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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179754
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/12 20060101AFI20241219BHJP
   B61L 25/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B61K9/12
B61L25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098871
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】上島 清正
(57)【要約】
【課題】床下部品の下側に露出する箇所の状態を正確に把握可能にする検査装置を提供すること。
【解決手段】検査装置100は、床下部品UFの下方に配置され鉄道車両CAの床下部品UFを照明する照明装置16と、床下部品UFを撮像して画像データを得る撮像装置11と、床下部品UFの下方であって照明装置16の近傍に配置されて、床下部品UFからの映像光DLを撮像装置11に向けて反射するミラー17と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下部品の下方に配置され車両の前記床下部品を照明する照明装置と、
前記床下部品を撮像して画像データを得る撮像装置と、
前記床下部品の下方であって前記照明装置の近傍に配置されて、前記床下部品からの映像光を前記撮像装置に向けて反射するミラーと、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記床下部品は、鉄道車両の台車の構成部品を含み、
前記照明装置と前記ミラーとは、レールの枕木の近傍に配置される、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記床下部品は、前記台車の車輪に付随する制輪子、軸受部、及びダンパの少なくとも1つを含み、
前記撮像装置は、車両番号を撮影する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、前記車両の側面に対向する状態で前記床下部品を撮影する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記照明装置と前記ミラーとは、一体化された部材である、請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
車両の進入を検出する検知装置と、
前記検知装置によって車両の進入が検出された場合に前記照明装置と前記撮像装置とを動作させることによって得た前記画像データについて、前記床下部品の異常の有無の判定処理を行う情報処理装置を有する管理装置と、
をさらに備える、請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
前記管理装置は、
前記撮像装置の近傍に設けられ前記画像データを保持するデータ記憶部と、
前記画像データを遠隔の前記情報処理装置に送信する送信装置とを有する
端末装置を含む、請求項6に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道を走行する車両について、床下部品の状態を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車輪を計測する検査装置として、撮影箇所の斜め前方に配置された凹面鏡と、凹面鏡の後方に配置されたカメラと、凹面鏡よりも近くの斜め前方から車輪を照明するライトとを備え、車輪検知センサによって撮影開始及び撮影終了のタイミングを決定するものが公知となっている(特許文献1)。
【0003】
鉄道車両のブレーキディスクを撮影し検査する装置として、車輪に付随するディスク面に対して斜め下前方及び斜め下後方に配置された照明光源によってディスク面下部を照明しつつ、ディスク面の斜め下側に配置されたカメラからブレーキディスク下部を撮影するものが公知となっている(特許文献2)。
【0004】
