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特開2024-179730積雪判定装置、積雪判定方法及び積雪判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179730
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】積雪判定装置、積雪判定方法及び積雪判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/14 20060101AFI20241219BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241219BHJP
【FI】
G01W1/14 Q
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098791
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】田副 佑典
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇広
(72)【発明者】
【氏名】笹川 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直弥
(72)【発明者】
【氏名】藪井 謙
(72)【発明者】
【氏名】有森 恭子
(72)【発明者】
【氏名】坪内 菜津子
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA02
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA01
5L096DA02
5L096DA03
5L096FA19
5L096FA25
5L096FA54
5L096FA66
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】学習データに含まれないカメラ視点の画像に対して、太陽光パネル上の積雪状態を高精度に判定する積雪判定装置、積雪判定方法及び積雪判定プログラムを提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、積雪判定装置は、第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を取得する取得部を備える。さらに、積雪判定装置は、第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を入力とし、第1の時刻における太陽光パネルを含む画像上にて積雪が存在する領域を特定した結果を出力とする学習モデルを備える。さらに、積雪判定装置は、第2の時刻における太陽光パネルを含む画像の画素を積雪に相当する画素に変換した疑似積雪画像と、対応する被写体のラベルが付与された疑似クラスラベル画像とを用いて、学習モデルを学習させる学習部を備える。さらに、積雪判定装置は、領域を特定した結果に基づいて、太陽光パネル上における積雪の状態を判定する判定部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を取得する取得部と、
前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を入力とし、前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像上にて積雪が存在する領域を特定した結果を出力とする学習モデルと、
前記第1の時刻よりも前の時刻である第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像の画素を積雪に相当する画素に変換した疑似積雪画像と、その画像を構成する画素に対して、対応する被写体のラベルが付与された疑似クラスラベル画像とを用いて、前記学習モデルを学習させる学習部と、
前記領域を特定した結果に基づいて、前記太陽光パネル上における積雪の状態を判定する判定部とを備える、
積雪判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記太陽光パネルに該当する画素の領域に対する、前記太陽光パネル上に存在する積雪に該当する画素の領域の割合である積雪率に基づいて、前記太陽光パネル上における積雪の状態を判定する、請求項1に記載の積雪判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記積雪率と、閾値とを比較することで、前記太陽光パネル上における積雪の状態を判定する、請求項2に記載の積雪判定装置。
【請求項4】
前記第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像と、その画像を構成する画素に対して、対応する被写体のラベルが付与されたクラスラベル画像とを取得する変換元画像取得部と、
前記第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像のうち、前記クラスラベル画像中にて所定のラベルが付与された画素に対応する画素について、積雪に相当する画素に変換し、前記疑似積雪画像を生成する生成部とをさらに備える、
請求項1に記載の積雪判定装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記クラスラベル画像中の所定のラベルを積雪に関するラベルに変換し、疑似クラスラベル画像をさらに生成する、請求項4に記載の積雪判定装置。
【請求項6】
前記所定のラベルは、前記太陽光パネルとして付与されたラベルまたは地面として付与されたラベルを含む、請求項4に記載の積雪判定装置。
【請求項7】
前記第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像または前記疑似積雪画像に疑似的に光を照射し、第2の疑似積雪画像を生成する、ライティング部をさらに備える、請求項4に記載の積雪判定装置。
【請求項8】
前記ライティング部は、時間または天気を含むパラメータに応じて、異なる光を照射する、請求項7に記載の積雪判定装置。
【請求項9】
前記第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像のうち、前記クラスラベル画像中の所定のラベルが付与された画素に対応する各々の画素について、積雪に相当する画素に変換するか否かを判定する変換判定部と、
変換後の画素の輝度を設定する輝度設定部とをさらに備える、
請求項4に記載の積雪判定装置。
【請求項10】
前記疑似積雪画像及び前記疑似クラスラベル画像を生成する疑似カメラ画像生成部をさらに備え、前記疑似カメラ画像生成部は、GAN(Generative Adversarial Network)を用いて前記疑似積雪画像及び前記疑似クラスラベル画像を生成する、請求項1に記載の積雪判定装置。
【請求項11】
前記疑似カメラ画像生成部は、
潜在変数を入力とし、前記疑似積雪画像及び前記疑似クラスラベル画像を出力する生成モデルと、
