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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179755
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】分類キットおよび分類方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20241219BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20241219BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20241219BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01N31/00 V
G01N33/52 A
G01N33/68
G01N31/22 121G
G01N31/22 121N
G01N31/22 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098873
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】720008058
【氏名又は名称】Dアミノ酸ラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】吉村 徹
(72)【発明者】
【氏名】黒野 剛
【テーマコード(参考)】
2G042
2G045
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BD20
2G042CB03
2G042DA08
2G042FA11
2G042FB07
2G042FC07
2G042HA10
2G045AA16
2G045CB03
2G045DA35
2G045FB11
2G045GC12
2G045HA10
(57)【要約】
【課題】アミノ酸を含む液体を簡易に分類する技術を提供する。
【解決手段】この分類キット1は、アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類する。分類キット1は、ニンヒドリンを含有する基材11を有する。これにより、基材11に分類対象となる液体を接触させると、液体中のアミノ酸と、基材11に含まれるニンヒドリンとが反応し、青紫色に発色する。この発色の経時変化を用いて液体を分類することにより、簡易にアミノ酸を含む液体を分類することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類するための分類キットであって、
ニンヒドリンを含有する基材
を有する、分類キット。
【請求項2】
請求項1に記載の分類キットであって、
前記基材は、
前記ニンヒドリンを含有する検出層と、
前記検出層の表面を覆うコーティング層と、
を有する、分類キット。
【請求項3】
請求項2に記載の分類キットであって、
前記コーティング層は、アルコールを含む湿潤層である、分類キット。
【請求項4】
請求項3に記載の分類キットであって、
前記コーティング層は、
エタノールと、
カルボキシビニルポリマーと、
を含む、分類キット。
【請求項5】
アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類するための分類キットであって、
表面が露出した第1基材と、
表面が露出した第2基材と、
を有し、
前記第1基材は、
ニンヒドリンを含有する第1検出層
を表面に有し、
前記第2基材は、
前記ニンヒドリンを含有する第2検出層と、
前記第2検出層の表面を覆う、乾いたコーティング層と、
を有する、分類キット。
【請求項6】
請求項5に記載の分類キットであって、
前記コーティング層は、糖類を含む、分類キット。
【請求項7】
請求項6に記載の分類キットであって、
前記コーティング層は、スクロース層またはグルコース層である、分類キット。
【請求項8】
アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類する分類方法であって、
a)ニンヒドリンを含有する基材の表面に前記液体を付着させる工程と、
b)前記基材の前記液体の付着部の変化に基づいて、前記液体を分類する工程と、
を含む、分類方法。
【請求項9】
アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類する分類方法であって、
c)基材の表面に前記液体を滴下させる工程と、
d)前記基材の前記液体の滴下部の変化に基づいて、前記液体を分類する工程と、
を含み、
前記基材は、
ニンヒドリンを含有する検出層と、
前記検出層の表面を覆いアルコールを含む湿潤なコーティング層と、
を有する、分類方法。
【請求項10】
請求項9に記載の分類方法であって、
前記コーティング層は、
エタノールと、
カルボキシビニルポリマーと、
を含む、分類方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の分類方法であって、
前記液体は尿であり、
前記工程d)において、
前記滴下部の中央部に比べて縁部の発色が濃いものを健常と判定し、
前記滴下部の中央部と縁部との発色の差が無いものを異常と判定する、分類方法。
【請求項12】
請求項9または請求項10に記載の分類方法であって、
前記液体は尿であり、
前記工程d)において、
前記滴下部の縁部が、外側へ延びる複数の枝状の突起を有するものを健常と判定し、
前記滴下部の縁部形状が明瞭でないものを異常と判定する、分類方法。
【請求項13】
アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類する分類方法であって、
