(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179756
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0637 20230101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q10/0637
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098874
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】513013425
【氏名又は名称】山下 久知
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 久知
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】事業戦略立案業務と知的財産関連業務とをシームレスに遂行することのできる情報処理装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置は、複数の事業戦略についての成否に関する説明変数である入力パラメータと事業戦略の成功可能性を示す目的変数とを含むデータセットを教師データとして機械学習をすることによって得た学習済みモデルに対し、評価対象の事業戦略に関する入力パラメータを入力し、当該事業戦略の成功可能性を示す評価値を含んだ評価結果を得る事業戦略評価部と、事業戦略評価部が出力する評価結果に基づいて、知的財産権データベースに照会して評価対象の事業戦略に関連のある既存の特許を抽出し、抽出した特許について価値を表す評価値を算出する知的財産権分析部とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の事業戦略についての成否に関する説明変数である入力パラメータと事業戦略の成功可能性を示す目的変数とを含むデータセットを教師データとして機械学習をすることによって得た学習済みモデルに対し、評価対象の事業戦略に関する前記入力パラメータを入力し、当該事業戦略の成功可能性を示す評価値を含んだ評価結果を得る事業戦略評価部と、
前記事業戦略評価部が出力する評価結果に基づいて、知的財産権データベースに照会して評価対象の前記事業戦略に関連のある既存の特許を抽出し、抽出した特許について取得した場合の価値及び/又は“非財務情報・財務情報の特定の項目について改善される戦略事項”に関連して企業価値向上を実現する確率を表す評価値を算出する知的財産権分析部とを備える情報処理装置。
【請求項2】
前記事業戦略評価部は、ポジショニング戦略における軸を評価結果に含め、
前記知的財産権分析部は、前記ポジショニング戦略における軸と関連する用語または特許分類を利用して前記知的財産権データベースに照会を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記知的財産権分析部は、抽出した特許について抽出した特許のIPランドスケープにおける軸および座標を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記知的財産権分析部は、抽出した特許のIPランドスケープにおける座標に基づいて、特許化する価値の高い領域を特定することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記知的財産権分析部は、特許化する価値の高い領域の中で競合他社の特許が希薄な空白地帯を特定することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
権利化する価値の高い特許文書の案文を生成して出力する特許文書起案部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータを請求項1または2に記載の情報処理装置として機能させる事業戦略評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事業戦略立案業務と知的財産関連業務とをシームレスに遂行することのできる情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの企業では、大学、ビジネススクール、コンサルテーション会社などの提唱する戦略立案手法を用いて、事業戦略を立案している。企業においては、的確な事業戦略を構築することが、企業の命運を左右するものであり、現状分析あるいは将来予測に基づいていかに的確な事業戦略を策定するかが普遍的な重要課題である。
【0003】
