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特開2024-179736制御装置、制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179736
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20241219BHJP
   E21C 25/60 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
E21C25/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098802
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】佐野 敬
(72)【発明者】
【氏名】戸田 伸親
(72)【発明者】
【氏名】木原 康成
(72)【発明者】
【氏名】林 裕悟
(72)【発明者】
【氏名】大西 貴之
(72)【発明者】
【氏名】垣見 康介
(72)【発明者】
【氏名】井手 康夫
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 幸治
(72)【発明者】
【氏名】矢葺 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D065
2D129
【Fターム(参考)】
2D065AA17
2D065AA19
2D065BA14
2D065BA32
2D065BA34
2D065CA02
2D065CA06
2D129AA04
2D129AB05
2D129AB13
2D129BA02
2D129CA23
2D129CA25
2D129CB05
2D129FA05
2D129HA02
(57)【要約】
【課題】制御装置にミスト穿孔のより適切パラメータを設定しておき穿孔機を制御すること。
【解決手段】地盤に対してミスト穿孔を行う穿孔機の制御装置であって、穿孔作業時の穿孔機の穿孔エネルギー、回転圧、および穿孔速度のうち一部または全部を含む作動状態を示す情報を取得する取得部と、作動状態を示す情報に基づいて、ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する削孔制御部と、を備える穿孔機の制御装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に対してミスト穿孔を行う穿孔機の制御装置であって、
穿孔作業時の前記穿孔機の作動状態を示す情報を取得する取得部と、
前記作動状態を示す情報に基づいて、前記ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する削孔制御部と、を備える、
穿孔機の制御装置。
【請求項2】
前記作動状態を示す情報は、穿孔エネルギー、回転圧、および穿孔速度のうち一部または全部を含む、
請求項1記載の穿孔機の制御装置。
【請求項3】
前記作動状態を示す情報に基づいて、穿孔対象の地山性状を判定する地山性状判定部を更に備え、
前記削孔制御部は、前記地山性状判定部の判定結果に基づいて、前記ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する、
請求項1記載の穿孔機の制御装置。
【請求項4】
前記削孔制御部は、前記地山性状判定部の前記判定結果を用いて、前記地山性状と前記混合比率を導出可能な情報が対応付けられたテーブルを検索することで、前記混合比率を決定する、
請求項3記載の穿孔機の制御装置。
【請求項5】
前記削孔制御部は、前記穿孔機の作動状態を示す情報が入力されると前記混合比率を出力するように学習された学習済モデルに、前記取得された作動状態を示す情報を入力することで、前記混合比率を決定する、
請求項1記載の穿孔機の制御装置。
【請求項6】
地盤に対してミスト穿孔を行う穿孔機の制御装置が、
穿孔作業時の前記穿孔機の作動状態を示す情報を取得する処理と、
前記作動状態を示す情報に基づいて、前記ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する処理と、
を実行する穿孔機の制御方法。
【請求項7】
地盤に対してミスト穿孔を行う穿孔機の制御装置のプロセッサに、
穿孔作業時の前記穿孔機の作動状態を示す情報を取得する処理と、
