(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179723
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】焼結接合用巻回シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20241219BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241219BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J201/00
H01L21/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098780
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】亀井 勝利
(72)【発明者】
【氏名】三田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大木場 祐一
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F047
【Fターム(参考)】
4J004AA17
4J004AA18
4J004AB05
4J004CA04
4J004CE01
4J004EA01
4J004FA08
4J040HA061
4J040HB07
4J040HB30
4J040JA09
4J040JB02
4J040NA20
5F047BA14
5F047BA15
5F047BA19
5F047BA21
5F047CA00
(57)【要約】
【課題】本発明は、半導体装置の製造における歩留まりの低下を抑制できる焼結接合用巻回シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る焼結接合用巻回シートは、第1基材と該第1基材上に積層された焼結接合用層とを備え、かつ、帯状に形成された焼結接合用シートが長さ方向に巻回されて構成された焼結接合用巻回シートであって、前記焼結接合用層は、導電性金属を含有する焼結性粒子と、有機バインダとを含んでいて、直接的に前記第1基材上に積層されるか、あるいは、第2基材を介在させて間接的に前記第1基材上に積層されており、前記第1基材の長さ方向の寸法L
1は、前記焼結接合用層の長さ方向の寸法L
S及び前記第2基材の長さ方向の寸法L
2よりも大きい。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と該第1基材上に積層された焼結接合層とを備え、かつ、帯状に形成された焼結接合用シートが長さ方向に巻回されて構成された焼結接合用巻回シートであって、
前記焼結接合層は、導電性金属を含有する焼結性粒子と、有機バインダとを含んでいて、直接的に前記第1基材上に積層されるか、あるいは、第2基材を介在させて間接的に前記第1基材上に積層されており、
前記第1基材の長さ方向の寸法L1は、前記焼結接合層の長さ方向の寸法LS及び前記第2基材の長さ方向の寸法L2よりも大きい
焼結接合用巻回シート。
【請求項2】
前記焼結接合層における前記第1基材と対向する面の反対面に第3基材を備えており、
前記第1基材の長さ方向の寸法L1は、前記第3基材の長さ方向の寸法L3より大きい
請求項1に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項3】
前記焼結接合層及び前記第2基材は、長さ方向に沿って、前記第1基材上に連続的または間欠的に積層されている
請求項1または2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項4】
前記第1基材を上面視したときの表面積S1は、前記焼結接合層を上面視したときの表面積SS、及び、前記第2基材を上面視したときの表面積S2よりも大きい
請求項1または2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項5】
前記第1基材を上面視したときの表面積S1は、前記第3基材を上面視したときの表面積S3よりも大きい
請求項2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項6】
前記第1基材の幅方向の寸法W1は、前記焼結接合層の幅方向の寸法WS、及び、前記第2基材の幅方向の寸法W2よりも大きい
請求項1に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項7】
前記第1基材の幅方向の寸法W1は、前記第3基材の幅方向の寸法W3よりも大きい
請求項2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項8】
前記第3基材における前記焼結接合層と対向する面の反対面に第4基材を備えており、
前記第4基材の長さ方向の寸法L4は、前記焼結接合層の長さ方向の寸法LS、前記第2基材の長さ方向の寸法L2、及び、前記第3基材の長さ方向の寸法L3よりも大きい
請求項2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項9】
前記第4基材を上面視したときの表面積S4は、前記焼結接合層を上面視したときの表面積SS、前記第2基材を上面視したときの表面積S2、及び、前記第3基材を上面視したときの表面積S3よりも大きい
請求項8に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項10】
前記第4基材の幅方向の寸法W4は、前記焼結接合層の幅方向の寸法WS、前記第2基材の幅方向の寸法W2、及び、前記第3基材の幅方向の寸法W3よりも大きい
請求項8または9に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項11】
前記第1基材は、30μm以上150μm以下の厚さを有する
請求項1または2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項12】
前記第1基材は、前記焼結接合層または前記第2基材との接触面を有しており、
該接触面をナノインデンテーション法で測定することによって求められる23℃におけるヤング率が、0.5GPa以上5.0GPa以下である
請求項1または2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項13】
前記第1基材は、23℃において、4%以上350%以下の引張伸びを有する
請求項1または2に記載の焼結接合用巻回シート。
【請求項14】
前記第1基材は、気孔率が10%以下である
請求項1または2に記載の焼結接合用巻回シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結接合用巻回シートに関する。
詳しくは、帯状に形成された焼結接合用シートが長さ方向に巻回されて構成された焼結接合用巻回シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造において、半導体素子の搭載領域を有する基板上に、焼結接合層を用いて半導体素子を取り付けることが知られている(例えば、下記特許文献1)。
また、下記特許文献1には、前記焼結接合層を焼結性粒子と有機バインダとを含む層として構成することが記載されている。
そして、半導体装置の製造は、例えば、焼結接合層を基材上に積層させた焼結接合用シートを用いて実施され、該焼結接合用シートは、通常、長さ方向と幅方向とを有する帯状に形成されている。
【0003】
上記のような半導体装置の製造は、例えば、以下の手順にしたがって実施される。
(1)基材と該基材上に積層された粘着剤層とを有するダイシングテープの前記粘着剤層上に半導体ウェハを取り付けた状態とした後、前記粘着剤層に取り付けた状態の前記半導体ウェハをダイシングして複数の半導体素子へと個片化する。
(2)コレットなどの治具を用いて前記ダイシングテープの前記粘着剤層上から一の半導体素子をピックアップした後、焼結接合用シートが備える焼結接合層上に前記一の半導体素子を押し付けて前記焼結接合層の一部を前記一の半導体素子のサイズに相当するサイズを有するように分割する。
そして、前記一の半導体素子との当接面側に存在する有機バインダによって上記のように分割された前記焼結接合層を前記一の半導体素子に接着させることにより、分割された前記焼結接合層を前記一の半導体素子に転写させる。
(3)前記一の半導体素子との当接面の反対面側に存在する有機バインダによって、分割された前記焼結接合層を転写させた前記一の半導体素子を複数の半導体素子の搭載領域を有する基板における一の半導体素子の搭載領域に接着させる。
すなわち、前記有機バインダによって前記一の半導体素子を前記基板における一の半導体素子の搭載領域に仮固定させる。
(4)上記(2)及び(3)を複数回実施することにより、前記基板における複数の半導体素子の搭載領域のそれぞれに、分割された複数の前記焼結接合層のそれぞれによって複数の半導体素子のそれぞれを仮固定させることにより、半導体装置の中間製品を得る。
(5)前記半導体装置の中間製品を前記焼結接合層中の前記焼結性粒子どうしが焼結可能となる温度で加熱することにより、前記焼結接合層中において前記焼結性粒子どうしを焼結させるとともに、前記焼結接合層から前記有機バインダの少なくとも一部を消失させることによって、前記複数の半導体素子のそれぞれを前記基板における複数の半導体素子の搭載領域のそれぞれに接合させる。
なお、本工程を経た後においては、前記複数の半導体素子のそれぞれは、分割された複数の前記焼結接合層中に含まれる焼結性粒子どうしが焼結することによって、前記基板における複数の半導体素子の搭載領域のそれぞれに固定されるようになる。
すなわち、焼結性粒子どうしが焼結することによって形成された焼結体によって、前記複数の半導体素子のそれぞれは、前記基板における複数の半導体素子の搭載領域のそれぞれに固定されるようになる。
【0004】
また、上記のように帯状に形成された焼結接合用シートを長さ方向に巻回して巻回シート(以下、焼結接合用巻回シートという)としたものが知られている(例えば、下記特許文献2)。
上記のような焼結接合用巻回シートを用いた半導体装置の製造において、繰出ローラと巻取ローラとを備えるロールトゥーロール装置を用いて、上記(2)の工程を実施することがある。
詳しくは、繰出ローラに取り付けた焼結接合用巻回シートを巻取ローラに向けて長さ方向に沿って繰り出しつつ、前記焼結接合用巻回シートが備える焼結接合層上に、コレットなどの治具を用いて前記一の半導体素子を押し付けて前記焼結接合層の一部を前記半導体素子のサイズに相当するサイズを有するように分割し、分割された前記焼結接合層を前記一の半導体素子に転写させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-150188号公報
【特許文献2】特開2020-147706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような帯状の焼結接合用巻回シートを用いた半導体装置の製造においては、前記焼結接合用巻回シートが備える前記焼結接合層について、半導体素子に転写させるための有効領域を十分に確保できないことがある。
このように、前記焼結接合層における前記有効領域を十分に確保できないと、前記焼結接合層の全体に占める転写に利用できる比率が低下してしまうようになる。
その結果、半導体装置の製造における歩留まり(具体的には、焼結接合層の利用比率)が低下してしまうようになる。
しかしながら、焼結接合用巻回シートを用いた半導体装置の製造における歩留まりの低下を抑制することについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0007】
そこで、本発明は、半導体装置の製造における歩留まりの低下を抑制できる焼結接合用巻回シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る焼結接合用巻回シートは、
第1基材と該第1基材上に積層された焼結接合層とを備え、かつ、帯状に形成された焼結接合用シートが長さ方向に巻回されて構成された焼結接合用巻回シートであって、
前記焼結接合層は、導電性金属を含有する焼結性粒子と、有機バインダとを含んでいて、直接的に前記第1基材上に積層されるか、あるいは、第2基材を介在させて間接的に前記第1基材上に積層されており、
前記第1基材の長さ方向の寸法L1は、前記焼結接合層の長さ方向の寸法LS及び前記第2基材の長さ方向の寸法L2よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体装置の製造における歩留まりの低下を抑制できる焼結接合用巻回シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る焼結接合巻回シートの構成を示す側面図。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る焼結接合用巻回シートを得るための焼結接合用シート(巻回前の焼結接合用シート)の構成を示す斜視図。
