(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179737
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
F02C 9/34 20060101AFI20241219BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20241219BHJP
F02C 7/228 20060101ALI20241219BHJP
F02C 7/232 20060101ALI20241219BHJP
F23R 3/34 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F02C9/34
F23R3/28 A
F23R3/28 D
F02C7/228
F02C7/232 B
F23R3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098806
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 謙治朗
(72)【発明者】
【氏名】小泉 浩美
(72)【発明者】
【氏名】平田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】松原 慶典
(57)【要約】
【課題】安定運転を行いながら低NOx化図ることができる燃焼器及びガスタービンを提供する。
【解決手段】中央バーナと、外側バーナとを備え、外側バーナは、画定燃焼器軸線の径方向外側に位置する外側軸線を囲うように設けられた内周バーナと、画定内周バーナを取り囲むように設けられた外周バーナと、を含む。画定内周バーナ及び画定外周バーナは、画定燃料ノズルへの燃料供給量が互いに独立して調整可能とされている。下流端面における内周バーナと画定中央バーナとの間に、外周バーナの画定空気孔が形成されていない孔非形成領域が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器軸線方向に延びて下流端面に開口する複数の空気孔を有する空気孔プレートと、
各前記空気孔に対応するように複数が設けられて、それぞれ対応する前記空気孔に上流側から燃料を供給する燃料ノズルと、
を備え、
前記燃焼器軸線を囲うように集合配置された複数の前記空気孔及び複数の前記燃料ノズルによって、中央バーナが構成されており、
前記中央バーナの径方向外側に集合配置された複数の前記空気孔及び複数の燃料ノズルによって、外側バーナが構成されており、
前記外側バーナは、
前記燃焼器軸線の径方向外側に位置する外側軸線を囲うように設けられた内周バーナと、
前記内周バーナを取り囲むように設けられた外周バーナと、
を含み、
前記内周バーナ及び前記外周バーナは、前記燃料ノズルへの燃料供給量が互いに独立して調整可能とされており、
前記下流端面における前記内周バーナと前記中央バーナとの間に、前記外周バーナの前記空気孔が形成されていない孔非形成領域が設けられている燃焼器。
【請求項2】
前記中央バーナを構成する複数の前記空気孔は、前記燃焼器軸線回りに旋回する中央旋回流が形成されるように旋回角を有しており、
前記外周バーナを構成する複数の前記空気孔は、前記中央旋回流とは反対方向に前記外側軸線回りに旋回する外側旋回流が形成されるように旋回角を有しており、
前記下流端面を下流側から見た際に、前記外側軸線から前記外側軸線の径方向に延びて前記孔非形成領域における前記外側旋回流の上流側の端部を画定する上流側境界線が、前記燃焼器軸線及び前記外側軸線を結ぶ基準線よりも上流側の範囲に位置している請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記上流側境界線が、前記基準線から、前記外側軸線から前記中央バーナの外縁を画定する円に引いた前記外側旋回流の上流側の接線までの範囲に位置している請求項2に記載の燃焼器。
【請求項4】
前記下流端面を下流側から見た際に、前記外側軸線から前記外側軸線の径方向に延びて前記孔非形成領域における前記外側旋回流の下流側の端部を画定する下流側境界線が、前記基準線よりも下流側の範囲に位置している請求項2又は3に記載の燃焼器。
【請求項5】
前記下流側境界線が、前記基準線から、前記外側軸線から前記中央バーナの外縁を画定する円に引いた前記外側旋回流の下流側の接線までの範囲に位置している請求項4に記載の燃焼器。
【請求項6】
前記孔非形成領域は、前記基準線から前記外側旋回流の上流側の領域の方が前記基準線から前記外側旋回流の下流側の領域よりも広い請求項4に記載の燃焼器。
【請求項7】
前記下流端面を下流側から見た際に、前記外側軸線から前記外側軸線の径方向に延びて前記孔非形成領域における前記外側旋回流の下流側の端部を画定する下流側境界線が、前記上流側境界線よりも前記外側旋回流の下流側、かつ、前記基準線よりも前記外側旋回流の上流側の範囲に位置している請求項2又は3に記載の燃焼器。
【請求項8】
請求項1に記載の燃焼器と、
空気を圧縮して前記燃焼器に供給する圧縮機と、
前記燃焼器によって生成された燃焼ガスによって駆動されるタービンと、
前記燃焼器の前記燃料ノズルへの燃料供給量を制御する燃料制御装置と、
を備え、
前記燃料制御装置は、定格負荷時において、前記中央バーナの燃空比が前記外周バーナの燃空比より大きくなるように、かつ、前記内周バーナの燃空比が前記外周バーナの燃空比より大きくなるように、燃料供給量を設定するガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ガスタービンに用いられる燃焼器の一例としてのマルチクラスタ燃焼器が開示されている。