前記作動状態を示す情報に基づいて、前記ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する処理と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削は、穿孔機を用いて複数の爆破掘削用の装薬孔を形成し地盤を掘削することで行われる。切羽の穿孔作業においては、くり粉の排出と削孔ロッドの回転による摩擦熱上昇防止のために削孔水が用いられる。削孔水の量は、作業員の経験に基づいて決定している。破砕帯等亀裂が分布する脆弱な地山では、削孔水が亀裂から浸透し地山が緩み、肌落ち災害を誘発する可能性がある。そのため、地山を緩ませないように、削孔水と圧縮空気を混合させ削孔水量を減らして行うミスト穿孔が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-148289号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「切羽前方の地山性状を高精度に予測」、清水建設、2016/6/6、ウェブサイトのURL:”https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2016/2016011.html”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率は、装置に事前に設定値を入力することで決定される。このとき、経験値のある作業員が孔口からの戻り水量と地山の浸水度合いに基づいて最適な混合比率を設定するが、作業員の経験値によって混合比率の設定値の正確性が変わってしまう場合があった。また、地山性状が急変する地盤においては作業員の経験値による判断だけでは浸水を完全に防ぐことは難しい。本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、より適切パラメータで穿孔機を制御することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様の制御装置は、地盤に対してミスト穿孔を行う穿孔機の制御装置であって、穿孔作業時の穿孔機の穿孔エネルギー、回転圧、および穿孔速度のうち一部または全部を含む作動状態を示す情報を取得する取得部と、作動状態を示す情報に基づいて、ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する削孔制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、より適切パラメータで穿孔機を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】各実施形態に係る穿孔機Dの構成図である。
図2】各実施形態に係る穿孔機Dの一部の例を示す構成図である。
図3】第1実施形態に係る制御装置100の構成の一例を示す図である。
図4】混合比率テーブル122の内容の一例を示す図である。
図5】第1実施形態の制御装置100によって実施される処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る制御装置100Aの構成の一例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る学習用装置200の構成の一例を示す図である。
図8】モデル生成部220が行う処理の一例を示した図である。
図9】第2実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の制御装置、制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
[全体構成]
図1は、各実施形態に係る穿孔機Dの構成図である。穿孔機Dは、いわゆるドリルジャンボと称されるものである。以下に穿孔機Dの基本構成を説明する。穿孔機Dは、例えば、台車1と、車輪2と、アウトトリガ3と、ブーム4と、ガイドセル5と、ドリフター6と、削孔ロッド7、トルクセンサ8とを備える。台車1は、車輪2により自走可能かつアウトトリガ3により定位置に配置可能である。ブーム4は、台車1の前方において任意方向に旋回かつ伸縮が可能である。ガイドセル5はブーム4の前方に設けられる。ドリフター6は、ガイドセル5に案内され進退するものであり、先端には岩盤を掘削するための削孔ロッド7が取り付けられている。また、ドリフター6にはトルクセンサ8が取り付けられている。トルクセンサ8は、軸に掛かる回転方向のトルクを計測する装置である。穿孔機Dは、制御装置100によって少なくともミスト混合比の制御が行われる。制御装置100は、例えば、無線または有線で穿孔機Dと通信することで穿孔機Dを遠隔制御する。これに代えて、制御装置100は、穿孔機Dに内蔵され、或いは搭載されてもよい。
【0010】
図2は、各実施形態に係る穿孔機Dの一部の例を示す構成図である。穿孔機Dは、図1の構成に加えて、穿孔ドリル11を備える。穿孔ドリル11の先端には、スイーベルジョイント12を介して削孔ロッド7が取り付けられている。削孔ロッド7の先端にはビット13が取り付けられている。穿孔ドリル11は、スイーベルジョイント12を案内するガイドセル5によって支持される。