前記疑似積雪画像及び前記疑似クラスラベル画像と、前記第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像及びその画像に対応する被写体のラベルが付与されたクラスラベル画像とを入力とし、入力された画像が前記第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像であるか、または疑似積雪画像であるかを識別する識別結果を出力する識別モデルとを含む、
請求項10に記載の積雪判定装置。
【請求項12】
取得部が、第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を取得し、
学習モデルが、前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を入力とし、前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像上にて積雪が存在する領域を特定した結果を出力し、
学習部が、前記第1の時刻よりも前の時刻である第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像の画素を積雪に相当する画素に変換した疑似積雪画像と、前記疑似積雪画像を構成する画素に対して、対応する被写体のラベルが付与された疑似クラスラベル画像とを用いて、前記学習モデルを学習させ、
判定部が、前記領域を特定した結果に基づいて、前記太陽光パネル上における積雪の状態を判定する、
ことを含む積雪判定方法。
【請求項13】
取得部が、第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を取得し、
学習モデルが、前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を入力とし、前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像上にて積雪が存在する領域を特定した結果を出力し、
学習部が、前記第1の時刻よりも前の時刻である第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像の画素を積雪に相当する画素に変換した疑似積雪画像と、前記疑似積雪画像を構成する画素に対して、対応する被写体のラベルが付与された疑似クラスラベル画像とを用いて、前記学習モデルを学習させ、
判定部が、前記領域を特定した結果に基づいて、前記太陽光パネル上における積雪の状態を判定する、
ことを含む積雪判定方法をコンピュータに実行させる積雪判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、積雪判定装置、積雪判定方法及び積雪判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、運転計画時の発電量予測に対し、発電所の実運転時の発電量を保証することが求められる。降雪のある地域では、太陽光パネル上の積雪により、発電量は不安定となるため、積雪時は出力保証から除外することが望ましい。
【0003】
積雪を判定する手段として積雪計が用いられることがあるが、導入時のコストが高額となるため、気象データによる判定が広く行われている。しかし、太陽光パネル上の積雪は降雪後も残留し、晴天時であっても残留する積雪のために発電量が不安定となることから、気象データによる判断では確実性に欠ける。
【0004】
現在、太陽光パネル上の積雪を判定する手段として、太陽光パネル上の発電量を比較し、積雪を判定するシステムや、カメラ画像を用いて屋根や路面の積雪状態について判定するシステムが知られている。後者のシステムは、画像上の輝度情報から対象となる屋根や路面上の積雪を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-154321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このほか、機械学習を用いて太陽光パネル上に存在する積雪の状態を判定する技術も開発が進められており、より精度の良い判定が行える技術が求められている。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、学習データに含まれないカメラ視点の画像に対して、太陽光パネル上の積雪状態を高精度に判定する積雪判定装置、積雪判定方法及び積雪判定プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、積雪判定装置は、第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を取得する取得部を備える。さらに、前記積雪判定装置は、前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像を入力とし、前記第1の時刻における太陽光パネルを含む画像上にて積雪が存在する領域を特定した結果を出力とする学習モデルを備える。さらに、前記積雪判定装置は、前記第1の時刻よりも前の時刻である第2の時刻における前記太陽光パネルを含む画像の画素を積雪に相当する画素に変換した疑似積雪画像と、その画像を構成する画素に対して、対応する被写体のラベルが付与された疑似クラスラベル画像とを用いて、前記学習モデルを学習させる学習部を備える。さらに、前記積雪判定装置は、前記領域を特定した結果に基づいて、前記太陽光パネル上における積雪の状態を判定する判定部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における積雪判定装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態における積雪判定装置の別の概略構成図である。
図3】第1実施形態における積雪判定装置の機能ブロック図である。
図4】第1実施形態における疑似積雪画像生成部の詳細を示すブロック図である。
図5】第1実施形態における積雪判定のフローチャートの例である。
図6】第1実施形態における疑似積雪画像生成時のフローチャートの例である。
図7】第1実施形態における過去画像と、過去画像に対応するクラスラベル画像との比較例である。
図8】第1実施形態における疑似積雪画像と、疑似積雪画像に対応する疑似クラスラベル画像との比較例である。
図9】第1実施形態の変形例における疑似積雪画像生成部の詳細を示すブロック図である。
図10】第2実施形態における疑似積雪画像生成部の詳細を示すブロック図である。
図11】第2実施形態における第2の疑似積雪画像生成時のフローチャートの例である。
図12】第3実施形態における積雪判定装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における積雪判定装置の概略構成図である。
【0012】
