(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179770
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】コネクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20241219BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01R13/629
H01R13/52 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098903
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 優太
(72)【発明者】
【氏名】永田 邦彰
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FB21
5E021FC31
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF08
5E087LL03
5E087LL13
5E087MM05
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】より適正にレバーの操作によってハウジングと相手側ハウジングとを嵌合させることができるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】コネクタ10は、端子12と、ハウジング11と、シール部材80と、リアホルダ90と、レバー30と、を備え、リアホルダ90には、ハウジング11に対して係止される係止部92が設けられ、ハウジング11には、係止部92が仮係止される仮係止部18と、係止部92が本係止される本係止部19と、が設けられ、レバー30には、リアホルダ90を押圧する押圧突起35が設けられ、ハウジング11を相手側ハウジング21に対して第1位置P1から第2位置P2へと移動させるレバー30の回転動作に伴って、係止部92と仮係止部18とが仮係止された状態のリアホルダ90が、押圧突起35によってハウジング11側に押圧され、係止部92と本係止部19とが本係止される。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタの相手側端子と電気的に接続される端子と、
前記端子を内部に保持し前記相手側コネクタの相手側ハウジングと軸線方向に沿って嵌合されるハウジングと、
前記ハウジングに対して前記軸線方向の前記相手側ハウジングとは反対側から装着され、電線が前記軸線方向に挿通される電線挿通孔が設けられ、前記電線の周囲をシールするシール部材と、
前記シール部材の前記ハウジングに対する前記軸線方向の前記相手側ハウジングとは反対側への移動を制限するリアホルダと、
前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの仮嵌合状態に対応する第1位置と、前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの完全嵌合状態に対応する第2位置との間で、前記ハウジングを前記相手側ハウジングに対して前記軸線方向に沿って相対移動可能に支持するレバーと、
を備え、
前記リアホルダには、前記ハウジングに対して係止される係止部が設けられ、
前記ハウジングには、前記係止部が仮係止される仮係止部と、前記係止部が本係止される本係止部と、が設けられ、
前記レバーには、前記リアホルダを前記軸線方向に沿って押圧する押圧突起が設けられ、
前記ハウジングを前記相手側ハウジングに対して前記第1位置から前記第2位置へと移動させる前記レバーの回転動作に伴って、前記係止部と前記仮係止部とが仮係止された状態の前記リアホルダが、前記押圧突起によって前記ハウジング側に押圧され、前記係止部と前記本係止部とが本係止されるよう構成される、
コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記軸線方向と交差する幅方向に沿って貫通する係止孔部が設けられた筒状部を有し、
前記仮係止部は、前記筒状部の前記軸線方向の端面に設けられ、
前記本係止部は、前記係止孔部の内面に設けられる、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
導電性を有する電線と、
前記電線の端末に設けられたコネクタと、を備え、
前記コネクタは、
相手側コネクタの相手側端子と電気的に接続される端子と、
前記端子を内部に保持し前記相手側コネクタの相手側ハウジングと軸線方向に沿って嵌合されるハウジングと、
前記ハウジングに対して前記軸線方向の前記相手側ハウジングとは反対側から装着され、前記電線が前記軸線方向に挿通される電線挿通孔が設けられ、前記電線の周囲をシールするシール部材と、