鉄道車両の制輪子を撮影し検査する装置として、車輪がフォトセンサの位置を通過したシャッタータイミングで、ストロボ発光装置を発光させ、テレビカメラによって車輪の側面方向から制輪子を撮影するものが公知となっている(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、特許文献1の監視装置の場合、車輪の側面を斜め前方から撮影するが、制輪子等を含む床下部品を下方から撮影することができず、床下部品の下側に露出する箇所の状態を正確に把握できない可能性がある。また、特許文献2の手法では、ディスク面を斜め下方から撮影するが、床下部品の下側に露出する箇所の状態を正確に把握することができない可能性があり、建築限界の観点で照明光源等の配置が制限される。特許文献3の手法では、床下部品を下方から撮影することができず、床下部品の下側に露出する箇所の状態を把握することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-290312号公報
【特許文献2】特開2011-1801072号公報
【特許文献3】国際公開第1993/05358号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、床下部品の下側に露出する箇所の状態を正確に把握可能にする検査装置を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る検査装置は、床下部品の下方に配置され車両の床下部品を照明する照明装置と、床下部品を撮像して画像データを得る撮像装置と、床下部品の下方であって照明装置の近傍に配置されて、床下部品からの映像光を撮像装置に向けて反射するミラーと、を備える。
【0009】
上記検査装置では、床下部品を照明する照明装置と、映像光を撮像装置に向けて反射するミラーとが、床下部品の下方において互いに近傍に配置されており、床下部品の下側に露出する箇所を確実に照明し、照明された箇所を正面から撮影できるので、床下部品の下側に露出する箇所の状態を正確に把握することができる。
【0010】
本発明の具体的な側面では、上記検査装置において、床下部品は、鉄道車両の台車の構成部品を含み、照明装置とミラーとは、レールの枕木の近傍に配置される。普通鉄道の場合、枕木の周辺に空間を確保することは容易であり、照明装置やミラーを建築限界の要件を満たしつつ枕木の近傍に配置することができる。
【0011】
本発明の別の側面では、床下部品は、台車の車輪に付随する制輪子、軸受部、及びダンパの少なくとも1つを含み、撮像装置は、車両番号を撮影する。この場合、検査対象である車両を特定し、車両番号と関連付けて床下部品の状態を管理することが容易になる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、撮像装置は、車両の側面に対向する状態で床下部品を撮影する。この場合、床下部品を側面方向から撮影した情報と、ミラー越しに照明箇所の正面から撮影した情報とを組み合わせることで、多様な情報を取得することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、照明装置とミラーとは、一体化された部材である。この場合、照明装置及びミラーをユニット化して、現場にセットすることができ、照明装置及びミラーの設置の作業性が高まる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、車両の進入を検出する検知装置と、検知装置によって車両の進入が検出された場合に照明装置と撮像装置とを動作させることによって得た画像データについて、床下部品の異常の有無の判定処理を行う情報処理装置を有する管理装置と、をさらに備える。この場合、車両通過の検知に同期させて撮影を行うことができ、情報処理装置による異常の有無の判定処理が車両通過の検知に対応するタイミングで得た画像データに絞り込んで行われるので、処理の効率化を図ることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、管理装置は、撮像装置の近傍に設けられ画像データを保持するデータ記憶部と、画像データを遠隔の情報処理装置に送信する送信装置とを含む端末装置を含む。この場合、端末装置を現場にセットし、現場を通過する車両の台車等を遠隔的に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】線路に付随して設置される検査装置を説明する概念的な平面図である。