e)第1基材および第2基材の表面に前記液体を付着させる工程と、
f)前記第1基材および前記第2基材の前記液体の付着部の変化に基づいて、前記液体を分類する工程と、
を含み、
前記第1基材は、
ニンヒドリンを含有する第1検出層
を表面に有し、
前記第2基材は、
前記ニンヒドリンを含有する第2検出層と、
前記第2検出層の表面を覆う、乾いたコーティング層と、
を有する、分類方法。
【請求項14】
請求項13に記載の分類方法であって、
前記コーティング層は、糖類を含む、分類方法。
【請求項15】
請求項14に記載の分類方法であって、
前記コーティング層は、スクロース層またはグルコース層である、分類方法。
【請求項16】
請求項13ないし請求項15のいずれか一項に記載の分類方法であって、
前記液体は尿であり、
前記工程f)において、
前記第1基材の前記付着部と、前記第2基材の前記付着部とがいずれも明瞭に発色しているものを健常と判定し、
前記第1基材の前記付着部が明瞭に発色しており、かつ、前記第2基材の前記付着部の発色が無いまたは僅かであるものを異常と判定する、分類方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アミノ酸を含む液体を分類するための分類キットおよび分類方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎臓病は、日本人の約1千万人、世界の約8.5億人が罹患していると言われており、早期診断・早期発見が求められている。また、近年、ペットの長寿化に伴い、高齢ペットに特有の病気が増加している。中でも、猫は腎臓病を発症しやすく、人間同様に、早期診断・早期発見が求められている。
【0003】
人間の場合も猫の場合も、腎臓病の診断は、一般的に尿検査と血液検査とを併用して行われる。例えば、尿検査においては、尿タンパクや比重、血液検査においては血中尿素窒素や血清クレアチニンについて検査を行う。例えば、特許文献1には、血液検査によって慢性腎臓病の判定を行うための血清マーカーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-058863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の尿検査や血液検査は、個人で行うには難しいものであった。また、血液検査は、検査対象への負担が大きく、頻繁に行うことが難しい。このため、腎臓病の簡便な判定方法が望まれている。
【0006】
一方、近年、腎臓病患者の尿中のD-アミノ酸をはじめとするアミノ酸の含有量が、健常被験者の尿中のアミノ酸含有量よりも有意に低いことがわかってきた。このため、アミノ酸を含む尿等の液体を簡易に分類することができれば、腎臓病を簡便に判定することができる。
【0007】
本発明は、アミノ酸を含む液体を簡易に分類する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類するための分類キットであって、ニンヒドリンを含有する基材を有する。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の分類キットであって、前記基材は、前記ニンヒドリンを含有する検出層と、前記検出層の表面を覆うコーティング層と、を有する。
【0010】
本願の第3発明は、第2発明の分類キットであって、前記コーティング層は、アルコールを含む湿潤層である。
【0011】
本願の第4発明は、第3発明の分類キットであって、前記コーティング層は、エタノールと、カルボキシビニルポリマーと、を含む。
【0012】
本願の第5発明は、アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類するための分類キットであって、表面が露出した第1基材と、表面が露出した第2基材と、を有し、前記第1基材は、ニンヒドリンを含有する第1検出層を表面に有し、前記第2基材は、前記ニンヒドリンを含有する第2検出層と、前記第2検出層の表面を覆う乾いたコーティング層と、を有する。
【0013】
本願の第6発明は、第5発明の分類キットであって、前記コーティング層は、糖類を含む。
【0014】
本願の第7発明は、第6発明の分類キットであって、前記コーティング層は、スクロース層またはグルコース層である。
【0015】
本願の第8発明は、アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類する分類方法であって、a)ニンヒドリンを含有する基材の表面に前記液体を付着させる工程と、b)前記基材の前記液体の付着部の変化に基づいて、前記液体を分類する工程と、を含む。
【0016】
本願の第9発明は、アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類する分類方法であって、c)基材の表面に前記液体を滴下させる工程と、d)前記基材の前記液体の滴下部の変化に基づいて、前記液体を分類する工程と、を含み、前記基材は、ニンヒドリンを含有する検出層と、前記検出層の表面を覆いアルコールを含む湿潤なコーティング層と、を有する。
【0017】
本願の第10発明は、第9発明の分類方法であって、前記コーティング層は、エタノールと、カルボキシビニルポリマーと、を含む。
【0018】
本願の第11発明は、第9発明または第10発明の分類方法であって、前記液体は尿であり、前記工程d)において、前記滴下部の中央部に比べて縁部の発色が濃いものを健常と判定し、前記滴下部の中央部と縁部との発色の差が無いものを異常と判定する。
【0019】
本願の第12発明は、第9発明または第10発明の分類方法であって、前記液体は尿であり、前記工程d)において、前記滴下部の縁部が、外側へ延びる複数の枝状の突起を有するものを健常と判定し、前記滴下部の縁部形状が明瞭でないものを異常と判定する。
