(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179746
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】構造物の補強方法および補強構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
E04G23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098859
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】520352193
【氏名又は名称】ライトウエイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391016554
【氏名又は名称】株式会社キグチテクニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 正和
(72)【発明者】
【氏名】宮本 伸樹
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA04
2E176BB04
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】溶接鋼やコンクリートなどからなる構造物をしっかりと補強することができ、現場での施工が容易な補強方法および補強構造を提供する。
【解決手段】構造物の補強方法は、構造物の外側に織布を巻き付け方向に張力を掛けながら巻き付ける第1工程と、前記構造物の外側に巻き付けられた前記織布の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する第2工程とを有し、前記織布の経糸および緯糸がロービング又はヤーンから構成され、前記織布の空間率が5%以上55%以下の範囲である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の外側に織布を巻き付け方向に張力を掛けながら巻き付ける第1工程と、
前記構造物の外側に巻き付けられた前記織布の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する第2工程と、
を有し、
前記織布の経糸および緯糸がロービング又はヤーンから構成され、前記織布の空間率が5%以上55%以下の範囲である
ことを特徴とする構造物の補強方法。
【請求項2】
第1工程において前記織布に100N以上の張力かけて前記構造物の外側に前記織布を巻き付ける請求項1記載の構造物の補強方法。
【請求項3】
第1工程の前に、前記構造物の表面に防錆剤を塗布する前処理工程をさらに有する請求項1又は2に記載の構造物の補強方法。
【請求項4】
第1工程と第2工程とを一組として複数組繰り返し実行される請求項1又は2に記載の構造物の補強方法。
【請求項5】
前記ロービング又はヤーンを構成する繊維が、カーボン繊維、バサルト繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の構造物の補強方法。
【請求項6】
構造物の補強構造であって、
構造物の外側に、経糸および緯糸がロービング又はヤーンから構成され、空間率が5%以上55%以下の範囲である織布を有する第1層と、ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を有する第2層とが積層されていることを特徴とする構造物の補強構造。
【請求項7】
前記構造物の表面と前記第1層との間に防錆剤層を有する請求項6記載の構造物の補強構造。
【請求項8】
第1層と第2層とを一組として複数組が積層されている請求項6又は7に記載の構造物の補強構造。
【請求項9】
前記ロービング又はヤーンを構成する繊維が、カーボン繊維、バサルト繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項6又は7に記載の構造物の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物の補強方法および補強構造に関し、より詳細には、コンクリートや各種鋼材などからなる風車タワーのタワー部や高架橋の橋脚部などの構造物の補強方法および補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風車タワーのタワー部や高架橋の橋脚部など柱状構造物などが溶接部分の鋼材や鉄筋の錆およびコンクリートの中性化などによって老朽化が進み、風車タワーでは、想定された耐用年数を待たずに倒壊する事案が発生し、今後も同様の事案の発生する危険性がある。
【0003】
