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  • 特開-光透過性不燃シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179776
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】光透過性不燃シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/02 20060101AFI20241219BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241219BHJP
   B32B 27/22 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B17/02
B32B17/10
B32B27/12
B32B27/30 101
B32B7/023
B32B27/22
B32B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098910
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA21A
4F100AA21C
4F100AG00B
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK25D
4F100AK51E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA04A
4F100CA04C
4F100CB00E
4F100DE01A
4F100DE01C
4F100DG01B
4F100DG12B
4F100DG15B
4F100GB07
4F100HB31D
4F100JJ07
4F100JL11E
4F100JN01A
4F100JN01C
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】光膜天井用の部材として好適な光透過性不燃シートを提供すること。
【解決手段】表層側から、可視光透過率が70%以上である第一樹脂層と、ガラス織布又は不織布を含む基材層と、可視光透過率が5%以上である第二樹脂層と、を順に備え、第一樹脂層及び第二樹脂層が塩化ビニル樹脂を含む、光透過性不燃シート。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層側から、可視光透過率が70%以上である第一樹脂層と、ガラス織布又は不織布を含む基材層と、可視光透過率が5%以上である第二樹脂層と、を順に備え、
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層が塩化ビニル樹脂を含む、光透過性不燃シート。
【請求項2】
前記第二樹脂層の可視光透過率より、前記第一樹脂層の可視光透過率の方が高い、請求項1に記載の光透過性不燃シート。
【請求項3】
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤を10~60質量部含む、請求項1又は2に記載の光透過性不燃シート。
【請求項4】
前記第一樹脂層に含まれる前記可塑剤の量より、前記第二樹脂層に含まれる前記可塑剤の量の方が多い、請求項3に記載の光透過性不燃シート。
【請求項5】
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層の厚さが0.06~0.15mmである、請求項1又は2に記載の光透過性不燃シート。
【請求項6】
前記第一樹脂層の前記表層側及び前記基材層側の少なくともいずれかに印刷層を更に備える、請求項1又は2に記載の光透過性不燃シート。
【請求項7】
前記第一樹脂層と前記基材層との間、及び前記第二樹脂層と前記基材層との間に接着層を更に備える、請求項1又は2に記載の光透過性不燃シート。
【請求項8】
光膜天井用である、請求項1又は2に記載の光透過性不燃シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性不燃シートに関する。
【背景技術】
【0002】
天井落下の危険性に鑑み、大型の建築物においては耐震対策として膜天井が採用される場合がある。膜天井に使用し得る化粧シートとして、例えば着色された塩化ビニル系樹脂シートとガラス織布とを組み合わせた、不燃性のシート部材が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-117850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、膜天井の一態様として、天井内に照明が組み込まれた光膜天井があるが、上述のシート部材を用いて光膜天井を設置すると、シート部材により照明からの光が遮られ、充分な照度を確保することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光膜天井用の部材として好適な光透過性不燃シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、表層側から、可視光透過率が70%以上である第一樹脂層と、ガラス織布又は不織布を含む基材層と、可視光透過率が5%以上である第二樹脂層と、を順に備え、第一樹脂層及び第二樹脂層が塩化ビニル樹脂を含む、光透過性不燃シートを提供する。