【0020】
本願の第13発明は、アミノ酸を含む液体を発色の時間差により分類する分類方法であって、e)第1基材および第2基材の表面に前記液体を付着させる工程と、f)前記第1基材および前記第2基材の前記液体の付着部の変化に基づいて、前記液体を分類する工程と、を含み、前記第1基材は、ニンヒドリンを含有する第1検出層を表面に有し、前記第2基材は、前記ニンヒドリンを含有する第2検出層と、前記第2検出層の表面を覆う、乾いたコーティング層と、を有する。
【0021】
本願の第14発明は、第13発明の分類方法であって、前記コーティング層は、糖類を含む。
【0022】
本願の第15発明は、第14発明の分類方法であって、前記コーティング層は、スクロース層またはグルコース層である。
【0023】
本願の第16発明は、第13発明ないし第15発明のいずれか一発明の分類方法であって、前記液体は尿であり、前記工程f)において、前記第1基材の前記付着部と、前記第2基材の前記付着部とがいずれも明瞭に発色しているものを健常と判定し、前記第1基材の前記付着部が明瞭に発色しており、かつ、前記第2基材の前記付着部の発色が無いまたは僅かであるものを異常と判定する。
【発明の効果】
【0024】
本願の第1発明~第16発明によれば、基材に分類対象となる液体を接触させると、液体中のアミノ酸と、基材に含まれるニンヒドリンとが反応し、青紫色に発色する。この発色の経時変化を用いて液体を分類することにより、簡易にアミノ酸を含む液体を分類することができる。
【0025】
特に、本願の第2発明によれば、アミノ酸と反応するニンヒドリンを含有する検出層をコーティング層で覆うことにより、アミノ酸とニンヒドリンとの反応速度を調節したり、反応前のアミノ酸の移動を生じさせたりすることができる。これにより、分類対象の液体アミノ酸含有量に応じた発色の変化が、アミノ酸含有量の多少等の条件によって大きく異なる。その結果、より簡易にアミノ酸を含む液体を分類することができる。
【0026】
特に、本願の第3発明、第4発明、および第9発明ないし第12発明によれば、アルコールを含む湿潤なコーティング層により、反応前のアミノ酸の移動が生じる。これにより、アミノ酸含有量の多少によって、滴下部の発色の濃さの分布や滴下部の縁部形状に違いが生じる。その結果、より簡易にアミノ酸を含む液体を分類することができる。
【0027】
特に、本願の第5発明ないし第7発明、および、第13発明ないし第16発明に寄れば、乾いたコーティング層を有する第2基材では、コーティングの無い第1基材に比べて、アミノ酸とニンヒドリンとの反応速度が遅くなる。したがって、アミノ酸を含む液体が基材に接触してから一定の期間においては、アミノ酸含有量が小さいほど、第1基材と第2基材との発色の差が大きくなる。その結果、より簡易にアミノ酸を含む液体を分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態の分類キットの斜視図である。
図2】第1実施形態の分類キットの断面図である。
図3】第1実施形態の基材を用いた実験結果である。
図4】第1実施形態の分類キットを用いた分類処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第2実施形態の分類キットの斜視図である。
図6】第2実施形態の基材を用いた実験結果である。
図7】第2実施形態の基材を用いた実験結果である。
図8】第2実施形態の分類キットを用いた分類処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0030】
<1.第1実施形態>
<1-1.分類キットおよび分類システムの概要>
図1は、第1実施形態に係る分類キット1の斜視図である。図2は、分類キット1の断面図である。この分類キット1は、アミノ酸を含む液体を、アミノ酸含有量の大きい第1グループと、アミノ酸含有量の小さい第2グループとのどちらに属するかを判定し、液体を分類するための簡易キットである。この分類キット1を用いれば、例えば、猫等の動物の尿を、第1グループとして健常(腎臓病でない)と推定されるグループと、第2グループとして腎臓病と推定されるグループとのどちらに属するかを判定することができる。
【0031】
分類キット1は、基材11と、フレーム12とを有する。基材11は、薄い膜状である。フレーム12は、基材11の縁部を支持する。これにより、基材11に皺が寄ったり、基材11が折れたりすることが抑制される。フレーム12は、例えば、厚紙で形成される。その場合、使用後の分類キット1は、可燃ゴミとして処分することができる。なお、フレーム12は、樹脂等のその他の材料で形成されてもよい。
【0032】
図2に示すように、基材11は、フレーム12に縁部を支持された検出層111と、検出層111の表面を覆うコーティング層112とを有する。具体的には、本実施形態の基材11は、検出層111の表面に、コーティング層112を構成する液体または粘性を有するゾル(以下では「コーティング材」と称する)を塗布したものである。なお、コーティング層112は、検出層111の表面の全域を覆っていなくてもよい。コーティング層112は、判定対象となる液体の滴下領域において検出層111の表面を覆っていればよい。
【0033】
検出層111は、ろ紙等の薄い紙であって、ニンヒドリンを含有したものである。検出層111は、例えば、紙をニンヒドリン水溶液に浸漬後、乾燥して製造する。検出層111は、コーティング材を塗布する前の状態において、乾燥している。
【0034】
ニンヒドリンは、常温で淡黄色固体であり、水およびアルコールに可溶である。ニンヒドリンにアミノ酸水溶液が接触すると、アミノ酸の検出反応であるニンヒドリン反応が起こる。具体的には、ニンヒドリン反応は、ニンヒドリン水溶液とα-アミノ酸によって生じる呈色反応であり、ルーエマン紫という青紫色の色素が生成される。このため、検出層111に、アミノ酸水溶液が接触すると、検出層111の当該部分が青紫色を呈する。
