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特開2024-179726ポマリドミド含有医薬およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179726
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポマリドミド含有医薬およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20241219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K47/26
A61K47/36
A61K9/14
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098784
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄洋
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA53
4C076CC27
4C076DD38
4C076DD47C
4C076EE32
4C076EE38
4C076GG03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC22
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
【課題】溶出挙動が改善されたポマリドミド含有医薬を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るポマリドミド含有医薬の製造方法は、ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポマリドミド含有医薬の製造方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する、
製造方法。
【請求項2】
上記回転式粉砕機の回転速度は、4000rpm以上である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記回転式粉砕機は、固定容器および回転翼を備えている、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ポマリドミド含有医薬の製造方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を共粉砕する工程を有し、
共粉砕された上記ポマリドミドおよび上記固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下である、
製造方法。
【請求項5】
上記固形状の医薬品添加剤は、賦形剤および崩壊剤からなる群より選択される1つ以上を含んでおり、
上記賦形剤は、D-マンニトールを含んでおり、
上記崩壊剤は、部分アルファー化デンプンを含んでいる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を含んでいるポマリドミド含有医薬であって、
上記ポマリドミドおよび上記固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下である、
ポマリドミド含有医薬。
【請求項7】
ポマリドミド含有医薬の溶出挙動の改善方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する、
方法。
【請求項8】
ポマリドミド含有医薬の溶出挙動の改善方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を共粉砕する工程を有し、
共粉砕された上記ポマリドミドおよび上記固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポマリドミド含有医薬およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポマリドミドは、化学名:4-アミノ-2-[(3RS)-2,6-ジオキソピペリジン-3-イル]-2H-イソインドール-1,3-ジオンで表される医薬である。日本国では、再発または難治性の多発性骨髄腫の治療薬として使用・販売されている。ポマリドミドの医薬特性を向上させるために、様々な形態のポマリドミド含有医薬が検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-526855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有効成分の溶出挙動は、基本的かつ重要な医薬特性の一つである。本発明者らの研究により見出されたところによると、ポマリドミド含有医薬の製造において、ポマリドミドと他の成分をどのように共粉砕するかにより、溶出挙動が異なっていた。この知見を活用すれば、より好ましい医薬特性を示すポマリドミド含有医薬が製造できる可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、溶出挙動が改善されたポマリドミド含有医薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明には、下記の態様が含まれている。