風車タワーのタワー部については、その補強方法が現在種々検討がなされている。またコンクリート躯体を有する構造物の補強方法については種々提案されている。例えば特許文献1では、高架橋の橋脚部などのコンクリート躯体の外周面に、強化繊維を含んで形成された繊維シートを巻き付け、巻き付けられた繊維シートの外面側を硬化型樹脂で被覆するコンクリート構造物の補強方法が提案されている。また特許文献2では、コンクリートブロックからなる構造物に高強度繊維製メッシュ布帛を取り付けた後、高強度繊維製メッシュ布帛をポリウレア樹脂で被覆する構造物の補強方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-34434号公報
【特許文献2】実用新案登録第3232092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案の補強方法では、繊維シートに樹脂が含浸しておらず、また繊維シートはコンクリート躯体の外周面に接着していない状態で巻き付けられている。このため繊維シートと樹脂との一体強化が十分には図れないおそれがある。また特許文献2に提案の補強方法では、メッシュ布帛の空間率は70%以上が好ましいとされている。メッシュ布帛の空間率が大きいとポリウレア樹脂のメッシュ布帛を挟んだ構造物との接着性は向上すると考えられるもののメッシュ布帛の強度が低下し構造物の十分な補強が図れないおそれがある。
【0006】
そこで本発明の目的は、風車タワーのタワー部や高架橋の橋脚部など構造物を一層しっかりと補強することができ、しかも現場での施工が容易な補強方法および補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明に係る補強方法は、構造物の外側に織布を巻き付け方向に張力を掛けながら巻き付ける第1工程と、前記構造物の外側に巻き付けられた前記織布の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する第2工程とを有し、前記織布の経糸および緯糸がロービング又はヤーンから構成され、前記織布の空間率が5%以上55%以下の範囲であることを特徴とする。
【0008】
なお、本明細書において、「ロービング」とは、繊維が集束されたストランドに撚りをかけないで作られるものをいい、「ヤーン」とは、ストランドに撚りをかけて作られるものをいうものとする。また「空間率(%)」は、二軸織布の場合は
図5に示す式から算出される。また、三軸織布、四軸織布等の多軸織布の空間率は画像解析装置を用いて求められる。簡易的には、電子写真(XEROX)式複写機で白黒複写をとり、複写画像を用いて(黒色部分の面積/有効部分全体の面積)×100で求めることができる。
【0009】
前記構成の補強方法において、第1工程において前記織布に100N以上の張力かけて前記構造物の外側に前記織布を巻き付ける構成としてもよい。
【0010】
また前記構成の補強方法において、第1工程の前に、前記構造物の表面に防錆剤を塗布する前処理工程をさらに有する構成としてもよい。
【0011】
また前記構成の補強方法において、第1工程と第2工程とを一組として複数組繰り返し実行される構成であってもよい。
【0012】
また前記構成の補強方法において、前記ロービング又はヤーンを構成する繊維が、カーボン繊維、バサルト繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
【0013】
また本発明によれば、構造物の外側に、経糸および緯糸がロービング又はヤーンから構成され、空間率が5%以上55%以下の範囲である織布を有する第1層と、ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を有する第2層とが積層されていることを特徴とする構造物の補強構造が提供される。
【0014】
前記構成の補強構造において、前記構造物の表面と前記第1層との間に防錆剤層を有していてもよい。
【0015】
前記構成の補強構造において、第1層と第2層とを一組として複数組が積層されているのが好ましい。
【0016】
また前記構成の補強構造において、前記ロービング又はヤーンを構成する繊維が、カーボン繊維、バサルト繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る補強方法および補強構造によれば、現場での施工が容易で、構造物をしっかりと補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る構造物の補強方法の一例を示す工程図である。
【
図3】織布を風車タワーの外周に巻き付ける装置の一例を示す概説図である。
【
図4】スプレー塗布装置の一例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る構造物の補強方法および補強構造について詳述するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0020】