マルチクラスタ燃焼器は、複数の空気孔が形成された空気孔プレートと、各空気孔に燃料を供給する燃料ノズルとを備えている。空気孔プレートの中央部に集合配置された空気孔によって中央バーナが形成されている。空気孔プレートの外周部に集合配置された空気孔によって外側バーナが形成されている。外側バーナは中央バーナを取り囲むように周方向に複数が配列されている。外周バーナは、互いに燃料供給系統が独立した内周バーナと外周バーナとによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような燃焼器では、燃焼振動を抑制した安定運転を可能としながら、さらなる低NOx化を実現することが望まれている。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、安定運転を行いながら低NOx化図ることができる燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る燃焼器は、燃焼器軸線方向に延びて下流端面に開口する複数の空気孔を有する空気孔プレートと、各前記空気孔に対応するように複数が設けられて、それぞれ対応する前記空気孔に上流側から燃料を供給する燃料ノズルと、
を備え、前記燃焼器軸線を囲うように集合配置された複数の前記空気孔及び複数の前記燃料ノズルによって、中央バーナが構成されており、前記中央バーナの径方向外側に集合配置された複数の前記空気孔及び複数の燃料ノズルによって、外側バーナが構成されており、前記外側バーナは、前記燃焼器軸線の径方向外側に位置する外側軸線を囲うように設けられた内周バーナと、前記内周バーナを取り囲むように設けられた外周バーナと、を含み、前記内周バーナ及び前記外周バーナは、前記燃料ノズルへの燃料供給量が互いに独立して調整可能とされており、前記下流端面における前記外側軸線と前記中央バーナとの間に、前記外周バーナの前記空気孔が形成されていない孔非形成領域が設けられている。
【0007】
本開示に係るガスタービンは、上記の燃焼器と、空気を圧縮して前記燃焼器に供給する圧縮機と、前記燃焼器によって生成された燃焼ガスによって駆動されるタービンと、前記燃焼器の前記燃料ノズルへの燃料供給量を制御する燃料制御装置と、を備え、前記燃料制御装置は、定格負荷時において、前記中央バーナの燃空比が前記内周バーナの燃空比より大きくなるように、かつ、前記内周バーナの燃空比が前記外周バーナの燃空比より大きくなるように、燃料供給量を設定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る燃焼器及びガスタービンによれば、安定運転を行いながら低NOx化図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るガスタービンの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る燃焼器の概略構成を示す縦断面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る燃焼器を下流側から見た図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置の機能ブロック図である。
【
図6】本開示の第一実施形態に係るガスタービンにおける燃料制御装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図7】本開示の第二実施形態に係る燃焼器を下流側から要部拡大図である。
【
図8】本開示に係るガスタービンの燃料制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について
図1~
図6を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン1は、空気を圧縮する圧縮機2と、燃焼ガスを生成する燃焼器3と、燃焼ガスによって駆動されるタービン4と、燃焼器3への燃料供給量を制御する燃料制御装置90と、を有している。
燃焼器3は、ガスタービン1の回転軸の周囲に周方向に間隔をあけて複数が設けられている。燃焼器3は、圧縮機2が圧縮した空気に燃料を混合させて燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する。
【0011】
<燃焼器>
以下、
図2~
図4を参照して燃焼器3の構成について説明する。
図2に示すように、燃焼器3は、外筒10、エンドカバー20、内筒30、空気孔プレート40、燃料ノズル60、燃料供給系統80を有している。
【0012】
<外筒>
外筒10は燃焼器3の中心となる燃焼器軸線Oとしての燃焼器軸線O(以下、単に軸線Oと称する。)を中心とした円筒状をなしている。外筒10の内側の空間で燃焼ガスが生成される。当該燃焼ガスは、上流側となる軸線O方向一方側(
図2の左側)から下流側となる軸線O方向他方側(
図2の右側)に向かって流通する。
【0013】
<エンドカバー>
エンドカバー20は、外筒10の上流側の端部を閉塞する円盤状をなす部材である。エンドカバー20には、外筒10の上流側の端部が当接されている。
エンドカバー20の内部には、空間としての第一燃料ヘッダ21、第二燃料ヘッダ22及び第三燃料ヘッダ23が形成されている。第一燃料ヘッダ21、第二燃料ヘッダ22及び第三燃料ヘッダ23には外部から燃料が供給される。
【0014】
第一燃料ヘッダ21は、軸線Oに沿って形成された空間である。
第二燃料ヘッダ22は、軸線Oから該軸線Oの径方向外側に離間した外側軸線Pに沿って形成された空間である。外側軸線Pは、
図2に示すように、軸線Oの周方向に離間して複数(本実施形態では6つ)が配置されている。
第三燃料ヘッダ23は、各第二燃料ヘッダ22を外側軸線Pの径方向外側から取り囲むように形成された空間である。第三燃料ヘッダ23は、第二燃料ヘッダ22と同心に形成された環状をなしている。
【0015】
<内筒>
