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特開2024-179728絶縁監視装置、絶縁監視システム及び絶縁監視方法
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  • 特開-絶縁監視装置、絶縁監視システム及び絶縁監視方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179728
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】絶縁監視装置、絶縁監視システム及び絶縁監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20241219BHJP
   H02H 3/34 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/34 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098787
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸司
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA15
2G014AA19
2G014AB33
(57)【要約】
【課題】絶縁監視装置において、R相からの漏れ電流とT相からの漏れ電流を分離して求める。
【解決手段】有効分漏れ電流のテスト電流の位相を逆位相に切替て有効分漏れ電流をR相漏れ電流とT相漏れ電流に分離する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号を出力する制御部と、
前記制御信号に基づいて、有効分漏れ電流のテスト電流の位相を切替えるテスト電流位相切替部と、
前記テスト電流を零相変流器に出力するテスト電流出力部と、
前記零相変流器から出力された前記有効分漏れ電流を増幅して前記制御部に送る増幅部と、
を有することを特徴とする絶縁監視装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記テスト電流のON/OFFを制御し、
前記テスト電流を流さないときには、前記有効分漏れ電流を計算することを特徴とする請求項1に記載の絶縁監視装置。
【請求項3】
前記制御部は、
機器の点検を行うための機器点検用テストを行うか、前記機器の異常発生箇所を特定するための異常発生箇所特定用テストを行うかを判定し、
前記テスト電流位相切替部は、
前記機器点検用テストを行う場合には、
前記テスト電流の前記位相を正位相に切替え、
前記異常発生箇所特定用テストを行う場合には、
前記テスト電流の前記位相を逆位相に切替えることを特徴とする請求項1に記載の絶縁監視装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記テスト電流位相切替部が前記テスト電流の前記位相を前記逆位相に切替えた場合に、
前記有効分漏れ電流をR相漏れ電流とT相漏れ電流に分離することを特徴とする請求項3に記載の絶縁監視装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記テスト電流位相切替部が前記テスト電流の前記位相を前記逆位相に切替た場合に、
前記有効分漏れ電流と前記テスト電流の合計値を計算し、
前記合計値に基づいて、前記有効分漏れ電流を前記R相漏れ電流と前記T相漏れ電流に分離することを特徴とする請求項4に記載の絶縁監視装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記有効分漏れ電流を前記R相漏れ電流と前記T相漏れ電流に分離することにより、前記機器の異常が発生している相の特定を行うことを特徴とする請求項5に記載の絶縁監視装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記逆位相の前記テスト電流を流して、前記有効分漏れ電流が最小値となった値から所定のベクトル演算を行うことにより、前記有効分漏れ電流を前記R相漏れ電流と前記T相漏れ電流に分離することを特徴とする請求項5に記載の絶縁監視装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記逆位相の前記テスト電流の出力範囲を事前に決定しておき、前記出力範囲内で前記逆位相の前記テスト電流を流すことを特徴とする請求項7に記載の絶縁監視装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記出力範囲として、前記逆位相の前記テスト電流の最小値と前記逆位相の前記テスト電流の最大値を事前に決定しておくことを特徴とする請求項8に記載の絶縁監視装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記R相漏れ電流が0であり前記T相漏れ電流のみの場合に、前記最小値を決定し、