【0035】
コーティング層112は、ニンヒドリンを含有する検出層111の表面を覆う。これにより、基材11の表面にアミノ酸を含む液体が接触した際に、コーティング層112によって、アミノ酸とニンヒドリンとの反応速度を調節できる。また、基材11の表面にアミノ酸を含む液体が接触した場合に、アミノ酸が検出層111中のニンヒドリンに達する前に移動することができる。したがって、分類対象の液体のアミノ酸含有量に応じた発色の変化を大きくすることができる。その結果、分類対象の液体を、アミノ酸含有量の多い第1グループと、アミノ酸含有量の少ない第2グループとに簡易に分類することができる。
【0036】
本実施形態の分類キット1では、コーティング層112を構成するコーティング材は、アルコールを含む液体またはゾルである。すなわち、コーティング層112は湿潤層である。コーティング材は、アルコールの他に、カルボキシビニルポリマー(CVP)や、グリセロール等の混合材を含む。なお、ここでは、カルボキシビニルポリマー105等の、カルボキシビニルポリマーを水酸化ナトリウムと化合した水溶性のアルカリ中和物のカルボマーナトリウムを所謂「カルボキシビニルポリマー」と称する。カルボキシビニルポリマーは、水に溶解すると増粘効果を示し、安定した粘度を有する。
【0037】
コーティング材に含まれるアルコールは、例えば、エタノールまたはメタノールである。また、コーティング材は、好ましくは、粘性を有するゾルである。コーティング材が粘性を有するゾルである場合、粘度の低い液体に比べてアルコールが揮発しにくいため、基材11の性質の経時変化が小さくなる。
【0038】
このように、コーティング層112がアルコールを含む湿潤層である場合、分類対象の液体に含まれるアミノ酸が、検出層111中のニンヒドリンに達する前にコーティング層112内を移動することができる。分類対象の液体のアミノ酸含有量が多いほど色素が多く生成されるため、液体接触部の発色が濃くなる。また、アミノ酸の移動によって、液体接触部における色むらが大きくなるとともに、液体接触部の縁部形状が大きく変化する。これらの変化を観察することにより、分類対象の液体を、アミノ酸含有量の多い第1グループと、アミノ酸含有量の少ない第2グループとに簡易に分類することができる。
【0039】
特に、分類対象の液体が動物の尿であり、アミノ酸含有量の多い健常動物の尿(第1グループ)と、アミノ酸含有量の少ない腎臓病動物の尿(第2グループ)とに分類する場合には、アミノ酸含有量が異なるだけでなく、粘度や比重も異なる。具体的には、アミノ酸含有量が多い健常動物の尿は、アミノ酸含有量が少ない腎臓病動物の尿よりも、その粘度や比重が大きい。このため、アミノ酸含有量の多い健常動物の尿は、コーティング層と混ざりにくく、検出層に含まれるニンヒドリンと接触する前に、縁部へ移動しやすい。これにより、滴下部の縁部において中央部よりも発色が濃くなったり、縁部が外側へ枝状に延びたりしやすい。このため、分類対象の液体が動物の尿であり、第1グループが健常動物の尿、第2グループが腎臓病動物の尿である場合、第1グループの液体と第2グループの液体とがアミノ酸含有量のみが異なる場合と比べて、第1グループと第2グループとの間における液体接触部における色むらや液体接触部の縁部形状の差が大きくなる。したがって、より明確に、第1グループと第2グループとを分類することができる。
【0040】
分類キット1は、販売時において、フレーム12に支持された検出層111と、密閉袋等の密閉容器内に収容されたコーティング材とに分けられていてもよい。その場合、ユーザがコーティング材を検出層111の表面に塗布することによって、基材11が完成する。あるいは、分類キット1は、コーティング材が塗布され完成された基材11が乾燥しないように密閉された状態で販売されてもよい。
【0041】
分類キット1を用いて液体の分類を行う際には、図1に示すように、基材11の表面(コーティング層112側の表面)に、判定対象となる液体をスポイト9等を用いて滴下する。すると、基材11上の液体の滴下部に青紫色のスポットが現れる。このスポットの発色の時間差により、液体を判定することができる。この判定は、目視によって行うことができる。また、この判定は、画像処理装置等を用いて行ってもよい。なお、基材11への液体の接触は、液体の滴下に限られず、液体を染み込ませた綿棒を押し当てる等のその他の方法によりなされてもよい。
【0042】
<1-2.基材についての実験結果>
ここで、本実施形態の基材11における滴下部の発色および形状の変化についての実験結果を参照する。図3は、検出層111および基材11に対して分類対象の液体を滴下した際の、滴下後1時間経過後および滴下後18時間経過後における滴下部を撮影したものである。
【0043】
実験条件は以下の通りである。
[検体:猫の尿]
第1グループ:健常猫、検体数9(A1~A9)
第2グループ:腎臓病猫、検体数9(B1~B9)
【0044】
[検体を滴下する基材]
CTなし:検出層111のみの基材(コーティング層112なし)
CTあり:検出層111上にコーティング層112あり(基材11)
なお、コーティング層112には、エタノール、カルボキシビニルポリマーおよびグリセロールを含む市販の除菌用アルコールジェルを用いた。
【0045】
[滴下後経過時間]
(a)滴下後1時間経過後
(b)滴下後18時間経過後
【0046】
図3の上部(a)に滴下後1時間経過後、下部(b)に滴下後18時間経過後の滴下部が示されている。また、図4の(a)、(b)それぞれについて、上から順に、CTなし/第2グループ、CTなし/第1グループ、CTあり/第2グループ、CTあり/第1グループの順に滴下部が示されている。
【0047】
まず、CTなし(コーティング層112の無い検出層111のみの基材)について、第1グループと第2グループとを比較する。