図1に、本発明に係る構造物の補強方法の一例を示す工程図を示し、
図2に、当該補強方法の概説図を示す。
【0021】
(素地調整)
まず、構造物STの補強部分の表面の錆や油分、埃、塗膜が除去される(ケレン処理)。ケレン処理は3種ケレン以上(1種ケレン、2種ケレン)であるのが好ましい。また、構造物STの表面に溶接ビード凸部がある場合はそれを除去して表面を平滑化するのが好ましい。
【0022】
(防錆剤の塗布)
図2(a)に示すように、各種鋼材やコンクリートなどからなる構造物STの表面に、刷毛やローラーなどの塗布部材で防錆剤が塗布されて防錆剤層3が形成される。このような防錆剤層3が設けられることで、構造物STの防錆が向上すると共に強度が向上する。特に、ナノ粒子を含む防錆剤を使用すると、構造物STの表層、特に溶接ビード部に微小なクラックが有る場合にナノ粒子防錆剤がクラック内部に浸透し強固の密着硬化することで構造物の強度が向上する。
【0023】
本発明で使用する防錆剤としては従来公知物が使用可能であるが、構造物に生じたクラック等の隙間にナノ粒子が浸透して所望の強度が発現されることから、株式会社染めQテクノロジィ社製の「パワー防錆NKRN-66」が好適に使用できる。
【0024】
防錆剤層3の厚みに特に限定はないが、通常、乾燥後膜厚として0.3mm~1.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.4mm~0.7mmの範囲である。
【0025】
(織布の巻き付け(第1工程))
次に、
図2(b)に示すように、防錆剤層3の表面に織布4が巻き付けられる。補強部位に溶接部が有る場合は、巻付ける織布全体の中心を溶接部に合わるように巻付ける。これが第1層1となる。第1層1の層厚は織布4の厚みと略同一となる。なお、織布4に塗布された樹脂が、織布4の経糸41および緯糸42(
図5に図示)に浸透するとともに、織布4の開口部43(
図5に図示)を透過して防錆剤層3表面に密着して一体化するためには、織布4の厚みは0.1mm以上1.0mm以下の範囲が好ましい。より好ましい織布4の厚みは0.2mm以上0.4mm以下の範囲である。織布4の厚みは、織布4を構成するロービング又はヤーンの太さ及び織組織などで調整可能である。
【0026】
織布4の巻き付けは、巻き付け方向に100N以上の張力をかけて行うのがよい。ただし、織布4を構成するロービング又はヤーンの材質によっては大きな張力をかけると網目構造が変形するおそれがあるので、上限値としては200N程度が好ましい。
【0027】
本発明で使用する織布4の経糸41および緯糸42(
図5に図示)はロービング又はヤーンから構成され、織布4の空間率は5%以上55%以下であるのがよい。織布4の空間率が5%より小さいと、織布4の強度は得られるものの織布4の開口部43(
図5に図示)が小さくポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂の織布4への進入が不十分で織布4と防錆剤層3との一体化が図れず所期の補強効果が得られないおそれがある。一方、織布4の空間率が55%より大きいと、ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂が織布4へ進入して織布4と防錆剤層3などとの一体化は図れるものの、織布4の強度が十分ではなく所期の補強効果が得られないおそれがある。織布4の空間率の好ましい下限値は6%であり、より好ましい上限値は53%である。
【0028】
また、経糸41間および緯糸42間の隙間は0.4mm以上であるのが好ましく、より好ましくは0.6mm以上である。一方、経糸41間および緯糸42間の隙間の好ましい上限値は1.0mmである。そしてまた、織布4の開口部43の面積は0.16mm2以上であるのが好ましい。
【0029】
ロービング又はヤーンを構成する繊維に特に限定はないが、単糸または撚糸であるのがよい。繊維が無撚糸であると前記樹脂を吹き付け塗布する際に繊維の乱れや繊維の広がりが生じやすくなり織布強度の低下や織布開口の変化が生じやすくなるからである。繊維の太さとしては0.1mm以下であるのが好ましい。
【0030】
繊維は、カーボン繊維、バサルト繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましく、これらの中でもカーボン繊維、バサルト繊維がより好ましく使用される。織布の組織としては特に限定はないが、平織、綾織、杉綾織などが好ましい。
【0031】
図3に、織布4を構造物(風車タワー)STの外周に巻き付ける装置の一例を示す概説図を示す。
図3に示す巻き付け装置7は、風車タワーSTの補修に好適に使用される装置である。柱状の風車タワーSTの外周を囲むように所定値まで組み立てられた足場51の所定高さ位置に環状の作業台52が配置されている。作業台52上には巻き付け装置7が設けられている。