【
図3A】本発明の他の実施形態に係る焼結接合用巻回シートの構成を示す側面図。
【
図3B】本発明の他の実施形態に係る焼結接合用巻回シートを得るための焼結接合用シート(巻回目の焼結接合用シート)の構成を示す斜視図。
【
図4A】コレットによってダイシングテープから第1半導体チップを持ち上げる様子を示す概略断面図。
【
図4B】コレットによってダイシングテープから第2半導体チップを持ち上げる様子を示す概略断面図。
【
図5】ロールトゥーロール装置にて、本実施形態に係る焼結接合用巻回シートを搬送している状態を示す概略図。
【
図6A】第1半導体チップに本実施形態に係る焼結接合用シートの焼結接合層の一部を転写させる様子を示す概略断面図。
【
図6B】第2半導体チップに本実施形態に係る燒結接合用シートの焼結接合層の一部を転写させる様子を示す概略断面図。
【
図7A】コレットによって焼結接合層の分割体付の第1半導体チップを持ち上げる様子を示す概略断面図。
【
図7B】コレットによって焼結接合層の分割体付の第2半導体チップを持ち上げる様子を示す概略断面図。
【
図8A】焼結接合層の分割体付の第1半導体チップをリードフレーム基板の第1ダイパッドに仮固定する様子を示す概略断面図。
【
図8B】焼結接合層の分割体付の第2半導体チップをリードフレーム基板の第2ダイパッドに仮固定する様子を示す概略断面図。
【
図9A】焼結接合層の分割体を介して、第1ダイパッドに第1半導体チップが仮固定されるとともに第2ダイパッドに第2半導体チップが仮固定されたリードフレーム基板を加熱している様子の一例を示す概略断面図。
【
図9B】焼結接合層の分割体を介して、第1ダイパッドに第1半導体チップが仮固定されるとともに第2ダイパッドに第2半導体チップが仮固定されたリードフレーム基板を加熱している様子の他の例を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下では、本発明の一実施形態を、単に、本実施形態と称することがある。
【0012】
[焼結接合用巻回シート]
図1Aに示したように、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aは、
図1Bに示したような帯状の焼結接合用シート10Bが長さ方向Lに巻回されて構成されている。
図1Bに示したように、帯状の焼結接合用シート10Bは、第1基材1と該第1基材1上に積層された焼結接合層2とを備えている。
また、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aも、焼結接合用シート10Bと同様に、第1基材1と該第1基材1上に積層された焼結接合層2とを備えている(
図1A参照)。
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、焼結接合層2は、導電性金属を含有する焼結性粒子と、有機バインダとを含んでいる。
なお、本明細書において、導電性金属とは、JIS K 0130(2008)に従って測定した電気伝導率が100μS/cm以下となる金属のことを意味する。
【0013】
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、焼結接合層2は、第2基材3を介在させて間接的に第1基材1上に積層されている。
なお、焼結接合層2は、直接的に第1基材1上に積層されていてよい。
【0014】
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、
図1A及び
図1Bに示したように、焼結接合層2は、第1基材1と対向する面の反対面に第3基材4を備えている。
なお、焼結接合層2は、前記反対面に第3基材4を備えていなくてもよい。
すなわち、焼結接合層2の前記反対面は、露出面となっていてもよい。
【0015】
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、第1基材1の長さ方向の寸法L
1は、焼結接合層2の長さ方向の寸法L
S及び第2基材3の長さ方向の寸法L
2よりも大きくなっている(特に、
図1B参照)。
焼結接合用巻回シート10Aが上記のような第1基材1を備えていることにより、上記のような第1基材1を備えていない焼結接合用巻回シートと比べて、後述するように、焼結接合用巻回シート10Aをロールトゥーロール装置1000にて長さ方向に沿って搬送しながら複数の半導体チップのそれぞれに焼結接合層2の一部を転写させるときに、焼結接合層2における長さ方向の両末端部分まで十分に利用することができる。
すなわち、焼結接合層2において、複数の半導体チップのそれぞれに転写させるための長さ方向における有効領域を十分に確保することができる。
これにより、ロールトゥーロール装置を用いて半導体装置の製造を実施したときに、歩留まり(具体的には、焼結接合層における長さ方向の利用比率)が低下することを抑制することができる。
【0016】
第1基材1の長さ方向の寸法L1は、3000mm(3m)以上120000mm(120m)以下であることが好ましい。
また、第2基材3の長さ方向の寸法L2及び焼結接合層2の長さ方向の寸法LSは、1000mm(1m)以上100000(100mm)以下であることが好ましい。
第2基材3の長さ方向の寸法L2及び焼結接合層2の長さ方向の寸法LSは、同一であってもよいし異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0017】
焼結接合層2における長さ方向の利用比率を十分に確保する観点から、L1は、LSの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい。
また、L1がLSよりも過度に長いことにより、後述するロールトゥーロール装置1000において、第1半導体チップB1に対して焼結接合層2の一部の転写を開始するタイミングが遅延したり、複数の半導体チップのそれぞれへの焼結接合層2の一部の転写が終了した後に、使用済みの焼結接合用シート10Bを巻回ローラに巻き取る時間が過度に長くなったりすることを抑制する観点から、L1は、LSの3.0倍以下であってもよいし、2.0倍以下であってもよいし、1.8倍以下であってもよいし、1.6倍以下であってもよい。
さらに、L1は、L2の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい。
また、L1は、L2の3.0倍以下であってもよいし、2.0倍以下であってもよいし、1.8倍以下であってもよいし、1.6倍以下であってもよい。
さらに、上記したように、LSとL2とは同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
L2は、LSの0.8倍以上1.2倍以下の範囲内であることが好ましく、0.9倍以上1.1倍以下の範囲内であることがより好ましい。
【0018】
第1基材1の長さ方向の一端と焼結接合層2の長さ方向の一端との間の距離ΔL1は、3000mm(3m)以上であってもよいし、5000mm(5m)以上であってもよいし、10000mm(10m)以上であってもよい。
前記ΔL1は、20000mm(20m)以下であってもよいし、15000mm(15m)以下であってもよい。
また、第1基材1の長さ方向の他端と焼結接合層2の長さ方向の他端との間の距離ΔL2も、前記ΔL1と同様の関係であってもよい。
ΔL1及びΔL2は、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aが使用されるロールトゥーロール装置に応じて適宜選択することができる。
例えば、
図5に示したようなロールトゥーロール装置1000を使用する場合、前記ΔL1及び前記ΔL2は、繰出ローラ100の軸部と該軸部と対向する転写ステージGの一端との間の距離ΔD1、及び、第2巻取ローラ200bの軸部と該軸部と対向する転写ステージGの他端との間の距離ΔD2に応じて適宜設定することができる。
また、
図5に示したようなロールトゥーロール装置1000を使用する場合、前記ΔL1及び前記ΔL2の少なくとも一方は、繰出ローラ100の繰り出し端LEから第2巻取ローラ200bの巻き取り端WEまでの搬送距離以上であることが好ましい。
さらに、前記ΔL1及び前記ΔL2の両方が、前記搬送距離以上であることがより好ましい。
ΔL1が前記搬送距離以上であることにより、繰出ローラ100から焼結接合用巻回シート10Aを繰り出すときに十分な繰り出し長さを確保することができる。
これにより、第1基材1の長さ方向の一端側に別の基材を繋ぎ合わせて、前記一端側の長さを延長させる手間を省くことができる。
その結果、繰出ローラ100から焼結接合用巻回シート10Aを効率良く繰り出すことができる。
また、ΔL2が前記搬送距離以上であることにより、第2巻取ローラ200bによって焼結接合層2が転写された後の焼結接合用巻回シート10A(使用済の焼結接合用巻回シート10A)を巻き取るときに十分な巻き取り長さを確保することができる。
これにより、第1基材1の長さ方向の他端側に別の基材を繋ぎ合わせて、前記他端側の長さを延長させる手間を省くことができる。
その結果、第2巻取ローラ200bによって、使用済の焼結接合用巻回シート10Aを効率良く巻き取ることができる。
なお、前記搬送距離とは、繰出ローラ100の繰り出し端LEから、第1搬送ローラ101、第2搬送ローラ102、第3搬送ローラ103、転写ステージG、及び、第4搬送ローラ104を経由して、第2巻取ローラ200bの巻き取り端WEに至るまでの距離を意味する。
【0019】
第3基材4の長さ方向の寸法L3は、焼結接合層2の長さ方向の寸法LSと同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
L3は、LSの0.8倍以上1.2倍以下の範囲内であることが好ましく、0.9以上1.1倍以下の範囲内であることがより好ましい。
【0020】
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、焼結接合層2及び第2基材3は、長さ方向に沿って、第1基材1上に連続的に積層されている(
図1A及び
図1B参照)。
一方で、焼結接合層2及び第2基材3は、
図2に示したように、長さ方向に沿って、第1基材1上に間欠的に積層されていてもよい。
また、
図2に示したように、焼結接合層2及び第2基材3が、長さ方向に沿って、第1基材1上に間欠的に積層されている場合、第3基材4も焼結接合層2上に間欠的に積層されていてもよい。
さらに、
図2に示したような焼結接合用シート10Bが長さ方向に巻回されて焼結接合用巻回シート10Aが構成されている場合には、当然のことながら、該焼結接合用巻回シート10Aでも、焼結接合層2、第2基材3、及び、第3基材4も、長さ方向に沿って、第1基材1上に間欠的に積層されている。
【0021】
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、第1基材1を上面視したときの表面積S1は、焼結接合層2を上面視したときの表面積SS、及び、第2基材3を上面視したときの表面積S2よりも大きいことが好ましい。
第1基材1を上面視したときの表面積S1が焼結接合層2を上面視したときの表面積SS及び第2基材3を上面視したときの表面積S2よりも大きいことにより、焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bの長さ方向L及び幅方向Wの少なくとも一方において、焼結接合層2及び第2基材3よりも外側に、第1基材1を配することができる。
第1基材1が長さ方向Lにおいて焼結接合層2及び第2基材3よりも外側に配されている場合においては、上で説明したように、焼結接合層2において、複数の半導体チップのそれぞれに転写させるための長さ方向Lにおける有効領域を十分に確保することができる。
これにより、後述するように、ロールトゥーロール装置1000を用いて半導体装置の製造を実施したときに、歩留まり(具体的には、焼結接合層2における長さ方向Lの利用比率)が低下することを抑制できる。
【0022】
また、後述するように、焼結接合用巻回シート10Aをロールトゥーロール装置1000にて長さ方向Lに沿って搬送しながら複数の半導体チップのそれぞれに焼結接合層2の一部を転写させるときには、繰り出された焼結接合用巻回シート10Aは、転写ステージG上において幅方向Wの両末端部分が治具などで保持されている。
そのため、焼結接合層2が、繰り出された焼結接合用巻回シート10Aの幅方向Wの両末端部分にまで形成されていると、前記治具による焼結接合層2の保持部分が多くなる。
しかしながら、第1基材1が幅方向Wにおいて焼結接合層2及び第2基材3よりも外側に配されている場合においては、焼結接合層2の幅方向Wの両端側において前記治具によって保持される部分を少なくしたり、無くしたりすることができる。