多くの場合、戦略立案手法は高度な知識や技術を要するものであるため、事業戦略の立案はコンサルテーション会社のコンサルタント等が対価を徴収しつつサービスとして提供されており、企業内の担当者等が手軽に事業戦略を立案することは容易ではない。このような状況に鑑み、発明者等は、戦略立案者が迅速に質の高い戦略を立案でき、戦略案採否判定者が、戦略案の実行採否の判断の精度を高めることができる事業戦略立案支援装置を提案した(特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に記載の事業戦略立案支援装置では、複数の事業戦略についての成否に関する説明変数である入力パラメータと事業戦略の成功可能性を示す目的変数とを含むデータセットを教師データとして機械学習をすることによって得た学習済みモデルを用いて、ポジショニング戦略において有意な(競合他社との差別化のために重要度の高い)パラメータを探索して出力することを可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように特許文献1に記載の技術等により特定した競合他社との差別化のために重要度の高いパラメータを事業戦略に反映させる過程において、当該パラメータに関連する特許等の知的財産権について、自社での権利化や他社の権利回避等の観点での検討が非常に重要である。
【0007】
差別化のために重要度の高いパラメータの特定を含む事業戦略立案業務と、知的財産権の権利化や他社権利の評価といった知的財産関連業務とは、それぞれ専門性の高い業務であり、個々の企業内において両方の業務を遂行可能な人材を揃えるのは容易でない場合がある。また、それぞれの業務を十分に遂行可能な人材が揃ったとしても、事業戦略立案業務で見つけた重要度の高いパラメータについて、知的財産権の観点で円滑に検討を進めるのは容易でない場合がある。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、事業戦略立案業務と知的財産関連業務とをシームレスに遂行することのできる情報処理装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく、本発明に係る情報処理装置は、複数の事業戦略についての成否に関する説明変数である入力パラメータと事業戦略の成功可能性を示す目的変数とを含むデータセットを教師データとして機械学習をすることによって得た学習済みモデルに対し、評価対象の事業戦略に関する入力パラメータを入力し、当該事業戦略の成功可能性を示す評価値を含んだ評価結果を得る事業戦略評価部と、事業戦略評価部が出力する評価結果に基づいて、知的財産権データベースに照会して評価対象の事業戦略に関連のある既存の特許を抽出し、抽出した特許について取得した場合の価値及び/又は“非財務情報・財務情報の特定の項目について改善される戦略事項”に関連して企業価値向上を実現する確率を表す評価値を算出する知的財産権分析部とを備える。
【0010】
本発明では、事業戦略評価部は、ポジショニング戦略における軸を評価結果に含めるとよく、知的財産権分析部は、ポジショニング戦略における軸と関連する用語または特許分類を利用して知的財産権データベースに照会を行うとよい。
【0011】
本発明では、知的財産権分析部は、抽出した特許について抽出した特許のIPランドスケープにおける軸および座標を出力するとよい。
【0012】
本発明では、知的財産権分析部は、抽出した特許のIPランドスケープにおける座標に基づいて、特許化する価値の高い領域を特定するとよく、特許化する価値の高い領域の中で競合他社の特許が希薄な空白地帯を特定するとさらによい。
【0013】
本発明に係る情報処理装置は、権利化する価値の高い特許文書の案文を生成して出力する特許文書起案部をさらに備えるとよい。
【0014】
本発明の他の例に係るプログラムは、コンピュータを上記何れかの情報処理装置として機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】情報処理装置1を、情報処理装置1に接続される機器とともに示す模式図である。
【
図2】情報処理装置1のハードウェア構成を示す模式図である。
【
図4】評価結果の提示例(スコア)を示す図である。
【
図5】評価結果の提示例(ポジショニング戦略における座標)を示す図である。
【
図6】情報処理装置1の運用プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る情報処理装置1について説明する。
【0017】
〔システムの構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理装置1を、ネットワークNWを介して情報処理装置1に接続される知的財産権データベース4、外部情報サーバ5、およびユーザ端末6とともに示す模式図である。情報処理装置1は、ユーザの入力する情報や市場、経営環境等の情報に基づいて、ユーザが事象戦略を立案するのを支援するとともに、ユーザの事業戦略に寄与する知的財産権(例えば特許権、実用新案権等)に関する情報を提供する。知的財産権に関する情報としては、例えば、事業戦略に関連し得る既存の特許の情報、パテントマップやIPランドスケープにおける分析において知的財産権を取得する価値の高い上の領域、特許出願用の申請書類の草案(明細書案)等が含まれる。