<1>
ポマリドミド含有医薬の製造方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する、
製造方法。
<2>
上記回転式粉砕機の回転速度は、4000rpm以上である、
<1>に記載の製造方法。
<3>
上記回転式粉砕機は、固定容器および回転翼を備えている、
<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>
ポマリドミド含有医薬の製造方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を共粉砕する工程を有し、
共粉砕された上記ポマリドミドおよび上記固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下である、
製造方法。
<5>
上記固形状の医薬品添加剤は、賦形剤および崩壊剤からなる群より選択される1つ以上を含んでおり、
上記賦形剤は、D-マンニトールを含んでおり、
上記崩壊剤は、部分アルファー化デンプンを含んでいる、
<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6>
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を含んでいるポマリドミド含有医薬であって、
上記ポマリドミドおよび上記固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下である、
ポマリドミド含有医薬。
<7>
ポマリドミド含有医薬の溶出挙動の改善方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する、
方法。
<8>
ポマリドミド含有医薬の溶出挙動の改善方法であって、
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を共粉砕する工程を有し、
共粉砕された上記ポマリドミドおよび上記固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下である、
方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、溶出挙動が改善されたポマリドミド含有医薬が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポマリドミド含有医薬の溶出挙動を表すグラフである。実施例1A~1Cの結果を主に示す。
図2】ポマリドミド含有医薬の溶出挙動を表すグラフである。実施例2の結果を主に示す。
図3】ポマリドミド含有医薬の溶出挙動を表すグラフである。実施例3、4の結果を主に示す。
図4】ポマリドミド含有医薬の溶出挙動を表すグラフである。実施例5の結果を主に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、以下に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する各構成に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に示した範囲で種々に変更できる。本発明の技術的範囲は、本明細書に開示されている複数の技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態または実施例にも及ぶ。このとき、複数の技術的手段は、複数の実施形態または実施例にわたって開示されていてもよい。
【0010】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0011】
〔1.ポマリドミド含有医薬の製造方法〕
本発明の一態様に係るポマリドミド含有医薬の製造方法は、ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する。これらの成分を回転式粉砕機により共粉砕することによって、ポマリドミド含有医薬の溶出挙動が改善される(例えば、溶出曲線の立ち上がりが早くなる)。理論に拘束される意図はないが、本発明者らは、この現象の理由を次のように推定している。すなわち、ポマリドミド原薬は強く凝集しているところ、回転式粉砕機によって強い応力が加わり、ポマリドミド粉末が共粉砕された医薬品添加剤の中に均一に分散するようになる。このことが溶出挙動の改善に寄与している可能性がある。
【0012】
本明細書において、「回転式粉砕機」とは、回転する部材の作用により粉砕が進行する粉砕機のことを表す。一実施形態において、回転式粉砕機においては、回転する部材により、原料に剪断応力が加わったり、原料に衝撃が加わったり、原料が切断されたり、原料が粉砕されたり、複数の原料が攪拌されたり、あるいはこれらの任意の組合せが行われたりする。
【0013】