これにより、焼結接合層2において、複数の半導体チップのそれぞれを転写させるための幅方向Wにおける有効領域を十分に確保することができる。
その結果、ロールトゥーロール装置を用いて半導体装置の製造を実施したときに、歩留まり(具体的には、焼結接合層2における幅方向Wの利用比率)が低下することを抑制できる。
【0023】
なお、第1基材1が、長さ方向L及び幅方向Wの両方において、焼結接合層2及び第2基材3よりも外側に配されている場合においては、焼結接合層2における長さ方向L及び幅方向Wの両方での利用比率が低下することを抑制できる。
【0024】
表面積S1は、表面積SSの1.5倍以上であることが好ましく、1.8倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。
また、表面積S1は、表面積SSの3.0倍以下であってもよいし、2.5倍以下であってもよいし、2.2倍以下であってもよい。
なお、焼結接合層2が第1基材1上に間欠的に積層される場合においては、表面積SSとは、間欠的に積層された個々の焼結接合層2の表面積の合算値を意味する。
また、第2基材3が第1基材1上に間欠的に積層される場合においては、表面積S2とは、間欠的に積層された個々の第2基材3の表面積の合算値を意味する。
【0025】
また、第1基材1を上面視したときの表面積S1は、第3基材4を上面視したときの表面積S3よりも大きいことが好ましい。
表面積S1は、表面積S3の1.5倍以上であることが好ましく、1.8倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。
また、表面積S1は、表面積S3の3.0倍以下であってもよいし、2.5倍以下であってもよいし、2.2倍以下であってもよい。
なお、第3基材4が焼結接合層2上に間欠的に積層される場合においては、表面積S3とは、間欠的に積層された個々の第3基材4の表面積の合算値を意味する。
【0026】
第1基材1の幅方向の寸法W1は、焼結接合層2の幅方向の寸法WS、及び、第2基材3の幅方向の寸法W2よりも大きいことが好ましい。
これにより、後述するように、ロールトゥーロール装置1000を用いて半導体装置の製造を実施したときに、歩留まり(具体的には、焼結接合層2における幅方向Wの利用比率)が低下することをより一層抑制できる。
【0027】
第1基材1の幅方向の寸法W1は、20mm(2cm)以上1000mm(100cm)以下であることが好ましい。
また、第2基材3の幅方向の寸法W2及び焼結接合層2の幅方向の寸法WSは、10mm(1cm)以上500(50cm)以下であることが好ましい。
第2基材3の幅方向の寸法W2及び焼結接合層2の幅方向の寸法LSは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0028】
W1は、WSの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい。
また、W1は、WSの2.0倍以下であってもよいし、1.8倍以下であってもよいし、1.6倍以下であってもよい。
さらに、W1は、W2の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい。
また、W1は、W2の2.0倍以下であってもよいし、1.8倍以下であってもよいし、1.6倍以下であってもよい。
さらに、WSとW2とは同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
W2は、WSの0.8倍以上1.2倍以下の範囲内であることが好ましく、0.9倍以上1.1倍以下の範囲内であることがより好ましい。
【0029】
第1基材1の幅方向の一端と焼結接合層2の幅方向の一端との間の距離ΔW1は、3mm以上であってもよいし、5mm以上であってもよいし、10mm以上であってもよいし、20mm以上であってもよい。
前記ΔW1は、100mm以下であってもよいし、50mm以下であってもよいし、30mm以下であってもよい。
また、前記第1基材1の幅方向の他端と焼結接合層2の幅方向の他端との間の距離ΔW2も、前記ΔW1と同様の関係であってもよい。
ΔW1及びΔW2は、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aが備える第1基材1の幅方向の両端側それぞれにおいて、治具によって保持される寸法に応じて適宜選択することができる。
例えば、ΔW1及びΔW2は、治具によって保持される前記寸法以上の大きさとすることができる。
【0030】
第1基材1の幅方向の寸法W1は、第3基材4の幅方向の寸法W3よりも大きいことが好ましい。
【0031】
W1は、W3の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい。
また、W1は、W3の2.0倍以下であってもよいし、1.8倍以下であってもよいし、1.6倍以下であってもよい。
W3は、WSと同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
W3は、WSの0.8倍以上1.2倍以下の範囲内であることが好ましく、0.9倍以上1.1倍以下の範囲内であることがより好ましい。
【0032】
焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bの焼結接合層2は、該焼結接合層2に含まれる前記有機バインダによって、基板に仮固定されたり、半導体チップに転写されたりする。
すなわち、焼結接合層2を基板に仮固定しているときや半導体チップに転写しているときには、焼結接合層2中に前記有機バインダが残存している。
一方で、焼結接合層2は、該焼結接合層2中に含まれる焼結性粒子どうしが焼結されることによって、基板に対して半導体チップを接合する。
すなわち、基板に対して半導体チップが接合されている状態においては、焼結接合層2中において前記有機バインダの少なくとも一部が消失している。
また、上記のように、焼結性粒子どうしを焼結させることにより、基板に対して半導体チップを接合させることを考慮すると、焼結接合層2中の前記有機バインダの残存量は可能な限り少ないことが好ましい。
すなわち、焼結接合層2中には、前記有機バインダがほぼ残存していないことが好ましく、全く残存していないことがより好ましい。
【0033】
前記導電性金属としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、スズ、および、ニッケルなどが挙げられる。
また、前記導電性金属は、金、銀、銅、パラジウム、スズ、および、ニッケルからなる群から選択される2種以上の金属の合金であってもよい。
さらに、前記導電性金属は、酸化銀、酸化銅、酸化パラジウム、および、酸化スズなどの金属酸化物であってもよい。
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、前記焼結性粒子は、前記導電性金属として、銀、銅、酸化銀、及び、酸化銅からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
前記焼結性粒子が、前記導電性金属として、銀、銅、酸化銀、及び、酸化銅からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいることにより、後述するように、分割された焼結接合層2(焼結接合層の分割体2’)を介して半導体素子を基板における半導体素子の搭載領域に接合するときに、分割された焼結接合層2(焼結接合層の分割体2’)による接合性を十分に高めることができる。
また、焼結接合層2を高い導電性及び高い放熱性を有するものとする観点から、前記焼結性粒子は、前記導電性金属として、銀または銅を含んでいることが好ましい。
さらに、耐酸化性を考慮すると、前記導電性粒子としては、銀を用いることが好ましい。
例えば、分割された焼結接合層2(焼結接合層の分割体2’)において前記焼結性粒子どうしを焼結させることにより、リードフレーム基板のダイパッドに半導体チップなどの半導体素子を接合させるときに、前記導電性粒子が銅である場合には、窒素雰囲気下などの不活性環境下において上記接合を実施する必要があるものの、前記導電性粒子が銀である場合には、空気雰囲気下であっても上記接合を好適に実施することができる。
また、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、前記焼結性粒子は、コア部分と該コア部分を覆うシェル部分とを有するコアシェル構造を有する粒子であってもよい。前記コア部分を構成する導電性金属は、主成分として銅を含むものであってもよく、前記シェル部分を構成する導電性金属は、主成分として、金または銀を含むものであってもよい。
【0034】
前記焼結性粒子の形状としては、例えば、フレーク状、針状、フィラメント状、球状、扁平状(鱗片状を含む)のものを用いることができるが、これらの中でも、球状のものを用いることが好ましい。
前記焼結性粒子として球状のものを用いることにより、後述する焼結接合層2を得るためのワニス中において、前記焼結性粒子の分散性を高めることができる。
【0035】
前記焼結性粒子は、400℃以下の温度で加熱することにより焼結可能であってもよい。400℃以下の温度で加熱することにより焼結可能であるとは、400℃以下の温度で加熱したときに、粒子どうしの外表面にネッキングが認められるものを意味する。
前記焼結性粒子の焼結温度は、熱質量示差熱分析装置を用いて測定することができる。
具体的には、熱質量示差熱分析装置(例えば、Rigaku社製の示差熱天秤TG8120)を用いて以下のような条件で測定を行うことにより、Tg曲線とDTA曲線とを得て、Tg曲線の下がり際付近に認められる最も大きなDTA曲線のピークの温度を求めることにより得ることができる。
<測定条件>
・昇温速度:10℃/min
・測定雰囲気:大気
・測定温度範囲:常温(23±2℃)~500℃
【0036】
なお、前記導電性金属として、金、銀、銅、パラジウム、スズ、ニッケル、及び、これらの合金を含む焼結性粒子は、例えば、400℃以下の温度で加熱することにより焼結可能である。
【0037】
前記焼結性粒子の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
前記焼結性粒子の平均粒子径が上記下限値以上であることにより、後述する焼結接合層2を得るためのワニス中において、前記焼結性粒子の分散性を高めることができる。
これにより、得られる焼結接合層2は、前記焼結性粒子が好適に分散されたものとなる。
また、前記焼結性粒子の平均粒子径は、10000nm以下であることが好ましく、3000nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがより好ましい。
前記焼結性粒子の平均粒子径が前記上限値以下であることにより、焼結接合層2の表面を比較的平滑にすることができる。
前記焼結性粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて焼結接合層2の断面を観察することにより求めることができる。
具体的には、以下の手順にしたがって求めることができる。
(1)平面寸法10mm×10mm、厚さ50μm(0.05mm)の焼結接合層2を準備する。
(2)一表面に第1電極部を有する基板(平面寸法10mm×10mm、厚さ3mm)上に、焼結接合層2及び第2電極部を有するチップ(平面寸法10mm×10mm、厚さ0.2mm)をこの順に配して積層体を得た後、該積層体に焼結処理を施して焼結接合体を得る。前記焼結処理は、10MPaの加圧下にて、80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒で昇温した後、300℃で2.5分間保持する条件で実施する。
なお、焼結接合層2は前記第1電極部と当接するように前記基板上に配し、前記チップは前記第2電極部が焼結接合層2の露出面と当接するように配する。
(3)包埋用樹脂(SEM用)を用いて、前記焼結接合体の外表面全体を包埋した後、包埋された焼結接合体の外表面を研磨して整面する。
(4)ミリング装置を用いて、整面された前記焼結接合体を厚さ方向に沿って切断して、SEM観察用試料を得る。
(5)SEMを用いて前記SEM観察用試料の切断面を観察しながら該切断面の像を取得した後、取得した像を画像解析することにより前記焼結性粒子の平均粒子径を求める。
前記像の取得は加速電圧3kVの条件で実施し、前記画像解析は前記焼結性粒子のサイズに合わせて1万倍または10万倍のSEM画像を用いて実施する。
なお、前記画像解析は、取得した像を2値化処理して前記切断面に含まれる前記焼結性粒子のそれぞれを識別できるようにして実施することができる。
そして、前記切断面に含まれる前記焼結性粒子のそれぞれの円相当直径を算出した後、得られた円相当直径の算出値を算術平均することにより、前記焼結性粒子の平均粒子径を求めることができる。また、前記切断面において、外形の全てが現われていない焼結性粒子については、円相当直径の算出対象から除外する。