図2】検査装置を説明する線路に沿った正面方向からの概念図である。
図3】鉄道車両の台車等を説明する側面図である。
図4】(A)は、補助部材の側断面図であり、(B)は、補助部材の平面図である。
図5】撮像装置によって撮影された画像を説明する概念図である。
図6】ブレーキの制輪子や車輪の踏面の状態を示す図である。
図7】(A)及び(B)は、軸受部の状態を比較する概念的な拡大図である。
図8】(A)及び(B)は、ダンパの状態を比較する概念的な図である。
図9】(A)及び(B)は、ダンパの状態を別の観点で比較する概念的な図である。
図10】(A)は、端末装置を説明する概念的なブロック図であり、(B)は、遠隔監視装置を説明する概念的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1等を参照して、本発明に係る検査装置の一実施形態について説明する。
【0018】
図1において、検査装置100は、鉄道の線路3に付随して設けられる撮影処理装置10,110と、車両検出装置21,22,23と、遠隔監視装置50とを備える。一点鎖線で示す列車TRは、検査対象である複数の鉄道車両CAを備え、図1において右から左に向けて走行する。各鉄道車両CAには、一対の台車70が設けられており、各台車70は、4つの車輪71を含む。鉄道車両CAが走行する線路3は、一対のレール3aと、多数の枕木3bとを有する。
【0019】
第1の撮影処理装置10と第2の撮影処理装置110とは、線路3を挟んで対向して配置されている。第1の撮影処理装置10は、鉄道車両CAの画像を取得する撮像装置11と、撮像装置11を補助して下方からの撮影を可能にする補助部材15とを有する。撮影処理装置110も、鉄道車両CAの画像を取得する撮像装置11と、撮像装置11を補助して下方からの撮影を可能にする補助部材15とを有する。撮影処理装置10と撮影処理装置110とは、有線又は無線で相互に通信し、同期して撮影動作を行う。
【0020】
第1車両検出装置21は、赤外線光源、赤外線カメラ、画像処理装置等を備え、列車TRの先頭車両CA0の前端が監視区間DAに進入したことを検出する。つまり、第1車両検出装置21は、鉄道車両CAの進入を検出する検知装置CDである。第2車両検出装置22は、第1車両検出装置21と同様に、赤外線光源、赤外線カメラ、画像処理装置等を備え、列車TRの最後尾車両(不図示)の後端が監視区間DAから退出したことを検出する。第3車両検出装置23は、第1車両検出装置21と同様に、赤外線光源、赤外線カメラ、画像処理装置等を備え、先頭車両CA0の前端が監視区間DAの手前の所定距離に達したことを検出する。第1車両検出装置21による列車TRの前端検出と、第3車両検出装置23による列車TRの前端検出とのタイミング差から、監視区間DAを通過する列車TR又は鉄道車両CAの速度を推定することができる。
【0021】
図2及び3を参照して、第1の撮影処理装置10は、線路3の近傍であって監視区間DAに対向する箇所に配置される線路脇装置12と、監視区間DAにおいて線路脇装置12に対向して線路3上に配置される補助部材15とを備える。なお、第2の撮影処理装置110は、第1の撮影処理装置10と同様のものであり、第2の撮影処理装置110については、説明を省略する。
【0022】
線路脇装置12は、支柱状の部材12pに支持されて地面の上方に配置される撮像装置11のほかに、撮像装置11の動作を制御する端末装置13を有する。撮像装置11は、端末装置13から指令で動作するカメラであり、移動体である列車TRを高速で連続撮影する。撮像装置11は、補助部材15のミラー17越しに床下部品UFを下側から撮影するだけでなく、鉄道車両CAの側面に対向する状態で床下部品UFを横からも撮影する。つまり、撮像装置11は、鉄道車両CAの下部からの映像光DL1と、鉄道車両CAの側面からの映像光DL2とを撮影する。撮像装置11のシャッタースピードは、撮影対象である床下部品UFが実質的に静止した状態に近似できる程度とする。撮像装置11の撮影間隔は、列車TRが移動しても床下部品UFのの着目箇所又は全体を1回以上の撮影で捉えることができるようなものとする。端末装置13は、コンピュータであり、撮像装置11による撮影タイミングを制御し、撮像装置11によって取得された画像データを一時的に保管し、画像データを適宜のタイミングで遠隔監視装置50に送信する。沿線の現場である監視区間DAの近傍に設置される端末装置13と、監視区間DAから離れて設置される遠隔監視装置50(図1参照)とを組み合わせたものを管理装置MSと呼ぶ。