【0048】
第1グループは健常猫の尿であり、尿中のアミノ酸量は比較的多いと考えられる。一方、第2グループは腎臓病猫の尿であり、尿中のアミノ酸量は、健常猫よりも少ないと考えられる。このため、第1グループの滴下部は、第2グループの滴下部よりも発色が濃いことが予想される。
【0049】
これに対し、図3のいずれの条件においても、概ね第1グループの滴下部は、第2グループの滴下部よりも発色が濃い。このため、コーティング層112の有無にかかわらず、健常猫の尿と腎臓病猫の尿との間には、濃度に差があることが実証された。
【0050】
なお、第1グループの検体A9の発色は第1グループ平均よりも薄く、第2グループの検体B3の発色は第2グループ平均よりも濃いように見える。しかしながら、検体A9の発色の濃さは第2グループ平均よりは濃く、検体B3の発色は第1グループ平均よりは薄いように見えるため、個体差の範囲であるものと言える。
【0051】
続いて、第1グループおよび第2グループのそれぞれについて、滴下部に現れるスポットの濃度の経時変化について検討する。
【0052】
図3におけるCTなしの滴下部は、第1グループおよび第2グループの双方について、滴下部の発色および形状のいずれについても(a)と(b)との間において変化はほとんど見られない。すなわち、コーティング層112が無い場合、滴下後1時間経過後までに、滴下部の経時変化は概ね終了していることがわかる。
【0053】
これに対し、図3におけるCTありの第1グループについては、(a)に比べて(b)の方が滴下部の縁部の発色が濃くなっている。また、CTありの第2グループについても、(a)に比べて(b)の方が滴下部の発色が全体的に濃くなっている。すなわち、コーティング層112が有る場合、滴下後1時間経過後以降にも、滴下部の経時変化が生じていることがわかる。
【0054】
これより、検出層111の表面にコーティング層112を設けることにより、滴下部の経時変化が長時間生じることがわかった。
【0055】
また、図3において、CTありの第1グループと第2グループとを比較すると、(a)、(b)の両方において、第1グループでは滴下部の中央部に比べて縁部の発色が濃いのに対して、第2グループでは滴下部の中央部と縁部との発色の差がない。また、(a)、(b)の両方において、第1グループでは滴下部の縁部が、外側へ延びる複数の枝状の突起を有するのに対して、第2グループでは滴下部の縁部形状が明瞭でない。
【0056】
これは、湿潤なコーティング層112においては、コーティング層112を有さない乾いた検出層111と比べて、液体中のアミノ酸が移動しやすいためと考えられる。
【0057】
このような性質を利用して、液体を第1グループと第2グループとへ分類するにあたり、コーティング層112を有する基材11に対して液体を滴下し、滴下部の中央部と縁部との発色の有無と、滴下部の縁部形状とを判定基準とすることが適当であると言える。
【0058】
<1-3.分類キットを用いた分類処理>
次に、本実施形態の分類キット1を用いた分類処理について、図4を参照しつつ説明する。図4は、分類キット1を用いた分類処理の流れを示したフローチャートである。
【0059】
図1に示すように、分類キット1を用いた分類処理を行う場合、まず、ユーザは、分類対象となる液体を分類キット1の基材11の表面に滴下する(ステップS101)。このとき、液体を基材11のコーティング層112側の面に滴下する。
【0060】
その後、所定時間待機する(ステップS102)。これにより、時間経過とともに、液体中のアミノ酸と、検出層111中のニンヒドリンとが、コーティング層112を介して次第に反応する。その結果、滴下部に青紫色のスポットが現れるとともに、時間経過とともに、スポットの発色や形状の変化が生じる。
【0061】
スポットの発色の変化としては、スポット全体の濃淡の変化だけでなく、中央部と縁部との濃度差の変化が含まれる。また、スポットの形状の変化として、例えば、縁部形状の明瞭さの変化や、縁部形状の変化が含まれる。さらに、縁部形状の変化としては、例えば、縁部形状が滴下直後の液体形状(例えばほぼ円形)と比べてほぼ変化がない、縁部形状が均一に拡大する、あるいは、縁部形状が枝状に分岐して延びる、等が含まれる。
【0062】
本実施形態において、所定時間は、例えば、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、18時間などとしてよい。所定時間は、検出層111を構成する紙の種類や厚み、ニンヒドリン含有量、コーティング層112の組成等によって適宜選択し得る。
【0063】
所定時間経過後、ユーザは、基材11の液体の滴下部の変化に基づいて、液体を分類する(ステップS103)。具体的には、ユーザは、基材11の液体の滴下部を目視により確認し、滴下部の中央部と縁部との発色の差の有無と、滴下部の縁部形状とを確認する。
【0064】
ステップS103において、滴下部の中央部に比べて縁部の発色が濃いもの、および、滴下部の縁部が、外側へ延びる複数の枝状の突起を有するもの、の双方に該当する場合、液体が第1グループであると判定する。すなわち、分類対象の液体が尿である場合、当該尿は健常(非腎臓病)であると判定する。
【0065】
一方、ステップS103において、滴下部の中央部と縁部との発色の差が無いもの、および、滴下部の縁部形状が明瞭でないものの双方に該当する場合、液体が第2グループであると判定する。すなわち、分類対象の液体が尿である場合、当該尿は異常(腎臓病)であると判定する。
【0066】
また、滴下部の中央部に比べて縁部の発色が濃いもの、および、滴下部の縁部が、外側へ延びる複数の枝状の突起を有するもの、のいずれか一方のみに該当する場合、判定不能とする。また、このような場合に、当該尿は健常(非腎臓病)であると判定してもよい。
【0067】