スイーベルジョイント12に接続された削孔水収納部14、圧送ポンプ15、流量調整装置16、コンプレッサー17を備える。削孔水収納部14、圧送ポンプ15、流量調整装置16、コンプレッサー17は互いに接続される導管からなる。穿孔ドリル11は、例えば、モータ9を備える。このモータ9には、レゾルバ10が取り付けられている。これらのセンサは穿孔機によって切羽を穿孔する際の作動状態を求めるために必要なデータを計測するための機能を有している。
【0011】
穿孔機Dは、削孔水と圧縮空気を混合させ削孔水量を減らして行うミスト穿孔を行う。圧縮空気は、コンプレッサー17より供給される。削孔水は、削孔水収納部14から圧送ポンプ15を介して圧縮空気により高圧で圧送される。削孔水と圧縮空気は、流量調整装置16によって所定の流量に調整がされる。削孔水と圧縮空気と合流後、ミスト穿孔となる。ミスト穿孔は、スイーベルジョイント12を経て削孔ロッド7内に供給され、削孔ロッド7の先端のビット13より噴霧状に噴射される。ビット13は、ミスト穿孔を噴射しながら、地山20に穿孔する。
【0012】
<第1実施形態>
図3は、第1実施形態に係る制御装置100の構成の一例を示す図である。制御装置100は、通信部102と、取得部104と地山性状判定部106と、削孔制御部108と、記憶部120を備える。通信部102と記憶部120以外の構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0013】
通信部102は、穿孔機Dと通信する。記憶部120は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。記憶部120は、混合比率テーブル122を記憶する。
【0014】
取得部104は、穿孔作業時の穿孔機の作動状態を示す情報を取得する。作動状態とは、例えば、穿孔エネルギー、回転圧、および穿孔速度のうち一部または全部を含む。作動状態は、例えば、穿孔機に取り付けられた各種センサによって、求めることができる。各種センサには、前述したトルクセンサ8、レゾルバ10の他、適宜必要なものが含まれてよい。
【0015】
穿孔エネルギーは、例えば、穿孔機に取り付けられた各種センサによって、削岩機の作動油圧、削孔距離、孔口位置、削孔角度、打撃エネルギー、打撃数、穿孔速度、孔断面積に基づいて求めることができる。打撃エネルギーは、穿孔機の削岩機能の特性や穿孔時の負荷に基づいて求めることができ、穿孔面積、打撃エネルギー、穿孔速度、打撃数に基づいて求めることができる。
【0016】
回転圧は、例えば、トルクセンサ8の出力に基づいて計算される。穿孔速度は、例えば、削孔ロッド7の進行速度に基づいて求めるようにしてもよい。
【0017】
地山性状判定部106は、穿孔機の作動状態を示す情報に基づいて、穿孔対象の地山性状を判定する。地山性状は、例えば、硬岩、中硬岩、軟岩、破砕帯の4つに分類される。地山性状判定部106は、穿孔エネルギー、回転圧、および穿孔速度に応じて地山性状を導出する既知の技術に基づいて、穿孔対象の地山性状を判定する(非特許文献1)。
【0018】
削孔制御部108は、地山性状判定部106の判定結果に基づいて、ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する。ミスト穿孔の混合比率は、混合比率テーブル122の情報に基づいて導出することができる。図4は、混合比率テーブル122の内容の一例を示す図である。この混合比率テーブル122では、地山性状ごとに、削孔水の割合と、圧縮空気の割合が定められている。図示する例では、地山性状が「硬岩」の場合、削孔水の割合が80%、圧縮空気の割合が20%となっており、地山性状が「中硬岩」の場合、削孔水の割合が60%、圧縮空気の割合が40%となっており、地山性状が「軟岩」の場合、削孔水の割合が50%、圧縮空気の割合が50%となっており、地山性状が「破砕帯」の場合、削孔水の割合が20%、圧縮空気の割合が80%となっている。混合比率テーブル122に記録されている情報は、後から変更可能な情報であってもよい。供給するミストの絶対量(噴出速度)の情報も混合比率テーブル122に含まれてもよい。
【0019】
削孔制御部108は、混合比率テーブル122から導出された情報に基づいて、削孔水収納部14とコンプレッサー17を制御し、削孔水と圧縮空気を合流させミスト穿孔にする。ミスト穿孔は、ビット13から噴射される。削孔制御部108は、その他に、穿孔ドリル11を制御したり、穿孔機Dに備えられている各部の制御をする。供給するミストの絶対量(噴出速度)の情報も混合比率テーブル122に含まれる場合、削孔制御部108は、それを反映させてミスト穿孔を制御してよい。
【0020】
[フローチャート]