【0023】
補助部材15は、鉄道車両CAの床下部品UFを照明する照明装置16と、床下部品UFからの映像光DLを撮像装置11に向けて反射するミラー17とを一体化した撮影用のユニットであり、レール3aの枕木3bの近傍に配置される。図示の例では、照明装置16とミラー17とは、枕木3b上であって一対のレール3aの外側に配置されている。照明装置16とミラー17とは、レール3aからわずかに離間し、かつ、上端がレール3aの上端を超えない配置状態で、互いに一体化され枕木3bに固定されている。結果的に、照明装置16及びミラー17は、床下部品UFの下方において建築限界外となるように配置され、照明装置16及びミラー17は、レール3aに垂直な方向に並んで互いに近傍に配置されている。
【0024】
線路脇装置12による撮影対象である台車70は、鉄道車両CAの一部であり、車輪71と、台車フレーム72と、ボルスタ73と、枕ばね74と、ダンパ75と、モータ76と、ブレーキ77とを備える。なお、台車フレーム72上に車体81が支持される。この場合、ブレーキ77の制輪子77aや、車輪71の踏面71tは、台車70の下方に露出する部品であり、撮影処理装置10によって撮影される主な床下部品UFである。ダンパ75、軸受部78a等は、台車70の側方に露出する部品であり、撮影処理装置10によって撮影される床下部品UFである。台車70上に支持された車体81のフレーム又は外装には、車両番号を表示したプレート88が取付られており、プレート88の車両番号も撮影処理装置10によって撮影される。
【0025】
線路3において、一対のレール3aを支持する多数の枕木3bは、バラストその他の路床3c上に設置されている。線路脇装置12は、建築限界外であって、路床3cよりも外側の沿線領域に設置されている。線路脇装置12は、レール3aから例えば1~3m程度離れて配置される。
【0026】
図4(A)は、補助部材15の側断面図であり、図4(B)は、補助部材15の平面図である。照明装置16とミラー17とは、ケース15b内に収納されている。照明装置16は、ケース15bの底部に固定された台座部分15iの斜面15m上に支持され、ミラー17は、ケース15bの底部に固定された台座部分15jの斜面15n上に支持されている。照明装置16は、多数のLED16aを2次元的に配列したLEDユニット16bと、LEDユニット16bに点灯動作を行わせる駆動回路を実装した駆動回路基板16cとを備える。LED16aは、正面方向に照明光を照射するが、配向性を調整して正面方向に光をより集めた特性を持たせることができる。LEDユニット16bにおいて、図示したLED16aの個数や配列は、単なる例示であり、LED16aの輝度等を考慮して適宜設定される。駆動回路基板16cは、線路脇装置12の端末装置13から電力を供給されるものであり、端末装置13の制御下で撮影時に同期して、LEDユニット16bに点灯動作を行わせる。LEDユニット16bと駆動回路基板16cとの間の空間は、保持用樹脂15fで充填され、2次元的に配列された多数のLED16aの根元も保持用樹脂15fに埋め込まれている。照明装置16を保持用樹脂15fに埋め込むように固定することにより、照明装置16の振動耐性や耐候性が高まり、照明装置16の寿命を長くすることができる。ミラー17は、平面の反射鏡であり、例えばガラス基板上に金属膜を蒸着しさらに保護薄膜を形成したものであるが、これに限るものではなく、様々な構造とすることができる。図示の例において、ケース15bは、透明な樹脂製のカバー15cで覆われており、ケース15bとカバー15cとによって形成された密閉空間内に照明装置16とミラー17とが収納されている。ただし、照明装置16やミラー17は、密閉空間内に収納することなく、野外に露出させることもできる。
【0027】