前記シール部材の前記ハウジングに対する前記軸線方向の前記相手側ハウジングとは反対側への移動を制限するリアホルダと、
前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの仮嵌合状態に対応する第1位置と、前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの完全嵌合状態に対応する第2位置との間で、前記ハウジングを前記相手側ハウジングに対して前記軸線方向に沿って相対移動可能に支持するレバーと、
を備え、
前記リアホルダには、前記ハウジングに対して係止される係止部が設けられ、
前記ハウジングには、前記係止部が仮係止される仮係止部と、前記係止部が本係止される本係止部と、が設けられ、
前記レバーには、前記リアホルダを前記軸線方向に沿って押圧する押圧突起が設けられ、
前記ハウジングを前記相手側ハウジングに対して前記第1位置から前記第2位置へと移動させる前記レバーの回転動作に伴って、前記係止部と前記仮係止部とが仮係止された状態の前記リアホルダが、前記押圧突起によって前記ハウジング側に押圧され、前記係止部と前記本係止部とが本係止されるよう構成される、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、相手側コネクタの相手側端子と電気的に接続される端子と、端子を内部に保持し相手側コネクタの相手側ハウジングと軸線方向に沿って嵌合されるハウジングと、ハウジングに装着されるシール部材と、シール部材の軸線方向に沿った移動を制限するリアホルダと、ハウジングと相手側ハウジングとの仮嵌合状態に対応する第1位置と、ハウジングと相手側ハウジングとの完全嵌合状態に対応する第2位置との間で、ハウジングを相手側ハウジングに対して軸線方向に沿って相対移動可能に支持するレバーと、を備えたコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のコネクタでは、例えば、レバーの操作によるハウジングと相手側ハウジングとの嵌合作業の作業性向上の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、より適正にレバーの操作によってハウジングと相手側ハウジングとを嵌合させることができるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、相手側コネクタの相手側端子と電気的に接続される端子と、前記端子を内部に保持し前記相手側コネクタの相手側ハウジングと軸線方向に沿って嵌合されるハウジングと、前記ハウジングに対して前記軸線方向の前記相手側ハウジングとは反対側から装着され、電線が前記軸線方向に挿通される電線挿通孔が設けられ、前記電線の周囲をシールするシール部材と、前記シール部材の前記ハウジングに対する前記軸線方向の前記相手側ハウジングとは反対側への移動を制限するリアホルダと、前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの仮嵌合状態に対応する第1位置と、前記ハウジングと前記相手側ハウジングとの完全嵌合状態に対応する第2位置との間で、前記ハウジングを前記相手側ハウジングに対して前記軸線方向に沿って相対移動可能に支持するレバーと、を備え、前記リアホルダには、前記ハウジングに対して係止される係止部が設けられ、前記ハウジングには、前記係止部が仮係止される仮係止部と、前記係止部が本係止される本係止部と、が設けられ、前記レバーには、前記リアホルダを前記軸線方向に沿って押圧する押圧突起が設けられ、前記ハウジングを前記相手側ハウジングに対して前記第1位置から前記第2位置へと移動させる前記レバーの回転動作に伴って、前記係止部と前記仮係止部とが仮係止された状態の前記リアホルダが、前記押圧突起によって前記ハウジング側に押圧され、前記係止部と前記本係止部とが本係止されるよう構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタおよびワイヤハーネスでは、ハウジングを相手側ハウジングに対して第1位置から第2位置へと移動させるレバーの回転動作に伴って、係止部と仮係止部とが仮係止された状態のリアホルダが、押圧突起によってハウジング側に押圧され、係止部と本係止部とが本係止されるよう構成される。この構成により、コネクタおよびワイヤハーネスは、例えば、レバーの回転によって、ハウジングを相手側ハウジングに対して仮嵌合状態に対応する第1位置から完全嵌合状態に対応する第2位置へと移動させる作業工程と、リアホルダをハウジング側に押し込んでシール部材を圧縮させる作業工程と、を同時に行うことができる。