【0018】
知的財産権データベース4は、情報処理装置1が利用する知的財産権に関するデータベースである。知的財産権データベース4は、特許情報プラットフォーム(J-Platpat)のような公的なデータベースであってもよいし、商用のデータベースであってもよい。独自に知的財産権に関するデータを蓄積したものであってもよい。情報処理装置1は、キーワード、特許分類等を用いて知的財産権データベース4に知的財産権に関する情報を照会する。
【0019】
外部情報サーバ5は、情報処理装置1が利用する外部環境等を示す情報を提供する外部装置である。情報処理装置1は、外部情報サーバ5から、例えば、ニュース、マーケット情報、企業の決算情報、法改正情報等を取得できるように構成される。
【0020】
ユーザ端末6は、情報処理装置1の利用者が使用する端末装置である。ユーザ端末6は、例えば、ネットワークNWを介して情報処理装置1と通信することができるコンピュータ、携帯情報端末等とするとよい。利用者はユーザ端末6を用いて情報処理装置1に評価を実行させるための操作や情報を入力したり、情報処理装置1から評価結果や通知等を受け取る。
〔情報処理装置のハードウェア構成〕
【0021】
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成を示す模式図である。情報処理装置1は、例えばコンピュータとして実現される。すなわち、情報処理装置1は、プロセッサ101、RAM102、HDD103、グラフィック処理部104、入力インタフェース105、およびネットワークインターフェース106を備える。なお、
図2は情報処理装置1がいわゆるスタンドアローンタイプとして1台のコンピュータで実現される例を示したものであるが、LAN等のネットワーク回線を介して相互に接続された複数のコンピュータ(例えばLAN接続された1台のサーバコンピュータと複数のクライアントコンピュータ)が協働する態様によって情報処理装置1を実現することもできる。
【0022】
情報処理装置1は、プロセッサ101によって装置全体が制御されている。プロセッサ101は、マルチプロセッサであってもよい。プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはPLD(Programmable Logic Device)である。また、プロセッサ101は、CPU、MPU、DSP、ASIC、PLDのうちの2以上の要素の組み合わせであってもよい。
【0023】
RAM102(Random Access Memory)は、情報処理装置1の主記憶装置として使用される。RAM102には、プロセッサ101に実行させるOS(Operating System)プログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、プロセッサ101による処理に必要な各種データが格納される。
【0024】
HDD103(Hard Disk Drive)は、情報処理装置1の補助記憶装置として使用される。HDD103には、OSプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、補助記憶装置としては、SSD(Solid State Drive)などの他の種類の不揮発性記憶装置を使用することもできる。
【0025】
グラフィック処理部104には、表示装置104aが接続されている。グラフィック処理部104は、プロセッサ101からの命令に従って、画像を表示装置104aの画面に表示させる。表示装置104aとしては、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどが用いられる。
【0026】
入力インタフェース105には、入力装置105aが接続されている。入力インタフェース105は、入力装置105aから出力される信号をプロセッサ101に送信する。入力装置105aとしては、キーボードやポインティングデバイスなどがある。ポインティングデバイスとしては、マウス、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0027】
ネットワークインターフェース106は、ネットワークNWを介した外部機器との通信を実現する。ネットワークインターフェース106によるネットワークNWを介した通信は有線通信であってもよいし無線通信であってもよい。なお、
図1に示すようにネットワークには知的財産権データベース4、外部情報サーバ5、ユーザ端末6等が接続されており、情報処理装置1はネットワークNWを介してこれらと通信を行うことができる。情報処理装置1は、入力インタフェース105を用いた入力に代えてユーザ端末から操作や情報の入力を受けるようにしてもよい。
【0028】
以上のようなハードウェア構成によって、情報処理装置1を実現することができる。
【0029】