内筒30は、軸線Oを中心とした円筒状の部材であって、外筒10の内側に当該外筒10と同軸に配置されている。内筒30の上流側の端部は、エンドカバー20と軸線O方向に離間している。内筒30の外径は内筒30の外径よりも小さい。内筒30は図示しない支持部によって、外筒10の内側に該当及びエンドカバー20とそれぞれ間隔をあけて設けられている。これにより、内筒30の外周面と外筒10の内周面との間には、環状の流路が形成されている。当該流路には、圧縮機2によって圧縮された空気が軸線O方向他方側から軸線O方向一方側に向かって流通する。
【0016】
<空気孔プレート>
空気孔プレート40は、軸線Oを中心とした円盤状をなしている。空気孔プレート40は、内筒30の内側に当該内筒30と同軸に嵌め込まれるように設けられている。空気孔プレート40は、内筒30の上流側の端部に嵌め込まれている。空気孔プレート40は、上流端面41と下流端面42とを有する。
【0017】
<上流端面>
上流端面41は、空気孔プレート40における上流側の端面であって、軸線Oに直交する平面状をなしている。上流端面41は、内筒30の上流側の端面と同一の軸線O方向位置に配置されている。
【0018】
<下流端面>
下流端面42は、空気孔プレート40における下流側の端面であって、軸線Oに直交する平面状をなしている。下流端面42は、内筒30の上流側の端面よりも下流側に位置している。これにより内筒30の内周面と空気孔プレート40の下流端面42とによって空間が区画形成されている。当該空間は燃焼器3の燃焼空間とされている。
【0019】
<空気孔>
空気孔プレート40には、上流端面41と下流端面42とにわたって貫通する複数の空気孔50が形成されている。空気孔プレート40は、軸線O方向に延びている。空気孔50は、上流端面41と下流端面42とのそれぞれに開口している。各空気孔50の上流端面41の開口から空気が流入し、各空気孔50の下流端面42の開口から空気が流出する構成とされている。
【0020】
詳しくは
図3に示すように、空気孔50は集合配置されることで空気孔群を形成している。空気孔群は、中央空気孔群51と外側空気孔群52とを含む。
【0021】
<中央空気孔群>
中央空気孔群51は、空気孔プレート40の軸線O方向視における中央部に形成されている。即ち、中央空気孔群51は、空気孔プレート40の軸線Oを囲うように当該軸線Oを中心した円形の領域に集合配置された空気孔50によって形成されている。
中央空気孔群51は、軸線Oを中心として環状に配列された複数の空気孔50からなる孔列が、径方向に複数列(本実施形態では3列)が配置されることで構成されている。
【0022】
中央空気孔群51を構成する空気孔50は、上流側から下流側に向かうに従ってそれぞれ軸線Oの周方向に旋回するように延びている。即ち、これら空気孔50は軸線Oに対して旋回角を有した構成とされている。
【0023】
<外側空気孔群>
外側空気孔群52は、空気孔プレート40の軸線O方向視で中央部を取り囲むように軸線Oの周方向に間隔をあけて複数が形成されている。外側空気孔群52は、中央部における軸線Oの径方向外側であって、空気孔プレート40の外周縁の径方向内側に形成されている。外側空気孔群52は、それぞれ外側軸線Pを囲うように当該外側軸線Pを中心とした円形の領域に集合配置された空気孔50によって形成されている。
外側空気孔群52は、内周空気孔群53と外周空気孔群54とから構成されている。
【0024】
内周空気孔群53は、外側軸線Pを囲うように該外側軸線Pを中心として環状に配列された孔列によって形成されている。本実施形態の内周空気孔群53は、一周り一列の環状の孔列によって構成されている。
【0025】
外周空気孔群54は、内周空気孔群53を外側軸線Pの径方向外側から取り囲むように設けられている。外周空気孔群54は、外側軸線Pの周方向に配列された複数の空気孔50からなる孔列を有している。本実施形態の外周空気孔群54は、上記孔列が径方向に複数列(本実施形態では2列)が配置されることで構成されている。
【0026】
外側空気孔群52を構成する空気孔50は、上流側から下流側に向かうに従ってそれぞれ外側軸線Pの周方向に旋回するように延びている。即ち、これら空気孔50は外側軸線Pに対して旋回角を有した構成とされている。
【0027】
ここで、外側空気孔群52を構成する空気孔50の旋回方向は、中央空気孔群51を構成する空気孔50の旋回方向とは反対方向とされている。本実施形態では、下流側から見た際に、中央空気孔群51を構成する空気孔50は下流側に向かうに従って時計回り方向(第一旋回方向)に延びているのに対して、外側空気孔群52を構成する空気孔50は下流側に向かうに従って反時計回り(第二旋回方向)に延びている。
【0028】
<燃料ノズル>
図2に示すように、燃料ノズル60は、各空気孔50に一対一で対応するように複数が設けられている。燃料ノズル60は、各空気孔50内に燃料を噴出する。燃料ノズル60から空気孔50内に供給される燃料と当該空気孔50内を流通する空気とが混合されることで予混合ガスが生成される。
【0029】
各燃料ノズル60は、軸線Oに平行に延びる筒状をなしている。燃料ノズル60の下流側の端部である先端には、燃料を供給する燃料噴射孔が形成されている。燃料ノズル60の先端は、対応する空気孔50に対して上流端面41の開口から挿入されている。複数の燃料ノズル60は空気孔50の配置に応じて、軸線Oに直交する方向に離間して配置されている。
【0030】
燃料ノズル60の先端の反対側の基端は、エンドカバー20に固定されている。燃料ノズル60の基端には燃料流入口が形成されている。各燃料ノズル60の燃料流入口は、第一燃料ヘッダ21、第二燃料ヘッダ22及び第三燃料ヘッダ23のいずれかに連通している。
【0031】
ここで、中央空気孔群51を構成する空気孔50に燃料を供給する燃料ノズル60は、中央ノズル61とされている。中央ノズル61は、中央空気孔群51に対応して軸線Oを取り囲むように集合配置されている。中央ノズル61の基端は、第一燃料ヘッダ21に接続されている。これにより、中央ノズル61には、第一燃料ヘッダ21を介して燃料が供給される。