この結果、コネクタおよびワイヤハーネスは、より適正にレバーの操作によってハウジングと相手側ハウジングとを嵌合させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコネクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るコネクタを含むコネクタ装置の例示的な分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るコネクタの例示的な斜視図であって、ハウジングが第1位置に位置された状態の図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るコネクタの例示的な斜視図であって、ハウジングが第1位置と第2位置との間の第1経由位置に位置された状態の図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るコネクタの例示的な斜視図であって、ハウジングが第1位置と第2位置との間の第2経由位置に位置された状態の図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るコネクタの例示的な斜視図であって、ハウジングが第2位置に位置された状態の図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るコネクタのレバーの例示的な斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るコネクタのレバーの例示的な断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るコネクタのレバーにおける押圧突起の近傍の例示的な断面図であって、ハウジングが第1位置と第2位置との間の第1経由位置に位置された状態の図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るコネクタのレバーにおける押圧突起の近傍の例示的な断面図であって、ハウジングが第1位置と第2位置との間の第2経由位置に位置された状態の図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るコネクタのレバーにおける押圧突起の近傍の例示的な断面図であって、ハウジングが第2位置に位置された状態の図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るコネクタのリアホルダにおける係止部の近傍の例示的な断面図であって、ハウジングが第1位置と第2位置との間の第1経由位置に位置された状態の図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るコネクタのリアホルダにおける係止部の近傍の例示的な断面図であって、ハウジングが第1位置と第2位置との間の第2経由位置に位置された状態の図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係るコネクタのリアホルダにおける係止部の近傍の例示的な断面図であって、ハウジングが第2位置に位置された状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るコネクタ10が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図である。
図1に示される本実施形態のコネクタ10は、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ10等で当該複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、例えば、導電性を有する複数の電線Wと、複数の電線Wの端末に設けられるコネクタ10と、コネクタ10と電気的かつ機械的に接続される相手側コネクタ20と、を備えている。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、プロテクタや、固定具等を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、および第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、コネクタ10の奥行方向(前後方向)、コネクタ10と相手側コネクタ20との挿抜方向(嵌合方向)、電線Wの延在方向、コネクタ10に対する電線Wの挿通方向等に相当する。高さ方向Zは、典型的には、コネクタ10の厚さ方向(上下方向)等に相当する。幅方向Yは、典型的には、コネクタ10の幅方向(左右方向)等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、電線Wがコネクタ10に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