【0007】
一態様において、第二樹脂層の可視光透過率より、第一樹脂層の可視光透過率の方が高くてよい。
【0008】
一態様において、第一樹脂層及び第二樹脂層が、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤を10~60質量部含んでよい。
【0009】
一態様において、第一樹脂層に含まれる可塑剤の量より、第二樹脂層に含まれる可塑剤の量の方が多くてよい。
【0010】
一態様において、第一樹脂層及び第二樹脂層の厚さが0.06~0.15mmであってよい。
【0011】
一態様において、光透過性不燃シートは、第一樹脂層の表層側及び基材層側の少なくともいずれかに印刷層を更に備えてよい。
【0012】
一態様において、光透過性不燃シートは、第一樹脂層と基材層との間、及び第二樹脂層と基材層との間に接着層を更に備えてよい。
【0013】
一態様において、光透過性不燃シートが光膜天井用であってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光膜天井用の部材として好適な光透過性不燃シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る光透過性不燃シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されない。
【0017】
<光透過性不燃シート>
図1は、一実施形態に係る光透過性不燃シートの模式断面図である。光透過性不燃シート10は、表層側から、第一樹脂層1と、基材層2と、第二樹脂層3と、を順に備える。
光透過性不燃シート10は更に、第一樹脂層1の表層側及び基材層側の少なくともいずれかに印刷層4(図中では表層側)を備えることができ、また第一樹脂層1と基材層2との間、及び第二樹脂層3と基材層2との間に接着層5を備えることができる。接着層5は基材層2内に入り込んで(浸み込んで)存在していてもよい。
第一樹脂層1の表層側には、保護層6が設けられていてよい。表層側とは、光透過性不燃シートが膜天井として施工された際の、天井下部の空間(例えば室内空間)に対向する側である。
以下、光透過性不燃シートを単に「シート」と言う場合がある。
【0018】
シート全体の厚さは、その層構成により変動するため必ずしも限定されないが、0.26~0.50mmとすることができる。
【0019】
上記層構成を有する不燃性のシートは優れた光透過性を有する。これは、第一樹脂層、基材層及び第二樹脂層の積層体の合計厚さを0.30~0.45mmとしたときに、当該積層体が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上の可視光透過率を有することができるためである。このため、シートは膜天井用、特に光膜天井用の部材として好適に用いることができる。可視光透過率の上限は特に限定されないが、天井内の構造(照明等)が露わになることを抑制する観点から40%とすることができる。
なお、接着層、印刷層及び保護層の厚さはこれらの層に比して非常に薄く、また可視光透過性の高い材料で形成されるため、上記積層体やシート全体としての可視光透過率には実質的な影響を与えない。
【0020】
可視光透過率は、JIS A 5759に準じて分光光度計を用いて測定される、波長380~720nmの光における透過率をいう。測定対象における異なる3点について可視光透過率を測定し、その平均を測定対象の可視光透過率とする。
【0021】
(第一樹脂層)
第一樹脂層は塩化ビニル樹脂を含む。塩化ビニル樹脂は不燃性に優れており、シートに不燃性を付与することができる。
【0022】
第一樹脂層は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤を10~60質量部含むことができる。可塑剤の量が10質量部以上であることで、折り曲げ加工し易くなる。可塑剤の量が60質量部以下であることで、第一樹脂層の伸びが抑制され、印刷層形成時の印刷適正(見当精度性)が向上し易く、また施工時にシートの弛みを抑制し易い。この観点から、可塑剤の量は10~30質量部であってよく、15~25質量部であってよい。
可塑剤としては、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等が挙げられる。
【0023】
第一樹脂層は、所望の可視光透過率が確保される範囲において、公知の着色剤である顔料又は染料を含むことができる。そのような着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、シリカ等の無機顔料、ジスアゾ、ポリアゾ、フタロシアニンカーボンブラック、等の有機顔料、メチレンブルー、ローダミン、インディゴ等の染料が挙げられる。目標とする可視光透過率の値、着色剤の種類等によるため特に限定されないが、第一樹脂層は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して着色剤を0~20質量部含むことができる。
【0024】
第一樹脂層は、その他安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の耐候剤などの公知の剤を含んでいてもよい。
【0025】