【0032】
外側空気孔群52を構成する空気孔50に燃料を供給する燃料ノズル60は、外側ノズル62とされている。外側ノズル62は、外側空気孔群52に対応して外側軸線Pを取り囲むように集合配置されている。外側ノズル62は、それぞれ複数の内周ノズル63と外周ノズル64とを含む。
【0033】
内周ノズル63は、外側空気孔群52の内周空気孔群53を構成する空気孔50に燃料を供給する。内周ノズル63は、内周空気孔群53に対応して、外側空気孔群52における外側軸線Pの径方向内側の領域に設けられている。内周ノズル63の基端は、第二燃料ヘッダ22に接続されている。これにより、内周ノズル63には、第二燃料ヘッダ22を介して燃料が供給される。
【0034】
外周ノズル64は、外側空気孔群52の外周空気孔群54を構成する空気孔50に燃料を供給する。外周ノズル64は、外周空気孔群54に対応して、外側空気孔群52における外側軸線Pの径方向外側の領域に設けられている。外周ノズル64の基端は、第三燃料ヘッダ23に接続されている。これにより、外周ノズル64には、第三燃料ヘッダ23を介して燃料が供給される。
【0035】
<燃料供給系統>
図1に示すように、燃料供給系統80は、第一燃料ヘッダ21、第二燃料ヘッダ22及び第三燃料ヘッダ23を介して各燃料ノズル60に燃料を供給する系統である。本実施形態では、第一燃料ヘッダ21、第二燃料ヘッダ22及び第三燃料ヘッダ23のそれぞれに供給される燃料供給量が独立して調整可能とされている。これにより、第一燃料ヘッダ21に接続された中央ノズル61、第二燃料ヘッダ22に接続された内周ノズル63、第三燃料ヘッダ23に接続された外周ノズル64のそれぞれへの燃料供給量を個別に調整することができる。
【0036】
燃料供給系統80は、第一燃料ライン81、第一燃料調整弁81a、第二燃料ライン82、第二燃料調整弁82a、第三燃料ライン83及び第三燃料調整弁83aを有する。
第一燃料ライン81、第二燃料ライン82及び第三燃料ライン83は、それぞれ燃料タンクに接続されている。燃料タンクから供給される燃料としては、例えば天然ガスが用いられる。水素、水素と天然ガスとの混合燃料、その他の燃料を採用してもよい。
【0037】
第一燃料ライン81は、第一燃料ヘッダ21に接続されている。第一燃料ライン81には第一燃料調整弁81aが設けられている。
第二燃料ライン82は、中途で分岐して各第二燃料ヘッダ22に接続されている。第二燃料ライン82には第二燃料調整弁82aが設けられている。
第三燃料ライン83は、中途で分岐して各第三燃料ヘッダ23に接続されている。第三燃料ライン83には第三燃料調整弁83aが設けられている。
【0038】
<各バーナ及びその詳細>
中央空気孔群51と中央空気孔群51を構成する空気孔50に燃料を供給する複数の中央ノズル61とによって、中央バーナ71が構成されている。
外側空気孔群52と外側空気孔群52を構成する空気孔50に燃料を供給する複数の外側ノズル62とによって、中央バーナ71が構成されている。
【0039】
外側バーナ72における外側軸線Pの径方向内側の部分は、外側軸線Pを囲う内周バーナ73とされている。
外側バーナ72における外側軸線Pの径方向外側の部分は、内周バーナ73を外側軸線Pの外周側から覆う外周バーナ74とされている。
【0040】
図4を参照して各バーナの詳細を説明する。
中央バーナ71の中央空気孔群51を構成する空気孔50が第一旋回方向への旋回角を有していることにより、中央空気孔群51からの予混合ガスは第一旋回方向に旋回しながら軸線Oの径方向外側に噴出される。当該予混合ガスが着火することによって、軸線O回りの中央旋回流F1を有する火炎が形成される。
外側バーナ72の外側空気孔群52を構成する空気孔50が第一旋回方向とは反対回りの第二旋回方向への旋回角を有していることにより、中央空気孔群51からの予混合ガスは第一旋回方向とは反対回りの第二旋回方向に旋回して外側軸線Pの径方向外側に噴出される。当該予混合ガスが着火することによっては、外側軸線P回り、かつ、中央旋回流F1とは反対回りの外側旋回流F2を有する火炎が形成される。
【0041】
ここで、下流端面42を下流側から見た際、中央バーナ71を構成する中央空気孔群51と内周バーナ73を構成する内周空気孔群53との間には、外周バーナ74を構成する外周空気孔群54の空気孔50が形成されていない領域が存在する。当該領域は、孔非形成領域Rとされている。孔非形成領域Rには空気孔50が開口しておらず、中央空気孔群51と内周空気孔群53との間は空気孔50のない下流端面42の平面のみが存在している。
【0042】
外周空気孔群54は、外側軸線Pの周方向の一部にわたってのみ設けられている。即ち、中央空気孔群51と内周空気孔群53との間の孔非形成領域Rをはずれた部分のみに外周空気孔群54が存在している。言い換えれば、外周空気孔群54は、孔非形成領域Rによって周方向の一部が切り欠かれた残余の領域のみに存在している。
【0043】
本実施形態では、外周空気孔群54の最内周で周方向に延びる孔列は、孔非形成領域Rのみを外した周方向の領域に存在している。また、外周空気孔群54の最外周で周方向に延びる孔列は、最内周の孔列の周方向範囲よりも狭い周方向範囲に設けられている。最外周の孔列も最内周の孔列同様の周方向範囲に設けられていてもよい。
【0044】
ここで、
図4に示すように、下流端面42を下流側から見た際に、軸線Oと外側軸線Pとを結ぶ直線を基準線Lとする。基準線Lは、軸線O及び外側軸線Pの径方向に延びる直線である。孔非形成領域Rは、外側軸線Pを中心として、基準線Lから外側旋回流F2の上流側に向かっての所定範囲まで広がっている。また、本実施形態では、孔非形成領域Rは、外側軸線Pを中心として、基準線Lから外側旋回流F2の下流側に向かっての所定範囲まで広がっている。