電線Wは、例えば、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆W2と、を含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。本実施形態の導体部W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線であるが、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0013】
電線Wは、それぞれ軸線方向Xに沿って線状に延在し、軸線方向X(延在方向)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。また、電線Wは、例えば、導体部W1の断面形状(軸線方向Xと交差する断面形状)が略円形状、絶縁被覆W2の断面形状が略円環形状に形成されており、全体として略円形状の断面形状に形成される。電線Wは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆W2が剥ぎ取られており、当該絶縁被覆W2から露出している導体部W1に後述する端子12(
図2参照)が圧着されている。
【0014】
図2は、コネクタ10を含むコネクタ装置1の分解斜視図である。
図2に示されるように、コネクタ装置1は、例えば、コネクタ10と、相手側コネクタ20と、を備えている。ここでは、コネクタ10は、メス型のコネクタであり、相手側コネクタ20は、オス型のコネクタである。そして、コネクタ10は、例えば、ハウジング11と、端子12と、レバー30と、フロントマスク50と、パッキン60と、スペーサ70と、シール部材80と、リアホルダ90と、を含んで構成される。コネクタ10は、例えば、ハイブリッド自動車や、電気自動車等の車両において、インバータからモータへ電力を供給する電力供給用の電線Wを有するワイヤハーネスWH等に用いられる。
【0015】
ハウジング11は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂材料によって形成され、端子12や、短絡端子13、電線W等を内部に保持するものである。ハウジング11は、例えば、筒状部11aと、筒状部11aから軸線方向Xに沿って突出し相手側コネクタ20と嵌合される嵌合部11bと、を含んで構成される。ハウジング11は、筒状部11aと嵌合部11bとが一体で形成されており、これら筒状部11aと嵌合部11bとの内部には、端子12や、短絡端子13、電線W等が挿通される挿通空間部15が設けられている。挿通空間部15は、軸線方向Xの両側に向けて開放されており、軸線方向Xの一方側(相手側コネクタ20とは反対側)から端子12および電線Wが挿入されると共に、軸線方向Xの他方側(相手側コネクタ20側)から短絡端子13が挿入される。また、短絡端子13が挿入される挿通空間部15は、端子12および電線Wが挿入される挿通空間部15よりも大きく形成される。
【0016】
端子12は、例えば、導電性を有する金属材で構成されたメス型の端子金具であり、相手側コネクタ20の相手側端子22と電気的に接続されるものである。端子12は、相手側端子22と電気的に接続される電気接続部と、電線Wの端末と電気的に接続される電線圧着部と、を含んで構成される。電気接続部は、例えば、相手側端子22の幅方向Yまたは高さ方向Zの両側に設けられる一対のフォーク端子部を有し、当該一対のフォーク端子部の間に相手側端子22が挟まれるように嵌合して互いに電気的に接続される。電線圧着部は、例えば、電線Wの導体部W1と加締められて圧着されることで電線Wと電気的に接続される。
【0017】
短絡端子13は、導電性を有する金属材で構成された端子金具であり、相手側コネクタ20側の嵌合検知用端子と電気的に接続されるものである。短絡端子13は、不図示の短絡回路と接続されており、嵌合検知用端子との当接によって両端子間が短絡するとその短絡回路が形成され、これによりコネクタ10のハウジング11と相手側コネクタ20の相手側ハウジング21との嵌合状態を検知できるように構成される。短絡端子13は、上述した端子12とは別の端子であり、当該端子12に対して幅方向Yまたは高さ方向Zにずれて配置される。
【0018】
フロントマスク50は、例えば、相手側ハウジング21の収容空間部内でハウジング11の嵌合部11bと嵌合される部材である。フロントマスク50は、軸線方向Xの一方側(コネクタ10側)が開放され、軸線方向Xの他方側(相手側コネクタ20側)が閉じられた略筒状に形成される。フロントマスク50の底部には、相手側端子22が軸線方向Xに挿通される複数の貫通孔51が設けられている。フロントマスク50は、複数の貫通孔51のそれぞれから相手側端子22が軸線方向Xの一方側に突出した状態で、相手側ハウジング21の収容空間部に取り付けられる。
【0019】