本実施形態における積雪判定装置2は、例えば、太陽光発電所1の建屋400に設置され、太陽光発電所1内の太陽光パネル100上の積雪状況について、機械学習を用いて積雪判定を行う。積雪判定装置2は、太陽光発電所1の運開前等、撮像装置6によって撮像された、太陽光パネル100上の積雪を含む画像を学習データとして含まない場合であっても、画像を用いた積雪判定を行うことができる。
【0013】
図1では、太陽光パネル100のストリング構成500が、互いに直列に接続された複数の太陽光パネル100を含んでいる。さらに図1では、太陽光パネル100のアレイ構成700が、互いに並列に接続された複数のストリング構成500を含んでいる。図1に示すアレイ構成700は、横方向に延び奥行き方向に隣り合う複数のストリング構成500を含んでおり、各ストリング構成500は、横方向に一列または複数列に並ぶ複数の太陽光パネル100を含んでいる。本実施形態における積雪判定は、例えば、アレイ構成700に対して一部分を撮像装置6で撮像した画像を用いて解析を行う。本実施形態における積雪の解析は、アレイ構成700の一部分を撮像装置6で撮像した画像だけではなく、太陽光パネル100単位またはストリング構成500について、一部分を撮像装置6で撮像した画像についても適用が可能である。
【0014】
撮像装置6は、例えば、家屋の屋上や太陽光発電所1に配置される少なくとも1台以上の監視カメラである。また、撮像装置6は、例えば、ロボットやドローンのような移動体などに設置される。その場合、撮像装置6と積雪判定装置2は、無線接続によって電気的に接続される構成としてもよい。また、撮像装置6は、例えば、レンズ及びイメージセンサを備える単眼カメラまたは魚眼カメラである。また、撮像装置6は、例えば、可視光による反射光を撮影する可視光カメラのほか、赤外カメラやデプスマップを取得可能なカメラ及び距離センサなどを用いて撮影するカメラである。
【0015】
撮像装置6により撮影される画像は、動画像または静止画像いずれであってもよい。動画像を撮影する場合は、フレーム毎にその後の処理が実行されてもよく、または複数のフレームのうち、少なくとも1フレーム以上の任意の1フレームに基づいてその後の処理が実行されてもよい。また、複数のフレームに平均化処理等の演算処理を施した画像や、複数台の監視カメラから取得した複数枚の画像にパノラマ合成等の演算処理を施した画像に基づいて、その後の処理が実行されてもよい。また、撮像装置6によって撮影した画像は、R画像、G画像及びB画像で構成された3チャネルのカラー画像のほか、表色系変換処理によってRGB表色系とは異なる表色系であってもよい。異なる表色系とは、例えばHLS表色系であってよい。もしくは、カラー画像の各チャネル情報に所定の係数を掛け合わせて1チャネル化したモノクロ画像であってよく、モノクロ画像を構成する画素Yは、例えば式(1)によって求めてよい。
Y=0.2126×R+0.7512×G+0.0722×B (1)
【0016】
また、積雪判定装置2は、撮像装置6について、監視システム3で用いるものを共用して用いてもよい。この場合、積雪判定装置2は、ネットワーク機器20を通じて、撮像装置6から撮像した画像を取得してもよく、また、監視システム3の記憶部4に格納された撮像装置6の画像を取得してもよい。積雪判定装置2は、撮像装置6等の設備を共用して用いることにより、設備の導入コストを抑えることができる。
【0017】
この例では、積雪判定装置2が判定した積雪判定の結果は、監視システム3の表示装置5に表示する例を示しているが、例えば、積雪判定装置2に表示装置を接続して表示してもよい。
【0018】
図2は、第1実施形態における積雪判定装置の別の概略構成図である。
【0019】
積雪判定装置2、監視システム3は、例えば、太陽光発電所1から離れた管理所600に設置されてもよい。この場合、撮像装置6によって撮像された映像または画像は、ネットワーク30を通じて伝送される。
【0020】
ネットワーク30は、例えば、ネットワーク機器20の他、光ケーブルやメタルケーブルといった有線回線や、衛星回線やマイクロ無線といった無線回線による伝送媒体により構築される。また、ネットワーク機器20は、例えば、ルータ、スイッチ、メディアコンバータなど、伝送媒体の種類に応じて、映像や画像を伝送するために必要な設備により構築される。以下、図2の構成を用いて説明する。
【0021】
図3は、第1実施形態における積雪判定装置の機能ブロック図である。
【0022】
積雪判定装置2は、取得部11、記憶部12、学習モデル13、検出部14、判定部15、疑似積雪画像生成部17及び学習部18を備える。また積雪判定装置2は、例えばPC(Personal Computer)に積雪判定装置2用のプログラムをインストールすることで実現できる。積雪判定装置2内のCPU(Central Processing Unit)が、積雪判定装置2のプログラムを実行することにより、取得部11、記憶部12、学習モデル13、検出部14、判定部15、疑似積雪画像生成部17及び学習部18の機能が実現される。また、例えば、記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置上にデータベースとして構築される。
【0023】
また、本実施形態では、積雪判定装置2は、例えば太陽光発電所1の運開前や撮像装置6の撮像位置を変更した場合等、撮像対象箇所における太陽光パネル100上の積雪を含む画像が記憶部12に蓄積されていない状態で、太陽光パネル100上に存在する積雪判定を行う例を取り上げて説明する。
【0024】
取得部11は、撮像装置6から、撮像対象箇所の第1の時刻における太陽光パネル100を含む1枚の画像を取得する。ここで取得する画像は、太陽光パネル100上に積雪が存在するか否かを判定する対象となる画像である。また、取得部11は、ネットワーク30を介して画像を取得する。なお、この図では、ネットワーク機器20の記載は省略している。また、第1の時刻は基準となる時刻である。
【0025】
疑似積雪画像生成部17は、第1の時刻よりも前の時刻である第2の時刻における撮像対象箇所の太陽光パネル100を含む画像(以下、単に過去画像とも呼ぶ)と、この画像に対応するクラスラベル画像に基づいて、1枚または複数枚の太陽光パネル100を含む画像の画素を積雪に相当する画素に変換した疑似積雪画像、及び対応する疑似クラスラベル画像を生成する。また、疑似積雪画像生成部17は、生成された疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を記憶部12に格納する。疑似積雪画像の生成方法等については後述する。
【0026】
クラスラベルとは、画像中に含まれる被写体に関するデータであり、領域分割(例えば、セマンティックセグメンテーション)を実施するための学習データとして用いられる。被写体は、例えば、「太陽光パネル100」、「架台」、「空、地面等の背景」といった画像取得時に撮像装置6の撮影状況によらず存在するものを指す。また被写体は、例えば、「白飛び、ゴースト、レンズフレア、ハレーションまたは影等の外乱」といった撮像時の環境に依存して画像に生じる情報を指す。これらの被写体は、互いに独立してクラスとしてユーザが定義してもよく、後者は前者に包含してもよい。この場合、「白飛び、ゴースト、レンズフレア、ハレーションまたは影等の外乱」等のクラスは定義しない。