なお、円相当直径とは、前記切断面において前記焼結性粒子の面積を算出した後、その面積に相当する面積を有する真円に基づいて求められる直径のことである。
【0038】
前記導電性金属が銀である場合、すなわち、前記焼結性粒子が銀粒子である場合、該銀粒子は、銀元素及び不可避的不純物元素として含まれる他の元素(金属元素など)で構成された銀粒子であってもよいし、表面処理(例えば、シランカップリング処理)が施された銀粒子であってもよい。銀粒子の表面処理剤としては、脂肪酸系やアミン系、エポキシ系などの被覆剤が挙げられる。
なお、以下では、脂肪酸系やアミン系、エポキシ系などの被覆剤で表面処理された銀粒子のことを被覆剤処理銀粒子と称することがある。
前記焼結性粒子として被覆剤処理銀粒子を用いることにより、後述する半導体装置の製造などでの加熱処理により有機バインダの少なくとも一部が消失される前の焼結接合層2中において、前記有機バインダと前記焼結性粒子との親和性を高めることができる。
これにより、前記有機バインダの少なくとも一部が消失される前の焼結接合層2中において、前記焼結性金属粒子をより分散させ易くすることができる。
なお、前記有機バインダは、後述する半導体装置の製造において説明しているように、焼結接合層2を所定以上の温度で加熱することにより、少なくともその一部が焼結接合層2から消失される。
【0039】
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、焼結接合層2中における前記焼結性粒子の含有比率SCは、60質量%以上99質量%以下であることが好ましく、65質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上97質量%以下であることがより好ましい。
前記焼結性粒子の含有比率SCが上記数値範囲内であることより、焼結接合層2中において前記焼結性粒子どうしを焼結させることにより、リードフレーム基板のダイパッドに半導体チップなどの半導体素子を接合させる場合において、信頼性の高い接合を実現することができる。
【0040】
焼結接合層2中における前記焼結性粒子の含有比率SCは、焼結接合層2を燃焼させた後に残る灰分の量を求めることにより得ることができる。
前記焼結性粒子の含有比率SCは、例えば、熱質量分析装置(例えば、TG209F1)などを用いて測定することができる。
前記熱質量分析装置を用いた測定は、例えば、以下の手順にしたがって実施することができる。
(1)測定試料として50mg程度の焼結接合層2を用い、室温(23±2℃)から650℃まで前記測定試料に対して昇温を行う。
(2)650℃の温度で30分間保持させることにより前記焼結接合層2から有機バインダを熱分解させる。
(3)熱処理前の測定試料の質量(50mg程度)に対する残存成分(灰分)の質量の比率を求める。
なお、前記熱質量分析装置を用いた測定は、大気気流下で実施してもよいし、窒素気流下で実施してもよい。
ここで、銅粒子は上記のような分析時の温度において酸化の影響を受け易いことから、焼結接合層2が前記焼結性粒子として銅粒子を含んでいる場合には、前記熱質量分析装置を用いた測定は、窒素気流下で実施することが好ましい。
【0041】
焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいては、焼結接合層2は、前記有機バインダとして、第1有機バインダと、該第1有機バインダよりも分子量が小さい第2有機バインダとを含んでいることが好ましい。
【0042】
前記第1有機バインダは、熱分解性高分子バインダであることが好ましい。
前記熱分解性高分子バインダは、焼結性粒子どうしを焼結させることにより焼結接合を形成するための高温加熱過程において熱分解されるバインダである。
前記熱分解性高分子バインダは、前記高温加熱過程前までは、焼結接合層2をシート形状に保持するために寄与する要素である。
焼結接合層2をシート形状に保持する機能を担保する観点から、前記熱分解性高分子バインダは、常温(23±2℃)において固形の材料であることが好ましい。
このような熱分解性高分子バインダとしては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
すなわち、焼結接合層2は、前記第1有機バインダとして、前記ポリカーボネート樹脂及び前記アクリル樹脂の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
また、焼結接合層2は、前記第1有機バインダとして、前記ポリカーボネート樹脂のみを含んでいてもよい。
【0043】
前記ポリカーボネート樹脂としては、例えば、主鎖の炭酸エステル(-O-C-O-O-)間にベンゼン環などの芳香族化合物を含まずに脂肪族鎖からなる脂肪族ポリカーボネートや、主鎖の炭酸エステル(-O-C-O-O-)間に前記芳香族化合物を含む芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。
前記脂肪族ポリカーボネートとしては、例えば、ポリエチレンカーボネート及び、ポリプロピレンカーボネートなどが挙げられる。
前記芳香族ポリカーボネートとしては、例えば、主鎖にビスフェノールA構造を含むポリカーボネートなどが挙げられる。
【0044】
前記アクリル樹脂としては、例えば、炭素数が4~18の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体の少なくとも一方が挙げられる。
以下では、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を表し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を表す。
前記熱分解性高分子バインダとしてのアクリル樹脂を構成するための(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、および、オクタデシル基が挙げられる。
【0045】
前記アクリル樹脂は、上記(メタ)アクリル酸エステル以外の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含む重合体であってもよい。
前記他のモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、および、リン酸基含有モノマーが挙げられる。
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、および、クロトン酸が挙げられる。
前記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸が挙げられる。
前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および、(メタ)アクリル酸4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルが挙げられる。
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。
前記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
【0046】
前記第1有機バインダの質量平均分子量は、10000以上であることが好ましい。
前記第1有機バインダの質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により測定を実施し、ポリスチレン換算により算出される値を意味する。
【0047】
前記第2有機バインダは、低沸点バインダであることが好ましい。
前記低沸点バインダは、前記熱分解性高分子バインダの熱分解開始温度よりも沸点が低いバインダ成分である。
本実施形態では、低沸点バインダは、動的粘弾性測定装置(商品名「HAAKE MARS III」,Thermo Fisher Scientific社製)を使用して測定される23℃での粘度が1×105Pa・s以下を示す液状または半液状のものを意味する。
本粘度測定においては、治具として20mmφのパラレルプレートを使用し、プレート間ギャップを100μmとし、回転せん断におけるせん断速度を1s-1とする。
【0048】
前記低沸点バインダとしては、例えば、テルペンアルコール類、テルペンアルコールを除くアルコール類、アルキレングリコールアルキルエーテル類、および、アルキレングルコールアルキルエーテル類を除くエーテル類が挙げられる。
前記テルペンアルコール類としては、例えば、イソボルニルシクロヘキサノール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、カルベオール、および、α-テルピネオールが挙げられる。
前記テルペンアルコール類を除くアルコール類としては、例えば、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、1-デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、および、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールが挙げられる。
アルキレングリコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングルコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、および、トリプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
前記アルキレングルコールアルキルエーテル類を除くエーテル類としては、例えば、エチレングルコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエチルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエチルアセテート、および、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
前記低沸点バインダは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記低沸点バインダとしては、常温での安定性の点から、前記テルペンアルコール類を用いることが好ましく、前記テルペンアルコール類のなかでも、前記イソボルニルシクロヘキサノールを用いることがより好ましい。
【0049】
前記イソボルニルシクロヘキサノールは、下記式(1)で表される化合物である。
前記イソボルニルシクロヘキサノールは、沸点が308~318℃の有機化合物であり、200mL/minの窒素ガス気流下で、10℃/minの昇温条件にて、常温(23±2℃)から600℃まで昇温したときに、100℃以上から大きく質量減少し、245℃で揮発消失する(それ以上の質量減少が認められなくなる)という性質を有するとともに、25℃において1000000mPa・sもの極めて高い粘度を示すものの、60℃において1000mPa・s以下という比較的低い粘度を示すという性質を有する。なお、質量減少は、測定開始温度(常温)における質量減少率を0%とした場合の値である。
このように、イソボルニルシクロヘキサノールは、25℃において上記のごとく極めて高い粘度を示すため、常温においてシート形状を維持することができるものの、60℃では上記のごとく比較的低い粘度を示すようになるので、タック性を有するようになる。すなわち、イソボルニルシクロヘキサノールを含む焼結接合層2を備える焼結接合用シート10Bは、常温においてはシート形状の維持性に優れ、60℃以上の温度においてはタック性を有するようになるという傾向にある。
ここで、焼結接合層2の一方面に貼付された半導体素子をリードフレーム基板等にマウントする際には、通常、60~80℃の温度で、焼結接合層2を介して半導体素子をリードフレーム基板等の被着体に仮着(仮固定)させるが、イソボルニルシクロヘキサノールは上記のごとく60℃以上においてタック性を有するようになる。
そのため、本実施形態に係る焼結接合用シート10Bにおいて、焼結接合層2が前記第2有機バインダとしてイソボルニルシクロヘキサノールを含む場合、焼結接合層2は、リードフレーム基板等の被着体への仮固定性がより向上されたものとなる。すなわち、仮固定した状態において、半導体素子の取り付け位置がずれたり、被着体からの焼結接合層2の浮き上がりが抑制されるようになる。
【0050】
【0051】
焼結接合層2が、前記有機バインダとして、前記第1有機バインダと、該第1有機バインダよりも分子量が小さい前記第2有機バインダとを含んでいる場合、前記第2有機バインダの含有量は、前記第1有機バインダの含有量よりも高くてもよい。
このような場合、前記第1有機バインダの含有比率をBC1とし、前記第2有機バインダの含有比率をBC2としたときに、前記BC1及び前記BC2は、BC1:BC2=6:4~0.5:9.5の関係を満たしていることが好ましい。
前記BC1及び前記BC2は、BC1:BC2=5:5~1:9の関係を満たしていることがより好ましく、BC1:BC2=4:6~2:8の関係を満たしていることがより好ましい。