【0032】
巻き付け装置7は、移動ガイド部材71と、第1クランプ72と、第2クランプ73と、スプレー塗布装置74とを有する。移動ガイド部材71は、上下方向に所定距離隔てて対向するように配置された環状の上レール部材711と下レール部材712とを有する。第1クランプ72と第2クランプ73、スプレー塗布装置74とは、上レール部材711と下レール部材712との間に、上レール部材711と下レール部材712とに案内されて風車タワーSTの周方向に移動可能に設けられている。
【0033】
第1クランプ72および第2クランプ73の一部は、風車タワーSTの半径方向に移動可能で、風車タワーSTの外周に接触および離間可能とされる。そして、第1クランプ72および第2クランプ73の一部は、磁石などの従来公知の固定手段によって風車タワーSTの外周に固着可能である。
【0034】
スプレー塗布装置74は、第2クランプ73よりも移動方向下流側に配置される。スプレー塗布装置74は、風車タワーSTの外周に巻き付けられた織布4に対してポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂の原料をスプレー塗布する。スプレー塗布装置74は、基本構成は、後述する
図4すスプレー塗布装置SPと同様であって、イソシアネート化合物と、ポリオール化合物またはポリアミン化合物とを混合して風車タワーSTに噴霧するものである。
【0035】
織布4は上下方向に所定幅(例えば1m)で長尺状であって、ロール状に巻き取られて、第2クランプ73の収納部に巻き出し可能に収納される。
【0036】
このような構成の巻き付け装置7では、まず織布4の先端が第1クランプ72によって風車タワーSTの外周の所定位置に固定される。次に、第2クランプ73が、上レール部材711と下レール部材712とに案内されて風車タワーSTの周方向に移動することで、第2クランプ73の収納部から織布4が巻き出されて風車タワーSTの外周に巻き付けられる。1回あたりの織布4の巻き出し長さに特に限定はないが、通常、2m~4m程度である。風車タワーSTの外周に巻き付けられた織布4には、第2クランプ73の収納部に内蔵された織布の巻取軸(不図示)に対して巻取方向に回転力が加えられることによって所定の張力がかけられる。前述のように、張力としては100N~200N程度が好ましい。
【0037】
(ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレア樹脂の塗布(第2工程))
次に、
図2(c)に示すように、構造物STに巻き付けられた織布4の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方が塗布される。織布4の表面に塗布された前記樹脂の一部は、織布4の開口部43を通って防錆剤層3の表面に至るとともに織布4の開口部43を埋める。その後、織布4の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方の樹脂からなる第2層2が形成され、第1層1の外側に第2層2が形成された積層構造となる。これにより、織布4を有する第1層1と、前記樹脂からなる第2層2とが一体化し強度が高くなる。
【0038】
第2層2の層厚に特に限定はないが、通常、0.5mm以上2.0mm以下の範囲が好ましい。第2層2の層厚が0.5mmよりも薄いと十分な補強効果が得られないおそれがある。一方、第2層2の層厚が2.0mmよりも厚いと使用樹脂量に対して十分な効果が得られないおそれがある。
【0039】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、アルコール性水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物とを反応させることによって得ることができる。また、ポリウレア樹脂は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、アミノ基を有するポリアミン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0040】
ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレア樹脂の塗布は、スプレーガンによる噴霧塗布やローラ塗布など従来公知の塗布方法を用いることができるが、作業労力の軽減および作業時間の短縮が図れることからスプレーガンによる噴霧塗布が好ましい。織布4と構造物STとの密着性が向上して補強構造の強度が高まると共に、高所における作業性が向上する。
【0041】
ポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂の原料をスプレー塗布する場合には、例えば