前記T相漏れ電流が0であり前記R相漏れ電流のみの場合に、前記最大値を決定することを特徴とする請求項9に記載の絶縁監視装置。
【請求項11】
前記零相変流器から前記増幅部に出力された前記有効分漏れ電流は、前記テスト電流が加算された電流であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁監視装置。
【請求項12】
請求項1に記載の前記絶縁監視装置と、
前記絶縁監視装置に接続された前記零相変流器と、
前記絶縁監視装置に接続された上位制御装置と、を有する絶縁監視システムであって、
前記上位制御装置は、
前記逆位相の前記テスト電流を流すタイミングを前記絶縁監視装置に指示することを特徴とする絶縁監視システム。
【請求項13】
制御部により制御信号を出力する制御ステップと、
前記制御信号に基づいて、有効分漏れ電流のテスト電流の位相を切替えるテスト電流位相切替ステップと、
前記テスト電流を零相変流器に出力するテスト電流出力ステップと、
前記零相変流器から出力された前記有効分漏れ電流を増幅して前記制御部に送る増幅ステップと、
を有することを特徴とする絶縁監視方法。
【請求項14】
前記制御ステップは、
機器の点検を行うための機器点検用テストを行うか、前記機器の異常発生箇所を特定するための異常発生箇所特定用テストを行うかを判定し、
前記テスト電流位相切替ステップは、
前記機器点検用テストを行う場合には、
前記テスト電流の前記位相を正位相に切替え、
前記異常発生箇所特定用テストを行う場合には、
前記テスト電流の前記位相を逆位相に切替えることを特徴とする請求項13に記載の絶縁監視方法。
【請求項15】
前記制御ステップは、
前記テスト電流位相切替ステップで前記テスト電流の前記位相を前記逆位相に切替えた場合に、
前記有効分漏れ電流をR相漏れ電流とT相漏れ電流に分離することを特徴とする請求項14に記載の絶縁監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁監視装置、絶縁監視システム及び絶縁監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁監視装置には、基本波有効分方式(Ior方式)がある。基本波有効分方式(Ior方式)の計算方法は、零相変流器(以下ZCTと記載)を使用して漏れ電流を計測し、基本波漏れ電流Ioの演算及び有効分漏れ電流Iorの演算を行っている。この計算で求める有効分漏れ電流Iorは、R相とT相の漏れ電流を合成した値である。
【0003】
絶縁監視装置には、有効分漏れ電流Iorのテスト電流を流すことができる機能もある。ここで流すテスト電流は、R相からの漏れ電流となるベクトルの電流である。これに関連する技術として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-128270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基本波有効分方式(Ior方式)での計算方法では、R相とT相の漏れ電流の合成値を求めることができるが、R相からの漏れ電流とT相からの漏れ電流を分離して求めることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、絶縁監視装置において、R相からの漏れ電流とT相からの漏れ電流を分離して求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の絶縁監視装置は、制御信号を出力する制御部と、前記制御信号に基づいて有効分漏れ電流のテスト電流の位相を切替えるテスト電流位相切替部と、前記テスト電流を零相変流器に出力するテスト電流出力部と、前記零相変流器から出力された前記有効分漏れ電流を増幅して前記制御部に送る増幅部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、絶縁監視装置において、R相からの漏れ電流とT相からの漏れ電流を分離して求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の絶縁監視装置システムの構成図を示す。
図2】テスト電流のベクトル図を示す。
図3】計算方法を導くための各電流のベクトル図を示す。
図4】テスト電流の最小値を説明するためのベクトル図を示す。