〔情報処理装置1の機能ブロック〕
図3は情報処理装置1の機能ブロック図を示している。
情報処理装置1は、機械学習実行部11、事業戦略評価部12、評価結果提示部13、知的財産権分析部14、および特許文書起案部15を備える。これらの各機能ブロックは、上述の情報処理装置1のハードウェア構成におけるプロセッサ101が、RAM102やHDD103に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0030】
機械学習実行部11は、事業戦略を評価する学習済モデル(予測モデル)Mを生成する。学習済モデルMは、事業の成否(勝敗)について説明変数になり得る各種の情報を入力パラメータとし、事業の成否(勝敗)を出力とする。学習済モデルMの入力パラメータは、PESTLE(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)、Legal(法律)、Ecology(環境))の各観点での外部環境に関するパラメータ、自社を中心とした3C(Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社))に関するパラメータ、販売にあたっての4P(Product(製品・サービス)、Price(価格)、Place(立地・流通・販路)、Promotion(販促・広告))に関するパラメータ等、事業戦略の分析に利用される各種フレームワークにおける分析項目に対応したものを含むとよい。また、事業に適用される1つまたは複数の戦略モデル(例えば初期戦略、中盤戦略、スケール戦略の種類)を入力パラメータに含めるとよい。また、外部環境を表す情報を入力パラメータとして取り入れるべく、ニュース等の情報を入力パラメータに含めてもよい。また、これらのパラメータを次元圧縮して特徴量化したものを入力パラメータとしてもよい。具体的には、機械学習実行部11は、投資による事業価値最大化V=(現在時点での既存事業アセット+競争力の源泉(模倣できない優位性))A×(事業意思決定速度+人材スキル+Aとのシナジー戦略精度)Sの2乗をValueNet・PolicyNetのベースにして強化学習を行うとよい。
【0031】
また、学習済モデルMの出力(つまり評価結果)は、事業戦略の精度(事業が成功する(勝つ)可能性を示す尺度)を表す数値(スコア)、およびポジショニング戦略における軸(つまり着目するパラメータ)と当該軸における座標とするとよい。例えば、スコアは、学習済モデルMの出力を0から1までの数値とし、1に近いほど既存アセットとシナジーが起きて指数関数的な変化(成長)が発生し優位性の高いケイパビリティ・ポジショニングをとり非連続成長として成功する(勝つ)可能性が高く、0に近いほど失敗する(負ける)可能性が高いことを表すようにするとよい。
【0032】
また、ポジショニング戦略における座標を提示すべく、学習済モデルMは、ポジショニング戦略において有意な(つまり現在地から目的地への遷移や競合との差別化のために重要度の高い)複数の(例えば2つの)軸を探索して出力するとともに、出力された軸における現時点でとりうるポジショニング戦略の現在地、競合の位置、勝率の高い目的地等の座標を出力する。つまり、時流と自社アセットとのシナジーを生み、経済活動しての投資による事業化によりイノベーション(指数関数的な変化(成長)が発生する状態=シナジー)を実現する条件を提示する。現時点でとりうるポジショニング戦略の座標の現在地については、現状のPESTLE/3C/4Pによる特徴量から算出するとよい。軸の具体例としては、ポジショニング戦略において有意な軸として、学習済モデルMの入力パラメータの何れかを出力するとよい。
【0033】
機械学習実行部11は、過去及び現状の様々な事業モデルについての入力パラメータと事業の成否(成功した事業(勝ち)について値1、失敗した事業(負け)について値0)とを対応付けたデータセットを教師データとして、学習済モデルMの機械学習・再学習を実施する。
【0034】
学習済モデルMは、入力パラメータ(すなわち説明変数)と出力値(すなわち目的変数)との関係についての決定木を含んで構成されるとよく、学習済モデルMは、この決定木についての決定木学習を実施する。学習済モデルMは、特性の異なる複数の決定木を含んで構成されてもよく、複数の決定木の出力を多数決や平均を取ることで最終的な出力としてもよい。
【0035】
学習済モデルMが複数の決定木を含む場合には、個々の決定木(のいくつか)が、事業戦略の分析に利用される各種フレームワークに対応するようにするとよい。例えば、学習済モデルMが、3C分析に対応するパラメータを入力とする決定木、4P分析に対応するパラメータを入力とする決定木、SWOT分析に対応するパラメータを入力とする決定木等を備えるように構成し、これらの決定木の出力を総合した値を学習済モデルMの最終出力とするとよい。学習済モデルMは、個々の決定木の出力値についても、その決定木の情報と紐づけて出力するとよい。
【0036】