また、ステップS103において、滴下部の発色の差と、滴下部の縁部形状のいずれか一方のみによって判定を行ってもよい。
【0068】
ステップS103の分類工程終了後、ユーザは、分類処理を終了するか否かを決定する(ステップS104)。
【0069】
ユーザが再度の分類判定を行うことを決定した場合(ステップS104:No)、再度所定時間の待機を行った後に(ステップS102)、再度分類工程(ステップS103)を行う。これにより、滴下部の経時変化がさらに進んだ状態において分類工程(ステップS103)を行うことができる。なお、2回目以降のステップS102における待機時間は、1回目のステップS102における待機時間と同じでなくてもよい。また、再度の分類判定を行う場合、前回の分類工程(ステップS103)からの滴下部の変化の有無を判断するために、分類工程(ステップS103)時に滴下部をカメラ等で撮影しておくことが好ましい。
【0070】
一方、ユーザが分類処理を終了すると決定した場合(ステップS104:Yes)、図4に示す分類処理が終了する。分類処理を終了する基準としては、例えば、ステップS103において明確に分類判定を行うことができたと思われる場合、あらかじめ1回のみ分類工程(ステップS103)を行うと決めていた場合、既に所定回数ステップS102~S103を繰り返した場合等が挙げられる。
【0071】
このように、分類キット1を用いることにより、分類したい液体を分類キット1に滴下することにより、簡易に液体を分類することができる。
【0072】
<2.第2実施形態>
<2-1.分類キットの概要>
図5は、第2実施形態に係る分類キット2の斜視図である。この分類キット2は、アミノ酸を含む液体を、アミノ酸含有量の大きい第1グループと、アミノ酸含有量の小さい第2グループとのどちらに属するかを判定し、液体を分類するための簡易キットである。この分類キット2を用いれば、例えば、猫等の動物の尿を、第1グループとして健常(腎臓病でない)と推定されるグループと、第2グループとして腎臓病と推定されるグループとのどちらに属するかを判定することができる。
【0073】
分類キット2は、第1基材21と、第2基材22と、フレーム23とを有する。第1基材21および第2基材22は、いずれも、薄い膜状であり、その表面が露出している。フレーム23は、第1基材21および第2基材22の縁部を支持する。これにより、第1基材21および第2基材22に皺が寄ったり、第1基材21および第2基材22が折れたりすることが抑制される。フレーム23は、例えば、厚紙で形成される。その場合、使用後の分類キット1は、可燃ゴミとして処分することができる。なお、フレーム23は、樹脂等のその他の材料で形成されてもよい。
【0074】
第1基材21は、ニンヒドリンを含有する第1検出層211のみからなる。一方、第2基材22は、図5中に断面を拡大して示すように、ニンヒドリンを含有する第2検出層221と、第2検出層221の表面を覆うコーティング層222とを有する。
【0075】
第1検出層211と第2検出層221とには、同じものが用いられる。第1検出層211および第2検出層221は、ろ紙等の薄い紙であって、ニンヒドリンを含有したものである。検出層111は、例えば、紙をニンヒドリン水溶液に浸漬後、乾燥して製造する。
【0076】
第2基材22のコーティング層222は、乾いた層である。コーティング層222は、糖類を含む。具体的には、コーティング層222は、例えば、スクロース層またはグルコース層である。本実施形態のコーティング層222は、スクロースまたはグルコースの水溶液を検出層211の表面にスプレー等により塗布後、乾燥して形成される。
【0077】
このように、ニンヒドリンを含む第2検出層221の表面を、糖類を含む乾いたコーティング層222で覆うことにより、コーティングの無い第1基材21に比べて、分類対象となる液体中に含まれるアミノ酸とニンヒドリンとの反応速度が遅くなる。したがって、液体のアミノ酸含有量が小さいほど、第1基材21と第2基材22との発色の濃さの差が大きくなる。
【0078】
分類キット2を用いて液体の分類を行う際には、第1基材21の表面と第2基材22の表面との双方に、判定対象となる液体を接触させる。
【0079】
このとき、第1基材21および第2基材22に液体を数滴滴下してもよいし、第1基材21および第2基材22を含む分類キット2全体が液体中に浸漬してもよい。なお、分類キット2全体が液体中に浸漬するような使用方法を行う場合には、第1基材21および第2基材22の裏面に液体が接触しないように、第1基材21および第2基材22の裏面に防水加工をすることが好ましい。
【0080】
例えば、分類キット2を用いて猫の尿の分類を行う際には、猫のトイレ内に分類キット2を載置し、猫が分類キット2に対して排尿することによって第1基材21の表面と第2基材22の表面とに尿を接触させる。
【0081】
第1基材21の表面と第2基材22の表面とに、判定対象となる液体が接触すると、第1基材21および第2基材22のそれぞれについて、液体との接触箇所が次第に青紫色に変色する。第1基材21における接触箇所の発色と、第2基材22における接触箇所の発色とには、コーティング層222の有無の差により、発色に時間差が生じる。この接触箇所の発色の時間差により、液体を判定することができる。この判定は、目視によって行うことができる。また、この判定は、画像処理装置等を用いて行ってもよい。
【0082】
<2-2.第1基材および第2基材についての実験結果>
ここで、本実施形態の第1基材21および第2基材22における液体接触部の発色の変化について、実験1および実験2の2つの実験結果を参照する。
【0083】
<実験1>
図6は、第1基材21および第2基材22のそれぞれに対して分類対象の液体を滴下した際の、滴下後30分および滴下後1時間経過後における滴下部を撮影したものである。
【0084】
実験条件は以下の通りである。
[検体:猫の尿]
第1グループ:健常猫、検体数8(C1~C8)