回転式粉砕機において回転する部材の例としては、原料を格納する容器、その他の回転部材が挙げられる。その他の回転部材の例としては、回転翼が挙げられる。回転翼は、攪拌翼、攪拌羽根、ミキシングブレード、スクリュー、リボン、カッター、チョッパー、インペラ、ナイフなどの名称で呼ばれることもある。一実施形態において、回転式粉砕機は、回転しない固定容器と、回転する回転翼とを備えている。このような回転式粉砕機の例としては、ワンダーブレンダーWB-1(大阪ケミカル株式会社)、NMG(株式会社奈良機械製作所)、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ)、バーチカルグラニュレーター(株式会社パウレック)、ニュースピードニーダー(岡田精工株式会社)、スーパーミキサー(株式会社カワタ)、サニタリークラッシャー(三庄インダストリー株式会社)、ヘンシェルミキサー(ZEPPELIN)が挙げられる。
【0014】
回転式粉砕機の回転速度の下限は、4000rpm以上が好ましく、8000rpm以上がより好ましく、10000rpm以上がさらに好ましく、12000rpm以上が特に好ましい。回転式粉砕機の回転速度の上限は、例えば、25000rpm以下または30000rpm以下でありうる。本明細書において、回転速度とは、1分間あたりにおける回転部材の回転軸回りの回転数を表す。回転部材の回転運動に2つ以上の回転軸が存在する場合は、最も回転数が多い回転軸を基準として回転速度を定める。回転式粉砕機に複数の回転部材が存在する場合は、最も回転数の多い回転部材を基準として回転速度を定める。
【0015】
回転式粉砕機が共粉砕材料(ポマリドミド、固形状の医薬品添加剤など)に加える応力の下限は、20N/mm以上が好ましく、40N/mm以上がより好ましく、60N/mm以上がさらに好ましい。回転式粉砕機が共粉砕材料に加える応力の上限は、600N/mm以下が好ましく、400N/mm以下がより好ましい。
【0016】
回転式粉砕機が回転翼を備えている実施形態において、回転翼の先端の回転速度の下限は、1.4m/s以上が好ましく、5.0m/s以上がより好ましく、5.0m/sがさらに好ましい。回転翼の先端の回転速度の上限は、40m/s以下が好ましく、20m/s以下がより好ましい。
【0017】
回転式粉砕機による共粉砕時間の下限は、原料10gあたり、10秒間以上が好ましく、15秒間以上がより好ましく、30秒間以上がさらに好ましく、1分間以上が特に好ましい。共粉砕時間の上限は、原料10gあたり、例えば、10分間以下または5分間以下でありうる。
【0018】
上述した通り、回転式粉砕機によって強い応力が加わることが、溶出挙動の改善に寄与している可能性があると本発明者らは推定している。このように強い応力が加わると、医薬原料はより微細な粉末となる。したがって、本発明の一態様を、粉末の粒度によって記載することもできる。
【0019】
すなわち、本発明の一態様に係るポマリドミド含有医薬の製造方法は、ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を共粉砕する工程を有する。共粉砕されたことにより、ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下になる。D90の上限は、好ましくは250μm以下であり、より好ましくは230μm以下であり、特に好ましくは200μm以下である。D90の下限は、例えば、10μm以上でありうる。
【0020】
本明細書において、D90とは、個数基準の粒度分布において、積算度数が90%に達するときの粒子径を表す。粒子径の測定には、MASTERSIZER 3000(Malvern Panalytical)を用いる。測定は湿式法で行い、分散媒は水とする。
【0021】
ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する実施形態において、共粉砕により得られる粉末のD90は、上記の条件を満たしていてもよいし、満たしていなくてもよい。ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を共粉砕する工程を有する実施形態において、共粉砕は、回転式粉砕機により実施してもよいし、他の手段により実施してもよい。
【0022】
固形状の医薬品添加剤の例としては、賦形剤、崩壊剤、崩壊助剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、安定剤、安定化剤が挙げられる。一実施形態において、固形状の医薬品添加剤は、賦形剤および崩壊剤からなる群より選択される1つ以上である。
【0023】
ポマリドミド含有医薬の製造方法に係る発明の一実施形態において、賦形剤は、D-マンニトールを含んでいる。一実施形態において、崩壊剤は、部分アルファー化デンプンを含んでいる。賦形剤は、D-マンニトール以外の賦形剤を含んでいてもよい。崩壊剤は、部分アルファー化デンプン以外の崩壊剤を含んでいてもよい。回転式粉砕機により共粉砕されるのは、ポマリドミド含有医薬に含まれているD-マンニトールおよび/または部分アルファー化デンプンのうち一部であってもよい。ポマリドミドと共粉砕されるのは、ポマリドミド含有医薬に含まれているD-マンニトールおよび/または部分アルファー化デンプンのうち一部であってもよい。
【0024】
賦形剤および崩壊剤のさらなる例は、〔2〕節において例示する。