充分な可視光透過性を確保する観点から、第一樹脂層の可視光透過率は70%以上であり、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。またこれにより、第一樹脂層のいずれの面に印刷層を設けた場合でもシートに意匠性を付与し易い。可視光透過率の上限は特に限定されないが、天井材にした際の表面のぎらつきを抑制する観点から90%とすることができる。第一樹脂層の可視光透過率は、着色剤の種類や量、層の厚さを変更することで調整することができる。
【0026】
第一樹脂層の厚さは0.06~0.15mmとすることができる。厚さが0.06mm以上であることで、原反の伸びが少なくなり、グラビア印刷の際の柄ズレが発生し難くなり、0.15mm以下であることで充分な可視光透過性及び不燃性を確保し易くなる。この観点から、第一樹脂層の厚さは0.08~0.13mmであってよく、0.10~0.13mmであってよい。
【0027】
(第二樹脂層)
第二樹脂層は塩化ビニル樹脂を含む。第一樹脂層と同様に、これによりシートに不燃性を付与することができる。
【0028】
第二樹脂層は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤を10~60質量部含むことができる。可塑剤の量が10質量部以上であることで、第二樹脂層が柔軟になり易く、膜天井のフレームに取り付け易くなる。可塑剤の量が60質量部以下であることで、天井に貼り付けた際に弛み難くなる。この観点から、可塑剤の量は35~55質量部であってよく、40~50質量部であってよい。
可塑剤としては、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等が挙げられる。
【0029】
第二樹脂層は、所望の可視光透過率が確保される範囲において、第一樹脂層の項において挙げた、公知の着色剤である顔料又は染料を含むことができる。目標とする可視光透過率の値、着色剤の種類等によるため特に限定されないが、第二樹脂層は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して着色剤を0~40質量部含むことができる。
【0030】
第二樹脂層は、その他安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の耐候剤などの公知の剤を含んでいてもよい。
【0031】
充分な可視光透過性を確保する観点から、第二樹脂層の可視光透過率は5%以上であり、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。可視光透過率の上限は特に限定されないが、天井内の構造(照明等)が露わになることを抑制する観点から80%とすることができる。第二樹脂層の可視光透過率は、着色剤の種類や量、層の厚さを変更することで調整することができる。
【0032】
第二樹脂層の厚さは0.06~0.15mmとすることができる。厚さが0.05mm以上であることで、照明の形状を隠蔽し易くなり、0.15mm以下であることで充分な可視光透過性及び不燃性を確保し易くなる。この観点から、第二樹脂層の厚さは0.08~0.13mmであってよく、0.10~0.13mmであってよい。
【0033】
(基材層)
基材層はガラス織布又は不織布を含む。
【0034】
織布及び不織布の目付は、優れた強度及び可視光透過性を得易い観点から、例えば80~240g/mとすることができ、100~210g/mであってもよい。
【0035】
織布及び不織布を構成するガラス繊維の平均繊維径は、優れた強度及び可視光透過性を得易い観点から、例えば3~10μmとすることができ、6~9μmであってもよい。
【0036】
基材層は、その他でんぷん糊、シランカップリング剤等の公知の剤を含んでいてもよい。基材層は、第一樹脂層及び第二樹脂層との接着のため、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等の熱融着性の樹脂を含んでいてもよい。
【0037】
充分な可視光透過性を確保する観点から、基材層の可視光透過率は50%以上であり、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。可視光透過率の上限は特に限定されないが、照明の形状を隠蔽し易い観点から80%とすることができる。基材層の可視光透過率は、ガラス繊維の繊維径、層の目付や厚さを変更することで調整することができる。
【0038】
基材層の厚さは0.14~0.20mmとすることができる。厚さが0.14mm以上であることで、ガラスクロスが裂け難くなり、0.20mm以下であることで膜天井のフレームに巻き付けし易くなる。この観点から、基材層の厚さは0.16~0.18mmであってよい。
【0039】
(印刷層)
印刷層は、第一樹脂層の色調を背景色として、シートに絵柄や模様を付与することができる。絵柄や模様としては、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画等が挙げられる。
【0040】
印刷層は、樹脂と、公知の着色剤である顔料又は染料とを含むことができる。樹脂としてはアクリル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料、イソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン等の有機顔料、メチレンブルー、ローダミン、インディゴ等の染料が挙げられる。