図4(A)及び図2を参照して、照明装置16におけるLEDユニット16bの傾斜角α1は、照明光ILの傾斜角α0に対応するものとなっており、主に制輪子77aやこれに隣接する踏面71tを狙った方向への照明光の照射を可能にする。ミラー17は、制輪子77a及びその周辺から下方(つまり照明箇所の正面方向)に射出された映像光DLを撮像装置11に向けて反射する。ミラー17の傾斜角β1は、映像光DLの入射傾斜角β0や射出傾斜角β3を考慮して、45°-(β0+β3)/2程度に設定される。これにより、ミラー17が比較的小面積であっても、制輪子77aから下方に射出された映像光DLを撮像装置11に入射させることができ、撮像装置11は、制輪子77a及びその周辺の画像を取得することができる。さらに、撮像装置11からミラー17までの距離をL1とし、ミラー17から制輪子77a等までの距離L2とし、撮像装置11から距離L1+L2離れた制輪子77aの縦横角度サイズが(θx,θy)であるとした場合、撮像装置11から距離L1離れたミラー17の縦横角度サイズは、(θx×L1/(L1+L2),θy×L1/(L1+L2))以上に確保される必要がある。なお、撮像装置11は、その結像レンズの画角の設定により、他の床下部品UFであるダンパ75、軸受部78a等及びその周辺の画像を取得することができ、車体81に付随するプレート88及びその周辺の画像を取得することもできる。
【0028】
以上の説明では、ミラー17が平面の反射鏡であるとしたが、これに限るものではなく、ミラー17は、例えば凹面の反射鏡であってもよい。
【0029】
図5は、撮像装置11によって撮影され遠隔監視装置50に画像データとして転送される画像IDを説明する概念図である。画像IDは、鉄道車両CAの床下部品UFを側方から撮影した領域AR1と、鉄道車両CAの床下部品UFを下方から撮影した領域AR2と、鉄道車両CAの車体81下部を側方から撮影した領域AR3とを含む。領域AR1の画像要素から、画像処理によりダンパ75、軸受部78a等の画像が抽出される。領域AR1の下側の領域AR0の画像要素から、画像処理によりミラー17の画像(つまり領域AR2)が抽出され、さらにミラー17中の画像要素から、画像処理により制輪子77a等の画像が抽出される。制輪子77a等の画像は、照明光ILによって照明された対象を照明方向に対応する正面から撮影したものとなっている。領域AR3の画像要素から、画像処理によりプレート88等の画像が抽出される。
【0030】
図6は、ブレーキ77の制輪子77aの状態を示す図である。制輪子77aは、付勢用支持体77fによって背後から支持され、車輪71の踏面71tに接する。制輪子77aの厚みTbを観測することにより、制輪子77aが消耗又は破損しているか否かを判定することができる。制輪子77aの厚みTbは、撮像装置11によって撮影された画像から制輪子77aの画像を抽出し、車輪71のサイズやその他要素との比較に基づいて決定することができる。
【0031】
図7(A)は、正常な状態の軸受部78aを説明する図であり、図7(B)は、異常な又は劣化した状態の軸受部78aを説明する図である。軸受部78aの頭部78hにおいて、3つのボルト79aによって締め付けが行われており、ボルト79aの頭部79hには、回転位置を判定するための回転判定マーク79j,79kが塗布されている。また、軸受部78aの頭部78hには、温度の上昇を検出するための温度判定ラベル79iが貼付けられている。ボルト79aの緩みは、撮像装置11によって撮影された画像から軸受部78aの画像を抽出し、3つの頭部79hに付された回転判定マーク79j,79kの平行度の乱れに基づいて、つまり回転判定マーク79j,79kの相対的方位差に基づいて決定することができる。図7(B)に示す例において、回転判定マーク79j,79kを比較すると、3つのボルト79aのうち1つのボルト79xは、他の3つのボルト79aと相対的方位が異なるものとなっている。つまり、ボルト79xが緩んでいると認められる。軸受部78aの過度の加熱は、撮像装置11によって撮影された画像から軸受部78aの画像を抽出し、温度判定ラベル79iの色彩に基づいて決定することができる。図7(B)に示す例では、温度判定ラベル79iが加熱されて例えば赤色に変化し、軸受部78aが過度に加熱されていると認められる。
【0032】