【0027】
クラスラベル画像とは、画像中に含まれる被写体をクラスとして分類し、その画像を構成する画素に対して対応するクラスのラベルを付与した画像である。クラスラベル画像は、各クラスについて、RGBによって色情報で表現してもよく、また各クラスをIDによって管理する等、インデックス化した情報を用いてもよい。クラスラベル画像は、各クラスを色情報で表現する場合、例えば、R=255、G=0、B=0といった情報によって、1つのクラスを表現する。また、クラスラベル画像は、各クラスをインデックス化した情報で表現する場合、例えば、ID=1を付与した1つのクラスについて、R=1、G=1、B=1といった色情報で表現してもよい。以下、疑似クラスラベル画像も同様に、疑似積雪画像に含まれる被写体をクラスとして分類し、その画像を構成する画素に対して対応するクラスのラベルを付与した画像のことを指す。
【0028】
クラスラベル画像は、どのクラスにも属さない画素があってもよい。例えば、監視カメラによって撮影された画像の中に、時刻を示す画素が含まれている場合等、クラスとしての分類が難しく、かつ、太陽光パネル100上の積雪が存在する領域の検出に依存しない領域について、どのクラスにも属さない画素(Void)としてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、3チャネルのカラー画像の例を取り上げて説明するが、用いる画像は、例えば1チャネルの画像でもよい。例えば、グレースケール画像であれば、G=255といった階調に関する情報や、インデックス画像であれば、G=1といったパレットのインデックスに関する情報によって1つのクラスを表現することが考えられる。
【0030】
学習部18は、記憶部12から読み出した疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を用いて学習モデル13を学習させる。この処理は、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像の対ごとに行われる。また、学習部18は、過去画像及びクラスラベル画像を用いて学習モデル13を学習させてもよい。
【0031】
学習モデル13は、疑似積雪画像と、この画像に対応する、太陽光パネル100上に存在する積雪等を教示対象とする教示データとを用いて学習する。この例では、太陽光パネル100上に存在する積雪を教示対象とする教示データは、疑似クラスラベル画像を用いる。学習モデル13は、疑似積雪画像に対して畳み込み演算を行い、畳み込み演算結果である特徴マップに基づき、疑似積雪画像上の各画素がどのクラスに属するかを確率で表現する。学習モデル13は、最も確率の高いクラスとして出力したクラスと教示データが示すクラスとの間に生じる誤差に基づいて、畳み込み演算時に使用するカーネルやバイアスなどのパラメータを更新する。疑似積雪画像の特徴マップは、カーネルのサイズ、数及びバイアスの有無など、演算式を任意に変更して求めてよい。また、学習モデル13は、畳み込み演算の際にパディングを行ってもよく、最大プーリングや平均プーリングなどのプーリング演算を行ってもよい。また、3チャネルのカラー画像の場合、学習モデル13は、畳み込み演算をR画像、G画像及びB画像それぞれに対して行い、例えば、各要素の総和を取るなど、各演算結果を組み合わせてもよい。太陽光パネル100上の積雪が存在する領域は、特徴マップに基づいて、例えば転置畳み込み演算を行うことで検出可能である。これらの領域は画素単位で特定することができる。
【0032】
本実施形態では、学習モデル13は、疑似積雪画像等に対して、畳み込み演算を行って学習する例を示したが、Vision Transformer等のベクトル相関性解析に基づく手法によって学習を行ってもよい。
【0033】
学習モデル13は、上記の学習結果に基づいて、第1の時刻における太陽光パネル100を含む1枚の画像を入力として受け付け、この画像における太陽光パネル100上の積雪が存在する領域を特定し出力する。例えば、学習モデル13は、入力した画像に対して、領域分割を行うことで、画像中の積雪が存在する領域を示す画像を出力する。また、学習モデル13は、出力結果として、太陽光パネル100上に存在する積雪の領域を示す画素数を出力してもよい。
【0034】
検出部14は、取得部11が取得した第1の時刻における太陽光パネル100を含む1枚の画像を学習モデル13に出力する。また、検出部14は学習モデル13から出力された領域分割の結果を入力として受け付ける。
【0035】
判定部15は、検出部14から領域分割の結果を入力として受け付けて、太陽光パネル100上の積雪の状態を判定する。例えば、太陽光パネル100上の積雪の状態は、積雪率に基づいて判定される。太陽光パネル100上の積雪率は、太陽光パネル100に該当する画素の領域に対する、太陽光パネル100上に存在する積雪に該当する画素の領域の割合である。太陽光パネル100上に存在する積雪に該当する画素の領域は、取得画像に対して領域分割を行うことにより算出される。一方で、固定式の撮像装置6において、太陽光パネル100に該当する画素の領域は、例えば、人による教示作業やアフィン変換を用いて、あらかじめ積雪判定装置2に認識させ、記憶部12に格納することで算出することができる。判定部15は、これら2つの値により積雪率を算出することができる。例えば、判定部15は、算出した積雪率と閾値を比較し、積雪率が閾値を超えた場合に、太陽光パネル100上に積雪があるものと判定することができる。
【0036】
また、判定部15は、積雪判定装置2により、太陽光パネル100上に積雪があると判定された場合、積雪の状態の判定に基づく信号を出力する構成としてもよい。積雪の発生に基づく信号の例は、警報信号である。出力された警報信号は、表示装置5に表示してもよい。また、出力された警報信号は、表示装置5に表示する代わりに、インジケータや警告灯などの画面に表示する以外の警報装置(不図示)に出力してもよい。
【0037】
図4は、第1実施形態における疑似積雪画像生成部の詳細を示すブロック図である。
【0038】
疑似積雪画像生成部17は、変換元画像取得部21、変換判定部22、輝度設定部23、生成部24及び保存部25を備える。疑似積雪画像生成部17は、少なくとも1枚以上の過去画像と、この画像に対応するクラスラベル画像とに基づいて、1枚または複数枚の太陽光パネル100を含む画像の画素を積雪に相当する画素に変換した疑似積雪画像と、対応する疑似クラスラベル画像とを生成する。
【0039】
疑似積雪画像生成部17は、例えば、ユーザによってあらかじめ設定された基準に基づいて疑似積雪画像を網羅的に生成する。学習モデル13は、これらのデータを用いて学習することで、実際の積雪に関する学習データを用いなくても積雪検出を実施可能となる。
【0040】
変換元画像取得部21は、少なくとも1枚以上の過去画像と、この画像に対応するクラスラベル画像とを取得する。例えば、これらのデータは、太陽光発電所1の運開前に1日程度、撮像装置6で撮像した画像を用いることが考えられる。過去画像は、太陽光発電所1の運開前に撮像された画像用いて、またクラスラベル画像は、例えば、ユーザの入力によってこの画像に教示を与えて作成することが考えられる。