図5】テスト電流の最大値を説明するためのベクトル図を示す。
図6】テスト電流の波形を示す図であり、(a)はテスト電流の正位相の波形を示し、(b)はテスト電流の正位相の波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例0011】
本発明の実施例1について、図1を用いて説明する。
【0012】
絶縁監視装置100には、ZCT(零相変流器)101が接続されている。
【0013】
絶縁監視装置100は、制御信号を出力するCPU(制御部)105と、制御信号に基づいて有効分漏れ電流IorのIorテスト電流の位相を切替えるIorテスト電流位相切替部104と、Iorテスト電流をZCT(零相変流器)101に出力するIorテスト電流出力部103と、ZCT101から出力された有効分漏れ電流を増幅して制御部105に送る増幅部102を有する。
【0014】
制御部105は、Iorテスト電流のON/OFFを制御し、Iorテスト電流を流さないときには、有効分漏れ電流Iorを計算する。
【0015】
制御部は、機器の点検を行うための機器点検用テストを行うか、機器の異常発生箇所を特定するための異常発生箇所特定用テストを行うかを判定する。
【0016】
Iorテスト電流位相切替部104は、機器点検用テストを行う場合には、Iorテスト電流の位相を正位相に切替える。異常発生箇所特定用テストを行う場合には、Iorテスト電流の位相を逆位相に切替える。
【0017】
ここで、図6に、テスト電流の正位相の波形とテスト電流の正位相の波形(b)をそれぞれ示す。
【0018】
制御部105は、Iorテスト電流位相切替部104がIorテスト電流の位相を逆位相に切替えた場合に、有効分漏れ電流IorをR相漏れ電流とT相漏れ電流に分離する。
【0019】
制御部105は、Iorテスト電流位相切替部104がIorテスト電流の位相を逆位相に切替えた場合に、有効分漏れ電流IorとIorテスト電流の合計値を計算し、前記合計値に基づいて、漏れ電流をR相漏れ電流とT相漏れ電流に分離する。
【0020】
制御部105は、有効分漏れ電流IorをR相漏れ電流とT相漏れ電流に分離することにより、機器の異常が発生している相の特定を行う。
【0021】
制御部105は、逆位相のIorテスト電流を流して、有効分漏れ電流Iorが最小値となった値から所定のベクトル演算を行うことにより、有効分漏れ電流IorをR相漏れ電流とT相漏れ電流に分離する。
【0022】
絶縁監視装置100はIorテスト電流出力部103から有効分漏れ電流IorのIorテスト電流を流すことができる。なお、テスト電流は図2に示すようにR相からの漏れ電流200となる位相にて出力される。
【0023】
この任意のIorテスト電流は絶縁監視装置100にて値を確定しているため、絶縁監視装置100は任意のテスト電流値を認識している。Iorテスト電流の配線はZCT101を貫通させて通電する。Iorテスト電流を流すと、ZCT101は通常の漏れ電流にIorテスト電流が加算されたものが計測される。
【0024】
通常のテストの場合は、Iorテスト電流を流すが、本実施例ではCPU105から位相を制御し、Iorテスト電流位相切替部104にてテスト電流の位相を逆位相とする。これにより図2のIorテスト電流201のベクトル(逆方向ベクトル)となる。このIorテスト電流201を使用して、有効分漏れ電流Iorを求める。
【0025】
初めに、通常通り(テスト電流を流さない時)、有効分漏れ電流Iorを計測する。有効分漏れ電流Iorが確定後にIorテスト電流201(逆相のテスト電流)を流して再度有効分漏れ電流Iorを計算する。通常の有効分漏れ電流Iorの値とテスト電流201(逆相のテスト電流)を流したときの値を用いて、R相からの漏れ電流とT相からの漏れ電流に分離する。なお、本処理は常に計測を繰り返して行う。
【0026】
ここで、Iorテスト電流は常時流すわけではない。制御部105がIorテスト電流のON/OFF制御をしている。
【0027】
Iorテスト電流を流さないときは有効分漏れ電流Iorを計算する。Iorテスト電流を流したときは有効分漏れ電流IorとIorテスト電流の合計値を計算する。計算された有効分漏れ電流IorとIorテスト電流の合計値からR相、T相の有効分漏れ電流Iorに分離する。
【0028】
R相とT相に分離することで、異常発生している相の特定が可能となり、現地での異常原因の特定が容易になる。
【0029】
また、通常のテスト(現地にて顧客が機器の点検で使用する機能)は、Iorテスト電流200(正位相のテスト電流で正方向ベクトル)を流して行う。
【0030】
現地で異常発生箇所を容易に特定するためR相とT相の分離は、Iorテスト電流201(逆位相のテスト電流で逆方向ベクトル)を流して行う。