図8(A)は、外観形状に関して正常な状態のダンパ75を説明する図であり、図8(B)は、外観的に異常な又は劣化した状態のダンパ75を説明する図である。ダンパ75は、上端及び下端に固定部75cを有し、下に偏った部分に伸縮部75bを有する。ダンパ75の長さLd、つまり一対の固定部75cの間隔を観測することにより、負荷異常等に起因してダンパ75が異常伸縮しているか否かを判定することができる。ダンパ75の長さLdは、撮像装置11によって撮影された画像からダンパ75の画像を抽出し、車輪71のサイズやその他の要素との比較に基づいて決定することができる。
【0033】
図9(A)は、漏油に関して正常な状態のダンパ75を説明する図であり、図9(B)は、漏油に関して異常な又は劣化した状態のダンパ75を説明する図である。この場合、ダンパ75の伸縮部75bの上側と下側とに、ダンパ75からの油漏れを検出する漏油検知シート79nが両面テープ等を用いて貼付けられている。ダンパ75からの漏油は、撮像装置11によって撮影された画像からダンパ75の画像を抽出し、漏油検知シート79nの色彩に基づいて決定することができる。図9(B)に示す例では、漏油検知シート79nに漏れ出した油がしみ込んで例えば黒く着色され、ダンパ75が損傷していると認められる。
【0034】
図10(A)を参照して、線路脇装置12に組み込まれた端末装置13は、主制御装置13aと、記憶装置13bと、通信装置13cとを有する。つまり、端末装置13は、撮像装置11の近傍に設けられ画像データを保持するデータ記憶部DMである記憶装置13bと、画像データを遠隔の遠隔監視装置50(より具体的には、後述する図10(B)に示す情報処理装置IP)に送信する送信装置SDである通信装置13cとを含む。主制御装置13aは、通信装置13cを介して遠隔監視装置50と交信し、遠隔監視装置50からの指令に従って動作する。具体的には、主制御装置13aは、在線判定部D1として、第1車両検出装置21の出力に基づいて鉄道車両CAが監視区間DAに進入したことを検出する。主制御装置13aは、鉄道車両CAが監視区間DAに進入したことを検出した場合、照明装置16と撮像装置11とを動作させる。つまり、主制御装置13aは、照明装置16を動作させて照明光ILを射出させ、床下部品UFを照明する。さらに、主制御装置13aは、照明装置16の点灯と並行して撮像装置11に撮影を開始させ、床下部品UFの画像を撮影させる。主制御装置13aは、第2車両検出装置22の出力に基づいて鉄道車両CAが監視区間DAから退出したことを検出した場合、照明装置16を消灯し、撮像装置11による床下部品UFの撮影を終了させる。主制御装置13aは、撮像装置11によって得た画像データを遠隔監視装置50に逐次送信する。記憶装置13bのソフトウェア格納部13zには、線路脇装置12又は端末装置13を動作させるプログラムが格納されている。記憶装置13bの画像データ格納部13pには、撮像装置11によって所定の時間差で得た多数の画像データが一時的に保管される。
【0035】
図10(B)を参照して、遠隔監視装置50は、主制御装置51aと、記憶装置51bと、通信装置51cと、入出力装置51dとを有する。主制御装置51aは、通信装置51cを介して線路脇装置12の端末装置13と交信し、線路脇装置12の動作を管理する。主制御装置51aは、鉄道車両CAが監視区間DAへ進入したという検出結果を線路脇装置12から情報として受け取るとともに、撮像装置11によって得た画像データを受け取って記憶装置51bに保管する。遠隔監視装置50又は主制御装置51aは、情報処理装置IPとして機能し、線路脇装置12から受け取った画像データを解析し、床下部品UFの異常の有無の判定処理を行う。具体的には、主制御装置51aは、床下部品UFの状態が正常であるか否かや、床下部品UFの消耗度や、床下部品UFの劣化の進行状態を判定する。この際、例えば受け取った画像データから着目する特定の床下部品UFの画像を切り出し、正常な基本画像と消耗等が進行した等級画像とを含む参照画像と比較することによって、床下部品UFの異常、床下部品UFの消耗度、劣化進行度等を決定する。また、主制御装置51aは、車両情報取得部CIとして機能し、線路脇装置12から受け取った画像データからプレート88の画像を抽出し、プレート88の画像から車両番号を特定する。記憶装置51bのソフトウェア格納部51zには、遠隔監視装置50を動作させるプログラムが格納されている。記憶装置51bの画像データ格納部51pには、線路脇装置12から受け取った画像データが保管され、判定結果記録部51qには、検出した鉄道車両CAの車両番号ごとに、異常等の検出が行われた時間情報と、床下部品UFの状態の判定結果とが、車両番号に紐づけられた状態で保管されている。入出力装置51dは、オペレータが操作するキーボードやマウスを含み、異常が検出された場合、警報を発し、異常があった車両番号の情報に床下部品UFの異常判定結果を付加した情報をディスプレイに表示する。