【0041】
印刷層は、第一樹脂層の表層側及び基材層側の少なくともいずれかに設けることができる。意匠の鮮明性の観点からは、第一樹脂層の表層側に印刷層を設けることが好ましい。第一樹脂層自体の厚みを塗装感として意匠性を向上させる観点からは、第一樹脂層の基材層側に印刷層を設けることが好ましい。複雑な意匠表現を実現する観点からは、第一樹脂層の表層側及び基材層側に印刷層を設けることが好ましい。
【0042】
印刷層の厚さは特に制限されないが、0μm超~10μmとすることができる。
【0043】
(接着層)
接着層は第一樹脂層及び基材層間、並びに第二樹脂層及び基材層間を接着するための層である。接着層は不燃性を有する樹脂(接着剤)を含むことが好ましく、そのような樹脂としては、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0044】
接着層を形成するための接着剤の塗布量は特に制限されないが、10~15g/mとすることができる。
【0045】
(保護層:トップコート層)
保護層は、シート表層側の印刷層を保護したり、第一樹脂層表面の艶を調整したりする透明な層であって、硬質な樹脂をコーティングして形成することができる。硬質な樹脂としては、例えばアクリルウレタン系樹脂を使用することができる。保護層は、主剤としてのアクリルポリオールと、硬化剤としてのヘキサメチレンジイソシアネートとに、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤及び艶消し剤を添加し、硬化させることで形成される。紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤が用いられる。トリアジン系紫外線吸収剤はアクリルウレタン系樹脂と相溶性が良好であるので、経時による紫外線吸収剤の析出が抑制され、紫外線遮蔽性能の効果が長期にわたり継続し、耐候性が良好なものになる。
【0046】
保護層の厚さは、保護層の塗工性、保管性等の汎用性の観点から、固形分塗布量で好ましくは2~7g/mであり、より好ましくは3~6g/mである。
【0047】
<光透過性不燃シートの製造方法>
光透過性不燃シートの製造方法は、例えば次のようにして製造することができる。
基材層の両面に接着剤を塗布する。そして、第一樹脂層及び第二樹脂層と基材層とを接着剤を介して重ね、ラミネート処理することで積層体を得ることができる。接着剤は第一樹脂層上及び第二樹脂層上に塗布してもよい。
また、例えば、基材層に熱融着性の樹脂を含浸等により含ませる。そして、各樹脂層と基材層とを重ね、加熱をしながら熱融着性の樹脂を溶融させつつラミネート処理することで積層体を得ることができる。
このようにして得られる積層体は、第一樹脂層/接着層/基材層/接着層/第二樹脂層の層構成を有することができる。
【0048】
ラミネート処理の際に、押えの金属ロール表面を加工しておくことで、印刷層を用いることなく、第一樹脂層の表面に梨地、木目調等の絵柄や模様をつけることができる。またこれにより、保護層を用いることなく、第一樹脂層表面に凹凸を付けること(艶調整を行うこと)ができる。
【0049】
上記のとおり得られた積層体の第一樹脂層に、必要に応じインクジェット印刷、グラビア印刷等により印刷層を形成することができる。なお、膜天井用途のような大面積シートへの印刷層形成は、安価でありかつ色調が安定しているグラビア印刷が有効である。
印刷層は、積層体を作製する前に第一樹脂層に予め形成しておいてもよく、これにより第一樹脂層の基材層側に印刷層を設けることができる。
【0050】
上記のとおり得られた積層体の第一樹脂層(印刷層は形成されていてもされていなくともよい)に、必要に応じ保護層を形成することができる。
【0051】
以上の製造方法により、例えば、表層側から保護層/印刷層/第一樹脂層/接着層/基材層/接着層/第二樹脂層の層構成を有する光透過性不燃シートを得ることができる。ただし層構成はこれに限定されず、また製造方法もこれに限定されない。
【0052】
<本実施形態の概要>
[発明1]
表層側から、可視光透過率が70%以上である第一樹脂層と、ガラス織布又は不織布を含む基材層と、可視光透過率が5%以上である第二樹脂層と、を順に備え、
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層が塩化ビニル樹脂を含む、光透過性不燃シート。
[発明2]
前記第二樹脂層の可視光透過率より、前記第一樹脂層の可視光透過率の方が高い、発明1に記載の光透過性不燃シート。
[発明3]
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して可塑剤を10~60質量部含む、発明1又は2に記載の光透過性不燃シート。
[発明4]
前記第一樹脂層に含まれる前記可塑剤の量より、前記第二樹脂層に含まれる前記可塑剤の量の方が多い、発明3に記載の光透過性不燃シート。
[発明5]
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層の厚さが0.06~0.15mmである、発明1~4のいずれか一に記載の光透過性不燃シート。
[発明6]
前記第一樹脂層の前記表層側及び前記基材層側の少なくともいずれかに印刷層を更に備える、発明1~5のいずれか一に記載の光透過性不燃シート。