パッキン60は、例えば、水分や粉塵などの異物が相手側ハウジング21とハウジング11の嵌合部11bとの間の環状の隙間からコネクタ10の内部に入り込むことを抑制するものである。パッキン60は、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材によって形成される。パッキン60は、例えば、嵌合部11bの外周面に沿った矩形の環状に形成され、フロントマスク50の軸線方向Xの一方側で相手側ハウジング21と嵌合部11bとの間に介在される。
【0020】
スペーサ70は、例えば、ハウジング11の嵌合部11bから軸線方向Xの他方側(相手側コネクタ20側)に突出する端子12および短絡端子13を保持するためのものである。また、スペーサ70は、端子12等の半挿入を検知するための部材としても機能する。スペーサ70には、端子12および短絡端子13が軸線方向Xに挿通される複数の挿通孔71が設けられている。短絡端子13が挿入される挿通孔71は、端子12が挿入される挿通孔71よりも大きく形成される。スペーサ70は、軸線方向Xにおいて、上述したフロントマスク50の底部とハウジング11の嵌合部11bとの間に介在される。
【0021】
シール部材80は、例えば、複数の電線Wを内部に保持すると共に、当該複数の電線Wの周囲をシールして軸線方向Xの一方側(電線W側)からコネクタ10の内部に水分等が浸入することを抑制するものである。シール部材80は、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材によって形成される。シール部材80には、電線Wが軸線方向Xに挿通される複数の電線挿通孔81が設けられている。複数の電線挿通孔81の直径は、電線Wのそれぞれの直径と略同じである。シール部材80は、例えば、ハウジング11とリアホルダ90との間に圧縮された状態で取り付けられることにより、複数の電線挿通孔81が自由状態よりも径方向内方に縮径し、これによりそれぞれの電線挿通孔81の内面と電線Wとが密着してこれらの間のシール性を高めることができる。シール部材80は、マットシール等とも称される。
【0022】
リアホルダ90は、例えば、シール部材80のハウジング11に対する軸線方向Xの一方側(相手側ハウジング21とは反対側)への移動を制限するための部材である。また、リアホルダ90は、シール部材80の軸線方向Xの一方側を覆い、シール部材80をハウジング11との間に保持する部材としても機能する。リアホルダ90には、電線Wが軸線方向Xに挿通される複数の電線貫通孔91が設けられている。リアホルダ90は、ハウジング11との間にシール部材80を保持した状態で、爪嵌合等によりハウジング11と一体化される。
【0023】
相手側コネクタ20は、例えば、相手側ハウジング21と、複数の相手側端子22と、上述した不図示の嵌合検知用端子と、を有している。相手側ハウジング21は、絶縁性を有する合成樹脂材料によって形成され、相手側端子22や、嵌合検知用端子等を内部に保持するものである。また、相手側ハウジング21の内部には、フロントマスク50や、パッキン60、スペーサ70、嵌合部11b等が収容される収容空間部が設けられている。収容空間部は、軸線方向Xの一方側(コネクタ10側)に向けて開放されており、当該軸線方向Xの一方側からフロントマスク50等が挿入される。
【0024】
相手側端子22は、例えば、導電性を有する金属材で構成されたオス型の端子金具であり、コネクタ10の端子12と電気的に接続されるものである。相手側ハウジング21の内部には、端子12に対応して複数の相手側端子22が幅方向Yおよび高さ方向Zに互いに間隔をあけて設けられている。また、嵌合検知用端子は、導電性を有する金属材で構成された端子金具であり、コネクタ10の短絡端子13と電気的に接続されるものである。嵌合検知用端子は、上述した相手側端子22とは別の端子であり、当該相手側端子22に対して幅方向Yまたは高さ方向Zにずれて配置される。
【0025】
次に、レバー30について詳細に説明する。
図3~6は、コネクタ10(コネクタ装置1)の斜視図であって、
図3は、ハウジング11が第1位置P1に位置された状態の図であり、
図4は、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第1経由位置P3に位置された状態の図であり、
図5は、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第2経由位置P4に位置された状態の図であり、
図6は、ハウジング11が第2位置P2に位置された状態の図である。また、
図7は、コネクタ10のレバー30の斜視図である。
【0026】