図5は、第1実施形態の制御装置100によって実施される処理の一例を示すフローチャートである。まず、取得部104は、穿孔作業時の穿孔機の作動状態を取得する(ステップS100)。
【0021】
地山性状判定部106は、作動状態を示す情報に基づいて、穿孔対象の地山性状を判定する(ステップS102)。
【0022】
削孔制御部108は、地山性状の判定結果に基づいて、ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を混合比率テーブル122から導出する(ステップS104)。
【0023】
削孔制御部108は、導出した混合比率に基づいて、ミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整する(ステップS106)。
【0024】
ステップS106の処理の後、本フローチャートは、ステップS100の処理に戻され本フローチャートの処理が繰り返される。
【0025】
[まとめ]
係る処理を行うことで、制御装置100は、地山性状に応じてミスト穿孔における削孔水と圧縮空気の混合比率を自動調整することができるため、ミスト穿孔の効率が上がり肌落ち災害の可能性を低減することができる。
【0026】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る制御装置100Aの構成の一例を示す図である。第1実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する詳細な説明は省略する。図6に示す制御装置100Aは、図3で示す構成と比較すると、記憶部120が、混合比率テーブル122に代えて学習済モデル124を記憶する点で異なる。
【0027】
取得部104は、第1実施形態と同様に穿孔機の作動状態を取得して地山性状判定部106に送信する。削孔制御部108は、穿孔機の作動状態を示す情報が入力されるとミスト穿孔の混合比率を出力するように学習された学習済モデル124に、取得された作動状態を示す情報を入力することで、ミスト穿孔の混合比率を決定する。
【0028】
地山性状判定部106は、地山性状を検出し、フィードバックするデータとして保持する。
【0029】
学習済モデル124は、例えば、制御装置100Aとは別体である学習用装置200によって生成される。図7は、第2実施形態に係る学習用装置200の構成の一例を示す図である。学習用装置200は、例えば、取得部210と、モデル生成部220と、記憶部250を備える。
記憶部250以外の構成要素は、第1実施形態の制御装置100の構成要素と同様に、例えば、CPU、GPU等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。これらの各機能部のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0030】
記憶部250は、第1実施形態の制御装置100の記憶部120と同様に、記憶媒体、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。記憶部250は、学習用データセット252、モデル設定情報254、学習済モデル124などの情報を記憶する。
【0031】
[学習段階/フェーズ1]
以下、学習用装置200の各部の機能について、学習段階と推論段階と再学習段階に分けて説明する。学習段階において、取得部210は、学習用データセット252の元データとなる各種データを制御装置100Aから取得する。元データは、例えば、学習用データ252Aの元になる、前述した穿孔機の「作動状態」や、教師データ252Bの元になる、過去のトンネル工事や事前の試験施工において穿孔機の作動状態から経験値の高い作業員が算出した最適な削孔水と圧縮空気の混合比率である。学習用データセット252は、学習用データ252Aと、教師データ252Bとが対応付けられたものである。
【0032】
取得部210は、前処理部212を含む。前処理部212は、元データに対して前処理を行い、学習用データセット252を生成する。前処理部212は、例えば、正規化処理や異常値除去処理などを行う。
【0033】
モデル生成部220は、学習用データ252Aと、教師データ252Bとに基づいて、学習済モデル124を生成する。前述したように、学習用データ252Aは、穿孔機の制御装置100Aから取得した穿孔機の作動状態に対して前処理を行ったものである。教師データ252Bは、過去のトンネル工事や事前の試験施工において穿孔機の作動状態から経験値の高い作業員が算出した最適な削孔水と圧縮空気の混合比率に対して前処理を行ったものである。学習用データ252Aの要素数は、モデル設定情報254により規定されている入力ノードの数に一致する。モデル設定情報254は、学習済モデル124の元になる機械学習モデルの入力ノード数、出力ノード数、中間ノードの接続態様などを規定する情報である。