【0025】
〔2.ポマリドミド含有医薬〕
本発明の一態様に係るポマリドミド含有医薬は、ポマリドミドと、固形状の医薬品添加剤と、を含んでいる。ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下になる。D90の上限は、好ましくは250μm以下であり、より好ましくは230μm以下であり、特に好ましくは200μm以下である。D90の下限は、例えば、10μm以上でありうる。一実施形態において、固形状の医薬品添加剤は、賦形剤および崩壊剤からなる群より選択される1つ以上である。
【0026】
賦形剤の例としては、D-マンニトール、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、D-ソルビトール、乳糖、白糖、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、合成ケイ酸アルミニウムが挙げられる。一実施形態において、賦形剤は、D-マンニトールを含んでいる。
【0027】
崩壊剤の例としては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンが挙げられる。一実施形態において、崩壊剤は、部分アルファー化デンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群より選択される1種類以上を含んでいる。
【0028】
ポマリドミド含有医薬は、上述した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例としては、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、発泡剤、酸味料、甘味剤、香料、着色剤、緩衝剤、光安定化剤が挙げられる。
【0029】
結合剤の例としては、ヒプロメロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、プルランが挙げられる。
【0030】
滑沢剤の例としては、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。
【0031】
界面活性剤の例としては、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0032】
発泡剤の例としては、重曹が挙げられる。
【0033】
酸味料の例としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸が挙げられる。
【0034】
甘味剤の例としては、スクラロース、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンが挙げられる。
【0035】
香料の例としては、レモン、レモンライム、オレンジ、メントールが挙げられる。
【0036】
着色剤の例としては、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色3号が挙げられる。
【0037】
緩衝剤の例としては、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、リン酸、ホウ酸またはそれらの塩が挙げられる。さらなる緩衝剤の例としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0038】
ポマリドミド含有医薬の剤形は、特に限定されない。剤形の例としては、散剤、顆粒、錠剤、カプセル剤が挙げられる。好ましくは、医薬組成物はカプセル剤である。
【0039】
〔3.ポマリドミド含有医薬の溶出挙動の改善方法〕
本発明の一態様に係るポマリドミド含有医薬の溶出挙動の改善方法は、ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を回転式粉砕機により共粉砕する工程を有する。本発明の他の態様に係るポマリドミド含有医薬の溶出挙動の改善方法は、ポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤を共粉砕する工程を有する。ここで、共粉砕されたポマリドミドおよび固形状の医薬品添加剤のD90は、300μm以下である。一実施形態において、固形状の医薬品添加剤は、賦形剤および崩壊剤からなる群より選択される1つ以上である。これらの態様に関する説明は、〔1〕節の記載が援用される。
【0040】
〔4.製造例および処方例〕
[4.1.製造例]
(製造例1)
1. ポマリドミド、D-マンニトールの一部、および部分アルファー化デンプンの一部を予備混合する。
2. 得られた予備混合物を、回転式粉砕機を用いて共粉砕する。
3. 得られた共粉砕物、D-マンニトールの残部、部分アルファー化デンプンの残部、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを拡散式混合機で混合する。
4. 得られた混合物にフマル酸ステアリルナトリウムを加え、拡散式混合機で混合する。
5. 得られた混合物をカプセルに充填する。
【0041】
(製造例2)