第2グループ:腎臓病猫、検体数8(D1~D8)
【0085】
[検体を滴下する基材]
第1基材21:第1検出層211のみの基材(コーティング層なし)
第2基材22:第2検出層221上にコーティング層222あり
なお、コーティング層222は、20%グルコース水溶液を噴霧し乾燥したものである。
【0086】
[滴下後経過時間]
(a)滴下後30分経過後
(b)滴下後1時間経過後
【0087】
図6の上部(a)に滴下後30分経過後、下部(b)に滴下後1時間経過後の滴下部が示されている。また、図6の(a)、(b)それぞれについて、上から順に、第1基材/第1グループ、第1基材/第2グループ、第2基材/第1グループ、第2基材/第2グループの順に滴下部が示されている。
【0088】
まず、第1グループと第2グループとについて、他の条件が同じ場合(同じ基材および同じ経過時間)を比較する。
【0089】
第1グループは健常猫の尿であり、尿中のアミノ酸量は比較的多いと考えられる。一方、第2グループは腎臓病猫の尿であり、尿中のアミノ酸量は、健常猫よりも少ないと考えられる。このため、第1グループの滴下部は、第2グループの滴下部よりも発色が濃いことが予想される。
【0090】
これに対し、図6のいずれの条件(基材および経過時間)においても、第1グループの滴下部は、第2グループの滴下部よりも発色が濃い。このため、コーティング層222の有無にかかわらず、健常猫の尿と腎臓病猫の尿との間には、濃度に差があることが実証された。
【0091】
次に、滴下部に現れるスポットの濃度の経時変化について検討する。図6において、(a)と(b)とを比較すると、第1基材/第1グループについては滴下部の発色の変化がほとんど無い、あるいはごく僅かな変化がある。これに対して、第1基材/第2グループ、第2基材/第1グループおよび第2基材/第2グループは、いずれも、(b)の方が滴下部の発色が全体的に濃くなっている。これより、滴下後30分経過後以降にも、いずれの条件においても滴下部の経時変化が生じていることがわかる。
【0092】
続いて、第1基材21と第2基材22との発色の差について、他の条件が同じ場合(同じ検体および同じ経過時間)を比較する。
【0093】
第1グループの検体C1~C8では、(a)および(b)の双方について、第1基材21の方が第2基材22よりも発色が鮮明であるものの、第1基材21、第2基材22のどちらにおいても滴下部にくっきりと明瞭な発色が認められる。
【0094】
第2グループの検体D1~D8では概ね、(a)および(b)の双方について、第1基材21では、第1グループよりも発色が薄いものの、滴下部に明瞭な発色が認められる。特に、(b)については(a)よりも発色が濃く、より鮮明に発色している。なお、検体D1については第1基材21においても発色がかなり薄いが、個体差によるものである。また、第2グループの検体D1~D8の(a)および(b)の双方について、第2基材22では、滴下部にごく僅かにしか発色が認められない。
【0095】
このため、分類キット2に第1グループの液体を接触させた場合には、第1基材21および第2基材22の双方が明らかに発色する。これに対し、分類キット2に第2グループの液体を接触させた場合には第1基材21に発色が認められ、第2基材22には発色がほとんど認められない。
【0096】
したがって、液体を第1グループと第2グループとへ分類するにあたり、第1基材21および第2基材22の双方に液体を接触させ、第1基材21の発色と第2基材22の発色との差を判定基準とすることが適当であると言える。
【0097】
<実験2>
図7は、第1基材21および第2基材22のそれぞれに対して分類対象の液体を滴下した際の、滴下後30分、滴下後2時間、滴下後3時間、滴下後5時間、滴下後8時間、滴下後12時間、および滴下後24時間経過後における滴下部を撮影したものである。
【0098】
実験条件は以下の通りである。
[検体:猫の尿]
第1グループ:健常猫、検体数1(E1)
第2グループ:腎臓病猫、検体数1(F1)
【0099】
[検体を滴下する基材]
第1基材21:第1検出層211のみの基材(コーティング層なし)
第2基材22:第2検出層221上にコーティング層222あり
なお、コーティング層222は、20%スクロース水溶液の噴霧と乾燥とを2回繰り返したものである。
【0100】
[滴下後経過時間]
(a)滴下後30分経過後
(b)滴下後2時間経過後
(c)滴下後3時間経過後
(d)滴下後5時間経過後
(e)滴下後8時間経過後
(f)滴下後12時間経過後
(g)滴下後24時間経過後
【0101】
図7の各経過時間(a)~(g)のそれぞれについて、上段に第1グループ、下段に第2グループ、左側に第1基材21、右側に第2基材22が示されている。上記の実験1では、コーティング層222の作成時に、糖類水溶液の噴霧および乾燥を1回行っているのに対し、この実験2では、糖類水溶液の噴霧および乾燥を2回行っている。このため、第2基材22におけるニンヒドリン反応の速度が低下している。
【0102】
図7の例では、(a)~(c)の滴下後経過時間が3時間以下では、第1グループの検体においても第2基材22における発色が小さく、第1グループと第2グループとの差がわかりにくい。すなわち、滴下後経過時間が3時間以下では、第1グループと第2グループとの分類を適切に行うことができない。
【0103】
一方、(d)~(g)の滴下後経過時間が5時間~24時間について、第1グループの検体では第1基材21および第2基材22の双方において滴下部が明瞭に発色しているのに対し、第2グループの検体では第1基材21において滴下部の明瞭な発色が見られる一方、第2基材22において滴下部の発色はほとんど無い。このため、滴下後経過時間が5時間~24時間の長い期間において、第1グループと第2グループとの分類を適切に行うことができる。
【0104】