【0041】
例えば、表示装置5に表示されたユーザインタフェースを介して、jpg形式やbmp形式等のファイル形式でユーザがこれらの画像をアップロードすることで、変換元画像取得部21は、これらの画像ファイルを取得することが考えられる。
【0042】
変換判定部22は、ユーザによってあらかじめ設定された判定基準によって、過去画像のうち、クラスラベル画像中の所定のラベルが付与された画素に対応する各々の画素について、積雪に相当する画素に変換するか否かを判定する。変換判定部22は、例えば、表示装置5に表示されたユーザインタフェースから、ユーザによる判定基準の設定の入力を受け付けることが考えられる。例えば、ユーザは、積雪判定装置の初期設定時または運用開始後の設定変更時に、これらの設定の入力を行うことが考えられる。
【0043】
また、ユーザは、積雪に相当する画素へ変換するか否かの判定基準として、クラスラベル間で定義してもよいし、クラスラベル内で定義してもよい。クラスラベル間での定義とは、所定のラベルが付与された画素については、積雪に相当する画素に変換を実施し、所定のラベル以外のラベルが付与された画素については、変換を実施しないことを言う。例えば、変換判定部22は、「太陽光パネル100」というラベルが付与された画素に対しては、対応する過去画像の画素を積雪に相当する画素に変換し、「空」というラベルが付与された画素に対しては、変換を実施しないと判定する。また、以下では、「太陽光パネル100」というラベルが付与された画素に対して、変換を行う例について説明するが、この例以外にも、例えば、「地面」のラベルが付与された画素に対して、対応する過去画像中の画素を積雪に変換することが考えられる。これにより、積雪判定装置2は、生成する疑似積雪画像のバリエーションを増やすことができ、学習モデル13の学習データ量を増加させることができる。
【0044】
クラスラベル内での定義とは、所定のラベルが付与された画素において、所定の条件を具備する画素については、積雪に相当する画素に変換を実施し、所定の条件を具備しない画素については、変換を実施しないことを言う。例えば、変換判定部22は、太陽光パネル100というラベルが付与された画素のうち、所定範囲内の輝度値を有する画素に対しては変換を実施し、所定範囲内の輝度値を有さない画素に対しては変換を実施しないと判定する。
【0045】
また、変換判定部22は、上述したクラスラベル内定義においては、さらに詳細な条件として、変換する画素について、どのように変換するかをユーザに設定させてもよい。例えば、変換判定部22は、該当する画素全体の中で何パーセントの画素を積雪として変換するか、該当する画素全体を均一に変換するか、または太陽光パネル100下部に存在する画素のみを変換するか等、より詳細な基準をユーザに設定させてもよい。太陽光パネル100上の積雪は、太陽光パネル100の設置場所に加え、雪の降り方や風向きによって積もり方が異なる。そのため、変換判定部22は、これらの詳細な条件をユーザに入力させることで、太陽光パネル100を設置した場所の環境や気候条件を反映した疑似積雪画像を生成することができる。
【0046】
また、変換判定部22は、変換する画素について、複数の基準で複数の疑似積雪画像を生成すると判定してもよい。例えば、変換判定部22は、該当する画素全体の中で10パーセントの画素を均一に積雪として変換すると判定し、さらに該当する画素全体の中で20パーセントの画素を均一に積雪として変換すると判定してもよい。判定基準の設定は、システムの設計事項である。このように、変換判定部22が複数の基準で複数の疑似積雪画像を生成すると判定することによって、疑似積雪画像生成部17は、網羅的に疑似積雪画像を生成することができる。
【0047】
輝度設定部23は、積雪に相当する画素に変換する際、変換後の画素の輝度値を設定する。積雪として変換する画素の輝度値は、例えば、1枚または複数枚の過去画像を用いて、積雪が写っている領域から求めてもよく、輝度設定部23は、積雪というラベルが付与された画素の輝度値の平均から求めてもよい。また、積雪を含む過去画像がない場合は、輝度値をユーザの入力によって定めてもよい。また、輝度設定部23は、積雪として変換する画素の輝度値を所定の範囲として求めてもよい。例えば、輝度設定部23は、積雪というラベルが付与された画素の輝度値の分散を求め、分散の範囲から輝度範囲を設定してもよい。
【0048】
また、輝度設定部23が設定した輝度値または輝度範囲は、記憶部12に格納してもよい。これにより、疑似積雪画像生成部17は、一度設定した輝度値または輝度範囲について、2回目以降の疑似積雪画像生成する際に活用することができる。
【0049】
生成部24は、入力された過去画像と、クラスラベル画像とを比較し、クラスラベル画像中にて所定のラベルが付与された画素に対応する過去画像中の画素について、積雪に相当する画素に変換し、疑似積雪画像を生成する。
【0050】
また、生成部24は、クラスラベル画像中の所定のラベルについて、積雪のラベルに変換した疑似クラスラベル画像を生成する。例えば、クラスラベル画像にて、「太陽光パネル100」のラベルが付与された画素に対応する過去画像中の画素を変換した場合、生成部24は、そのラベルを「太陽光パネル100上のパネル」としてラベル名称を変換する。また、ラベル名称を変換した場合、クラスが変わるため、生成部24は、ラベル名称の変換に加え、ラベルの画素値を変換してもよい。
【0051】
保存部25は、生成された疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を記憶部12に格納する。また、記憶部12には、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像は1対1に対応付けて保存される。
【0052】
図5は、第1実施形態における積雪判定のフローチャートの例である。
【0053】
このフローチャートでは、主に積雪判定のフローについて説明する。このフローチャートでは、学習モデル13は、過去画像及びクラスラベル画像を用いて学習を行った学習済みモデルであるものとして説明する。
【0054】
ステップS1では、取得部11は、ネットワーク30を介して、撮像対象箇所の第1の時刻における太陽光パネル100を含む1枚の画像を取得する。取得部11は、所定のタイミングで繰り返し画像を取得してもよい。この場合、積雪判定装置2は、取得部11が画像を取得するごとに、積雪判定を行う。ステップS2では、検出部14は、取得部11が取得した画像を学習モデル13に入力する。
【0055】