1. ポマリドミド、D-マンニトールの第1部分、および部分アルファー化デンプンの第1部分を、サニタリークラッシャーにて混合する。これにより、ポマリドミド共粉砕末を得る。
2. ポマリドミド共粉砕末と部分アルファー化デンプンの第2部分とを混合する。
3. 工程2で得られた混合末を篩にかけ、篩過した画分を得る。
4. 工程3で使用した篩で、部分アルファー化デンプンの第3部分を篩にかける。これにより、ポマリドミド共粉砕末が篩に残らないようにする。
5. 工程2、3で得られた画分に、D-マンニトールの第2部分、部分アルファー化デンプンの第4部分、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加えて混合する。
6. 工程5で得られた混合末に、フマル酸ステアリルナトリウムを加えて混合する。
7. 工程6で得られた混合末をカプセルに充填する。
8. 工程7で得られたカプセルをPTP包装する。
【0042】
[4.2.処方例]
下記表1に記載の組成のカプセル剤を調製する。得られたカプセル剤は、一次包装(PTPシート)および二次包装(チャック付アルミピロー)によって包装する。PTPシートは、PCTFE/PVC成形シートおよびPVC用アルミ箔から構成されている。
【表1】
【実施例0043】
〔実施例1A~1C、比較例1A~1C〕
[実施例1A~1C]
ポマリドミドおよび賦形剤を回転式粉砕機により共粉砕し、得られた医薬の溶出挙動を比較検討した。具体的な手順は、次の通りである。
1. 720mgのポマリドミドと、18900mgのD-マンニトール(賦形剤)とを秤量した。これは、180カプセル分の分量に相当する。
2. ポマリドミドおよびD-マンニトールの全量を、回転式粉砕機(ワンダーブレンダーWB-1、大阪ケミカル株式会社)に投入した。この粉砕機は、容器および回転翼(カッター)を備えている。容器が固定された状態で回転翼が回転することにより、試料を粉砕する。
3. 回転式粉砕機を用いて、30秒間(実施例1A)、1分間(実施例1B)、または2分間(実施例1C)共粉砕した。回転翼の回転速度は、18000rpmであった。回転翼の先端の回転速度は、10.2m/sであった。
4. 得られた粉末を粉砕機の容器内に掻き落として混ぜ合わせた。粉砕機の内部に固着などは見られなかった。
5. 109mgの粉末(1カプセル分)を秤量し、これを溶出試験の試料とした。
6. 第十八改正日本薬局方に則って溶出試験を実施した。具体的な試験条件は、試験法:パドル法、パドルの回転速度:50rpm、溶媒のpH:6.8とした。
【0044】
[比較例1A~1C]
ポマリドミドおよび賦形剤を回転式粉砕機で共粉砕する以外の方法により処理し、その他の工程は実施例1Aなどと同様にして、溶出試験用の試料を調製した。
・比較例1A:ポマリドミドおよび賦形剤を共粉砕せずに、溶出試験用の試料を調製した。
・比較例1B:ポマリドミドおよび賦形剤を乳鉢粉砕して、溶出試験用の試料を調製した。
・比較例1C:ポマリドミドおよび賦形剤を倍散篩過して、溶出試験用の試料を調製した。
【0045】
[結果]
結果を図1に示す。同図から分かるように、回転式粉砕機によりポマリドミドと賦形剤とを共粉砕することにより、溶出曲線の立ち上がりが顕著に早まった。また、回転式粉砕機により共粉砕する時間が長いほど、溶出曲線の立ち上がりが早くなる傾向が認められた。
【0046】
〔実施例2、比較例2A~2B〕
[実施例2]
実際の製品に近い形態の医薬を調製し、共粉砕方法の違いに起因する溶出挙動を比較検討した。具体的な手順は、次の通りである。
1. 1800mgのポマリドミドと、16200mgのD-マンニトール(賦形剤)とを、予備混合した。
2. 予備混合物を、回転式粉砕機(ワンダーブレンダーWB-1、大阪ケミカル株式会社)を用いて共粉砕した。共粉砕時間は、2分間であった。回転翼の回転速度は、18000rpmであった。回転翼の先端の回転速度は、10.2m/sであった。
3. 9816mgの得られた共粉砕物と、15951mgのD-マンニトール(賦形剤)と、32981.8mgの部分アルファー化デンプン(崩壊剤)とを、ポリエチレン製の袋の中で混合した。
4. 58748.8mgの得られた混合物に、147.2mgのフマル酸ステアリルナトリウム(滑沢剤)を加えて、拡散式混合機でさらに混合した。
5. 得られた混合物をカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
6. 第十八改正日本薬局方に則って溶出試験を実施した。具体的な試験条件は、試験法:パドル法、パドルの回転速度:50rpm、溶媒のpH:6.8とした。
【0047】
[比較例2A~2B]
ポマリドミドおよび賦形剤を回転式粉砕機で共粉砕する以外の方法により処理し、その他の工程は実施例2と同様にして、溶出試験用のカプセル剤を調製した。
・比較例2A:ポマリドミドおよび賦形剤を乳鉢粉砕して、溶出試験用のカプセル剤を調製した。
・比較例2B:ポマリドミドおよび賦形剤を倍散篩過して、溶出試験用のカプセル剤を調製した。
【0048】
[結果]
結果を図2に示す。実施例1A~1Cと比較すると、カプセルに充填されている分だけ、溶出曲線の立ち上がりは遅かった。しかし、比較例2A~2Bと比較すると、回転式粉砕機によりポマリドミドと賦形剤とを共粉砕することにより、溶出曲線の立ち上がりが顕著に早まった。
