みの金属箔(B)11cは製造が困難である。一方、20μmを超える厚みの金属箔(B)11cではフレキシブル性が不十分となり、取り扱いが難しくなる。
【0078】
なお、金属箔(B)11cを用いる場合では、基材1に金属箔(A)3と金属箔(B)11cの2枚の金属箔を有する構成となる。このような構成の基材1を電子デバイスに装着すると、通電による不具合が起こる可能性があるため、電子デバイスの種類や使用環境等を考慮して適用する必要がある。
【0079】
<保護樹脂層11d>
また、金属箔(B)11cのみを有する構造でもよいが、金属箔(B)11cに後述する接着剤層11eを介して保護樹脂層11dを形成しておいてもよい。保護樹脂層11dは、保護樹脂層5と同様のものを使用することができる。
保護樹脂層11dは、金属箔(B)11cの傷付や酸化劣化を防止するために設けられる樹脂層である。そのため、特に金属箔(B)11cが吸湿層9の外面側に設けられる場合には、保護樹脂層11dを有することが好ましい。
保護樹脂層11dは、それ自体公知の種々の樹脂を用いて形成されるが、一般的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂やポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、特にポリエステル樹脂により形成される。
このような保護樹脂層11dは、通常、1~200μm程度の厚みを有してればよい。
【0080】
<接着剤層11e>
接着剤層11eは、金属箔(B)11c及び保護樹脂層11dを接着する層である。このような接着剤層11eは、接着剤層7と同様のものを採用することができる。
【0081】
<準吸湿層13>
本発明において、準吸湿層13は、吸湿層9ほどではないが、ある程度の吸湿性を示す層である。準吸湿層13は、金属箔(A)と吸湿層の間、又は吸湿層とバリアシートの間の少なくとも一つの箇所に設けることができる。
【0082】
本発明において、準吸湿層13は吸湿剤を配合せず、樹脂のみから形成される。このような準吸湿層13は、吸湿剤が配合されていない分、吸湿層9よりも低コストで形成することができる。
【0083】
準吸湿層13の形成に使用される樹脂としては、例えば、吸湿層9の形成に使用されるイオン性ポリマーに比して、カチオン性基或いはアニオン性基の濃度が低いイオン性ポリマーを例示することができるが、特に、イオン性ポリマー、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂などが好適であり、ポリアミド樹脂が最も好適である。
かかるポリアミドは、例えば、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等が代表的である。
【0084】
上述した準吸湿層13の厚みは、150μm未満、特に2~100μmの範囲にあるのがよい。この厚みが必要以上に厚いと、吸湿層9と合わせての膨潤による体積変化が大きくなり、デラミネーションを生じ易くなる。また、この厚みが薄すぎると、補助的な吸湿により、吸湿層9の長寿命化を図ることが困難となってしまうからである。
【0085】
<紫外線遮断層15>
図1~3に示すように、電子デバイス装着用基材の金属箔(A)またはバリアシートの何れか一方の面であって、吸湿層9が積層されていない側の面に紫外線遮断層15を設けることができる。この紫外線遮断層15は、紫外線を反射させ、又は紫外線を吸収させることにより、基材内部及びデバイスへの紫外線の侵入を防止する役割がある。
【0086】
紫外線遮断層15が反射又は吸収する紫外線の波長の範囲は、200nm~400nm、好ましくは250nm~400nm、特に好ましくは280nm~400nmである。
また、紫外線遮断層15の紫外線透過率は、0.1%~20%、好ましくは0.1%~15%、より好ましくは0.1%~10%である。紫外線透過率が0.1%未満の場合は品質が過剰となり、コストが高くなる。一方、紫外線透過率が20%を超える場合、基材又は電子デバイスの劣化が進行する。
【0087】
この紫外線遮断層15は、一般的な熱可塑性樹脂により成形することができるが、耐候性やコストの観点から、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂により形成することが好ましい。
紫外線遮断層15を形成する樹脂には、紫外線遮蔽剤として紫外線を吸収させるカーボンブラックや、紫外線を散乱させる酸化チタン等の無機顔料を当該樹脂中に分散させることができる。また、紫外線を吸収させる場合には、有機系紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の添加材を当該樹脂中に分散させることができる。紫外線遮断層15を樹脂により形成する場合には、紫外線遮断層15と、保護樹脂層5又は保護樹脂層11dとの間を後述する接着剤層17で接着されていることが好ましい。
また、紫外線遮断層15は、上記紫外線遮蔽剤や有機系紫外線吸収剤を含む塗料を保護樹脂層5又は保護樹脂層11dの表面に直接塗布することで形成することもでき、この場合には紫外線の全部または一部について遮蔽・吸収させることで、デバイスへの紫外線の透過を遮断することができる。このような塗料としては、フッ素系、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系等の塗料が好適に使用される。
【0088】
<接着剤層17>
接着剤層17は、紫外線遮断層15と、保護樹脂層5又は保護樹脂層11dとを接着させる層であり、接着剤層7と同様のものを使用することができる。