学習済モデルMは、予測結果や推定結果に至るプロセスが人間によって説明・理解可能なモデル(いわゆるXAI(Explainable AI))とすることが好ましい。上述の決定木を含む構成は人間によって予測結果や推定結果に至るプロセスが人間によって説明・理解可能なモデルの一例である。
【0037】
事業戦略評価部12は、機械学習実行部11が生成した学習済みモデルMに対し、評価対象の事業戦略(事業計画)に関する各種入力パラメータ(すなわち、学習に用いたものと同種の入力パラメータ)を入力することで、当該事業戦略に対する評価結果を得る。なお、学習済みモデルMに入力する当該事業戦略に関する入力パラメータは、学習に用いた全ての種類を網羅する必要はなく、一部のパラメータが欠けていても構わない。欠けている入力パラメータについては、事業戦略評価部12が補完して評価を実行するとよい。例えば、事業戦略評価部12は、欠けている入力パラメータについて予め定められた所定値(例えば、業界の平均値等)を用いることとしてもよいし、ランダムに値を決定するようにしてもよい。
【0038】
評価結果提示部13は、事業戦略評価部12が入力パラメータを学習済モデルMに入力することによって得た評価結果をユーザに提示する。評価結果提示部13は、例えば
図4に示すように、総合的な評価値と、事業戦略のフレームワークに応じた複数の中間的な評価値とを、評価対象の事業戦略についての評価結果としてユーザに提示するとよい。学習済モデルMが、事業戦略の分析に利用される各種フレームワークに対応した複数の評価値を出力する場合、評価結果提示部13は、各種フレームワークの評価値を、コンサルテーション会社が事業戦略の評価を実施する際に検討を進める標準的な順に並べて中間的な評価値として提示するとよい。このようにすれば、ユーザは事業戦略の検討がどの程度まで進んでいるかを一見して認識することができる。また、評価結果提示部13は、評価結果に影響力の高い入力パラメータ(説明変数)、評価値を向上するために改善・変更すべき入力パラメータ(評価結果が低く算出される主要因となっている説明変数)とその変更の内容(例えば、数値の増減、戦略モデルの変更案等)を評価値とともに提示するとよい。例えば、事業戦略評価部12が、個々の入力パラメータを変化させた場合の評価を行い、評価結果(総合的な評価値や中間的な評価値)の変化に基づいて、影響力の高い入力パラメータや改善すべき入力パラメータを把握するとよい。このようにすれば、戦略の弱点・改善点等を容易に把握することができる。また、事業戦略評価部12は、複数の入力パラメータについて順番に、入力パラメータを変化させた場合の評価を繰り返し実行し、個々の入力パラメータについて評価結果を最大化する最適値を特定するとよい。このとき、事業戦略評価部12は、1つの入力パラメータについて最適値が判明すると、以後に別の入力パラメータを変化させて行う評価では判明した最適値を使用するとよい。このように、順番に各入力パラメータの最適値を特定していくことで、最終的には全ての入力パラメータについての最適値と、最適な入力パラメータの組み合わせから期待できる評価結果を特定するとよい。そして、特定した各パラメータの最適値や評価結果を評価結果提示部13によりユーザに提示するとよい。
【0039】
また、
図5に示すように、評価結果提示部13は、学習済モデルMの出力に含まれる軸について、軸における現時点でとりうるポジショニング戦略の現在地の座標および勝率の高い目的地の座標をプロットしたグラフを提示するとよい。また、当該グラフには競合の位置も併せてプロットして提示するとよい。結果として、戦略次元が次元削減され、有意でかつ特徴的な因子が特定されたAS ISおよびTO BEのコンペティティブランドスケープが具体的に把握できるとよい。
【0040】
評価結果提示部13がユーザに評価結果を提示する方法としては、例えば、評価結果を表示装置104aに表示するとよい。また、評価結果提示部13は、評価結果を表示装置104aに表示する以外の方法で提示してもよい。例えば、評価結果提示部13は、評価結果を報告書として印刷したり、報告書の電子データをHDD103等の記憶手段に格納したりしてもよい。また、評価結果提示部13は、報告書を電子メール等によりユーザ端末6やその他の配信先に送付してもよい。
【0041】
知的財産権分析部14は、事業戦略評価部12が入力パラメータを学習済モデルMに入力することによって得た評価結果を使って、知的財産権データベース4に照会し、評価対象の事業戦略に関連のある既存の特許を抽出する。知的財産権分析部14は、例えば、事業戦略評価部12が評価結果として出力する「ポジショニング戦略における軸」またはこれに関連する用語をキーワードとして用いたり、「ポジショニング戦略における軸」と関連する特許分類を用いたりして、知的財産権データベース4に照会するとよい。知的財産権分析部14は、照会の結果として、例えば、特許番号、出願番号等の書誌的情報を出力する。
【0042】