図3~7に示されるように、レバー30は、例えば、コネクタ10のハウジング11に対して相手側コネクタ20の相手側ハウジング21を低挿入力で嵌合させるものである。レバー30は、合成樹脂等の絶縁性材料によって形成される。レバー30には、ハウジング11と相手側ハウジング21との嵌合状態を保持するレバーロック部40が設けられる。また、レバー30は、例えば、幅方向Yに沿って延びる一対のアーム部31と、高さ方向Zに沿って延び一対のアーム部31を連結する操作部32と、を含んで構成され、ハウジング11および相手側ハウジング21に対して相対回転可能に組み付けられる。
【0027】
具体的には、一対のアーム部31には、それぞれ高さ方向Zに沿って貫通する軸受としての孔部31a(
図7参照)が設けられている。この孔部31aには、ハウジング11から高さ方向Zの両側に突出した一対の突起部17が嵌合される。一対の突起部17は、レバー30の回転軸として機能し、レバー30は、ハウジング11に対して一対の突起部17の高さ方向Zに沿って延びる回転軸回りに回転可能である。また、一対のアーム部31には、相手側ハウジング21から高さ方向Zの両側に突出した一対の突起部27と係合する長穴状の溝部31b(
図7参照)が設けられている。
【0028】
このような構成において、レバー30は、長穴状の溝部31bに突起部27を係合させた状態で、操作部32を突起部17の高さ方向Zに沿って延びる回転軸回りの一方側に回転させることによって、相手側ハウジング21を軸線方向Xに沿ってハウジング11側に相対移動させることができる。具体的には、本実施形態では、操作部32の回転軸(突起部17)回りの一方側への回転操作に伴って、ハウジング11と相手側ハウジング21との仮嵌合状態に対応する第1位置P1(
図3参照)から、ハウジング11と相手側ハウジング21との完全嵌合状態に対応する第2位置P2(
図6参照)に向かって、ハウジング11が相手側ハウジング21に対して軸線方向Xに沿って相対移動する。これにより、レバー30は、相手側ハウジング21に対してハウジング11を低挿入力で嵌合させることができる。
【0029】
一方、レバー30は、長穴状の溝部31bに突起部27を係合させた状態で、操作部32を突起部17の高さ方向Zに沿って延びる回転軸回りの他方側に回転させることによって、相手側ハウジング21を軸線方向Xに沿ってハウジング11とは反対側に相対移動させることができる。具体的には、本実施形態では、操作部32の回転軸(突起部17)回りの他方側への回転操作に伴って、ハウジング11と相手側ハウジング21との完全嵌合状態に対応する第2位置P2(
図6参照)から、ハウジング11と相手側ハウジング21との仮嵌合状態に対応する第1位置P1(
図3参照)に向かって、ハウジング11が相手側ハウジング21に対して軸線方向Xに沿って相対移動する。これにより、レバー30は、相手側ハウジング21からハウジング11をより小さな力で抜去させることができる。
【0030】
また、本実施形態では、コネクタ10には、ハウジング11を相手側ハウジング21に対して第2位置P2(
図6参照)でロックするためのハウジングロック部45が設けられている。ハウジングロック部45は、例えば、相手側ハウジング21に設けられた第1係止部45aと、ハウジング11に設けられた第2係止部45bと、を含んで構成される。第1係止部45aは、例えば、相手側ハウジング21の上壁に爪状に形成される。第2係止部45bは、例えば、ハウジング11における第1係止部45aと対応する位置に設けられた係止溝部として形成される。第1係止部45aは、第2係止部45bと軸線方向Xに対向する係止面を有し、当該係止面と第2係止部45bとが軸線方向Xに係止されることで、ハウジング11の相手側ハウジング21に対する第1位置P1側への軸線方向Xに沿った移動が制限される。
【0031】
また、本実施形態では、コネクタ10には、ハウジング11が第2位置P2に位置された状態で、レバー30をハウジング11に対してロックするためのレバーロック部40が設けられている。レバーロック部40は、例えば、ハウジングロック部45に対して軸線方向Xの一方側にずれて位置されている。レバーロック部40は、例えば、レバー30に設けられた第3係止部41と、ハウジング11に設けられた第4係止部42(
図3参照)と、を含んで構成される。第4係止部42は、例えば、ハウジング11の上壁に突起状に形成される。第3係止部41は、例えば、レバー30における第4係止部42と対応する位置に設けられた係止溝部として形成される。第4係止部42は、第3係止部41と軸線方向Xに対向する係止面を有し、当該係止面と第3係止部41とが軸線方向Xに係止されることで、レバー30のハウジング11に対する第1位置P1(
図3参照)側への回転が制限される。
【0032】
上記のように構成されるハウジングロック部45およびレバーロック部40は、ハウジング11が第1位置P1に位置された状態(
図3参照)、およびハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第1経由位置P3に位置された状態(
図4参照)では、それぞれ、第1係止部45aと第2係止部45bとが軸線方向Xに離間していると共に、第3係止部41と第4係止部42とが軸線方向Xに離間している。