【0045】
ここで、
図4に示すように、下流端面42を下流側から見た際に、外側軸線Pから該外側軸線Pの径方向に延びる直線のうち、孔非形成領域Rにおける外側旋回流F2の上流側の端部を画定する直線を上流側境界線Uとする。また、下流端面42を下流側から見た際に、外側軸線Pから該外側軸線Pの径方向に延びる直線のうち、孔非形成領域Rにおける外側旋回流F2の下流側の端部を画定する直線を上流側境界線Uとする。孔非形成領域Rは、外側軸線Pの周りの領域のうち、上流側境界線Uと下流側境界線Dとにわたって存在している。
【0046】
本実施形態の上流側境界線Uは、外側軸線Pを中心とした周方向領域のうち基準線Lから上流接線T1までの範囲に位置している。より詳細には、上流側境界線Uは、基準線Lよりも外側旋回流F2の上流側の範囲であって、上流接線T1までの範囲に位置している。
ここで上流接線T1とは、外側軸線Pから中央バーナ71の外縁を画定する円に引いた2本の接線のうち、軸線Oの径方向内側から見て外側旋回流F2の上流側に位置する接線である。上流接線T1には、外周バーナ74の外周空気孔群54における周方向の一端部の空気孔50が外側旋回流F2の上流側から接している。
また、中央バーナ71の外縁を画定する円とは、中央バーナ71における中央空気孔群51の最外周の一列の空気孔50がそれぞれ内接する軸線を中心とする仮想円である。なお、当該円には中央空気孔群51の最外周の一列の空気孔50の全てが内接している必要はなく、その一部の空気孔50のみが内接していてもよい。本実施形態では、上流側境界線Uは上流接線T1に一致している。
【0047】
本実施形態の下流側境界線Dは、外側軸線Pを中心とした周方向領域のうち基準線Lから下流接線T2までの範囲に位置している。より詳細には、下流側境界線Dは、基準線Lよりも外側旋回流F2の下流側の範囲であって、下流接線T2までの範囲に位置している。
ここで下流接線T2とは、外側軸線Pから中央バーナ71の外縁を画定する円に引いた2本の接線のうち、軸線Oの径方向内側から見て外側旋回流F2の下流側に位置する接線である。下流接線T2には、外周バーナ74の外周空気孔群54における周方向の他端部の空気孔50が外側旋回流F2の下流側から接している。
本実施形態では、下流側境界線Dは基準線Lと下流接線T2との間の領域における下流接線T2に寄った位置に位置している。
【0048】
したがって、本実施形態の孔非形成領域Rは、中央バーナ71と内周バーナ73との間の領域で、基準線Lを基準として外側旋回流F2の旋回方向の上流側に偏って配置されている。即ち、孔非形成領域Rは、基準線Lよりも外側旋回流F2の上流側の領域の方が基準線Lよりも外側旋回流F2の下流側の領域よりも広い。
【0049】
上流側境界線Uと下流側境界線Dとのなす角度は、例えば30°~90°、好ましくは45°~75°の範囲、より好ましくは、55°~65°の範囲に設定されている。
【0050】
<燃料制御装置>
次に燃料制御装置90について
図5及び
図6を参照して説明する。燃料制御装置90は、各バーナへの燃料供給量を制御する。燃料制御装置90は、
図5に示すように、出力要求取得部91、燃料配分設定部92、及び調整弁制御部93を備えている。
【0051】
出力要求取得部91は、ガスタービン1の出力要求信号を取得する。燃料配分設定部92は、出力要求取得部91が取得した出力要求信号に応じて第一燃料調整弁81a、第二燃料調整弁82a及び第三燃料調整弁83aの開度を設定する。調整弁制御部93は、燃料配分設定部92が設定した開度となるように第一燃料調整弁81a、第二燃料調整弁82a及び第三燃料調整弁83aを制御する。
【0052】
次に、
図5に示すフローチャートを参照して、燃料制御装置90の処理の手順を説明する。まず、出力要求取得部91がガスタービン1の出力要求信号を取得する(ステップS1)。
次いで、燃料配分設定部92は、出力要求信号と実際のガスタービン1の出力との偏差に応じて、各燃料ノズル60の燃空比(燃料質量を空気質量で割った無次元数)が適切な値となるように第一燃料調整弁81a、第二燃料調整弁82a及び第三燃料調整弁83aの開度を設定する(ステップS2)。ここで、例えば、ガスタービン1の出力要求が定格運転(全負荷運転)の場合、各燃料ノズル60の燃空比は、中央ノズル61が内周ノズル63よりも大きくなるように、かつ、内周ノズル63が外周ノズル64よりも大きくなるように設定される。燃料配分設定部92は、当該燃空比となるように、第一燃料調整弁81a、第二燃料調整弁82a及び第三燃料調整弁83aの開度を設定する。
【0053】
そして、調整弁制御部93は、設定された開度に基づいて第一燃料調整弁81a、第二燃料調整弁82a及び第三燃料調整弁83aを制御する(ステップS3)。これによって、第一燃料ヘッダ21、第二燃料ヘッダ22及び第三燃料ヘッダ23にガスタービン1出力要求に応じた燃空比となるように燃料が供給される。これによって、出力要求に応じたガスタービン1の運転が可能となる。
【0054】
<作用効果>
上記ガスタービン1の運転時の燃焼器3では、定格運転時に最も燃空比の高い中央バーナ71が、外周バーナ74を保炎する役割を有する。また、各外周バーナ74では、相対的に燃空比の高い内周バーナ73が相対的に燃空比の低い外周バーナ74の保炎を行う。
本実施形態では、
図4に示すように、中央バーナ71と内周バーナ73との間には外周バーナ74の外周空気孔群54を構成する空気孔50が存在しない孔非形成領域Rが設けられている。そのため、当該孔非形成領域Rを介して、中央バーナ71によって燃焼空間に生成される火炎を内周バーナ73に導くことができる。
【0055】
ここで仮に外側軸線Pの周方向全域に外周バーナ74の空気孔50が存在する場合、内周バーナ73の周囲全域が、外側旋回流F2を有する外周バーナ74からの火炎によって覆われることになる。そのため、当該外周バーナ74の火炎がバリアとなることで、中央バーナ71の火炎を内周バーナ73に到達させることが困難となる。