【0036】
以上で説明した実施形態の検査装置100は、床下部品UFの下方に配置され鉄道車両CAの床下部品UFを照明する照明装置16と、床下部品UFを撮像して画像データを得る撮像装置11と、床下部品UFの下方であって照明装置16の近傍に配置されて、床下部品UFからの映像光DLを撮像装置11に向けて反射するミラー17と、を備える。
【0037】
上記検査装置100では、床下部品UFを照明する照明装置16と、映像光を撮像装置11に向けて反射するミラー17とが、床下部品UFの下方において互いに近傍に配置されており、床下部品UFの下側に露出する箇所を確実に照明し、照明された箇所を正面から撮影できるので、床下部品UFの下側に露出する箇所(具体的には、例えば制輪子77a)の状態を正確に把握することができる。
【0038】
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0039】
検査装置100は、普通鉄道の列車TRの床下部品UFを検査するものに限らず、例えば専用軌道上を走行する路面電車の床下部品を検査するものであってもよい。
【0040】
第1の撮影処理装置10と第2の撮影処理装置110とは、線路3に沿って異なる位置に配置されてもよい。この場合、第2の撮影処理装置110用に別途車両検出装置21,22,23を設けることが望ましい。
【0041】
撮像装置11は、単一のカメラによって制輪子77a、ダンパ75、プレート88等を一括して撮影するものに限らず、複数のカメラによって制輪子77a、ダンパ75、プレート88等を個別に撮影するものであってもよい。
【0042】
床下部品UFの異常の有無の判定処理は、参照画像との比較に限らず、機械学習やAIを利用したものであってもよい。
【0043】
遠隔監視装置50の機能は、撮影処理装置10に組み込まれてもよい。遠隔監視装置50と撮影処理装置10とは、有線又は無線によって通信可能に接続されているが、汎用的な通信ネットワークを介在させるものであってもよい。
【0044】
以上では、列車TR単位で撮像装置11を連続動作させて床下部品UFの画像を取得しているが、個々の鉄道車両CAや台車70の単位で撮像装置11を連続動作させて床下部品UFを撮影してもよい。
【0045】
図2等に示す台車70の構造は一例であり、様々な構造の台車の監視に本発明の検査装置を適用することができる。また、検査装置100による検査対象は、台車70の構成部品に限らず、鉄道車両CAの床下に配置される様々な構成部品であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
3…線路、3a…レール、3b…枕木、10…第1の撮影処理装置、11…撮像装置、12…線路脇装置、13…端末装置、13a…主制御装置、13b…記憶装置、13c…通信装置、15…補助部材、15b…ケース、15c…カバー、15f…保持用樹脂、16…照明装置、16b…LEDユニット、16c…駆動回路基板、17…ミラー、21,22,23…車両検出装置、50…遠隔監視装置、51a…主制御装置、51b…記憶装置、51c…通信装置、51d…入出力装置、53c…通信装置、70…台車、71…車輪、71t…踏面、75…ダンパ、77…ブレーキ、77a…制輪子、78a…軸受部、79a…ボルト、79i…温度判定ラベル、79j,79k…回転判定マーク、79n…漏油検知シート、81…車体、88…プレート、100…検査装置、110…第2の撮影処理装置、CA…鉄道車両、CD…検知装置、CI…車両情報取得部、D1…在線判定部、DA…監視区間、DL…映像光、DM…データ記憶部、ID…画像、IL…照明光、IP…情報処理装置、MS…管理装置、SD…送信装置、TR…列車、UF…床下部品
図1
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