ステップS3では、学習モデルは、領域分割の結果を出力し、検出部14がこの結果を入力としてとして受け付ける。ステップS4では、判定部15は、領域分割の結果から、積雪率を算出し、積雪判定を行う。例えば、判定部15は、領域分割の結果から太陽光パネル100上に存在する積雪に該当する領域を画素数として算出する。また、判定部15は、太陽光パネル100に該当する領域の画素数として、記憶部12に格納された値を読み出す。判定部15は、これら2つの値を用いて積雪率を算出する。また、判定部15は、太陽光パネル100に該当する画素の領域に対する、太陽光パネル100上に存在する積雪に該当する画素の領域の割合を算出し、積雪率を算出する。また、判定部15は、積雪率と、閾値とを比較し、積雪率が閾値以上であった場合、表示装置5に警報信号を出力する。太陽光パネル100に該当する画素の領域の画素数や閾値等の必要なデータはプログラムの実行時に記憶部12からメモリにロードされてもよい。
【0056】
ステップS5では、判定部15は、算出した積雪率を積雪判定の結果として表示装置5に出力する。また、判定部15は、算出した積雪率が閾値以上であった場合、表示装置5に警報として出力してもよい。
【0057】
図6は、第1実施形態における疑似積雪画像生成時のフローチャートの例である。
【0058】
このフローチャートでは、主に疑似積雪画像生成のフローについて説明する。このフローチャートでは、積雪判定装置2は、太陽光発電所1の運開前に撮像装置6で撮像された、積雪を含まない複数の過去画像を用いて疑似積雪画像を生成する例を想定して説明する。また、過去画像に対応するクラスラベル画像は、あらかじめユーザによる教示によって作成されたものとして説明する。
【0059】
また、変換判定部22が過去画像を疑似積雪画像に変換するか判定するにあたり、ユーザによって事前に判定基準が入力された例を想定して説明する。この判定基準は、過去画像中に「太陽光パネル100」に該当する画素が含まれていた場合、「太陽光パネル100上に存在する積雪」として変換するという基準である。また、変換判定部22は、変換を行う場合、「太陽光パネル100」に該当する画素のうち、全体の20パーセントの画素を均一に積雪に該当する画素に変換するものとして判定する。また、記憶部12には、1日程度で取得した種々の時間帯における過去画像が格納されたものとして説明する。
【0060】
ステップS21では、変換元画像取得部21は、過去画像及びクラスラベル画像を取得する。例えば、表示装置5に表示されたユーザインタフェースとして、画像アップロード用ボタンをユーザが押下することによって、変換元画像取得部21は過去画像及びクラスラベル画像を取得する。ステップS22では、変換判定部22は、クラスラベル画像と、過去画像とを比較し、過去画像を疑似積雪画像に変換するかを判定する。変換元画像取得部21は、クラスラベル画像に「太陽光パネル100」のラベルが含まれていた場合、このラベルが付与された画素を「太陽光パネル100上に存在する積雪」として変換するものとして判定する。また、変換元画像取得部21は、「太陽光パネル100」を「太陽光パネル100上に存在する積雪」として変換するにあたり、該当するラベルが付与された画素全体のうち、20パーセントを積雪に該当する画素として変換し、また、該当する画素全体を均一に変換するものとして判定する。
【0061】
ステップS22で、変換元画像取得部21が過去画像を疑似積雪画像に変換すると判定した場合、ステップS23では、輝度設定部23は、変換後の画素の輝度値を設定する。この例では、輝度設定部23は、記憶部12に格納されたその他の過去画像を用いて、積雪というクラスラベルが付与された画素の輝度値の平均を算出する。ステップS22で、変換判定部22が過去画像を疑似積雪画像に変換しないと判定した場合、積雪判定装置2は、疑似積雪画像を生成せずに処理を終了する。
【0062】
ステップS24では、生成部24は、変換判定部22の判定した条件及び輝度設定部23によって設定された輝度値に基づいて、過去画像から疑似積雪画像を生成する。具体的には、生成部24は、クラスラベル画像の「太陽光パネル100」のラベルが付与された画素に対応する過去画像中の画素について、積雪に相当する画素に変換する。また生成部24は、これらの画素のうち全体の20パーセントを均一に積雪に相当する画素として変換する。また、生成部24は、変換を実施した過去画像に対応するクラスラベル画像について、「太陽光パネル100」のラベルを「太陽光パネル100上の積雪」に変換し、疑似クラスラベル画像を生成する。ステップS25では、保存部25は、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を一対一に対応付けて記憶部12に格納する。
【0063】
図7は、第1実施形態における過去画像と、過去画像に対応するクラスラベル画像との比較例である。
【0064】
図7では、説明の単純化のため、太陽光パネル100のアレイ構成700ではなく、1枚の太陽光パネル100が撮像された画像を取り上げて説明する。
【0065】
図7Aは、変換元画像取得部21が取得した過去画像の例である。過去画像は、太陽光パネル100、地面130、空140及び架台150が撮像されている。図7Bは、過去画像に対応するクラスラベル画像の例である。この例では、クラスラベル画像は、太陽光パネル100が緑色に色分けされ、地面130がピンク色に色分けされ、空140が青色に色分けされ、架台150が黒色に色分けされている。説明のために、緑色の色分け部分は、グレーの単色で表し、ピンク色の色分け部分は、細い斜線のハッチングで表し、青色の色分け部分は、太い斜線のハッチングで表し、黒の色分け部分は、ドットのハッチングで表す。
【0066】
変換元画像取得部21は、図7A及び7Bで示すような過去画像及びクラスラベル画像を取得する。また、生成部24は、取得された過去画像及びクラスラベル画像に基づいて、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を生成する。
【0067】
図8は、第1実施形態における疑似積雪画像と、疑似積雪画像に対応する疑似クラスラベル画像との比較例である。
【0068】
図8Aは、生成部24によって生成された疑似積雪画像の例である。この例では、図8Aは、図7Aの過去画像から疑似積雪画像を生成し、太陽光パネル100に相当する画素全体を積雪に相当する画素に変換した例を示している。図7Bは、疑似積雪画像に対応する疑似クラスラベル画像の例である。この例では、太陽光パネル上の積雪110を水色に色分けしており、説明のため、この水色の色分け部分を白の単色で表している。この例では、図7Bと比較して、太陽光パネル100としてラベル付けされた画素、つまり緑色に色分けされた画素は、太陽光パネル上の積雪110、つまり水色に色分けされた画素としてラベルが変更されている。
【0069】
この例では、生成部24は、太陽光パネル100に該当する画素全体を積雪に相当する画素に変換した例を示したが、太陽光パネル100に該当する画素の一部を積雪に相当する画素に変換してもよい。また、生成部24は、太陽光パネル100以外にも、例えば、地面130に該当する画素の一部または全部について、積雪に相当する画素に変換してもよい。これにより、生成部24は、網羅的に疑似積雪画像を生成することができる。
【0070】
図9は、第1実施形態の変形例における疑似積雪画像生成部の詳細を示すブロック図である。
【0071】