【0034】
図8は、モデル生成部220が行う処理の一例を示した図である。モデル生成部220は、学習用データ252Aを入力データとした場合の機械学習モデルの出力が教師データ252Bに近づくように、バックプロパゲーションなどの手法により機械学習モデルのパラメータを学習する。例えば、規定回数、上記の処理を実行した時点での機械学習モデルが、学習済モデル124として確定する。
【0035】
[推論段階/フェーズ2]
学習用装置200は、例えば、制御装置100Aに学習済モデル124を送信する。送信された学習済モデル124は、制御装置100Aの記憶部120に記憶される。制御装置100Aの取得部104は、穿孔機の制御装置100Aから取得した穿孔機の作動状態を取得する。削孔制御部108は、学習済モデル124を入力データとしてミスト穿孔の混合比率を算出する。削孔制御部108は、算出した混合比率を穿孔機に入力し、地山を穿孔する。
【0036】
[再学習段階/フェーズ3]
制御装置100Aの取得部104は、フェーズ2にて実際に地山を穿孔した際の穿孔機の作動状態を取得する。また、取得部104は、実際の作業中に作動状態から導出した地山性状の結果も地山性状判定部106から併せて取得する。経験値の高い作業員は取得した作動状態と地山性状の結果を確認し、更に正確なデータになるように修正を行う。学習用装置200は、その修正結果を教師データ252Bとして取り込み、フェーズ1の処理を繰り返し、再学習を行う。
【0037】
学習用装置200は、フェーズ2とフェーズ3をフィードバックとして繰り返し、フェーズ1で構築する学習済モデル124の精度を向上させる。
【0038】
[フローチャート]
図9は、第2実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。まず、取得部210は、元データを制御装置100Aの取得部104から取得する(ステップS200)。
【0039】
前処理部212は、前処理を行う(ステップS202)。
【0040】
モデル生成部220は、学習済モデル124を確定する(ステップS204)。
【0041】
学習用装置200は、確定した学習済モデル124を制御装置100Aへ送信する(ステップS206)。
【0042】
制御装置100Aの取得部104は、地山を削孔し、穿孔機の作動状態を取得する(ステップS208)。
【0043】
制御装置100Aの削孔制御部108は、学習済モデル124を入力データとしてミスト穿孔の混合比率を算出する(ステップS210)。
【0044】
次に、削孔制御部108は、算出した混合比率を穿孔機に入力し、地山を穿孔する(ステップS212)。
【0045】
制御装置100Aの取得部104は、ステップS212の処理で削孔した際の穿孔機の作動状態を各種センサから取得し、実際の作業中に作動状態から導出した地山性状の結果も地山性状判定部106から併せて取得する(ステップS214)。
【0046】
経験値の高い作業員は、ステップS214で取得した結果を確認し、更に正確なデータになるように修正を行う(ステップS216)。
【0047】
学習用装置200の取得部210は、ステップS216にて作業員が修正したデータを教師データ252Bとして取り込む(ステップS218)。
【0048】
学習用装置200のモデル生成部220は、ステップS218の処理において取り込んだ教師データ252Bを用いて学習済モデル124を再構築する(ステップS220)。
【0049】
[まとめ]
係る処理を行うことで、制御装置100Aは、経験値の高い作業員の技量に依存する削孔水と圧縮空気の混合比率の算出を効率的に最適化ができる。また、学習用装置200が削孔水と圧縮空気の混合比率の算出を学習することが、経験値の高い作業員の熟練技術を継承でき、作業員の後継者不足、人材不足を解決するために寄与できる。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0051】
D 穿孔機
1 台車
2 車輪
3 アウトトリガ
4 ブーム
5 ガイドセル
6 ドリフター
7 削孔ロッド
8 トルクセンサ
9 モータ
10 レゾルバ
11 穿孔ドリル
12 スイーベルジョイント
13 ビット
14 削孔水収納部
15 圧送ポンプ
16 流量調整装置
17 コンプレッサー
20 地山
21 孔壁
100 制御装置
100A 制御装置
102 通信部
104 取得部
106 地山性状判定部
108 削孔制御部
120 記憶部
122 混合比率テーブル
124 学習済モデル
200 学習用装置
210 取得部
212 前処理部
220 モデル生成部
250 記憶部
252 学習用データセット
254 モデル設定情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9