【0052】
前記第1有機バインダの含有比率BC1は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましい。
また、前記第1有機バインダの含有比率BC1は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
前記第2有機バインダの含有比率BC2は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましい。
また、前記第2有機バインダの含有比率BC2は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいて、焼結接合層2の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bにおいて、焼結接合層2の厚さは、300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
焼結接合層2の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5箇所の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0055】
焼結接合層2は、例えば、前記焼結性粒子と前記有機バインダとを有機溶剤に溶解・懸濁させることによりワニスを調製し、前記ワニスを第1基材1上に所定厚さで塗布した塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥させることにより作製することができる。
前記ワニスを調製するための前記有機溶剤としては、例えば、エタノールなどのアルコール類やメチルエチルケトン(MEK)などのケトン類を用いることができる。
【0056】
第1基材1は、
図1Aの焼結接合用巻回シート10A及び
図1Bの焼結接合用シート10Bにおいて支持体として機能する。
第1基材1は、例えば、プラスチック基材で構成されている。
前記プラスチック基材としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。
前記プラスチック基材の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂、アラミド樹脂、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、および、シリコーン樹脂などが挙げられる。
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン-ブテン共重合体樹脂、および、エチレン-ヘキセン共重合体樹脂などが挙げられる。
前記ポリエチレン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
また、前記ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂、ブロック共重合ポリプロピレン樹脂、ホモポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、および、ポリブチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。
第1基材1は、1種の構成材料から構成されてもよいし、2種以上の構成材料から構成されていてもよい。
第1基材1は、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。
なお、単層構造とは、1種の構成材料から構成された構造を意味する。例えば、1種の構成材料から構成された層を2層以上積層させたものは単層構造に分類される。
これに対し、多層構造は、異なる構成材料で構成された2以上の層を積層させた構造を意味する。
第1基材1がプラスチックフィルムからなる場合、第1基材1は、無延伸フィルムで構成されていてもよいし、延伸フィルムで構成されていてもよい。
また、前記延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0057】
前記プラスチック基材は、前記ポリオレフィン樹脂、前記ポリエステル樹脂、前記ポリイミド樹脂、または、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂で構成されていることが好ましい。
また、前記ポリオレフィン樹脂は、前記ポリエチレン樹脂であることが好ましく、前記ポリエステル樹脂は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
前記ポリエチレン樹脂で構成されたプラスチック基材の市販品としては、例えば、日東電工社製の商品名「E-MASK(登録商標)R-100」及び商品名「E-MASK(登録商標)R-200」、並びに、日東電工社製の商品名「サンマップLC-T5320T」などが挙げられる。
なお、「サンマップLC-T5320T」は、30%の気孔率を有する多孔質プラスチック基材である。
前記ポリエチレンテレフタレー樹脂で構成されたプラスチック基材の市販品としては、例えば、日東電工社製の商品名「E-MASK(登録商標)CP170」などが挙げられる。
前記ポリイミド樹脂で構成されたプラスチック基材の市販品としては、例えば、日東電工社製の商品名「TRM-6250L」などが挙げられる。
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂で構成されたプラスチック基材の市販品としては、例えば、日東電工社製の商品名「NIFTRON(登録商標)9030UL」などが挙げられる。
【0058】
第1基材1は、30μm以上150μm以下の厚さを有することが好ましい。
第1基材1は、31μm以上の厚さを有することがより好ましく、35μm以上の厚さを有することがより好ましい。
第1基材1は、148μm以下の厚さを有することがより好ましく、145μm以下の厚さを有することがより好ましい。
第1基材1の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5箇所の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0059】
第1基材1は、焼結接合層2または第2基材3との接触面を有しており、該接触面をナノインデンテーション法で測定することによって求められる23℃におけるヤング率が、0.5GPa以上5.0GPa以下であることが好ましい。
前記ヤング率が、5.0GPa以下であることにより、後述するように、コレットAを用いて第1半導体チップB1や第2半導体チップB2を焼結接合層2に押し付けたときに、第1半導体チップB1や第2半導体チップB2と当接する焼結接合層2の部分全体に押圧力がかかり易くなる。
その結果、焼結接合層2の一部が、第1半導体チップB1や第2半導体チップB2に十分に転写され易くなる。
また、後述するように、第1基材1をクッション部材CM上に配した状態で、コレットAを用いて第1半導体チップB1や第2半導体チップB2を焼結接合層2に押し付けたときに、前記押し付けによって第1基材1に反発力が生じることを十分に抑制することができる。
その結果、焼結接合層2の一部を第1半導体チップB1や第2半導体チップB2により十分に転写させることができる。
また、前記ヤング率が、0.5GPa以上であることにより、後述するように、コレットAを用いて第1半導体チップB1や第2半導体チップB2を焼結接合層2に押し付けたときに、第1半導体チップB1や第2半導体チップB2を押し付けた方向に十分に押圧力が加わり易くなる。
すなわち、前記押圧力が、前記押し付けた方向以外の方向、例えば、前記押し付けた方向と直交する方向に分散されてしまうことを十分に抑制することができる。
その結果、焼結接合層2の一部が、第1半導体チップB1や第2半導体チップB2に十分に転写され易くなる。
【0060】
前記ヤング率は、0.7GPa以上であることがより好ましく、0.9GPa以上であることがより好ましい。
前記ヤング率は、4.0GPa以下であることがより好ましく、3.5GPa以下であることがより好ましい。
【0061】
前記ヤング率は、ISO14577(計装化押し込み試験)のナノインデンテーション法によって求めることができる。
具体的には、微小硬度計(島津製作所社製、DUH-211)を用いて、以下の条件で測定できる。
・圧子:Berkovich圧子
・試験モード:負荷-除荷試験
・試験力:0.98mN
・最小試験力:0.002mN
・負荷、除荷速度:1.0mN/秒
・負荷保持時間:5.0秒
・除荷保持時間:5.0秒
・Cf-Ap補正あり
【0062】
なお、ナノインデンテーション法とは、試料の諸物性をナノメートルスケールで測る方法である。
前記ナノインデンテーション法では、ステージ上にセットされた試料に圧子を押し込む過程(荷重印加過程)とそれにより後に試料から圧子を引き抜く過程(除荷過程)とが少なくとも実施されて、一連の過程中、圧子-試料間に作用する荷重と、試料に対する圧子の相対変位とが測定される。
その結果、荷重-変位曲線が得られる。この荷重-変位曲線から、ナノメートルスケール測定に基づく試料の物性(硬さ、弾性率、粘着力など)を求めることができる。
【0063】
第1基材1は、23℃において、4%以上350%以下の引張伸びを有することが好ましい。
23℃において、第1基材1の引張伸びが4%以上であることにより、焼結接合用シート10Bを巻き取って焼結接合用巻回シート10Aとするときに、第1基材1と第2基材3との平面寸法差により、第1基材1から第2基材3がはく離することを抑制できる。
また、23℃において、第1基材1の引張伸びが350%以下であることにより、焼結接合用シート10Bを巻き取って焼結接合用巻回シート10Aとするときに、第1基材1が過度に伸びすぎることによって、焼結接合用シート10Bが巻き取り難くなることを抑制できる。
第1基材1は、23℃において、10%以上の引張伸びを有することがより好ましく、30%以上の引張伸びを有することがより好ましく、50%以上の引張伸びを有することがより好ましい。
第1基材1は、23℃において、300%以下の引張伸びを有することがより好ましく、200%以下の引張伸びを有することがより好ましく、150%以下の引張伸びを有することがより好ましい。
第1基材1の23℃における引張伸びは、引張試験機(島津製作所社製、商品名「オートグラフAG-X」)を用いて、引張速度300mm/minの条件で引張試験を実施することにより求めることができる。
具体的には、前記引張試験において、引張強度が破断点に達したときの第1基材1の伸び率を引張伸びとして求めることができる。
なお、前記引張試験は、第1基材1を幅1cm×長さ3cmの平面寸法を有するように切り出したものを試験片とし、該試験片を長さ方向(第1基材1の長さ方向)に引っ張ることにより実施する。
【0064】
第1基材1は、気孔率が10%以下であることが好ましい。
第1基材1は、気孔率が5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがより好ましい。
第1基材1の気孔率は、0%であってもよいし、0.1%であってもよいし、0.3%であってもよいし、0.5%以上であってもよい。
第1基材1の気孔率Pは、第1基材1の見掛け密度ρaの値と第1基材1の真密度ρtの値とを用いて、以下の式により算出することができる。
P=(1-ρa/ρt)×100
なお、見掛け密度ρaは、第1基材1の面密度に第1基材1の厚さを乗ずることにより求めることができる。
また、真密度ρtは、第1基材1を粉砕して気孔を有さない試料を得た後、アルキメデスの原理にて前記試料の密度を測定することにより求めることができる。
【0065】
第2基材3及び第3基材4は、焼結接合層2における第1基材1と対向する面と該面の反対面とを保護するために備えられる。
第2基材3及び第3基材4は、第1基材1と同様に、プラスチック基材で構成されていることが好ましい。
前記プラスチック基材としては、第1基材1の項で説明したものと同様のものを用いることができる。
また、第2基材3及び第3基材4は、後述するように、焼結接合用巻回シート10Aを用いて半導体装置を製造するときに、分割された焼結接合層2(焼結接合層の分割体2’)を容易に剥離させることができるようなはく離シートとして機能することが好ましい。
第2基材3及び第3基材4がはく離シートとして機能する場合、第2基材3及び第3基材4焼結接合層2と当接する面には、はく離剤が塗布されていてもよい。
【0066】
第2基材3及び第3基材4は、5μm以上の厚さを有することが好ましく、10μm以上の厚さを有することがより好ましく、20μm以上の厚さを有することがより好ましい。
第2基材3及び第3基材4は、1000μm以下の厚さを有することが好ましく、500μm以下の厚さを有することがより好ましく、200μm以下の厚さを有することがより好ましい。