図4に示すスプレー塗布装置SPを用いることができる。
図4に示すスプレー塗布装置SPでは、ドラム缶61からイソシアネート化合物が、ドラム缶62からポリオール化合物またはポリアミン化合物がそれぞれ装置本体60に供給され、装置本体60において所定圧力に調整されたイソシアネート化合物と、ポリオール化合物またはポリアミン化合物とは加熱ホース63を介してスプレーガンGに供給される。そして、スプレーガンGにおいてイソシアネート化合物と、ポリオール化合物またはポリアミン化合物とが混合されて構造物STに噴霧される。例えば、噴霧する際のスプレー塗布装置SPの装置本体60からの吐出圧力は14MPa~24MPa程度で、最高液圧温度は約90℃程度である。このようなスプレー塗布装置SPとしては、例えば、GRACO社製「H-XP3リアクター」が好適に使用される。
【0042】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)等の低分子量イソシアネート化合物が挙げられる。
【0043】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0044】
ポリアミン化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミンのような芳香族ポリアミン、イソホロンジアミンのような脂環式ポリアミン等を挙げられる。
【0045】
(樹脂硬化)
次いで、
図2(d)に示すように、スプレー塗布後数分から数十分程度放置して塗布した樹脂を硬化させる。
【0046】
図1に示すように、構造体の補強度を高めるため、第1層と第2層とを交互に複数層積層してもよい。第1層と第2層の形成は前述の第1工程と第2工程を繰り返えせばよい。なお、第1層と第2層とを交互に複数層を積層した場合であっても最も外側の層は第2層とするのが望ましい。
【0047】
前述の
図3の巻き付け装置7では、スプレー塗布装置74から樹脂をスプレー塗布した後、数分から数十分放置して塗布した樹脂を硬化させる。その後、第1クランプ72を織布4から取り外し、織布4の第1クランプ72の取り付け部分に、スプレー塗布装置から前記樹脂をスプレー塗布して樹脂硬化させる。スプレー塗布した樹脂が硬化すると、第2クランプ73が、上レール部材711と下レール部材712とに案内されて風車タワーSTの周方向に再び移動して、第2クランプ73の収納部から織布4が巻き出されて風車タワーSTの外周に巻き付けられる。そして、スプレー塗布装置74が、風車タワーSTの外周に巻き付けられた織布4に対してポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂の原料をスプレー塗布して樹脂硬化させる。この作業が繰り返し行われることで、風車タワーSTの外周に織布4を有する第1層1と樹脂からなる第2層2とが積層形成される。
【0048】
(表面保護層)
図2(e)に示すように、最外層として表面保護層9を設けてもよい。このような表面保護層9としては、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいはこれらの変性樹脂などを使用することができる。表面保護9層の層厚に特に限定はないが、例えば0.02mm以上1.0mm以下程度の厚みが好ましい。
【実施例0049】
下記表1に示す、経糸および緯糸として、ガラス繊維から構成されるヤーンを用いた、空間率の異なる織布(以下、「ガラスクロス」と記す。)の各々を、直径165mmの塩化ビニル製パイプ表面の約半周に両面テープで貼り付け、ガラスクロスの表面から約60cm離れた位置からスプレーガンでポリウレア樹脂を吹付け塗布した。なお、使用したガラスクロスは日東紡社製の「WL230」、「KQ190」、「KS2750」、「KS5380」、「KC0505」である。
スプレー塗布20分後に塩化ビニル製パイプからガラスクロスを取り外し、ガラスクロスの裏面側を拡大鏡を用いて観察しポリウレア樹脂がガラスクロスを開口部に進入して裏面まで到達しているか調べた。
【0050】
【0051】
表1に示すように、調査したすべてのガラスクロスにおいてポリウレア樹脂は開口部に進入して裏面まで到達していた。そして、空間率の大きいガラスクロスほど裏面に到達していたポリウレアの量は多くなっていた。
【0052】
(その他)
以上説明した実施形態では防錆剤層3を設けていたが、防錆剤層3を設けることなく構造物STの表面に織布4を巻き付けて第1層1を形成した後、ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布して第2層2を形成してもよい。あるいは、構造物STと第1層1との付着強度を高めるために構造物STと第1層1との間にプライマー層を形成してもよい。あるいはまた、防錆剤層3とプライマー層を形成してもよい。