これに対して本実施形態では、中央バーナ71と内周バーナ73との間の領域に外周バーナ74の空気孔50が存在しないため、中央バーナ71と内周バーナ73との間には外周バーナ74の火炎がない領域が形成される。そのため、中央バーナ71の火炎は、外周バーナ74の火炎に阻害されることなく、内周バーナ73に到達することができる。
【0056】
これにより、中央バーナ71から内周バーナ73への火移り性を向上させることができる。その結果、中央バーナ71の火炎が内周バーナ73の火炎の燃焼を補助することができ、内周バーナ73の保炎性を向上させることができる。さらに、内周バーナ73の保炎性が向上することで、当該内周バーナ73によって保炎される外周バーナ74の燃焼性も向上する。したがって、燃焼器3全体としての燃焼性が向上し、燃焼振動を抑制した安定運転を行うことが可能となる。
【0057】
ここで、中央バーナ71から内周バーナ73への火移り性が向上したことにより、内周バーナ73の燃料供給量を従前より減少させて燃空比を小さくしたとしても、内周バーナ73を安定して保炎させることができる。そのため、内周バーナ73から生成される火炎の温度を低下させることができ、その結果、NOxの発生を抑制することができる。
【0058】
また、孔非形成領域Rを設けて外周バーナ74を構成する空気孔群の空気孔50の数を少なくした分だけ、中央バーナ71の中央空気孔群51の空気流量、内周バーナ73の内周空気孔群53の空気流量が増加する。そのため、火炎温度が高い中央バーナ71、内周バーナ73の火炎の温度を低下させることができる。その結果、燃焼器3全体として発生するNOxの総量を減少させることが可能となる。
【0059】
本実施形態では孔非形成領域Rが、基準線Lよりも外側旋回流F2の上流側に広がっている。そのため、孔非形成領域Rは、中央バーナ71の中央旋回流F1の接線方向に開けた構成となる。よって、中央バーナ71の火炎を中央旋回流F1の流れに従って内周バーナ73に円滑に導くことができ、内周バーナ73の保炎性を向上させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、孔非形成領域Rの上流側境界線Uは、中央バーナ71の外縁を構成する円の接線に一致する。これにより、中央旋回流F1の流れに従って導かれる火炎を内周バーナ73に最大限に取り込むことができる。よって、内周バーナ73の保炎性をより一層向上させることができる。
【0061】
また、孔非形成領域Rは、基準線Lよりも外側旋回流F2の下流側までも広がっているため、中央バーナ71の火炎の内周バーナ73への入り口を上流側から下流側にわたって大きく取ることができる。これにより、中央バーナ71から内周バーナ73への火炎の移動をより確実に行うことができる。
【0062】
さらに、孔非形成領域Rは、基準線Lよりも外側旋回流F2の上流側の領域の方が基準線Lよりも外側旋回流F2の下流側の領域よりも広い。そのため、中央バーナ71から内周バーナ73への火炎の火移り性を向上させながら、外側バーナ72の外周バーナ74の形成領域を大きく確保するができる。その結果、燃焼器3の出力を確保することができる。
【0063】
<第二実施形態>
次に第二実施形態に係る燃焼器3について
図7を参照して説明する。第二実施形態では第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第二実施形態の燃焼器3は、孔非形成領域Rの形成範囲が第一実施形態とは相違する。即ち、
図7に示すように、第二実施形態の孔非形成領域Rの下流側境界線Dは、上流側境界線Uよりも外側旋回流F2の下流側かつ、基準線Lよりも上流側に位置している。
上流側境界線Uと下流側境界線Dとがなす角度は、例えば15°から45°、好ましくは20°~40°、より好ましくは25°から35°の範囲に設定されている。
【0064】
これによって、孔非形成領域Rの周方向の範囲は第一実施形態よりも小さなものとなる。一方で、外周バーナ74を構成する外周空気孔群54の形成範囲は第一実施形態よりも広範囲にわたっており、空気孔50の総数も増加している。外周空気孔群54の空気孔50の増加に応じて、当該空気孔50の数に対応するように、外周ノズル64の本数も第一実施形態よりも増加している。
【0065】
特に本実施形態では、外周バーナ74を構成する外周空気孔群54のうち、最内周の一列目の孔群の数が第一実施形態よりも増加している。最内周の第一列目の孔群の空気孔50のうち、孔非形成領域Rの下流側境界線Dに接する空気孔50は、基準線L上に重なっており、当該空気孔50の一部は基準線Lよりも外側旋回流F2の上流側に入り込んでいる。
【0066】
本実施形態によれば、第一実施形態と比較して、外周バーナ74の外周空気孔群54を構成する空気孔50及び当該空気孔50に対応する外周ノズル64の数が増大している。したがって、第一実施形態と比較して、燃焼器3全体としての出力を増大させることができる。
【0067】
一方で、中央バーナ71から内周バーナ73への火炎の火移り性の最も高い範囲には、孔非形成領域Rが形成されている。即ち、中央バーナ71の中央旋回流F1にしたがって火炎が流入し易い基準線Lにおける外側旋回流F2の上流側の領域のみに孔非形成領域Rが偏って配置されている。そのため、上記火移り性を担保しながら、出力増大を図ることができる。
【0068】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0069】
孔非形成領域Rの上流側境界線Uは、上流接線T1に一致するのみならず、中央バーナ71と内周バーナ73との間で上流接線T1と基準線Lとの間にあればよい。また、上流側境界線Uは、上流接線T1よりもさらに上流側にあってもよい。