第2基材3及び第3基材4の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5箇所の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0067】
なお、焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bは、
図1A及び1Bに示したように構成されたものに限られない。
具体的には、焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bは、第1基材1上に、第2基材3、焼結接合層2、及び、第3基材4がこの順に配されて構成されたものに限られない。
例えば、
図3A及び3Bに示したように、焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bは、第3基材4における焼結接合層2と対向する面の反対面に第4基材5を備えるものであってもよい。
【0068】
焼結接合用巻回シート10A及び焼結接合用シート10Bが、
図3A及び3Bに示したように構成される場合、第4基材5の長さ方向の寸法L
4は、焼結接合層2の長さ方向の寸法L
S、第2基材3の長さ方向の寸法L
2、及び、第3基材4の長さ方向の寸法L
3よりも大きいことが好ましい。
第4基材5の長さ方向の寸法L
4が焼結接合層2の長さ方向の寸法L
Sよりも大きいことにより、第3基材4を伴った状態で、第1巻取ローラ200aに第4基材5を巻き取らせることができる。
これにより、焼結接合用巻回シート10Aが第3基材4のみを備えている場合に比べて、第1巻取ローラ200aによって第3基材4を巻き取り易くなる。
すなわち、焼結接合層2の一方面(第3基材4で保護されている側の面)を露出させ易くなる。
なお、第4基材5の長さ方向の寸法L
4は、第1基材1の長さ方向の寸法L
1と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
また、第4基材5を上面視したときの表面積S4は、焼結接合層2を上面視したときの表面積SS、第2基材3を上面視したときの表面積S2、及び、第3基材4を上面視したときの表面積S3よりも大きいことが好ましい。
なお、第4基材5を上面視したときの表面積S4は、第1基材1を上面視したときの表面積S1と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
さらに、第4基材5の幅方向の寸法W4は、焼結接合層2の幅方向の寸法WS、第2基材3の幅方向の寸法W3、及び、第3基材4の幅方向の寸法W3よりも大きいことが好ましい。
なお、第4基材5の幅方向の寸法W4は、第1基材1の幅方向の寸法W1と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
(半導体装置の製造方法)
次に、
図4A~
図9Bを参照しながら、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aを用いた半導体装置の製造方法の一例について説明する。
具体的には、
図1Aに示したような、第1基材1、第2基材3、焼結接合層2、及び、第3基材4がこの順に配されて構成された焼結接合用巻回シート10Aを用いて、半導体装置を製造する方法の一例について説明する。
【0071】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、複数の半導体チップと、前記複数の半導体チップが搭載される複数の搭載領域を備えた基板と、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aと、焼結接合用巻回シート10Aの焼結接合層2の一部を介在させた状態で前記半導体チップを前記基板に向けて押圧して前記複数の半導体チップを前記複数の搭載領域に接着する第1押圧部材と、を用いて実施される。
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、前記複数の半導体チップを、順に、前記第1押圧部材で前記複数の半導体チップを順に押圧して前記複数の搭載領域に仮固定する。
【0072】
なお、以下では、前記基板がリードフレーム基板であり、前記搭載領域がダイパッドであり、前記第1押圧部材がコレットである場合について説明する。
また、以下では、ロールトゥーロール装置1000を用いて、複数の半導体チップのそれぞれに、焼結接合用巻回シート10Aが備える焼結接合層2の一部を転写させる例について説明する。
【0073】
まず、ダイシングテープC上で半導体ウェハを切断することにより、複数の半導体チップを得る(
図4A参照)。
次に、
図4Aに示したように、コレットAによって、複数の半導体チップのうちの一の半導体チップB1(以下、第1半導体チップB1ともいう)をダイシングテープCから持ち上げる。
なお、半導体チップは、通常、平面矩形状をなしている。より具体的には、半導体チップは、平面正方形状をなしている。
また、半導体チップの厚みは、例えば、10μm以上500μm以下である。半導体チップの厚みは、20μm以上400μm以下であることが好ましい。
また、半導体チップの平面視における面積は、例えば、0.01mm
2以上1000mm
2以下である。半導体チップの平面視における面積は、0.04mm
2以上500mm
2以下であることが好ましい。
さらに、半導体チップと当接する側のコレットAの平面寸法は、チップサイズに相当する寸法である。
すなわち、半導体チップと当接するコレットAの面の平面視における面積S1a(以下、コレット面積S1aともいう)は、半導体チップの平面視における面積S2a(以下、チップ面積S2aともいう)に相当する大きさである。
より具体的には、コレット面積S1aは、チップ面積S2aの0.9倍以上1.1倍以下の大きさである。
【0074】
次に、ロールトゥーロール装置1000を用いて、第1半導体チップB1に焼結接合用巻回シート10Aの焼結接合層2の一部を転写させる。
【0075】
図5に示したように、ロールトゥーロール装置1000は、繰出ローラ100と、繰出ローラ100よりも下流側に配された転写ステージGと、転写ステージGよりも下流側に配された一対の第1巻取ローラ200a及び第2巻取ローラ200bとを備えている。
ここで、
図1Aに示したように、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aは、第1基材1と、該第1基材1上に積層される第2基材3と、該第2基材3上に積層される焼結接合層2と、該焼結接合層2上に積層される第3基材4とを備えている。
すなわち、本実施形態に係る焼結接合用巻回シート10Aは、第1基材1、第2基材3、焼結接合層2、及び、第3基材4がこの順に積層された4層構成となっている。
そして、第1巻取ローラ200aでは、複数の半導体チップのそれぞれを当接させるための露出面を焼結接合層2に形成すべく、焼結接合層2の一表面から剥離させた第3基材4が巻き取られる。
また、第2巻取ローラ200bでは、複数の半導体チップのそれぞれに焼結接合層2の一部が転写された後、転写後のシート体が巻き取られる。
なお、転写後のシート体とは、第1基材1、第2基材3、及び、焼結接合層2の残部がこの順に積層されたシート積層体を意味する。
【0076】
ロールトゥーロール装置1000は、繰出ローラ100から繰り出された焼結接合用巻回シート10Aを転写ステージGに向けて搬送するために、繰出ローラ100と転写ステージGとの間に、上流側から下流側に向けて、第1搬送ローラ101、第2搬送ローラ102、及び、第3搬送ローラ103をこの順で備えている。
また、ロールトゥーロール装置1000は、転写ステージGと第2巻取ローラ200bとの間に、転写ステージGから第2巻取ローラ200bに向けて前記転写後のシート体を搬送するための第4搬送ローラ104を備えている。
さらに、ロールトゥーロール装置1000は、第1巻取ローラ200aで巻き取るべく第3基材4を搬送するために、第2搬送ローラ102と第1巻取ローラ200aとの間に、上流側から下流側に向けて、第5搬送ローラ105及び第6搬送ローラ106をこの順で備えている。
また、第1搬送ローラ101~第6搬送ローラ106は、搬送中のシート体にテンションを付与している。
【0077】
なお、第1搬送ローラ101及び第2搬送ローラ102では、繰り出された焼結接合用巻回シート10Aが搬送され、第3搬送ローラ103では、第3基材4が剥離されて焼結接合層2の一表面が露出された転写前のシート体が搬送される。
また、第4搬送ローラ104では、上記したように、転写後のシート体が搬送され、第5搬送ローラ105及び第6搬送ローラ106では、上記したように、第3基材4が搬送される。
さらに、転写ステージGにおいて、複数の半導体チップのそれぞれへの焼結接合層2の一部の転写を実施しているときには、第1搬送ローラ101~第6搬送ローラ106は停止している。
すなわち、転写ステージG上においては、焼結接合層2が静置された状態で、複数の半導体チップのそれぞれへの焼結接合層2の一部の転写が実施される。
【0078】
具体的には、第1半導体チップB1への焼結接合層2の一部の転写は、
図6Aに示したように、焼結接合層2を静置させた状態で、焼結接合層2に第1半導体チップB1をコレットAで押し付けることにより実施する。これにより、分割された焼結接合層2(以下、焼結接合層の分割体2’ともいう)付の第1半導体チップB1が得られる。
また、
図6Aに示したように、第1半導体チップB1への焼結接合層2の一部の転写は、第1基材1と転写ステージGとの間にクッション部材CMを介在させて実施することが好ましい。
すなわち、クッション部材CM、第1基材1、及び、焼結接合層2をこの順に転写ステージG上に静置した状態で、第1半導体チップB1への焼結接合層2の一部の転写を実施することが好ましい。
このように、クッション部材CM上に第1基材1を配することにより、コレットAを用いて第1半導体チップB1や第2半導体チップB2を焼結接合層2に押し付けるときに、前記押し付けによって第1基材1に反発力が生じることを十分に抑制することができる。
その結果、焼結接合層2の一部を第1半導体チップB1や第2半導体チップB2により十分に転写させることができる。
クッション部材CMとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂、または、多孔質ポリエチレンで構成されたフィルムを用いることができる。
前記フッ素ゴムとしては、二元系型フッ素ゴム、及び、三元系型フッ素ゴムなどが挙げられる。
前記二元系型フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VDF)と6フッ化プロピレン(HFP)との共重合体などが挙げられ、前記三元系型フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VDF)と6フッ化プロピレン(HFP)と4フッ化エチレン(TFE)との共重合体、及び、フッ化ビニリデン(VDF)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)と4フッ化エチレン(TFE)との共重合体などが挙げられる。
また、前記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
第1半導体チップB1を焼結接合層2に押し付ける圧力は、0.01MPa以上10MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上5MPa以下であることがより好ましい。
また、第1半導体チップB1を焼結接合層2に押し付けるときのコレットAまたは転写ステージGの温度は、40℃以上150℃以下であることが好ましく、50℃以上130℃以下であることがより好ましい。
コレットAまたは転写ステージGの温度を上記範囲内とすることにより、
焼結接合層2の一部を押し切ることができ、これにより、焼結接合層の分割体2’を第1半導体チップB1に好適に転写させることができる。
【0079】
次に、
図7Aに示したように、繰り出された焼結接合用巻回シート10Aから焼結接合層の分割体2’付の第1半導体チップB1をコレットAで持ち上げる。
【0080】
次に、
図8Aに示したように、リードフレーム基板DをステージH上に載置する。
次に、25℃以上100℃以下の範囲内のいずれかの温度でコレットAを保持した状態で、コレットAを鉛直下方に降下させて、焼結接合層の分割体2’付の第1半導体チップB1における焼結接合層の分割体2’をリードフレーム基板Dの第1ダイパッドE1に当接させる。
そして、焼結接合層の分割体2’付の第1半導体チップB1をコレットAで押し付ける(押圧する)。
詳しくは、第1半導体チップB1をコレットAで押圧して、焼結接合層の分割体2’をリードフレーム基板Dの第1ダイパッドE1に取り付ける。
これにより、焼結接合層の分割体2’を介して、リードフレーム基板Dの第1ダイパッドE1に第1半導体チップB1を仮固定する(
図8A参照)。