【0033】
次に、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第2経由位置P4に位置された状態(
図5参照)では、レバーロック部40の第3係止部41と第4係止部42とが軸線方向Xに離間している一方で、ハウジングロック部45の第1係止部45aが第2係止部45bの溝部内に挿入され、ハウジング11と相手側ハウジング21とがロックされる。そして、ハウジング11が第2位置P2に位置された状態(
図6参照)では、ハウジングロック部45に加えてレバーロック部40の第4係止部42が第3係止部41の溝部内に挿入され、レバー30とハウジング11とがロックされる。
【0034】
図8は、コネクタ10のレバー30の断面図である。また、
図9~11は、コネクタ10のレバー30における押圧突起35の近傍の断面図であって、
図9は、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第1経由位置P3に位置された状態の図であり、
図10は、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第2経由位置P4に位置された状態の図であり、
図11は、ハウジング11が第2位置P2に位置された状態の図である。
【0035】
図8~11に示されるように、本実施形態では、レバー30には、リアホルダ90を軸線方向Xに沿って押圧するための押圧突起35が設けられている。ここでは、レバー30には、高さ方向Zに互いに間隔をあけて一対のアーム部31のそれぞれに押圧突起35が設けられている。一対の押圧突起35は、例えば、アーム部31から高さ方向Zの中央部側に向けて突出した突出部35aと、突出部35aの先端部から軸線方向Xの他方側(リアホルダ90側)に向けて突出した押圧部35bと、をそれぞれ有している。一対の押圧突起35は、突出部35aと押圧部35bとによって、それぞれ断面略L字状に形成される。
【0036】
上記のように構成される押圧突起35は、ハウジング11が第1位置P1に位置された状態では、リアホルダ90に対して軸線方向Xに離間している。次に、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第1経由位置P3に位置された状態(
図9参照)では、押圧突起35の押圧部35bがリアホルダ90の当接部93と当接する。そして、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第2経由位置P4に位置された状態(
図10参照)では、押圧突起35がリアホルダ90を軸線方向Xの他方側(相手側ハウジング21側)に向けて押圧し、ハウジング11が第2位置P2に位置された状態(
図11参照)では、押圧突起35によってリアホルダ90がさらに軸線方向Xの他方側に押し込まれ、リアホルダ90とハウジング11の中壁部11eとが当接する。このように、本実施形態では、ハウジング11を相手側ハウジング21に対して第1位置P1から第2位置P2へと移動させるレバー30の回転動作に伴って、リアホルダ90がハウジング11に対して係合される。
【0037】
図12~14は、コネクタ10のリアホルダ90における係止部92の近傍の断面図であって、
図12は、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第1経由位置P3に位置された状態の図であり、
図13は、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第2経由位置P4に位置された状態の図であり、
図14は、ハウジング11が第2位置P2に位置された状態の図である。
【0038】
図12~14に示されるように、本実施形態では、リアホルダ90には、ハウジング11に対して係止される係止部92が設けられている。係止部92は、例えば、リアホルダ90の幅方向Yの両端部に爪状に形成される。一対の係止部92は、それぞれリアホルダ90から幅方向Yの両側(外側)に向けて突出している。一対の係止部92は、ハウジング11側に形成される後述する仮係止部18および本係止部19と係止される部分である。一対の係止部92は、例えば、本係止部19と軸線方向Xに係止される係止面92aと、係止面92aとは反対側を向き仮係止部18と軸線方向Xに係止される傾斜面92bと、をそれぞれ有している。一対の係止部92は、ハウジング11を相手側ハウジング21に対して第1位置P1から第2位置P2へと移動させるレバー30の回転動作に伴って、傾斜面92bと仮係止部18とが仮係止された状態(
図12参照)から、係止面92aと本係止部19とが本係止された状態(
図14参照)へと移行する。
【0039】