[発明7]
前記第一樹脂層と前記基材層との間、及び前記第二樹脂層と前記基材層との間に接着層を更に備える、発明1~6のいずれか一に記載の光透過性不燃シート。
[発明8]
光膜天井用である、発明1~7のいずれか一に記載の光透過性不燃シート。
【実施例0053】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0054】
<使用材料>
・アクリルウレタン樹脂系塗料:DICグラフィックス製、UCクリアー。
・アクリル樹脂系インキ:東洋インキ製、VKNT各色。
・塩化ビニル樹脂系フィルムI:タツノ化学製、TM。可塑剤(DINP:フタル酸ジイソノニル)含有量及び酸化チタン粒子含有量は表1のとおり。
・接着剤:ウレタン樹脂系接着剤。
・ガラス繊維クロス(生機):ユニチカ製、H202。目付210g/m、縦67.5±6.75tex、横67.5±6.75tex、密度:縦44±2本/25mm、横32±2本/25mm、ガラス繊維の平均繊維径9μm、本数400本のガラスヤーンを使用。
・塩化ビニル樹脂系フィルムII:タツノ化学製、TM。可塑剤(DINP)含有量及び酸化チタン粒子含有量は表1のとおり。
【0055】
<シートの作製>
表1に示す構成に従い、以下の手順にてシート(光透過性不燃シート)を作製した。表1において「PHR」とは、塩化ビニル樹脂100質量部に対する質量部数である。
ガラス繊維クロスの両面にウレタン樹脂系接着剤を塗工した(最大塗布量14g/m程度)。また、塩化ビニル樹脂系フィルムI及び塩化ビニル樹脂系フィルムIIを加熱して軟化させた。
塩化ビニル樹脂系フィルムIとガラス繊維クロスとを、また塩化ビニル樹脂系フィルムIIとガラスクロスとを、それぞれ対向させた状態で、金属ロール(艶消し凹凸エンボス加工)を用いてラミネート処理を行った。金属ロールは塩化ビニル樹脂系フィルムI側に押し付けた。
上記ラミネート処理後の塩化ビニル樹脂系フィルムIに、アクリル樹脂系インキを用いてグラビア印刷(1色刷り)により印刷層を形成した。
塩化ビニル樹脂系フィルムIの印刷層形成面に、アクリルウレタン樹脂系塗料を塗工(塗布量3g/m)して、トップコートを形成した。
以上により、トップコート/印刷層/塩化ビニル樹脂系フィルムI/接着剤層/ガラス繊維クロス/接着剤層/塩化ビニル樹脂系フィルムII、の層構成を有するシート(積層体)を得た。
【0056】
<可視光透過率測定(三層品)>
塩化ビニル樹脂系フィルムI、ガラス繊維クロス及び塩化ビニル樹脂系フィルムIIを上記のとおりラミネート処理により貼り合わせて三層の積層体を得た。そして、塩化ビニル樹脂系フィルムI(厚さ0.13mm)、ガラス繊維クロス(厚さ0.17mm)、塩化ビニル樹脂系フィルムII(厚さ0.13mm)、及びこれら三層の積層体(厚さ0.43mm)の可視光透過率を、JIS A 5759に準じてそれぞれ分光光度計(島津製作所社製、UV-3600)を用いて測定した。可視光透過率は波長380~720nmの光における可視光透過率であり、測定対象における異なる3点について透過率を測定し、その平均を測定対象の可視光透過率とした。結果を表1に示す。
【0057】
<各種評価>
各例で得られたシート又は三層の積層体に対し以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(不燃性:燃焼試験)
ISO5660-1に準拠したコーンカロリ燃焼試験を実施した。具体的には、各例で得られたシートの、加熱時間に対する総発熱量及び加熱時間に対する発熱速度を求め、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8[MJ/m]以下であること、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200[kW/m]を超えないこと、及び(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、をそれぞれ満たすか否かを確認した。
A:(i)、(ii)、(iii)の基準を全て満たしていた。
B:(i)、(ii)、(iii)の基準のいずれかを満たさなかった。
【0059】
(加工性)
40mm角のアルミ型材を4本使用し、天井の構造材を模した1500mm×1500mmの枠を組み上げた。各例で得られたシートのこの枠への張り易さを確認した。
S:シートに適度な柔軟性が有るため張り易かった。
A:シートの柔軟性はAに劣るが張り易かった。
B:シートの柔軟性はBに劣るが張ることはできた。
【0060】
(可視光透過性)
上記三層の積層体の可視光透過性を評価した。
A:充分な可視光透過性を有していた。
B:充分な可視光透過性を有していなかった。
【0061】
(印刷適性)
上記三層の積層体において、塩化ビニル樹脂系フィルムIに対するグラビア印刷適性及びインクジェット印刷適性を評価した。
グラビア印刷適性:
A:2色刷りの柄にて見当精度に優れていた。
B:2色刷りの柄にて見当精度はAに劣るが見当を合わせることはできた。
インクジェット印刷適性:
A:印刷後に60cm離して印刷面を確認したところ、素地が目立たずインキ抜けがなかった。
【0062】
【表1】
【符号の説明】
【0063】
1…第一樹脂層、2…基材層、3…第二樹脂層、4…印刷層、5…接着層、6…保護層。
図1