焼結接合層の分割体2’付の第1半導体チップB1を焼結接合層の分割体2’側からリードフレーム基板Dの第1ダイパッドE1に押し付けるときに圧力は、0.01MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上30MPa以下であることがより好ましい。
【0081】
上記のように、リードフレーム基板Dの第1ダイパッドE1に第1半導体チップB1を仮固定した後、
図4Bに示したように、コレットAによって、複数の半導体チップのうちの他の半導体チップB2(以下、第2半導体チップB2ともいう)をダイシングテープCから持ち上げる。
【0082】
次に、
図6Bに示したように、繰り出された焼結接合用巻回シート10Aの焼結接合層2に第2半導体チップB2をコレットAで押し付けることにより、第2半導体チップB2に焼結接合層2の一部を転写させる。これにより、焼結接合層の分割体2’付の第2半導体チップB2が得られる。
【0083】
次に、
図7Bに示したように、コレットAによって、焼結接合層の分割体2’付の第2半導体チップB2をダイシングテープCから持ち上げる。
次に、コレットAを25℃以上150℃以下の範囲内のいずれかの温度で保持した状態で、焼結接合層の分割体2’付の第2半導体チップB2を焼結接合層の分割体2’側からリードフレーム基板Dにおける他のダイパッドE2(第2ダイパッドE2)に当接させる。
そして、焼結接合層の分割体2’付の第2半導体チップB2をコレットAで押し付ける(押圧する)。
これにより、焼結接合層の分割体2’を介して、リードフレーム基板Dの第2ダイパッドE2に第2半導体チップB2を仮固定する(
図8B参照)。
以上の工程を、リードフレーム基板Dの全てのダイパッドに半導体チップが仮固定されるまで順に繰り返す。
【0084】
なお、リードフレーム基板Dの第1ダイパッドE1に第1半導体チップB1を仮固定した後や、リードフレーム基板Dの第2ダイパッドE2に第2半導体チップB2を仮固定した後などにおいて、焼結性粒子(焼結接合層の分割体2’に含まれている焼結性粒子)が焼結可能となる温度までコレットAを加熱することにより、焼結接合層の分割体2’において前記焼結性粒子どうしを一次焼結させてもよい。
すなわち、リードフレーム基板Dのダイパッドに仮固定する半導体チップとして、第1半導体チップB1及び第2半導体チップB2以外のものが存在する場合には、それらの半導体チップを各ダイパッドに仮固定するために用いた焼結接合層の分割体2’のそれぞれに含まれる焼結性粒子についても前記一次焼結を実施してもよい。
【0085】
焼結接合層の分割体2’に含まれる前記焼結性粒子が400℃以下の温度で加熱することにより焼結可能な焼結性粒子である場合、コレットAは、200℃以上の温度まで加熱されることが好ましい。
コレットAが200℃以上の温度まで加熱されることにより、前記焼結性粒子どうしをより十分に焼結させることができるので、焼結接合層の分割体2’を介在させた状態で、リードフレーム基板Dの各ダイパッドに半導体チップのそれぞれをより強固に取り付けることができる。
すなわち、リードフレーム基板Dなどの基板に対する、第1半導体チップB1や第2半導体チップB2などの半導体チップの接続信頼性を向上させることができる。
【0086】
また、前記一次焼結を実施する場合、コレットAは、前記焼結性粒子が焼結可能となる温度まで急速に(5秒程度で)加熱されることが好ましい。
コレットAは、前記焼結性粒子が焼結可能となる温度まで、30℃/sec以上で加熱されることが好ましく、45℃/sec以上で加熱されることがより好ましい。
なお、前記一次焼結は、コレットAに加えて、前記焼結性粒子が焼結可能となる温度以上にステージHを加熱して実施してもよい。
これにより、焼結接合層の分割体2’の両面側から加熱を行うことができるので、焼結接合層の分割体2’において前記焼結性粒子どうしをより一層十分に焼結させることができる。その結果、焼結接合層の分割体2’を介在させた状態で、リードフレーム基板Dの各ダイパッドに半導体チップのそれぞれをより一層強固に取り付けることができる。
すなわち、リードフレーム基板Dなどの基板に対する、第1半導体チップB1や第2半導体チップB2などの半導体チップの接続信頼性をより一層向上させることができる。
また、ステージHを加熱する温度は、リードフレーム基板Dの酸化を抑制する温度以下であることが好ましい。例えば、リードフレーム基板DがCu合金(Cu-Cr-Zr、Cu-Cr-Sn-Zn、Cu-Ni-Si-Mgなど)で構成されている場合には、ステージHを加熱する温度は、150℃以下であることが好ましい。
【0087】
なお、上記のように、焼結接合層の分割体2’について一次焼結を実施した場合においては、該一次焼結を実施した後に、コレットAを持ち上げて、焼結接合層の分割体2’付の半導体チップから離間させることにより、コレットAの温度を前記焼結性粒子が焼結し難くなる温度(例えば、50℃)まで低下させることが好ましい。
【0088】
また、リードフレーム基板Dの全てのダイパッドに半導体チップを取り付けるに際して、焼結接合層の分割体2’のそれぞれに前記一次焼結を実施した場合においては、必要箇所にボンディングワイヤをボンディングしてもよい。
【0089】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、前記複数の半導体チップを順に押圧して前記複数の搭載領域に仮固定した後に、前記複数の半導体チップが取り付けられた前記基板を、前記焼結性粒子が焼結可能な温度で加熱する加熱工程を実施してもよい。
また、前記加熱工程では、前記複数の半導体チップのうちの一部または全部を前記基板に向けて押圧することなく前記加熱が実施されてもよい。
さらに、前記加熱工程では、前記複数の半導体チップのうちの全部を前記基板に向けて押圧することなく前記加熱が実施されてもよい。
なお、上記のように、焼結接合層の分割体2’に含まれる焼結性粒子どうしを一次焼結させるための加熱(1次加熱)を実施している場合には、上記加熱工程は、2次加熱工程となる。
【0090】
より具体的には、リードフレーム基板Dの全てのダイパッドに半導体チップが仮固定された後、
図9Aに示したように、リードフレーム基板Dの全てのダイパッドに取り付けられた半導体チップの一部または全部を押圧していない状態で、焼結接合層の分割体2’に含まれる焼結性粒子が焼結可能となる温度(例えば、200℃以上400℃以下の範囲のいずれかの温度)までステージHを加熱してもよい(加熱工程を実施してもよい)。
なお、
図9Aでは、リードフレーム基板Dの全てのダイパッド(第1ダイパッドE1及び第2ダイパッドE2)に取り付けられた半導体チップ(第1半導体チップB1及び第2半導体チップB2)の全部を押圧しない状態で加熱する例を示している。
このような加熱工程を実施することにより、前記焼結性粒子どうしを焼結させることができるので、焼結接合層の分割体2’を介在させた状態で、半導体チップを基板(リードフレーム基板D)に強固に取付けることができる。
すなわち、基板に対する半導体チップの接続信頼性を向上させることができる。
また、加熱工程に用いる設備を、前記複数の半導体チップのうちの一部または全部を押圧する押圧部材を備えない簡便なものとすることができる。
なお、このような加熱工程を行う場合においても、加熱工程後に、必要箇所にボンディングワイヤをボンディングしてもよい。
【0091】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、前記焼結性粒子が焼結可能な温度で加熱する加熱工程にて、前記複数の半導体チップのうちの一部または全部を前記基板に向けて押圧しつつ前記加熱が実施されてもよい。
さらに、本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、前記加熱工程にて、前記複数の半導体チップのうちの全部を前記基板に向けて押圧しつつ加熱が実施されてもよい。
【0092】
より具体的には、リードフレーム基板Dの全てのダイパッドに半導体チップが仮固定された後、
図9Bに示したように、リードフレーム基板Dの全てのダイパッドに取り付けられた一部または全部の半導体チップを上下方向から挟持できるように配された2枚の平板(平行平板)を有するとともに、加熱可能に構成された加熱加圧装置Fを用いて、リードフレーム基板Dの全てのダイパッドに取り付けられた一部または全部の半導体チップを加圧しながら(押圧しながら)焼結可能な温度で加熱してもよい。
なお、
図9Bでは、リードフレーム基板Dの全てのダイパッド(第1ダイパッドE1及び第2ダイパッドE2)に取り付けられた半導体チップ(第1半導体チップB1及び第2半導体チップB2)の全部を押圧しながら加熱する例を示している。
このような加熱工程を実施すれば、複数の半導体チップのうちの一部または全部を基板(リードフレーム基板D)に向けて押圧しつつ加熱を行うことができるので、複数の半導体チップのうちの一部または全部を、焼結接合層の分割体2’を介在させた状態で、基板(リードフレーム基板D)に強固に取付けることができる。
すなわち、基板に対する半導体チップの接続信頼性を向上させることができる。
なお、このような加熱工程を行う場合においても、加熱工程後に、必要箇所にボンディングワイヤをボンディングしてもよい。
【0093】
リードフレーム基板Dとしては、各種公知のリードフレーム基板を用いることができる。各種公知のリードフレーム基板としては、例えば、Cuリードフレーム基板にAgメッキ処理が施されたリードフレーム基板や、Cuリードフレーム基板に、Ni、Pd、Auをこの順にメッキしたリードフレーム基板(Palladium Pre Plated Lead Frame。Pd-PPF)などが挙げられる。
【0094】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0095】
(1)
第1基材と該第1基材上に積層された焼結接合層とを備え、かつ、帯状に形成された焼結接合用シートが長さ方向に巻回されて構成された焼結接合用巻回シートであって、
前記焼結接合層は、導電性金属を含有する焼結性粒子と、有機バインダとを含んでいて、直接的に前記第1基材上に積層されるか、あるいは、第2基材を介在させて間接的に前記第1基材上に積層されており、
前記第1基材の長さ方向の寸法L1は、前記焼結接合層の長さ方向の寸法LS及び前記第2基材の長さ方向の寸法L2よりも大きい
焼結接合用巻回シート。
【0096】
(2)
前記焼結接合層における前記第1基材と対向する面の反対面に第3基材を備えており、
前記第1基材の長さ方向の寸法L1は、前記第3基材の長さ方向の寸法L3よりも大きい
上記(1)に記載の焼結接合用巻回シート。
【0097】
(3)
前記焼結接合層及び前記第2基材は、長さ方向に沿って、前記第1基材上に連続的または間欠的に積層されている
上記(1)または(2)に記載の焼結接合用巻回シート。
【0098】
(4)
前記第1基材を上面視したときの表面積S1は、前記焼結接合層を上面視したときの表面積SS、及び、前記第2基材を上面視したときの表面積S2よりも大きい
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0099】
(5)
前記第1基材を上面視したときの表面積S1は、前記第3基材を上面視したときの表面積S3よりも大きい
上記(2)乃至(4)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0100】
(6)
前記第1基材の幅方向の寸法W1は、前記焼結接合層の幅方向の寸法WS、及び、前記第2基材の幅方向の寸法W2よりも大きい
上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0101】
(7)
前記第1基材の幅方向の寸法W1は、前記第3基材の幅方向の寸法W3よりも大きい
上記(2)乃至(6)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0102】
(8)
前記第3基材における前記焼結接合層と対向する面の反対面に第4基材を備えており、
前記第4基材の長さ方向の寸法L4は、前記焼結接合層の長さ方向の寸法LS、前記第2基材の長さ方向の寸法L2、及び、前記第3基材の長さ方向の寸法L3よりも大きい
上記(2)に記載の焼結接合用巻回シート。
【0103】
(9)
前記第4基材を上面視したときの表面積S4は、前記焼結接合層を上面視したときの表面積SS、前記第2基材を上面視したときの表面積S2、及び、前記第3基材を上面視したときの表面積S3よりも大きい
上記(8)に記載の焼結接合用巻回シート。
【0104】
(10)
前記第4基材の幅方向の寸法W4は、前記焼結接合層の幅方向の寸法WS、前記第2基材の幅方向の寸法W2、及び、前記第3基材の幅方向の寸法W3よりも大きい
上記(8)または(9)に記載の焼結接合用巻回シート。
【0105】
(11)
前記第1基材は、30μm以上150μm以下の厚さを有する
上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0106】
(12)
前記第1基材は、前記焼結接合層または前記第2基材との接触面を有しており、