また、本実施形態では、ハウジング11の筒状部11aには、幅方向Yに沿って貫通する係止孔部16が設けられている。係止孔部16は、リアホルダ90側の一対の係止部92と対応する位置に設けられており、当該一対の係止部92が挿入および係止される。本実施形態では、一対の係止孔部16は、軸線方向Xの一方側に位置される内面16aをそれぞれ有し、当該内面16aによって本係止部19が構成される。言い換えると、係止孔部16の内面16aに本係止部19が設けられている。本係止部19は、ハウジング11が第2位置P2(
図14参照)に位置された状態で、係止部92の係止面92aと軸線方向Xに本係止される。また、本実施形態では、筒状部11aは、軸線方向Xの一方側(相手側ハウジング21とは反対側)に位置される端面11cを有し、当該端面11cによって仮係止部18が構成される。言い換えると、筒状部11aの端面11cに仮係止部18が設けられている。仮係止部18は、ハウジング11が第1位置P1と第2位置P2との間の第1経由位置P3(
図12参照)に位置された状態で、係止部92の傾斜面92bと軸線方向Xに仮係止される。
【0040】
上記のように構成される係止部92および係止孔部16は、係止孔部16に対して係止部92が軸線方向Xの一方側から係止(係合)される。すなわち、係止部92および係止孔部16は、レバー30の回転動作に伴って、傾斜面92bと仮係止部18とが仮係止された状態(
図12参照)から、係止面92aと本係止部19とが本係止された状態(
図14参照)へと移行する。このとき、筒状部11aの内周面によって係止部92が幅方向Yの内側に向けて湾曲し(
図13参照)、当該係止部92が筒状部11aの内周面を乗り越えて係止孔部16に挿入されることによって係止部92が自由状態に復帰する。そして、係止部92の係止面92aと係止孔部16の内面16a(本係止部19)とが軸線方向Xに係止されることで、リアホルダ90のハウジング11に対する軸線方向Xの一方側への移動(外れ)が抑制される。また、本実施形態では、係止面92aと本係止部19とが本係止された状態(
図14参照)では、上述した押圧突起35によって軸線方向Xの他方側に押圧されたリアホルダ90がシール部材80と当接し、当該シール部材80がリアホルダ90とハウジング11との間で軸線方向Xに圧縮される。
【0041】
以上のように、本実施形態のコネクタ10およびワイヤハーネスWHでは、ハウジング11を相手側ハウジング21に対して第1位置P1から第2位置P2へと移動させるレバー30の回転動作に伴って、係止部92と仮係止部18とが仮係止された状態のリアホルダ90が、押圧突起35によってハウジング11側に押圧され、係止部92と本係止部19とが本係止されるよう構成される。この構成により、コネクタ10およびワイヤハーネスWHは、例えば、レバー30の回転によって、ハウジング11を相手側ハウジング21に対して仮嵌合状態に対応する第1位置P1から完全嵌合状態に対応する第2位置P2へと移動させる作業工程と、リアホルダ90をハウジング11側に押し込んでシール部材80を圧縮させる作業工程と、を同時に行うことができる。この結果、コネクタ10およびワイヤハーネスWHは、より適正にレバー30の操作によってハウジング11と相手側ハウジング21とを嵌合させることができる。
【0042】
また、本実施形態のコネクタ10およびワイヤハーネスWHでは、ハウジング11は、軸線方向Xと交差する幅方向Yに沿って貫通する係止孔部16が設けられた筒状部11aを有し、仮係止部18は、筒状部11aの軸線方向Xの端面11cに設けられ、本係止部19は、係止孔部16の内面16aに設けられる。この構成により、コネクタ10およびワイヤハーネスWHは、例えば、筒状部11aの軸線方向Xの端面11cと係止孔部16の内面16aとによって、比較的容易にハウジング11に仮係止部18と本係止部19とを形成することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、リアホルダ90側の係止部92が係止突起として構成され、ハウジング11側の仮係止部18および本係止部19が係止孔部16として構成された場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、リアホルダ90側の係止部92が係止孔部16として構成され、ハウジング11側の仮係止部18および本係止部19が係止突起として構成されてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 コネクタ
11 ハウジング
11a 筒状部
11c 端面
12 端子
16 係止孔部
16a 内面
18 仮係止部
19 本係止部
20 相手側コネクタ
21 相手側ハウジング
22 相手側端子
30 レバー
35 押圧突起
80 シール部材
81 電線挿通孔
90 リアホルダ
92 係止部
P1 第1位置
P2 第2位置
W 電線
WH ワイヤハーネス
X 軸線方向
Y 幅方向