本変形例では、積雪判定装置2は、疑似カメラ画像生成部29によって疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を生成する。疑似カメラ画像生成部29は、例えば、GAN(Generative Adversarial Network:敵対的生成ネットワーク)を用いて、複数枚の疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を生成する。疑似カメラ画像生成部29は、GANを用いて疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を生成するため、大量の画像を生成することができる。また、疑似積雪画像生成部17以外の構成は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0072】
例えば、疑似カメラ画像生成部29は、潜在変数を入力として、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を出力する生成モデル27を備える。また疑似カメラ画像生成部29は、過去画像及びクラスラベル画像と、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像とを入力として受け付け、入力された画像が過去画像であるか、または疑似積雪画像であるかの識別結果を出力する識別モデル28を備える。識別モデル28は、例えば入力された画像の組が生成モデル27によって生成された疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像であれば、疑似的な画像であるとして「0」を出力し、過去画像及びクラスラベル画像であれば、本物の画像であるとして「1」を出力する。生成モデル27は、生成した画像の組について、識別モデル28が本物の画像であるとして出力するよう学習を行う。一方、識別モデル28は、入力された画像の組が生成モデル27によって生成された疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像であれば、疑似的な画像であるとして「0」を出力し、過去画像及びクラスラベル画像であれば、本物の画像であるとして「1」を出力するよう学習を行う。
【0073】
生成モデル27は、例えば、入力された潜在変数に転置畳み込み演算を行うことで、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を生成する。また、識別モデル28は、例えば、入力された疑似積雪画像または過去画像に対して、畳み込み演算を行うことで特徴マップを生成し、特徴マップと疑似クラスラベル画像またはクラスラベル画像とを比較することにより疑似的な画像であるかまたは本物の画像であるかを判定する。
【0074】
保存部25は、生成された全ての疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像をそれぞれ一対一に対応付けて記憶部12に格納する。
【0075】
本実施形態によれば、積雪判定装置2は、撮像装置6で撮像された第1の時刻における画像を取得し、その画像中の太陽光パネル100上の積雪率を算出する。そのため、ユーザは太陽光パネル100上の積雪の状態を定量的に判定することができる。また、ユーザは判定結果について、積雪時において発電量保証から除外するための判断材料として活用することができる。また、同様に、ユーザは、判定結果を除雪作業の判断材料として活用することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、積雪判定装置2は、画像の取得にあたり、撮像装置6等の既設の設備を利用することにより、積雪判定装置2の導入費用を抑えることができる。また、積雪判定装置2は、既設の設備を利用することにより、設備数の増加を抑えることができるため、保守費用を抑えることができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、生成部24は、過去画像に基づいて、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を生成する。また、学習モデル13は、疑似クラスラベル画像を教示データとして疑似積雪画像の学習を行う。これにより、学習モデル13は、学習データに現実の積雪画像が含まれていない場合であっても、疑似積雪画像等を用いて積雪の領域を検出する学習を行うことができ、精度の高い積雪判定を実施することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、変換判定部22は、ユーザが設定した判定基準に基づいて、過去画像を疑似積雪画像に変換するか否かを判定する。疑似積雪画像生成部17は、疑似積雪画像への変換にあたり、ユーザの設定を反映させることによって、太陽光パネル100を設置した場所の環境や気候条件を反映した疑似積雪画像を生成することができる。また、生成部24は、ユーザが設定した判定基準に基づいて、網羅的に疑似積雪画像を生成することができる。
【0079】
また、本実施形態の変形例によれば、生成モデル27は、非撮影画像から、敵対的学習によって大量の疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を生成すことができる。これにより、積雪判定装置2は、学習部18が学習不足となることを抑制し、精度の高い積雪判定を実施することができる。
【0080】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態における疑似積雪画像生成部の詳細を示すブロック図である。
【0081】
本実施形態では、疑似積雪画像生成部17以外のブロック図の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
本実施形態の疑似積雪画像生成部17は、変換元画像取得部21が取得した過去画像または生成部24が生成した疑似積雪画像に疑似的に光を照射しライティングを行うライティング部26を備える。
【0083】
ライティング部26は、過去画像または疑似積雪画像に、疑似的に光を照射(ライティング処理)し、第2の疑似積雪画像を生成する。ライティング処理は、コンピュータグラフィクスによって実行可能である。ライティング部26は、1枚の過去画像または疑似積雪画像から、光源の位置、強さまたは数等を変化させて、複数枚の第2の疑似積雪画像を生成してもよい。また、ライティング部26は、過去画像及び疑似積雪画像の両方から第2の疑似積雪画像を生成してもよい。
【0084】
また、積雪判定装置2のユーザは、光源の位置、数または強さに応じて、過去画像または疑似積雪画像内の領域に照射される光の当たり方を変えるため、過去画像または疑似積雪画像における各画素に対する奥行きを教示したデータを合わせて準備してもよい。奥行きを教示したデータは、例えばデプスマップである。デプスマップに格納される奥行きは、単位を有する絶対的なスケールであってもよく、またある奥行きを1とした相対的なスケールであってもよい。例えば、デプスマップは、3DLiDARといった奥行きを測定可能なセンサを用いて取得することができる。また、デプスマップは、センサを用いず、画像認識技術を過去画像に適用し、奥行きを推定し、この推定結果をデプスマップとして用いてもよい。また、デプスマップは、例えば、変換元画像取得部21がユーザからの過去画像等と併せて入力を受け付けることが考えられる。