該接触面をナノインデンテーション法で測定することによって求められる23℃におけるヤング率が、0.5GPa以上5.0GPa以下である
上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0107】
(13)
前記第1基材は、23℃において、4%以上350%以下の引張伸びを有する
上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0108】
(14)
前記第1基材は、気孔率が10%以下である
上記(1)乃至(13)のいずれかに記載の焼結接合用巻回シート。
【0109】
なお、本発明に係る焼結接合用巻回シートは、前記実施形態に限定されるものではない。
また、本発明に係る焼結接合用巻回シートは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。
さらに、本発明に係る焼結接合用巻回シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0110】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0111】
[実施例1]
第1銀粒子(平均粒子径60nm、DOWAエレクトロニクス社製)と、第2銀粒子(平均粒子径1100nm、三井金属鉱業社製)と、ポリカーボネート樹脂(商品名「QPAC40」、Empower Materials社製)と、イソボルニルシクロヘキサノール(商品名「テルソルブMTPH」、日本テルペン化学工業社製)とを、下記表1に示した配合比率(すなわち、焼結接合層としての配合比率)でメチルエチルケトン(MEK)に溶解・懸濁させてワニスを調製した。
上記各成分は、ハイブリッドミキサ(型式「HM-500」、キーエンス社製)を用いて、撹拌モードで3分間の撹拌・混合を実施することにより、メチルエチルケトンに溶解・懸濁させた。
前記ワニスを第2基材(離型処理フィルム。商品名「MRA38」、三菱樹脂社製)の離型処理面に厚さ200μmで塗布して塗布層を形成した後、該塗布層を温度110℃で3分間加熱することにより前記第2基材上に焼結接合層を形成した。これにより、焼結接合層付離型処理フィルムを得た。
なお、前記第2基材の平面寸法は、長さ80000mm(80m)×幅130mm(13cm)であり、前記塗布層は、前記第2基材の離型処理面の全域に形成した。
すなわち、前記焼結接合層と前記第2基材とは、同一の平面寸法を有していた。
【0112】
次に、前記焼結接合層付離型処理フィルムの前記焼結接合層上に第3基材(離型処理フィルム。商品名「MRA38」、三菱樹脂社製)を重ね合せて、前記第2基材、前記焼結接合層、及び、前記第3基材がこの順に積層された積層体を得た。
なお、前記第3基材の平面寸法も、前記第2基材及び前記焼結接合層の平面寸法と同じであった。
次に、第1基材であるPET基材(日東電工社製の商品名「E-MASK(登録商標)CP170」)上に前記積層体を積層させて、実施例1に係る帯状の焼結接合用シートを得た。
すなわち、実施例1に係る焼結接合用シートは、前記第1基材、前記第2基材、前記焼結接合層、及び、前記第3基材がこの順に4層に積層されたものであった。
なお、第1基材であるPET基材の平面寸法は、長さ100000mm(100m)×幅150mm(15cm)であり、前記第2基材の平面寸法、前記焼結接合層の平面寸法、及び、前記第3基材の平面寸法よりも大きいものであった。
また、前記積層体は、中心部が一致するように前記第1基材上に積層させた。
さらに、前記第1基材たるPET基材は、一表面上にアクリル樹脂を含む粘着剤層を有するものであることから、前記積層体は、前記粘着剤層によって前記第1基材たるPET基材上に保持させた。
なお、前記第1銀粒子及び前記第2銀粒子は焼結性粒子に分類されるものであり、前記ポリカーボネート樹脂は第1有機バインダ(熱分解性高分子バインダ)に分類されるものであり、前記イソボルニルシクロヘキサノールは第2有機バインダ(低沸点バインダ)に分類されるものである。
また、以下の表1において、焼結性粒子の配合量は灰分の値で示しており、第1銀粒子及び第2銀粒子の配合量は仕込み時の量で示している。
【0113】
[実施例2]
前記第1基材を第1PE基材(日東電工社製の商品名「E-MASK(登録商標)R200」)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る帯状の焼結接合用シートを得た。
なお、第1基材たる第1PE基材は、一表面上にアクリル樹脂を含む粘着剤層を有するものあることから、実施例2に係る積層体は、前記粘着剤層によって前記第1基材たる第1PE基材上に保持させた。
【0114】
[実施例3]
前記第1基材をPI基材(日東電工社製の商品名「TRM-6250L」)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る帯状の焼結接合用シートを得た。
なお、第1基材たるPI基材は、一表面上にシリコーン樹脂を含む粘着剤層を有するものであることから、実施例3に係る積層体は、前記粘着剤層によって前記第1基材たるPI基材上に保持させた。
【0115】
[実施例4]
前記第1基材を第2PE基材(日東電工社製の商品名「サンマップLC-T5320T」)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る帯状の焼結接合用シートを得た。
なお、サンマップLC-T5320Tは、上で説明したように、30%の気孔率を有する多孔質プラスチック基材である。
また、第1基材たる第2PE基材は、一表面上にアクリル樹脂とウレタン樹脂とを含む粘着剤層を有するものであることから、実施例4に係る積層体は、前記粘着剤層によって前記第1基材たる第2PE基材上に保持させた。
【0116】
[実施例5]
前記第1基材を厚さ230μmのPTFE基材(日東電工社製の商品名「NIFTRON(登録商標)9030UL」)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る帯状の焼結接合用シートを得た。
なお、前記第1基材たる厚さ230μmのPTFE基材は、一表面にシリコーン樹脂を含む粘着剤層を有するものであることから、実施例5に係る積層体は、前記粘着剤層によって前記第1基材たる厚さ230μmのPTFE基材上に保持させた。
【0117】
[実施例6]
前記第1基材を厚さ80μmのPTFE基材(日東電工社製の商品名「NIFTRON(登録商標)9030UL」)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る帯状の焼結結合用シートを得た。
なお、前記第1基材たる厚さ80μmのPTFE基材は、一表面にシリコーン樹脂を含む粘着剤層を有するものであることから、実施例6に係る積層体は、前記粘着剤層によって前記第1基材たる厚さ80μmのPTFE基材上に保持させた。
【0118】
[比較例1]
前記第1基材を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る帯状の焼結接合用シートを得た。
すなわち、比較例1に係る焼結接合用シートは、前記第2基材(離型処理フィルム。商品名「MRA38」、三菱樹脂社製)、前記焼結接合層、及び、前記第3基材(離型処理フィルム。商品名「MRA38」、三菱樹脂社製)がこの順に3層で積層されたものであった。
【0119】
各実施例に係る焼結接合用シートについて、第1基材の厚さを測定した結果、23℃における第1基材のヤング率を測定した結果、及び、23℃における第1基材の引張伸びを測定した結果を以下の表2に示した。
第1基材の厚さ、23℃における第1基材のヤング率、及び、23℃における第1基材の引張伸びは、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
【0120】
【0121】
<焼結接合層の歩留まり>
各例に係る焼結接合用シートについて、焼結接合層の歩留まりについて評価した。
具体的には、
図5に示したようなロールトゥーロール装置1000にて、各例に係る焼結接合用シートを巻回して得た焼結接合用巻回シートを繰出ローラ100から第2巻取ローラ200bに向けて搬送しているときに、転写ステージGにおいて利用可能な焼結接合層の表面積の比率を算出することにより実施した。
すなわち、焼結接合層の全表面積(S
T)に対する、転写ステージGにおいて利用可能な焼結接合層の表面積(S
U)の比率(S
U/S
T×100)を算出することにより実施した。
このことから、前記比率の数値が高いほど歩留まりの低下が抑制されるようになることを意味する。
また、前記比率(S
U/S
T×100)は、繰出ローラ100の軸部と該軸部と対向する転写ステージGの長さ方向の一端との間の距離を2mとし、第2巻取ローラ200bの軸部と該軸部と対向する転写ステージGの長さ方向の他端との間の距離を2mとし、転写ステージGにおいて、治具を用いて焼結接合用シートの幅方向の両端側のそれぞれを5mm幅ずつで保持すると仮定して算出した。
なお、焼結接合層の長さ方向の両端部分では十分な厚さを確保できていないため、転写ステージG上において焼結接合層の全表面積が利用可能な場合であっても、この十分な厚さを確保できていない両端部分の面積を排除して前記比率を算出している。
その結果について以下の表2に示した。
【0122】
<転写性の評価>
各例に係る燒結接合用シートについて、Siチップに対する焼結接合層の転写性について評価した。
Siチップに対する焼結接合層の転写性は、フリップチップボンダー装置(東レエンジニアリング社製のFC3000W)を用いて評価した。
【0123】
転写性は、以下の手順にしたがって評価した。
(1)各例に係る燒結接合用シートについて、第3基材たる離型処理フィルムをはく離させて接着面を得る。
(2)前記フリップボンダー装置が備えるステージ上に、クッション部材(ヤマウチ社製の商品名「FF10N」)を載置した後、第1基材と当接させるようにして、該クッション部材上に各例に係る焼結接合用シートを載置する。
すなわち、前記接着面が露出するように、前記クッション部材上に各例に係る焼結接合用シートを載置する。
(3)100℃で加熱したコレットを用いて、荷重12.5Nで1秒間の条件で、一方面の全面が銀メッキされているSiチップ(5mm角、厚さ200μm)を各例に係る焼結接合層シートの接着面に押し付ける。
なお、前記Siチップは銀メッキされている一方面を前記接着面に押し付ける。
(4)0.3mm/秒の速度で前記コレットを持ち上げることにより、各例に係る焼結接合用シートの焼結接合層の一部を前記Siチップの一方面に転写させる。
そして、前記焼結接合層がどのような大きさで転写されているかについて目視で観察し、以下の基準にしたがって転写性を評価する。
(5)上記(1)~(4)を所定回数(10回)実施する。
〇:所定回数のいずれにおいても、焼結接合層が前記Siチップと同じ大きさで転写される。
△:所定回数のいずれかの場合に、焼結接合層が前記Siチップと同じ大きさで転写されないことがある。
×:所定回数のいずれかの場合に、焼結接合層が前記Siチップと同じ大きさで転写されないことが多く、実用上問題がある。
転写性を評価した結果を以下の表2に示した。
【0124】
<バリの発生の評価>
各例に係る焼結接合用シートについて、バリの発生について評価した。
バリの発生は、焼結接合層が転写された後の前記Siチップをデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、商品名「VHX-2000」)で撮像した画像を観察することにより評価した。
前記デジタルマイクロスコープでの撮像は、前記Siチップの他方面側(銀メッキさえていない面側)から実施した。
なお、前記デジタルマイクロスコープの撮像条件としては、以下を採用した。
・レンズ:Z20で100倍に設定
・シャッタスピード:1/60sec
・ゲイン:0db
・照明:ランプON(90%程度)、ステージ透過照明ON(20%程度)
・フレームレート:15F/sec
また、バリの発生は、以下の基準にしたがって判断した。
〇:Siチップの外周端縁からの焼結接合層のはみ出しが100μm未満である。
×:Siチップの外周端縁からの焼結接合層のはみ出しが100μm以上である。
バリの発生を評価した結果を以下の表2に示した。
【0125】
【0126】
表2より、各実施例に係る焼結接合用シートは、いずれも、焼結接合層の歩留まりが99%超えであり、焼結接合層のほぼ全てを利用できることが把握される。
これに対し、比較例1に係る焼結接合用シートは、焼結接合層の歩留まりが48~82%の範囲内であり、焼結接合層を有効に利用できていないことが把握される。
このことから、各実施例に係る焼結接合用シートは、巻回シートとされてロールトゥーロール装置に取り付けられて使用される場合において、歩留まりの低下を抑制できることが把握される。
また、表2より、実施例1及び2に係る焼結接合用シートは、転写性の評価及びバリの発生の評価の両方に優れることが把握される。