なお、滴下後経過時間を24時間を超えて長時間経過した場合には、第2基材22における発色が十分に進行し、第1基材21における滴下部の発色との発色の差が小さくなる。このため、滴下後経過時間が大幅に長くなった場合には、第1グループと第2グループとの分類を適切に行うことができなくなると考えられる。
【0105】
このように、コーティング層222に用いる糖類水溶液の糖類の種類および濃度や、コーティング層222形成時の糖類水溶液の噴霧および乾燥の回数といったコーティング層222の条件を調整することにより、発色の反応速度を調整することができる。例えば、分類キット2へ液体接触後短時間で分類を行いたい場合には、糖類水溶液の濃度を小さくしたり、コーティング回数を減らせばよい。また、分類キット2における分類を適切に行うことができる期間を長くしたい場合には、糖類水溶液の濃度を大きくしたり、コーティング回数を増やせばよい。なお、その場合、分類キット2への液体接触後、分類を適切に行うことができる期間まで比較的長時間待機をする必要が生じる。
【0106】
<2-3.分類キットを用いた分類処理>
次に、本実施形態の分類キット2を用いた分類処理について、図8を参照しつつ説明する。図8は、猫の尿を分類する際の分類キット2を用いた分類処理の流れを示したフローチャートである。
【0107】
図8に示すように、分類キット2を用いた猫の尿の分類処理を行う場合、まず、猫のトイレに分類キット2をセットする(ステップS201)。このとき、第1基材21および第2基材22の表面側に猫の尿が付着しやすい位置に分類キット2をセットする。そして、しばらく時間が経過した後、分類キット2の第1基材21および第2基材22に猫の尿が付着していることを確認する(ステップS202)。
【0108】
その後、ユーザは、分類を適切に行うことができる期間中に、液体を分類する(ステップS203)。具体的には、視認によって分類を行う場合、ユーザは、第1基材21の液体付着部と第2基材22の液体付着部との発色を比較する。
【0109】
ステップS203において、第1基材21の液体付着部と、第2基材22の液体付着部とがいずれも明瞭に発色している場合、液体が第1グループであると判定する。すなわち、分類対象の液体が尿である場合、当該尿は健常(非腎臓病)であると判定する。
【0110】
一方、ステップS203において、第1基材21の液体付着部が明瞭に発色しており、かつ、第2基材22の液体付着部の発色が無いまたは僅かである場合、液体が第2グループであると判定する。すなわち、分類対象の液体が尿である場合、当該尿は異常(腎臓病)であると判定する。
【0111】
ステップS203の分類工程終了後、ユーザは、分類処理を終了するか否かを決定する(ステップS204)。
【0112】
ユーザが再度の分類判定を行うことを決定した場合(ステップS204:No)、所定時間の待機を行った後に(ステップS205)、再度分類工程(ステップS203)を行う。これにより、付着部の経時変化がさらに進んだ状態において分類工程(ステップS203)を行うことができる。分類処理を再度行う基準としては、例えば、第1基材21における発色が不十分である場合、液体付着時間が不明であるために分類を適切に行うことができる期間に達しているかが不明である場合が挙げられる。
【0113】
一方、ユーザが分類処理を終了すると決定した場合(ステップS204:Yes)、図8に示す分類処理が終了する。分類処理を終了する基準としては、例えば、分類を適切に行うことができる期間に分類工程を行ったことが明らかである場合、所定回数ステップS253,S203を繰り返した場合等が挙げられる。
【0114】
このように、分類キット2を用いることにより、分類したい液体を分類キット2に付着させることにより、簡易に液体を分類することができる。
【0115】
<3.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0116】
上記の実施形態では、分類工程を目視によりユーザが行ったが、本発明はこれに限られない。分類キットを撮影した画像を用いて、画像処理によって目視と同様の判定を行う画像処理装置が用いられてもよい。
【0117】
また、上記の実施形態では、分類工程をユーザが行ったが、本発明はこれに限られない。分類工程を第三者が行ってもよい。例えば、事業者による遠隔分類事業として、ユーザが分類対象の液体が接触したキットをスマートフォン等で撮影し、ユーザから事業者の有する解析サーバへインターネットを介して撮影画像を送付し、事業者が目視または画像処理によって液体の分類を行ってもよい。この場合、ユーザは、店舗でキットを購入しても良いし、事業者からユーザへキットが郵送等により送付されてもよい。このようにすれば、ユーザが自ら正確に分類処理を行うのが困難な場合であっても、分類処理に慣れた事業者による分類を行ったり、画像処理による視認よりも正確な分類を行ったりすることができる。
【0118】
また、例えば、撮影画像や事業者による分類結果を、郵送またはインターネットを介して専門医や研究者に送付し、助言等が得られるオンデマンドヘルスケア事業を行ってもよい。これにより、分類処理を行うだけでなく、分類結果を発展的に利用することができる。
【0119】
また、上記の実施形態では、分類対象の液体の例として猫の尿を挙げたが、本発明はこれに限られない。分類対象の液体は、猫以外の非ヒト動物の尿であってもよい。また、分類対象の液体は、アミノ酸を含む飲料など、アミノ酸を含む液体であればよい。
【0120】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 分類キット
2 分類キット
11 基材
21 第1基材
22 第2基材
111 検出層
112 コーティング層
211 第1検出層
221 第2検出層
222 コーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8