【0085】
現実には、天候や時間帯によって、光の強さや角度等が異なる光が物体に照射される。そのため、ライティング部26は、天気や時間帯等のパラメータをユーザに設定させて、このパラメータに応じて過去画像または疑似積雪画像に異なる光を照射してもよい。例えば、ライティング部26は、天気や時間帯によって、光の強さや角度を変更することが考えられる。天気が晴れで、正午の時間帯であれば、太陽が南中する時間帯であるため、ライティング部26は、晴れの天気に応じた強い光源を、画像の真上から照射することが考えられる。また、ライティング部26は、表示装置5にパラメータ設定用のユーザインタフェースを表示し、ユーザから入力を受け付けることが考えられる。
【0086】
また、第2の疑似積雪画像は、疑似積雪画像にライティング処理を施した画像であるため、疑似積雪画像と同一のクラスラベル画像を用いることができる。
【0087】
図11は、第2実施形態における第2の疑似積雪画像生成時のフローチャートの例である。
【0088】
この例では、ライティング部26は、1枚の疑似積雪画像から複数枚の第2の疑似積雪画像を生成するフローについて説明する。また、ステップS31~S34は、ステップS21~S24と同様なフローであるため、説明を省略する。
【0089】
ステップS35では、ライティング部26は、疑似積雪画像を入力として受け付け、この画像に、ライティング処理を行い、第2の疑似積雪画像を生成する。また、ライティング部26は、光源の位置、強さまたは数を変化させて、複数枚の第2の疑似積雪画像を生成する。ステップS36では、保存部25は、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を対応付けて記憶部12に格納する。また、保存部25は、第2の疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像を対応付けて記憶部12に格納する。この例では、疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像は、記憶部12上に構築されるデータベーステーブル上に同一のレコードとして格納される。また、第2の疑似積雪画像及び疑似クラスラベル画像も同様に、同一のレコードとして格納される。
【0090】
本実施形態によれば、ライティング部26は、過去画像または疑似積雪画像に対してライティング処理を行い、第2の疑似積雪画像を生成する。これにより、積雪判定装置2は、学習モデル13に対する学習データ量を増加させることができる。また、学習データ量の増加に伴い、学習モデル13の出力精度を向上させることができるため、積雪判定装置2は、より精度の高い積雪判定を行うことができる。
【0091】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態における積雪判定装置のハードウェア構成図である。
【0092】
図12の積雪判定装置2は、CPU等のプロセッサ52と、RAM等の主記憶装置53と、HDD等の補助記憶装置54と、LAN(Local Area Network)ボード等のネットワークインタフェース55と、メモリスロットやメモリポート等のデバイスインタフェース56と、これらの機器を互いに接続するバス57とを備えている。積雪判定装置2は例えば、PC等のコンピュータであり、キーボードやマウス等の入力装置や、LCD(Liquid Crystal Display)モニタ等の出力装置を備えている。
【0093】
本実施形態においては、第1~第2実施形態のうち、いずれかにおける積雪判定装置2の情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが、補助記憶装置54内にインストールされている。積雪判定装置2は、このプログラムを主記憶装置53に展開して、プロセッサ52により実行する。これにより、図3、4等に示す各ブロックの機能を積雪判定装置2内で実現し、第1~第2実施形態で説明した積雪判定が可能となる。
【0094】
このプログラムは例えば、このプログラムを記録した外部装置58をデバイスインタフェース56に装着し、このプログラムを外部装置58から補助記憶装置54に格納することでインストール可能である。外部装置58の例は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体や、このような記録媒体を内蔵する記録装置である。記録媒体の例はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD-R(Compact Disk Recordable)、フレキシブルディスク、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、DVD-R (Digital Versatile Disk Recordable)であり、記録装置の例はHDDである。また、このプログラムは、例えば、ネットワークインタフェース55を介してダウンロードすることでインストール可能である。
【0095】
本実施形態によれば、第1~第2実施形態のうち、いずれかにおける積雪判定装置2の機能をソフトウェアにより実現することが可能となる。
【0096】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを該当する画素全体の中で10パーセントの画素を積雪として変換すると判定し、意図したものではない。本明細書で説明した新規な積雪判定装置2は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した積雪判定装置2の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0097】
1:太陽光発電所、2:積雪判定装置、3:監視システム、4:記憶部、
5:表示装置、6:撮像装置、11:取得部、12:記憶部、
13:学習モデル、14:検出部、15:判定部、17:疑似積雪画像生成部、
18:学習部、20:ネットワーク機器、21:変換元画像取得部、
22:変換判定部、23:輝度設定部、24:生成部、25:保存部、
26:ライティング部、27:生成モデル、28:識別モデル、
29:疑似カメラ画像生成部、30:ネットワーク、52:プロセッサ、
53:主記憶装置、54:補助記憶装置、55:ネットワークインタフェース、
56:デバイスインタフェース、57:バス、58:外部装置、
100:太陽光パネル、110:太陽光パネル上の積雪、130:地面、
140:空、150:架台、400:建屋、500:ストリング構成、
700:アレイ構成
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12