【0049】
〔実施例3、4〕
[実施例3]
ポマリドミドおよび崩壊剤を共粉砕することによる、溶出挙動への影響を検討した。具体的な手順は、次の通りである。
1. 1800mgのポマリドミドと、16200mgの部分アルファー化デンプン(崩壊剤)とを予備混合した。
2. 予備混合物を、回転式粉砕機(ワンダーブレンダーWB-1、大阪ケミカル株式会社)を用いて共粉砕した。共粉砕時間は、2分間であった。回転翼の回転速度は、18000rpmであった。回転翼の先端の回転速度は、10.2m/sであった。
3. 9816mgの得られた共粉砕物と、24147.4mgの部分アルファー化デンプン(崩壊剤)と、24785.4mgのD-マンニトール(賦形剤)とを、ポリエチレン製の袋の中で混合した。
4. 58748.8mgの得られた混合物に、147.2mgのフマル酸ステアリルナトリウム(滑沢剤)を加えて、拡散式混合機でさらに混合した。
5. 得られた混合物をカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
6. 第十八改正日本薬局方に則って溶出試験を実施した。具体的な試験条件は、試験法:パドル法、パドルの回転速度:50rpm、溶媒のpH:6.8とした。
【0050】
[実施例4]
ポマリドミド、賦形剤および崩壊剤を共粉砕することによる、溶出挙動への影響を検討した。具体的な手順は、次の通りである。
1. 11400mgのポマリドミドと、51300mgのD-マンニトール(賦形剤)と、51300mgの部分アルファー化デンプン(崩壊剤)とを予備混合した。
2. 予備混合物を、回転式粉砕機(ワンダーブレンダーWB-1、大阪ケミカル株式会社)を用いて共粉砕した。共粉砕時間は、30秒間であった。回転翼の回転速度は、18000rpmであった。回転翼の先端の回転速度は、10.2m/sであった。
3. 114000mgの得られた共粉砕物と、280440mgの部分アルファー化デンプン(崩壊剤)と、287850mgのD-マンニトール(賦形剤)とを、拡散式混合機の袋の中で混合した。
4. 682290mgの得られた混合物に、1710mgのフマル酸ステアリルナトリウム(滑沢剤)を加えて、拡散式混合機でさらに混合した。
5. 得られた混合物をカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
6. 第十八改正日本薬局方に則って溶出試験を実施した。具体的な試験条件は、試験法:パドル法、パドルの回転速度:50rpm、溶媒のpH:6.8とした。
【0051】
[結果]
結果を図3に示す。比較対象として、実施例2および比較例2A、2Bで検討したカプセル剤の溶出曲線も併せて示す。同図から分かるように、回転式粉砕機によりポマリドミドと崩壊剤とを共粉砕することによっても、溶出曲線の立ち上がりが顕著に早まった。同じく同図から分かるように、回転式粉砕機によりポマリドミド、賦形剤および崩壊剤を共粉砕することによっても、溶出曲線の立ち上がりが顕著に早まった。
〔実施例5〕
ポマリドミド、賦形剤および崩壊剤を共粉砕することによる、溶出挙動への影響を検討した。具体的な手順は、次の通りである。なお、得られる製剤の組成は、実施例4から変更した(例えば、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合している)。
1. 11400mgのポマリドミドと、51300mgのD-マンニトール(賦形剤)と、51300mgの部分アルファー化デンプン(崩壊剤)とを予備混合した。
2. 予備混合物を、回転式粉砕機(ワンダーブレンダーWB-1、大阪ケミカル株式会社)を用いて共粉砕した。共粉砕時間は、30秒間であった。回転翼の回転速度は、18000rpmであった。回転翼の先端の回転速度は、10.2m/sであった。
3. 114000mgの得られた共粉砕物と、139935mgの部分アルファー化デンプン(崩壊剤)と、60420mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(崩壊剤)と、140505mgのD-マンニトール(賦形剤)とを、拡散式混合機で混合した。
4. 454860mgの得られた混合物に、1140mgのフマル酸ステアリルナトリウム(滑沢剤)を加えて、拡散式混合機でさらに混合した。
5. 得られた混合物をカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
6. 第十八改正日本薬局方に則って溶出試験を実施した。具体的な試験条件は、試験法:パドル法、パドルの回転速度:50rpm、溶媒のpH:6.8とした。
【0052】
[結果]
結果を図4に示す。比較対象として、実施例2、3および比較例2A、2Bで検討したカプセル剤の溶出曲線も併せて示す。同図から分かるように、実施例5に係る組成のポマリドミド製剤でも、回転式粉砕機によりポマリドミド、賦形剤および崩壊剤を共粉砕することによっても、溶出曲線の立ち上がりが顕著に早まった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ポマリドミド含有医薬の製造に利用できる。
図1
図2
図3
図4