【0089】
<基材の適用>
本発明の電子デバイス装着用基材は、後述の実施例に記載した方法により製造することができる。このような基材1は、全体の厚みが、25~250μmであり、好ましくは25~230μmであり、より好ましくは25~200μmである。基材1の全体の厚みが25μm未満だと、基材全体の強度が不足するため破れ、穴あき等が生じるおそれがある。一方、基材1の全体の厚みが250μmを超えると、十分なフレキシブル性が得られず、取り扱いが難しくなる。
【0090】
電子デバイスとしては、特に制限されず、水分の存在による電荷のリーク等を嫌う電子デバイス、例えば有機EL素子、太陽電池パネル、タッチパネルなどの全てのデバイスに、本発明の基材を適用することができる。
尚、基材1の設置方法は、特に制限されず、その用途に応じて適した方法により設置される。例えば、本発明の基材が、太陽電池のバックシートとして用いられる場合は、フレームによりセル等と一体となって固定される。
【0091】
また、有機ELデバイス等に用いられる場合は、金属箔(A)3またはバリアシート11に、アクリル系、シリコーン系、ブタジエン系等の公知の感圧粘着剤を塗布することや、エチレン―酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリビニルブチラール系、オレフィン系等の熱圧着型の封止シートや、エポキシ系、アクリル系等のUV硬化型の接着剤でデバイス面に貼り付けすることができる。この形態では、吸湿層9の吸湿能力が消失した時には、この基材を引き剥がして交換することができる。
また、本発明の基材1は、金属箔(A)3又は金属箔(B)11cを有しているため、上述したデバイスの光透過性が要求されない側の面、例えば、太陽電池のバックシート等の非受光面、有機エレクトロルミネッセンス素子の光非放射面、各種デバイスの側面などに使用される。
【実施例0092】
<無機バリア層被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの作製>
樹脂層11aとして厚み25μmの2軸延伸PETフィルムの片面に、プラズマCVD装置を用いて、酸化ケイ素の無機バリア層11bを形成した。以下に、製膜条件を示す。
周波数27.12MHz、最大出力2kWの高周波出力電源、マッチングボックス、直径300mm、高さ450mmの金属型円筒形プラズマ処理室、処理室を真空にする油回転真空式ポンプを有するCVD装置を用いた。処理室内の並行平板にPETフィルムを設置し、ヘキサメチルジシロキサンを3sccm、酸素を45sccm導入後、高周波発振器により50Wの出力で高周波を発振させ、2秒間の製膜を行い、密着層を形成した。次に、高周波発振器により200Wの出力で高周波を発振させ、100秒間の製膜を行い、酸化ケイ素を形成し、バリアシート11として無機バリア層被覆PETフィルムを得た。得られた上記無機バリア層被覆PETフィルムは、40℃90%RH雰囲気下で測定した水蒸気透過率が、1×10-2g/m2・dayであった。
【0093】
<吸湿層9作製用コーティング液Aの調製>
イオン性ポリマーとしてポリアリルアミン(ニットーボーメディカル社製、PAA-15C、水溶液品、固形分15重量%)を、固形分5重量%になるように水で希釈し、ポリマー溶液を得た。一方、架橋剤として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、5重量%になるように水に溶かして架橋剤溶液を調製した。次いで、ポリアリルアミン100重量部に対してγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが15重量部になるように、ポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、この混合溶液に、吸湿剤として、ポリアクリル酸Naの架橋物(東洋紡製、タフチックHU-820E、水分散品、固形分13%)を、ポリアリルアミンに対して400重量部になるように加え、更に固形分が5%になるよう水で調整した上で良く撹拌し、吸湿層9作製用のコーティング液Aを調製した。
【0094】
<基材の作製>
前記で得られた吸湿層9作製用のコーティング液Aを、バーコーターにより、前記無機バリア層被覆PETフィルムの、無機バリア層11bが成膜された側に塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間6秒の条件で熱処理し、吸湿層9として厚み3μmのイオン性ポリマーを形成し、コーティングフィルムAを得た。
次いで、窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムAの吸湿層9が形成された面に、厚さ2.0μmのウレタン系接着剤を介して、金属箔(A)として15μmのアルミ箔をドライラミネートした。さらに、アルミ箔の吸湿層9が設けられている反対の面に、厚さ2.0μmのウレタン系接着剤を介して、保護樹脂層5として25μmのPETフィルムをドライラミネートし、基材Aを得た。
また、金属箔(A)、保護樹脂層5、樹脂層11a、保護樹脂層11dの厚みを適宜変更させ、さらに必要に応じて準吸湿層13、紫外線遮断層15を設けることで、表1に示す基材A~Lを作製した。
【0095】
【0096】
<実験例1>
<カルシウム腐食法(曲げ試験なし)>
上記で作製した基材Aについての水分透過の影響を、カルシウム腐食法(JIS K7129-7)により測定した。
不活性ガス雰囲気下で、ガラス基材の表面にカルシウム膜を100nmとなるように成膜し、次いで感圧式の粘着剤を添付した。その後、粘着剤に基材Aの無機バリア層被覆PETフィルムのPETフィルムの表面が接するように張り合わせ、評価用のセルを作製した。