【0031】
図3は、計算方法を導くための各電流のベクトル図を示す。
【0032】
電圧S相301を基準とすると電圧R相300と電圧T相302は角度310のとおり60°となる。R相からの漏れ電流303とし、T相からの漏れ電流304とすると合成された漏れ電流はIor305となる。通常の計算ではこのIor305の値を求めることができる。このIor305に通常の正位相のテスト電流を流すとベクトルは306方向へ移動する。
【0033】
本発明の実施例では、あえてテスト電流を逆方向の307へ流す。この307を変化させ、合成されたIorが最小となる値を求める。Iorは、308に達したときが最小となる。この最小値Iorは311となる。
【0034】
絶縁監視装置100では、307の方向に流したテスト電流は自身で流した電流値であり、最小値Ior311は自身で計測した電流値であるため、どちらの値も認識している。最小値Ior311とT相からの漏れ電流304の角度309は30°となる。この角度309と最小値Ior311から、T相からの漏れ電流304を余弦定理で求めることが可能である。
【0035】
計算式は以下となる。
【0036】
T相からの漏れ電流304=最小値Ior311÷Cos30°
次に、R相からの漏れ電流303を求める。最小値Ior311となった時の307方向に流したテスト電流から不要なテスト電流分312を減算すると求めることができる。よって計算式は以下となる。
【0037】
R相からの漏れ電流303=307方向に流したテスト電流-最小値Ior311×tan30°
上記2つの処理により、R相とT相からの漏れ電流に分離することができる。
【0038】
なお、逆位相のテスト電流307の通電する範囲を図4図5にて説明する。この範囲を決めておけば、各相の漏れ電流の値確定までの時間を短くする事が可能である。
【0039】
図4にテスト電流値の最小値を示す。
【0040】
テスト電流値が最小となるには、R相からの漏れ電流が0であり、T相からの漏れ電流400のみの場合である。この時、テスト電流403は、Ior(T相からの漏れ電流)400×sin30°で401が最小値となる。
【0041】
図5にテスト電流値の最大値を示す。
【0042】
最大となるにはT相からの漏れ電流が0であり、R相からの漏れ電流500のみの時である。よって最大値は合成されたIor500となる。これらから通電する範囲は以下とすることができる。
【0043】
Ior×sin30°≦テスト電流≦Ior
このように、制御部105は、逆位相のテスト電流の出力範囲を事前に決定しておき、前記出力範囲内で逆位相のIorテスト電流を流す。
【0044】
制御部105は、前記出力範囲として、逆位相のIorテスト電流の最小値と逆位相の前記Iorテスト電流の最大値を事前に決定しておく。
【0045】
制御部105は、R相漏れ電流が0でありT相漏れ電流のみの場合に最小値を決定する。また、T相漏れ電流が0でありR相漏れ電流のみの場合に最大値を決定する。
【実施例0046】
常に処理をしてR相とT相の漏れ電流を分離しなくてもよい。通常は合成された有効分漏れ電流Iorを計測しておき、絶縁監視装置100を操作した際にR相とT相に分離する処理でもよい。
【0047】
実施例2によれば、テスト電流値(逆位相)を常に流す必要がなく、絶縁監視装置100の消費電力を低減することができる。
【実施例0048】
パソコン等の上位制御装置106(図1参照)からデータを収集する際に、R相とT相の漏れ電流を分離する処理を行ってもよい。通常は合成された有効分漏れ電流Iorを計測しておき、上位制御装置106からの要求通信が届いた際に本処理を行う。このように、上位制御装置106は、逆位相のIorテスト電流を流すタイミングを絶縁監視装置100に指示する。
【0049】
実施例3によれば、テスト電流値(逆位相)を常に流す必要がなく、絶縁監視装置100の消費電力を低減することができる。
【0050】
上記実施例では、絶縁監視装置から任意の有効分漏れ電流Iorのテスト電流を流して、通電時(逆位相のテスト電流を流したとき)の値と未通電時(逆位相のテスト電流を流さない時)の値を使用して計算する。上記実施例によれば、R相からの漏れ電流とT相からの漏れ電流を計算することができる。また、電路には全く影響のないテスト電流であり、フィールドに一切の影響を与えることもない。
【符号の説明】
【0051】
100 絶縁監視装置
101 ZCT
102 増幅部
103 Iorテスト電流出力部
104 Iorテスト電流位相切替部
105 CPU
106 上位制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6