さらに、知的財産権分析部14は、抽出した特許について取得した場合の価値及び/又は“非財務情報・財務情報の特定の項目について改善される戦略事項”に関連して企業価値向上を実現する確率を表す評価値を算出する。この評価値は、例えば、競合に対して優位になる改善の特許の特徴量を処理し、事業の成功への寄与が高そうな論点・課題への関連性をもとに点数化したものとするとよい。また、知的財産権分析部14は、評価対象の事業戦略についてのSWOT分析に基づき、シナジーを生む確率が高い特許を列挙し、購入すべき特許のリストとしてユーザに提示するとよい。その際、列挙する特許と当該特許の評価値とを対応付けて表示するとよい。
【0043】
知的財産権分析部14は、抽出した特許に関して、上記の評価値に代えて、あるいは加えて、事業との親和度の高さを示すスコア、特許取得確率、当該特許に価値が出る確率、IPランドスケープにおける座標(軸と座標)等を出力してもよい。
【0044】
知的財産権分析部14はさらに、抽出した特許のIPランドスケープにおける座標(軸と座標)を踏まえて、これから特許化する価値の高い領域を特定し、さらにその中で特許的な空白地帯(競合他社の特許が希薄な領域)を特定するとよい。
【0045】
特許文書起案部15は、知的財産権分析部14が特定した価値の高い領域や特許的な空白地帯を踏まえ、権利化する価値の高い特許文書の案文を生成して出力する。ここで、特許文書とは、特許出願に用いる明細書、特許請求の範囲、図面、および要約書を含む、特許の権利化プロセスに資する各種の文書を指す。特許文書起案部15は、例えば、知的財産権分析部14が特定した価値の高い領域や特許的な空白地帯に対応する用語を大規模自然言語処理モデルに入力することで、特許文書の案文を生成するとよい。特許文書起案部15は、知的財産権分析部14が特定した価値の高い領域や特許的な空白地帯に対応する用語に加え、評価対象の事業戦略についてのSWOT分析において強味(Strengths)や機会(Opportunities)とされた事項およびこれらに関連する自己のアセットに関する用語を大規模自然言語処理モデルに入力することで、特許文書の案文を生成すると特によい。特許文書起案部15が案文を生成する特許文書は、知的財産権分析部14が抽出した既存の特許の応用特許に関するものであってもよいし、知的財産権分析部14が抽出した既存の特許とは関連の無い新規ものであってもよい。
【0046】
続いて、情報処理装置1の動作を説明する。
図6は、情報処理装置1の運用プロセスを示すフローチャートである。
【0047】
運用開始時において、情報処理装置1は、機械学習実行部11により教師データのデータセットを多数入力した機械学習を行うことにより学習済モデルMを生成する(ステップS01)。なお、情報処理装置1は、新たな教師データのデータセットを追加して適宜再学習を実行してもよい。
【0048】
続いて、評価対象の事業戦略についての入力パラメータを入力し、事業戦略評価部12に入力パラメータに基づく評価を実行させ、事業戦略の評価結果を出力させる(ステップS02)。このとき一部または全部の入力パラメータをネットワークNWを介して外部情報サーバ5から取得してもよい。
【0049】
続いて、事業戦略評価部12が出力した評価結果を、評価結果提示部13が必要に応じてユーザに提示する(ステップS03)。なお、評価結果の確認する必要がない場合には、ステップS03を省略してもよい。その後、事業戦略評価部12が出力した評価結果を使って、知的財産権分析部14が知的財産権データベース4に照会し、評価対象の事業戦略に関連のある既存の特許を抽出する(ステップS04)。続いて、知的財産権分析部14は、抽出した特許について価値を表す評価値を算出する(ステップS05)。また、知的財産権分析部14は、購入すべき特許のリストを提示する(ステップS06)。また、知的財産権分析部14は、IPランドスケープ分析を実施する(ステップS07)。ここで実施するIPランドスケープ分析は、抽出した特許に関して評価の軸と座標を決定すること、決定した軸に関して特許化する価値の高い領域および特許的な空白地帯を特定すること、等を含む。
上述のステップS05~S07は、任意の順番で順次実施してもよいし、並列的に実施してもよい。
【0050】
続いて、特許文書起案部15が、特許文書の案文を生成して出力する(ステップS08)。このとき、特許文書起案部15は、ステップS07で特定した価値の高い領域や特許的な空白地帯を踏まえて権利化する価値の高い特許文書の案文を生成する。
【0051】
以上で説明した構成及び手順により、本実施形態の情報処理装置1およびコンピュータを当該情報処理装置として機能させるプログラムは事業戦略立案業務と知的財産関連業務とをシームレスに遂行することを可能とする。
【0052】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1 情報処理装置
11 機械学習実行部
12 事業戦略評価部
13 評価結果提示部
14 知的財産権分析部
15 特許文書起案部