評価用セルを恒温恒湿槽にて40℃90%RHの環境で1000時間保管後のカルシウム薄膜の様子を、ガラス基板側から顕微鏡で観察した。評価基準は下記の通りである。結果を表2に示す。
<評価基準>
〇:カルシウム膜の腐食が全く見られなかった
×:カルシウム膜の腐食が確認された
【0097】
<カルシウム腐食法(曲げ試験あり)>
基材Aについて、23℃50%RHの環境の下、卓上型耐久試験機(ユアサシステム機器(株)社製)を用いて、直径5mmで両方の曲げ方向に10000回ずつの曲げ試験を行った。曲げ試験後の基材Aについて、上記と同様の方法で評価用のセルを作製した。
評価用セルを恒温恒湿槽にて40℃90%RHの環境で1000時間保管後のカルシウム薄膜の様子を、ガラス基板側から顕微鏡で観察した。評価基準は上記と同様である。結果を表2に示す。
【0098】
<実験例2>
基材Aを基材Bに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0099】
<実験例3>
基材Aを基材Cに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0100】
<実験例4>
基材Aの粘着剤に貼り合わせる面を、保護樹脂層5である25μmのPETフィルムの表面に変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0101】
<実験例5>
基材Aを基材Dに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0102】
<実験例6>
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムAの吸湿層9が形成された面に、厚さ2.0μmのウレタン系接着剤を介して、準吸湿層13として25μmのナイロンフィルムをドライラミネートした。さらに、ナイロンフィルムの吸湿層9が設けられている反対の面に、厚さ2.0μmのウレタン系接着剤を介して、金属箔(A)として15μmのアルミ箔をドライラミネートした。さらに、アルミ箔の準吸湿層13が設けられている反対の面に、厚さ2.0μmのウレタン系接着剤を介して、保護樹脂層5として25μmのPETフィルムをドライラミネートし、基材Eを得た。実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0103】
<実験例7>
基材Aの保護樹脂層5の表面に、厚さ2.0μmのウレタン系接着剤を介して、紫外線遮断層15として、アクリル系樹脂のUVカットフィルム(55μm)をドライラミネートし、基材Fを作製した。実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0104】
<実験例8>
基材Aの保護樹脂層5の表面に、紫外線遮断層15として、フッ素系のUVカットコーティング層(10μm)を形成し、基材Gを作製した。実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0105】
<実験例9>
基材Aを基材Hに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0106】
<実験例10>
基材Aを基材Iに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0107】
<実験例11>
基材Aを基材Jに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0108】
<実験例12>
基材Aを基材Kに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0109】
<実験例13>
基材Aを基材Lに変更した以外は、実験例1と同様にカルシウム腐食法による測定を行った。
【0110】
【0111】
カルシウム腐食法(曲げ試験あり)において、基材A~Iについては、いずれもカルシウムの腐食は見られず、曲げ試験後の基材外観も良好であった。即ち、基材A~Iはいずれも水分バリア性及びフレキシブル性が両立された基材であるといえる。
一方、基材Jについては、カルシウム膜の腐食が見られなかったものの、外観に折れ目が生じた。基材Jは基材の総厚みが大きくフレキシブル性が不十分であったために、曲げ試験によって折れ目が生じたものと考えられる。
また、基材K及びLについては、カルシウム膜の腐食が見られた。基材K及びLは金属箔(A)の厚みが大きくフレキシブル性が不十分であったために、曲げ試験により金属箔にピンホールが多数発生し、それにより大量の水分が透過して吸湿性樹脂層が短期間で膨潤してしまい、吸収しきれなかった水分がカルシウム膜に到達したものと考えられる。
前記樹脂層は、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂または環状オレフィン系樹脂の少なくとも1つから形成される請求項4に記載の電子デバイス装着用基材。
前記準吸湿層は、イオン性ポリマー、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂の少なくとも1つから形成される請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。
前記金属箔(A)または前記バリアシートの何れか一方の面であって、前記吸湿層が積層されていない側の面に紫外線遮断層が設けられている請求項1に記載の電子デバイス装着用基材。