また、上流側境界線Uは基準線Lよりも外側旋回流F2の下流側にあってもよい。少なくとも中央バーナ71と内周バーナ73との間の領域の一部に周方向及び径方向にわたって空気孔50が存在しない領域があればよい。当該領域の周方向の範囲は少なくとも空気孔50一つ分の寸法があることが好ましい。
【0070】
孔非形成領域Rの下流側境界線Dは、例えば、下流接線T2と一致していてもよい。即ち、孔非形成領域Rは、上流接線T1と下流接線T2との間の任意の範囲に広がっていればよい。また、下流側境界線Dは、下流接線T2よりもさらに下流側にあってもよい。
【0071】
例えば、内周バーナ73を構成する内周空気孔群53は、外側軸線P周りの一列のみではなく、複数列が形成された構成であってもよい。
外周バーナ74を構成する外周空気孔群54は、外側軸線P周りの二列のみならず、一列であってもよいし三列以上であってもよい。
【0072】
定格運転時、部分負荷運転時において、中央ノズル61の燃空比の方が内周ノズル63の燃空比よりも高いことには限定されず、これら燃空比が同一であってもよいし、内周ノズル63の燃空比の方が中央ノズル61の燃空比より高く設定してもよい。
【0073】
さらに、定格運転時、部分負荷運転時において、内周ノズル63の燃空比の方が外周ノズル64の燃空比よりも高いことには限定されず、これら燃空比が同一であってもよいし、外周ノズル64の燃空比の方が内周ノズル63の燃空比より高く設定してもよい。これらの場合であっても、外周ノズル64の内側に位置する内周ノズル63が外周ノズル64の保炎の役割を担うことに変わりはない。また、内周ノズル63への火移りを改善することで、内周ノズル63への燃料供給量を減少させ、燃焼温度の低下を図ることができる。
【0074】
上述した燃料制御装置90による処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ200が読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ200が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ200の具体例を以下に示す。
【0075】
図8に示すように、コンピュータ200は、CPU100と、メインメモリ101と、ストレージ102と、インターフェース103と、を備える。
例えば、上述の燃料制御装置90はコンピュータ200に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ102に記憶されている。CPU100は、プログラムをストレージ102から読み出してメインメモリ101に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU100は、プログラムに従って、記憶領域をメインメモリ101に確保する。
【0076】
ストレージ102の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ102は、コンピュータ200のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース103または通信回線を介してコンピュータ200に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ200に配信される場合、配信を受けたコンピュータ200が当該プログラムをメインメモリ101に展開し、上記処理を実行してもよい。なお、ストレージ102は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0077】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ200にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0078】
なお、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びこれらに類する処理装置を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0079】
<付記>
各実施形態に記載の燃焼器3及びガスタービン1は、例えば以下のように把握される。
【0080】
(1)第1の態様に係る燃焼器3は、燃焼器軸線O方向に延びて下流端面42に開口する複数の空気孔50を有する空気孔プレート40と、各前記空気孔50に対応するように複数が設けられて、それぞれ対応する前記空気孔50に上流側から燃料を供給する燃料ノズル60と、を備え、前記燃焼器軸線Oを囲うように集合配置された複数の前記空気孔50及び複数の前記燃料ノズル60によって、中央バーナ71が構成されており、前記中央バーナ71の径方向外側に集合配置された複数の前記空気孔50及び複数の燃料ノズル60によって、外側バーナ72が構成されており、前記外側バーナ72は、前記燃焼器軸線Oの径方向外側に位置する外側軸線Pを囲うように設けられた内周バーナ73と、前記内周バーナ73を取り囲むように設けられた外周バーナ74と、を含み、前記内周バーナ73及び前記外周バーナ74は、前記燃料ノズル60への燃料供給量が互いに独立して調整可能とされており、前記下流端面42における前記内周バーナ73と前記中央バーナ71との間に、前記外周バーナ74の前記空気孔50が形成されていない孔非形成領域Rが設けられている。
【0081】
上記構成によれば、孔非形成領域Rを介して、中央バーナ71の火炎を外側バーナ72の内周バーナ73に導くことができる。この中央バーナ71の火炎が内周バーナ73に移ることによって、内周バーナ73の保炎性を向上させることができる。その結果、内周バーナ73の周囲の外周バーナ74の保炎性の向上を図ることができる。
さらに、内周バーナ73の保炎性が担保されることで、当該内周バーナ73に供給される燃料流量を抑制することができる。これによって、内周バーナ73の火炎の温度を抑えることができる。
【0082】
(2)第2の態様に係る燃焼器3は、前記中央バーナ71を構成する複数の前記空気孔50は、前記燃焼器軸線O回りに旋回する中央旋回流F1が形成されるように旋回角を有しており、前記外周バーナ74を構成する複数の前記空気孔50は、前記中央旋回流F1とは反対方向に前記外側軸線P回りに旋回する外側旋回流F2が形成されるように旋回角を有しており、前記下流端面42を下流側から見た際に、前記外側軸線Pから前記外側軸線Pの径方向に延びて前記孔非形成領域Rにおける前記外側旋回流F2の上流側の端部を画定する上流側境界線Uが、前記燃焼器軸線O及び前記外側軸線Pを結ぶ基準線Lよりも上流側の範囲に位置している(1)に記載の燃焼器3である。
【0083】
中央バーナ71の火炎は、中央旋回流F1の流れに従って、中央バーナ71の外縁の接線方向に送り出される。孔非形成領域Rを基準線よりも外側バーナ72の外側旋回流F2の上流側に広がるよう配置することで中央バーナ71の火炎をより円滑に内周バーナ73へと導くことができる。
【0084】
(3)第3の態様に係る燃焼器3は、前記上流側境界線が、前記基準線から、前記外側軸線から前記中央バーナの外縁を画定する円に引いた前記外側旋回流の上流側の接線までの範囲に位置している(2)に記載の燃焼器である。
【0085】
これにより、空気孔の数を確保しながら保炎性を担保することができる。
【0086】
(4)第4の態様に係る燃焼器3は、前記下流端面42を下流側から見た際に、前記外側軸線Pから前記外側軸線Pの径方向に延びて前記孔非形成領域Rにおける前記外側旋回流F2の下流側の端部を画定する下流側境界線Dが、前記基準線Lよりも下流側の範囲に位置している(3)に記載の燃焼器3である。
【0087】
外周バーナ74の空気孔50が存在しない孔非形成領域Rを、外側バーナ72の外側旋回流F2の下流側まで広く拡大することで、中央バーナ71から内周バーナ73への火炎の移動をより確実に行うことができる。
【0088】
(5)第5の態様に係る燃焼器は、前記下流側境界線が、前記基準線から、前記外側軸線から前記中央バーナの外縁を画定する円に引いた前記外側旋回流の下流側の接線までの範囲に位置している(2)から(4)のいずれかに記載の燃焼器3である。
【0089】
これにより、空気孔の数を確保しながら保炎性を担保することができる。
【0090】
(6)第6の態様に係る燃焼器は、前記孔非形成領域Rは、前記基準線Lよりも前記外側旋回流F2の上流側の領域の方が前記基準線Lよりも外側旋回流F2の下流側の領域よりも広い(1)から(5)のいずれかの燃焼器3である。
【0091】
これにより、中央バーナ71から内周バーナ73への火炎の火移り性を向上させながら、外側バーナ72の外周バーナ74の形成領域を大きく確保することで燃焼器3の出力を確保することができる。
【0092】
(7)第7の態様に係る燃焼器は、前記下流端面42を下流側から見た際に、前記外側軸線Pから前記外側軸線Pの径方向に延びて前記孔非形成領域Rにおける前記外側旋回流F2の下流側の端部を画定する下流側境界線Dが、前記上流側境界線Uよりも前記外側旋回流F2の下流側、かつ、前記基準線Lよりも前記外側旋回流F2の上流側の範囲に位置している(2)又は(3)に記載の燃焼器3である。
【0093】
これにより、中央バーナ71から内周バーナ73への火炎の火移り性を向上させながら、外側バーナ72の外周バーナ74の形成領域をさらに大きく確保することで燃焼器3の出力をより大きく確保することができる。
【0094】
(8)第8の態様に係るガスタービン1は、(1)から(8)のいずれかに記載の燃焼器3と、空気を圧縮して前記燃焼器3に供給する圧縮機2と、前記燃焼器3によって生成された燃焼ガスによって駆動されるタービン4と、前記燃焼器3の前記燃料ノズル60への燃料供給量を制御する燃料制御装置90と、を備え、前記燃料制御装置90は、定格負荷時において、前記中央バーナ71の燃空比が前記外周バーナ74の燃空比より大きくなるように、かつ、前記内周バーナ73の燃空比が前記外周バーナ74の燃空比より大きくなるように、燃料供給量を設定するガスタービン1である。
【0095】
これにより、中央バーナ71による内周バーナ73の保炎、及び、内周バーナ73による外周バーナ74の保炎をより確実に行うことができる。
また、内周バーナ73の燃空比を不用意に増大しなくとも中央バーナ71から火炎が移ることで内周バーナ73の保炎性を十分に得ることができる。そのため、当該内周バーナ73によって外周バーナ74の保炎を確実に行うことができ、低NOx化を実現しながら安定した運転を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
10 外筒
20 エンドカバー
21 第一燃料ヘッダ
22 第二燃料ヘッダ
23 第三燃料ヘッダ
30 内筒
40 空気孔プレート
41 上流端面
42 下流端面
50 空気孔
51 中央空気孔群
52 外側空気孔群
53 内周空気孔群
54 外周空気孔群
60 燃料ノズル
61 中央ノズル
62 外側ノズル
63 内周ノズル
64 外周ノズル
71 中央バーナ
72 外側バーナ
73 内周バーナ
74 外周バーナ
80 燃料供給系統
81 第一燃料ライン
81a 第一燃料調整弁
82 第二燃料ライン
82a 第二燃料調整弁
83 第三燃料ライン
83a 第三燃料調整弁
90 燃料制御装置
91 出力要求取得部
92 燃料配分設定部
93 調整弁制御部
100 CPU
101 メインメモリ
102 ストレージ
103 インターフェース
200 コンピュータ
O 燃焼器軸線
P 外側軸線
L 基準線
U 上流側境界線
D 下流側境界線
R 孔非形成領域
F1 中央旋回流
F2 外側旋回流
T1 上流接線
T2 下流接線